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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

発信者情報開示

令和2(ワ)910 発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年9月25日  東京地方裁判所

 屋外に恒常的に設置された建物の写真について、著作物性ありと判断され、発信者情報開示が認められました。

 前記前提事実,証拠(甲1,6,8,乙1)及び弁論の全趣旨によれば, 本件写真は,原告が,空気の透明度が高い冬季において,天候が良好な日 の夜間に,約180度の眺望を有する本件展望台から見ることができる夜 景のうち,大阪府内所在のりんくうゲートタワー及びその周辺の建造物の 組合せを被写体として選択し,中でも目を引く建造物であるりんくうゲー トタワーを構図のほぼ中心に据え,その左右に複数の建造物がそれぞれ配\n置されるようにして,カメラについては,「70−200mm」のレンズを 選択し,レンズ焦点距離を「200.00mm」,シャッター速度を「16. 0秒」,絞り値を「f/9」とするなどの設定をした上で,ストロボ発光な しで撮影したものと認められる。 そうすると,本件写真は,原告において,撮影時期及び時間帯,撮影時 の天候,撮影場所等の条件を選択し,被写体の組合せ,選択及び配置,構\n図並びに撮影方法を工夫し,シャッターチャンスを捉えて撮影したもので あり,原告の個性が表現されているものと認められる。\nしたがって,原告が撮影した本件写真及びこれに本件文字を付加して作 成した本件写真画像は,いずれも,原告の思想又は感情を創作的に表現し\nたものということができるから,「著作物」(著作権法2条1項1号)に該 当する。
イ 被告は,本件写真の被写体であるりんくうゲートタワー及びその周辺の 建造物は,屋外に恒常的に設置されているものであるから,これを被写体 として撮影しようとすれば,焦点距離や撮影位置,構図等の表\現の選択の 幅は必然的に限定され,本件写真の構図自体ありふれたものであるから,\n撮影者の個性が現れたものとはいえず,本件写真には創作性がない旨主張 する。
しかしながら,別紙4写真画像目録記載の本件写真画像から明らかなよ うに,本件展望台からの眺望は広く,撮影することができる建造物は多数 あり,それらから発せられる光も様々であるから,どのような位置から, どのような構図で撮影するか,どの建物に焦点を合わせるかといった選択\nの幅が限定的であるということはできない。 そして,前記アのとおり,原告は,上記の幅の中から1つの撮影位置, 構図及び焦点距離を選択した上,さらに,撮影時期及び時間帯,撮影時の\n天候等の条件についても選択して,撮影方法を工夫し,シャッターチャン スを捉えて撮影したものであるから,本件写真には,原告の個性が現れて いるものと認められる。

◆判決本文

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令和1(ワ)30272  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年6月25日  東京地方裁判所

 発信者情報1(氏名又は名称)は保有していない、発信者情報2は、法4条1項の「発信者情報」に当たらないとして、発信者情報開示請求が棄却されました。

 被告が本件発信者情報1(氏名又は名称)を保有しているかを検討するため, 本件サービスに係る会員登録の情報内容についてみるに,証拠(甲11)によ れば,本件サービスの利用規約には,本件サービスの会員登録希望者は,本件 サービスの利用規約の全てに同意した上,同利用規約及び被告が定める方法に より会員登録をする旨の定めがある(同利用規約第4条1.)ことが認められ るにとどまり,同利用規約(甲11)の内容を全て精査しても,会員登録時に 登録すべき情報内容についての定めはなく,本件サービスを利用するためには 会員登録希望者ないし利用者がその氏名又は名称を登録する必要があることを うかがわせる定めも見当たらない。そうすると,本件登録者において,本件サ ービスの利用規約の定めに従い,本件発信者情報1(氏名又は名称)を登録し て被告に提供したと認めることはできず,その他,被告が本件発信者情報1 (氏名又は名称)を保有していると的確に認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告が本件発信者情報1(氏名又は名称)を保有しているとは 認められない。 この点,原告は,本件サービスを利用してホームページ等を作成するために は,電子メールアドレス等のほかに,氏名又は名称を登録することが必要であ る旨主張する。しかし,本件の具体的事案に即して本件サービスの利用規約の 定めについて具体的に検討しても,本件登録者において,本件発信者情報1を 登録して被告に提供したと認めることができないことは,上記説示のとおりで ある。原告の上記主張は,推測の域を出るものではないというほかなく,採用 することができない
2 争点(2)本件発信者情報は法4条1項の「発信者情報」に当たるか)につい て
(1) 前記1で判示したとおり,本件発信者情報のうち本件発信者情報1(氏 名又は名称)については,被告がこれを保有しているとは認められないから, 本件発信者情報1の開示を求める原告の請求は,争点(2)について判断する までもなく,既に理由がない。 そこで,争点(2)に関しては,本件発信者情報2(電子メールアドレス) の開示を求める原告の請求について判断する。
(2) 法4条1項は,開示請求の対象となる「当該権利の侵害に係る発信者情 報」とは,「氏名,住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であ って総務省令で定めるものをいう。」と規定し,これを受けて省令は,その ような情報の一つとして「発信者の電子メールアドレス」と規定する(省令 3号)ところ,法2条4号は,「発信者」とは,「特定電気通信役務提供者 の用いる特定電気通信設備の記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不 特定の者に送信されるものに限る。)に情報を記録し,又は当該特定電気通 信設備の送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信され るものに限る。)に情報を入力した者をいう。」と規定する。 しかして,法が,2条4号により「発信者」を上記のように文言上明記し た趣旨は,法において,他人の権利を侵害する情報を流通過程に置いた者を 明確に定義することにより,それ以外の者であって当該情報の流通に関与し た者である特定電気通信役務提供者の私法上の責任が制限される場合を明確 にするところにある。そうすると,法4条1項を受けた省令3号の「発信者 の電子メールアドレス」の「発信者」についても,法2条4号の規定文言の とおりに,特定電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記録媒体 (当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る。) に情報を記録し,又は当該特定電気通信設備の送信装置(当該送信装置に入 力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力した本 人に限られると解するのが相当である。
(3) そこで,これを前提に,本件について検討する。 前記のとおり,被告が,本件発信者情報2(本件登録者の電子メールア ドレス)を保有していることから,本件登録者は,本件サイトを開設した 際に,被告に対し,電子メールアドレスを提供したといえるものの,前記 1の説示に照らせば,氏名又は名称の提供をしたものとは認められない。 このように,本件サイトの開設に当たり本人情報として氏名又は名称が 提供されず電子メールアドレス等が提供されているような場合,本件登録 者が,真に本件登録者本人の電子メールアドレスを被告に提供したことに は合理的疑いが残るところである。 この点,証拠(甲11)をみても,本件サービスの利用規約には,本件サ ービスの会員は,本件サービスを利用する際に設定する登録情報に虚偽の情 報を掲載してはならない旨定められている(同利用規約第3条2.)ことが 認められるものの,他方,同利用規約(甲11)の内容を全て精査しても, 登録情報の内容が当該会員本人の情報であることを確認するための方法を定 めた定めはなく,かえって,登録情報に虚偽等がある場合や登録された電子 メールアドレスが機能していないと判断される場合には,被告において,本\n件サービスの利用停止等の措置を講じることができる旨の定めが存する(同 録希望者が他人の情報や架空の情報を登録するおそれのあることがうかがわ れるところである。特に,本件の場合,本件サイトは平成13年頃開設され たものである(甲1)ところ,本件サイトには,原告がその頃以降に創作し たほぼ全てのメールマガジンが原告に無断で転載されている(甲2)ことに 照らせば,本件サイトはそのような違法な行為のために開設されたものであ ることがうかがわれるから,本件登録者が本件サイトを開設する際に他人の 電子メールアドレスや架空の電子メールアドレスを登録した可能性を否定し\n難いといわざるを得ない。 そして,その他,本件登録者が本件サービスを利用して本件サイトを開設 する際に登録した電子メールアドレスが本件登録者本人のものであると認め るに足りる証拠はなく,本件登録者が本件サイトを開設する際に登録した電 子メールアドレスが本件登録者本人のものであると認めることは困難という べきである。 そうすると,被告の保有する電子メールアドレス(本件発信者情報2)は, 法2条4項にいう「特定電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記 録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限 る。)に情報を記録し,又は当該特定電気通信設備の送信装置(当該送信装 置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力 した者」の電子メールアドレスであるとはいえず,ひいては,省令3号の

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令和1(ワ)22576  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年2月12日  東京地方裁判所

 「侵害情報の送信の後に割り当てられたIPアドレスから把握される発信者情報であっても,それが侵害情報の発信者のものと認められるのであれば,法4条1項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」に当たると判断されました。

 被告は,法4条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」とは,侵害情報の 発信者についての情報に限られるとの解釈を前提とした上で,本件発信者情 報は,本件アカウントにログインした者についての情報にすぎず,本件各投 稿を行った本件発信者についての情報ではないので,本件発信者情報は「権 利の侵害に係る発信者情報」に当たらないと主張する。
ア 前記第2の2(2)及び(3)記載のとおり,本件各投稿は,平成31年2月 10日及び15日の2日間に合計7回にわたり投稿されたものであり,原 告が同月1日正午(日本標準時)から仮処分決定が相手方に送達された日 の正午時点までの期間に係るものについて,仮の開示を求める仮処分決定 を得てツイッター社に発信者情報の開示を求めたところ,同社は,その保 有している発信者情報として,同年4月11日から令和元年6月4日まで の間に本件アカウントにログインされた際のIPアドレス及びタイムス タンプ(本件IPアドレス等)を開示している。このことから明らかなよ うに,本件IPアドレス等は,本件各投稿の際に使用されたIPアドレス そのものではない。
イ しかし,法4条1項は,「権利侵害時の発信者情報」あるいは「権利が 侵害された際の発信者情報」など,権利を侵害する行為(本件では本件各 投稿)の際に使用された発信者情報に限定する旨の規定をすることなく, 「権利の侵害に係る発信者情報」と規定しており,「係る」という語は「関 係する」又は「かかわる」との意味を有することに照らすと,法4条1項 の「権利の侵害に係る発信者情報」とは,侵害情報が発信された際に割り 当てられたIPアドレス等から把握される発信者情報に限定されること なく,権利侵害との結びつきがあり,権利侵害者の特定に資する通信から 把握される発信者情報を含むと解するのが相当である。
ウ また,法4条の趣旨は,特定電気通信による情報の流通によって権利の 侵害を受けた者が,情報の発信者のプライバシー,表現の自由,通信の秘 密に配慮した厳格な要件の下で,当該特定電気通信の用に供される特定電\n気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対して発信者情報の開示を 請求することができるものとすることにより,加害者の特定を可能にして被害者の権利の救済を図ることにあると解されるところ(最高裁平成21年(受)第1049号同22年4月8日第一小法廷判決・民集64巻3号676頁),侵害情報そのものの送信時点ではなく,その前後に割り当てられたIPアドレス等から把握される発信者情報であっても,それが当該侵害情報の発信者のものと認められる場合には,当該発信者のプライバシ\nー,通信の秘密等の保護の必要性の程度に比べ,被害者の権利の救済を図 る必要性がより高いというべきである。
エ さらに,本件において,ツイッター社は,個々の投稿に係るIPアドレ ス等のログを保存しておらず,ログインに係る情報についても直近2か月 分程度のログしか保存していないことがうかがわれるが,侵害情報そのも のの送信を媒介した特定電気通信を媒介した者でなければ開示関係役務提 供者に該当しないとすると,権利を侵害されたことは明白であるにもかか わらず,サイト運営者のログイン情報の保存方法・期間等により発信者情 報開示請求の成否が左右され,侵害情報が発信された時点のIPアドレス 等又は侵害情報を投稿するためのログイン時のIPアドレス等が保存され ていない場合には,被害者は権利行使を断念せざるを得なくなる。法4条 が,このような事態,すなわちサイト運営者のログイン情報の保存状況に より被害者の権利救済の可否が左右されることを想定し,これを容認して いたとは考え難い。
オ 以上によれば,侵害情報の送信の後に割り当てられたIPアドレスから 把握される発信者情報であっても,それが侵害情報の発信者のものと認め られるのであれば,法4条1項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」に 当たると解するのが相当である。
(2) 上記(1)の解釈を前提として,本件IPアドレス等によって本件アカウン トにログインした者と,本件各投稿を行った本件発信者が同一と認められる かどうかについて検討する。
ア 証拠(甲19)によれば,ツイッターを利用するためには,氏名,電話 番号又はメールアドレスを登録するとともに,パスワードを設定してアカ ウント登録をすることが必要であり,その上で,作成したアカウントを実 際に利用し,ツイート等の投稿を行うためには,電話番号,メールアドレ ス又はユーザー名に加え,パスワードを入力してアカウントにログインを することが必要であると認められる(前記第2の2(4))。 このように,ツイッターは,利用者がアカウント及びパスワードを入力 することによりログインをしなければ利用できないサービスであること に照らすと,当該アカウントにログインをするのは,そのアカウント使用 者である蓋然性が高いというべきである。
イ また,本件アカウントは,ユーザー名が「B」であり,その投稿内容等 に照らすと,本件各投稿は,特定の個人が継続的に投稿したものであると 認められ(甲1〜6),ツイッター社により開示された本件IPアドレス 等の使用期間(平成31年4月11日から令和元年6月4日まで)におい ても,昼夜を問わず,毎日本件アカウントにログインされており,本件ア カウントが継続的に使用されていたことがうかがわれる(甲8)。そして,本件訴訟提起後である令和元年9月5日及び6日にされた本件 アカウントのツイート(甲20)には,「どれだけ嫌なことがあっても ど れだけ辛いことがあっても …頑張ってこのアカウントを育ててきたの ですが この度 悪質な嫌がらせに合いまして 暫くの間 別アカウン ト…で過ごすことになりました」,「赤子を抱えて身動きが取りづらい状 況を狙って私を潰しに来たのであれば 義理も人情もない方なのでしょ う」,などの投稿がされていることが認められる。これらのツイート内容 等によると,令和元年9月の上記各投稿の投稿者は,特定の個人であり, 原告の行為を非難する旨の本件各投稿をした者と同一であることが推認 される。
ウ 上記アのとおり,ツイッターのアカウントにログインをするのは,その サービスの仕組みに照らし,当該アカウントの使用者である蓋然性が高い ところ,上記イのとおり,本件アカウントは,本件各投稿がされた平成3 1年2月頃から令和元年9月頃の間,特定かつ同一の個人が継続して利用 していたものと認めるのが相当であり,法人が営業用に用いるなど複数名 でアカウントを共有し,又はアカウント使用者がその間に変更されたこと をうかがわせるような事情は存在しない。 そうすると,本件IPアドレスによって本件アカウントにログインした 者と,本件各投稿を行った本件発信者は同一ということができるので,本 件発信者情報は「権利の侵害に係る発信者情報」に当たるというべきであ る。
エ これに対し,被告は,ツイッターの仕組み上,ユーザーがアカウントを 他人と共有することが禁止されていないことや,本件アカウントには,本 件IPアドレス以外のIPアドレスを用いた被告以外の経由プロバイダ を利用したログインが複数回行われていることから,本件アカウントは複 数人で共有されている可能性が高く,本件IPアドレスで本件アカウント にログインした者と本件各投稿をした者が同一であるとはいえないと主\n張する。
しかしながら,ツイッターの仕組み上,アカウントの共有が禁止されて いないとしても,通常は,特定の個人が自分用のアカウントとして継続的 に一つのアカウントを使用することが多く,本件アカウントについても, その投稿内容等に照らし,個人用のアカウントと認められることは,前記 判示のとおりである。
また,被告以外の異なる経由プロバイダを介して本件アカウントにログ インされているとの点についても,個人であっても,例えば携帯電話とパ ソコンのそれぞれについて異なる経由プロバイダと契約することもあり 得るのであるから,そのことから直ちに複数人が本件アカウントを共有し\nている可能性が高いということはできない。 \n

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平成30(受)1412  発信者情報開示請求事件 令和2年7月21日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  知的財産高等裁判所

 アップし忘れましてました。
 発信者情報開示事件です。1審では、リツイートはインラインリンクであるので、著作権侵害、人格権侵害に該当しないと判断され、請求は棄却されました。知財高裁(2部)は、著作者人格権侵害があったとして、一部の発信者情報について開示を認めました。最高裁(第3小)も人格権侵害は認めましたが、著作権侵害は否定しました。

 自動公衆送信の主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ,情報 を自動的に送信できる状態を作り出す行為を行う者と解されるところ(最高裁平成 23年1月18日判決・民集65巻1号121頁参照),本件写真のデータは,流 通情報2(2)のデータのみが送信されていることからすると,その自動公衆送信の 主体は,流通情報2(2)の URL の開設者であって,本件リツイート者らではないと いうべきである。著作権侵害行為の主体が誰であるかは,行為の対象,方法,行為 への関与の内容,程度等の諸般の事情を総合的に考慮して,規範的に解釈すべきで あり,カラオケ法理と呼ばれるものも,その適用の一場面であると解される(最高 裁平成23年1月20日判決・民集65巻1号399頁参照)が,本件において, 本件リツイート者らを自動公衆送信の主体というべき事情は認め難い。控訴人は, 本件アカウント3〜5の管理者は,そのホーム画面を支配している上,ホーム画面 閲覧の社会的経済的利益を得ていると主張するが,そのような事情は,あくまでも 本件アカウント3〜5のホーム画面に関する事情であって,流通情報2(2)のデー タのみが送信されている本件写真について,本件リツイート者らを自動公衆送信の 主体と認めることができる事情とはいえない。また,本件リツイート行為によって, 本件写真の画像が,より広い範囲にユーザーのパソコン等の端末に表\示されること となるが,我が国の著作権法の解釈として,このような受け手の範囲が拡大するこ とをもって,自動公衆送信の主体は,本件リツイート者らであるということはでき ない。さらに,本件リツイート行為が上記の自動公衆送信行為自体を容易にしたと はいい難いから,本件リツイート者らを幇助者と認めることはできず,その他,本 件リツイート者らを幇助者というべき事情は認められない。
(ウ) 控訴人は,自動公衆送信にも放送にも有線放送にも当たらない公衆 送信権侵害も主張するが,前記(ア)のとおり自動公衆送信に当たることからすると, 自動公衆送信以外の公衆送信権侵害が成立するとは認められない。
(3) 複製権侵害(著作権法21条)について
前記(2)イのとおり,著作物である本件写真は,流通情報2(2)のデータのみが送 信されているから,本件リツイート行為により著作物のデータが複製されていると いうことはできない。したがって,複製権侵害との関係でも,控訴人が主張する「 ブラウザ用レンダリングデータ」あるいは HTML データ等を「侵害情報」と捉える ことはできず,「ブラウザ用レンダリングデータ」あるいは HTML データ等が「侵 害情報」であることを前提とする控訴人の複製権侵害に関する主張は,採用するこ とができない。
(4) 公衆伝達権侵害(著作権法23条2項)について
著作権法23条2項は,「著作者は,公衆送信されるその著作物を受信装置を用 いて公に伝達する権利を専有する。」と規定する。 控訴人は,本件リツイート者らをもって,著作物をクライアントコンピュータに 表示させた主体と評価すべきであるから,本件リツイート者らが受信装置であるク\nライアントコンピュータを用いて公に伝達していると主張する。しかし,著作権法 23条2項は,公衆送信された後に公衆送信された著作物を,受信装置を用いて公 に伝達する権利を規定しているものであり,ここでいう受信装置がクライアントコ ンピュータであるとすると,その装置を用いて伝達している主体は,そのコンピュ ータのユーザーであると解され,本件リツイート者らを伝達主体と評価することは できない。控訴人が主張する事情は,本件写真等の公衆送信に関する事情や本件ア カウント3〜5のホーム画面に関する事情であって,この判断を左右するものでは ない。そして,その主体であるクライアントコンピュータのユーザーが公に伝達し ているというべき事情も認め難いから,公衆伝達権の侵害行為自体が認められない。 このように公衆伝達権の侵害行為自体が認められないから,その幇助が認められる 余地もない。
(5) 著作者人格権侵害について
ア 同一性保持権(著作権法20条1項) 侵害
前記(1)のとおり,本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている\n画像は,流通情報2(2)の画像とは異なるものである。この表示されている画像は,\n表示するに際して,本件リツイート行為の結果として送信された HTML プログラム や CSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,上記のとおり 画像が異なっているものであり,流通情報2(2)の画像データ自体に改変が加えら れているものではない。 しかし,表示される画像は,思想又は感情を創作的に表\現したものであって,文 芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものとして,著作権法2条1項1号にいう 著作物ということができるところ,上記のとおり,表示するに際して,HTML プロ グラムや CSS プログラム等により,位置や大きさなどを指定されたために,本件ア カウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3〜5のよ\nうな画像となったものと認められるから,本件リツイート者らによって改変された もので,同一性保持権が侵害されているということができる。 この点について,被控訴人らは,仮に改変されたとしても,その改変の主体は, インターネットユーザーであると主張するが,上記のとおり,本件リツイート行為 の結果として送信された HTML プログラムや CSS プログラム等により位置や大きさ などが指定されたために,改変されたということができるから,改変の主体は本件 リツイート者らであると評価することができるのであって,インターネットユーザ ーを改変の主体と評価することはできない(著作権法47条の8は,電子計算機に おける著作物の利用に伴う複製に関する規定であって,同規定によってこの判断が 左右されることはない。)。また,被控訴人らは,本件アカウント3〜5のタイム ラインにおいて表示されている画像は,流通情報2(1)の画像と同じ画像であるから, 改変を行ったのは,本件アカウント2の保有者であると主張するが,本件アカウン ト3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は,控訴人の著作物である本\n件写真と比較して改変されたものであって,上記のとおり本件リツイート者らによ って改変されたと評価することができるから,本件リツイート者らによって同一性 保持権が侵害されたということができる。さらに,被控訴人らは,著作権法20条 2項4号の「やむを得ない」改変に当たると主張するが,本件リツイート行為は, 本件アカウント2において控訴人に無断で本件写真の画像ファイルを含むツイート が行われたもののリツイート行為であるから,そのような行為に伴う改変が「やむ を得ない」改変に当たると認めることはできない。
イ 氏名表示権(著作権法19条1項)侵害\n
本件アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像には,控訴人\nの氏名は表示されていない。そして,前記(1)のとおり,表示するに際して HTML プ ログラムや CSS プログラム等により,位置や大きさなどが指定されたために,本件 アカウント3〜5のタイムラインにおいて表示されている画像は流通目録3〜5の\nような画像となり,控訴人の氏名が表示されなくなったものと認められるから,控\n訴人は,本件リツイート者らによって,本件リツイート行為により,著作物の公衆 への提供又は提示に際し,著作者名を表示する権利を侵害されたということができ\nる。
ウ 名誉声望保持権(著作権法113条6項)侵害
本件アカウント3〜5において,サンリオのキャラクターやディズニーのキャラ クターとともに本件写真が表示されているからといって,そのことから直ちに,「\n無断利用してもかまわない価値の低い著作物」,「安っぽい著作物」であるかのよ うな誤った印象を与えるということはできず,著作者である控訴人の名誉又は声望 を害する方法で著作物を利用したということはできない。そして,他に,控訴人の 名誉又は声望を害する方法で著作物を利用したものというべき事情は認められない から,本件リツイート者らは,控訴人の名誉声望保持権(著作権法113条6項 )を侵害したとは認められない。
(6) なお,控訴人は,本件アカウント2,4及び5の各保有者が自然人として は同一人物であり,又はこれらの者が共同して公衆送信権を侵害した旨主張するが, そのような事実を認めるに足りる証拠はない。
(7)「侵害情報の流通によって」(プロバイダ責任制限法4条1項1号)及び 「発信者」(同法2条4号)について
前記(5)ア,イのとおり,本件リツイート行為は,控訴人の著作者人格権を侵害す る行為であるところ,前記(5)ア,イ認定の侵害態様に照らすと,この場合には,本 件写真の画像データのみならず,HTML プログラムや CSS プログラム等のデータを 含めて,プロバイダ責任制限法上の「侵害情報」ということができ,本件リツイー ト行為は,その侵害情報の流通によって控訴人の権利を侵害したことが明らかであ る。そして,この場合の「発信者」は,本件リツイート者らであるということがで きる。
(8) 争点(2)について
本件アカウント2の流通情報2(3)及び(4)については,流通情報3〜5と同様に, 流通情報2(2)の画像が改変され,控訴人の氏名が表示されていないということが\nできるから,著作者人格権の侵害があるということができる。しかし,本件アカウ ント1の流通情報1(6)及び(7)については,流通情報1(3)の画像と同じものが表示\nされているから,著作者人格権の侵害があると認めることはできない。これらにつ いて著作権の侵害を認めることができないことは,流通情報3〜5と同様である。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成28(ネ)10101

原審はこちらです。

◆平成27(ワ)17928

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令和1(ワ)19689  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 令和2年2月25日  東京地方裁判所

 著作権侵害について発信者情報開示請求が認められませんでした。

(1) 争点2−1(本件発信者情報1は法4条1項1号の「当該権利の侵害に係 る発信者情報」に該当するか)について
原告は,本件投稿動画が投稿されたことにより原告動画に係る原告の公衆 送信権又は送信可能化権が侵害されたと主張しているところ,本件発信者情\n報1は,本件投稿行為から約1年8か月が経過した,平成31年4月28日 午後0時00分34秒(協定世界時)に本件サイトにログインした者の情報 であり,このログイン時に本件投稿行為が行われたものではないから,法4 条1項1号の「当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当しないことは明ら かである。 この点について,原告は,最終ログイン者が本件投稿動画の投稿者である 可能性が高いと主張するが,同人が,本件投稿動画が投稿された本件サイト\nに,ユーザ名とパスワードを用いてログインした者であるとしても,本件投 稿動画を投稿した者であると直ちに認定することはできず,本件投稿行為か ら同人のログインまで約1年8か月もの期間が経過していることも考慮すれ ば,同人と本件投稿動画を投稿した者が同一人物ではない可能性が相当程度\n残っており,その他,本件全証拠を精査しても,最終ログイン者が本件投稿 動画の投稿者であるとは認め難いというほかない。 また,原告は,仮に最終ログイン者が本件投稿動画を投稿した者ではない としても,投稿した者と密接に関連する者であり,省令が「発信者その他侵 害情報の送信に係る者」の情報も発信者情報に該当することを規定している ことからすれば,本件発信者情報1は開示の対象になると主張する。しかし, 本件において,最終ログイン者と本件投稿動画の投稿者がどのような関係に あるのかを的確に認めるに足る証拠はなく,また,法4条1項1号の「当該 権利の侵害に係る発信者情報」との文言,及び省令の「発信者その他侵害情 報の送信に係る者」という文言からは,その文言内容や規定振りに照らして, 本件投稿行為を行った者以外の者である最終ログイン者の情報が,原告が指 摘するような理由によって直ちに,開示の対象となる発信者情報に当たると いうことはできないというべきである。 以上によれば,原告の主張はいずれも採用することができず,本件発信者 情報1は,法4条1項1号の「当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当し ない。
(2) 争点2−2(本件発信者情報2又は同3は法4条1項1号の「当該権利の 侵害に係る発信者情報」に該当するか)について
前記第2の1の前提事実によれば,本件発信者情報2及び同3は,平成3 1年4月28日午後00時00分34秒(協定世界時・最終ログイン時)に 本件サイトにログインがされた際の割当てに係るIPアドレスを,約1年8 か月前である本件投稿行為が行われた日時頃に割り当てられていた者に関す る情報である。 そして,原告は,このような本件発信者情報2又は同3に関し,本件投稿 行為が行われた日時頃に上記IPアドレスを割り当てられていた者は,本件 投稿行為をした者である可能性が高いものであるから,同人の情報に係る本\n件発信者情報2又は同3は,法4条1項1号の発信者情報に該当する旨主張 する。 しかし,前記(1)で説示したとおり,本件投稿行為から最終ログイン時まで は約1年8か月の期間があることなどを考慮すれば,最終ログイン者が本件 投稿動画の投稿者であると認め難いというほかなく,ひいては,最終ログイ ン時から約1年8か月も前である本件投稿行為が行われた日時頃に,本件サ イトへの最終ログインの際の割当てに係るIPアドレスを割り当てられてい た者が,本件投稿行為を行った者であるとも認め難いというほかない。 以上によれば,原告の主張はいずれも採用することができず,本件発信者 情報2及び同3は,いずれも法4条1項1号の「当該権利の侵害に係る発信 者情報」に該当しない。

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平成30(ワ)32519等  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟 令和元年10月30日  東京地方裁判所

 YouTubeに対する発信者情報開示請求が一部、認められました。なお、利用者の住所(本件発信者情報2−2)については、動画投稿の際に登録が必要となるアカウントとは独立した異なるものであるとして、認められませんでした。

 原告は,被告グーグルが本件発信者情報2−2を保有している旨主張する。 しかしながら,被告グーグルは,原告の上記主張を否認しており,他に被告グー グルが本件発信者情報2−2を保有していることを認めるに足りる的確な証拠はな い。 この点,証拠(甲6,7,乙5〜8)及び弁論の全趣旨によれば,本件サイトへ の動画投稿により広告収入を得ようとする利用者は,支払を受ける住所を登録して Google AdSenseアカウントを開設する必要があり,同アカウントの 中には被告グーグルが管理するものがあるが,同アカウントは,本件サイトへの動 画投稿の際に登録が必要となるアカウントとは独立した異なるものであることが認 められる。そうすると,本件各投稿者が本件各動画の投稿により広告収入を得る目 的でGoogle AdSenseアカウントへの登録をし,その結果,被告グー グルが本件各投稿者に係る支払先住所に係る情報を管理していたとしても,同情報 は,本件各動画の投稿に用いられた各アカウントを登録するために用いられたもの には該当しないから,被告グーグルが本件発信者情報2-2を保有しているというこ とはできない。 よって,原告の主張は採用することができない。

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