2023.04.21
令和4(ネ)10104 発信者情報開示請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和5年4月17日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
発信者情報開示請求事件です。スクリーンショットを添付したツイートについて、原審・知財高裁いずれも、著32条の引用にあたると判断しました。
控訴人は、他のツイートのスクリーンショットを添付してツイート
をした場合には、引用リツイートによる場合とは異なり、引用元に引
用の事実が通知されないため、ツイートを引用された者は自分が知ら
ないところで議論がされてしまい、また、ブロックした人物からツイ
ートを引用されてしまうことがある旨主張する。
しかしながら、ツイッターにおける上記の通知機能は、ユーザーの\n利便性を高めるための付加的な機能にすぎないというべきである。ま\nた、証拠(甲18)及び弁論の全趣旨によれば、ツイッターにおける
ブロック機能は、ブロック対象のアカウントがツイッターにログイン\nした状態においてのみ、ツイートの閲覧を制限するなどの効果をもた
らすものにすぎず、例えば、ブロック対象者がツイッターにログイン
せずに、又はブロックされた者とは異なるアカウントでアクセスした
場合には、ブロックした者が公開しているツイートを閲覧することが
なお可能である。さらに、ツイッターにおいては、投稿されたツイー\nトがインターネット上で広く共有されて批評の対象となることも当然
に予定されており、ツイートを投稿した者も、自らのツイートが批評\nされることや、その過程においてツイートが引用されることを当然に
想定しているものといえる。
以上の事情を考慮すると、他のツイートのスクリーンショットを添
付したツイートがされた場合に上記の通知機能やブロック機能\が働か
なくなるからといって、控訴人の著作者としての権利が、引用リツイ
ートの場合と比較して殊更に害されるものということはできない。そ
うすると、控訴人が指摘する上記の各事情をもって、本件ツイートに
おいて原告ツイートが引用されたことにつき、公正な慣行に合致しな
いものであるということはできない。
◆判決本文
原審はこちら
◆令和4(ワ)14375
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2023.04.21
令和4(ネ)10060 発信者情報開示請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和5年4月13日 知的財産高等裁判所
元ツイートをスクリーンショットで引用するやり方について、原審では著作権侵害と判断されましたが、知財高裁は正当な引用と判断しました。
しかし、そもそも本件規約は本来的にはツイッター社とユーザーとの間の約定であって、その内容が直ちに著作権法上の引用に当たるか否かの判断において検討されるべき公正な慣行の内容となるものではない。また、他のツイートのスクリーンショットを添付してツイートする行為が本件規約違反に当たることも認めるに足りない。
他方で、批評に当たり、その対象とするツイートを示す手段として、引用リツイート機能を利用することはできるが、当該機能\を用いた場合、元のツイートが変更されたり削除されたりすると、当該機能を用いたツイートにおいて表\示される内容にも変更等が生じ、当該批評の趣旨を正しく把握したりその妥当性等を検討したりすることができなくなるおそれがあるのに対し、元のツイートのスクリーンショットを添付してツイートする場合には、そのようなおそれを避けることができるものと解される。そして、弁論の全趣旨によると、現にそのように他のツイートのスクリーンショットを添付してツイートするという行為は、ツイッター上で多数行われているものと認められる。以上の諸点を踏まえると、スクリーンショットの添付という引用の方法も、著作権法32条1項にいう公正な慣行に当たり得るというべきである。
(イ)これに対し、被控訴人は、引用ツイートによるべきことは、ツイッターの利用者において常識である旨を主張するが、当該主張を裏付けるに足りる証拠はない(なお、前記のとおり、本件規約の内容が直ちに著作権法上の引用に当たるか否かの判断において検討されるべき公正な慣行の内容となるものではないことからすると、ツイッターのユーザーにおいて本件規約の前記の定めを認識しているというべきことから直ちに、引用ツイートによるべきことがユーザーの共通の理解として前記公正な慣行の内容となるということもできない。)。また、被控訴人は、スクリーンショットの添付という方法による場合、著作権者の意思にかかわらず著作物が永遠にネット上に残ることとなり、著作権者のコントロールが及ばなくなるという不都合がある旨を主張するが、そのような不都合があることから直ちに上記方法が一律に前記公正な慣行に当たらないとまでみることは、相当でないというべきである。
(ウ)その上で、訂正して引用した原判決の第4の2(1)アで認定判断した原告投稿1の内容、同(2)アで認定した本件投稿1の内容や原告投稿1との関係等によると、本件投稿1は、Yが、本件投稿者1及び本件投稿者1と交流のあるネット関係者間で知られている人物(「A」なる人物)を訴えている者であることを前提として、更に多数の者に関する発信者情報開示請求をしていることを知らせ、このような行動をしているYを紹介して批評する目的で行われたもので、それに当たり、批判に関係する原告投稿1のスクリーンショットが添付されたものであると認める余地があるところ、その添付の態様に照らし、引用をする本文と引用される部分(スクリーンショット)は明確に区分されており、また、その引用の趣旨に照らし、引用された原告投稿1の範囲は、相当な範囲内にあるということができる。また、訂正して引用した原判決の第4の2(1)イ〜エで認定判断した原告投稿2〜4の内容及びその性質並びに同(2)アで認定した本件投稿2〜4の内容や原告投稿2〜4との関係等によると、本件投稿2〜4は、本件投稿者2を含むツイッターのユーザーを高圧的な表現で罵倒する原告投稿2、他のツイッターのユーザーを嘲笑する原告投稿3及び他のツイッターのユーザーを嘲笑する原告投稿4を受けて、これらに対する批評の目的で行われたものと認められ、それに当たり、批評の対象とする原稿投稿2〜4のスクリーンショットが添付されたものであるところ、その添付の態様に照らし、引用をする本文と引用される部分(スクリーンショット)は明確に区別されており、また、それらの引用の趣旨に照らし、引用された原告投稿2〜4の範囲は、それぞれ相当な範囲内にあるということができる。以上の点を考慮すると、本件各投稿における原告各投稿のスクリーンショットの添付は、いずれも著作権法32条1項の引用に当たるか、又は引用に当たる可能\性があり、原告各投稿に係るYの著作権を侵害することが明らかであると認めるに十分とはいえないというべきである。」\n
◆判決本文
原審はこちら
◆令和3(ワ)15819
令和4(ネ)10044も同趣旨です。
◆令和4(ネ)10044
◆判決本文
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2023.04.17
令和4(ワ)2237 発信者情報開示請求事件 著作権 民事訴訟 令和5年3月30日 東京地方裁判所
著作権侵害に基づく発信者情報開示請求が棄却されました。著作権法41条の「時事の報道」に該当するというものです。
1 争点1(著作権法41条の適用の可否)について
(1) 本件投稿1について
ア 証拠(甲2)及び弁論の全趣旨によれば、本件投稿1は、「『まとめサイ
ト』でのインラインリンクに著作権侵害幇助の判決!:プロ写真家・A公式
ブログ…」との表題及び「インラインリンクは著作権の幇助侵害にあたると\nいう判決が出たそうです。」とのコメントと共に、本件写真が投稿されたも
のであり、本件写真は、上記にいう著作権侵害幇助の判決(以下「別件訴訟
判決」という。)において、著作権侵害の成否が問題とされた写真そのもの
であることが認められる。
上記認定事実によれば、本件投稿1は、別件訴訟判決の要旨を伝える目的
で本件写真を掲載しているところ、本件写真は、別件訴訟判決という時事の
事件において正に侵害の有無が争われた写真そのものであり、当該事件の主
題となった著作物であることが認められる。そうすると、本件写真は、著作
権法41条にいう事件を構成する著作物に該当するものといえる。\nそして、上記認定に係る本件写真の利用目的、利用態様、上記事件の主題
性等を踏まえると、本件投稿1において、本件写真は、同条にいう報道の目
的上正当な範囲内において利用されたものと認めるのが相当である。
イ これに対し、原告は、「インラインリンクは著作権の幇助侵害にあたると
いう判決が出たそうです。」との記載は、抽象的に、インラインリンクが著
作権の幇助侵害に当たり得るという規範の問題を伝えるにすぎないもので
あるから、本件投稿1は「報道」に当たらないと主張する。しかしながら、
前記認定事実によれば、本件投稿1は、著作物の利用に関して社会に影響を
与える別件訴訟判決の要旨を伝えるものであって、社会的な意義のある時事
の事件を客観的かつ正確に伝えるものであることからすると、これが「報道」
に当たることは明らかである。したがって、原告の主張は、採用することが
できない。
また、原告は、本件元投稿においては本件写真がすぐに削除されたことや、
規範の問題を伝達するに当たり写真の掲載は不要であることからすれば、本
件投稿1における本件写真の掲載は、著作権法41条に規定する「報道の目
的上正当な範囲内」に含まれないと主張する。しかしながら、上記において
説示したとおり、本件写真は、別件訴訟判決という時事の事件の主題となっ
た著作物であることからすれば、原告主張に係る事情を十分に考慮しても、\n原告の主張は、上記判断を左右するものとはいえない。したがって、原告の
主張は、採用することができない。
ウ 以上によれば、本件投稿1における本件写真の掲載は、著作権法41条に
より適法であるものと認められる。
(2) 本件投稿2について
ア 証拠(甲5)及び弁論の全趣旨によれば、本件投稿2は、「まとめサイト
発信者情報裁判Line上告棄却 敗訴確定ニュース プロ写真家 A公
式ブログ 北海道に恋して」との記載と共に、本件写真が投稿されたもので
あり、本件写真は、上記にいう発信者情報裁判の上告棄却判決(以下「別件
最高裁判決」という。)において、著作権侵害の成否が問題とされた写真そ
のものであることが認められる。
上記認定事実によれば、本件投稿2は、別件最高裁判決の要旨を伝える目
的で本件写真を掲載しているところ、本件写真は、別件最高裁判決という時
事の事件において正に侵害の有無が争われた写真そのものであり、当該事件
の主題となった著作物であることが認められる。そうすると、本件写真は、
著作権法41条にいう事件を構成する著作物に該当するものといえる。\nそして、上記認定に係る本件写真の利用目的、利用態様、上記事件の主題
性等を踏まえると、本件投稿2において、本件写真は、同条にいう報道の目
的上正当な範囲内において利用されたものと認めるのが相当である。
イ これに対し、原告は、本件投稿2は、悪質なスパムブログにユーザーを誘
導するために本件写真を利用するものであるから、「報道」に当たる余地は
ないと主張する。しかしながら、証拠(甲14、15)及び弁論の全趣旨に
よっても、Bloggerがスパムブログに悪用され得ることや、広告収入
を得る目的等でスパムブログが存在することなどが一般的に認められるこ
とが立証され得るにとどまり、本件投稿2自体が悪質なスパムブログにユー
ザーを現に誘導している事実を具体的に認めるに足りないものといえる。そ
の他に、上記 イにおいて説示したところと同様に、上記認定に係る本件写
真の利用目的、利用態様のほか、本件写真が、著作物の利用に関して社会に
影響を与える別件最高裁判決という時事の事件の主題となった著作物であ
ることを踏まえると、原告主張に係る事情を十分に考慮しても、原告の主張\nは、上記判断を左右するものとはいえない。
したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。
ウ 以上によれば、本件投稿2における本件写真の掲載は、著作権法41条に
より適法であるものと認められる。
◆判決本文
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2023.04.11
令和4(ワ)15136 発信者情報開示請求事件 著作権 民事訴訟 令和5年2月28日 東京地方裁判所
発信者情報開示事件です。原告がインスタグラムに限定公開した動画が、投稿者により公開されてしまい、発信者情報の開示を求めました。原告の動画は、「原告の夫である歯医者」が麻酔待ちの間にご近所に菓子折り渡しに走ってるというものでした。被告であるGoogleは、医療現場の実態を報道するもので、著41条に該当すると反論しましたが、認められませんでした。
被告は、本件投稿画像につき、医療関係者の男性が患者の麻酔中に当該患者
の下を離れて外出している様子を収めたものであり、その様子を投稿すること
は、医療現場の実態や、医療事故につながりかねない様子を捉えたものとして
ニュース性があるから、「時事の事件」を構成するものである旨主張する。\nしかしながら、前記前提事実、証拠(甲6及び10)及び弁論の全趣旨によ
れば、本件投稿画像は、ある男性が住宅地の道路上を走っている画像に、「麻
酔待ちの間にご近所に菓子折り渡しに走ってる。田舎過ぎて。笑」というテロ
ップが付されるにとどまり、いつの出来事であるかどうか一切明らかではなく、
しかも、本件投稿画像は、Googleマップという地図アプリにおいて、本
件歯科医院の上にカーソルを動かし、クリックした場合に表\示されるものにす
ぎないものであることが認められる。
上記認定事実によれば、本件投稿画像で表示された出来事は、これが生じた\n時期すら明らかではなく、地図アプリにおいて本件歯科医院の上にカーソルを\n動かし、クリックした場合に限り表示されるにすぎないことが認められる。\nそうすると、本件投稿画像の出来事は、著作権法41条にいう「時事の事件」
とはいえず、その投稿も、上記認定に係る表示態様に照らし、同条にいう「報\n道」というに足りないものと認めるが相当である。
これに対し、被告は、本件投稿画像で表示された出来事が医療現場の実態や、\n医療事故につながりかねない様子をとらえたものである旨主張するものの、一
般の利用者の普通の注意と読み方とを基準として判断すれば、「麻酔待ちの間
にご近所に菓子折り渡しに走ってる。田舎過ぎて。笑」というテロップの内容
及び上記認定に係る本件投稿画像の内容を踏まえると、本件投稿画像は、医療
現場の実態や、医療事故につながりかねない様子であると理解されるものと認
めることはできず、上記各内容に照らしても、被告が主張するようなニュース
性を認めることもできない。したがって、被告の主張は、その前提を欠くもの
であり、いずれも採用することができない。
◆判決本文
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2023.03.31
令和4(ネ)10092 発信者情報開示請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和5年3月23日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
発信者情報開示請求について、改正法が適用されて、原審の判断が取り消されました。
なお、本件は回答者から控訴人に連絡があり、投稿者と本件ログインをした者が同一であるのは明らかという特殊事情がありました。
1 事案に鑑み、争点2(本件発信者情報が「当該権利の侵害に係る発信者情報」
(プロバイダ責任制限法4条1項)又は「特定発信者情報」(改正法5条1項柱
書)に該当するか)から判断する。
(1) 改正法5条が発信者情報の開示請求を規定している趣旨は、特定電気通信
(改正法2条1号)による侵害情報の流通は、これにより他人の権利の侵害
が容易に行われ、ひとたび侵害があれば際限なく被害が拡大する一方、匿名
で情報の発信が行われた場合には加害者の特定すらできず被害回復も困難と
なるという、他の情報の流通手段とは異なる特徴があることを踏まえ、侵害
を受けた者が、情報の発信者のプライバシー、表現の自由及び通信の秘密に\n配慮した厳格な要件の下で、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信
設備を用いる特定電気通信役務提供者に対して発信者情報の開示を請求する
ことができるものとすることにより、加害者の特定を可能にして被害者の権\n利の救済を図ることにあると解される。
そして、改正法5条1項柱書は、権利の侵害に係る発信者情報のうち、特
定発信者情報(発信者情報であって専ら侵害関連通信に係るものとして総務
省令で定めるもの)も開示の対象とし、同条3項は、「「侵害関連通信」とは、
侵害情報の発信者が当該侵害情報の送信に係る特定電気通信役務を利用し、
又はその利用を終了するために行った当該特定電気通信役務に係る識別符
号・・・その他の符号の電気通信による送信であって、当該侵害情報の発信
者を特定するために必要な範囲内であるものとして総務省令で定めるものを
いう。」と規定し、同項の委任を受けた改正規則は、「法第5条第3項の総務
省令で定める識別符号その他の符号の電気通信による送信は、次に掲げる識
別符号その他の符号の電気通信による送信であって、それぞれ同項に規定す
る侵害情報の送信と相当の関連性を有するもの」(5条柱書)とした上で、同
条2号で「あらかじめ定められた当該特定電気通信役務を利用し得る状態に
するための手順に従って行った・・・識別符号その他の符号の電気通信によ
る送信」(改正規則5条2号)と規定する。その趣旨は、法4条1項に規定さ
れた「当該権利の侵害に係る発信者情報」は、侵害情報の送信についての発
信者情報に限られると解するのが文理に忠実であったが、海外法人が運営す
るSNSなどについては、侵害情報の送信について特定電気通信役務提供者
が通信記録を保有しない場合があることから、ログイン情報の送信について
の発信者情報を開示の対象として明記することで、救済の実効性を確保する
一方、ログイン情報の送信は、侵害情報の送信そのものではなく、侵害情報
の発信者以外のログイン情報が開示される可能性があり、また、開示を可能\
とする情報を無限定とすれば、発信者のプライバシーや表現の自由及び通信\nの秘密が侵害されるおそれがあることから、ログイン情報の発信者情報の開
示を、侵害情報の発信者を特定するために必要最小限な範囲であるもの、す
なわち当該権利侵害と相当の関連性を有するものに限定したものと解される。
そして、改正規則案5条1項では、発信者情報の開示が認められるログイ
ン情報の送信については、侵害情報の送信より前で(2号)、侵害情報の送信
の直近に行われたものとする(柱書)旨規定されていたのに対し、改正規則
5条1項柱書が侵害情報の送信との「相当の関連性」を有するものとして、
幅のある文言としていることからすれば、「相当の関連性」の有無は、当該ロ
グイン情報に係る送信と当該侵害情報に係る送信とが同一の発信者によるも
のである高度の蓋然性があることを前提として、開示請求を受けた特定電気
通信役務提供者が保有する通信記録の保存状況を踏まえ、侵害情報に係る送
信と保存されているログイン情報との時間的近接性の程度等の諸事情を総合
勘案して判断されるべきであり、侵害情報の送信とログイン情報の送信との
間に時間的に一定の間隔があることや、ログイン情報の送信が侵害情報の送
信の直近になされたものではないことをもって、直ちに関連性が否定される
ものではないというべきである。
(2) これを前提として本件についてみると、本件IPアドレス等に係る情報の
ログイン日時(令和4年2月10日)と、本件ツイートが投稿された時点(令
和3年10月10日)との間には一定の間隔があることは明らかであるが、
本件のような事案において、控訴人が開示可能なより間近な時点でのIPア\nドレス等に係る情報が存在するかについては、控訴人本人において判断する
ことは困難であるところ、原審において被控訴人や原審裁判所からこの点に
関する指摘があったことをうかがわせる事情も見当たらないことに照らせば、
本件においてこの点を重視することは相当でない。
他方、本件においては、前記第2の2(4)のとおり、被控訴人の意見照会に
対し、本件ログインに係る回線契約者とは別人であるとしつつも、回答者が、
本件ツイートをしたことを認めた上で、本件ツイートが控訴人の著作権や著
作者人格権を侵害するものであることを否定する回答をしているし(甲11)、
本件IPアドレス等に係る情報のログイン日時(令和4年2月10日)の後
の日である令和4年3月には、本件アカウントが削除された上に、同月23
日には、「タピオカちゃんを動かして」いたとする者が、ツイッター内のダイ
レクトメッセージ(以下「本件メッセージ」という。)で控訴人に連絡をとり、
本件ツイートをしたことを前提として謝罪をしている(甲14)ことが認め
られるのであるから、本件投稿者と本件ログインをした者が同一であること
は明らかであるという事情がある。なお、本件回答書にいうように、本件投
稿者が本件ログインに係る回線契約者と別人であるとしても、本件投稿でも
【代/行】と記載され(甲2)、本件メッセージでも本件ツイートは「代行」
したものであることを前提としており、情報の送信は本件ログインに係る回
線契約者によってされたものと認められるから、本件ツイートや、本件ログ
イン自体は、本件ログインに係る回線契約者によってされたものというべき
である。
これらの本件特有の事情を総合勘案するとともに、本件事案のこれまでの
経緯に鑑みれば、本件ログインの通信は、本件ツイートと相当の関連性を有
し、侵害関連通信(改正法5条3項)に当たるものと解するのが相当である。
◆判決本文
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2023.03.24
令和4(ネ)10100 発信者情報開示請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和5年3月9日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
1審は、発信者情報開示を認めませんでしたが、知財高裁は、法4条1項にいう「当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当すると判断しました。
前記第1のとおり、控訴人は、本件ログインがされた日時である令和3年
6月26日7時47分54秒(時刻の表記は、24時間制による。以下同じ。また、\n令和3年中の日付については、以下、年の記載を省略する。)頃に被控訴人から本
件IPアドレス(省略)が割り当てられていた契約者に係る発信者情報(本件発信
者情報)の開示を求めているところ、前記前提事実(補正して引用する原判決第2
の1(2))のとおり、本件ツイートが投稿されたのは、同月20日20時39分で
あるから、本件ツイートは、上記のとおり控訴人が発信者情報の開示を求める本件
ログインがされた時期にされたものではなく、本件発信者情報は、本件ツイートの
投稿時に利用されたログインに係る発信者情報ではない。そこで、侵害情報である
本件ツイートの投稿時に利用されたログイン以外のログインに係るIPアドレスか
ら把握される発信者情報が法4条1項にいう「当該権利の侵害に係る発信者情報」
に該当するかが問題となる。
(2) そこで検討するに、法4条の趣旨は、特定電気通信(法2条1号)による
情報の流通には、これにより他人の権利の侵害が容易に行われ、その高度の伝ぱ性
ゆえに被害が際限なく拡大し、匿名で情報の発信がされた場合には加害者の特定す
らできず被害回復も困難になるという、他の情報流通手段とは異なる特徴があるこ
とを踏まえ、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害を受けた者が、情
報の発信者のプライバシー、表現の自由、通信の秘密に配慮した厳格な要件の下で、\n当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供
者に対して発信者情報の開示を請求することができるものとすることにより、加害
者の特定を可能にして被害者の権利の救済を図ることにあると解される(最高裁平\n成21年(受)第1049号同22年4月8日第一小法廷判決・民集64巻3号6
76頁参照)。そうすると、「当該権利の侵害に係る発信者情報」の範囲をむやみ
に拡大することは相当とはいえないものの、これを侵害情報の投稿時に利用された
ログインに係るIPアドレスから把握される発信者情報に限定するとなると、複数
のログインが同時にされているなどして投稿時に利用されたログインが特定できな
い場合などには、被害者の権利の救済を図ることができないこととなり、上記の法
の趣旨に反する結果となる。そして、法4条1項の文言は、「侵害情報の発信者情
報」などではなく、「当該権利の侵害に係る発信者情報」とやや幅をもたせたもの
とされていること、証拠(甲33、38)及び弁論の全趣旨によると、令和3年法
律第27号(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示
に関する法律の一部を改正する法律)による改正は、法4条1項の「当該権利の侵
害に係る発信者情報」に侵害情報を送信した後に割り当てられたIPアドレスから
把握される発信者情報が含まれ得ることを前提として行われたものと認められ、上
記の改正の前後を通じ、「当該権利の侵害に係る発信者情報」は、侵害情報を送信
した際のログインに係る発信者情報のみに限定されるものではないと解されること、
また、このように解したとしても、当該発信者が侵害情報を流通させた者と同一人
物であると認められるのであれば、発信者情報の開示により、侵害情報を流通させ
た者の発信者情報が開示されることになるのであるから、開示請求者にとって開示
を受ける理由があるということができる一方、発信者にとって不当であるとはいえ
ないことなどに照らすと、「当該権利の侵害に係る発信者情報」を侵害情報の投稿
時に利用されたログインに係るIPアドレスから把握される発信者情報に限定して
解釈するのは相当でなく、それが当該侵害情報を送信した者の発信者情報であると
認められる限り、当該侵害情報を送信した後のログインに係るIPアドレスから把
握される発信者情報や、当該侵害情報の送信の直前のログインよりも前のログイン
に係るIPアドレスから把握される発信者情報も、法4条1項の「当該権利の侵害
に係る発信者情報」に該当すると解するのが相当である。
(3) これを本件についてみるに、本件アカウントのプロフィール欄(アカウン
ト名の下部に表示される自己紹介の文章部分。甲11)には、「感謝するぜ、お前\nと出会えたこれまでの全てに」、「俺の手持ち」、「誕生日:1月8日」などの記
載があり、また、本件アカウントにおいてされた投稿(甲11)の内容は、単にY
ouTubeの動画を引用するもののほか、「泣いてる」、「俺のグラグラの能力\nが発現してモーター」、「愛知県に地震きた」、「エドモンド本田美央」、「エド
モンド本田たのし〜」、「スーパー頭突きじゃあ!!笑笑」、「ガチンコでごわ
す!!笑笑」、「本田やばい」、「アイシールド21は神龍寺戦までね」、「やま
ゆり園真実の名言集 ライフラインはいるだけで士気が下がる」、「これ使うなら
5cで良くね?」などといったものであり、上記プロフィール欄の記載内容や上記
投稿内容に照らすと、本件アカウントが複数の者によって管理されていたことはう
かがわれず、むしろ、本件アカウントは、1名の個人によって管理されていたもの
と推認するのが相当である。また、証拠(甲23、33)及び弁論の全趣旨による
と、ツイッターは、いわゆるログイン型サービスであり、ツイートの投稿を行おう
とする者は、アカウント名及びパスワード(8文字以上)を入力してログインをし
なければならないものと認められるところ、通常、アカウント名やパスワードを第
三者と共有するという事態は余り考えられない。さらに、証拠(甲5、26、27、
35)及び弁論の全趣旨によると、本件アカウントについては、6月26日から9
月21日までの間、合計467回のログインがされているところ、そのうち本件I
Pアドレスからは、毎日のようにログインがされており、ログインの回数(合計1
47回)においても、他の各IPアドレスからのログインの回数(例えば、被控訴
人が携帯電話回線に割り当てた各IPアドレスのうち本件アカウントへのログイン
に使用された回数が最も多かったのは、「IPアドレス省略」及び「IPアドレス
省略」の各10回にとどまる。)を圧倒していたものと認められるから、本件IP
アドレスは、本件アカウントへのログインに使用される最も主要なIPアドレスで
あったと評価することができる。以上に加え、本件ログインが本件ツイートの投稿
の約5日半後にされたものであることも併せ考慮すると、本件発信者情報は、本件
ツイートの投稿の後のログインに係るIPアドレスから把握される発信者情報では
あるが、本件ツイートを投稿した本件発信者の発信者情報であると認められ、した
がって、法4条1項にいう「当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当すると認め
るのが相当である。
(4)ア この点に関し、被控訴人は、本件IPアドレスは固定回線に割り当てら
れたものであるのに対し、本件ツイートはiPhoneにより投稿されたものであ
るところ、本件アカウントへのログインに際しては固定回線に割り当てられたIP
アドレスと携帯電話回線に割り当てられたIPアドレスとが別々に使用されている
から、本件IPアドレスに係る契約者と本件ツイートの投稿の際に使用されたIP
アドレスに係る契約者とは異なると主張する。
確かに、証拠(甲1、27、36)及び弁論の全趣旨によると、本件IPアドレ
スは、固定回線に割り当てられたものであるのに対し、本件ツイートには、「Tw
itter for iPhone」との表示がされ、本件ツイートは、iPho\nne向けのアプリケーションである「Twitter for iOS」を利用し
てされたものであると認められる。しかしながら、証拠(甲36)及び弁論の全趣
旨によると、携帯電話を用いてツイッターのアカウントにツイートを投稿する場合、
当該携帯電話が5G回線等の携帯電話回線に接続されているとき又は固定回線を利
用した自宅等のWi−Fiに接続されているときのいずれであっても、当該ツイー
トには「Twitter for iPhone」との表示がされるものと認めら\nれるから、本件IPアドレスが固定回線に割り当てられたものであるのに対し、本
件ツイートに「Twitter for iPhone」との表示がされていると\nの事実は、本件IPアドレスから把握される発信者情報(本件発信者情報)が本件
ツイートを投稿した本件発信者の発信者情報であると認められるとの前記結論を左
右するものではない。
なお、証拠(甲28、29)及び弁論の全趣旨によると、携帯電話を用いてイン
ターネットに接続する場合、携帯電話回線を利用するときには携帯電話回線に割り
当てられたIPアドレスが使用され、自宅等におけるWi−Fi接続によるときに
は固定回線に割り当てられたIPアドレスが使用されるものと認められるから、証
拠(甲5、26、35)によって認められる本件アカウントへのログインの状況に
よっても、本件アカウントへのログインに関し、固定回線に割り当てられたIPア
ドレス(本件IPアドレス)と携帯電話回線に割り当てられたIPアドレス(「省
略」等)とが別人によって使用されていたものと認めることはできない。
◆判決本文
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2023.02.17
令和4(ワ)10443 発信者情報開示請求事件 著作権 民事訴訟 令和5年1月12日 東京地方裁判所
P-Pソフト「BitTorrent」をインストールしたコンピュータの発信者情報開示請求事件です。裁判所は、本件発信者によるHandshakeに係る情報は、\n「特定電気通信」に該当すると、開示を認めました。
ア 本件調査会社は、原告から指定されたコンテンツの品番を含むファイルを
トラッカーサイトで検索し、著作権侵害が疑われるファイルのハッシュ値
(データ〔ファイル〕を特定の関数で計算して得られる値のこと。ファイル
からハッシュ値は一意に定まるので、ファイルの同一性確認のために用いら
れる。)を取得し、本件検知システムに登録した。
イ 本件検知システムは、上記経緯により同システムの監視対象となった上記
ファイルのハッシュ値について、BitTorrentネットワーク上で監
視を行った。具体的には、本件検知システムは、トラッカーサーバーに対し、
上記ファイル(全部又は一部をいう。以下1において同じ。)のダウンロー
ドを要求し、当該ファイルをダウンロードできる(所持している)ピアのI
Pアドレス、ポート番号等のリストをトラッカーサーバーから受け取って、
本件検知システムのデータベースに記録した(別紙動画目録記載の「IPア
ドレス」及び「ポート番号」欄は、当該IPアドレス及びポート番号である。)。
そして、本件検知システムは、上記リストを受け取った後、同リストに載
っていたユーザーに接続をして、同ユーザーが応答することの確認(Han
dshake)を行っており、別紙動画目録記載の「発信時刻」欄の日時は、
当該Handshake完了時のものである。
もっとも、本件検知システムは、上記Handshakeの時点において、
上記ユーザーが保有している上記ファイルを実際にダウンロードしていな
いものの、上記時点において上記ユーザーから返信された上記ファイルのハ
ッシュ値によって、実際に上記ユーザーが上記ファイルを所持していること
の確認を行っている。そのため、本件検知システムは、上記時点において直
ちに上記ユーザーから上記ファイルのダウンロードができる状態にあった
ことになる。
ウ なお、BitTorrentにおいて、ファイルをダウンロードするよう
になったユーザーは、BitTorrentクライアントソフトを停止させ\nるまで、トラッカーサーバーに対し、当該ファイルが送信可能であることを\n継続的に通知し、他のユーザーからの要求があれば、当該ファイルを送信し
得る状態になっている。
(2) 権利侵害の明白性
前記前提事実記載のBitTorrentの仕組み及び上記認定事実記載
の本件検知システムの仕組み等によれば、本件発信者は、本件動画をその端末
にダウンロードして、本件動画を不特定多数の者からの求めに応じ自動的に送
信し得るようにした上、別紙動画目録記載のIPアドレス及びポート番号の割
当てを受けてインターネットに接続し、Handshakeの時点である別紙
動画目録記載の「発信時刻」欄記載の日時において、不特定の者に対し、Bi
tTorrentのネットワークを介して本件動画に係る送信可能化権が侵\n害されその状態が継続していることを通知したものと認めるのが相当である。
そして、当事者双方提出に係る証拠及び弁論の全趣旨によっても、侵害行為の
違法性を阻却する事由が存在することをうかがわせる事情を認めることはで
きない。
これらの事情を踏まえると、本件発信者は、Handshakeの時点にお
いて、不特定の者に対し、BitTorrentのネットワークを介して本件
動画に係る送信可能化権が侵害されその状態が継続していることを通知して\nいるのであるから、本件発信者によるHandshakeに係る情報は、プロ
バイダ責任制限法5条1項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」に該当する
ものと解するのが相当である。また、本件発信者によるHandshakeに
係る情報は、上記のとおり、不特定の者において、本件動画に係る送信可能化\n権が侵害されその状態が継続していることを確認する上で、必要な電気通信の
送信であるといえるから、「特定電気通信」にも該当するものと解するのが相
当である。
(3) 被告の主張
ア 被告は、Handshakeは応答確認にすぎず、本件動画のアップロー
ド又はダウンロードではないから、Handshakeに係る情報は、送信
可能化権の侵害に係る発信者情報には当たらないと主張する。しかしながら、\n本件発信者が、Handshakeの時点において、不特定の者に対し、本
件動画に係る送信可能化権が侵害されその状態が継続していることを通知\nしていることは、上記において説示したとおりであり、当該事実関係を前提
とすれば、Handshakeに係る情報が「権利の侵害に係る発信者情報」
に該当するものと認めるのが相当である。したがって、被告の主張は、採用
することができない。
また、被告は、本件発信者は、Handshake時までに、本件動画の
ファイルのピースさえ保有していない可能性があると主張する。しかしなが\nら、前記認定事実によれば、確かに、本件検知システムは、Handsha
keの時点において、ユーザーが保有しているファイルを実際にダウンロー
ドしていないものの、本件検知システムは、上記時点において上記ユーザー
から返信された上記ファイルのハッシュ値によって、実際に上記ユーザーが
上記ファイルを所持していることの確認を行っていることが認められる。そ
うすると、本件発信者は、Handshakeの時点までに、少なくとも当
該ファイルのピースを所持しているものと推認するのが相当であり、これを
覆すに足りる証拠はない。したがって、被告の主張は採用することができな
い。
イ その他に、被告提出に係る準備書面を改めて検討しても、上記認定に係る
本件検知システムの仕組み等を踏まえると、被告の主張は、上記判断を左右
するに至らない。したがって、被告の主張は、いずれも採用することができ
ない。
(4) 弁論の全趣旨によれば、原告は、本件発信者に対し、損害賠償請求を予定し\nていることが認められることからすると、原告には本件発信者情報の開示を受
けるべき正当な理由があるものといえる。
(5) したがって、原告は、被告に対し、プロバイダ責任制限法5条1項に基づき、
本件発信者情報の開示を求めることができる。
◆判決本文
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2023.01. 6
令和4(ネ)10083 発信者情報開示請求控訴事件 著作権 民事訴訟 令和4年12月26日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
本文、ユーザー名のほかアイコンまでをリツートした行為について、引用と認められると判断されました。
ア 控訴人は、他のツイートのスクリーンショットを添付してツイートする行為が利用規約に反することは明らかであり、それゆえ利用規約に基づいて本件ツイートによる公衆送信権侵害等について適法となることはないなどと主張する。
しかし、控訴人の上記主張は、利用規約の内容によって直ちに著作権法32条1項にいう公正な慣行の内容が規定されることを前提にするものであって、相当でない。この点、控訴人は、利用規約が遵守されることがツイッターの全ユーザー間の共通認識となっているとも主張するが、当該主張も、結局は利用規約の内容によって直ちに著作権法32条1項にいう公正な慣行の内容が規定されることをいうものに帰し、訂正して引用した原判決の第4の2(2)の認定判断を左右するものではない。特に、本件ツイート及びそこにおける原告ツイートの引用が批評という表現行為に係るものであることに照らしても、利用規約によってその態様ゆえにその引用としての適法性が直ちに左右されるとみることはできない。\n
イ 控訴人は、ユーザーにおいては、ツイートを削除していなくともプロフィール画像を変更すれば過去のツイートについても変更後のプロフィール画像が表示されること等を前提としてツイッターを利用していることや、プロフィール画像がツイート本文の内容とは独立して自身の個性を表\現するものであるなどと主張する。しかし、訂正して引用した原判決の第4の2(3)で説示したとおり、ユーザーは、自らのツイートの内容が当該ツイートをした時点におけるアイコンと一体的に表現主体及び表\現内容を示すものとして取り扱われ得ることについても、相応の範囲で受忍すべきものであり、控訴人の上記主張も、訂正して引用した原判決の第4の2(2)の認定判断を左右するものではない。
ウ 控訴人は、本文やユーザー名のほかアイコンまで掲載する必要があるのかには疑問があり、また、現在もツイッター上で閲覧可能な原告ツイートについて、これをあえてスクリーンショットで掲載する必要はないなどと主張する。\nしかし、控訴人においては原告アイコンが原告ツイートの内容と一体的に取り扱われ得ることを相応の範囲で受忍すべきことは既に説示したとおりであり、また、原告ツイートが現在も閲覧可能であるとしても、仮に本件投稿者が引用リツイート機能\を用いていた場合には、原告ツイートを削除等するという専ら控訴人の意思に係る行為によって引用に係る原告ツイートが削除等され、本件ツイートの趣旨等が不明確となるような事態が生じ得ることに照らして、原告ツイートが現在も閲覧可能であるか否かは、本件ツイートにおける引用の適否に直ちに影響すべきものではない。この点、原告ツイートが投稿されてから本件ツイートが投稿されるまでには約7年半という相応の長期間が経過しているところ、原告ツイートが現在も閲覧可能\であり(甲20)、その間に特に控訴人がプロフィール画像を変更したといったことも認められないものであるが、一般的に、引用元ツイートが投稿後変更されることなく相応の長期間が経過した後であっても、引用リツイートの投稿を契機として引用元のツイートが変更や削除等されたりする可能性もあるから、上記相応の長期間の経過をもって直ちに本件ツイートにおける引用の必要性や相当性が否定されるものではなく、また、閲覧可能\性や画像の変更の有無に係る上記各事情は、他方で、原告ツイートの投稿時から本件ツイートの投稿時までの間に、原告において原告アイコンを含む原告ツイートの変更や削除等をしなければならないような事情が他には生じておらず、本件ツイートにおける引用の必要性や相当性を判断するに当たり他に考慮すべき特段の事情がないことをうかがわせるものである。
◆判決本文
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