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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

コンピュータ関連発明

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

令和5(行ケ)10148  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和6年9月12日  知的財産高等裁判所

CS関連発明について、動機付け無しとした審決が維持されました。

上記アないしウによれば、甲2ないし甲4には、構成要件(D)の「前\n記注文情報における、前記団体情報を特定する情報に基づいて前記注文者 の団体を特定して、複数の前記注文情報の中から前記注文者の団体が同一 の前記注文情報を抽出」することや、「抽出された前記注文情報に基づいて、 同じ団体の注文からなる注文リストを、当該団体の担当者が閲覧できる形 式で出力する」ことについて記載されているということはできず、甲3に は、構成要件(E)の「前記注文リスト出力手段は、前記注文リストとし\nて、各注文について前記注文商品及び注文者を表示するリストを出力する」\nことも記載されていない。
そうすると、甲1発明に甲2ないし甲4に記載された事項を適用したと しても(原告の主張は、甲2ないし甲4に記載の事項をそれぞれ副引用例 として甲1発明に組み合わせるとするものなのか、それとも周知技術を記 載したものとするのかについて明確ではないが、いずれにしろ甲2ないし 甲4には構成要件(D)及び(E)に関する記載がなく、これを甲1に組\nみ合わせても本件発明1には至らないから、結論を左右しない。)本件発明 1に到達することはできないから、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(3) 甲1発明との組み合わせの動機付けについて
甲1には、前記2(1)のとおり、甲1のシステムを介して、販売側(販売店、 メーカー、物流会社、金融機関)が顧客から商品の注文を受注し、注文され た商品を顧客へ配達し、決済するという取引形態の説明がされ、それにより、 発注、受注、物流及び入金管理を一括処理して販売店の業務負担を軽減する という目的を達成することが記載されている。また、実施例についても、前 記2(2)のとおり、顧客(学校)からの注文の方法に応じた、販売店の業務管 理についての記載がある。このような甲1の記載内容によれば、甲1には、 販売側と顧客という二者間の関係についての記載しかなく、学校と学生のよ うな、顧客が帰属する組織内の属性(階層関係)については想定されておら ず、そのような属性に合わせた情報処理を行うことについては記載も示唆も されていない。また、仮に甲2や甲4にみられるような、複数の顧客を共通 する属性別にリスト化する処理が周知技術であったとしても、前記第2(1)の とおり、甲1発明の目的は、販売店の業務負担を軽減するところにあるから、 そのようなリスト化を行い、それを学校の担当者が閲覧できる形式で出力するようにするのは、甲1発明の上記目的とは相容れないから、そうした動機 付けはない。
また、甲1に記載された具体的な実施形態に即して検討すると、顧客(学 校)は、学校名、住所、商品名、商品番号、注文個数を入力した後、学生の 氏名、身長、胸囲、胴囲等を個別に入力する手順で注文を行うことから(図 3及び段落【0028】)、学生の個別注文情報は学校により既に集約されて おり、学校別に抽出された注文情報は既得のものである。そうすると、販売 店の業務負担軽減を目的とする甲1発明において、学校側が個別注文情報を 集約して注文することに代えて、販売側が学生から個別に注文を受けて集約 し、学校別に抽出された注文情報を学校の担当者に閲覧可能な形式で出力す\nるように変更することは、甲1発明の上記目的に反し、そのような動機付け はない。

◆判決本文

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令和2(ワ)13317  特許権侵害損害賠償等請求事件  特許権  民事訴訟 令和5年7月13日  東京地方裁判所

個人発明家がアップルを訴えた事件です。下記別訴の後の販売分に製品に関する不当利得返還請求事件です。製品の一部に関する特許ですが、東京地裁は実施料として「0.5%をくだらない」として、約4400万円の支払いを命じました。関連訴訟と同じ特許ですが、被告は104条の3の主張をして、有効性を争っています。

特許法102条3項は、特許権侵害の際に特許権者又は専用実施権者(以 下「特許権者等」という。)が請求し得る最低限度の損害額を法定した規定 であって、同項による損害は、原則として、侵害品の売上高を基準とし、そ こに、実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。そして、特許 法102条4項は、上記料率を認定するに当たって、特許権者等が当該特許 権又は専用実施権(以下「特許権等」という。)の侵害があったことを前提 としてこれを侵害した者との間で合意をするとしたならば、特許権者等が得 ることとなるその対価を考慮することができる旨規定している。 したがって、実施に対し受けるべき料率は、1)当該特許発明の実際の実施 許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実 施料の相場等も考慮に入れつつ、2)当該特許発明自体の価値すなわち特許発 明の技術内容や重要性、他のものによる代替可能性、3)当該特許発明を当該 製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、4)特許権者と侵 害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を踏まえ、特 許権者等が当該特許権等の侵害があったことを前提としてこれを侵害した者 との間で合意をするとしたならば、特許権者等が得ることとなるその対価を 考慮して、合理的な料率を定めるべきである。
なお、被告は、本件各発明は被告各製品を構成する部品の一つであるクリ\nックホイールに関するものにすぎないから、実施料率を乗ずる売上高は、被 告各製品ではなく、クリックホイールの売上高とすべきである旨主張するも のの、その原価が証拠上必ずしも明らかではない上、本件各発明が被告各製 品を構成する部品の一つであるという事情は、上記において説示した判断基\n準のとおり、本件各発明を被告各製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢 献という上記3)に係る考慮事情において、これを十分に斟酌するのが相当で\nある。 したがって、被告の主張は、採用することができない。
(2) 当てはめ
前記認定事実、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、上記1)ないし4) に係る考慮事情として、次の事実を認めることができる。
ア 業界における実施料の相場
証拠(甲35、36)によれば、「ラジオ・テレビ・その他の通信音響 機器」に含まれる「電気音響機械器具」の平成4年度ないし平成10年度 の実施料率(イニシャルなし)の平均値は、5.7%であること、平成1 6年ないし平成20年の電気産業における司法決定ロイヤルティ料率の平 均値は3.0%、最大値は7.0%、最小値は1.0%であることが認め られる。そして、被告が提出した意見書(乙27)においても、本件各発 明に係るロイヤルティ料率を定めるに当たり比較対象となる契約のロイヤ ルティ料率は、中央値が2.65%、最小値が1.5%、最大値が4. 0%であることが認められることからすれば、本件各発明に係る電気産業 における近年のロイヤルティ料率は、3%程度と解するのが相当である。
イ 本件各発明の技術内容や重要性
上記1によれば、従来技術においては、接触操作するタッチパネル等の 電子部品と、プッシュ操作するスイッチ等を各々別個の部品として配置し ていたため、機器の小型化に対して不利であり、かつ、2つの別個の部品 を操作することになり使い勝手も極めて不便であるという課題があった。 このような課題を解決するために、本件各発明は、1)リング状に予め特\n定された軌跡上にタッチ位置検出センサーを配置して軌跡に沿って移動す る接触点を一次元座標上の位置データとして検出し、2)上記軌跡に沿って タッチ位置検出センサーとは別個にプッシュスイッチ手段の接点を設ける ものである。このように、本件各発明は、上記検出とは独立してプッシュ スイッチ手段の接点のオン又はオフを行うことによって、操作性良く薄型 かつ小型でしかも少ない部品点数で電子機器を構成することができるよう\nにし、もって1つの部品で複数の操作ができるプッシュスイッチ付きの接 触操作型電子部品を提供するものであり、この点において重要性を有する ものである。
これに対し、被告は、本件各発明には、iPod Shuffleに採 用された操作ボタン、iPod Touchに採用されたタッチスクリー ン等の代替手段が存在する旨主張する。 しかしながら、証拠(乙30、31)及び弁論の全趣旨によれば、iP od Shuffleの操作ボタンにおいては、音量調節等はボタンを押 すことでしかできないものであって、リング状に指を動かして連続的に音 量調節等をすることができず、iPod Touchについては、タッチ スクリーンを用いるものであって操作の形態が大きく異なり、コストも高 くなるといえるから、これらが直ちに代替手段となるものと認めることは できない。 したがって、被告の主張は、採用することができない。
ウ 本件各発明を被告各製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害 の態様
本件各発明を被告各製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献 証拠(甲5、24)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品1について は、「新しいiPod classicではポケットに40,000曲 を入れることができます。より薄型の総金属製のボディと、さらに洗練 されたユーザインターフェイスにより、iPod classicは、 全てをiPodに入れて持ち歩きたい人に最適です。」と宣伝されてい ることが認められ、被告製品2についても、「さらにiPodが小さく なりました。鉛筆ほどの薄さのiPod nanoは、(中略)信じら れないくらい小さなボディ」、「手の中にすっぽりと収まるミニサイズ。 あざやかなカラー液晶ディスプレイ、親指で操作できるクリックホイー ルも自慢です。ヘッドフォンをつけたら、さっそくボリュームを上げて みましょう。iPod nanoが、小さくてもまさにiPodだとす ぐにわかるはず。」と宣伝されていることが認められる。 その上、証拠(甲21)及び弁論の全趣旨によれば、iPodに搭載 されたクリックホイール自体についても、被告は、「親指ひとつでコン トロール」、「いつでも完全主義を貫くアップルのエンジニアたちは、 iPodの操作ボタンをホイールの下に移動して『究極のシンプルさ』 を目指しました。それが大好評のクリックホイールです。(中略)耐久 性と感度の良さ、ホイール下側に組み込まれた操作ボタンの使いやすさ はこれまでどおり。この最小限のスペースを最大限に利用したクリック ホイールで、iTunesのミュージックコレクションから選んだ最大 1,500曲を親指だけで楽々とスクロールできます。このようによく 考えられた仕組みは、アップル製品ならでは。競合メーカーがどんなに 追いつこうとしても追いつけない部分です。」などとして、特に宣伝し ていることが認められる。
上記認定事実によれば、本件各発明は、操作性良く薄型でしかも少な い部品点数で電子機器を構成することができるように、1つの部品で複\n数の操作ができるプッシュスイッチ付きの接触操作型電子部品を提供す るものであるところ、被告は、本件各発明の構成の中核であるクリック\nホイールにつき、競合他社の製品と差別化するために特に利用していた ことが認められる。そうすると、本件各発明を被告各製品に用いた場合 の売上げ及び利益への貢献の程度は、被告各製品の薄型化及び小型化並 びに操作性の向上に寄与するものとして、被告各製品の顧客吸引力の向 上という観点からすれば、少なくないものと認めるのが相当である。 他方、証拠(甲32、乙27)及び弁論の全趣旨によれば、被告各製 品の人気の理由は、上記において説示したとおり、クリックホイールと いう指先だけで操作できるインターフェイスを搭載し、携帯音楽プレー ヤの操作性を向上させたことにあるほか、音楽配信サービスであるiT unes Music Storeに対応するiTunesを、そのま ま持ち歩くような環境を備えたことや、デザイン、カラーバリエーショ ン、大容量のハードディスク及び長時間持続するバッテリーという被告 各製品の特長にもあり、これらのほか、「Apple」という極めて高 いブランド価値、被告の宣伝広告等が、被告各製品の売上げに相当程度 貢献したことが認められる。また、操作性については、上記のとおり、 被告自身がクリックホイールによる操作性の向上を宣伝していることか ら、クリックホイールの貢献は明らかであるものの、クリックホイール の機能の割当てや本件各発明とは無関係のセンターボタンの果たす役割\nも少なくないものと解される。 そうすると、被告各製品の本体(ハードウェア)の一部であるクリッ クホイールに係る本件各発明が、被告各製品の売上げに寄与した程度は、 主要なものとはいえない。
侵害の態様
前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば、被告は、別件訴訟において、 別件被告各製品の輸入及び販売を行うことが本件特許権の侵害に当たる 旨の第1審判決及び控訴審判決が言い渡された後も、なお別紙別件被告 製品目録記載3の被告製品(本件における被告製品1)を販売し続けた ことが認められる。したがって、その侵害態様は看過し得ないところが ある。
エ 特許権者の営業方針等
弁論の全趣旨によれば、原告は、本件各発明を実施するものではなく、 被告に対し、本件各発明の許諾をする旨の申出をし、被告との間で、その\n交渉をしていたことが認められる。
オ 実施料率の算定
上記認定に係る業界における実施料の相場、本件各発明の技術内容や重 要性、本件各発明を被告各製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や 侵害の態様、特許権者の営業方針等その他の本件に現れた諸事情を踏まえ、 特許権者等が当該特許権等の侵害があったことを前提として、これを侵害 した者との間で合意をするとしたならば特許権者等が得ることとなるその 対価を考慮すれば、実施に対し受けるべき料率は、少なく見積もっても、 0.5%を下らないというべきである。

◆判決本文

関連事件はこちらです。

◆平成19(ワ)2525

◆平成25(ネ)10086

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 >> 賠償額認定
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 >> 104条の3
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令和4(ネ)10070  特許権侵害損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和5年5月16日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明についての特許権侵害事件です。1審の東京地裁40部は、無効理由ありとして、権利行使不能と判断しました。控訴人は、請求項17に基づく侵害主張、および訂正の再抗弁を追加しました。知財高裁は、時機に後れた攻撃防御方法には該当しないとして判断自体はおこないましたが、最終的には無効として、控訴棄却しました。

事案に鑑み、争点7(乙22文献を主引用例とする進歩性欠如の無効の抗弁に対する訂正の再抗弁の当否)について、まず判断する。
(1) 時機に後れた攻撃防御方法の申立てについて\n
被控訴人は、前記第2の4(2)イ のとおり、乙22文献を主引用例とする進歩性欠如の無効の抗弁に対する訂正の再抗弁は、時機に後れた攻撃防御方法であるとしてその却下を求めるが、この防御方法の提出が訴訟の完結を遅延させるものとまでは認められないから、却下することはせずに、以下、検討する。
(2) 無効理由の解消の有無等について
事案に鑑み、仮に、本件訂正が適法であり、本件訂正により本件訂正発明と乙22発明との間に当事者の主張に係る相違点が全て生じるとした場合、乙22発明に基づく進歩性欠如の無効理由が解消されるかをまず検討する。
ア 本件訂正発明1
相違点22−6ないし相違点22−8の容易想到性
相違点22−6ないし相違点22−8は、前記第2の4(1)イ aのと おり、本件訂正発明1において、1)閲覧者がWebブラウザに対して閲 覧指示を行った段階においては、Webブラウザは閲覧指示に対応する HTMLをサーバに要求するだけであること(相違点22−6)、2)サー バはWebブラウザからの要求に従い、画像表示に必要な演算を実行す\nる、HTMLに記述されたJavaScriptをWebブラウザに送信すること (相違点22−7)、3)WebブラウザがHTMLに記述されたJavaScr iptを受信する前に表示領域内に表\示する分割画像を特定する演算を行 わないこと(相違点22−8)というものであるのに対し、乙22発明 は、地図データの要求をサーバに送信するまでの間に、ディスプレイに 表示する地図データ(メッシュ地図)を特定する演算を行っているとい\nうものである。 Webブラウザを用いた表示では、閲覧者がWebブラウザに対して\n閲覧指示を行うと、Webブラウザが閲覧指示に対応するHTMLをサ ーバに要求し、サーバが要求に対応するHTMLをWebブラウザに送 信し、Webブラウザが受信したHTMLに基づいて表示を行うという\n表示ステップを経るというようなプログラム上の取決めがあることは顕\n著な事実であるところ、このようなHTMLを用いるWebブラウザの 処理におけるプログラム上の取決めがある以上、閲覧者がWebブラウ ザに対して閲覧指示を行った段階では、Webブラウザは閲覧指示に対 応するHTMLをサーバに要求するだけであり、WebブラウザがHT MLを受信する前の段階では、Webブラウザによって当該HTMLに 基づくいかなる処理も実行されることがないことは、上記取決めから生 じる当然の帰結にすぎない。 そして、JavaScriptは、HTMLに直接記述されるか、あるいはHT MLによって読み出される外部ファイルに記述されるかのいずれでもよ いものであることは、本件特許出願時の技術常識と認められるから(甲 46、48、49)、当業者は適宜それを使い分ければよく、Webブラ ウザにおいてJavaScriptを用いたときにJavaScriptがHTMLに直接記述されることは当業者の自然な選択の一つにすぎず、その選択をした場 合、WebブラウザがHTMLを受信する前に当該HTMLに直接記述 されたJavaScriptを実行しないことはいうまでもない。 そうすると、Webブラウザを採用して動的表示をJavaScriptを用い\nて実行しようとするならば、当業者が適宜になす自然な選択の結果、ほ ぼ必然的に相違点22−6ないし相違点22−8に係る本件訂正発明1 の構成をとることになるのであって、当該構\成についてとりたてて創意 を発揮する余地はない。そうであるところ、前記2(1)のとおり、本件特 許出願当時において、Webクライアントによる動的表示を行う処理を\nWebブラウザでJavaScriptを用いて行うことは周知慣用技術であり、 そして、この周知慣用技術を適用すればそれに起因して相違点22−6 ないし22−8の本件訂正発明1の構成となるというのであれば、上記\n相違点に係る本件訂正発明1の構成は容易に想到し得るものというほか\nない。
・・・
時機に後れた攻撃防御方法の申立てについて\n
被控訴人は、前記第2の4(2)ア のとおり、被告地図表示方法の本件\n発明17の充足性に関する主張は、時機に後れた攻撃防御方法であると してその却下を求めるが、この攻撃方法の提出が訴訟の完結を遅延させ るものとまでは認められないから、却下することはせずに、以下、検討 する。
相違点22−17−1の容易想到性について
a 本件訂正発明17は、本件訂正発明1について、1)同じ内容の画像 データを2)複数の倍率で有すること、3)各倍率の画像を構成する分割\n画像の画素数は表示倍率に関わらず一定であること、4)分割画像の分 割数は倍率が低い画像ほど少なく、倍率が高い画像ほど多いこととの 限定を付したものであるところ、乙22発明は、上記のような構成を\n有するとは特定されていない。
b 乙10文献には別紙9のとおりの記載がある。これによると、乙10技術として、次のような技術が記載されているものと認められる。 クライアントから要求される画像の指定、表示範囲の指定の変化に\n関わらず、高速かつ一定時間内に高精細画像を表示するためのデータ\n構造を備える高精細画像表\示装置を提供することを目的とするもので あって(【0006】)、 サーバに格納される画像データのデータ構造が、複数段階の解像度\nの画像を有するものであり(【0024】ないし【0026】、【図2】)、 それぞれ解像度の画像はそれぞれpピクセル×pピクセルのブロッ クに分割されて保持され、個々のブロックを単位としてアクセスされ るものであって、個々のブロックを構成する画素数は解像度に関わら\nず同じであり(【0028】、【0029】、【図3】)、 ブロックの分割数は解像度が少ない画像ほど少なく、解像度が高い 画像ほぼ多い状態であり(【図3】)、 クライアント側の表示装置において表\示される表示枠に関連する各\nブロックの画像データを、サーバからクライアントに伝送して表示す\nる技術(【0031】、【0032】)。
c 本件訂正発明1が乙22発明により容易に想到できるものであるこ とは、前記アにおいて判示したとおりであるところ、乙10技術は、 相違点22−17−1の構成に係る分割画像の格納形態を開示するも\nのであり、本件訂正発明17と乙10技術は、分野を同一とするもの であって表示領域より大きい画像データを領域分割し、表\示装置に対 応する分割画像を送信して表示することにより表\示を高速化するとい う機能も共通するものであるから、乙22発明の分割画像の格納形態\nとして、乙10文献記載の分割画像の格納形態を採用して、相違点2 2−17−1に係る本件訂正発明17の構成とすることは容易に想到\nできる。
控訴人らの主張について
控訴人らは、前記第2の4(1)イ e(g)のとおり、乙10技術は、個々 の分割画像(ブロック)を送信しているわけでもないし、同じ画像を複 数の倍率でかつ倍率ごとにそれぞれ複数の領域で分割してサーバから送 信しているわけではないから、乙22発明に乙10技術を適用して本件 訂正発明17の構成とすることは容易に想到できない旨主張するが、乙\n10技術の分割画像の送信手法と分割画像の格納形態とは、特に必須に 結合しているわけではなく、それぞれ独立した技術事項であるから、乙 10技術の送信手法までを乙22発明に適用する必要はなく、乙10の 分割画像の格納形態のみを採用することに阻害要因も見当たらない。 したがって、上記主張を採用することはできない。

◆判決本文

1審はこちら。

◆令和1(ワ)21901

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令和4(ネ)10046  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和5年5月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

知財高裁(大合議)は、「サーバが国外に存在する場合であっても、当該行為の具体的態様、当該システムを構成する各要素のうち国内に存在するものが当該発明において果たす機能\・役割、当該システムの利用によって当該発明の効果が得られる場所、その利用が当該発明の特許権者の経済的利益に与える影響等を総合考慮し、当該行為が我が国の領域内で行われたものとみることができるときは、特許法2条3項1号の「生産」に該当すると解する」と判断しました。
 損害額については、ほぼ伏せ字になっています。102条3項の侵害は料率2%で計算し、それよりも2項侵害の額の方が大きくて最終的に約1100万円の損害賠償が認定さられています。
 なお、1審では、特許の技術的範囲には属するが、一部の構成要件が日本国外に存在するので、非侵害と認定されてました。概要だけはすぐにアップされていましたが、全文アップは約1ヶ月かかりました。

ア 被告サービス1のFLASH版における被控訴人FC2の行為が本件発 明1の実施行為としての「生産」(特許法2条3項1号)に該当するか否 かについて
(ア) はじめに
本件発明1は、サーバとネットワークを介して接続された複数の端末 装置を備えるコメント配信システムの発明であり、発明の種類は、物の 発明であるところ、その実施行為としての物の「生産」(特許法2条3 項1号)とは、発明の技術的範囲に属する物を新たに作り出す行為をい うものと解される。 そして、本件発明1のように、インターネット等のネットワークを介 して、サーバと端末が接続され、全体としてまとまった機能を発揮するシステム(以下「ネットワーク型システム」という。)の発明における「生産」とは、単独では当該発明の全ての構\成要件を充足しない複数の要素が、ネットワークを介して接続することによって互いに有機的な関係を持ち、全体として当該発明の全ての構成要件を充足する機能\を有す るようになることによって、当該システムを新たに作り出す行為をいう ものと解される。 そこで、被告サービス1のFLASH版における被控訴人FC2の行 為が本件発明1の実施行為としての「生産」(特許法2条3項1号)に 該当するか否かを判断するに当たり、まず、被告サービス1のFLAS H版において、被告システム1を新たに作り出す行為が何かを検討し、 その上で、当該行為が特許法2条3項1号の「生産」に該当するか及び 当該行為の主体について順次検討することとする。
(イ) 被告サービス1のFLASH版における被告システム1を新たに 作り出す行為について
a 被告サービス1のFLASH版においては、訂正して引用した原判 決の第4の5(1)ウ(ア)のとおり、ユーザが、国内のユーザ端末のブラ ウザにおいて、所望の動画を表示させるための被告サービス1のウェブページを指定する(2))と、それに伴い、被控訴人FC2のウェブ サーバが上記ウェブページのHTMLファイル及びSWFファイルを ユーザ端末に送信し(3))、ユーザ端末が受信した、これらのファイ ルはブラウザのキャッシュに保存され、ユーザ端末のFLASHが、 ブラウザのキャッシュにあるSWFファイルを読み込み(4))、その 後、ユーザが、ユーザ端末において、ブラウザ上に表示されたウェブページにおける当該動画の再生ボタンを押す(5))と、上記SWFフ ァイルに格納された命令に従って、FLASHが、ブラウザに対し動 画ファイル及びコメントファイルを取得するよう指示し、ブラウザが、 その指示に従って、被控訴人FC2の動画配信用サーバに対し動画フ ァイルのリクエストを行うとともに、被控訴人FC2のコメント配信 用サーバに対しコメントファイルのリクエストを行い(6))、上記リ クエストに応じて、被控訴人FC2の動画配信用サーバが動画ファイ ルを、被控訴人FC2のコメント配信用サーバがコメントファイルを、 それぞれユーザ端末に送信し(7))、ユーザ端末が、上記動画ファイ ル及びコメントファイルを受信する(8))ことにより、ユーザ端末が、 受信した上記動画ファイル及びコメントファイルに基づいて、ブラウ ザにおいて動画上にコメントをオーバーレイ表示させることが可能\と なる。このように、ユーザ端末が上記動画ファイル及びコメントファ イルを受信した時点(8))において、被控訴人FC2の動画配信用サ ーバ及びコメント配信用サーバとユーザ端末はインターネットを利用 したネットワークを介して接続されており、ユーザ端末のブラウザに おいて動画上にコメントをオーバーレイ表示させることが可能\となる から、ユーザ端末が上記各ファイルを受信した時点で、本件発明1の 全ての構成要件を充足する機能\を備えた被告システム1が新たに作り 出されたものということができる(以下、被告システム1を新たに作 り出す上記行為を「本件生産1の1」という。)。
b これに対し、被控訴人らは、1)被告各システムの「生産」に関連す る被控訴人FC2の行為は、被告各システムに対応するプログラムを 製作すること及びサーバに当該プログラムをアップロードすることに 尽き、いずれも米国内で完結しており、その後、ユーザ端末にコメン トや動画が表示されるまでは、ユーザらによるコメントや動画のアップロードを含む利用行為が存在するが、ユーザ端末の表\示装置は汎用ブラウザであって、当該利用行為は、本件各発明の特徴部分とは関係 がない、2)被告システム1において、ユーザ端末は、被控訴人FC2 がサーバにアップロードしたプログラムの記述並びに第三者が被控訴 人FC2のサーバにアップロードしたコメント及び被控訴人FC2の サーバにアップロードした動画(被告システム2及び3においては第 三者のサーバにアップロードした動画)の内容に従って、動画及びコ メントを受動的に表示するだけものにすぎず、ユーザ端末に動画やコメントが表\示されるのは、既に生産された装置(被告各システム)をユーザがユーザ端末の汎用ブラウザを用いて利用した結果にすぎず、 そこに「物」を「新たに」「作り出す行為」は存在しない、3)乙31 1記載の「一般に、通信に係るシステムはデータの送受を伴うもので あるため、データの送受のタイミングで毎回、通信に係るシステムの 生産、廃棄が一台目、二台目、三台目、n台目と繰り返されることま で「生産」に含める解釈は、当該システムの中でのデータの授受の各 タイミングで当該システムが再生産されることになり、採用しがたい」 との指摘によれば、被控訴人FC2の行為は本件発明1の「生産」に 該当しないというべきである旨主張する。
しかしながら、1)については、被控訴人FC2が被告システム1に 対応するプログラムを製作すること及びサーバに当該プログラムをア ップロードすることのみでは、前記aのとおり、本件発明1の全ての 構成要件を充足する機能\を備えた被告システム1が完成していないと いうべきである。
2)については、前記aのとおり、被控訴人FC2の動画配信用サー バ及びコメント配信用サーバとユーザ端末がインターネットを利用し たネットワークを介して接続され、ユーザ端末が必要なファイルを受 信することによって、本件発明1の全ての構成要件を充足する機能\を 備えた被告システム1が新たに作り出されるのであって、ユーザ端末 が上記ファイルを受信しなければ、被告システム1は、その機能を果たすことができないものである。
3)については、上記のとおり、被告システム1は、被控訴人FC2 の動画配信用サーバ及びコメント配信用サーバとユーザ端末がインタ ーネットを利用したネットワークを介して接続され、ユーザ端末が必 要なファイルを受信することによって新たに作り出されるものであり、 ユーザ端末のブラウザのキャッシュに保存されたファイルが廃棄され るまでは存在するものである。また、上記ファイルを受信するごとに 被告システム1が作り出されることが繰り返されるとしても、そのこ とを理由に「生産」に該当しないということはできない。 よって、被控訴人らの上記主張は理由がない。
(ウ) 本件生産1の1が特許法2条3項1号の「生産」に該当するか否か について
a 特許権についての属地主義の原則とは、各国の特許権が、その成立、 移転、効力等につき当該国の法律によって定められ、特許権の効力が 当該国の領域内においてのみ認められることを意味するものであると ころ(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年7月1日第三小法廷 判決・民集51巻6号2299頁、最高裁平成12年(受)第580 号同14年9月26日第一小法廷判決・民集56巻7号1551頁参 照)、我が国の特許法においても、上記原則が妥当するものと解され る。 前記(イ)aのとおり、本件生産1の1は、被控訴人FC2のウェブ サーバが、所望の動画を表示させるための被告サービス1のウェブページのHTMLファイル及びSWFファイルを国内のユーザ端末に送信し、ユーザ端末がこれらを受信し、また、被控訴人FC2の動画配\n信用サーバが動画ファイルを、被控訴人FC2のコメント配信用サー バがコメントファイルを、それぞれユーザ端末に送信し、ユーザ端末 がこれらを受信することによって行われているところ、上記ウェブサ ーバ、動画配信用サーバ及びコメント配信用サーバは、いずれも米国 に存在するものであり、他方、ユーザ端末は日本国内に存在する。す なわち、本件生産1の1において、上記各ファイルが米国に存在する サーバから国内のユーザ端末へ送信され、ユーザ端末がこれらを受信 することは、米国と我が国にまたがって行われるものであり、また、 新たに作り出される被告システム1は、米国と我が国にわたって存在 するものである。そこで、属地主義の原則から、本件生産1の1が、 我が国の特許法2条3項1号の「生産」に該当するか否かが問題とな る。
b ネットワーク型システムにおいて、サーバが日本国外(以下、単に 「国外」という。)に設置されることは、現在、一般的に行われてお り、また、サーバがどの国に存在するかは、ネットワーク型システム の利用に当たって障害とならないことからすれば、被疑侵害物件であ るネットワーク型システムを構成するサーバが国外に存在していたとしても、当該システムを構\成する端末が日本国内(以下「国内」という。)に存在すれば、これを用いて当該システムを国内で利用するこ とは可能であり、その利用は、特許権者が当該発明を国内で実施して得ることができる経済的利益に影響を及ぼし得るものである。そうすると、ネットワーク型システムの発明について、属地主義\nの原則を厳格に解釈し、当該システムを構成する要素の一部であるサーバが国外に存在することを理由に、一律に我が国の特許法2条3項の「実施」に該当しないと解することは、サーバを国外に設置さえす\nれば特許を容易に回避し得ることとなり、当該システムの発明に係る 特許権について十分な保護を図ることができないこととなって、妥当ではない。他方で、当該システムを構\成する要素の一部である端末が国内に存在することを理由に、一律に特許法2条3項の「実施」に該当すると解することは、当該特許権の過剰な保護となり、経済活動に支障を 生じる事態となり得るものであって、これも妥当ではない。 これらを踏まえると、ネットワーク型システムの発明に係る特許 権を適切に保護する観点から、ネットワーク型システムを新たに作り 出す行為が、特許法2条3項1号の「生産」に該当するか否かについ ては、当該システムを構成する要素の一部であるサーバが国外に存在する場合であっても、当該行為の具体的態様、当該システムを構\成する各要素のうち国内に存在するものが当該発明において果たす機能・役割、当該システムの利用によって当該発明の効果が得られる場所、その利用が当該発明の特許権者の経済的利益に与える影響等を総合考\n慮し、当該行為が我が国の領域内で行われたものとみることができる ときは、特許法2条3項1号の「生産」に該当すると解するのが相当 である。
これを本件生産1の1についてみると、本件生産1の1の具体的 態様は、米国に存在するサーバから国内のユーザ端末に各ファイルが 送信され、国内のユーザ端末がこれらを受信することによって行われ るものであって、当該送信及び受信(送受信)は一体として行われ、 国内のユーザ端末が各ファイルを受信することによって被告システム 1が完成することからすれば、上記送受信は国内で行われたものと観 念することができる。 次に、被告システム1は、米国に存在する被控訴人FC2のサー バと国内に存在するユーザ端末とから構成されるものであるところ、国内に存在する上記ユーザ端末は、本件発明1の主要な機能\である動画上に表示されるコメント同士が重ならない位置に表\示されるように するために必要とされる構成要件1Fの判定部の機能\と構成要件1Gの表\示位置制御部の機能を果たしている。
さらに、被告システム1は、上記ユーザ端末を介して国内から利 用することができるものであって、コメントを利用したコミュニケー ションにおける娯楽性の向上という本件発明1の効果は国内で発現し ており、また、その国内における利用は、控訴人が本件発明1に係る システムを国内で利用して得る経済的利益に影響を及ぼし得るもので ある。
以上の事情を総合考慮すると、本件生産1の1は、我が国の領域内 で行われたものとみることができるから、本件発明1との関係で、特 許法2条3項1号の「生産」に該当するものと認められる。
c これに対し、被控訴人らは、1)属地主義の原則によれば、「特許の 効力が当該国の領域においてのみ認められる」のであるから、海外 (国外)で作り出された行為が特許法2条3項1号の「生産」に該当 しないのは当然の帰結であること、権利一体の原則によれば、特許発 明の実施とは、当該特許発明を構成する要素全体を実施することをいうことからすると、一部であっても海外で作り出されたものがある場合には、特許法2条3項1号の「生産」に該当しないというべきであ\nる、2)特許回避が可能であることが問題であるからといって、構\成要 件を満たす物の一部さえ、国内において作り出されていれば、「生産」 に該当するというのは論理の飛躍があり、むしろ、構成要件を満たす物の一部が国内で作り出されれば、直ちに、我が国の特許法の効力を及ぼすという解釈の方が、問題が多い、3)我が国の裁判例においては、 カードリーダー事件の最高裁判決(前掲平成14年9月26日第一小 法廷判決)等により属地主義の原則を厳格に貫いてきたのであり、そ の例外を設けることの悪影響が明白に予見されるから、仮に属地主義の原則の例外を設けるとしても、それは立法によってされるべきである旨主張する。\n
しかしながら、1)については、ネットワーク型システムの発明に 関し、被疑侵害物件となるシステムを新たに作り出す行為が、特許法 2条3項1号の「生産」に該当するか否かについては、当該システム を構成する要素の一部であるサーバが国外に存在する場合であっても、前記bに説示した事情を総合考慮して、当該行為が我が国の領域内で行われたものとみることができるときは、特許法2条3項1号の「生\n産」に該当すると解すべきであるから、1)の主張は採用することがで きない。
2)については、特許法2条3項1号の「生産」に該当するか否か の上記判断は、構成要件を満たす物の一部が国内で作り出されれば、直ちに、我が国の特許法の効力を及ぼすというものではないから、2) の主張は、その前提を欠くものである。
3)については、特許権についての属地主義の原則とは、各国の特 許権が、その成立、移転、効力等につき当該国の法律によって定めら れ、特許権の効力が当該国の領域内においてのみ認められることを意 味することに照らすと、上記のとおり当該行為が我が国の領域内で行 われたものとみることができるときに特許法2条3項1号の「生産」 に該当すると解釈したとしても、属地主義の原則に反しないというべ きである。加えて、被控訴人らの挙げるカードリーダー事件の最高裁 判決は、属地主義の原則からの当然の帰結として、「生産」に当たる ためには、特許発明の全ての構成要件を満たす物を新たに作り出す行為が、我が国の領域内において完結していることが必要であるとまで判示したものではないと解され、また、我が国が締結した条約及び特\n許法その他の法令においても、属地主義の原則の内容として、「生産」 に当たるためには、特許発明の全ての構成要件を満たす物を新たに作り出す行為が我が国の領域内において完結していることが必要であることを示した規定は存在しないことに照らすと、3)の主張は採用する ことができない。 したがって、被控訴人らの上記主張は理由がない。
(エ) 被告システム1(被告サービス1のFLASH版に係るもの)を 「生産」した主体について
a 被告システム1(被告サービス1のFLASH版に係るもの)は、 前記(イ)aのとおり、被控訴人FC2のウェブサーバが、所望の動画 を表示させるための被告サービス1のウェブページのHTMLファイル及びSWFファイルをユーザ端末に送信し、ユーザ端末がこれらを受信し、ユーザ端末のブラウザのキャッシュに保存された上記SWF\nファイルによる命令に従ったブラウザからのリクエストに応じて、被 控訴人FC2の動画配信用サーバが動画ファイルを、被控訴人FC2 のコメント配信用サーバがコメントファイルを、それぞれユーザ端末 に送信し、ユーザ端末がこれらを受信することによって、新たに作り 出されたものである。そして、被控訴人FC2が、上記ウェブサーバ、 動画配信用サーバ及びコメント配信用サーバを設置及び管理しており、 これらのサーバが、HTMLファイル及びSWFファイル、動画ファ イル並びにコメントファイルをユーザ端末に送信し、ユーザ端末によ る各ファイルの受信は、ユーザによる別途の操作を介することなく、 被控訴人FC2がサーバにアップロードしたプログラムの記述に従い、 自動的に行われるものであることからすれば、被告システム1を「生 産」した主体は、被控訴人FC2であるというべきである。
この点に関し、被告システム1が「生産」されるに当たっては、 前記(イ)aのとおり、ユーザが、ユーザ端末のブラウザにおいて、所 望の動画を表示させるための被告サービス1のウェブページを指定すること(2))と、ブラウザ上に表示されたウェブページにおける当該動画の再生ボタンを押すこと(5))が必要とされるところ、上記のユ ーザの各行為は、被控訴人FC2が設置及び管理するウェブサーバに 格納されたHTMLファイルに基づいて表示されるウェブページにおいて、ユーザが当該ページを閲覧し、動画を視聴するに伴って行われる行為にとどまるものである。すなわち、当該ページがブラウザに表\示されるに当たっては、前記のとおり、被控訴人FC2のウェブサーバが当該ページのHTMLファイル及びSWFファイルをユーザ端末 に送信し、ユーザ端末が受信したこれらのファイルがブラウザのキャ ッシュに保存されること(4))、また、動画ファイル及びコメントフ ァイルのリクエストについては、上記SWFファイルによる命令に従 って行われており(6))、上記動画ファイル及びコメントファイルの 取得に当たってユーザによる別段の行為は必要とされないことからす れば、上記のユーザの各行為は、被控訴人FC2の管理するウェブペ ージの閲覧を通じて行われるものにとどまり、ユーザ自身が被告シス テム1を「生産」する行為を主体的に行っていると評価することはで きない。
b これに対し、被控訴人らは、1)米国に存在するサーバが、ウェブペ ージのデータ、JSファイル(FLASH版においてはSWFファイ ル)、動画ファイル及びコメントファイルを送信することは、被控訴 人FC2が行っているのではなく、インターネットに接続されたサー バにプログラムを蔵置したことから、リクエストに応じて自動的に行 われるものであり、因果の流れにすぎない、2)日本(国内)に存在す るユーザ端末が、上記ウェブページのデータ、JSファイル(SWF ファイル)、動画ファイル及びコメントファイルを受信することは、 ユーザによるウェブページの指定やウェブページに表示された再生ボタンをユーザがクリックすることにより行われ、ユーザの操作が介在しており、また、仮に被控訴人FC2が1)の送信行為を行っていると しても、特許法は、「譲渡」と「譲受」、「輸入」と「輸出」、「提供」 と「受領」を明確に区分して規定している以上、被控訴人FC2が上 記受信行為を行っていると解すべきではない旨主張する。
しかしながら、1)については、前記aのとおり、被控訴人FC2 が、ウェブサーバ、動画配信用サーバ及びコメント配信用サーバを設 置及び管理しており、これらのサーバが、HTMLファイル及びSW Fファイル、動画ファイル並びにコメントファイルをユーザ端末に送 信し、ユーザ端末による各ファイルの受信は、ユーザによる別途の操 作を介することなく、被控訴人FC2がサーバにアップロードしたプ ログラムの記述に従い、自動的に行われるものであることからすれば、 被告システム1を「生産」した主体は、被控訴人FC2であるという べきである。
また、2)については、前記aのとおり、ウェブページの指定やウ ェブページに表示された再生ボタンをクリックするといったユーザの各行為は、被控訴人FC2の管理するウェブページの閲覧を通じて行われるにとどまるものであり、ユーザ端末による上記各ファイルの受\n信は、上記のとおりユーザによる別途の操作を介することなく自動的 に行われるものであることからすれば、上記各ファイルをユーザ端末 に受信させた主体は被控訴人FC2であるというべきである。 したがって、被控訴人らの上記主張は理由がない。
(オ) 小括
以上によれば、被控訴人FC2は、本件生産1の1により、被告シス テム1を「生産」(特許法2条3項1号)したものと認められる。
・・・
8 争点8(控訴人の損害額)について
(1) 特許法102条2項に基づく損害額について
ア 主位的請求関係について 控訴人は、被控訴人らが、本件特許権の設定登録がされた令和元年5月 17日から令和4年8月31日までの間、被告各システムを生産し、被 告各サービスを提供することによって、●●●●●●●●●●円を売り 上げ、これにより被控訴人らが得た利益(限界利益)の額は、●●●● ●●●●●●円を下らず、このうち令和元年5月17日から同月31日 までの分(5月分)の売上高は●●●●●●●●円、限界利益額は●● ●●●●●●円を下らないと主張する。 しかしながら、控訴人が上記主張の根拠として提出する甲24によって、 上記の売上高及び限界利益額を認めることはできず、他にこれを認める に足りる証拠はない。 したがって、控訴人の上記主張は理由がない。
イ 予備的請求関係について
(ア) 本件生産1ないし3により「生産」された被告システム1ないし3 で提供された被告各サービスの割合 前記4のとおり、被控訴人FC2は、本件生産1により被告システム 1を、本件生産2により被告システム2を、本件生産3により被告シス テム3を「生産」し、本件特許権を侵害したものであり、本件生産1な いし3は、いずれも、サーバがユーザ端末に動画ファイル及びコメント ファイルを送信し、ユーザ端末がこれらを受信することによって行われ るものである。 しかるところ、被告各サービスで配信される動画でコメントが付され ているものの数は限られており、令和3年1月11日の時点において、 被告サービス1で公開された●●●●●●●●個の動画のうち、コメン トが付された動画は●●●●●●●個であり(乙85)、その割合は● ●●●パーセントであったこと、被告各サービスは、日本語以外の言語 でもサービスが提供されているものの、そのユーザの大部分は国内に存 在すること(甲9、弁論の全趣旨)からすれば、被告各サービスのうち、 本件生産1ないし3で「生産」された被告システム1ないし3によって 提供されたものの割合は、本件特許権が侵害された全期間にわたって● ●●パーセントと認めるのが相当である。
(イ) 被控訴人FC2の利益額(限界利益額)
a 被告サービス1関係
乙84によれば、令和元年5月17日から令和4年8月31日まで の期間の被告サービス1の売上高は、別紙6売上高等一覧表の「売上高」欄の「被告サービス1」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●●●●●円であること、その限界利益額は、別紙7−1限界利益額等\n一覧表の「限界利益額」欄の「被告サービス1」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●●●●●円であることが認められる。このうち、本件特許権の侵害行為である本件生産1により「生産」\nされた被告システム1によって提供されたものの割合は、前記(ア)の とおり、●●●パーセントであるから、本件生産1による売上高は、 ●●●●●●●●●●●円(●●●●●●●●●●●●円×●●●● ●)と認められ、被控訴人FC2が本件生産1により得た限界利益額 は、別紙7−2限界利益額算定表の「限界利益内訳」欄の「本件生産1」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●●円と認められる。
b 被告サービス2関係
乙84によれば、令和元年5月17日から令和2年10月31日 までの期間の被告サービス2の売上高は、別紙6売上高等一覧表の「売上高」欄の「被告サービス2」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●円であること、その限界利益額は、別紙7−1限界利益額等一\n覧表の「限界利益額」欄の「被告サービス2」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●円であることが認められる。このうち、本件特許権の侵害行為である本件生産2により「生産」\nされた被告システム2によって提供されたものの割合は、前記(ア)の とおり、●●●パーセントであるから、本件生産2による売上高は、 ●●●●●●円(●●●●●●●●円×●●●●●)と認められ、被 控訴人FC2が本件生産2により得た限界利益額は、別紙7−2限界 利益額算定表の「限界利益内訳」欄の「本件生産2」欄記載のとおり、合計●●●●●●円と認められる。
c 被告サービス3関係
乙84によれば、令和元年5月17日から令和2年10月31日 までの期間の被告サービス3の売上高は、別紙6売上高等一覧表の「売上高」欄の「被告サービス3」欄記載のとおり、合計●●●●●●円であること、その限界利益額は、別紙7−1限界利益額等一覧表\の「限界利益額」欄の「被告サービス3」欄記載のとおり、合計●●●●●●円であることが認められる。 このうち、本件特許権の侵害行為である本件生産3により「生産」 された被告システム3によって提供されたものの割合は、前記(ア)の とおり、●●●パーセントであるから、本件生産3による売上高は、 ●●●●円(●●●●●●円×●●●●●)と認められ、被控訴人F C2が本件生産3により得た限界利益額は、別紙7−2限界利益額算 定表の「限界利益内訳」欄の「本件生産3」欄記載のとおり、合計●●●●円と認められる。
d まとめ
(a) 前記aないしcによれば、被控訴人FC2が本件生産1ないし 3により得た限界利益額は、別紙7−2限界利益額算定表の「限界利益額(消費税相当分(10%)を含む)」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●●●●円と認められる。\n なお、被控訴人FC2は、仮に、本件において被控訴人FC2に 対する損害賠償の支払が命ぜられるとしても、消費税上輸出免税 の対象になる旨主張するが、被控訴人FC2による被告各サービ スの提供が輸出取引に当たることを認めるに足りる証拠はないか ら、被控訴人FC2の上記主張は理由がない。
(b) 以上のとおり、被控訴人FC2が本件生産1ないし3により得 た限界利益額は、合計●●●●●●●●●●●円であり、この限 界利益額は、特許法102条2項により、控訴人が受けた損害額 と推定される(以下、この推定を「本件推定」という。)。
(ウ) 推定の覆滅について
被控訴人らは、被告各サービスにおいて、本件各発明のコメント表示機能\が、システム全体の機能の一部であり、顧客誘引力を有していないことは、本件推定の覆滅事由に該当する旨主張する。\n そこで検討するに、被告各サービスで配信されている動画で、その売 上高に貢献しているものの多くはアダルト動画であり(甲4の1及び2、 9、11、弁論の全趣旨)、動画上にコメントが表示されることが視聴の妨げになることは否定できないこと、令和3年1月11日の時点において、被告サービス1で公開された●●●●●●●●個の動画のうち、\nコメントが付された動画は●●●●●●●個であり(乙85)、その割 合は●●●●パーセントにとどまっていることに照らすと、被告各サー ビスにおいて、コメント表示機能\が果たす役割は限定的なものであって、 被告各サービスの多くのユーザは、コメント表示機能\よりも動画それ自 体を視聴する目的で利用していたものと認められる。そして、本件各発 明の技術的な特徴部分は、コメント付き動画配信システムにおいて、動 画上にオーバーレイ表示される複数のコメントが重なって表\示されるこ とを防ぐというものであり(前記1(2)イ)、その技術的意義自体も、上 記システムにおいて限られたものであると認められる。
以上の事情を総合考慮すると、被告各サービスの利用に対する本件各 発明の寄与割合は●●と認めるのが相当であり、上記寄与割合を超える 部分については、前記(イ)d(b)の限界利益額と控訴人の受けた損害額 との間に相当因果関係がないものと認められる。 したがって、本件推定は、上記限度で覆滅されるものと認められるか ら、特許法102条2項に基づく控訴人の損害額は、上記限界利益額の ●割に相当するものであり、別紙4−2認容額内訳表の「特許法102条2項に基づく損害額」欄記載のとおり、合計●●●●●●●●●円と認められる。\n
(2) 特許法102条3項に基づく損害額について(予備的請求関係)
ア 特許法102条3項に基づく控訴人の損害額については、1)株式会社帝 国データバンク作成の「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の 在り方に関する調査研究報告書〜知的財産(資産)価値及びロイヤルテ ィ料率に関する実態把握〜」(本件報告書)の「II).我が国のロイヤルテ ィ料率」の「1.技術分類別ロイヤルティ料率(国内アンケート調査)」 の「(2) アンケート調査結果」には、「特許権のロイヤルティ料率の平均 値」について、「全体」が「3.7%」、「電気」が「2.9%」、「コンピ ュータテクノロジー」が「3.1%」であり、「III).各国のロイヤルティ 料率」の「1.ロイヤルティ料率の動向」には、国内企業のロイヤルテ ィ料率アンケート調査の結果として、産業分野のうち「ソフトウェア」については「6.3%」であり、「2.司法決定によるロイヤルティ料率調査結果」の「(i)日本」の「産業別司法決定ロイヤルティ料率(20 04〜2008年)」には、「電気」の産業についての司法決定によるロ イヤルティ料率は、平均値「3.0%」、最大値「7.0%」、最小値 「1.0%」(件数「6」)であるとの記載があること、2)前記(1)イ(ウ) のとおり、本件各発明の技術的な特徴部分は、コメント付き動画配信シ ステムにおいて、動画上に複数のコメントが重なって表示されることを防ぐというものであり、その技術的意義は高いとはいえず、被告各サービスの購買動機の形成に対する本件各発明の寄与は限定的であること、\nその他本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると、本件生産1ないし3 による売上高に実施料率2パーセントを乗じた額と認めるのが相当であ る。
そして、本件生産1ないし3による売上高(消費税相当分(10パー セント)を含む。)の合計額は、●●●●●●●●●●●円(●●●●● ●●●●●●円+●●●●●●円+●●●●円(前記(1)イ(イ)aないし c記載の本件生産1ないし3の各売上高に消費税相当分(10パーセン ト)を加えた額の合計額))と認められるから、●●●●●●●●円(● ●●●●●●●●●●円×0.02)となる。 これに反する控訴人及び被控訴人らの主張はいずれも採用することが できない。
イ そして、控訴人の特許法102条2項に基づく損害額の主張と同条3項 に基づく損害額の主張は、選択的なものと認められるから、より高額な 前記(1)イ(ウ)の同条2項に基づく損害額合計●●●●●●●●●円が本 件の控訴人の損害額と認められる。

◆判決本文
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◆令和元年(ワ)25152

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◆平成30(ネ)10077
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◆平成28(ワ)38565

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令和1(行ケ)10114 審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和2年9月24日  知的財産高等裁判所

 漏れていたのでアップします。動画配信における視聴者からのギフトの処理(CS関連発明)について、審判で進歩性無しと判断されました。知財高裁も同様です。

「・・・(D1)前記動画を視聴する視聴ユーザから前記動画の配信中に前記動画へ の装飾オブジェクトの表示を要求する第1表\示要求がなされ,(D2)前記動画の配信中に前記動画の配信をサポートするサポーター又は前記アクターによって前記装飾オブジェクトが選択された場合に,(D3)前記装飾オブジェクトに設定されている装着位置情報に基づいて定められる前記キャラクタオブジェクトの部位に関連づけて、(D4)前記装飾オブジェクトを前記動画に表示させる,(A)動画配信システム。」というクレームです。\n 原告は,甲2には,視聴者から配信者へギフトを贈ること(ユーザーギ フティング)が動画配信中に行われるとの記載はないので,引用発明に甲 2記載の技術を追加したとしても「動画配信中に行われた表示要求に応じ\nて,装飾オブジェクトを表示する」という本願発明の構\成には至らない旨 主張する。しかしながら,甲2には,CGキャラクターへのユーザーギフティング を動画配信中に行うことについての記載はないものの,これを排除する旨 の記載もなく,この点は,配信時間の長さ,ギフト装着のための準備,予\n想されるギフトの数等を踏まえて,配信者が適宜決定し得る運用上の取り 決め事項といえるから,甲2のユーザーギフティング機能において,CG\nキャラクターが装着するための作品を贈る時期は,配信開始前に限定され ているとはいえない。したがって,引用発明に上記ユーザーギフティング 機能を追加することによって,相違点1に係る「前記動画を視聴する視聴\nユーザから前記動画の配信中に前記動画への装飾オブジェクトの表示を要\n求する第1表示要求がなされ」るという構\成を得ることができる。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イ なお,原告は,甲2記載のCGキャラクター「東雲めぐ」が登場する実 際の番組において,ユーザーギフティングが配信開始前に締め切られてい ること(甲9の2,甲10)を指摘する。しかしながら,そのことは,当 該番組における運用上の取り決め事項として,ユーザーギフティングの時 期を配信開始前と定めたことを示すにとどまり,上記アの判断を左右しな い。 (3) 動機付けについて ア 甲2には,配信も可能なVRアニメ作成ツール「AniCast」にユーザー ギフティング機能を追加することが記載されている。一方,引用発明は,\n声優の動作に応じて動くキャラクタ動画を生成してユーザ端末に配信する ものであるから,引用発明も「配信も可能なVRアニメ作成ツール」とい\nえる。また,ユーザーギフティング機能のような新たな機能\を追加することに よって,動画配信システムの興趣が増すことは明らかである。 そうすると,当業者にとって,「配信も可能なVRアニメ作成ツール」\nである引用発明に対して,甲2記載の技術であるユーザーギフティング機 能を追加することの動機付けがあるといえる。\n イ 原告は,甲1には創作したギフトを配信者に贈ることの開示はないから, 引用発明に甲2記載のユーザーギフティング機能を組み合わせる動機付け\nはない旨主張する。しかしながら,動画配信システムの興趣を増すことは当該技術分野において一般的な課題であると考えられるから,甲1自体にユーザーギフティ ング機能又はこれに類する技術の開示又は示唆がないとしても,引用発明\nを知った上で甲2の記載に接した当業者は,興趣を増す一手段として甲2 記載のユーザーギフティング機能を引用発明に適用することを動機付けら\nれるといえる。したがって,原告の上記主張は採用することができない。

◆判決本文

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平成29(ネ)10043  特許権侵害差止等請求承継参加申立控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年1月31日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

かなり前の事件ですが、漏れていたのでアップします。コンピュータ関連発明について、被告製品には構成要件C「格納手段」がないとして、非侵害と判断されました。間接侵害も否定されました。
問題の請求項は以下です。
A ユーザテレビ機器(22)上で動作する双方向テレビ番組ガイドシステムであって,
B 該システムは,複数の番組を格納するためのユーザ指示を受信したことに応答して,デジタル格納デバイス(31)に格納されるべき該複数の番組をスケジューリングする手段と,
C 双方向テレビ番組ガイドを用いて,該ユーザテレビ機器(22)に含まれる該デジタル格納デバイス(31)に該複数の番組をデジタル的に格納する手段と,
D 該複数の番組をデジタル的に格納したことに応答して,該双方向テレビ番組ガイドを用いて,該デジタル格納デバイス(31)に複数の番組データをデジタル的に格納する手段であって,該複数の番組データのそれぞれは,該複数の番組のうちの1つに関連付けられている,手段と,
E 該双方向テレビ番組ガイドを用いて,該デジタル格納デバイス(31)に格納された該複数の番組のリストをディスプレイに表示する手段と,
F 該デジタル格納デバイス(31)に格納された該複数の番組のリストから,該デジタル格納デバイス(31)に格納された番組のユーザ選択を受信する手段と,
・・・
J 該双方向テレビ番組ガイドを用いて,現在スケジューリングされている該複数の番組のうちの該選択された番組に対して,選択された番組リスト項目情報画面を該ユーザテレビ機器(22)に表示する手段であって,該選択された番組リスト項目情報画面は,該選択された番組に関連付けられた番組データの1つ以上のフィールドと,1つ以上のユーザフィールドとを含む,手段と,
K 該1つ以上のユーザフィールドにユーザ情報を入力する機会をユーザに提供する手段と
L を備えた,システム。

2 当審における控訴人の補充主張に対する判断
(1) 控訴人は,構成要件Cは,「双方向テレビ番組ガイド」を用いて,「デジタ\nル格納デバイス」に複数の番組をデジタル的に格納する「手段」を備えていれば, 充足することになるものであって,「デジタル格納デバイス」自体を必須の構成要素\nとして規定するものではないと主張するが,本件発明は,デジタル格納部を含むユ ーザテレビ機器を備えた双方向テレビ番組ガイドシステムに係る発明であるから, 被告物件(液晶テレビ製品)が本件発明の技術的範囲に属するというためには,被 告物件が「番組をデジタル的に格納可能な部分」を含むことが必要であることは,\n
前記1のとおり補正して引用する原判決が認定説示するとおりである。 すなわち,本件発明に係る特許請求の範囲は,「ユーザテレビ機器(22)上で動 作する双方向テレビ番組ガイドシステムであって」(構成要件A),・・・「双方向テ\nレビ番組ガイドを用いて,該ユーザテレビ機器(22)に含まれる該デジタル格納 デバイス(31)に該複数の番組をデジタル的に格納する手段と,」(構成要件C)・・・「を備えた,システム」(構\成要件L)と記載されているから,本件発明の双方向テ レビ番組ガイドシステムは,ユーザテレビ機器に含まれるデジタル格納デバイスに 番組をデジタル的に格納(録画)する手段という構成を含むものである。\nそして,本件明細書には,「本発明は・・・番組および番組に関連する情報用のデ ジタル格納部を備えた双方向テレビ番組ガイドシステムに関する。」(【0001】) として,双方向テレビ番組ガイドシステムが「デジタル格納部を備えた」ものであ る旨が記載されている。また,従来技術として,「番組ガイド内で選択された番組を 独立型の格納デバイス(典型的にはビデオカセットレコーダ)に格納することを可 能にする双方向番組ガイド」(【0004】)が指摘され,その操作に関し,「ビデオ\nカセットレコーダの操作には通常は,ビデオカセットレコーダ内の赤外線受信器に 結合される赤外線送信器を含む操作経路が用いられる。」(【0004】)と記載され ており,「独立型の格納デバイス」を用いる従来技術について記載されている。その 上で,従来技術の課題として「独立型のアナログ格納デバイスを用いると,デジタ ル格納デバイスが番組ガイドと関連付けられる場合に実施され得るようなより高度 な機能が不可能\になる。」(【0004】)と記載され,これを受けて,本発明の目的 を「デジタル格納部を備えた双方向テレビ番組ガイドを提供すること」(【0005】)と記載している。以上に加え,「番組ガイドと関連付けられたデジタル格納デバイス の使用は,独立型のアナログ格納デバイスを用いて行われ得る機能よりも,より高\n度な機能をユーザに提供する。」(【0009】)という記載を併せ考慮すると,本件\n発明は,独立型のアナログ格納デバイスでは不可能であった高度な機能\をユーザに 提供するために,双方向テレビ番組ガイドシステムがデジタル格納デバイスを備え ることを目的としたものと認められる。
以上によると,被告物件が構成要件Cを充足するというためには,「番組をデジタ\nル的に格納可能な部分」を含むこと(内蔵すること)が必要というべきである。\nこれに対し,控訴人は,本件明細書の【図2】及び【0016】によると,本件 発明には,「デジタル格納デバイス」が「ユーザテレビ機器」に外部インターフェー スを介して接続されるような構成も当然に含むように説明されていると主張するが,\n控訴人指摘の「デジタル格納デバイス31は,セットトップボックス28内に内蔵 されるか,または出力ポートおよび適切なインターフェースを介してセットトップ ボックス28に接続された外部デバイスであり得る。」(【0016】)との記載は, 「ユーザテレビ機器22の例示的構成を示す」【図2】からも明らかなとおり,「ユ\nーザテレビ機器」の一部を構成する「セットトップボックス」内に内蔵するか,「セ\nットトップボックス」に外付けするかを記載するにとどまり,「ユーザテレビ機器」 に外付けする構成を当然に含むものということはできない。かえって,「ユーザテレ\nビ機器22の例示的構成」において,「オプション」とされている「第2の格納デバ\nイス32」(【0014】)については,「第2の格納デバイス32がユーザテレビ機 器22に内蔵されていない場合」(【0017】)との記載が認められるところ,「デ ジタル格納デバイス」については,これと同旨の記載は見当たらない。
また,控訴人は,本件明細書の【図3】及び【0080】には,デジタル格納デ バイス49がリムーバブル録画媒体(例えば,フロッピーディスク又は録画可能な\n光ディスク)である場合が説明されていると主張するところ,控訴人指摘の【00 80】には,「デジタル格納デバイス49がリムーバブル録画媒体(例えば,フロッ ピーディスクまたは録画可能な光ディスク)である場合」との記載がある。しかし,\n本件明細書には,「デジタル格納デバイス49がリムーバブル録画媒体(例えば,フ ロッピーディスクまたは録画可能な光ディスク)を用いる場合」(【0085】)との\n記載もあるほか,「デジタル格納デバイスは,光格納デバイスまたは磁気格納デバイ ス(例えば,書き込み可能なデジタル映像ディスク,磁気ディスク,もしくはハー\nドドライブまたはランダムアクセスメモリ(RAM)等を用いたデバイス)であり 得る。」(【0008】),「第2の格納デバイス32は,任意の適切な種類のアナログまたはデジタル番組格納デバイス(例えば,ビデオカセットレコーダ,DVDディ スクに録画する能力を有するデジタル映像ディスク(DVD)プレーヤ等)であり\n得る。」(【0014】),「デジタル格納デバイス31は,書き込み可能な光格納デバイス(例えば,記録可能\なDVDディスクの処理が可能なDVDプレーヤ),磁気格\n納デバイス(例えば,ディスクドライブまたはデジタルテープ),または他の任意の デジタル格納デバイスであり得る。」(【0015】),「デジタル格納デバイス49において用いられるリムーバブル格納媒体」(【0082】),「例えばデジタル格納デバイス49がフロッピーディスクドライブであり,選択された番組を有するディスク がドライブ内に無い場合」(【0084】),「デジタル格納デバイス49内のリムーバブルデジタル格納媒体上に格納する」(【0104】)との記載もあり,これらの記載 によると,本件明細書においては,「デジタル格納デバイス」は,「リムーバブル格 納媒体」(フロッピーディスク,DVDディスク等)と区別されるものであり,「リ ムーバブル格納媒体」を処理することが可能な機器(フロッピーディスクドライブ,\nDVDプレーヤ等)を指すことが多いものと認められる。そうすると,控訴人指摘 の【0080】の上記記載から,直ちに本件発明にはデジタル格納デバイスがリム ーバブル録画媒体である場合が含まれるということはできない。
(2) 控訴人は,間接侵害を主張するところ,被告物件である液晶テレビ製品は, 単に放送を受信するだけで,いずれもそれ自体に録画できるメモリー部分(デジタ ル格納部)を備えておらず,録画先としては,外付けのUSBハードディスクやレ グザリンク対応の東芝レコーダーとされており,これらを被告物件に接続すること によって初めて,被告物件で受信した番組を上記ハードディスク等に録画すること が可能であるから,デジタル格納部を被告物件に内蔵させる余地はない。そうする\nと,被告物件は,デジタル格納デバイスを含むユーザテレビ機器を備えた双方向テ レビガイドシステムの「生産に用いる物」ということができない。
また,前記(1)のとおり,本件発明は,独立型のアナログ格納デバイスでは不可能\nであった高度な機能をユーザに提供するために,双方向テレビ番組ガイドシステム\nがデジタル格納デバイスを備えることを目的としたものであり,従来技術に見られ ない特徴的技術手段は,双方向テレビ番組ガイドシステムがデジタル格納デバイス を備えること,すなわち,これを内蔵することにあるというべきである。そうする と,被告物件は,デジタル格納デバイスを内蔵するものではないから,本件発明に よる「課題の解決に不可欠なもの」であるとはいえない。
したがって,被控訴人による被告物件の製造,輸入,販売及び販売の申出は特許\n法101条2号所定の間接侵害に当たらない。これに対する控訴人の主張が理由のないものであることは,既に説示したところ から明らかである。
なお,被控訴人は,控訴人の間接侵害の主張が時機に後れた攻撃防御方法に当た る旨を主張するが,控訴理由書において,既に提出済みの証拠に基づき判断可能な\n主張をしたものであるから,訴訟の完結を遅延させるものとまではいえず,上記主 張を時機に後れた攻撃防御方法として却下することはしない。

◆判決本文

原審はこちら

◆平成28(ワ)37954

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令和5年5月26日 知財高裁特別部判決 令和4(ネ)10046号

知財高裁は、「サーバが国外に存在する場合であっても、当該行為の具体的態様、当該システムを構成する各要素のうち国内に存在するものが当該発明において果たす機能\・役割、当該システムの利用によって当該発明の効果が得られる場所、その利用が当該発明の特許権者の経済的利益に与える影響等を総合考慮し、当該行為が我が国の領域内で行われたものとみることができるときは、特許法2条3項1号の「生産」に該当すると解する」というものです。  なお、1審では、特許の技術的範囲には属するが、一部の構成要件が日本国外に存在するので、非侵害と認定されてました。\n

ア ネットワーク型システムの「生産」の意義
本件発明1は、サーバとネットワークを介して接続された複数の端末装置を備え るコメント配信システムの発明であり、発明の種類は、物の発明であるところ、そ の実施行為としての物の「生産」(特許法2条3項1号)とは、発明の技術的範囲に 属する物を新たに作り出す行為をいうものと解される。 そして、本件発明1のように、インターネット等のネットワークを介して、サー バと端末が接続され、全体としてまとまった機能を発揮するシステム(ネットワー\nク型システム)の発明における「生産」とは、単独では当該発明の全ての構成要件\nを充足しない複数の要素が、ネットワークを介して接続することによって互いに有 機的な関係を持ち、全体として当該発明の全ての構成要件を充足する機能\を有する ようになることによって、当該システムを新たに作り出す行為をいうものと解され る。
イ 被告サービス1に係るシステム(被告システム1)を「新たに作り出す行為」 被告サービス1のFLASH版においては、ユーザが、国内のユーザ端末のブラ ウザにおいて、所望の動画を表示させるための被告サービス1のウェブページを指\n定すると、被控訴人Y1のウェブサーバが上記ウェブページのHTMLファイル及 びSWFファイルをユーザ端末に送信し、ユーザ端末が受信した、これらのファイ ルはブラウザのキャッシュに保存され、その後、ユーザが、ユーザ端末において、 ブラウザ上に表示されたウェブページにおける当該動画の再生ボタンを押すと、上\n記SWFファイルに格納された命令に従い、ブラウザが、被控訴人Y1の動画配信 用サーバ及びコメント配信用サーバに対しリクエストを行い、上記リクエストに応 じて、上記各サーバが、それぞれ動画ファイル及びコメントファイルをユーザ端末 に送信し、ユーザ端末が、上記各ファイルを受信することにより、ブラウザにおい て動画上にコメントをオーバーレイ表示させることが可能\となる。このように、ユ ーザ端末が上記各ファイルを受信した時点において、被控訴人Y1の上記各サーバ とユーザ端末はインターネットを利用したネットワークを介して接続されており、 ユーザ端末のブラウザにおいて動画上にコメントをオーバーレイ表示させることが\n可能となるから、ユーザ端末が上記各ファイルを受信した時点で、本件発明1の全\nての構成要件を充足する機能\を備えた被告システム1が新たに作り出されたものと いうことができる(以下、被告システム1を新たに作り出す上記行為を「本件生産 1の1」という。)。
ウ 被告システム1を「新たに作り出す行為」(本件生産1の1)の特許法2条3項 1 号所定の「生産」該当性
特許権についての属地主義の原則とは、各国の特許権が、その成立、移転、効 力等につき当該国の法律によって定められ、特許権の効力が当該国の領域内にお いてのみ認められることを意味するものであるところ、我が国の特許法において も、上記原則が妥当するものと解される。 本件生産1の1において、各ファイルが米国に存在するサーバから国内のユー ザ端末へ送信され、ユーザ端末がこれらを受信することは、米国と我が国にまた がって行われるものであり、また、新たに作り出される被告システム1は、米国 と我が国にわたって存在するものである。そこで、属地主義の原則から、本件生 産1の1が、我が国の特許法2条3項1号の「生産」に該当するか否かが問題と なる。 ネットワーク型システムにおいて、サーバが日本国外(国外)に設置されるこ とは、現在、一般的に行われており、また、サーバがどの国に存在するかは、ネ ットワーク型システムの利用に当たって障害とならないことからすれば、被疑侵 害物件であるネットワーク型システムを構成するサーバが国外に存在していたと\nしても、当該システムを構成する端末が日本国内(国内)に存在すれば、これを\n用いて当該システムを国内で利用することは可能であり、その利用は、特許権者\nが当該発明を国内で実施して得ることができる経済的利益に影響を及ぼし得るも のである。
そうすると、ネットワーク型システムの発明について、属地主義の原則を厳格 に解釈し、当該システムを構成する要素の一部であるサーバが国外に存在するこ\nとを理由に、一律に我が国の特許法2条3項の「実施」に該当しないと解するこ とは、サーバを国外に設置さえすれば特許を容易に回避し得ることとなり、当該 システムの発明に係る特許権について十分な保護を図ることができないこととな\nって、妥当ではない。他方で、当該システムを構成する要素の一部である端末が国内に存在することを理由に、一律に特許法2条3項の「実施」に該当すると解することは、当該特許権の過剰な保護となり、経済活動に支障を生じる事態となり得るものであって、\nこれも妥当ではない。
これらを踏まえると、ネットワーク型システムの発明に係る特許権を適切に保 護する観点から、ネットワーク型システムを新たに作り出す行為が、特許法2条 3項1号の「生産」に該当するか否かについては、当該システムを構成する要素\nの一部であるサーバが国外に存在する場合であっても、当該行為の具体的態様、 当該システムを構成する各要素のうち国内に存在するものが当該発明において果\nたす機能・役割、当該システムの利用によって当該発明の効果が得られる場所、\nその利用が当該発明の特許権者の経済的利益に与える影響等を総合考慮し、当該 行為が我が国の領域内で行われたものとみることができるときは、特許法2条3 項1号の「生産」に該当すると解するのが相当である。 これを本件生産1の1についてみると、本件生産1の1の具体的態様は、米国 に存在するサーバから国内のユーザ端末に各ファイルが送信され、国内のユーザ 端末がこれらを受信することによって行われるものであって、当該送信及び受信 (送受信)は一体として行われ、国内のユーザ端末が各ファイルを受信すること によって被告システム1が完成することからすれば、上記送受信は国内で行われ たものと観念することができる。
次に、被告システム1は、米国に存在する被控訴人Y1のサーバと国内に存在 するユーザ端末とから構成されるものであるところ、国内に存在する上記ユーザ\n端末は、本件発明1の主要な機能である動画上に表\示されるコメント同士が重な らない位置に表示されるようにするために必要とされる構\成要件1Fの判定部の 機能と構\成要件1Gの表示位置制御部の機能\を果たしている。 さらに、被告システム1は、上記ユーザ端末を介して国内から利用することが できるものであって、コメントを利用したコミュニケーションにおける娯楽性の 向上という本件発明1の効果は国内で発現しており、また、その国内における利 用は、控訴人が本件発明1に係るシステムを国内で利用して得る経済的利益に影 響を及ぼし得るものである。 以上の事情を総合考慮すると、本件生産1の1は、我が国の領域内で行われた ものとみることができるから、本件発明1との関係で、特許法2条3項1号の「生 産」に該当するものと認められる。
これに対し、被控訴人らは、1)属地主義の原則によれば、「特許の効力が当該国 の領域においてのみ認められる」のであるから、国外で作り出された行為が特許 法2条3項1号の「生産」に該当しないのは当然の帰結であること、権利一体の 原則によれば、特許発明の実施とは、当該特許発明を構成する要素全体を実施す\nることをいうことからすると、一部であっても国外で作り出されたものがある場 合には、特許法2条3項1号の「生産」に該当しないというべきである、2)特許 回避が可能であることが問題であるからといって、構\成要件を満たす物の一部さ え、国内において作り出されていれば、「生産」に該当するというのは論理の飛躍 があり、むしろ、構成要件を満たす物の一部が国内で作り出されれば、直ちに、\n我が国の特許法の効力を及ぼすという解釈の方が、問題が多い、3)我が国の裁判 例においては、カードリーダー事件の最高裁判決(最高裁平成12年(受)第5 80号同14年9月26日第一小法廷判決・民集56巻7号1551頁)等によ り属地主義の原則を厳格に貫いてきたのであり、その例外を設けることの悪影響 が明白に予見されるから、仮に属地主義の原則の例外を設けるとしても、それは\n立法によってされるべきである旨主張する。
しかしながら、1)については、ネットワーク型システムの発明に関し、被疑侵 害物件となるシステムを新たに作り出す行為が、特許法2条3項1号の「生産」 に該当するか否かについては、当該システムを構成する要素の一部であるサーバ\nが国外に存在する場合であっても、前記 に説示した事情を総合考慮して、当該 行為が我が国の領域内で行われたものとみることができるときは、特許法2条3 項1号の「生産」に該当すると解すべきであるから、1)の主張は採用することが できない。
2)については、特許法2条3項1号の「生産」に該当するか否かの上記判断は、 構成要件を満たす物の一部が国内で作り出されれば、直ちに、我が国の特許法の\n効力を及ぼすというものではないから、2)の主張は、その前提を欠くものである。
3)については、特許権についての属地主義の原則とは、各国の特許権が、その 成立、移転、効力等につき当該国の法律によって定められ、特許権の効力が当該 国の領域内においてのみ認められることを意味することに照らすと、上記のとお り当該行為が我が国の領域内で行われたものとみることができるときに特許法2 条3項1号の「生産」に該当すると解釈したとしても、属地主義の原則に反しな いというべきである。加えて、被控訴人らの挙げるカードリーダー事件の最高裁 判決は、属地主義の原則からの当然の帰結として、「生産」に当たるためには、特 許発明の全ての構成要件を満たす物を新たに作り出す行為が、我が国の領域内に\nおいて完結していることが必要であるとまで判示したものではないと解され、ま た、我が国が締結した条約及び特許法その他の法令においても、属地主義の原則 の内容として、「生産」に当たるためには、特許発明の全ての構成要件を満たす物\nを新たに作り出す行為が我が国の領域内において完結していることが必要である ことを示した規定は存在しないことに照らすと、3)の主張は採用することができ ない。したがって、被控訴人らの上記主張は理由がない。
エ 被告システム1の「生産」の主体
被告システム1は、前記イのプロセスを経て新たに作り出されたものであるとこ ろ、被控訴人Y1が、被告システム1に係るウェブサーバ、動画配信用サーバ及び コメント配信用サーバを設置及び管理しており、これらのサーバが、HTMLファ イル及びSWFファイル、動画ファイル並びにコメントファイルをユーザ端末に送 信し、ユーザ端末による各ファイルの受信は、ユーザによる別途の操作を介するこ となく、被控訴人Y1がサーバにアップロードしたプログラムの記述に従い、自動 的に行われるものであることからすれば、被告システム1を「生産」した主体は、 被控訴人Y1であるというべきである。
オ まとめ
以上によれば、被控訴人Y1は、本件生産1の1により、被告システム1を「生 産」(特許法2条3項1号)し、本件特許権を侵害したものと認められる。

◆判決要旨
1審はこちら。

◆令和元年(ワ)25152

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◆平成30(ネ)10077
1審です。

◆平成28(ワ)38565

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令和4(行ケ)10092  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和5年3月27日  知的財産高等裁判所

 知財高裁は、ゲームプログラムについて、新規事項である&進歩性なしとした判断は誤りであるとして、拒絶審決を取り消しました。

当初明細書等及び第2次補正後の明細書等に記載の発明の技術的意義は、前 記2(1)イ及び(2)記載のとおり、ユーザの強さの段階を基準として所定範囲内の 強さの段階にある対戦相手を抽出することにより、従来のように対戦相手をラ ンダムに抽出する場合に比べて、対戦相手間の強さに大差が出て勝敗がすぐに ついてしまう戦いの数を低減することができ、また、対戦相手の強さに一定の ばらつきを含ませて対戦ゲームの難度を変化させ、ユーザのゲームに対する興 味を増大させることにある。 そして、「ゲーム」分野における技術常識に関して、「ユーザ」の「強さ」に、 攻撃力及び防御力以外に、体力、俊敏さ、所持アイテム数等が含まれることが 本願の出願時の技術常識であったことは、当事者間に争いがない(本件審決第 2の2(2)イ(ウ)〔本件審決12頁〕参照)。
上記のような、対戦ゲームにおいて、強さに大差のある相手ではなく、ユー ザに適した対戦相手を選択するという発明の技術的意義に鑑みれば、当初明細 書等記載の「強さ」とは、ゲームにおけるユーザの強さを表す指標であって、ゲームの勝敗に影響を与えるパラメータであれば足りると解するのが相当で\nあり、「強さ」を「攻撃力と防御力の合計値」とすることは、発明の一実施形態 としてあり得るとしても、技術常識上「強さ」に含まれる要素の中から、あえ て体力、俊敏さ、所持アイテム数等を除外し、「強さ」を「攻撃力と防御力の合 計値」に限定しなければならない理由は見出すことができない。言い換えれば、 「強さ」を「攻撃力及び防御力の合計値」に限定するか否かは、発明の技術的 意義に照らして、そのようにしてもよいし、しなくてもよいという、任意の付 加的な事項にすぎないと認められる。 そうすると、当初明細書等には、「強さ」の実施形態として、文言上は「攻撃 力及び防御力の合計値」としか記載されていないとしても、発明の意義及び技 術常識に鑑みると、第2次補正により、「強さ」を「攻撃力及び防御力の合計値」 に限定せずに、「数値が高い程前記対戦ゲームを有利に進めることが可能な所定のパラメータ」と補正したことによって、さらに技術的事項が追加されたも\nのとは認められず、第2次補正は、新たな技術的事項を導入するものとは認め られない。そうすると、第2次補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内 においてされたものであると認められ、特許法17条の2第3項の規定に違反 するものではないというべきである。 したがって、本件審決が、第1次補正発明の「強さ」について、第2次補正 により「数値が高い程前記対戦ゲームを有利に進めることが可能な所定のパラメータである強さ」と補正したことは新たな技術的事項を導入するものである\nとして、第2次補正は特許法17条の2第3項の規定に違反すると判断して第 2次補正を却下した(本件審決第2)のは誤りであると認められ、本件審決に は、原告主張の取消事由が認められる。
4 被告の主張に対する判断
(1) 被告は、当初明細書等の記載から、「強さ」が「攻撃力及び防御力の合計値」 に限定されるものであることは明らかである旨主張する(前記第3〔被告の 主張〕2(1)ア)。
しかし、前記3のとおり、「ゲーム」分野における技術常識に関して、「ユ ーザ」の「強さ」に、攻撃力及び防御力以外に、体力、俊敏さ、所持アイテ ム数等が含まれることが本願の出願時の技術常識であったことは、当事者間 に争いがない。そして、当初明細書等に、「強さ」について「攻撃力及び防御 力の合計値」と記載された箇所があるとしても、発明の技術的意義に鑑みれ ば、「強さ」とは、ゲームにおけるユーザの強さを表す指標であって、ゲームの勝敗に影響を与えるパラメータであれば足りるものと解され、「強さ」から\n「攻撃力及び防御力の合計値」以外の要素を除外する理由は見出されない。 対戦ゲームには様々な形態があり得るものであり、技術常識に照らすと、ゲ ームの形態に応じて勝敗に影響する「強さ」についても種々のパラメータが 想定されるものと認められ、段落【0028】に記載の「攻撃力及び防御力 等」における「等」や図2(b)における「…」が、「強さ」の要素のうち、 攻撃力及び防御力以外の体力、俊敏さ、所持アイテム数等の要素を示すと解 することは十分に可能\である。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。
(2) また、被告は、「数値が高い程前記対戦ゲームを有利に進めることが可能な所定のパラメータである強さ」という第2次補正後の請求項1、7及び8の\n文言によっては、「強さ」にどのようなパラメータが包含されるのかが具体的 に特定できず、第三者に不測の不利益を生じると主張する(前記第3〔被告 の主張〕2(1)イ)。
確かに、対戦ゲームには様々の形態があり得るものであり、技術常識に照 らすと、ゲームの形態に応じて勝敗に影響する「強さ」についても種々のパ ラメータが想定されるものと認められる。 しかし、各形態のゲームにおいてどのような「強さ」のパラメータを設定 するのが適当かは、当業者であれば適宜判断し得るものと推認され、ユーザ の強さを基準として所定範囲内の強さを有する他のユーザを対戦相手として 選択することにより、ユーザのゲームに対する興味の低下を防ぐという発明 の技術的意義に照らせば、ある形態の対戦ゲームにおいて「強さ」にどのよ うなパラメータが含まれるかは、当業者であれば想定し得るものと推認され る。そうすると、「強さ」が「攻撃力と防御力の合計値」に限定されていない としても、第三者に不測の不利益をもたらすものとは認められない。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。
(3) 被告は、第2次補正によって「強さ」が広範な概念へと拡張され、新たな 技術的事項を追加するものとなったこと、「数値が高い程前記対戦ゲームを 有利に進めることが可能な所定のパラメータである強さ」という第2次補正後の請求項1、7及び8の文言には、どのようなパラメータが包含されるの\nかが具体的に特定できず、第三者に不測の不利益をもたらすことから、第2 次補正は認めるべきでない旨主張する(前記第3〔被告の主張〕3)。 しかし、前記(1)及び(2)において述べたとおり、被告の上記主張は採用する ことができない。
(4) また、被告は、当初明細書等の記載から、「強さ」が「攻撃力及び防御力の 合計値」に限定されるものであることは明らかであると主張するが(前記第 3〔被告の主張〕4)、前記(1)のとおり、このような被告の主張は採用するこ とができない。

◆判決本文

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令和4(行ケ)10013 審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和5年1月18日  知的財産高等裁判所

CS関連発明について進歩性なしと判断されました。本人出願・本人訴訟です。多くの分割出願があります。
【請求項1】は以下です
コンピュータによって実行される方法であって、
サービスの要求を受けるステップと、
前記要求を処理するために指示情報を使用するステップと、を含み、
前記指示情報が認証情報に基づいて設定された情報であり、
25 前記認証情報が物品から取得される情報であり、
前記物品が前記認証情報を利用者に提供する物品である、方法。

上記記載によれば、引用発明においては、利用者が、自分が所持する携 帯電話機1に店舗ID、暗証番号、決裁(決済)方法、商品の購入金額を 入力し、QR決裁証明鍵発行要求として認証サーバ41に送信し、QR決 裁証明鍵発行要求を受信した認証サーバ41は、店舗及び利用者の認証処 理を行い、認証が認められる場合、決済方法の情報を含むQR決裁証明鍵 を生成し、これを携帯電話機1に送信し、その後、利用者が店舗において 購入希望商品の発注を行う際、店舗端末22に付属したQRコード読取装 置21は、携帯電話機1の表示部11に表\\示されたQR決裁証明鍵120 1を読み取るとともに、携帯電話機1の正面あるいは側面に印刷された標 識19,20から携帯電話製造番号と携帯電話番号を読み取り、その読取 結果を店舗端末22に転送し、店舗端末22は、携帯電話機1から読み 取った携帯電話製造番号、携帯電話番号及びQR決裁証明鍵1201を決 裁承認要求として認証サーバ41に送信し、認証サーバ41が、携帯電話 製造番号及び携帯電話番号が正当か否かを利用者情報DB44の登録内 容と照合して調べ、この結果、いずれか一方の番号が未登録のものである か、登録された番号と異なる場合には、不正利用であるものと判断し不正 利用情報データベースに登録した後、不正利用メッセージを店舗端末22 及び携帯電話機1に送信し、一方、携帯電話製造番号及び携帯電話番号の 両方が正当なものであり、しかも店舗端末22から受信したQR決裁証明 鍵1201の情報(全部または一部)が自分自身で発行した正規のもので あると認められた場合には、認証サーバ41は詳細決裁承認を店舗端末2 2に返信し、店員が、利用者本人に購入意思を確認した上で、決済処理が 行われていることを理解できる。
しかるところ、前記アのとおり、引用発明において、認証サーバ41が 「決済承認要求」(引用例1記載の「決裁承認要求」。以下同じ。)を受け付 けることは、本願発明の「サービスの要求を受けるステップ」に相当する ものである。そして、認証サーバ41は、決裁承認要求を受け付けると、 決裁承認要求に含まれる携帯電話製造番号及び携帯電話番号の両方が正 当であることを利用者情報DB44の登録内容と照合して確認し、かつ、 QR決裁証明鍵が自ら発行した正規のものであると認めた場合、決裁承認 要求に係る決裁承認を店舗端末22に返信していることからすれば、認証 サーバ41が、利用者情報登録DB44に登録された携帯電話機1の携帯 電話製造番号及び携帯電話番号と紐づけて自らが発行したQR決裁証明 鍵の情報を管理し、店舗端末22から送信された決裁承認要求に含まれる 携帯電話製造番号、携帯電話番号及びQR決裁証明鍵の情報が上記情報と 一致する場合には、決裁承認の処理を行い、そうでない場合には、決裁承 認の処理を行わない制御を行うための情報を有していることは自明であ り、また、利用者情報登録DB44に登録された携帯電話製造番号及び携 帯電話番号が携帯電話機1から取得されたことも自明である。
そうすると、かかる制御を行うための情報は、「コンピュータ」である認 証サーバ41が、「サービスの要求」としてのQR決裁承認要求を認めるか 否かを処理するために使用する情報であって、「物品」である携帯電話機1 から取得される「認証情報」である携帯電話製造番号及び携帯電話番号に 基づいて設定された情報であるといえるから、本願発明の「指示情報」に 相当するものと認められる。
以上によれば、引用例1に接した当業者は、引用発明において、かかる 制御を行うための情報を有しているものと理解するから、相違点1に係る 本願発明の構成(「(QR決裁承認要求に係る)前記要求を処理するために指示情報を使用するステップ」の構\成)及び相違点2に係る本願発明の構\n成(「前記指示情報が認証情報に基づいて設定された指示情報」であるとの 構成)とすることを容易に想到することができたものと認められる。\n

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令和4(行ケ)10039  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年12月21日  知的財産高等裁判所

CS関連発明について、進歩性無しとした審決が維持されました。出願人はぐるなびです。

ア 前記(1)のとおり、相違点3は、施設端末に予約内容を通知した後、ユーザー\n端末に第2施設の情報を通知する処理を行うことにつき、本願補正発明では、前記 施設端末からの返信を有効に受け付ける期間として予め設定された待機期間内に前\n記施設端末からの返信がない場合であるのに対し、引用発明では、施設端末から受 信する予約結果情報の予\約登録可否の結果がNGであった場合である点で相違する というものである。
イ ところで、施設の予約は、利用日又は利用日時を指定して行うものであり、\n予定される利用日又は利用日時よりも前に予\約を完了するという本来的な要請があ る。そして、引用発明は、ある特定の施設の予約を目的とするものではなく、利用\n者の希望する条件に合致した複数の施設を対象とし、一つの施設の予約ができなか\nった場合に、別の施設の予約をすることが可能\であるような施設予約システムにお\nける予約方法であるところ、前記2(1)イのとおり、引用発明における施設予約シス\nテムは、「施設予約情報サーバ30から、当該予\約情報に基づく、自動的、あるいは 宿泊施設の予約担当者により判断される予\約登録可否(OKかNG)の予約結果情\n報を受信し、」「受信した予約結果情報の予\約登録可否の結果がNGであった場合」 に、次の候補となる施設の検索をしてユーザーに送信して、ユーザーが別の施設の 予約を行うものとされているから、施設端末に当たる「施設予\約情報サーバ」から の予約結果情報の受信は、宿泊施設の予\約担当者による判断の時期によっては、相 当程度に遅くなる場合も想定され、その間に、当初の検索条件に合致する別候補の 施設の予約枠が埋まってしまうこともある。\nそうすると、引用発明には、予定される利用日又は利用日時よりも前に、利用者\nの希望する条件に合致した施設を予約するという本来的な要請を満たすことができ\nないおそれがあるといえる。
ウ 次に、前記2(2)イの引用文献2記載技術をみると、宿泊施設の仮予約におい\nて、「ホテル端末103が宿泊可否の通知を一定時間経過(タイムアウト)しても行 わなかった場合、ホテル端末103に対して、キャンセルの通知を送信し、次のホ テルへ空き問い合わせ情報を送信する」ものであるから、甲2には、施設端末が、 一定時間を経過しても予約可否の回答をしなかった場合には、キャンセルとして扱\nい(以下「タイムアウト処理」という。)、次の施設に問い合わせるという技術が開 示されているといえる。そして、予定される利用日又は利用時間よりも前に、タイ\nムアウト処理をして、次の施設に問合せをすることで、最初に問合せをした施設か らの回答を待っていたために、予定される利用日又は利用日時よりも前に、利用者\nの希望する条件に合致した施設を予約するという本来的な要請を満たすことができ\nなくなるという事態を回避するのに、一定の効果があると認められる。
エ ところで、引用発明と引用文献2記載技術とは、複数の施設を対象とした施 設予約システムにおける施設予\約方法という共通の技術分野に属するものであって、 第1施設に対して予約可否の問合せを行い、第1施設から予\約不可の返信を受けた 場合には第1施設に類似する他の施設を抽出するという手法も共通するところ、前 記イのとおり、引用発明において、第1施設から予約可否の返信が長時間送信され\nない場合には、予定される利用日又は利用日時よりも前に、利用者の希望する条件\nに合致した施設を予約するという本来的な要請を満たすことができないおそれがあ\nるところ、上記本来的な要請を満たすために、第1施設からの予約可否の返信を長\n時間待ち続けるという事態を回避しようとすることは、当業者であれば当然に着想 するものと認められるから、引用発明に引用文献2記載技術のタイムアウト処理を 適用する動機付けがあるといえる。 そして、引用発明に引用文献2記載技術のタイムアウト処理を適用すると、引用 発明は、施設端末からの返信を有効に受け付ける期間としてあらかじめ設定された 待機期間内に前記施設端末からの返信がない場合には、予約結果情報の予\約登録可 否の結果がNGであった場合と同様に、予約内容に基づいて第1施設を除く一又は\n複数の第2施設を抽出し、前記抽出された一又は複数の前記第2施設の情報を前記 ユーザー端末に通知する処理を行うことになる。 そうすると、相違点3に係る構成は、引用発明に引用文献2記載技術を適用する\nことより、当業者であれば容易に想到し得るものと認められる。

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令和4(ネ)10008  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和4年11月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明の侵害訴訟の控訴審判断です。1審は技術的範囲に属すると認められるが、無効理由あり(新規性なし)として権利行使不能(特104-3)と判断しました。知財高裁も同じです。なお、二審第1回口頭弁論期日においてした訂正の再抗弁は時機に後れた攻撃防御方法に当たるとして却下されました。

(4) 控訴人らによる訂正の再抗弁の主張について
当裁判所は、令和4年9月22日の当審第1回口頭弁論期日において、控訴人らが同月5日付け控訴人ら第4準備書面に基づいて提出した訂正の再抗弁の主張について、被控訴人の申立てにより、時機に後れた攻撃防御方法に当たるものとして却下したが、その理由は、以下のとおりである。\n
ア 一件記録によれば、1)被控訴人は、令和元年12月19日の原審第1回弁論準備手続期日において、本件発明5に係る本件特許に乙8を主引用例とする新規性欠如及び進歩性欠如の無効理由(本件の争点4−1及び4−3)等が存在するとして無効の抗弁を主張し、令和3年7月20日の原審第3回弁論準備手続期日において、本件発明1に係る本件特許に乙8を主引用例とする新規性欠如及び進歩性欠如の無効理由が存在するとして無効の抗弁を追加して主張したこと、2)その上で、控訴人らが、同年9月29日の原審第4回弁論準備手続期日において、他に主張、立証はない旨陳述した後、同日、原審が、口頭弁論を終結し、同年12月9日、被控訴人が主張する上記無効の抗弁を認めて控訴人らの請求を棄却する原判決を言い渡したこと、3)その後、控訴人らは、当審において、令和4年7月21日に書面による準備手続が終結するまで、訂正の再抗弁の主張をしなかったことが認められる。
イ 以上を前提に検討するに、本件特許権の侵害論に関する抗弁の主張は、本来、原審において適時に行うべきものであるところ、控訴人らは、原審において、令和3年9月29日の原審第4回弁論準備手続期日において、他に主張、立証はない旨陳述するまでの間に、当審で主張する訂正の再抗弁の主張をしなかったものである。加えて、控訴人らは、原審が原判決において被控訴人が主張する上記無効の抗弁を認めた判断をしたにもかかわらず、当審における争点整理手続においても、書面による準備手続が終結するまで、訂正の再抗弁の主張をしなかったものであることからすると、当審における上記訂正の再抗弁の主張は、控訴人らの少なくとも重大な過失により時機に後れて提出された攻撃防御方法であるというべきである。そして、当審において、控訴人らに訂正の再抗弁の主張を許すことは、被控訴人に対し、上記主張に対する更なる反論の機会を与える必要が生じ、これに対する控訴人らの再反論等も想定し得ることから、これにより訴訟の完結を遅延させることとなることは明らかである。そこで、当審は、民事訴訟法297条において準用する同法157条1項に基づき、控訴人らの訂正の再抗弁の主張を却下したものである。

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1審はこちら。

◆令和1(ワ)25121

本件特許の審決取消訴訟です。

◆令和3(行ケ)10027

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令和4(行ケ)10008  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年9月28日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、訂正請求が新規事項であるので認められないとした審決が維持されました。

ア 本件訂正により、請求項1には、端末装置から取得された第1患者識別 情報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報が一致すると判定された 場合に、1)端末装置から取得された看護師又は医師を識別するための第1 看護師等識別情報と、第2看護師等識別情報とが一致すると判定した場合 に、第2患者識別情報に対応する患者医療情報のうち前記看護師又は前記 医師が必要とする医療情報を含む表示画面を端末装置へ出力し、2)端末か ら取得された医師を識別するための第1医師識別情報と、第2医師識別情 報とが一致すると判定した場合に、医師専用画面を端末に出力する、発明 特定事項を含むものとなり、2)が訂正事項1−1−3に関するものである。
そして、本件明細書の【0143】ないし【0161】(実施の形態4) には、看護師又は医師が必要とする医療情報を含む表示画面を出力する構\ 成に関する記載があり、この実施の形態4に関するフローチャート(図3 7、図38)についてみると、 端末装置から取得された第1患者識別情 報とあらかじめ記憶された第2患者識別情報が一致すると判定された場 合に、端末装置に患者用画面を表示し(S21)(図11、図12)、 端 末装置から取得し出力されたIDを、医療用サーバを経て情報処理装置が 取得し(S85)、このIDが看護師IDであると判定される(S87、8 8)と、看護師用専用画面(図20ないし22)が表示され、 看護師I Dでなく(S87の「No」)、医師IDであると判定されると(S151)、 医師専用画面(図35、図36)が表示されるフローが開示されている。\n
この記載からすると、S87は看護師IDか否かを判定するステップであ り、S151は医師IDであるか否かを判定するステップであるといえる。 こうしたS87、S151は、端末装置から取得された看護師又は医師を 識別するための第1看護師等識別情報と、第2看護師等識別情報とが一致 すると判定した場合に、第2患者識別情報に対応する患者医療情報のうち 前記看護師又は前記医師が必要とする医療情報を含む表示画面を端末装\n置へ出力する(前記1))ことに対応するもの、すなわち、第2判定部及び 第2出力部に関するものであり、さらに、医師を識別するための第1医師 識別情報を端末から取得して(第3取得部)、第3判定部及び第3出力部に 関するフローが続けて行われることは、記載も示唆もない。なお、本件明 細書の【0088】ないし【0125】(実施の形態2)は、看護師IDの 判定と看護師用専用画面を出力し表示するフローが記載されており、医師\nIDであると判定した場合に看護師専用画面を出力し表示してもよいと\nの記載があるものの(【0125】)、第2判定部及び第2出力部に続けて、 医師を識別するための第1医師識別情報を取得し(第3取得部)、第3判定 部及び第3出力部に関するフローが続けて行われることに関するもので はない。その他、本件明細書には、第2判定部及び第2出力部と、第3判 定部と第3出力部の両方を備え、また、1つのシステムで構成されること\nについての記載も示唆もないし、このような事項は、当業者にとって自明 であるともいえない。
そうすると、前記2)、すなわち、訂正事項1−1−3は、本件明細書又 は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係 において新たな技術的事項を導入するものであるから、特許法134条の 2第9項が準用する同法126条5項の規定に反するものであり、訂正要 件を満たさないというべきである。
・・・
イ これに対し、原告は、前記第3の1 ア のとおり、本件訂正後の請 求項1は、本件明細書の【0066】ないし【0090】、図37及び図 38にそのまま開示されている旨主張するが、原告が指摘する【006 6】ないし【0087】は実施の形態1、すなわち、患者用バーコード を読み取り、一致すると患者用画面を表示すること(構\成要件A1ない しC1)に関する事項であり、訂正事項1−1−3に関するものではな い。そして、実施の形態4に関する本件明細書の記載事項と図37及び 図38によれば、訂正事項1−1−3が新たな技術的事項を導入するも のであることは、前記アのとおりである。 また、原告は、前記第3の1 ア のとおり、本件明細書の【014 3】の記載を挙げて、本件明細書の実施の形態4は、実施の形態2を取 り込んだものであり、実施の形態2の構成及び作用に加えて、【0147】\nないし【0149】の記載からすれば、本件明細書には、第3取得部及 び第3判定部に関する構成が開示されている旨主張する。\n
しかし、【0143】は、「実施の形態4は医師が患者の医療情報を確 認するための医師専用画面30を表示部35に表\示する実施の形態に関 する。以下、特に説明する構成、作用以外の構\成および作用は実施の形 態2と同等であり、簡潔のため記載を省略する。…」とあるが、前記ア で指摘した実施の形態4に関するフロー図(図37、図38)からする と、ここでいう記載の省略とは、前記アの (端末装置から取得し出力 されたIDを、医療用サーバを経て情報処理装置が取得し(S85)、こ のIDが看護師IDであると判定される(S87、88)と、看護師用 専用画面(図20ないし22)が表示されること)に関する説明(実施\nの形態2)を省略するものであり、【0146】ないし【0149】は、 端末装置から取得し出力されたIDが医師である場合に関する説明であ って、第2判定部で端末から取得した識別情報が医師IDであると判定 し(第2判定部)、看護師専用画面が出力(第2出力部)された後、さら に続けて、医師を識別するための第1医師識別情報を取得し(第3取得 部)、第3判定部及び第3出力部に関するフローが続けて行われる構成を\n開示するものではない。したがって、前記アの説示に反する原告の主張はいずれも理由がない。

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平成30(ネ)10077  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和4年7月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 海外サーバからのサービス提供が特許発明の技術的範囲に属する場合に、1審は属地主義の原則からこれを認めませんでしたが、知財高裁2部は、日本特許の効力を認めました。

我が国は、特許権について、いわゆる属地主義の原則を採用しており、これによれば、日本国の特許権は、日本国の領域内においてのみ効力を有するものである(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁、前掲最高裁平成14年9月26日第一小法廷判決参照)。そして、本件配信を形式的かつ分析的にみれば、被控訴人ら各プログラムが米国の領域内にある電気通信回線(被控訴人ら各プログラムが格納されているサーバを含む。)上を伝送される場合、日本国の領域内にある電気通信回線(ユーザが使用する端末装置を含む。)上を伝送される場合、日本国の領域内でも米国の領域内でもない地にある電気通信回線上を伝送される場合等を観念することができ、本件通信の全てが日本国の領域内で完結していない面があることは否めない。
しかしながら、本件発明1−9及び10のようにネットワークを通じて送信され得る発明につき特許権侵害が成立するために、問題となる提供行為が形式的にも全て日本国の領域内で完結することが必要であるとすると、そのような発明を実施しようとする者は、サーバ等の一部の設備を国外に移転するなどして容易に特許権侵害の責任を免れることとなってしまうところ、数多くの有用なネットワーク関連発明が存在する現代のデジタル社会において、かかる潜脱的な行為を許容することは著しく正義に反するというべきである。他方、特許発明の実施行為につき、形式的にはその全ての要素が日本国の領域内で完結するものでないとしても、実質的かつ全体的にみて、それが日本国の領域内で行われたと評価し得るものであれば、これに日本国の特許権の効力を及ぼしても、前記の属地主義には反しないと解される。
したがって、問題となる提供行為については、当該提供が日本国の領域外で行われる部分と領域内で行われる部分とに明確かつ容易に区別できるか、当該提供の制御が日本国の領域内で行われているか、当該提供が日本国の領域内に所在する顧客等に向けられたものか、当該提供によって得られる特許発明の効果が日本国の領域内において発現しているかなどの諸事情を考慮し、当該提供が実質的かつ全体的にみて、日本国の領域内で行われたものと評価し得るときは、日本国特許法にいう「提供」に該当すると解するのが相当である。
c これを本件についてみると、本件配信は、日本国の領域内に所在するユーザが被控訴人ら各サービスに係るウェブサイトにアクセスすることにより開始され、完結されるものであって(甲3ないし5、44、46、47、丙1ないし3)、本件配信につき日本国の領域外で行われる部分と日本国の領域内で行われる部分とを明確かつ容易に区別することは困難であるし、本件配信の制御は、日本国の領域内に所在するユーザによって行われるものであり、また、本件配信は、動画の視聴を欲する日本国の領域内に所在するユーザに向けられたものである。さらに、本件配信によって初めて、日本国の領域内に所在するユーザは、コメントを付すなどした本件発明1−9及び10に係る動画を視聴することができるのであって、本件配信により得られる本件発明1−9及び10の効果は、日本国の領域内において発現している。これらの事情に照らすと、本件配信は、その一部に日本国の領域外で行われる部分があるとしても、これを実質的かつ全体的に考察すれば、日本国の領域内で行われたものと評価するのが相当である。
d 以上によれば、本件配信は、日本国特許法2条3項1号にいう「提供」に該当する。
なお、これは、以下に検討する被控訴人らのその余の不法行為(形式的にはその一部が日本国の領域外で行われるもの)についても当てはまるものである。
e 被控訴人らは、被控訴人ら各プログラムは米国内のサーバから自動的に配信されるものであり、提供行為は米国の領域内で完結しているから、本件配信は日本国特許法にいう「提供」に当たらない旨主張するが、上記説示したところに照らすと、これを採用することはできない。
(ウ) 以上のとおりであるから、被控訴人らは、本件配信をすることにより、被控訴人ら各プログラムの提供をしているといえる(特許法2条3項1号)。
イ 被控訴人ら各プログラムの提供の申出被控訴人らは、被控訴人ら各サービス(令和2年9月25日以降は被控訴人らサービス1。以下同じ。)の提供のため、ウェブサイトを設けて多数の動画コンテンツのサムネイル又はリンクを表\示しているところ(甲3ないし5)、これは、「提供の申出」に該当する(特許法2条3項1号)。\n
ウ 被控訴人ら各装置の生産
被控訴人らは、被控訴人ら各サービスの提供に際し、インターネットを介して日本国内に所在するユーザの端末装置に被控訴人ら各プログラムを配信しており、また、被控訴人ら各プログラムは、ユーザが被控訴人ら各サービスのウェブサイトにアクセスすることにより、ユーザの端末装置にインストールされるものである(前記3(2)イ、被控訴人らが主張する被控訴人ら各サービスの内容)。そうすると、被控訴人らによる本件配信及びユーザによる上記インストールにより、被控訴人ら各装置(令和2年9月25日以降は被控訴人ら装置1。以下同じ。)が生産されるものと認められる。そして、被控訴人ら各サービス、被控訴人ら各プログラム及び被控訴人ら各装置の内容並びに弁論の全趣旨に照らすと、被控訴人ら各プログラムは、被控訴人ら各装置の生産にのみ用いられる物であると認めるのが相当であり、また、被控訴人らが業として本件配信を行っていることは明らかであるから、被控訴人らによる本件配信は、特許法101条1号により、本件特許権1を侵害するものとみなされる。
エ 被控訴人ら各装置の使用
上記ウのとおり、被控訴人ら各プログラムは、ユーザが被控訴人ら各サービスのウェブサイトにアクセスすることにより、ユーザの端末装置にインストールされるものであるし、被控訴人ら各装置を本件発明1の作用効果を奏する態様で用いるのは、動画やコメントを視聴するユーザであるから、被控訴人ら各装置の使用の主体は、ユーザであると認めるのが相当である。控訴人が主張するように被控訴人ら各装置の使用の主体が被控訴人らであると認めることはできない。
オ 被控訴人ら各プログラムの生産(端末装置における複製)
控訴人は、本件配信によりユーザの端末装置上に被控訴人ら各プログラムが複製され、これをもって、被控訴人らは被控訴人ら各プログラムを生産していると主張する。しかしながら、上記ウのとおり、被控訴人ら各プログラムは、ユーザが被控訴人ら各サービスのウェブサイトにアクセスすることにより、ユーザの端末装置にインストールされるものであるから、ユーザの端末装置上において被控訴人ら各プログラムを複製している主体は、ユーザであると認めるのが相当である。控訴人の上記主張は、採用することができない。
カ 被控訴人ら各プログラムの生産(開発)
前記(1)カ及び(2)のとおり、被控訴人HPSは、被控訴人FC2と共同して、被控訴人らプログラム1を開発したものと認められるところ、これが被控訴人らプログラム1の生産に当たることは明らかである(特許法2条3項1号)。他方、前記(1)ケ及びサのとおり、被控訴人FC2は、被控訴人らサービス2及び3を第三者から譲り受け、ユーザに対する提供を開始したものと認められ、その他、被控訴人らが被控訴人らプログラム2又は3を開発したものと認めるに足りる証拠はないから、被控訴人らプログラム2及び3については、被控訴人らがこれを生産したということはできない。この点に関し、控訴人は、証拠(甲29の1及び2、30、36、37)を根拠に、被控訴人らは被控訴人らサービス2及び3につき各種機能の追加をしているのであるから、被控訴人らが被控訴人らプログラム2及び3の開発をしていることは明らかである旨主張する。しかしながら、これらの証拠により認められる被控訴人らサービス2及び3のアップデートの内容が本件発明1−9又は1−10の技術的範囲に属すると認めるに足りる証拠はないから、これらのアップデートをもって、被控訴人らが本件特許権1を侵害する態様で被控訴人らプログラム2又は3を開発したと認めることはできない。\n
キ 被控訴人ら各プログラムの生産(アップデートの際の複製)
控訴人は、被控訴人らは上記カのとおりの各種機能の追加を行う際、被控訴人ら各プログラムを複製して生産したと主張するが、被控訴人らがこれらのアップデートの際に本件特許権1を侵害する態様で被控訴人ら各プログラムを複製したものと認めるに足りる証拠はない。\n
ク 被控訴人ら各プログラムの譲渡及び譲渡の申出(被控訴人HPSによる被控訴人ら各プログラムの納品)\n
前記(1)によると、被控訴人HPSは、被控訴人らプログラム1を開発し、これを被控訴人FC2に納品したものと認められるが、前記(2)のとおり、被控訴人らが互いに意思を通じ合い、相互の行為を利用し、共同して被控訴人らプログラム1を開発し、被控訴人ら各サービスを運営するなどしてきたものと認められることに照らすと、被控訴人HPSが被控訴人FC2に対して被控訴人らプログラム1を納品する行為は、共同侵害者間の内部行為であると評価することができるから、これを独立した実施行為とみるのは相当でない。なお、前記(1)ケ及びサのとおりであるから、被控訴人HPSが被控訴人FC2 に対し被控訴人らプログラム2又は3を納品した事実を認めることはできない。
(5) 小括
以上によると、被控訴人らには、被控訴人らプログラム1の生産並びに被控訴人ら各プログラムの提供及び提供の申出を行うことによる本件特許権1の直接侵害と被控訴人ら各プログラムの提供を行うことによる本件特許権1の間接侵害が成立し、被控訴人らは、これらの侵害行為によって控訴人に生じた損害を連帯して賠償する責任を負うというべきである。\n
15 争点7(差止請求及び抹消請求の可否)について
(1) 前記14(4)のとおり、被控訴人らは、被控訴人らサービス1に関し、本件特許権1を侵害する者に該当する。 もっとも、前記14(4)のとおり、被控訴人らは、被控訴人ら装置1の生産又は使用をしている者ではなく、そのような行為に及ぶおそれがある者でもないと認められるから、この点については、被控訴人らが本件特許権1を侵害する者又は侵害するおそれがある者に該当するということはできず、被控訴人ら装置1の生産又は使用の差止請求は理由がない。 そうすると、被控訴人らサービス1については、被控訴人らに対し、被控訴人らプログラム1の生産、譲渡等及び譲渡等の申出の差止め並びに被控訴人らプログラム1の抹消を命じるのが相当である。\n
(2)ア 前記14(1)トのとおり、被控訴人FC2は、SN社に対し、令和2年9月25日、被控訴人らサービス2及び3に係る事業を譲渡したものである。そうすると、現時点においては、被控訴人らがユーザに対し被控訴人らサービス2及び3の提供をするおそれはなくなったというべきであるから、被控訴人らサービス2及び3について、被控訴人らが本件特許権1を侵害する者又は侵害するおそれがある者に該当するということはできず、被控訴人ら装置2及び3の生産又は使用並びに被控訴人らプログラム2及び3の生産、譲渡等及び譲渡等の申出の差止請求は理由がない。もっとも、前記14(1)の事実及び弁論の全趣旨によると、被控訴人らが現時点においても被控訴人らプログラム2及び3を所持している蓋然性は高いと認められるから、侵害の予防のため、被控訴人らに対し、被控訴人らプログラム2及び3の抹消を命じるのが相当である。\n
イ 控訴人は、被控訴人らサービス2及び3の事業譲渡に係る契約書に多数の不備があることを根拠に、当該事業譲渡はされていない旨主張する。確かに、乙99の1の契約書には英文表記等の観点から幾つかの不備が認められるが、そのことのみをもって、当該事業譲渡の事実を否定することはできない。また、控訴人は、SN社が被控訴人らに対し被控訴人らサービス2及び3の再譲渡をする可能\性があるとも主張するが、そのような事実を認めるに足りる証拠はない。したがって、控訴人のこれらの主張を採用することはできない。
(3) 以上によると、控訴人の被控訴人らに対する差止請求及び抹消請求は、被控訴人らプログラム1の生産、譲渡等及び譲渡等の申出の差止め並びに被控訴人ら各プログラムの抹消の限度で認容するのが相当である。\n
なお、被控訴人らは、本件において認容される損害賠償請求の額に照らすと、控訴人が差止め及び抹消を求めることは権利の濫用に該当する旨主張する。しかしながら、当裁判所が認容する損害賠償請求の額(1億円及びこれに対する遅延損害金)に加え、被控訴人らによる本件特許権1の侵害の態様、現在における侵害の危険等にも照らすと、控訴人において差止め及び抹消を求めることが権利の濫用に該当すると評価することはできない。 また、被控訴人らは、被控訴人らサービス1のうちFLASH版に係るものについては、公開が停止されたため、これに係る差止め及び抹消を求めることはできない旨主張する。しかしながら、仮に、被控訴人らが被控訴人らサービス1のうちFLASH版に係るものの公開を停止したとしても、被控訴人らサービス1に関し、当裁判所が差止めを命じるのは、被控訴人らプログラム1の生産、譲渡等及び譲渡等の申出であり、また、当裁判所が抹消を命じるのは、被控訴人らプログラム1であり、被控訴人らプログラム1は、別紙被控訴人らプログラム目録記載1のとおりに特定されるものであるところ、当該特定に当たり、FLASH版であるか否かは問題とされていないのであるから、差止め及び抹消を命じる主文1項(1)及び(2)の対象たる被控訴人らプログラム1からFLASH版に係るものを除外する必要はない。

◆判決本文

1審はこちらです。1審では、第1,第2の表示欄の大きさを特定した構\成が非充足と判断されています。

◆平成28(ワ)38565
以上のとおり,「第1の表示欄」は動画を表\示するために確保された領域(動画表示可能\領域),「第2の表示欄」はコメントを表\示するために確保された領域(コメント表示可能\領域)であり,「第2の表示欄」は「第1の表\示欄」よりも大きいサイズでいずれも固定された領域であると解されるところ,被告ら各装置においては,動画表示可能\領域(被告ら装置1における「StageオブジェクトA」,被告ら装置2及び3における<iflame>要素又は<video>要素)とコメント表示可能\領域(被告ら装置1における「CommentDisplayオブジェクトD」,被告ら装置2及び3における<canvas>要素)は同一のサイズであるから,被告ら各装置は,「第1の表示欄」及び「第2の表\示欄」に相当する構成を有するとは認められない。\n 今回侵害となった特許4734471 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-4734471/9085C128B7ED7D57F6C2F09D9BE4FCB496E638331DB9EC7ADE1E3A44999A3878/15/ja 1審と同じく侵害とはならなかった特許4695583 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-4695583/7294651F33633E1EBF3DEC66FAE0ECAD878D19E1829C378FC81D26BBD0A4263B/15/ja

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令和2(ネ)10032  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和4年7月20日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 CS関連発明の特許権侵害に対して、原審は約3600万円の損害賠償を認めました。1審原告は、請求を2億円に拡張する控訴をし、知財高裁(2部)は約1億2000万円の損害賠償を認めました。
原審(平成28年(ワ)7678号)はアップされていません。

(ア) 原判決別紙「本件ソフト・ハード機器の売上額(裁判所の認定)」のとお\nり、本件において一審被告が受けた利益として認められる本件ソフト及びハードウ\nェアの売上額が合計2億5714万4027円であるのに対し、後記のとおり、本 件において一審被告が受けた利益として認められる月次利用料(被告システムない し本件ソフトの導入後5年以内に支払われるもの。以下同じ。)に係る売上額は、\n合計3億9531万1537円であり、月次利用料に係る売上額は、本件ソフト及\nびハードウェアの売上額の約1.5倍にも及ぶ高額のものであって、これを単なる データベースの更新費用等であるとみることは困難であること、一般に被告システ ムないし本件ソフトのように内容の更新が絶対に必要なデータベースを用いるシス\nテムないしソフトウェアにおいては、適時のデータベースの更新がなければシステ\nムないしソフトウェアとしての意味をなさないから、当該システムないしソ\フトウ ェアを導入する際に、更新があることを当然の前提にしてこれを含んだ価格設定を することには十分な合理性があること、弁論の全趣旨によると、一審被告は、被告\nシステムないし本件ソフトを導入した医療機関が月次利用料を3か月間支払わない\nときは、被告システムないし本件ソフトが起動しないような措置を執っているもの\nと認められること(一審被告第3準備書面5〜7頁)などの事情に照らすと、甲2 0及び48に月次利用料について「データベース更新料等」の記載があるとしても、 月次利用料に係る売上げは、被告システムないし本件ソフトの譲渡の対価(譲渡代\n金の延べ払い)の性質を持つものとして、これを一審被告が得た利益に含めるのが 相当である。

◆判決本文

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令和1(ワ)21901  特許権侵害損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年5月31日  東京地方裁判所

 CS関連発明についての特許権侵害事件です。東京地裁40部は、無効理由ありとして、権利行使不能と判断しました。本件発明は「〜表\示方法」であり、被告地図プログラムの配信が、特許法101条4号の「その方法の使用にのみ用いる物」に該当するかの争点については無効理由ありとしたことで判断されていません。

原告らは、乙22文献には、「枠要素」に相当する構成や画像を「当\nてはめ」る構成の開示がないと主張する。\n
そこで検討するに、乙22文献には、1)Webクライアントの記憶 装置につき、「記憶装置2は、…表示装置3に地図を表\示するために 必要なデータ種別及びデータ領域を管理する管理テーブルとサーバー 4から送信されてきた地図データを格納するものである。」、「管理 テーブルは、データ種別管理テーブルとデータ領域管理テーブルから なる。…データ領域管理テーブルは、データ領域のメッシュ番号とデ ータ種別のレイヤー番号により記憶装置2に格納された地図データを 管理するものであり」(段落【0010】)という記載が認められ、 2)メッシュ番号につき、「図2に示すように地図データを表示する領\n域(メッシュ)が識別できるデータ領域のメッシュ番号」(段落【0 014】)、「メッシュ番号は、地図のデータの範囲を含む矩形領域 を任意の矩形サイズで分割した領域に振られる番号であり、例えば北 海道の地図データを作成する場合の、メッシュ番号の採番状況を示し たのが図9である。」(段落【0026】)という記載が認められ、 3)表示領域につき、「Webクライアントからの地図データ要求では、\n図8に示すように…1データの表示領域(メッシュ番号)を指定する\n形式で、複数回の要求を行うことによって、必要範囲の地図データを Webサーバーから取得する。」(段落【0024】)、「1データ の表示領域の指定には、メッシュ・レイヤーインデックスファイルで\n管理するこのメッシュ番号を指定する。このことにより、表示領域を\n直ちに指示することが可能となる。座標単位は、任意に決定されるマ\nクロ座標であるが、原点位置(座標0,0)の緯度・経度とメッシュ の矩形サイズ(距離)は地図データ作成時に指定するため、各メッシ ュ原点(左下座標)の緯度・経度は計算により求められる。」(段落 【0026】)という記載が認められ、4)地図の表示につき、「地図\nデータを取得できたものから地図の描画処理を行うため、画面上の地 図表示領域には徐々に地図が表\示されていく」(段落【0032】) という記載が認められる。
上記各記載に加えて、【図1】、【図2】、【図8】、【図9】、 【図11】の記載を併せ考慮すれば、表示領域は、原点位置が計算に\nより求められるものであること、Webクライアントは、地図データ を表示するための矩形領域を識別するメッシュ番号の指定により、必\n要範囲の地図データをWebサーバーから取得し、表示領域を指示す\nること、取得された地図データは、メッシュ番号のある管理テーブル とは別の場所で記憶され、描画処理により、地図が画面上の表示領域\nに表示されること、以上の内容が乙22文献により理解されるものと\n認められる。 そうすると、乙22文献における「表示領域」は、メッシュ分割し\nた地図データを指定してWebクライアントのディスプレイ表示の所\n定の位置に地図を表示させるためのものであるから、乙22文献には、\n本件各発明における画像を「当てはめ」る「枠要素」に相当する構成\nが開示されていると認めるのが相当である。
b これに対し、原告らは、乙22文献における「地図データ」は、数 値データ(ベクターデータ)であるから、これに基づき表示を行う場\n合に「当てはめ」を行う「領域」をビューアに設定する必要はないと 主張する。しかしながら、上記にいう必要性の問題は、構成が開示さ\nれているかどうかという問題とは、必ずしも同一の事柄ではなく、乙 22文献における「地図データ」がベクターデータであることは、上 記発明の認定を左右するものではない。
●(省略)●
のみならず、乙22文献の「地図データ」がベクターデータである としても、これをいわゆるラスターデータに置き換えることは、技術 説明会における当事者双方の口頭議論の結果及び専門委員3名の各説 明内容を踏まえると、当時の技術常識に照らし、当業者が適宜になし 得る事項にすぎず実質的相違点に当たらず、又は明らかに容易に想到 することができるものといえる。そうすると、被告の主張はその趣旨 をいうものとして相当であり、原告らの主張は、結論において進歩性 の判断を左右するものとはいえない。
c 原告らは、乙22文献に地図データを「枠要素」に「当てはめ」て 表示する構\成の開示がないことを前提に、乙22文献には「表示でき\nる状態」の開示はないと主張するが、乙22文献には、画像を「当て はめ」る「枠要素」に相当する構成の開示があることは、上記におい\nて説示したとおりであり、原告らの主張は、前提を欠く。

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令和1(ワ)25152  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年3月24日  東京地方裁判所

 ドワンゴvsFC2のコンピュータ関連発明の特許権侵害事件です。東京地裁29部は、海外サーバからの提供について、準拠法は認めたものの、被告システムは本件発明の技術的範囲に属するが、「生産」に該当しないとして、請求を棄却しました。 なお、国際裁判管轄については、被告FC2が争うことなく弁論をしてとして、日本の裁判所に管轄権を認めています。

2 争点1(準拠法)について
(1) 差止め及び除却等の請求について
特許権に基づく差止め及び廃棄請求の準拠法は、当該特許権が登録された 国の法律であると解すべきであるから(最高裁平成12年(受)第580同 14年9月26日第一小法廷判決・民集56巻7号1551頁)、本件の差止 め及び除却等の請求についても、本件特許権が登録された国の法律である日 本法が準拠法となる。
(2) 損害賠償請求について
特許権侵害を理由とする損害賠償請求については、特許権特有の問題では なく、財産権の侵害に対する民事上の救済の一環にほかならないから、法律 関係の性質は不法行為である(前掲最高裁平成14年9月26日第一小法廷 判決)。したがって、その準拠法については、通則法17条によるべきである から、「加害行為の結果が発生した地の法」となる。 原告の損害賠償請求は、被告らが、被告サービスにおいて日本国内の端末 に向けてファイルを配信したこと等によって、日本国特許である本件特許権 を侵害したことを理由とするものであり、その主張が認められる場合には、 権利侵害という結果は日本で発生したということができるから、上記損害賠 償請求に係る準拠法は日本法である。
・・・
前記(1)のとおり、被告システム1は、構成要件1Bないし1F及び1Hを\n充足し、前記前提事実(6)アのとおり、被告システム1が構成要件1A、1G\n及び1Iを充足することは、当事者間に争いがない。 そして、前記(2)のとおり、被告システム2及び3は、構成要件1Aないし\n1F及び1Hを充足し、前記前提事実(6)イのとおり、被告システム2及び3 が構成要件1G及び1Iを充足することは、当事者間に争いがない。\nしたがって、被告システムは本件発明1の技術的範囲に属するものと認め られる。
(2) 被告FC2による被告システムの「生産」の有無について
ア 本件発明1の関係での被告システム1(被告サービス1のFLASH版) の「生産」について
本件発明1の「実施」として被告FC2による被告システム1の「生産」 があるといえるかを、まず、被告サービス1のFLASH版について検討 する。
(ア) 物の発明の「実施」としての「生産」(特許法2条3項1号)とは、 発明の技術的範囲に属する「物」を新たに作り出す行為をいうと解され る。また、特許権の効力が当該国の領域内においてのみ認められること を意味する属地主義の原則(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年 7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁、最高裁平成12 年(受)第580号同14年9月26日第一小法廷判決・民集56巻7 号1551頁参照)からは、上記「生産」は、日本国内におけるものに 限定されると解するのが相当である。したがって、上記の「生産」に当 たるためには、特許発明の構成要件の全てを満たす物が、日本国内にお\nいて新たに作り出されることが必要であると解すべきである。
(イ) 前記3(1)のとおり、被告システム1は、本件発明1の構成要件を全\nて充足し、その技術的範囲に属するものであって、被告システム1にお ける構成1aないし1iは、本件発明1の構\成要件1Aないし1Iにそ れぞれ相当する。 また、被告サービス1のFLASH版においてコメント付き動画を日 本国内のユーザ端末に表示させる手順は、前記(1)ウ(ア)のとおりであっ て、被告サービス1がその手順どおりに機能することによって、上記の\nとおり本件発明1の構成要件を全て充足するコメント配信システムであ\nる被告システム1が新たに作り出されるということができる。 そして、本件発明1のコメント配信システムは、「サーバ」と「これと ネットワークを介して接続された複数の端末装置」をその構成要素とす\nる物であるところ(構成要件1A)、被告システム1においては、日本国\n内のユーザ端末へのコメント付き動画を表示させる場合、上記の「これ\nとネットワークを介して接続された複数の端末装置」は、日本国内に存 在しているものといえる。
他方で、前記3(2)アによれば、本件発明1における「サーバ」(構成\n要件1A等)とは、視聴中のユーザからのコメントを受信する機能を有\nするとともに(構成要件1B)、端末装置に「動画」及び「コメント情報」\nを送信する機能(構\成要件1C)を有するものであるところ、これに該 当する被告FC2が管理する前記(1)ウ(ア)の動画配信用サーバ及びコメ ント配信用サーバは、前記(1)イ(ア)のとおり、令和元年5月17日以降 の時期において、いずれも米国内に存在しており、日本国内に存在して いるものとは認められない。
そうすると、被告サービス1により日本国内のユーザ端末へのコメン ト付き動画を表示させる場合、被告サービス1が前記(1)ウ(ア)の手順ど おりに機能することによって、本件発明1の構\成要件を全て充足するコ メント配信システムが新たに作り出されるとしても、それは、米国内に 存在する動画配信用サーバ及びコメント配信用サーバと日本国内に存在 するユーザ端末とを構成要素とするコメント配信システム(被告システ\nム1)が作り出されるものである。
したがって、完成した被告システム1のうち日本国内の構成要素であ\nるユーザ端末のみでは本件発明1の全ての構成要件を充足しないことに\nなるから、直ちには、本件発明1の対象となる「物」である「コメント 配信システム」が日本国内において「生産」されていると認めることが できない。
(ウ) 原告は、被告システム1では、多数のユーザ端末は日本国内に存在し ているから、被告システム1の大部分は日本国内に存在している、被告 FC2が管理するサーバが国外に存在するとしても、「生産」行為が国外 の行為により開始されるということを意味するだけで、「生産」行為の大 部分は日本国内で行われている、本件発明1において重要な構成要件1\nHに対応する被告システム1の構成1hは国内で実現されている、被告\nシステム1については「生産」という実施行為が全体として見て日本国 内で行われているのと同視し得るにもかかわらず、被告らが単にサーバ を国外に設置することで日本の特許権侵害を免れられるという結論とな るのは著しく妥当性を欠くなどとして、被告システム1は、量的に見て も、質的に見ても、その大部分は日本国内に作り出される「物」であり、 被告らによる「生産」は日本国内において行われていると評価すること ができると主張する。
しかしながら、前記(ア)のとおり、特許法2条3項1号の「生産」に該 当するためには、特許発明の構成要件を全て満たす物が日本国内におい\nて作り出される必要があると解するのが相当であり、特許権による禁止 権の及ぶ範囲については明確である必要性が高いといえることからも、 明文の根拠なく、物の構成要素の大部分が日本国内において作り出され\nるといった基準をもって、物の発明の「実施」としての「生産」の範囲 を画するのは相当とはいえない。そうすると、被告システム1の構成要\n素の大部分が日本国内にあることを根拠として、直ちに被告システム1 が日本国内で生産されていると認めることはできないというべきである。 また、前記(1)ウ(ア)の2)−2及び5)からすれば、被告システム1にお いては、被告FC2のウェブサーバがユーザ端末に配信するSWFファ イルによって規定される条件に基づいて、2つのコメントが重複するか 否かを判定する計算式及び重複すると判定された場合の重ならない表示\n位置の指定が行われており、構成要件1Fの「判定部」及び構\成要件1 Gの「表示位置制御部」に相当する構\成1f及び1gの動作の実現は、 日本国内に存在するユーザ端末において行われるものであるということ ができ、これらのユーザ端末における動作からは、原告が指摘する構成\n要件1Hに対応する構成1hのうち「前記ユーザ端末のディスプレイに\nは、前記動画と、前記コメント付与時間に対応する動画再生時間におい て、前記動画上に、右から左方向に移動する前記コメント1及び前記コ メント2とが、追いついて重複しないように表示される、」という部分に\n相当する動作は、日本国内に存在するユーザ端末において実現されるも のということができるものの、構成要件1Hに対応する構\成1hのうち 「前記サーバが、前記動画ファイルと、前記コメントファイルとを前記 ユーザ端末に配信することにより、」という部分に相当する動作は、米国 内に存在するコメント配信用サーバ及び動画配信用サーバによって実現 されるものであり、構成1hが日本国内に存在するユーザ端末のみによ\nって実現されているとはいえない。前記1(2)イで検討したところからす れば、本件発明1の目的は、単に、構成要件1Fの「判定部」及び構\成 要件1Gの「表示位置制御部」に相当する構\成等を備える端末装置を提 供することではなく、ユーザ間において、同じ動画を共有して、コメン トを利用しコミュニケーションを図ることができるコメント配信システ ムを提供することであり、この目的に照らせば、動画の送信(構成要件\n1C及び1H)並びにコメントの受信及びコメント付与時間を含むコメ ント情報の送信(構成要件1B、1C及び1H)を行う「サーバ」は、\nこの目的を実現する構成として重要な役割を担うものというべきである。\nこの点からしても、本件発明1に関しては、ユーザ端末のみが日本に存 在することをもって、「生産」の対象となる被告システム1の構成要素の\n大部分が日本国内に存在するものと認めることはできないというべきで ある。 さらに、前記(1)アのとおり、被告サービスにおいては、日本語が使用 可能であり、日本在住のユーザに向けたサービスが提供されていたと考\nえられ、同オのとおり、平成26年当時、日本法人である被告HPSが、 被告FC2の委託を受けて、被告サービスを含む同被告の運営するサー ビスに関する業務を行っていたという事情は認められるものの、本件全 証拠によっても、本件特許権の設定登録がされた令和元年5月17日以 降の時期において、米国法人である被告FC2が本件特許権の侵害の責 任を回避するために動画配信用サーバ及びコメント配信用サーバを日本 国外に設置し、実質的には日本国内から管理していたといった、結論と して著しく妥当性を欠くとの評価を基礎付けるような事情は認められな い。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(エ) 以上によれば、被告サービス1のFLASH版については、本件発明 1の関係で、被告FC2による被告システム1の日本国内での「生産」 を認めることができないというべきである。
・・・
オ 小活
以上のとおり、本件発明1の関係でも、本件発明2の関係でも、被告サ ービス(FLASH版及びHTML5版)において、被告FC2による被 告システムの日本国内での「生産」を認めることはできない。

◆判決本文

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令和1(ワ)5620等  特許権侵害差止等請求事件、不正競争行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年3月24日  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、キッティング作業を行うことでいずれかのプログラムが解放されて稼働するコンピュータについて、起動していない製品については、特101条の「その物の生産に用いる物」「その物の生産にのみ用いる物」ではないと判断されました。

イ 特許法101条1号について
 間接侵害について検討するに、特許法101条1号の「その物の生産にのみ用い る物」とは、抽象的ないし試験的な使用の可能性では足らず、社会通念上、経済的、\n商業的ないしは実用的観点からみて、特許発明に係る物の生産に使用する以外の他 の用途がないことをいうと解するのが相当である。 被告製品2)には、被告システムに使用される以外に、社会通念上、経済的、商業 的ないしは実用的であると認められる他の用途があるとはいえないから、被告製品 2)は「その物の生産にのみ用いる物」に該当する。
 被告らは、被告製品には、本件仕様2)のみならず、本件仕様1)及び3)があること、 被告製品は蒸気タービン発電システムの計測器として使用されていること、被告製 品のメイン基板として使用されているコンピュータは汎用的な小型コンピュータで あることから、拡張ボードと組み合わせることにより種々の用途に使用することが できることを指摘して、被告製品には他の用途がある旨を主張する。 しかし、被告システムに使用され、本件特許権侵害が問題となるのは被告製品のうち本件仕様2)に係るプログラムが現に稼働したものに限られるところ、前提事実(4)及び前記2 (1)のとおり、被告製品にインストールされている本件仕様1)〜3)に係るプログラ ムに対してキッティング作業を行うことでいずれかのプログラムが解放されて稼働 することになるが、同作業は被告フィールドロジック以外の者が行うことができず、 いったん設定された仕様の変更も、被告フィールドロジックが特殊ツールを使って 同作業を行い、再設定済みの機器を現地に送付するほかないのである。 そうであれば、本件仕様2)が稼働していない被告製品(本件仕様1)ないし3)のいずれも稼働していない製品も含む。)に関しては、被告システムに使用されるとはいえないから、「その物の生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)ないし「その物の生産に用いる物」(同条2号)に該当するとはいえない。
また、本件仕様1)ないし3)のいずれも稼働していない被告製品について、顧客の要望に応じて被告フィールドロジックが本件仕様1)又は3)に係るプログラムを解放する可能性はあり、そのような態様での被告製品の使用が、社会通念上、経済的、商業的ないしは実用的な用途でないとも認められない。\n
 一方、本件仕様2)に係るプログラムが現に稼働した被告製品2)については、前記のとおり、被告システムに使用されるものと認められるところ、被告製品2)の使用を続けながら、本件仕様1)又は3)に係るプログラムが稼働する使用を行うことはできないから、かかる使用を被告製品2)の他の用途ということはできないし、その他、被告らが指摘する用途は、いずれも被告製品2)の用途以外のものであるから、被告らの主張は採用できない。なお、被告らは、被告製品のうち本件仕様2)を稼働させた場合、太陽光発電システムのほかにも風力発電システム及び小水力発電システムにも使用される旨を主張するが、これを裏付ける証拠はなく、実用的な用途であるとは認められない。
ウ 前記イのとおり、本件仕様2)が稼働していない被告製品は、特許法101条 2号の「その物の生産に用いる物」に該当しない。また、本件仕様2)が稼働してい る被告製品2)については、同号に基づく間接侵害の成否を検討するまでもなく、前 記イのとおり、同条1号に基づく間接侵害が成立するものと認められる。

◆判決本文

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令和3(行ケ)10055 審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年3月28日  知的財産高等裁判所

 スマホの操作関連の発明について、公然実施発明から進歩性無しと判断した審決が維持されました。無効審判請求人(本件被告)はApple Japanです。

 公然実施発明と甲3発明1は、技術分野や作用機能を共通にし、甲3文献に接した当業者であれば、公然実施発明には、スリープ状態にお\nいてホームボタンを押してから認証を経てデバイスにアクセスできるま での一連の動作に関して、デバイスのホームスクリーン又はメニューを 表示する前に、本人認証のためにパスコードの入力を要求することは、パスコードが知られたり、パスワードを忘れたりするという、甲3発明\n1と共通の技術課題が存在することを想起するものといえ、公然実施発 明において、許可されていない人物がユーザの個人情報にアクセスし、 閲覧することを防ぐため、デバイス機能を有効にする前又はデバイスリソ\ースにアクセスする前の起動時に、デバイスが迅速にユーザを認証することを目的とした甲3発明1を適用する動機付けがあるといえる。
(イ) 原告は、前記第3の1(1)イ(イ)のとおり、公然実施発明では、本件 発明1のように、使用者識別機能を、使用者の操作以外の追加の操作をすることなく、実行するという技術思想は全くない旨主張するが、前記\n(ア)のとおり、甲3発明1に接した当業者であれば、公然実施発明が有 する技術課題及び甲3発明1の適用を想起するものといえ、原告の主張 する当初の技術思想の相違は、その後の技術適用の動機付けの有無と直 接関係するものとはいえないから、原告の上記主張は当を得ないという べきである。
また、原告は、公然実施発明において、ディスプレイがオンにされた 後に、更にディスプレイ上のスライダをドラッグすることで初めて認証 を実行することには、ユーザの誤操作(意図せざる操作等)による誤動 作を防止するという意義があるから、これを改変して本件発明1のよう に構成することは、公然実施発明の技術的意義・機能\を損なう旨の主張 もするが、甲3発明1の使用者識別機能を採用し、指紋によるユーザ認証をしても、認証に係る誤操作は防止できるから、公然実施発明の技術\n的意義・機能を損なうことにはならない。なお、仮に、原告がホーム画面の誤作動防止に係る機能\をも指摘しているとしても、そもそも本件発明1においては、ロック画面からホーム画面への移行の仕方については 何ら規定していないから、操作入力を行った使用者が正当な使用者と認 証された場合に、ディスプレイ上のスライダをドラッグすることで初め てホーム画面に移行する構成も本件発明1の構\成に含まれることにな り(現に本件明細書の図1等においてもスライダが表示されているところである。)、スライダを取り除く改変をしなければ本件発明 1 の構成に至らないわけではないから、原告の主張は前提を誤るものといえる。\nしたがって、原告の主張は、いずれにしても採用できない。
エ 公然実施発明に甲3発明1を適用した場合に、本件発明1の構成に容易に想到するかについて\n
(ア) 甲3発明1において、指紋による認証の結果を得るには一定の時間 を要することは、明らかである。また、公然実施発明に甲3発明1を適 用することで、ホームボタンを押下すると、起動によりディスプレイが オンになり、それと同時に指紋認証を行い(別紙4のA図右及びB図1 左)、認証が成功すれば、追加の操作を要することなく、更にホーム画面 に移行するという構成を得ることが可能\である(別紙4のB図1右)。 そして、本件発明1で特定されるロック画面は、「前記非活性状態の際 になされた前記活性化ボタンに対する使用者の操作に基づいて」「表示され」るものであって、ロックが解除されていない状態を表\示する機能以\n外は特定されていない。そうすると、公然実施発明に甲3発明1を適用 したものにおいて、ホームボタンの押下後、オンになったディスプレイ にホーム画面に移行する前に表示される画面も、客観的にロックが解除されていない状態を表\示するものであり、これを「ロック画面」ということができる。したがって、公然実施発明に甲3発明1を適用した場合、使用者によ る追加の操作なしに、指紋認識による使用者識別機能が、非活性状態からロック画面が表\示された活性状態への切り替えのための操作入力により行われるという、本件発明1の構成に容易に想到するということができる。\n
(イ) 原告は、前記第3の1(1)イ(ウ)aのとおり、甲3発明1においても、 ロックを解除するために画面上のスライダのドラッグ操作を受け付け る構成となっているから、公然実施発明に甲3発明1を組み合わせた場合には、当業者は、公然実施発明と甲3発明1の共通の技術思想をなす\n上記構成を残しつつ甲3発明1の指紋認証を行うことを想到することになり、ディスプレイが活性化された後にスライダのドラッグという追\n加の操作を要することになるから、本件発明1の構成とはならない旨主張する。しかし、前記イ(ア)aのとおり、甲3文献からは、ホームボタンの背 後にセンサを配置し、ユーザが当該ホームボタンを押下した時に、ユー ザからの明示的な入力を要求することなく、指紋による認証を行う構成も、甲3発明1として認定することができるのであるから、原告の主張\nは採用できない。
(ウ) 原告は、前記第3の1(1)イ(ウ)bのとおり、公然実施発明の構成においては、ロック状態の画面を表\示させ、その画面上に表示されるスラ\nイダがドラッグされたときに初めて、次のパスコードの入力画面に移行 し、パスコードを入力させて認証を行う、という一連の認証操作を行わ せるものであるから、公然実施発明の使用者識別機能に係る手順のうちロック状態の画面上でのスライダをドラッグする処理を排除するので\nあれば、ロック画面も用いない構成しか想到できない旨主張する。しかし、前記(ア)のとおり、「ロック画面」自体は、ロックが解除さ れていない状態を示す画面であり、スライダのドラッグ操作とロック画 面の表示を不可分一体のものとして捉えなければならない理由はないから、原告の主張は採用できない。\n
(エ) 原告は、前記第3の1(1)イ(ウ)cのとおり、公然実施発明のロック 画面は、パスコードの入力における意図せぬ誤操作を防止する意義・機 能があるとした上で、甲3発明1の「シームレス」に使用者識別機能\を 行う構成とは両立しない旨主張する。しかし、公然実施発明において、甲3発明1の使用者識別機能\を採用し、ロック解除する時に指紋によるユーザ認証をしても、偶発的な誤操作等は防止できることは前記ウ(イ) のとおりであって、原告の主張は採用できない。
(オ) 原告は、前記第3の1(1)イ(ウ)dのとおり、別紙4のB図1左には スライダが表示されているところ、指紋認証に成功した場合に「当該成功後に直ちにホーム画面に遷移する構\成」であるとされる以上、スライダの機能は利用されず、当業者がそのように何ら機能\を発揮しないスラ イダをあえて表示させる構\成を考え付くとすれば、本件発明1を見た上 での後知恵である旨主張する。
原告の主張の真意は判然としないが、そもそも本件発明1においては、 ロック画面からホーム画面への移行の仕方については何ら規定してい ない(したがって、この場面におけるスライダの表示の有無やその利用の有無等についても何も限定はない)ことは前記ウ(イ)において説示し たとおりであるところ、被告の主張如何にかかわらず、公然実施発明に 甲3発明1を組み合わせた場合に、正当な使用者と認証されたときに、 スライダを利用しようとしなかろうと、どちらにしてもロック画面から ホーム画面へ移行させることが可能であること自体は明らかであるから、原告の主張は失当というほかない。\n
(4) 小括
その他原告がるる主張する点は、いずれもその前提に誤りがある、あるい は理由がないものであり、採用できない。 以上によれば、相違点1についての容易想到性を認めた本件審決の判断に 誤りはないから、原告主張の取消事由1は理由がない。

◆判決本文

関連事件です。

◆令和3(行ケ)10054
本件の侵害事件です。

◆令和3(ネ)10081
上記控訴審の1審です。104条の3で権利行使不能と判断されています。

◆平成31(ワ)647

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令和3(行ケ)10058  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年3月23日  知的財産高等裁判所

 コメント表示装置(CS関連発明)について、進歩性違反なしとした審決が維持されました。FC2(無効審判請求人)vsドワンゴ(特許権者)です。争点は引用文献の開示です。

 甲5技術は、コンテンツの映像(主映像)及び主映像を補足するなどの理由で表\n示される字幕等の映像(副映像)を表示することができるようにした復号装置に係\nる技術である。甲5技術においては、主映像及び副映像は、表示装置の画面(甲5\nの第19図参照)上に設けられた各画枠の内部に表示されるところ、主映像の画枠\nのサイズは、表示装置のアスペクト比及び主映像のアスペクト比に基づいて変換さ\nれ、副映像の画枠のサイズも、表示装置のアスペクト比及び副映像のアスペクト比\nに基づいて変換される。このようにしてサイズが変換された主映像及び副映像の各 画枠は、表示装置の画面上に配置されるが、その際、例えば表\示装置のアスペクト 比が16:9であり、主映像のアスペクト比が4:3であるなどの条件を満たす場 合、副映像の画枠の一部は、主映像の画枠と重なり合い、副映像の一部は、主映像 の画枠の内側に表示されるが、その余の部分は、主映像の画枠の外側に表\示される という事象が生じるものである。
そして、甲5技術によると、主映像の画枠は、主映像が表示される領域であると\n解されるから、これが本件発明1の構成1E及び1Fにいう「第1の表\示欄」(動 画を表示する領域)に相当するものであることは明らかである。\nしかしながら、甲5技術によると、副映像の画枠に表示される副映像の例として\n挙げられているのは字幕であり、甲4技術の「データコンテンツ」と同様、主映像 の配信時に既に存在するものである(なお、甲5によると、甲5技術の副映像に当 たる字幕は、映像データであることがうかがわれる。甲5には、字幕がテキストデ ータであるとの開示又は示唆はない。)。これに対し、本件発明1のコメントは、 前記のとおり、動画に対し任意の時間にユーザが付与するものである。 また、甲5の記載(明細書1頁5行目〜2頁11行目)によると、従来、副映像 のアスペクト比は、主映像のアスペクト比に関連付けられており、例えば、表示装\n置のアスペクト比が16:9であり、主映像のアスペクト比が4:3であるとき、 副映像(字幕)のアスペクト比は必ず4:3となるため、小型の電子機器において は字幕が見えづらくなってしまうという問題があったところ、甲5技術は、主映像 のアスペクト比から独立したアスペクト比で副映像を表示することにより、副映像\nを見やすくすることを目的とするものであると認められる。これに対し、本件発明 1は、前記のとおり、動画と重なって表示されたコメントが動画に含まれるもので\nはないこと及びこれがユーザによって書き込まれたものであることをユーザが把握 できるようにすることを目的とするものである。 以上のとおり、甲5技術の「副映像の画枠」は、本件発明1の「コメント」を表\n示する領域ではないから、これが本件発明1の構成1E及び1Fにいう「第2の表\ 示欄」に相当するということはできない。また、甲5技術において、副映像の画枠 の一部が主映像の画枠と重なり、副映像の一部が主映像の画枠の内側に表示され、\nその余の部分が主映像の画枠の外側に表示されるという事象を生じさせるのは、副\n映像のアスペクト比が主映像のアスペクト比と関連付けられていたことから来る副 映像の見づらさを解消するためであり、本件発明1のようにコメントが動画に含ま れるものではないこと及びこれがユーザによって書き込まれたものであることをユ ーザが把握できるようにすることを目的とするものではなく、この点からも、甲5 技術の上記内容が本件発明1の構成1E及び1Fに相当するということはできない。\nしたがって、甲5技術も、本件発明1の構成1E及び1Fに相当する構\成を有する ものではない。
エ 原告の主張について
原告は、甲5技術の「字幕」はユーザが入力するものでないものの、これを端末 に表示させる局面においては本件発明1と同様に文字列データとして処理されるも\nのであるし、本件原出願日当時にWEB2.0が技術常識であったことからしても、 甲5に接した当業者にとって、甲5技術の「字幕」を本件発明1の「コメント」に 置換することは容易であったと主張する。 しかしながら、甲5技術の「字幕」と本件発明1の「コメント」の技術的意義の 相違は、前記ウにおいて説示したとおりであるところ、仮に、甲5技術及び本件発 明1において「字幕」及び「コメント」が文字列データとして処理される場面があ るとしても(ただし、甲5に甲5技術の字幕がテキストデータであるとの開示又は 示唆がないことは、前記ウにおいて説示したとおりである。)、そのことにより上 記相違の本質が解消されるものではない。また、前記(2)エ(ア)において説示した ところに照らすと、仮に、本件原出願日当時、原告が主張するような内容のWEB 2.0という社会現象が生じていたとしても、そのことから直ちに、甲5技術にい う「字幕」(副映像)と本件発明1にいう「コメント」につき、これらが相互に置 換可能であると認めることはできない。よって、原告の上記主張は失当である。\n
(4) 前記(2)及び(3)のとおり、甲4技術及び甲5技術は、いずれも本件発明1 の構成1E及び1Fに相当する構\成を有するものではないから、甲1発明に甲4技 術及び甲5技術を適用しても、相違点1−1に係る本件発明1の構成を得ることは\nできない。
(5) なお、原告は、相違点1−1に係る本件発明1の構成は甲1発明において\nふきだしの大きさ並びにふきだし中のコメント(テキスト注釈)の文字長、フォン トの大きさ及び表示位置を適宜変更することにより得られるものであるから、設計\n的事項にすぎないと主張する。 しかしながら、甲1の図18によると、甲1発明においては、ふきだしが映像表\n示部の枠の外側にはみ出すこととされる一方、テキスト注釈については、それが3 行にわたる場合を含め、ふきだし中の上側、下側、左側及び右側にあえて十分な余\n白を設けて、テキスト注釈が映像表示部の枠の外側にはみ出さないようにしている\nと認められるから、ふきだしの大きさ並びにふきだし中のテキスト注釈の文字長及 びフォントの大きさをどのようにするかが設計的事項であるとしても、ふきだしと 映像表示部との位置関係及びテキスト注釈の表\示位置につき、これを相違点1−1 に係る本件発明1の構成(構\成1E及び1F)とすることについてまで設計的事項 であるということはできない。よって、原告の上記主張を採用することはできない。
(6) 小括
以上のとおりであるから、相違点1−1についての本件審決の判断に誤りはない。 そして、前記2(4)のとおり、本件発明9と甲1プログラム発明との間にも、相違 点1−1と同様の相違点が存在するといえるところ、上記説示したところに照らす と、この相違点についての本件審決の判断にも誤りはない。取消事由5は理由がな い。よって、無効理由2−1は理由がない。

◆判決本文

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平成29(ワ)24942  特許権侵害に基づく不当利得返還等請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年1月20日  東京地方裁判所

 漏れていたのでアップします。CS関連発明について、広告収入に基づく損害賠償が認められました。

 本件特許の請求項1は下記です。 通信ネットワークを介して、ウェブ情報をユーザ端末に提供するウェブ情報提供方法において、 ユーザ端末に接続されたアクセスポイントが該ユーザ端末に割り当てた前記アクセスポイントのIPアドレス、およびIPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベースを用いて、前記ユーザ端末に割り当てられたIPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域を判別する第1の判別ステップと、 前記判別された地域に基づいて、該地域に対応したウェブ情報を選択する第1の選択ステップと、 前記選択されたウェブ情報を、前記IPアドレスが割り当てられたユーザ端末に送信する送信ステップと、 を有したことを特徴とするウェブ情報提供方法。

 被告方法等は,本件各発明の技術的範囲に属するものであるから,被告が被 告方法等を用いて行う地域ターゲティング広告等のサービスを提供する行為 は,本件特許権を侵害するものである。そして,被告はその侵害行為について 過失があったものと推定されるから(特許法103条),原告は,被告に対し, その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を,自己が 受けた損害の額としてその賠償を請求することができる(同法102条3項) ところ,同項による損害は,原則として,侵害品の売上高を基準とし,そこに, 実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。 また,不当利得返還請求については,同項の「受けるべき金銭の額に相当す る額」は,本来,侵害者がその特許発明の実施に当たり特許権者に対して支払 うべきであった実施料相当額であるから,侵害者がこれを支払うことなく特許 発明を実施した場合は,その実施により,侵害者は同額の利得を得,特許権者 は同額の損失を受けたものと評価することができるから,同項の「受けるべき 金銭の額に相当する額」が不当利得(民法703条)における受益者の利得の 額に相当し,かつ,権利者の損失の額に相当すると認めるのが相当である(知 財高裁平成27年(ネ)第10488号,同第10088号同年11月12日 判決・判時2287号91頁参照)。 そこで,被告が被告方法等を使用して上げた売上高及び実施に対し受けるべ き料率(相当実施料率)につき,以下検討する。
(2) YDN及びプレミアム広告について
ア YDN及びプレミアム広告の売上高
YDN及びプレミアム広告の売上高は,以下のとおりであると認められる。
(ア) YDNの売上高
証拠(乙25)によれば,原告主張の損害算定期間(平成19年7月2 5日〜平成30年6月26日)の売上高(消費税抜き。以下,売上高につ き,特記なき限り同じ。)は,別紙売上高・損害額一覧表のとおりであり,\nYDNのエリアターゲティングを行っている部分の売上高総額は,●省略 ●であると認められる(●省略●なお,端数処理の関係で1円の誤差が生 じている。)。
(イ) プレミアム広告の売上高
同様に,同期間のプレミアム広告のエリアターゲティングを行っている 部分の売上高総額は,●省略●であると認められる(●省略●)。
イ 相当実施料算定の基礎となる売上高の範囲
被告は,YDN及びプレミアム広告の売上高のうち,下記(ア)ないし(エ)に 係る各部分については,相当実施料算定の基礎となる売上高から除外すべき であると主張するので,この点について検討する。
(ア) ●省略●について
被告は,本件各発明の技術的範囲には●省略●から,被告方法等におい て,本件各発明の技術的範囲に含まれる部分があるとしてもそれは●省略 ●であると主張する。 しかし,本件各発明にいう「アクセスポイントに対応する地域」等は, 特に●省略●ものではないので,相当実施料算定の基礎となる売上高を● 省略●理由はないというべきである。
(イ) スマートフォンを利用した売上部分について
被告は,スマートフォンの利用による売上げは相当実施料算定の基礎と なる売上高から控除すべきであると主張する。 しかし,証拠(甲73・3頁)及び弁論の全趣旨によれば,スマートフ ォンからインターネットのウェブサイトを閲覧する場合には,モバイル接 続(4G接続ないし3G接続)又はWi−Fi接続の2通りの方法があり, 自宅等のWi−Fi環境がある場所では,通信容量制限のあるモバイル接 続ではなく,Wi−Fi経由の接続を行うのが一般的であるところ,スマ ートフォンによりWi−Fi接続を行う場合には,接続に用いられるIP アドレスは自宅のWi−Fiに用いられるIPアドレスであり,この場合 には,本件各発明に基づくIPアドレスからアクセスポイントに対応する 地域を判別しているものと認められる。 他方で,モバイル端末からのインターネット接続(いわゆる4G接続な いし3G接続)の場合に,IPアドレスからアクセスポイントに対応する 地域を判別することができないことは,原告が自認するところであるから, 相当実施料算定の基礎となる売上高は,かかる接続を利用しない場合(W i−Fi経由での接続の場合)に限定することが必要であるというべきで ある。
(ウ) ●省略●について
被告は,●省略●を控除したものとされるべきであると主張する。
a そこで検討するに,証拠(乙27)及び弁論の全趣旨を総合すると, 以下の事実を認めることができる。
●省略●
b 上記aで認定した事実によれば,被告方法等において,●省略●を控 除することが相当であるというべきである。
c これに対して,原告は,●省略●と考えられると主張するが,これを 認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。
(エ) 他のターゲティング機能に対応する部分について\n
被告は,「年齢」,「性別」,「行動履歴」など「地域」以外のターゲ ティング機能に対する部分の売上げは,本件における相当実施料額の算定\nの基礎とならないと主張する。 この点,証拠(甲22,26)によれば,被告のYDNやプレミアム広 告においては,地域ターゲティングに加え,「時間帯」,「性別」,「年 代」,「行動履歴」等に基づくターゲティングも行われていることがうか がわれるが,他方で,プレミアム広告の商品紹介(甲26)においては, 「エリアターゲティング」が最初に紹介され,また,被告の広告本部本部 長が,平成19年11月5日付けの日経マーケティングのウェブ上の記事 (甲27)において,1)被告は地域ターゲティングに力を入れており,I Pアドレスなどの情報で地域ターゲティング広告ができるようになり,地 域限定のプロモーションや地域限定で企業活動をしている広告主もター ゲットに入ってきたこと,2)地域ターゲティング広告に性別や年齢別など によるデモグラフィックターゲティングも組み合わせればより効果的で あること,3)地域ターゲティング広告は,中小企業,インフラを手がける 大手企業などの需要もあることなどを述べていることが認められる。 そうすると,地域ターゲティングは中心的な機能であり,他のターゲテ\nィング機能に比べてその重要性は高いというべきであり,また,これらの\n機能は重複して利用されることも多く,その寄与の度合いを個別に算定す\nることが困難であることにも照らすと,地域ターゲティング機能と関連の\nある売上高については,その全額を対象とするのが相当である。
ウ 相当実施料算定の基礎とすべき売上高
上記アのYDN及びプレミアム広告の売上高から,上記イに従って控除す べき分を控除した額は,以下のとおりである。
(ア) YDNについて
証拠(乙25)によれば,YDNについて,●省略●となる。
(イ) プレミアム広告について
同様に,プレミアム広告については,●省略●となる。
(ウ) 以上によれば,本件特許権侵害による損害額の算定に用いるべき売上高 は,YDNにつき●省略●,プレミアム広告につき●省略●となる(それ ぞれの各年度の内訳は別紙売上高・損害額一覧表の該当欄記載のとおり。)。\n
(3) スポンサードサーチについて
原告は,被告が提供するターゲティング広告に係るサービスのうち,スポン サードサーチに係る売上高も相当実施料の算定の対象とすべきであると主張 するのに対し,被告は,スポンサードサーチにおいては本件各発明を実施して いないから,その売上高は相当実施料の算定の対象外であると主張する。
ア そこで検討するに,●省略●ことが認められる。
しかし,他方で,●省略●本件各発明を実施して行われているとは認めら れないので,スポンサードサーチに係る売上高も損害額算定の対象とすべき であるとの原告主張を採用することはできない。
イ なお,原告は,スポンサードサーチが本件各発明の実施に当たらないとの 主張は時機に後れた攻撃防御方法に当たると主張するが,被告は,当初から, 原告主張のターゲティング広告の提供サービスが本件各発明の技術的範囲 に属することを否認していたこと,侵害論の審理においては●省略●が中心 的な争点であったこと,損害論の審理に入り,スポンサードサーチが実施料 算定の基礎となるかが争点となり,これを契機としてスポンサードサーチが 本件各発明の実施に当たるかどうかが問題となったことなどの本訴の経緯 に照らすと,被告の上記主張が時機に後れたものということはできない。
(4) 相当実施料率について
ア 相当実施料率の算定基準
特許法102条3項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の 額に相当する額」の算定に当たり,実施に対し受けるべき料率は,1)当該特 許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や,それが明らかでない場合 には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ,2)当該特許発明自体の 価値すなわち特許発明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能性,3) 当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の 態様,4)特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れ た諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきである(知財高裁平成 30年(ネ)第10063号令和元年6月7日特別部判決・判時2430号 34頁参照)。
イ 実施料率等について
(ア) 証拠(甲30,79,100)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実 を認めることができる。
a 原告は,あどえりあ社を通じて,本件特許に係るライセンス(通常実 施権の許諾。以下「本件ライセンス」という。)を行っている。
b 本件ライセンスの料金体系は,1)多数のウェブサイトやアプリ等に一 括で広告を配信するアドネットワーク事業を行う企業を対象とするア ドネットワーク事業社用(甲30・2枚目),2)クライアントに対しシ ステム等を使ってサービスを提供する企業を対象とするサービス提供 事業社用(同3枚目),3)自社でウェブサイトを運営する企業を対象と するウェブサイト運営社用(同4枚目)の3種類がある。
c 上記1)(アドネットワーク事業社用)の料金は,登録料1万円(初年 度のみ)と,アドネットワーク事業社のクライアントに対する広告請求 金額に対する1.5%(親会社の業務を子会社が行う場合は3%)の割 合によるライセンス利用料である。
上記2)(サービス提供事業社用)の料金は,クライアントの特許利用 も含めたライセンスを受ける場合は,登録料1万円(毎年)と,サービ ス提供事業社と各クライアントの間の月額契約料金の3%の割合によ るライセンス利用料である。
上記3)(ウェブサイト運営社用)の料金は,当該ウェブサイトが50 00万PV以上で,かつ,自社サイト内の広告の地域ターゲティングを 行う場合は,登録料1万円(初年度のみ)及び基本利用料10万円(年 額)に加え,広告売上げの3%の割合によるライセンス利用料となる。 なお,ウェブサイト運営社が,当該ウェブサイト内で物品などの販売を 補助するサービスを行う場合は,更にビジネス利用料5000円〜(年 額)を要するとされている。
d 本件ライセンスの実績としては,アドネットワーク事業社用のライセ ンス利用料につき1.5%で契約した例,サービス提供事業社用のライ センス利用料につき3%で契約した例,ウェブサイト運営社用のライセ ンス利用料につき1.5%で契約した例や,0.75%で契約した例が ある。
(イ) 甲30のライセンス料金表の各類型の適用に関し,原告は,広告を掲載\nするサイトを基準とするもの,すなわち,自らのウェブサイトにおいて広 告を掲載する場合は3%であるが,他社のウェブサイトに広告を掲載する 場合は1.5%とするものであると主張するのに対し,被告は,広告の主 体を基準とするもの,すなわち,第三者の広告を請け負って掲載する場合 はアドネットワーク事業社用の条件に従って1.5%の料率が適用され, 自社の広告を掲載する場合は3%の料率が適用されると主張する。
甲30のライセンス料金表の各類型が適用される広告掲載サービスに\nついては,本件ライセンスに係る特許権者である原告が当然知悉している と考えられるところ,アドネットワーク事業社用について他の場合より安 い料率が設定されることについての原告の説明,すなわち,他社のウェブ サイトに広告を掲載する場合には別途広告枠を媒体社などから購入する 必要がありその費用が掛かるためにアドネットワーク事業社用では料率 を下げているとの説明や,それにもかかわらず親会社の業務を子会社が行 う場合は3%としたのは,アドネットワーク事業社である親会社が広告掲 載を自らの子会社の広告枠で行う場合には広告枠の購入費用は子会社に 支払われるために親子会社全体としてみれば費用支出がないからである との説明は合理的であるといえる。 被告は,ウェブサイト運営者用のライセンス料金表に「EC(電子商取\n引)を含む,ウェブサイト内で物品などの販売を補助するサービス」が対 象となることが記載されていることをもって,ウェブサイト運営者用の実 施料率が3%であるのは,自社商品の広告表示を切り替えるといったサー\nビスを提供することを念頭に置いたものであると主張する。しかし,同サ ービスを行う場合に発生するのはビジネス利用料であって,広告利用料で はないので,上記の記載から,ウェブサイト運営者用のライセンス料金表\nが適用されるのは自社の広告を掲載する場合であると認めることはでき ない。
むしろ,甲30・4枚目においては,ウェブサイト運営者用の「広告利 用料」は「広告売上の3%」と規定されているところ,ここに「広告売上」 と記載されているのは,他社の広告を自らのサイトで行うことにより広告 売上げを得る場合を想定としているからであると推認するのが自然かつ 合理的である。 そうすると,原告が主張するとおり,本件ライセンスにおけるライセン ス料率は,自らのウェブサイトにおいて広告を掲載する場合は3%である が,他社のウェブサイトに広告を掲載するなどして,広告枠を媒体社など から購入する費用を生ずる場合には1.5%とするものであると認めるの が相当である。
(ウ) 上記(イ)の説示を踏まえ,被告の地域ターゲティング広告が本件ライセ ンスのいずれの類型に属するかにつきみるに,YDNのうち被告ウェブサ イトに広告を掲載する部分及びプレミアム広告はウェブサイト運営社用 に当たるから,ライセンス料率は3%となり,YDNのうち他の提携ウェ ブサイトに広告を掲載する部分はアドネットワーク事業社用に当たるか ら,ライセンス料率は1.5%となるものと認められる。 この点につき,被告は,過去にウェブサイト運営社用に当たるにもかか わらず0.75%や1.5%のライセンス料率が適用されたことがあるこ とを指摘し,本件においてもこれらの料率を参考とすべきであると主張す るが,証拠(甲100)及び弁論の全趣旨によれば,これらは原告とライ センシーとの関係に基づき特別に減額されたものであることがうかがわ れ,他にサービス提供事業社用の類型ではあるものの,原則どおりライセ ンス料率を3%として契約した実績もあることからすれば,上記のとおり 認定するのが相当である。
ウ 実施料率を下げるべき他の事情について
●省略●
(イ) 被告は,被告自身の多数の特許を実施することによりウェブ広告の分野 において大きなシェアを獲得することができているのであるから,本件各 発明の相当実施料率の算定に当たってもこの点を考慮すべきであると主 張するが,被告がウェブ広告の分野において多数の特許を実施しているこ とやそれが売上げに寄与していることは,本件特許の相当実施料率を算定 すべき上で考慮すべき事情ということはできない。 また,被告は,本件特許の相当実施料率の算定に当たり,被告が自身の 努力により●省略●を作成したことを考慮すべきであると主張するが,上 記と同様,この点も本件特許の相当実施料率を算定すべき上で考慮すべき 事情ということはできない。
(ウ) 被告は,甲20公報を引用し,本件各発明の「IPアドレス対地域デー タベース」は「アクセスポイント側」の情報を用いるものであり,●省略 ●含まないとした上で,原告の主張を前提とするのであれば,本件各発明 の価値・技術的意義は低いなどと主張する。 しかし,被告の上記主張は,データベースの構成と●省略●を誤解・混\n同するものであり,その前提において失当であり,また,本件各発明が公 知技術との関係で新たな技術的意義が存在しないということはできない。 むしろ,本件各発明は,IPアドレスを所有するアクセスポイントが属 する地域を判別し,判別した地域に対応したウェブ情報を選択して前記ユ ーザ端末に送信する方法によって,同一URLにおいてもユーザの発信地 域ごとに異なるウェブ情報を送信することができるという効果を得る発 明であって,他にGPS等のシステムを用いることなく,ユーザ端末に割 り当てられたIPアドレスとIPアドレス対地域データベースを照合す るという比較的簡易な方法によりユーザの発信地域の判別をすることが できるものであるから,従来技術にはない新たな技術的意義を有するとい うことができる。
(エ) 被告は,本件特許の相当実施料率の算定に当たり,地域ターゲティング 以外のターゲティング機能の効用を考慮すべきであると主張する。\nしかし,地域ターゲティングは中心的な機能であり,他のターゲティン\nグ機能に比べてその重要性は高いというべきであり,また,これらの機能\ は重複して利用されることも多く,その寄与の度合いを個別に算定するこ とが困難であることは,前記(2)イ(エ)のとおりである。このため,YDN 及びプレミアム広告が地域ターゲティング以外のターゲティング機能を\n備えていることを考慮しても,適用すべき実施料率を下げることが相当と いうことはできない。
(オ) 被告は,YDNのクリック数や売上げは,被告が長年にわたり多大な労 力を積み上げてきたサービスの圧倒的な利用者数及びアクセス数を前提 とするものであり,これらは本件各発明と無関係であるから,本件特許の 相当実施料率の算定に当たってはこの点を考慮すべきであると主張する。 しかし,YDNの売上げにおいて,被告の提供するサービスの利用者数 や被告のウェブサイトへのアクセス数が影響を与えたとしても,本件各発 明の売上げ及び利益への貢献の程度という観点からみると,本件各発明は, IPアドレス対地域データベースを使用して,アクセスポイントの属する 地域を判別することを通じて,地域によって異なるウェブ情報をユーザ端 末に送信することを可能にするものであるから,エリアターゲティング広\n告に必要不可欠なものであり,本件各発明と同程度に簡易かつ効果的に地 域判別をし得る代替技術の存在を示す証拠のないことに照らすと,本件各 発明を利用することができない場合には,被告のYDNやプレミアム広告 の利用者に対する訴求力は大幅に減殺されたものというべきである。 このような本件各発明のYDN及びプレミアム広告の提供サービスに おける必要不可欠性や売上げや利益に対する貢献度に照らすと,YDNの 売上げにおいて,被告の提供するサービスの利用者数や被告のウェブサイ トへのアクセス数が影響を与えたとしても,これをもって,適用すべき実 施料率を下げることが相当であるということはできない。 また,被告は,プレミアム広告においては,被告ウェブサイトへのアク セス数のみが売上げに貢献するので,本件各発明は売上げに寄与,貢献し ていないと主張するが,上記と同様の理由から,そのような事情をもって 適用すべき実施料率を下げることが相当であるということはできない。
エ 小括
以上によれば,本件各発明の実施についての相当な実施料率は,YDNの うち被告ウェブサイトに広告を掲載する部分及びプレミアム広告につき 3%,YDNのうち他の提携ウェブサイトに広告を掲載する部分は1.5% と認めるのが相当である。

◆判決本文

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令和3(行ケ)10056  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年2月10日  知的財産高等裁判所

 サブコンビネーション発明の要旨認定について、発明の構造,機能\等を何ら特定してない場合は,除外して認定すると判断し、審決の判断を維持しました。

(1) 発明の要旨認定
特許出願に係る発明の要旨の認定は,特段の事情がない限り,願書に添付 した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであるが,特許請 求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか, あるいは,一見してその記載が誤記であることが発明の詳細な説明の記載に 照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合は,明細書の発明の詳細 な説明の記載を参酌することが許される(最高裁平成3年3月8日第二小法 廷判決・民集45巻3号123頁参照)。 これを本件補正後発明について検討するに,前記1(3)のとおり,本件補正 後発明は,二つ以上の装置を組み合わせてなる全体装置の発明に対し,組み 合わされる各装置の発明(サブコンビネーション発明)であって,特許請求 の範囲請求項1の記載から,第1ユーザによって操作される情報処理装置に 関する発明であることが理解されるが,特許請求の範囲請求項1の記載中に, 情報処理装置とは別の,他の装置であるサーバにおける処理の内容が記載さ れているため,特許請求の範囲の記載の技術的意義を一義的に明確に理解す ることができない特段の事情がある。 したがって,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して,本件補正 後発明の要旨を認定することとする。
ところで,サブコンビネーション発明においては,特許請求の範囲の請求 項中に記載された「他の装置」に関する事項が,形状,構造,構\成要素,組 成,作用,機能,性質,特性,行為又は動作,用途等(以下「構\造,機能\n等」という。)の観点から当該請求項に係る発明の特定にどのような意味を 有するかを把握して当該発明の要旨を認定する必要があるところ,「他の装 置」に関する事項が当該「他の装置」のみを特定する事項であって,当該請 求項に係る発明の構造,機能\等を何ら特定してない場合は,「他の装置」に 関する事項は,当該請求項に係る発明を特定するために意味を有しないこと になるから,これを除外して当該請求項に係る発明の要旨を認定することが 相当であるというべきである。 以上の観点から,以下,本件補正後発明を検討する。
(2) 構成要件(A)及び(E)について\n
本件補正後発明の構成要件(A)及び(E)は,発明の対象が「第1ユー\nザによって操作される情報処理装置」であることを特定する記載事項である から,これによって,本件補正後発明は「情報処理装置」の発明であること が画定される。
(3) 構成要件(B)について\n
特許請求の範囲請求項1の記載によれば,構成要件(B)における「事業\nに使用されていないが前記第1ユーザが活用を希望する知的財産権を,前記 第1ユーザが保有する1以上の知的財産権の中から特定し,当該知的財産権 に関する公報の情報を,前記サーバに通知する公報通知手段と」の記載は, 情報処理装置が有する公報通知手段を直接的に特定する構成であるといえる。\n一方,「(公報の情報を,)サーバによる第2情報及び第3情報の抽出の 根拠となる情報を含む第1情報として(,前記サーバに通知する)」との記 載は,サーバに通知する公報の情報を更に限定する記載であると認めること はできるが,サーバによって抽出処理を行うことを前提とした限定であって 直接的に情報処理装置を限定する特定事項ではない。 上記第2情報及び第3情報の抽出処理について,請求項の記載をみると 「(C1)前記公報通知手段により通知された前記第1情報により特定される 前記公報に含まれ得る第1書類の内容のうち,所定の文字,図形,記号,又 はそれらの結合が,前記第2情報として抽出され, (C2)当該公報に含まれ得る第2書類の内容のうち,抽出された前記第2 情報と関連する文字,図形,記号又はそれらの結合が,前記第3情報として 抽出され,」 と特定されている。 上記特定事項に対応する発明の詳細な説明の記載を参照すると,構成要件\n(C1)は,特に段落【0023】のクレーム内単語として抽出する構成に,\n構成要件(C2)は段落【0024】の明細書内関連単語として抽出する構成\nに対応すると認められる。 一方,本願明細書等の段落【0021】には,上記「第1情報」に関して, 「特許権者は,活用を希望する特許権の情報(例えば特許番号等)を予めサ\nーバ1に通知しているものとする。即ち,当該特許権の公報(特許掲載公報 若しくは出願公開公報)の内容が公報情報DB61にデータとして記憶され ているものとする。」と記載され,段落【0022】には,「ここで,公報 の内容のデータは,必ずしも公報の謄本のデータである必要は特になく,そ の名称のごとく,公報の内容さえ特定できれば足り,任意の形態のデータで よい。」と記載されていることから,これらの抽出処理に用いられる公報の 情報は,普通に公開されている特許公報の内容であれば足りるといえ,第1 情報としてサーバに通知される知的財産権に関する公報の情報は,普通に公 開されている特許権の公報の内容を表す情報(すなわち,知的財産権に関す\nる公報の情報)以上に格別の内容を含むものではないことは明白である。 すなわち,構成要件(B)における,公報通知手段が「第1情報」としてサ\nーバに通知する公報の情報とは,通常の特許公報又は公開特許公報を示すに すぎないと認められる。そして,本願明細書等を精査しても,当該情報を通 知するに先立って,情報処理装置において,サーバにおける処理(第2情報 及び第3情報の抽出等)に資するため何らかの処理がされること等を開示又 は示唆する記載は,何ら見出すことができない。 そうすると,構成要件(B)の「サーバによる第2情報及び第3情報の抽\n出の根拠となる情報を含む第1情報として」との記載事項は,第1情報の通 知を受けたサーバが当該第1情報から第2情報及び第3情報を抽出するとい う,サーバにおける処理(構成要件(C1)及び(C2))を特定しているにす ぎない。すなわち,上記記載事項は,第1情報自体が,第2情報及び第3情 報を抽出するため通常の公報とは異なる格別の情報を含むことを特定してい るものではない。 このように,本件補正後発明の構成要件(B)のうち「サーバによる第2\n情報及び第3情報の抽出の根拠となる情報を含む第1情報として」の記載事 項は,サーバの処理を特定したものであり,情報処理装置が備える公報通知 手段の内容を特定するものではないから,構成要件(B)によって特定され\nる発明特定事項の認定に当たっては,上記記載事項を除外するのが相当であり,本件審決が(B')のとおり認定したことに誤りはない。
(4) 構成要件(C)及び(C1)ないし(C7)について
本件補正後発明の構成要件(C)及び(C1)ないし(C7)は,情報処理装 置から知的財産権に関する公報の情報(第1情報)の通知(送信)を受けた サーバが,第1情報から第2情報を抽出し,さらに第3情報を抽出し,第3 情報と第4情報とから通知対象を決定して当該公報の情報を第5情報として 通知対象者の端末に通知し,その後,通知対象者の端末から第6情報を受信 し第7情報を生成して情報処理装置に送信するという,サーバが行う処理を 特定したものであって,情報処理装置が行う処理を特定するものではない。 すなわち,情報処理装置から通知された情報に対して,どのような処理を行 い,どのような情報を生成して情報処理装置に送信するかという処理は,サ ーバが独自に行う処理であって,情報処理装置が行う処理に影響を及ぼすものではない。 一方,情報処理装置は,第1情報をサーバに送信し,第7情報をサーバか ら受信するものであるところ,かかる情報処置装置の機能は,サーバに所定\nの情報を送信してサーバから所定の情報を受信するという機能に留まり,当\n該機能は,上記構\成要件(C)及び(C1)ないし(C7)によって影響を受け たり制約されるものではない。このように,構成要件(C)及び(C1)ない し(C7)は,情報処理装置の機能,作用を何ら特定するものではない。\nよって,本件補正後発明の認定に当たっては,構成要件(C)及び(C1) ないし(C7)を発明特定事項とはみなさずに本件補正後発明の要旨を認定す べきであり,これと同旨の本件審決に誤りはない。
(5) 構成要件(D)について\n
本件補正後発明の構成要件(D)は,情報処理装置が備える「受付手段」\nが,サーバから送信される「第7情報」を受け付けることを特定するもので ある。 そして,本件補正後発明の構成要件(C)及び(C1)ないし(C7)の記載 によれば,「第7情報」は,「知的財産権に興味を有する者が存在すること を少なくとも示す情報」であって,「情報処理装置により前記第1情報が (サーバに)通知された結果として生成され」,「(サーバから)情報処理 装置に送信された」情報である。また,同(B)の記載によれば,「前記第 1情報」は「知的財産権に関する公報の情報」である。そして,構成要件\n(C6)及び(C7)に対応する発明の詳細な説明の記載(段落【0029】, 【0040】及び【0041】)も参酌すると,「第7情報」は,サーバの 通知部が特許権者端末に通知する情報であって,特許権者がサーバに登録し た特許掲載公報を見て興味応答を示した事業者のリスト(匿名事業者リス ト)を少なくとも含む情報であるということができ,これは,上記特許請求 の範囲の記載から特定した「第7情報」と格別の相違はない。そうすると, 結局,「第7情報」は,「知的財産権に興味を有する者が存在することを少 なくとも示す情報であって,情報処理装置により知的財産権に関する公報の 情報がサーバに通知された結果として生成され,サーバから情報処理装置に 送信された情報」ということができる。 よって,本件補正後発明の構成要件(D)により特定される事項の認定に\n当たっては,「第7情報」を上記のとおり言い換えるのが相当であり,本件 審決が(D')のとおり認定したことに誤りはない。
(6) 原告の主張に対する判断
ア 原告は,知的財産権を有効活用してくれる候補者を数多くかつ容易に提 示するという本件補正後発明の課題からして,本件補正後発明はサーバと 情報処理装置とを組み合わせたシステムを前提にしたものであって,構成\n要件(C)及び(C1)ないし(C7)によって,情報処理装置の発明の機能\nを特定している旨主張する。 しかしながら,本願明細書等には発明の課題としてそのような記載があ るとしても,親出願についてはともかく,分割出願としての本件補正後発 明は,上記(1)ないし(5)で説示したとおり,システムの発明ではなくあくまで情報処理装置の発明である。そして,上記(4)で説示したとおり,構成要\n件(C)及び(C1)ないし(C7)はサーバの処理を特定するものであって 情報処理装置の機能を特定するものではないから,本件補正後発明を特定\nする事項には含まれない。 よって,原告の前記主張は採用することができない。
イ 原告は,知財高裁平成22年(行ケ)第10056号事件の判決を援用 し,本件補正後発明はサーバと情報処理装置とを組み合わせたシステムを 前提にしたものであってサーバを除外して検討するのは誤りであるとも主 張する。 しかしながら,原告が援用する上記事件は本件とは無関係の全く別の事 件であって,事案も異なるから,上記事件の判決の判断を根拠とする原告 の上記主張はそもそも採用することができない。 なお,付言するに,原告が援用する上記事件に係る発明は,発光部を有 する液体インク収納容器と,前記液体インク収納容器を搭載し前記発光部 の発光を受光する受光手段を備えた記録装置とを組み合わせたシステムに おける液体インク収納容器に関する発明であって,上記システムに専用さ れる特定の液体インク収納容器がこれに対応する記録装置の構成と一組の\nものとして発明を構成するものであることから,容易想到性を検討するに\nあたり,記録装置の存在を除外して検討することはできないとした裁判例 であるところ,原告は,これに関連して,本件補正後発明の情報処理装置 は,第7情報として認識された場合において当該第7情報を受け付ける専 用端末である旨主張する。 しかしながら,本件補正後発明における情報処理装置とサーバからなる システムでは,情報処理装置の機能は,単に,サーバに「公報の情報」\n(第1情報)を送信し,サーバから「知的財産権に興味を有する者が存在 することを少なくとも示す情報」(第7情報)を受信するという機能に留\nまるものであって,サーバに対して情報を送受信する機能を有する情報処\n理装置であればどのような情報処理装置であってもよいから,サーバに対 して専用される特定の情報処理装置とみなすことはできない。また,本願 明細書等には,情報処理装置が種々の情報の中から第7情報を選択して認 識する等の技術事項は開示されておらず,情報処理装置はサーバから送信 された情報を単に第7情報として受け付けるものにすぎないと解されるか ら,原告の上記主張は本願明細書等に開示された技術事項に基づくもので はなく,採用することができない。
ウ 原告は,情報処理装置とサーバが別個のものとしても,本件審決は,発 明の実施形態に強みを有する事業者を選択できるという本件補正後発明の 意義を無視し,「公報通知手段」がサーバに通知する情報について,単に 「当該知的財産に関する公報の情報」と矮小化し,また「受付手段」が受 け付ける情報についても,「知的財産権に興味を有する者が存在すること を少なくとも示す情報」と矮小化して認定しており,本件審決の認定は誤 りである旨主張する。 しかしながら,第1情報を送信するという送信処理自体は,かかる第1 情報からどのようにして第2情報及び第3情報を抽出するのか,その抽出 方法を規定するものではないから,情報処理装置の「公報通知手段」は, 技術的には,知的財産権に関する公報の情報をサーバに送信するものにす ぎないというべきである。また,第7情報は知的財産権に興味を有する者 の情報であるところ,本件補正後発明の構成要件(C5)及び(C6)によれ ば,事業者による選択結果という事業者の自由な意思に基づいた人為的な 情報にすぎないものであって,第1情報と関連するものの第1情報から 「生成された」情報ではない。さらに,情報処理装置の「受付手段」は, サーバから上記第7情報を受け付けるものの,これは単に情報の受信にす ぎないものであって,情報処理装置の側に,当該第7情報を受け付けるた めの特別の構成を有するものでもない。\nしてみると,上記(2)ないし(5)で検討したとおり,本件補正後発明の「公 報通知手段」は,単に「知的財産に関する公報の情報」をサーバに通知す るものにすぎず,本件補正後発明の「受付手段」は「知的財産権に興味を 有する者が存在することを少なくとも示す情報」を受け付けるものにすぎ ないというべきであり,本件審決が「公報通知手段」及び「受付手段」に つき,それぞれ(B')及び(D')のとおり認定したことに誤りはない。

◆判決本文

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令和3(ネ)10066  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和4年2月8日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について、構成要件Bの「操作メニュー情報」を有するとは認められないとして、1審判断を維持しました。

ア 前記のとおり補正して引用する原判決が説示するとおり(原判決46頁 23行目ないし49頁1行目),本件各発明の特許請求の範囲の記載内容 に加え,本件明細書の段落【0012】の記載内容及び【図7】に記載さ れた本件各発明の実施例としての様々な操作メニュー情報の表示内容か\nらすれば,本件各発明の「操作メニュー情報」とは,「ポインタの座標位置 によって実行される命令結果を利用者が理解できるように前記出力手段 に表示するため」の「画像データ」であり,出力手段に表\示され,利用者 がその表示自体から「実行される命令結果」の内容を理解できるように構\ 成されていることを要するものというべきである。
イ そして,被告製品のページ一部表示が,縮小された中央ページの右端又\nは左端あるいは両端に,幅が細く縦長の白みがかった長方形として表示さ\nれること,そこには何の文字,図形,記号,アイコン等は表示されないこ\nとからすれば,当該長方形部分のみを見た利用者は,それがどのような命 令を実行する表示であるのかを理解することはできないというべきであ\nり,したがって,被告製品のページ一部表示の画像は本件各発明の「操作\nメニュー情報」には当たらず,本件ホームアプリが構成要件Bの「操作メ\nニュー情報」を有するとは認められないことは,前記のとおり補正して引 用する原判決が説示するとおりである(原判決49頁2行目ないし50頁 6行目)。
控訴人は,1)被告製品においては構成e又は構\成e’によってそれまで 表示されていなかったページ一部表\示の画像が液晶画面に表示されるよ\nうになること,2)ページ一部表示の画像と壁紙画像との境界が明確である\nことを指摘するが,これらの点は,いずれも利用者がページ一部表示の画\n像自体から「実行される命令結果」の内容を理解することができるか否か に関わるものではないから,上記の判断を左右するものではないというべ きである。また,控訴人は,3)被告製品のページ一部表示の画像が表\現し ている表示内容は,実行されるスクロール命令の結果を小さな絵で表\現し た画像であるとも指摘するが,上記のとおり,ページ一部表示の画像は,\nその表示内容等からすれば,利用者がその表\示自体から「実行される命令 結果」の内容を理解できるように構成された画像データであるということ\nはできない。 なお,上記の判断に照らすと,控訴人が上記第2の3(1)アにおいて主張 する判断基準によったとしても,被告製品のページ一部表示の画像は,少\nなくとも同主張における3)の要件を満たすものとはいえないから,本件ホ ームアプリが構成要件Bの「操作メニュー情報」を有するとは認められな\nい。
ウ したがって,控訴人の主張(1)アは採用することができない。
(2) 控訴人の主張(1)イについて
ア 控訴人が主張(1)イにおいて指摘する各点は,いずれも上記(1)で検討し たところと同様の事情であるといえるから,いずれも前記の判断を左右す るものではないというべきである。そして,このことは,本件ホームアプ リに係るソースコードの記載内容を基に検討した場合であっても同様で\nある。
イ したがって,控訴人の主張(1)イは採用することができない。
(3) 小括
ア 控訴人は,上記のほかにも,争点1−3について縷々主張するが,いず れも前記の判断を左右するものではないというべきである。 イ 以上によれば,本件ホームアプリは,構成要件Bにいう「操作メニュー\n情報」を有するとは認められず,被告製品が構成要件Bを充足するものと\nは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,被告製品 が本件各発明の技術的範囲に属するものと認めることはできない。

◆判決本文

原審はこちら。

◆令和2(ワ)15464

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令和1(ワ)25121 特許権 令和3年12月9日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属すると認められるが、無効理由あり(新規性なし)として権利行使不能(特104-3)と判断されました。

 このように,乙8発明は,ユーザから入力された情報から抽出したキーワードに 基づいてそれに関連するウェブページを収集し,そのリンク情報を取得して記憶し, ユーザ端末にキーワードに関連するウェブサイトのリンクをユーザ端末に出力する ものである。しかして,かかるウェブサイトのリンクをユーザ端末に出力すること は,ユーザに対してユーザの関心のある事項に関連するウェブサイトの閲覧を勧め るものであるといえ,当該リンクを出力することは,ユーザに対する提案を行うも のということができ,また,当該リンクはウェブ上から取得されるものであるから, ウェブサイトからユーザに対して提案すべき情報を取得しているということができ る。 そうすると,乙8発明がユーザコメントに基づいてリンクを出力するアバター管 理部及び情報収集部は,構成要件1Eの「前記第1又は第2受付手段によって受け\n付けられた個人情報に基づいて前記ユーザに対して提案を行う提案手段」に相当し, また,乙8発明の,アバター管理部及び情報収集部によりユーザコメントに基づい てウェブサイトのリンクをユーザ端末に出力する機能は,構\成要件5Eの「前記受 け付けた個人情報に基づいて前記ユーザに対して提案を行うステップ」に相当する。 さらに,乙8発明における,ウェブ上からキーワードに関連するウェブページのリ ンクを取得する情報収集部は,構成要件1Fの「前記個人情報に基づいてウェブサ\nイトから前記ユーザに対して提案すべき情報を取得する手段」に相当し,上記情報 収集部によりウェブ上からキーワードに関連するウェブページのリンクを取得する 機能は,構\成要件5Fの「前記個人情報に基づいてウェブサイトから前記ユーザに 対して提案すべき情報を取得するステップ」に相当する。 その他,構成要件E及びFと乙8発明の間に,相違する点は認められない。\n以上によれば,構成要件E及びFは,乙8発明の構\成と同一のものといえる。
エ 構成要件G(「前記個人情報に基づいてユーザに注意を促す手段と,を有する」「前記個人情報に基づいてユーザに注意を促すステップと,を更に有する」)につき,\n乙8発明と対比する。 構成要件Gに関し,本件明細書の記載をみると,「飲みすぎないように!」などの\nアドバイスのメッセージを出力する旨の記載があり(【0119】),かかる記載内容 からすると,構成要件Gにおける「注意を促す」とは,気を付けるように仕向ける,\n気を配るように仕向けるとの意であると解することができる。 しかして,乙8発明は,スケジュールが未完了であることが確認すると,アバタ ーから,「スケジュールが未完了だよ。代わりのスケジュールを入力してね」のよう な,スケジュールの修正を依頼するアバターコメントを出力する機能を有する(【0\n043】)。そして,乙8発明の学習・生活支援サーバ内にはアバターコメントを出 力するアバター管理部が実装されている(【0024】等)ところ,上記機能は,ユ\nーザに対してスケジュールが完了していないことに気を付けるように仕向け,又は, スケジュールに気を配るように仕向けるものであるといえる。 そうすると,乙8発明の,アバターコメントの出力を実行するアバター管理部は, 構成要件1Gの「前記個人情報に基づいてユーザに注意を促す手段」に相当し,ま\nた,乙8発明の,ユーザに対して上記の趣旨のアバターコメントを出力するアバタ ー管理部の機能は,構\成要件5Gの「前記個人情報に基づいてユーザに注意を促す ステップ」に相当する。 その他,構成要件Gと乙8発明の間に,相違する点は認められない。\n以上によれば,構成要件Gは,乙8発明の構\成と同一のものといえる。
オ 構成要件H(「情報提供装置。」「を情報提供装置に実行させる情報提供プロ\nグラム。」につき,乙8発明と対比する。 乙8発明のアバター管理部によるアバターコメントの出力は,情報の提供に当た るため,この点をもって既に,アバター管理部を有する乙8発明の学習・生活支援 サーバは,情報を提供する装置(「情報提供装置」)であるということができる。 また,上記サーバは,アバター管理部のほかに,ユーザ情報管理部,テキスト分 析部,情報収集部,コンテンツ管理部で構成される制御部を有しており,制御部は,\n少なくとも一つのCPU等を備え,ROM等に予め記憶されたプログラムを読み込\nんで実行することにより,上記各部の機能を事項することが可能\となるものである (【0021】等)ことから,乙8発明の学習・生活支援サーバは,情報提供装置で あって,各種機能を実行させる情報提供プログラムを有しているといえ,乙8発明\nは,構成要件1Hの「情報提供装置」,構\成要件5Hの「情報提供プログラム」と同 一であるといえる。 その他,構成要件Hと乙8発明の間に,実質的に相違する点は認められない。\n以上によれば,構成要件Hは,乙8発明の構\成と実質的に同一のものといえる。
(4) したがって,本件各発明は,その全ての構成要件が,乙8発明の構\成と実質 的に同一のものであるから,本件各発明は,乙8発明との関係で,新規性を欠くも のといわざるを得ず,いずれも,特許無効審判により無効にされるべきものと認め られる(特許法29条1項3号,123条1項2号)。
(5) 原告らの主張について
原告らは,1)乙8公報に記載されている「スケジュールの修正を依頼する」とは, 構成要件Eにおける,議案や意見を提出するという「提案を行う」こととは相違す\nる,2)乙8公報がユーザ端末に出力するウェブサイトのリンクは,ウェブサイトの 所在を示す情報であって,この所在を示す情報が,「提案を行う」内容である議案や 意見であるはずがなく,乙8発明は構成要件Eと相違し,また,ウェブサイトのリ\nンクはユーザに対して提案すべき情報を規定している構成要件Fの「情報」とも相\n違する,3)乙8発明がユーザのスケジュールが未完了であることを確認した場合に ユーザにスケジュールの修正を依頼することは,構成要件Gの,気を付けるよう仕\n向けることとは相違する,4)乙8発明のユーザ端末は,情報提供をするものではな いから,構成要件Hと相違する,などとして,本件各発明が乙8発明の構\成と実質 的に相違する旨主張する。
しかしながら,原告らの上記各主張は,次のとおり,いずれも理由がないという べきである。 まず,上記1)及び3)の点については,乙8発明において「スケジュールの修正」 を依頼されたユーザは,スケジュールが完了していないことを知り,新たなスケジ ュールを考えて入力するように促されることとなるのであって,「スケジュールの 修正の依頼」も,ユーザに対して新たなスケジュールを組み立てる旨の議案や意見 の提出にも当たるといえるから,構成要件Eの「提案を行う」と実質的に同一の構\ 成であるといえる。また,乙8発明の上記のような働きは,まさにユーザに対しス ケジュールが完了していないことに気を付けるように仕向け,又は,気を配るよう に仕向けることであるといえるから,乙8発明は,構成要件Gの「注意を促す手段」\nないし「注意を促すステップ」と実質的に同一の構成を有するといえる。\nまた,上記2)の点については,構成要件Eの「提案を行う」との文言について,\n特許請求の範囲及び本件明細書の記載に,ユーザに提案すべき情報の具体的内容を 限定する根拠となるものはなく,ウェブページを出力することに限る旨の示唆もな い。その上,前記説示のとおり,キーワードに関連するウェブページのリンクをユ ーザ端末に出力することは,当該リンク先のウェブページを閲覧することをユーザ に勧めることに該当し,まさに,この点が「提案」といえるというべきである。そ うすると,乙8発明のアバター管理部が当該リンクをユーザ端末に出力することは, 構成要件Eが規定するユーザに対する「提案を行う」との構\成と,同一であるとい わなければならない。また,構成要件Fの「情報」との相違を指摘する原告の主張\nも,結局,リンクはあくまでウェブサイトの所在を示す情報に過ぎず,これがユー ザに対して提案すべき情報には当たらないとの主張であると解されるが,前記のと おり,ユーザ端末にユーザの個人情報に基づいてこれに関連するウェブページのリ ンクを出力することは,ユーザに対して当該リンク先のウェブページの閲覧を勧め るという意味において,ユーザに提案すべき情報を表示するものであり,乙8発明\nにおいてユーザ端末に出力されるリンクは,構成要件Fの「情報」と異なるもので\nはないというべきである。 さらに,上記4)の点は,前記説示のとおり,乙8発明の学習・生活支援サーバ及 びプログラムは,構成要件1Hの「情報提供装置」,構\成要件5Hの「情報提供プロ グラム」と同一であるといえる。 以上によれば,原告らの主張はいずれも採用することができない。

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令和2(行ケ)10128  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和4年1月11日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は引用文献の認定誤りです。

(2) 引用発明における「検出部ID」の技術的意義
上記認定に係る引用発明の「検出部ID」が,「電源タップ4」の住居内 での設置箇所を識別するものであるか否かについて検討する。 引用発明の「検出部ID」は,住居内で「電源タップ4」を一意に識別す る符号であるものの,引用文献1には,前記「検出部ID」が「電源タップ 4」の設置箇所を表す情報と関連するものであることは一切記載されていな\nい。また,電源タップの一般的な使用形態を参酌すると,電源タップを住居 内のどこに設置してどのような電気機器に接続するかは,当該電源タップを 利用する者が任意に決められるものと解される。 引用文献1では,「電源タップ4」に照明器具が接続される態様も開示さ れているものの(【図6】),照明器具は,居間,トイレ,寝室等,住居内 のあらゆる箇所で用いられるものであり,よって,当該照明器具に接続され る電源タップの設置箇所も住居内のあらゆる場所が想定されるものであるか ら,「検出部ID」により「電源タップ4」を一意に識別しても,それは 「電源タップ4」の識別にとどまるものであって,当該「電源タップ4」の 設置箇所も識別できるとする根拠は見出せない。 すなわち,「電源タップ4」の「検出部ID」から住居内の設置箇所を識 別するためには,「検出部ID」と当該「電源タップ4」の住居内での設置 箇所とを対応付けた何らかの付加的情報が必要である。「電源タップ4」の 「検出部ID」という,電源タップを一意に識別する符号から,当該「電源 タップ4」の設置箇所を識別することができる,と認めることはできない。
(3) 被告の主張について
ア 被告は,本願明細書等の段落【0024】において,照明装置から発信 されるID番号としては「位置ID番号」のみが開示されているところ, 位置ID番号に紐づけられる位置情報に設置箇所(個々の部屋)が含まれ るか否かが明らかでないと指摘する。 しかしながら,次の(ア)ないし(ウ)に照らすと,本願発明の「位置ID 番号」には,居宅内の各部屋を特定する「内部管理ID番号」が含まれる, と理解されるから,被告の上記指摘は上記認定を覆すものではない。
(ア) 段落【0026】及び【0027】においては,情報を受信するク ラウドサーバの側のデータベース内に,居宅内の各部屋を特定する「内 部管理ID番号」が登録されることが記載されており,段落【002 9】以下では,安否確認システムの動作によって,居宅内のどの部屋 (設置箇所)において異常が生じているのかを判定する仕組みが詳細に 説明されている。そうすると,発信装置から発信される「位置ID番 号」が,クラウドサーバの保有する「内部管理ID番号」を含むものと 解しないと,本願明細書等の記載全体を合理的に理解することができな い。
(イ) 段落【0035】,【0040】及び【0042】には,段落【0 024】と異なり,「位置ID番号」が照明装置の設置箇所(居間,ト イレ,寝室等の各部屋)を特定することが明示されている。
(ウ) 段落【0024】において,「位置ID番号」に紐づけられる「位 置情報」は,「設置箇所が存在する施設の住所,並びに設置箇所の緯度 経度及び施設の設置する階数等」(下線付加)である。この「等」に, 設置箇所となる各部屋の名称(居間,トイレ,寝室等)を含めることに よって,位置ID番号が,設置箇所を特定する情報(クラウドサーバの 「内部管理ID番号」に対応する情報)を含むものと解釈することが許 されないとはいえない。 また,設置箇所となる各部屋の名称を「等」に含めることが許されな い,あるいは位置情報をクラウドサーバへ登録する旨について述べたも のにとどまる,と解釈し,当該施設の中での「設置箇所」(各部屋)の 位置情報は,利用者が照明装置の設置後にアプリを用いてクラウドサー バに登録する,と理解することも可能である。段落【0019】の「利\n用者は,取得したアプリにしたがい,・・・照明装置の設置箇所・・・ の設定登録を行う」との記載も参酌すると,むしろ,かかる理解が本筋 であるともいえる。 前記(1)のとおり,照明装置から発信される「ID番号」とクラウドサ ーバに登録される「ID番号」とを相互に対照することができて初めて 本願発明は所期の作用効果を奏することができるのであるから,本願明 細書等に接する当業者の理解は,上記のいずれかであると考えられる。
イ 被告は,電源タップに接続される電気機器の設置箇所(部屋)は,電気 機器の種別によって通常定まるから,引用発明の「検出部ID」は,単に 「電源タップ4を一意に識別する符号」,すなわち,住居内の「どれ」か ということを識別する符号にとどまるものでもなく,住居内で「どこ」に 設置されているのかを識別する符号であって,位置情報として意味を有し, 本願発明の「内部管理ID番号」と同じ役割を有している旨主張する。
たしかに,被告がその主張の根拠とする引用文献1の【図5】において, 「住居ID」,「検出部ID」(図5の「計測部ID」との記載は「検出 部ID」の誤記と認められる。),「機器種類」,「稼働状況」などから なる機器稼働データが例示されており,たとえば,「検出部ID」が“i d13”の場合は,「住居ID」が“hid7”の場合も“hid2”の 場合も「機器種類」が“電気炊飯器”であること,「検出部ID」が“i d17”の場合は,「機器種類」が“PC”,“アイロン”,あるいは “ポット”であることが例示されており,「検出部ID」と電気機器の種 類,ひいては「電源タップ4」の設置箇所との間に何らかの相関関係があ ることも推測される。 しかしながら,引用文献1の【図5】におけるこれらの例示は,利用者 が住居内に各電源タップを任意に設置して電気機器に接続した結果として 生じる,「検出部ID」と接続されている電気機器との対応関係を示して いるにすぎないというべきであって,たとえば,前記ポットは,台所,居 間,ダイニング,寝室のいずれでも利用されることに鑑みると,【図5】 の記載をもってして,「電源タップ4」の「検出部ID」と当該「電源タ ップ4」の設置箇所との間に何らかの対応関係が定められているとするこ とはできない。
また,引用文献1の段落【0075】ないし【0078】には,実施の 形態3に係る生活状況監視システムにおいて,「電源タップ4」に機器種 類を設定する「スライドスイッチ20a」を設けることが記載されており, 【図16】には,機器種類として,「冷蔵庫」,「炊飯器」,「テレビ」, 「アイロン」,「レンジ」,「その他」が例示されており,「スライドス イッチ20a」がこれらの機器種類の中から任意に機器種類を選択するこ とが示されている。 してみると,引用文献1に記載の「電源タップ4」は,「冷蔵庫」, 「炊飯器」,「テレビ」等を含め,種々の電気機器に接続されることを前 提としたものであり,当該「電源タップ4」が設置される箇所も,台所, 居間等,住居内の様々な箇所が想定されるものであるから,「電源タップ 4」の「検出部ID」と当該「電源タップ4」の設置箇所との間には,元 来関連性はない。
以上によれば,引用文献1に,「電源タップ4」を一意に識別するため の「検出部ID」に基づいて,当該「電源タップ4」の設置箇所を識別す るという技術思想が開示されているとは認められず,被告の上記主張は採 用することができない。
ウ 被告は,住居内の電源タップ及びそれに接続される家電機器は,いった ん設置されれば移動しないのが通常であること,引用発明においては「電 源タップ4」の設置箇所が判明しているからこそ警戒すべき状況か否かの 判定ができること,を考慮すれば,「電源タップ4」の「検出部ID」は 設置箇所を識別し得る情報であり,本願発明の位置情報(設置箇所の情報 を含む。)と相違しない旨主張する。 しかしながら,以下のとおり,被告の上記主張は採用することができな い。
(ア) 引用文献1の【図13】には,警戒すべき状況か否かを判定するた めの条件の例が記載されている。この記載からは,電気機器の種別(テ レビ,炊飯器,アイロン等)と稼働状況(稼働中か停止中か)に応じて 警戒状況を判定するという技術思想は読み取れるものの,電気機器の種 別が同一である場合に,当該電気機器の設置箇所に応じて判定する条件 を異ならせる(例えば,居間と寝室のテレビとで判定条件を異ならせ る)という技術思想を読み取ることはできない。 例えば,【図13】に記載された判定条件のうち,「3日以上,『電 気炊飯器』の『停止』が続いた場合」は,住人が食事をとっていないと いう事態をうかがわせるから,かかる場合をもって段落【0057】等 にいう「警戒すべき稼働状況」として登録する,というのが引用発明の 技術思想であると解される。電気炊飯器の設置箇所は,通常,「台所」 という住居内の特定の部屋であるが,その間に住人が台所に立ち入った か否かが,警戒状況か否かを判定するための条件とされているものでは ない。 このように,引用発明においては,警戒すべき状況か否かを判定する ための情報として,特定の電源タップに接続された電気機器の種別を用 いているが,当該電源タップ及びそれに接続された電気機器の設置箇所 と関連する情報を用いることの開示又は示唆はない。
(イ) 引用文献1の【図6】には,二つの部屋のそれぞれにおいて,同一 の種別の電気機器である照明装置が「電源タップ4」に接続される態様 が開示されており,二つの部屋にそれぞれ設けられた「電源タップ4」 が,「検出部ID」を「遠隔監視装置1」に送信するものと認められる が,この場合であっても,上記(ア)に示したとおり,「検出部ID」は, 各々の電源タップ及びこれに接続された電気機器を一意に識別するため の符号であるにとどまり,「電源タップ4」の設置箇所を示す情報では ないから,「検出部ID」により各部屋を識別できるとする技術的根拠 は見出せない。
(4) 以上によれば,引用発明の「検出部ID」は,「電源タップ4」の住居内 での設置箇所を識別するものではないから,本願発明の位置情報のうち,住 居内における設置箇所を特定する「内部管理ID番号」(具体的には居間, トイレ,寝室等の各部屋)とは技術的意義を異にする。 それにもかかわらず,本件審決は,引用発明の「検出部ID」は本願発明 の「内部管理ID番号」に相当するとして,「施設内での設置箇所に係るI D番号」が安否確認に用いられることを一致点の認定に含めており,この認 定には誤りがあるといわざるを得ない。その結果,本件審決は,原告の主張 に係る相違点5を看過しており,上記一致点の認定誤りは本件審決の結論に 影響を及ぼす誤りである。

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令和3(行ケ)10060  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年12月20日  知的財産高等裁判所

 ブロックチェーン関連技術のCS関連発明について、進歩性無しとした審決が維持されました。

進歩性無しとされた請求項1は以下です。
請求項1(本件補正発明)
管理主体が存在しないパブリック型ネットワークにおいて台帳を分散して記録する複数のノードの少なくとも1つに対し,トランザクションのリクエストを送信する複数のプロセスであって,設定されるプロセス多重度に応じた複数のプロセスを生成する生成部と,
トランザクションの指示を受け付け,前記複数のプロセスのいずれかに当該トランザクションのリクエスト送信を割り当てる割当部と,を備えるシステム。
これらの記載によると,引用文献1の実験においては,スレッド当たり のリクエスト数をセキュリティ機能のOFF又はONの相違に従って固\n定し,並列スレッド数を変化させてスループット(1秒当たりのリクエス ト処理量)を測定しているのであり,「全スレッドによる合計リクエスト件 数」は並列スレッド数にのみ左右されるから,引用文献1は,専ら並列ス レッド数とスループットとの関係を測定したものであり,その測定結果と して,並列スレッド数の増加に対するスループットは,ある程度までは増 加し,一定程度で頭打ちとなり,その後は挙動不安定になるというものが 得られたとするものである。そうすると,引用文献1は,並列スレッド数 を増加させていけばスループットは増加するが,ある程度以降は挙動が安 定しなくなるので,その場合には並列スレッド数の増加による効果がなく なり,「リクエストの流量制限」で対応しなければならないと理解すべきも のであるから,その記載内容は,スレッド数の増加による効果には一定の 最大限度があることを含意するものというべきである。 以上のとおりであるから 原告の前記第3の1(1)アの主張は採用する ことができない。なお,原告は,引用文献1においては,「負荷が大きすぎ ること」,すなわち「単位時間当たりのリクエスト数が大きすぎること」を 認識するための手段としてスレッドの数を増加させてみた測定結果が記 載されているのにすぎず,このような記載をもって,「スレッド数(並列度) の制御」を,「リクエストの流量制御」における課題解決手段として読み取 ることはできないない旨主張するが,前述のとおり,引用文献1の該当部 分の記載は,単に課題認識手段としての測定結果を表示したものとはいえ\nず,スレッドの数を増加させた場合の結果に応じて,課題解決に向けた対 応策の示唆等にも及ぶものであるから,原告の前記主張は前提を欠くもの というべきである。 したがって,引用文献1には,引用発明がスレッド数を制御すること, 少なくとも,スレッドの多重度を設定し,これより,設定されるスレッド 多重度に応じた複数のスレッドを生成するものであるとの記載があると 認められる。

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令和3(ネ)10058  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年11月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 遠隔監視システムについて、均等侵害が第1要件を満たさないと判断した1審の判断が維持されました。

なお,事案に鑑み,念のため,被告製品の均等論の第1要件の充足につい て判断する。
本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本件明細書の開示事 項を総合すれば,本件発明1は,従来の遠隔監視システムでは,施設の侵入 者があったり,施設において異常が発生した場合に,当該施設の所有者や管 理責任者が一次的に当該侵入や異常発生を知ることができず,また,警備会 社からの二次的な通報により上記所有者や責任者が侵入や異常発生を知るこ とは可能であるが,これらの者が外出している場合等には警備会社が通報を\nすることができないといった課題があり,こうした課題を解決するために, 構成要件1Bないし1Gの構\成を採用し,施設の監視対象領域を監視する監 視装置からのメッセージと監視装置によって得られた画像の情報が当該施設 の所有者や管理責任者に対応する顧客の携帯端末に通知又は伝達されること により,顧客が何れの場所においても施設の異常等を適切に把握することが できるとともに,監視装置から受理された画像の略中央部分の画像からなる コンテンツを携帯端末に伝達することにより,表示装置が小さい携帯端末で\nも顧客により十分に認識可能\な画像を表示することができ,さらに,カメラ\nの「パンニング」を含む携帯端末からの遠隔操作命令により「パンニング」 に従った領域を特定し,その領域の画像を携帯端末に伝達するステップを備 え,顧客が参照したい領域を特定して携帯端末に提示することができるよう にしたことにより,施設の所有者や管理責任者が外部からの侵入や異常の発 生を知り,その内容を確認することができるという効果を奏するようにした ことに技術的意義があるものと認められる(【0004】ないし【0007】)。 このような技術的意義に鑑みると,本件発明1の本質的部分は,1)何れの 場所においても顧客が携帯し得るものとして,監視装置からの異常検出によ って監視装置により撮影された画像データの伝達を受ける端末を「携帯端末」 とし,2)「携帯端末」に伝達する画像は,略中央部分の画像領域から構成さ\nれ,3)携帯端末からの「パンニング」を含む遠隔操作命令を受理し,その領 域の画像を携帯端末に伝達するステップを含むことにより,4)表示装置が小\nさい携帯端末でも,顧客により十分に認識可能\な画像を表示することができ,\nさらに,携帯端末からの遠隔操作命令により,顧客が参照したい領域を特定 して携帯端末に提示することができるようにした点にあるものと認められる。 すなわち,単にセンサの情報伝達の宛先を警備会社の中央コンピュータから 施設の所有者等の携帯端末に切り替えたことのみに重きがあるわけではなく, 何れの場所においても顧客にとって携帯が容易で,操作等が迅速かつ簡便で あるためには表示装置が小さい端末とならざるを得ない面があるところ,そ\nうであっても,外部からの侵入や異常の発生を知り,その内容を確認するこ とが十分に可能\な構成を有することが本件発明1の本質的部分であるという\nべきである。なお,本件発明2及び3は本件発明1(請求項1)の従属項で あり,また,本件発明5は,本件発明1の遠隔監視方法の発明を監視制御サ ーバに関する発明としたものであるから,これらの発明の本質的部分もこれ に同様である。
これに対し,被告製品は,監視装置からの異常検出によって監視装置によ り撮影された画像データを伝達する端末は,携帯電話のような表示装置が小\nさい端末ではなく,また,端末からの遠隔操作命令により受理された画像の うち他の領域の画像を参照すること示す命令である「パンニング」を含む遠 隔操作命令を受理し,その領域の画像を携帯端末に伝達するステップを含ま ないため,顧客が何れの場所においても施設の異常等を適切に把握すること ができ,表示装置が小さい「携帯端末」でも顧客は十\分に認識可能な画像を\n表示することができ,顧客が参照したい領域を特定して「携帯端末」に提示\nすることができるようにしたことにより,施設の所有者や管理責任者が外部 からの侵入や異常の発生を知り,その内容を確認することができるという本 件各発明の効果を奏するものと認めることはできない。 したがって,被告製品は, 本件各発明の本質的部分を備えているものと認 めることはできず,被告製品の相違部分は,本件各発明の本質的部分でない ということはできないから,均等論の第1要件を充足しない。 よって,その余の点について判断するまでもなく,被告製品は,本件各発 明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとは認められない。\n

◆判決本文
1審はこちらです。

◆令和1(ワ)21597

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令和3(ネ)10040  差止請求権不存在確認請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年10月14日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、均等侵害を認めた大阪地裁の判断を知財高裁も支持しました。

 控訴人は,前記第2の3(2)エ(ア)のとおり,本件特許の出願過程の経 緯から客観的,外形的に見るならば,物又は方法の発明として特許出願 している被控訴人が,その補正として「逐次又は一斉に表示」という構\ 成を削除したのであるから,画像選択手段を含むコンピューターにより 出力されるという構成においても「逐次又は一斉に表\示」という構成を\n意識的に除外したと主張する。
しかし,当該出願経過によれば,被控訴人は,明確性要件違反の拒絶 理由(甲8)に対し,本件補正により,コンピューターを構成に含む学\n習用具と記載し,また,被控訴人が甲第10号証と併せて提出した意見 書(甲9)3頁の「(4)記載不備の拒絶への対処」では「作業の主体を 「手段」とし,人が行う作業を示す部分を削除致しました。」としている のであり,他の部分も削除したことを外形的に示す説明はない。 また,「一の組画の画像データを選択する画像選択手段」との構成を付\n加した点について,客観的には,組画を構成する複数の画のうち任意の\n1つの画像データ(ユニット画)を選択すること(例えば第一の関連画 のみを選択すること)が意識的に除外されているとはいい得るとしても, 二以上の組画の画像データを選択することが意識的に除外されたとは いえない。また,「逐次」の文言が用いられている本件明細書【0037】, 【0038】及び【0052】 において,「逐次」及び「一斉」の両方 が用いられているのは特定の組画を構成するユニット画について記載\nしている【0038】に「特定の組画を構成するユニット画は,全て一\n斉に表示してもよいが,前述のように逐次表\示するほうが,学習効果が 増して好ましい。」とあるのみであるから,本件補正前の「それぞれの前 記記憶対象に対応する前記組画を逐次又は一斉に表示して前記記憶対\n象を記憶する」との記載は,特定の組画を構成するユニット画を逐次又\nは一斉に表示することを指していると解するべきであり,「逐次又は一\n斉に表示」という構\成を削除したからといって,複数の組画を選択する 構成を除外する意図であったと認めることはできない。\n
さらに,被控訴人が,上記意見書で進歩性に関して主張したところは, 本件発明が,1)対応する語句が存在する原画の形態を,その形態に対応 する語句と結びつけて記憶することを目的すること,2)関連画の輪郭が, 原画に類似等しており,一定の意味内容を有することから,学習対象者 が,意味内容と原画との関連付けにより,記憶することに苦痛を感じる ことなく楽しみを感じながら,原画を記憶することができること,3)関 連画及び原画に対応する語句の音声データを再生し,関連画及び原画の 表示は対応する語句の再生と同期して行うこと,4)原画又は原画に対応 する語句を思い出すことを目的とするため,関連画の表示及び関連画に\n対応する語句の再生を行った後に,原画の表示及び原画に対応する語句\nの再生を行うこと,5)第一の関連画,第二の関連画,及び原画の順に表\n示し,しかも,前記第一の関連画,前記第二の関連画,及び前記原画を, 対応する語句の再生と同期して表示することにより,4通りのルートに\nよって原画及び対応する語句を思い出すことができることを挙げるもの であるが(甲9),これらの特徴は,複数の組画を選択する構成と矛盾す\nるものではなく,これを意識的に除外する旨を表示したものとはいえな\nい。
(イ) 控訴人は,前記第2の3(2)エ(イ)のとおり,被控訴人が補正において, 構成要件B2の画像選択手段の構\成を加えた点について,複数の組画を 選択する構成を除外しない意図であるならば「一又は複数の組画」や単\nに「組画」等といった記載にすることは極めて容易であり,本件特許の 出願経過を客観的,外形的に見るならば,「一の組画の画像データを選択 する画像選択手段」を付加したことは,複数の組画を選択する構成を意\n識的に除外したことになると主張する。 しかし,仮に,他により容易な記載方法があったとしても,出願人が, 補正時に,これを特許請求の範囲に記載しなかったからといって,それ だけでは,第三者に,対象製品等が特許請求の範囲から除外されるとの 信頼を生じさせるとはいえない。客観的にみて,「一の組画の画像データ を選択する」との記載が,組画を構成する画が維持された状態で選択す\nる限りにおいては,二以上の組画の画像データを選択することを意識的 に除外するものとまでは認められないことは,前記(ア)のとおりである。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆大阪地判 平成31年(ワ)第3273号)

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令和2(行ケ)10134  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年7月29日  知的財産高等裁判所

 コンピュータ関連発明について、知財高裁(2部)は、相違点の認定誤りを理由に、拒絶審決を取り消しました。判決文は、長いです(97ページ)。

 本件審決は,引用発明の構成b1の「コンテンツ」及び構\成f1の「OTTデバイス」が,それぞれ本願発明8の「デジタル・コンテンツ・アイテム」及び「ディスプレイ装置」に相当するという判断を前提として,クライアントに対してファイルを配信する方法において配信の効率化を図ることは一般的課題であるから,引用発明に甲2技術を適用することは,当業者が容易に想到し得たことであるとし,引用発明に甲2技術を適用した発明は,OTTデバイスの「ファイルの受信品質および受信性能の指標を含む品質情報を取得する」構\成を備える方法ということができ,同構成は,構\成Hの「1つまたは複数のディスプレイ装置の動作状態および性能レベルを反映したデータをサービス管理システムにより収集する」構\成に相当すると判断した。
(2) しかし,前記3(1)アの甲2の記載(段落【0002】,【0005】,【0012】,【0014】〜【0018】,【0072】〜【0079】,【0116】〜【0123】等。特に,品質情報を具体的に記載した段落【0073】〜【0078】)からすると,甲2技術は,ファイルの効率的な配信のための技術であって,そこで取得される品質情報は,クライアント計算機の性能や動作状態,あるいは回線状態などに関するものと認められる。なお,甲2の段落【0049】,【0050】,【0053】及び【図3】からすると,甲2において,サーバ201と同様の概略構\成であり得るクライアント211がディスプレイ装置と接続されることは示唆されているが,他方で,ディスプレイ110は,あくまで,サーバ201に備わる表示コントローラ105と接続される外部装置として取り扱われており,そのような外部装置であるディスプレイ110から何らかの情報を取得することについての記載は見当たらない。したがって,甲2技術における「受信品質の指標・・・および受信性能\の指標を含む品質情報」に,ディスプレイ装置の品質等の情報が含まれているとまでは認められず,その点に係る技術常識等を認めるべき他の証拠もない。
(3) そうすると,仮に,引用発明の構成b1の「コンテンツ」及び構\成f1の「OTTデバイス」が,それぞれ本願発明8の「デジタル・コンテンツ・アイテム」及び「ディスプレイ装置」に相当するという判断を前提とし,クライアントに対してファイルを配信する方法において配信の効率化を図ることが一般的課題であると解して,引用発明に甲2技術を適用し,OTTデバイスの「ファイルの受信品質および受信性能の指標を含む品質情報を取得する」構\成を備えるものとしたとしても,直ちに「ディスプレイ装置」の「品質情報を取得する」ことまでをも含む構成になるということはできず,本願発明8の構\成Hの「1つまたは複数のディスプレイ装置の動作状態および性能レベルを反映したデータをサービス管理システムにより収集する」構\成に相当するものになるとはいえない。よって,本件審決における相違点1に係る容易想到性の判断には,誤りがある。以上の認定判断に反する被告の主張は,採用することができない。
5 相違点2に係る構成の容易想到性について\n
(1)本件審決は,引用発明と甲3技術は,送信クライアント,受信クライアント及びサーバとの間でデータ送受信を行う方法である点において共通することから,引用発明に甲3技術を適用することは,当業者が容易に想到し得たことであるとし,引用発明に甲3技術を適用した発明は,OTTデバイス(ピア1A)から他のOTTデバイス(ピア1B)に対して,「ピア1Bは,ピア1Aに該当のデータの送信を要求する」構成を備える方法ということができ,当該構\成は,構成Jの「外部の創作地点から,インターネットを介して,前記1つまたは複数のディスプレイ装置へと,前記サービス・クラウドの外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」構\成に相当すると判断した。
(2) しかし,甲3技術がピアツーピアシステムに係るものである(構成i)のに対し,引用発明は,コンテンツの取込み,自動パブリッシング,配信及び格納並びに収益化等の複合的なタスクが実行可能\であるもので,それ自体が主体的にコンテンツの取込みや配信等を行う方法であるものと解されるから,甲3技術と引用発明とは,少なからず技術分野を異にするものというべきである。この点,「送信クライアント,受信クライアント及びサーバとの間でデータ送受信を行う方法」という広い技術分野に属することから直ちに,それらの関係性等を一切考慮することなく,引用発明に甲3技術を適用することを容易に想到することができるものとは認め難い。そして,甲3に,他に,甲3技術を引用発明に適用する動機付けや示唆となる記載があるとも認め難い。 よって,本件審決における相違点2に係る容易想到性の判断には,誤りがある。
(3) 被告は,本願明細書(甲6)の段落【0130】の記載を踏まえて,本願発明8の構成Jにいう「外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」という文言の意味について,「デジタル・コンテンツ・アイテム」が「外部コンテンツ・ゲートウェイ」を経由するか否かにかかわらず,「外部コンテンツ・ゲートウェイ」の機能\「により転送する」ことをいうと主張するが,上記(2)の判断は,本願発明8の構成Jにいう「外部コンテンツ・ゲートウェイにより転送する」を上記の被告が主張するように理解したとしても左右されるものではない。\n
6 相違点3に係る構成の容易想到性について\n
(1)本願発明8の構成Kの「ライブ・データ・フィード・ゲートウェイ」については,構\成Kの文言によると,サービス・クラウドに備えられ,コンテンツをサービス・クラウドの外部の供給源からディスプレイ装置に提供する機能を有するものと認められ(前記1(2)ウ(ク)),また,「ライブ・データ・フィード」という用語からすると,外部の供給源から供給されるデータには「ライブ」の要素が含まれるものと解される。しかるに,甲4技術が,上記の「ライブ」の要素が含まれるデータの供給に関する構成を含むものであるかは明らかでない。したがって,引用発明に甲4技術を適用しても,直ちに本願発明8の構\成Kに至るものかは,明らかでない。
(2) 本件審決は,甲4技術の構成kの「オンラインサービスコンピューティング装置108」が,本願発明8の「ライブ・データ・フィード・ゲートウェイ」に相当すると判断したが,上記(1)の点に関し,この判断の根拠が明確にされているとはいえない。また,被告は,甲4技術の「オンラインサービスコンピューティング装置108」は,コンテンツアイテムを外部供給源(「オンラインソーシャルネットワーキングサービス」)から受信してユーザ装置310に送信するから,データを一方から他方へ転送する制御機能\を有する「ゲートウェイ」に相当するとした上で,データは「多数のユーザにより投稿され共有された種々のメディアコンテンツアイテム」や「コンテンツを共有しているユーザ又は『友達』により供給されたニュースフィード」を含むから,上記ゲートウェイは「サービス・クラウドのライブ・データ・フィード・ゲートウェイ」といえると主張するが,上記(1)の点に関し,その根拠が明確にされているとはいえない。
(3) 以上の点は,原告が取消事由として主張するものではないが,特許庁において更なる審理判断がされることを考慮して判示するものである。7相違点4に係る構成の容易想到性について(1) 引用発明と甲5技術は,いずれもサーバにコンテンツを取り込む方法に係るものであるという点で技術的な共通性を有するといえ,引用発明に甲5技術を適用することは,当業者が容易に想到し得たことであるといえる。そして,引用発明に甲5技術を適用した発明は,OTTデバイスに表示するための「画像データが表\す画像の被写体種類(シーン)を解析して,画像の色を,被写体種類ごとに予め記憶された目標濃度に補正する」構\成を備える方法ということができ,この構成は,本願発明8の構\成F2の「前記少なくとも1つのデジタル・コンテンツ・アイテムを,前記デジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンにより解析する」構成に相当するということができる。よって,相違点4に係る構\成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。(2)ア原告は,本願発明における解析は,ユーザが視聴するための,映画やテレビ番組等のコンテンツをディスプレイ装置に送信するために行われるものであるところ,ユーザにおいてそれらの画像の特定の部分(顔等)を調整したいという要求はないから,甲5技術に係る「画像データが表す画像の被写体種類(シーン)を解析して,画像の色を,被写体種類ごとに予\め記憶された目標濃度に補正する」構成は,本願発明8の構\成F2には相当しないと主張する。
しかし,本願発明8の構成F2は,「ディスプレイ装置上に表\示するための」「デジタル・コンテンツ・アイテムを,前記デジタル・メディア・コンテンツ取込エンジンにより解析する」というもので,「解析」の具体的な内容については記載されていない。そして,本願発明8の構成中に,「デジタル・コンテンツ・アイテム」について,原告の主張するような内容のものに特定する旨の記載もなく,他に本願発明8の構\成F2の「解析」を原告の主張するように限定して解釈すべき理由はない。したがって,原告の上記主張は,その前提を欠くものであって,採用することができない。イ原告は,本願明細書の段落【0119】の記載から,本願発明8の構成F2の「解析」は,ビジュアル及び音響コンテンツの両方に対して行われ得るもので,甲5技術の「解析」とは異なる旨を主張するが,本願の特許請求の範囲の請求項8には,「音」について何ら記載がなく,上記アのような記載があるのみであるから,本願発明8の構\成F2の「解析」が音響に対しても行われるものと解することはできない。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
ウ原告は,引用発明と甲5技術とを組み合わせる動機付けはなく,シーンごとに画像の特定の部分を調整するために,オペレータの好みに従って事前に手動で入力される「目標濃度」を用い,オートセットアップ機能を介して,画像を調整するという甲5技術の「解析」の特徴は,特定の装置の技術的仕様に画像をより良好に適合させるために画像の調整を行う本願発明の「解析」とは対照的であって,甲5技術の「解析」を本願発明に組み込むことは,無意味であり,逆効果であると主張するが,上記アで指摘したのと同様,本願発明8における「解析」について,特定の装置の技術的仕様に画像をより良好に適合させるために画像の調整を行うためのものと限定して解釈すべき理由はないから,原告の上記主張も,前提を欠くものであって採用することができない。\n
8まとめ
以上によると,原告主張の取消事由のうち,相違点の認定の誤り及び相違点4に係る容易想到性の判断の誤りは,いずれも理由がないが,相違点1に係る容易想到性の判断の誤り及び相違点2に係る容易想到性の判断の誤りは,いずれも理由がある。

◆判決本文

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令和2(ネ)10044 特許権侵害損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年6月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁3部は、非接触式ICカードは本件発明の「記憶媒体」には非該当、また、無効主張は、時期に後れた攻撃防御でないとして、被告の敗訴部分を一部取り消しました。

(2) 非侵害論主張5)について
ア 自白の成否及び時機に後れた攻撃防御方法該当性
一審原告は,非侵害論主張5)は,原審の答弁書記載の認否によって成立 した自白の撤回に当たり,また,時機に後れた主張でもあるから,許され ない旨主張する。 たしかに,一審被告は,原審答弁書における構成要件1A等の認否に際\nし,被告給油装置の電子マネー媒体が本件発明の「記憶媒体」に当たると の対比を明確に争っていたわけではないが,従前から,被告給油装置が本 件発明の技術的思想を具現化したものでないことを主張しており,非侵害 論主張5)は,これを,使用される決済手段の差異(プリペイドカードと非 接触式ICカード)という観点から論じたものであるといえるから,一審 被告が充足論全体について単純に認めるとの認否をしていない以上,自白 を撤回して新たな主張をしているとはいえないし,この主張を時機に後れ たものとして扱うのも相当ではない。 したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
イ 非接触式ICカードの「記憶媒体」該当性
本件明細書において,本件発明の「記憶媒体」の具体的態様としては, 磁気プリペイドカード(【0033】)のほか,「金額データを記憶する ためのICメモリが内蔵された電子マネーカード」(【0070】)や 「カード以外の形態のもの,例えば,ディスク状のものやテープ状のもの や板状のもの」(【0071】)も開示されている。このように,本件発 明の「記憶媒体」は必ずしも磁気プリペイドカードには限定されない。 しかしながら,本件発明の技術的意義が上記1のとおりであることに照 らして,「媒体預かり」と「後引落し」との組合せによる決済を想定でき る記憶媒体でなければ,本件3課題が生じることはなく,したがって,本 件発明の構成によって課題を解決するという効果が発揮されたことになら\nないから,上記の組合せによる決済を想定できない記憶媒体は,本件発明 の「記憶媒体」には当たらない。 かかる見地にたって検討するに,被告給油装置で用いられる電子マネー 媒体は非接触式ICカードであるから,その性質上,これを用いた決済等 に当たっては,顧客がこれを必要に応じて瞬間的にR/Wにかざすことが あるだけで,基本的には常に顧客によって保持されることが予定されてい\nるといえる。そのため,電子マネー媒体に対応したセルフ式GSの給油装 置を開発するに当たって,物としての電子マネー媒体を給油装置が「預か る」構成は想定し難く,電子マネー媒体に対応する給油装置を開発しよう\nとする当業者が本件従来技術を採用することは,それが「媒体預かり」を 必須の構成とする以上,不可能\である。 そうすると,被告給油装置において用いられている電子マネー媒体は, 本件発明が解決の対象としている本件3課題を有するものではなく,した がって,本件発明による解決手段の対象ともならないのであるから,本件 発明にいう「記憶媒体」には当たらないというべきである。むしろ,電子 マネー媒体を用いる被告給油装置は,現金決済を行う給油装置において, 顧客が所持金の中から一定額の現金を窓口の係員に手渡すか又は給油装置 の現金受入口に投入し,その金額の範囲内で給油を行い,残額(釣銭)が あればそれを受け取る,という決済手順(これは乙4公報の【0002】 に従来技術として紹介されており,周知技術であったといえる。)をベー スにした上,これに電子マネー媒体の特質に応じた変更を加えた決済手順 としたものにすぎず,本件発明の技術的思想とは無関係に成立した技術で あるというべきである。一審被告の非侵害論主張5)は,このことを,被告 給油装置の電子マネー媒体は本件発明の「記憶媒体」に含まれないという 形で論じるものと解され,理由がある。
ウ 一審原告の主張について
(ア) 一審原告は,本件発明の「記憶媒体」は,構成要件1C及び1Fの動\n作に適した「記憶媒体」であれば足りる旨主張する。 しかしながら,発明とは課題解決の手段としての技術的思想なのであ るから,発明の構成として特許請求の範囲に記載された文言の意義を解\n釈するに当たっては,発明の解決すべき課題及び発明の奏する作用効果 に関する明細書の記載を参酌し,当該構成によって当該作用効果を奏し\n当該課題を解決し得るとされているものは何かという観点から検討すべ きである。しかるに,一審原告の上記主張は,かかる観点からの検討を せず,形式的な文言をとらえるにすぎないものであって,失当である。 したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
(イ) 一審原告は,本件明細書の【0070】に「記憶媒体」として「金額 データを記憶するためのICメモリが内蔵された電子マネーカード」を 例示する記載があり,非接触式ICカードもこれに含まれる旨主張する。 しかしながら,上記記載は,【0033】の「プリペイドカード71 は,磁気カードからなり」等の記載を受けて,カードの記憶素子が磁性 材ではなくICメモリであっても良い旨を示すにとどまり,そのカード が非接触で動作することを示す記載ではない。また,上記記載において, ICメモリは「金額データを記憶するための」ものであって,非接触式 ICカードのように演算・通信の機能を有することは開示も示唆もされ\nていないから,上記記載を根拠に非接触式ICカードが本件発明の「記 憶媒体」に当たるとはいえない。 したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
(ウ) 一審原告は,非接触式ICカードが券売機に取り込まれて使用され得 ることは周知であり,本件明細書には設定器内部にカードを取り込んだ ままとしない記憶媒体を用い得ることが示されているから,非接触式I Cカードが本件発明の「記憶媒体」に当たらないとはいえない旨主張す る。 しかしながら,前掲前提事実のとおり,被告給油装置において電子マ ネー媒体を使用する際には,電子マネー媒体(非接触式ICカード)は R/Wにかざされるだけであって装置に「取り込まれ」ることはない。 非接触式ICカード一般に一審原告主張のような使用態様はあり得るも のの,被告給油装置ではそのような使用態様によらずに非接触式ICカ ードが「電子マネー媒体」として用いられているので,被告給油装置に おける「電子マネー媒体」の技術的意義は,本件発明における「記憶媒 体」のそれとは異なる。 したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。
(3) 充足論についての小括
以上によれば,一審被告の非侵害論主張4)及び5)は理由があるから,その 余の非侵害論主張の成否について判断するまでもなく,被告給油装置及び被 告プログラムは本件特許を侵害しない。
4 争点4(無効論)について
念のため,仮に,本件発明1の「先引落し」金額は顧客が指定する場合を含 み(上記3(1)イ(イ)参照),また,非接触式ICカードも本件特許の「記憶媒 体」に含まれる(上記3(2)イ参照)とした前提で,無効論につき検討する。 なお,本件において,無効論は,本件発明1及び本件発明3(本件訂正後の もの)について検討すれば足りる。このことは,上記「第3」4の冒頭に説示 したとおりである。
(1) 「時機に後れた攻撃防御方法」該当性について
無効主張A,B,Dは,原審における侵害論の心証開示後に主張されたも のであり,そのため,原審においては時機に後れたものとして取り扱われた わけであるが,既に充足論に関する項で指摘したとおり,構成要件1C1充\n足性(非侵害論主張4))及び構成要件1A,1C,1F3,1F4充足性\n(非侵害論主張5))に関する原審の主張整理には,本来は,争いがあるもの として扱うべき論点を争いのないものとして扱ったという不備があったとい わざるを得ない。そして,無効論に関する主張の要否や主張の時期等は,充 足論における主張立証の推移と切り離して考えることができないのであるか ら,充足論について,本来更に主張立証が尽くされるべきであったと考えら れる本件においては,無効主張が原審による心証開示後にされたという一事 をもって,時機に後れたものと評価するのは相当ではない。 また,上記無効事由に関する当審における無効主張は,控訴後速やかに行 われたといえる。 以上によると,一審被告による上記無効主張は,原審及び当審の手続を全 体的に見た観点からも,また,当審における手続に着目した観点からも,時 機に後れたものと評価することはできない。 したがって,いずれの無効主張も,時機に後れた攻撃防御方法として却下 すべきものではない。
・・・
ウ 相違点の容易想到性
上記の表において一致点とされていない本件発明1の構\成は,相違点と なる。 しかしながら,いずれの構成も,セルフ式GSの給油装置において,審\n判甲B1装置の現金による支払を,電子マネー媒体による支払に置き換え る際には,当然に備わる構成である。すなわち,上記の各相違点をまとめ\nると,本件発明1においては装置がR/Wを備えること,電子マネーの金 額データはR/Wにより電子的に書き換えられること,の2点となるが, いずれの構成も,現金の場合は貨幣という有体物に化体されている金銭的\n価値を,電子的情報という無体物に化体させたことによって必然的に生じ る帰結である。 また,現金による支払を電子マネー媒体による支払に置き換えること自 体は,電子「マネー」という名称自体からも容易に着想することができる し,例えば乙16の12(電子商取引推進協議会「モバイルECに関わる 決済標準モデルの研究中間報告書」平成13年3月発行)には,非接触式 ICカードが「電子マネー」として利用されること,FeliCa内蔵の携帯電 話は「電子財布」になること等が記載されており,これらの記載は,現金 による支払いを電子マネー媒体に置き換えることを動機付ける。 そうすると,当業者にとって,上記各相違点にかかる本件発明1の構成\nに想到することは,通常の創作能力の発揮にすぎず,容易であったといえ\nる。

◆判決本文

原審はこちら。

◆平成29(ワ)29228

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令和2(行ケ)10147  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年6月29日  知的財産高等裁判所

 ゲームプログラムの発明について新規事項であるとした審決が維持されました。なお本件発明は第4世代の分割出願です。

 これらによると,「アイテムボックス」は,アイテムを収納するものとしてゲーム 分野で慣用されている語であるとはいえるものの,「アイテムボックス」という記載 をもって,アイテムボックスに収納できるアイテムの数に所定の上限が設けられて いるか否か,アイテムボックスが必ずすべてのアイテムを収納するものであるか否 か,といった特定の仕様が一義的に決まるものではない。 当初明細書に記載の「アイテムボックス」の解釈に当たっては,当初明細書に記 載の「アイテムボックス」が収納上限を設けているという仕様を有していることを 前提としているものといえ,甲12〜14の記載は,当初明細書等に記載の「アイ テムボックス」が収納上限を設けているという前提に対して何らの影響を与えるも のとはいえない。
ウ 原告は,本願発明1は「アイテムボックスに特定アイテムの収納上限が 設けられ」ることを特定しているわけではないから,「アイテムボックスに特定アイ テムの収納上限が設けられている」ことが当初明細書に記載されているか否かは, 本件補正が新規事項の追加に該当するか否かとは無関係である旨主張する。 しかし,当初明細書において唯一アイテムボックスに関して記載されている段落 【0051】における「アイテムボックス」に関する記載からは,当該「アイテム ボックス」に収納上限が設けられているものであることが読み取れるのみであるか ら,「アイテムボックス」に特定アイテムを収納するとした場合には,特定アイテム の収納上限が設けられることになるとの解釈が,新たな技術的事項を導入するもの であるか否かを判断する際に考慮すべき事項である。 なお,新規事項の追加の判断は,補正により追加された事項が,当初明細書に記 載された事項から導き出される全ての技術的事項との関係から,新たな技術的事項 が導入されたものであるか否かであるから,本願発明1において「アイテムボック スに特定アイテムの収納上限が設けられ」ることを特定しているか否かは,新たな 技術的事項を導入するものであるか否かの判断に影響するものではない。
エ 原告は,令和2年4月1日付け意見書(甲8)と当初明細書等の記載が 整合するか否かは,本件補正が新規事項の追加に該当するか否かとは無関係である 旨主張する。 しかし,原告は,同意見書(甲8)において,当初明細書に記載の「アイテムボ ックス」には収納上限が設けられているということを前提とした主張をしているた め,同意見書の主張と,当初明細書との記載とが整合しているか否かは,新たな技 術的事項を導入するものであるか否かを判断する際に検討すべき事項であって,無 関係というべきではない。
(3) 「特定のアイテム」について
ア 当初明細書の段落【0051】には,「・・・具体的には,ユーザは,付 与される様々な種類の不要なアイテムを,1つの特定のアイテムに変換して所持す ることができるため,・・・」として,「付与される様々な種類の不要なアイテム」 を「1つの」「特定アイテム」に変換して所持することが記載されているところ,「1 つの」特定のアイテムが,「1個の」特定のアイテムのことを意味するのか,「1種 類の」特定のアイテムのことを意味するのかは当初明細書には記載されていない。 しかし,当初明細書の【図3】において,レアリティが「R」のカードが3個の 「特定のアイテム」に変換され,レアリティが「N」のカードが2個の「特定のア イテム」に変換されることが看取でき,すべてのカードが「『1個の』特定のアイテ ム」に変換されるものではないことを踏まえると,当初明細書の段落【0051】 に記載の「1つの」特定のアイテムは,「1種類の」特定のアイテムのことを意味す ると解することができる。 本件審決は,「1つの」特定のアイテムについて,直接的に言及していないものの, 「特定のアイテム」が「1種類」であることを当然の前提とした上で,判断してい る。
イ 当初明細書には,「特定のアイテム」が「上限なくユーザが所持可能とす\nることができる」ものであることが記載されているとともに,当初明細書には「特 定のアイテム」を上限なくユーザが所持可能とするという構\成をとることによって, ユーザは,付与される様々な種類の不要なアイテムを,一つの特定のアイテムに変 換して所持することができるため,不要なアイテムによりユーザのアイテムボック スが満杯になるのを防ぐことができることが記載されている。 これらの記載によると,本願発明における「ユーザに付与されたアイテムを特定 のアイテムに変換する」ことの技術的意義は,不要なアイテムを,上限なくユーザ が所持可能とすることができる「特定のアイテム」に変換することによって,収納\nすることができるアイテムの数に上限が設けられている「ユーザのアイテムボック ス」が満杯になることを防ぐことであると理解される。
ウ 上記イのような「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換 する」ことの技術的意義に照らすと,当初明細書等に記載の「アイテムボックス」 は,収納上限が設けられているものであるのに対し,当初明細書に記載の「特定の アイテム」は,「上限なくユーザが所持可能とすることができる」ものであるから,\n「アイテムボックス」に収納される「アイテム」と,「特定のアイテム」とでは,所 持可能な数に上限があるかないかという点で,アイテムの性質が異なるといえる。\nまた,当初明細書には,「特定のアイテム」が「他アイテム」とは異なる種類のアイ テムであることが説明されている。 当初明細書の記載に接した当業者は,そこに記載された収納上限が設けられてい る「アイテムボックス」に,上限なくユーザが所持可能とするようにされた「特定\nのアイテム」が収納されると認識することはなく,上限なくユーザが所持可能とす\nるようにされた「特定のアイテム」は,収納上限のある「アイテムボックス」とは 別に管理するものであると認識するというべきである。 また,「特定のアイテム」と,「ユーザに付与される」「他のアイテム」とは異なる 種類のアイテムであることが説明されており,「特定のアイテム」とユーザに付与さ れるアイテムとでは,所持可能な数に上限があるかないかという点で,アイテムの\n性質が異なるものと理解されることからしても,「ユーザ」に付与される「他のアイ テム」がアイテムボックスに収納されるものであるからといって,「特定のアイテム」 がアイテムボックスに収納されるものであると当然に理解するものとはいえない。 以上によると,当初明細書の記載は,上限なくユーザが所持可能とすることがで\nきる「特定のアイテム」を収納上限のある「アイテムボックス」に所持する(アイ テムボックスに収納する)ことを排除していると評価できる。
エ 原告が主張するように,本願発明において,「特定のアイテム」が「アイ テムボックス」に収納されるものであると解した場合には,当初明細書の段落【0 051】にのみ記載されているところの「アイテムボックス」には収納上限が設け られているのであるから,不要なアイテムを「特定のアイテム」に変換したとして も,(複数個の)1種類の「特定のアイテム」が不要なアイテムとして変換されたア イテムの代わりにアイテムボックスに収納されることとなる以上,(複数個の)「特 定のアイテム」によりアイテムボックスが占有されることになるのであるから,ア イテムボックスが満杯になることを防ぐことができなくなってしまうこととなり, 不要なアイテムを「特定のアイテム」に変換することにより,ユーザのアイテムボ ックスが満杯になることを防ぐという「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイ テムに変換する」ことの技術的意義を損なうものといえる。
オ 原告は,アイテムの所持とアイテムボックスへの収納とが関連すると主 張する。 しかし,上記(2)の「アイテムボックス」に関する前提や上記イの本願発明におけ る「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換する」ことの技術的意義 を踏まえると,当初明細書の段落【0051】の記載は,ユーザに付与された不要 なアイテムを特定のアイテムに変換して,変換した特定のアイテムをアイテムボッ クスに入れることなく上限なしに所持できるようにすることにより,ユーザのアイ テムボックスが満杯になることを防ぐという,原因と結果の関係を示しているとい うべきである。 本件審決は,「1つの特定のアイテムを所持できる」ことと「不要なアイテムによ りユーザのアイテムボックスが満杯になるのを防ぐことができる」ことを,当初明 細書の記載を踏まえて,両者を関連付けた上で判断を行っているから,「1つの特定 のアイテムを所持できる」ことと「不要なアイテムによりユーザのアイテムボック スが満杯になるのを防ぐことができる」ことを別個独立したものとして捉えている との原告の主張は誤りである。
カ 原告は,当初明細書の段落【0052】は,段落【0051】の記載に 加え,更に「上限なくユーザが特定のアイテムを所持可能とする」という構\成を付 加的に採用してもよいこと,その付加的な構成によって「特定アイテムを貯蓄する\n事が可能となり,ユーザの好きなタイミングで特定アイテムを使用する事ができる」\nという効果があることを述べたにすぎないから,新たな発明特定事項が当初明細書 に明確に記載されているか否かは,段落【0052】の記載に左右されるものでは ない旨主張する。
しかし,新規事項の追加の判断は,補正により追加された事項が,当初明細書の 全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技 術的事項を導入するものであるか否かである以上,本件審決において,当初明細書 の段落【0051】だけでなく,段落【0052】を含めた当初明細書のすべての 記載を総合的に判断して,「アイテムボックス」及び「特定のアイテム」,並びに, 本願発明における「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換する」こ との技術的意義を解釈して,新規事項の追加の判断を行ったことに,誤りはない。 なお,本件審決は,本願発明において,「特定のアイテム」が「アイテムボックス」 に収納されるものであると解した場合には,不要なアイテムを「特定のアイテム」 に変換することにより,ユーザのアイテムボックスが満杯になることを防ぐという 「ユーザに付与されたアイテムを特定のアイテムに変換する」ことの技術的意義を 損なうものであると判断しており,当該判断においては,「特定のアイテム」が「上 限なくユーザが特定のアイテムを所持可能とする」ものであるか否かに関係なく,\n「特定のアイテム」を「アイテムボックス」に対応付けて記憶する事項が新規事項 であると判断している。
(4) 以上のとおり,当初明細書には,「特定のアイテム」が「アイテムボック ス」に収納されることが記載されているとはいえず,また,当初明細書の記載から, 「特定のアイテム」が「アイテムボックス」に収納されることが自明であったとも いえないから,「特定のアイテム」を「アイテムボックス」に対応付けて記憶する事 項を追加する補正が,当業者によって当初明細書の全ての記載を総合することによ り導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであると した本件審決の判断に誤りはない。

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令和2(行ケ)10102等  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年5月20日  知的財産高等裁判所

 10日ほど前に、新聞を賑わしたユニクロのセルフレジの特許についての無効審判事件です。知財高裁は特許無効とした審決を、引用文献の認定誤りがあるとして、取り消しました。

 ウ また,甲1の「読取り/書込みデバイス102」は単独で機能するもの\nである。
 (ア) 甲1発明は,RFIDタグの読取り/書込みを行うデバイスと,この デバイスを利用する会計端末に関するものである(甲1の訳文3頁4行〜6行)が, 一般に,RFID読取りデバイスにより情報が読み取られる対象物には,液体を含 む物や水分量が多い物もあるが,そうでない物もある。こうした液体を含む物や水 分量が多い物を取り扱わない店舗も多々あるが,甲1発明の発明者は,スーパーマ ーケットのように,液体を含む物や水分量が多い物も販売する店舗に着目し,その ような店舗においては,「FR 2 966 954 A1号」として公開されてい る特許公開公報(乙30)の図に示された装置では,効率的な読取りを実施するこ とができないと考えており(甲1の訳文3頁10行〜26行),甲1発明は,「液体 を含む物や水分量の多い物についてもRFIDタグが効率的に読みとれること」, 「対象物のタイプにかかわらず,RFIDタグが効率的に読みとれること」を目的 とするものであることを,当業者は理解する。
そして,当業者は,甲1の具体的構成(甲1の訳文3頁35行〜47行)により,\n「本発明によるデバイスによって,載置キャビティ内において,端末の近傍に置か れた製品,特に端末に隣接する棚に置かれた製品に貼付されたRFIDタグが通電\nされ,したがって読み取られるリスクを伴わずに,読取り/書込み動作を実施する のに使用される電波の出力を増加させることが可能になり,またしたがって,キャ\nビティ内に載置されたタグを,液体を含む対象物に貼付されたタグであっても,よ\nり良好に読み取ることが可能になる。」という効果を有すること(甲1の訳文4頁1\n4〜19行)を理解する。
甲1の具体的構成と,乙30に記載されているRFID読取りデバイスの相違は,\n1)「前記挿入アパーチャの周りに配置され,前記挿入アパーチャから上方に延在し, 前記載置キャビティと外部との間の電波を減衰することができる,防壁と呼ばれる 少なくとも1つの壁」(「防壁」)と,2)「前記少なくとも1つの防壁を通して前記挿 入アパーチャにアクセスするための,アクセス開口部と呼ばれる少なくとも1つの 開口部」(「アクセス開口部」)のみである。 2)の「アクセス開口部」は,1)の「防壁」がある場合に,載置キャビティに物を 入れるため(「防壁を通して前記挿入アパーチャにアクセスするため」)の開口部で あるから,防壁があれば必然的に存在することになるものであり,水分を含む物で も情報が効率的に読み取れることとは関係しない。甲1の具体的構成が,乙30に\n係る発明と異なり,水分を含む物でも情報が効率的に読み取れるのは,「防壁」があ るからであると当業者は理解する。 したがって,当業者は,水分を含まない物や対象物が軽い物を読み取るのであれ ば,電波を低量にするから,「防壁」のない装置で十分であると理解する。\nそして,甲1では,「防壁」のないものとして,「読取り/書込みモジュール20 0」が,[図2]に示され,甲1の訳文10頁1〜19行に具体的な構成が記載され\nており,当業者は,「読取り/書込みモジュール200」は,「防壁」を備えるもの ではなく,よりシンプルな構成であるが,読取装置に必要な要素をすべて備えるも\nのであり,水分を含まない対象物については,問題なく動作することを理解する。 このように,甲1には[図1]に示されている読取装置と,[図2]に示されてい る読取装置の二つが開示されており,[図1]の読取装置は,水分を含む物も含まな い物も,効率よく読み取ることができるものであり,[図2]の読取装置は,水分を 含まない物に使用することができると,当業者は理解する。 甲1発明2のように,読取装置を独立した発明として把握する公知文献,公知技 術は枚挙に暇がない(甲2,乙28〜37)。
(イ) 原告らは,水分を含まない物を読み取るものとして,甲1発明2を単 体で利用することについては甲1に何ら記載がないと主張している。 しかし,被告は,読取対象物が水分の少ない場合については従来技術と同様に甲 1発明2が単体の読取装置として機能することを説明しているのであるから,これ\nに対する反論となっていない。当業者が甲1文献の記載を読めば,読取対象物が水 分の少ない物を取り扱う店舗においては,水分の多い物を読み取るために創作され た甲1発明1全体を実施するのは無駄であり,従来技術に近い甲1発明2を実施す べきであると考えるのが当然である。 また,原告らは,電波の出力を下げると金属に貼られたタグも読み取りできなく\nなると主張する。 しかし,そのような事実があるかは不明であるし,仮にそうであるとしても,読 取対象物が金属製でない場合は,従来技術と同様に,甲1発明2が単体の読取装置 として機能し,使用可能\である。本件明細書には,電波強度や金属に貼られたタグ\nを読み取る点について記載がなく,本件発明が金属に貼られたタグが読めるものと\nは解釈できないから,甲1発明2と対比できるものではない。
エ 原告らは,防壁及びアクセス開口部は,甲1に記載される目的を達成す るために必須の構成であると主張する。\nしかし,上記ウのとおり,甲1の[図2]の読取装置は,水分を含まない物につ いては読取装置として十分に使用することができると,当業者は理解する。本件審\n決は,甲1に記載されたこれらの発明のうち,水分を含まない物に使用することが できる[図2]の読取装置を「甲1発明2」と認定したものであるから,誤りはな い。
オ 原告らは,甲1の実施例に重量計が使われていることを指摘するが,読 取対象物が水分の少ない場合については,重量計が存在しても,従来技術と同様に, 甲1発明2が単体の読取装置として機能することに変わりはない。\n

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令和1(行ケ)10140 審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年3月16日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について進歩性違反なしとした審決が維持されました。

ア 本件発明1の「利用者データベース」について
(ア) 前記第2の2の特許請求の範囲の記載のとおり,構成要件1Bの「利\n用者データベース」は,管理コンピュータ側に備えられるものであり, 「監視端末側に対して付与されたIPアドレスを含む監視端末情報」が, 「利用者ID」に「対応付けられて登録」されているものと規定されて いる。 また,管理コンピュータ側は,「利用者の電話番号,ID番号,アド レスデータ,パスワード,さらには暗号などの認証データの内少なくと も一つからなる利用者IDである特定情報」を入手し(構成要件1Di),\n「この入手した特定情報が,前記利用者データベースに予め登録された\n監視端末情報に対応するか否かの検索を行」い(構成要件1Dii),「前 記特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合,…この抽出された 監視端末情報に基づいて監視端末側の制御部に働きかけていく」(構成\n要件1Diii)と規定されている。 そうすると,特許請求の範囲の記載からは,「利用者データベース」 は,記憶媒体の種類や構成等の限定は付されていないものの,入手する\n特定情報から,あらかじめ登録された監視端末情報を検索することがで き,入手した特定情報に対応する監視端末情報が存在する場合に当該監 視端末情報に含まれるIPアドレスを抽出し得る程度に,IPアドレス を含む監視端末情報が利用者IDに「対応付けられて登録されている」 ものと理解することが相当である。
(イ) そこで,次に,本件明細書の記載をみると,前記1のとおり,本件発 明の実施例において,「利用者データベース」は,磁気ディスクや光磁 気ディスクからなる記憶装置35に記憶され,利用者の電話番号,ID 番号,アドレスデータ,パスワード,暗号,指紋等を基にした利用者を 識別可能な符号である利用者IDに,該利用者の暗証番号並びに該利用\n者が監視したい場所に設置されている監視端末に付与されているIPア ドレスを対応付けているものであり(【0020】,【0021】,【図 5】),利用者の認証の際に参照されるとともに,利用者がアクセス可 能な監視端末のグローバルIPアドレスを検索抽出するために参照され\nるものとされている(【0026】,【0029】,【0030】,【図 7】)。 本件明細書の記載によっても,「利用者データベース」は,利用者を 識別できる情報(「利用者ID」)に,当該利用者が監視したい場所に 設置されている監視端末に付与されたグローバルIPアドレス(「監視 端末情報」)が検索できる程度に対応付けられることを要するものと理 解される(なお,実施例における記憶媒体の種類は単なる例示であるこ とが明らかであるから,やはり,本件発明1において,「利用者データ ベース」の記憶媒体の種類や構成等に限定が付されたものと理解するこ\nとはできない。)。
(ウ) 以上からすると,本件発明1の「利用者データべース」は,利用者を 識別できる情報に監視端末側に付与されたIPアドレス等の情報が,検 索できる程度に対応付けられて登録されていることを要するものの,そ れで足り,記憶媒体の種類や構成等が具体的に限定されているものでは\nないと解されるが,利用者を識別できる情報とIPアドレスが関連性な く記憶され,両者がシステム動作中に単にあい続いて利用されているだ けの関連性しか有しない場合には,前記(ア)において説示した意味合い において,当該監視端末情報に含まれるIPアドレスを抽出し得る程度 に,IPアドレスを含む監視端末情報が利用者IDに「対応付けられて 登録されている」ものということはできないから,「利用者データベー ス」が構成されているとはいえないと解するのが相当である。\n

◆判決本文

こちらは原告被告の同じ関連事件です。

◆令和1(行ケ)10141

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令和2(行ケ)10073  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年3月24日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について進歩性違反なしとした審決が維持されました。

(1) 一致点及び相違点
上記1及び2によれば,本件各発明と甲1発明との一致点及び相違点は, 本件審決が認定したとおり(前記第2の3(2)イ)であると認められる(なお, 以下において,「医療情報取得情報」とは,患者の医療情報を取得するため に,端末装置から取得され,又は情報処理装置の記憶部にあらかじめ記憶さ れた情報をいう。)。
(2) 原告の主張について
ア 原告は,甲1発明の「ベッドサイド端末識別子」は患者名を取得するた めの識別情報であり,本件発明1の「第1識別情報」に相当するから,相 違点1−1は存在しない旨主張する。 しかしながら,本件明細書1及び甲1公報の記載内容からすれば,本件 発明1の「第1識別情報」は,患者ごとに付された患者ID等であるのに 対し,甲1電子カルテサーバの「ベッドサイド端末識別子」は,ベッドサ イド端末ごとに付されたIPアドレス等であり,両者が識別する対象は異 なるというべきである。また,甲1電子カルテサーバの「ベッドサイド端 末識別子」は,患者IDと関連付けられて記憶されることによって初めて 患者を識別する情報として用いることが可能となるにすぎないものであ\nり,それのみによって直接に患者が識別されるものではない。 これらの事情を考慮すると,本件発明1の「第1識別情報」と甲1電子 カルテサーバの「ベッドサイド端末識別子」とは,異なる概念であるとい うべきであるから,相違点1−1を認定することができる。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
イ なお,原告が主張する相違点は,上記相違点1−2と実質的に同じ内容 である(原告が指摘するとおり,相違点1−2の第2段落及び第3段落は, 第1段落に伴って形式的に生じる相違点にすぎない。)。

◆判決本文

こちらは関連発明です。

◆令和2(行ケ)10074

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平成31(ワ)3273  差止請求権不存在確認請求事件  特許権  民事訴訟 令和3年3月25日  大阪地方裁判所

 CS関連発明について大阪地裁26部は均等侵害を認めました。問題となった構成は「一の組画の画像データを選択する画像選択手段」です。この構\成は審査段階で補正で追加されたものです。私の記憶ではCS関連発明でかつ補正した要件について均等を認めたのは初事例と思います。

 イ 原告は,組画の逐次又は一斉の表示をして記憶する人の「作業」となる部分\nを削除しつつ,組画の表示を構\成要件 B2 の選択手段に限定して,明確性の欠如に 係る拒絶理由を補正すると共に,「組画を逐次又は一斉に表示して」とする構\成を 削除し,かつ,「一の組画の画像データを選択する画像選択手段」を付加したとい う本件補正の経緯から,被告は,特許請求の範囲につき,「一の組画の画像データ を選択する画像選択手段」に客観的,外形的に限定し,これを備えない発明を本件 発明の技術的範囲から意識的に除外したなどと主張する。 しかし,本件通知書及び本件意見書の各記載を踏まえると,「それぞれの前記記 憶対象に対応する前記組画を逐次又は一斉に表示して前記記憶対象を記憶する」の\nは人間が行う作業であって,物の発明としての「学習用具」の構成をなしていない\nなどといった明確性要件に係る本件通知書の指摘に対し,被告は,本件補正におい て,作業の主体につき,画像選択手段,画像表示手段,音声選択手段,音声再生手\n段といった「手段」とし,人が行う作業を示す部分を削除することで,これらの手 段を含むコンピューターであることを明確にしたものと理解される。それと共に, 進歩性に係る本件通知書の指摘に対しては,上記のように作業の主体を明確にした ことに加え,組画記録媒体に記録される画像データを,「1又は複数種の記憶対象 から成る記憶対象群に含まれる個別の記憶対象を表現する原画及び該原画に関連す\nる関連事項又は関連像を表現する1又は複数種の関連画から成る組画の画像」(当\n初の請求項1)から「原画,該原画の輪郭に似た若しくは該原画を連想させる輪郭 を有し対応する語句が存在する第一の関連画,並びに,該原画及び第一の関連画に 似た若しくは該原画及び第一の関連画を連想させる輪郭を有し対応する語句が存在 する第二の関連画,から成る組画の画像データ」に限定すると共に,画像表示手段\nが第一の関連画,第二の関連画,及び原画をその順に表示することとし,さらに,\nその表示を,これらに対応する語句の再生と同期させることとして,情報の提示方\n法を限定したものである。
このような出願経過を客観的,外形的に見ると,被告は,本件補正により,人為 的作業を示す部分としての「逐次又は一斉に表示」という行為態様は意識的に除外\nしているものの,物及び方法の構成として,逐次又は一斉に表\示する構成を一般的\nに除外する旨を表示したとはいえない。また,「一の組画の画像データを選択する\n画像選択手段」との構成を付加した点は,本件明細書に「一の組画」の画像データ\nの選択,表示を念頭に置いた記載があることを踏まえたものと理解されるものの\n(例えば【0057】),これをもって直ちに,客観的,外形的に見て,複数の組画を 選択する構成を意識的に除外する旨を表\示したものとは見られない。 そうすると,原告指摘に係る本件補正の経緯をもって,被告は,特許請求の範囲 につき,「一の組画の画像データを選択する画像選択手段」に客観的,外形的に限 定し,これを備えない発明を本件発明の技術的範囲から意識的に除外したと見るこ とはできない。この点に関する原告の主張は採用できない。

◆判決本文

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令和1(ネ)10074  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年2月10日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 CS関連発明についての侵害事件で、知財高裁(3部)は、技術的範囲に属するが無効理由ありと判断しました。1審は一部の構成要件の非充足でした。\n

 前記(ア)bのとおり,インタ−ネット広告配信の技術分野において, 同じ広告を必要以上に見せることにより起きる「バナ−バ−ンアウト」 (広告に反応がなくなる状態)を防ぐために,利用者一人一人に対する 広告配信の回数をコントロ−ルすることは周知技術であった。 乙5発明は,インタ−ネットにおける広告配信という,上記技術と共 通する技術分野に属する。そして,乙5発明は,「モバイル・ウェブ・ クライアントによりウェブにアクセスしているユ−ザ−に対する広告の 効力を高めること」(乙5【0011】)を目的としており,広告の効 力を高めるという課題は,上記周知技術の課題と共通する。そのため, 乙5発明に,技術分野及び課題が共通する上記周知技術を組み合わせる ことには動機付けがあるものと認められる。
そして,乙5発明において,特定の広告オブジェクトについて各ユ− ザ−に配信する回数を1回に制限するためには,ウェブ・サ−バが,受 信したモバイル・ウェブ・クライアントの位置情報と広告オブジェクト (広告情報)に関連付けられた位置情報が一致したことにより(前記ア (イ)b4)〔本判決74頁〕)一度供給した広告オブジェクト(前記ア(イ) b5)〔本判決75頁〕)を,その後,上記モバイル・ウェブ・クライア ントの位置情報と広告オブジェクト(広告情報)に関連付けられた位置 情報が再度一致しても,上記モバイル・ウェブ・クライアントに送信し ないようにすればよいことは,明らかである。 したがって,乙5発明に,特定の広告を各利用者に配信する回数を1 回に制限するという周知技術を適用することができたものと認められる。 そうすると,乙5発明に,特定の広告を各利用者に配信する回数を1 回に制限するという周知技術を適用し,構成要件E(「広告情報管理サ\n−バが,無線通信装置が一旦指定地域の外に出た後再び指定地域内に戻 った場合であっても,指定地域内にとどまり続けた場合であっても,同 じ広告情報を無線通信装置に送信しないこと」を特徴とする無線通信サ −ビス提供システム,前記2(1)ア(ア)〔本判決48頁〕)を容易に想到 することができたものと認められる。
エ 控訴人の反論について
控訴人は,一般的に,広告は目に触れる回数が多ければ多いほど効果が あるので,乙5発明は,広告情報が関連付けられた位置情報及び時刻と一 致する位置情報及び時刻を有するモバイル・ウェブ・クライアントに対し, 可能な限り長い時間,繰り返し広告を表\示することを目的としており,回 数は無制限で広告情報を配信する発明であるとし,広告の配信回数を制限 するという公知技術又は周知技術を乙5発明に適用することには阻害事 由があると主張する(前記第3の4(2)イ(イ)b(b)〔本判決25頁〕)。 しかしながら,前記ウ(ア)b〔本判決83頁〕のとおり,インタ−ネッ ト広告配信の技術分野において,本件特許の出願時(平成12年9月5日) には,同じ広告を必要以上に見せることにより起きる「バナ−バ−ンアウ ト」(広告に反応がなくなる状態)を防ぐために,利用者一人一人に対す る広告配信の回数をコントロ−ルすることは周知技術であったから,本件 特許の出願時において,一般的に,広告は目に触れる回数が多ければ多い ほど効果があると認識されていたとは認められない。そして乙5発明は, 広告オブジェクト(広告情報)が関連付けられた位置情報及び時刻と一致 する位置情報及び時刻を有するモバイル・ウェブ・クライアントに対して 広告オブジェクト(広告情報)を配信することにより広告の効果を高める ものであると認めることはできるが(乙5【0011】,【0012】【0 017】),乙5には,広告オブジェクト(広告情報)が関連付けられた 位置情報及び時刻と一致する位置情報及び時刻を有するモバイル・ウェ ブ・クライアントに対し,可能な限り長い時間,繰り返し広告を表\示する ことが広告の効力を高めることである旨の記載はなく,かえって,広告の 繰り返しは,その効果を減ずるという認識を前提とする上記周知技術が存 在したことからすると,広告の繰り返しによって,その効力を高めること が乙5発明の唯一の目的であったということはできない。したがって,広 告の配信数を制限することにより広告の効果を高めることを乙5発明が 排斥するものであったと認めることはできないから,広告の配信回数を制 限するという公知技術又は周知技術を乙5発明に適用することに阻害事 由があるとは認められず,控訴人の上記主張は,採用することができない。

◆判決本文

1審はこちら。

◆平成30(ワ)7123

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令和2(ネ)10050  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年2月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について1審は技術的範囲に属する、無効理由無しと判断されていました。控訴審でも同様です。なお、控訴審における乙18に基づく無効主張は1審において主張できたとして、却下されました。乙18が実質あまり強くないのか、気になります。

 なお,控訴人は,当審において,乙第18号証に記載された発明を主引例 とする無効の抗弁を新たに主張した。
しかしながら,この新たな無効の抗弁が時機に後れた攻撃防御方法に当た るかどうかは,原審及び当審における審理の経過を総合的に踏まえて検討す べきものであるところ,一件記録によれば,原審においては,平成31年3 月12日に第1回口頭弁論期日が開かれた後,審理が弁論準備手続に付され たこと,充足論及び無効論について当事者双方の主張立証が行われた後,令 和元年12月20日の第5回弁論準備手続期日において,当事者双方の主張 立証が尽くされたことが確認された上で,裁判所の心証開示が行われたこと が認められる。そして,裁判所の心証開示が行われた上記第5回弁論準備手 続期日までに,乙第18号証に記載された発明を主引例とする無効の抗弁を 主張することが困難であったことをうかがわせるに足りる証拠はない。そう であるとすれば,控訴人としては,上記第5回弁論準備手続期日までに新た な無効の抗弁を主張すること(あるいは,少なくとも,速やかにその主張を する予定である旨を告知すること)が可能\\\であったし,そうすべきものであ ったといえるから,それをしなかったことは時機に後れたものであり,また, 時機に後れたことについて重大な過失があったものといわざるを得ない。そ して,そのような評価は,控訴人が控訴をし,審級が変わったからといって 変わるものではないところ,当審において新たな無効の抗弁の成否を審理す ることになれば,訴訟の完結が遅延することは明らかである。
以上の次第で,当審としては,新たな無効の抗弁を時機に後れた攻撃防御 方法であるとして却下したものである。

◆判決本文

原審はこちら。

◆平成31(ワ)22

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令和2(ネ)10036  特許権侵害損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和3年1月18日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 JR東海に対するCS関連発明の侵害事件です。1審では第1要件、第2要件を満たさないとして、均等侵害は否定されました。知財高裁(2部)も同じ判断です。

(1) 控訴人は,原判決は,特許法70条1項,2項等に反し,本件特許請求の 範囲に記載のある「問題のある実施例」を本件各発明の実施例とせず,「最善の実施 例」のみを本件各発明であるとした点に誤りがある旨主張する。
ア 本件特許請求の範囲の【請求項1】には,「ホストコンピュータが,前記 券情報と前記発券情報とを入力する入力手段と,該入力手段によって入力された前 記券情報と前記発券情報とに基づき,かつ,前記座席管理地に設置される指定座席 のレイアウトに基づいて表示する座席表\示情報を作成する作成手段と,該作成手段 によって作成された前記座席表示情報を記憶する記憶手段と,該記憶手段によって\n記憶された前記座席表示情報を伝送する伝送手段と,」と記載されており,「券情報」\nと「発券情報」とを統合して「座席表示情報」を作成し,これを記憶手段に記憶さ\nせることが記載されていると認められるから,控訴人の主張する「最善の実施例」 が本件特許請求の範囲に記載されていると認められ,控訴人の主張する「問題のあ る実施例」が本件特許請求の範囲に記載されていると認めることはできない。 また,本件特許請求の範囲の【請求項2】には,「ホストコンピュータが,前記券 情報と前記発券情報とを入力する手段と,該入力手段によって入力された前記券情 報と前記発券情報とを,複数の前記座席管理地又は前記端末機を識別する座席管理 地識別情報又は端末機識別情報別に集計する集計手段と,該集計手段によって集計 された前記券情報と前記発券情報とに基づき,かつ,前記座席管理地に設置される 指定座席のレイアウトに基づいて表示する座席表\示情報を作成する作成手段と,該 作成手段によって作成された前記座席表示情報を記憶する記憶手段と,該記憶手段\nによって記憶された前記座席表示情報を伝送する伝送手段と,」と記載されており,\n「券情報」と「発券情報」とを統合して「座席表示情報」を作成し,これを記憶手\n段に記憶させることが記載されていると認められるから,控訴人の主張する「最善 の実施例」が本件特許請求の範囲に記載されていると認められ,控訴人の主張する 「問題のある実施例」が本件特許請求の範囲に記載されていると認めることはでき ない。
イ 上記のことは,本件明細書(甲2)の記載からも明らかである。 本件明細書の「発明の詳細な説明」は,補正して引用した原判決「事実及び理由」 の第3,1(1)のとおりであり,段落【0002】には,【従来の技術】として,「従 来,指定座席を管理する座席管理システムとしては,カードリーダで読取られた座 席指定券の券情報及び券売機等で発券された座席指定券の発券(座席予約)情報等\nを,例えば列車車内において,端末機(コンピュータ)で受けて記憶し表示して,\n指定座席の利用状況を車掌が目視できるようにして車内検札を自動化する座席指定 席利用状況監視装置(特公H5−47880号公報)が発明されている。」との記載 があり,段落【0004】において,「券情報」及び「発券情報」を地上の管理セン ターから受ける場合について,「伝送される情報は2種になるために通信回線の負 担を1種の場合と比べて2倍にするなどの問題がある。」ことが記載されている。 そして,本件明細書の段落【0005】には,【発明が解決しようとする課題】と して,「上記発明の座席指定席利用状況監視装置は上記券情報と上記発券情報とに 基づいて各座席指定席の利用状況を表示するにはこれ等の両情報を地上の管理セン\nターから受ける場合,伝送される情報量が2倍になるために,該情報を伝送する通 信回線の負担を2倍にするとともに端末機の記憶容量と処理速度をともに2倍にす るなどの点にある。」として,控訴人の主張する「問題のある実施例」の問題点が指 摘されており,段落【0006】には,【課題を解決するための手段】として「本発 明は,上記管理センターに備えられるホストコンピュータが,カードリーダで読取 られた座席指定券の券情報と券売機等で発券された座席指定券の発券情報とを入力 して,これ等の両情報に基づいて表示する座席表\示情報を作成して,作成された前 記座席表示情報を,前記ホストコンピュータと通信回線で結ばれて,指定座席を設\n置管理する座席管理地に備えられる端末機へ伝送して,該端末機が,前記座席表示\n情報を入力して表示してするように構\成したことを主要な特徴とする。」と記載さ れており,段落【0007】に,【作用】として,「上記ホストコンピュータから上 記端末機へ伝送される情報量が上記券情報と上記発券情報との両表示情報から1つ\nの表示情報となる上記座席表\示情報にすることで半減され,これによって通信回線 の負担と端末機の記憶容量と処理速度とを半減する。」と記載され,段落【0008】 〜【0019】に,【実施例】として,控訴人が主張する「最善の実施例」(「座席表\n示情報」は,券情報と発券情報という二つの情報を一つに統合した実施例)が記載 されていることが認められる。さらに,段落【0020】に,【発明の効果】として, 「該端末機がする各指定座席の利用状況の表示を前記券情報と前記発券情報との両\n表示情報から1つの表\示情報となる前記座席表示情報で実現できるようになり,こ\nれによって前記ホストコンピュータから前記端末機へ伝送する情報量が半減され, 通信回線の負担と端末機の記憶容量と処理速度等を軽減するとともに,端末機のコ ストダウンが計られて,本発明のシステムの構築を容易にする。」と記載されている\nことが認められる。 これらの本件明細書の記載によると,本件各発明は,指定座席を管理する座席管 理システムに関して,地上の管理センターから券情報と発券情報の両情報を端末機 で受ける場合,伝送される情報が2種になることから,伝送される情報が1種の場 合と比べて,通信回線の負担が2倍となり,端末機の記憶容量と処理速度を2倍に するなどの技術的課題があることに鑑み,地上の管理センターに備えられるコンピ ュータが,カードリーダで読み取られた券情報と,券売機等で読み取られた発券情 報等を入力して,これらの情報から一つの座席表示情報を作成し,作成された座席\n表示情報を,コンピュータと通信回線で結ばれて,指定座席を設置管理する座席管\n理地に備えられた端末機に伝送して,端末機が座席レイアウトに基づき各指定座席 の利用状況を表示するという構\成を採用したものであって,この点に,本件各発明 の技術的意義があると認められる。 このような本件明細書の記載によると,控訴人の主張する「問題のある実施例」 は,本件各発明が解決すべき課題を示したものであり,その課題を解決したのが本 件各発明であるから,これが本件各発明の実施例であると認めることはできない。
・・・
また,控訴人は,被控訴人は,被告システム1の「OD情報」,「改札通過情報」 が,それぞれ,本件明細書の図2の「発券情報」,「券情報」に,被告システム1の 「マルスサーバ」及び「セキュリティサーバ」が,「地上の管理センター」に該当す ることを認めているから,被告システム1は,本件明細書の図2の構成を備えるも\nのであり,本件特許権を侵害するものであると主張するが,本件明細書の図2は, 控訴人の主張する「問題のある実施例」に関するものであり,被告システム1が, 上記図2の構成を備えるからといって,本件各発明の構\成を備えるということには ならない。
原判決(15頁〜24頁)が判示するとおり,被告システム 1 は,本件発明 1 の構\n成要件1−B及び1−C並びに本件発明2の構成要件2−B及び2−Cの文言を充\n足せず,被告システム2は,本件発明1の構成要件1−A,1−B及び1−C並び\nに本件発明2の構成要件2―\A,2−B及び2−Cの文言を充足しないから,被告 各システムが本件各発明の技術的範囲に属するものとは認められない。
(4) 控訴人は,被告システム1と本件各発明との間の本件相違点(被告システ ム1は,本件各発明における,ホストコンピュータにおいて券情報と発券情報から 一つの「座席表示情報」を作成し,これを,指定座席を設置管理する座席管理地に\n備えられる端末機に伝送し,端末機において「座席表示情報」を表\示するという構\n成を有していないこと)は,本件各発明の本質的部分ではないと主張するが,控訴 人のこの主張を採用することができないことは,原判決(25頁〜26頁)が判示 するとおりである。 本件相違点は,本件各発明の本質的部分に係るものであるから,被告システム1 は,均等の第1要件を充足しない。

◆判決本文

1審はこちら。

◆平成30(ワ)31428

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令和1(行ケ)10106  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和3年2月4日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明についての無効審判の取消訴訟です。知財高裁も審決同様、無効理由無しと判断しました。無効理由としては進歩性、実施可能要件、サポート要件と全て争点とされています。\n

 原告は,本件発明1において,代入用スクリプトと自ノード変数データと が,同一のノードデータに含まれるのに対し,甲1発明ではそうではないこ とが相違点に当たるとした場合であっても,甲1発明において,直系上位ノ ードに含まれている代入用スクリプトを,直系上位ノードではなく,自ノー ドに含ませることとすることは,当業者の技術常識ないし周知技術に基づく 設計事項であるから,当業者は,相違点2及び相違点3に係る構成を容易に\n想到することができると主張する。 しかし,前記2において判示したとおり,甲1には,本件発明1の構成要\n件Fの代入用スクリプトに相当する事項自体が開示されていないから,原告 が主張するように,単に代入用スクリプトを自ノードに含むか含まないかと いう点のみが相違点となるのではない。
そして,甲1には,ノードデータに当該ノードデータに含まれる変数デー タである自ノード変数データと,当該ノードの直系上位ノードのノードデー タに含まれる変数データである上位ノード変数データを利用した演算を行っ て,前記自ノード変数データの値を求める代入用スクリプトが含まれるよう にする方法について記載も示唆もない。 したがって,その他の点について判断するまでもなく,当業者が,甲1発 明において,「スクリプトは「当該ノードデータに含まれる変数データであ る自ノード変数データと,当該ノードの直系上位ノードのノードデータに含 まれる変数データである上位ノード変数データを利用した演算を行って,前 記自ノード変数データの値を求める代入用スクリプト」を含む」という相違 点2に係る本件発明1の構成及び「前記代入用スクリプトの実行により,前\n記自ノード変数データの値を更新する」という相違点3に係る本件発明1の 構成を容易に想到することができたとはいえない。\n
同様に,当業者が,甲1発明において,本件発明1の発明特定事項を全て 含む本件発明14について,前記相違点2に係る本件発明14の構成及び前\n記相違点3に係る本件発明14の構成を容易に想到することができたとはい\nえない。

◆判決本文

侵害訴訟はこちらです。 1審、2審とも技術的範囲に属しないと判断しています。

◆平成31(ネ)10034

◆平成29(ワ)31706

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令和1(ネ)10081  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和2年11月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について、知財高裁(4部)も技術的範囲に属しないと判断しました。

 以上の本件発明3の特許請求の範囲(請求項3)の記載及び本件明細書 の記載によれば,構成要件Bの「操作メニュー情報」は,「ポインタの座\n標位置によって実行される命令結果を利用者が理解できるように前記出力 手段に表示するため」の「画像データ」であり,出力手段に表\示され,利 用者がその表示自体から「実行される命令結果」の内容を理解できるよう\nに構成されていることを要するものと解される。\n
イ これに対し控訴人は,構成要件Bの「操作メニュー情報」は,命令の「対\n象」や「内容」のいずれかを,小さな絵で表現したものが,「実行される\n命令結果を利用者が理解できるという動作・作用を目的・目標として構成\nされている画像データ」であって,「画面上のどの座標位置・範囲に表示\nするかという表示位置・範囲に関する情報」を含むものである旨主張する。\n しかしながら,本件発明3の特許請求の範囲(請求項3)の記載中には, 「操作メニュー情報」が「実行される命令結果を利用者が理解できるとい う動作・作用を目的・目標として構成されている画像データ」であること\nの根拠となる記載は存在せず,控訴人の上記主張は,特許請求の範囲の記 載に基づかないものであるから,採用することができない。
 (3) 被告製品における「操作メニュー情報」(構成要件B)の具備の有無につ\nいて
控訴人は,1)被告製品の本件ホームアプリにおける「上ページ一部表示」\n及び「下ページ一部表示」は,その内容や表\示位置からすれば,これを見た 利用者は上ページ又は下ページにスクロールする結果を理解できるといえる から,利用者が,その表示の有無を視覚的に認識でき,その表\示内容から, 所望の命令を実行した結果についても理解できるような,画像データに当た り,「操作メニュー情報」に該当する,2)被告製品における「左上領域」(別 紙参考図の図1記載の左側の赤色の点線枠内),「右上領域」(同図1記載 の右側の赤色の点線枠内),「左下領域」(同図2記載の左側の赤色の点線 枠内,同図3のB記載の左側の画像)及び「右下領域」(同図2記載の右側 の赤色の点線枠内,同図3のB記載の右側の画像)は,「操作メニュー情報」 に該当する旨主張する。
ア そこで検討するに,被告製品の構成エ(ウ),(エ),オ(ウ)及び(エ)及び 別紙「乙2の2の説明図」によれば,被告製品においては,1)利用者が, 移動させたいショートカットアイコンをロングタッチし,ドラッグ操作を することにより当該ショートカットアイコンを移動させ,ロングタッチし た位置と当該ショートカットアイコンをドラッグしている指等のタッチパ ネル上の位置が約110ピクセル離れた場合に,その際のページ画面が縮 小表示されるとともに,そのページ画面のページ番号に応じて,当該ペー\nジが上端ページであれば1つ下のページの一部の画像である「下ページ一 部表示」のみが,下端ページであれば1つ上のページの一部の画像である\n「上ページ一部表示」のみが,それ以外のページであればこれらがいずれ\nもIGZO液晶ディスプレイに表示される「縮小モード」となること,2) 「縮小モード」の状態で,「上ページ一部表示」が表\示されているとき, 利用者が当該ショートカットアイコンをドラッグしている指等及びマウス カーソルの先端の座標位置を「左上領域」又は「右上領域」のいずれかの\n範囲に入れたときは,上ページスクロール1又は上ページスクロール2を 生じさせる命令が実行され,また,「縮小モード」の状態で,「下ページ 一部表示」が表\示されているとき,利用者が当該ショートカットアイコン をドラッグしている指等及びマウスカーソルの先端の座標位置を「左下領\n域」又は「右下領域」のいずれかの範囲に入れたときは,下ページスクロ ール1又は下ページスクロール2を生じさせる命令が実行されることが認 められる。
イ しかるところ,被告製品の「上ページ一部表示」及び「下ページ一部表\ 示」は,別紙「乙2の2の説明図」の図6等に示すように,「縮小モード」 の状態で,IGZO液晶表示ディスプレイの画面上に表\示される長方形状 上の画像データであるが,その表示には「実行される命令結果」の内容を\n表現し,又は連想させる文字や記号等は存在せず,利用者がその表\示自体 から「実行される命令結果」の内容を理解できるように構成されているも\nのと認めることはできない。
また,利用者が,縮小モードの状態で,1つ上のページ又は1つ下のペ ージの一部を表示した画像である「上ページ一部表\示」又は「下ページ一 部表示」を見て,「上ページ一部表\示」又は「下ページ一部表示」までド\nラッグすれば,上ページ又は下ページに画面をスクロールさせることがで きるものと考え,実際にそのように画面をスクロールさせる操作をしたと しても,それは,「上ページ一部表示」又は「下ページ一部表\示」の表示\n自体から「実行される命令結果」の内容を理解するのではなく,操作の経 験を通じて,画面をスクロールさせることができることを認識するにすぎ ないものといえる。 したがって,被告製品の「上ページ一部表示」及び「下ページ一部表\示」 は,利用者がその表示自体から「実行される命令結果」の内容を理解でき\nるように構成された画像データであるものと認めることはできないから,\n構成要件Bの「操作メニュー情報」に該当しない。\n
ウ 次に,前記アの認定事実によれば,被告製品における「左上領域」,「右 上領域」,「左下領域」及び「右下領域」は,いずれも,被告製品の出力 手段であるIGZO液晶表示ディスプレイの画面上の特定の座標位置で囲\nまれた領域であり,その領域は,画面上に画像データとして表示されてい\nるものではなく,利用者が画面上で認識できるものではない。 したがって,被告製品における「左上領域」,「右上領域」,「左下領 域」及び「右下領域」は,出力手段に表示され,利用者が「実行される命\n令結果」を理解できるように構成されている「画像データ」であるものと\n認めることはできないから,構成要件Bの「操作メニュー情報」に該当し\nない。

◆判決本文

1審はこちら。

◆平成30(ワ)8302

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平成31(ワ)2210 特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和2年8月11日  東京地方裁判所

 東京地裁(46部)は、コンピュータ関連発明について、技術的範囲に属すると判断しました。なお、被告は無効理由を主張しましたが、該当しないと判断しています。

 本件発明1−1の特許請求の範囲の記載をみると,本件発明1−1は, 「患者を識別するための第1患者識別情報を端末装置より取得する第1 取得部と」(構成要件1−1A),「前記第1患者識別情報と,患者を識別する情報としてあらかじめ記憶された第2患者識別情報とが一致するか否\nかを判定する第1判定部と」(構成要件1−1B)を有するものであり,第1判定部において第1判定をする。また,「前記第1判定部で一致すると\n判定された場合に,看護師または医師を識別するための第1医師等識別情 報を前記端末装置から取得する第2取得部と」(構成要件1−1D),「前記第1医師等識別情報と,看護師または医師を識別する情報としてあらか\nじめ記憶された第2医師等識別情報とが一致するか否か判定する第2判 定部と」(構成要件1−1E)を有するものであり,第2判定部において第2判定をする。\n
ここで,第1判定と第2判定の関係について,特許請求の範囲には,「前 記第1判定部で一致すると判定された場合に」(構成要件1−1D),第1医師等識別情報が取得されて第2判定がされることが記載されている。こ\nのことから,第1判定で一致すると判定されることが,第2判定がされる ことの前提であることが記載されているといえる。もっとも,第1判定と 第2判定との時間的な接着性の有無等についての記載はない。 そこで,本件明細書1をみると,本件明細書1には,実施の形態1ない し4が記載されている。実施の形態1では,第1判定や,第1判定で一致 するとの判定がされて患者の医療情報を出力することについての実施の 形態(構成要件1−1Aないし1−1C)が記載されているが,第1判定で一致するとの判定がされた直後に第2判定がされるとか,第1判定は,\n第2判定がされる都度にされるものであるなど,第1判定と第2判定の時 間的関係やその機会についての記載はない。そして,実施の形態1では, 患者が,患者の手に巻いており識別情報を含むリストバンドのバーコード を端末装置の撮像部で撮像することによって第1判定がされる(段落【0 045】)。そして,第1判定で一致するとの判定がされた場合には,「患者 用画面」が生成,表示され(段落【0047】ないし【0050】),患者用画面には検査の予\定や患者への注意事項が表示されるなどし(【004\n3】【図7】,患者はその画面を確認することで患者に対して行われる医療 行為等を知ることができ(段落【0019】),その患者用画面に対し,患 者が,例えば,検査ボタンをタッチすると検査名欄や検査説明欄が表示された検査表\示画面が生成,表示されることが記載されている(段落【00\n51】等)。また,第1判定で一致するとの判定がされて患者用画面が表示(ステップS21)されると検査ボタンや手術ボタンの入力を受け付ける\nようになり,その入力がされた場合には対応する画面の表示処理がされるが,入力がされなかったり,上記対応する画面の表\示処理がされたりした後には,患者用画面の表示に戻ることが記載されている(段落【0065】ないし【0068】,【図12】)。\n
実施の形態2は,看護師が患者の医療情報を確認するための看護師専用 画面を表示部に表\示する実施の形態であり,主に構成要件1−1Dないし1−1Fに対応する実施の形態が記載され,特に説明する構\成等以外は実施の形態1と同じであることが記載されている(段落【0088】)。そこ では,患者用画面が表示部に表\示された後,看護師が,自身のリストバン ドに記載されたバーコードを撮像部で撮像し,第2判定がされることが記 載されている(段落【0091】)。また,第2判定が一致した場合には医 療スタッフ用画面が表示されるところ,医療スタッフ用画面である看護師専用画面,バイタル画面等の表\示後に終了処理(ステップS120)がされると,患者用画面の処理(ステップS23)に移ることが記載されてい る(段落【0122】【図26】【図12】)。そこには,上記の他に,第1 判定と第2判定との関係についての記載はない。 また,実施の形態3は主に第1判定に関係する記載であり(ただし,請 求項2に関する形態),実施の形態4は,第2判定に関係する記載である が,それらの記載も含めて,本件明細書1に,第1判定と第2判定との時 間的接着性についての記載はない。 本件明細書1における背景技術や発明が解決しようとする課題の記載 によれば,医療情報を医療用サーバから取得し,取得した医療情報に基づ いてピクトグラムを表示する端末装置という従来技術ではセキュリティを確保することが難しかったところ,本件発明1−1は,セキュリティを\n従来技術より向上させることができるというものである(段落【0003】 ないし【0006】)。本件明細書1には,本件発明1−1について,上記 のとおり,従来技術よりセキュリティを向上させることが記載されている が,その記載のほかには従来技術と比較した優れた効果についての記載は ない。
以上の特許請求の範囲の記載や本件明細書1の記載に照らせば,第2判 定は,第1判定で一致すると判定された場合にされるものである。しかし, 本件明細書1には,実施の形態として,患者がその手に巻いているリスト バンドのバーコードを端末装置の撮像部で撮像することによって第1判 定がされ,一致すると判定された場合に患者用画面が表示され,それに対して患者が一定の操作をする形態が記載されている。そして,患者用画面\nの表示後に,医療スタッフがそのリストバンドのバーコードを撮像部で撮像することで第2判定がされ,そこで一致すると判定されると医療スタッ\nフ用画面が表示されるが,その終了処理後は,患者の医療情報を表\示する 患者用画面の表示に戻ることも記載されている。これらに照らすと,本件発明1−1において,第2判定がされるのは,第1判定で一致すると判定\nされた場合ではあるが,第1判定で一致するとされた後に患者による一定 の操作がされ,その後に第2判定がされることや,第1判定で一致すると 判定されて第2判定がされて第2判定で一致するとされて看護師等が必 要とする医療情報を含む表示画面が出力された後に,第1判定で一致すると判定された後と同じ,患者の医療情報を表\示する患者用画面に戻り,その状態から再び第2判定がされることがあり得ることが記載されている といい得る。
以上によれば,本件発明1−1において,第2判定がされるのは第1判 定で一致すると判定された場合であるが,第1判定がされるのは第2判定 がされる直前に限られるとか,第2判定がされる前にその都度第1判定が されるとは限られないと解するのが相当である。このように解したとして も,第1判定がされてそこで一致すると判定されない限り第2判定はされ ず,第2判定において一致すると判定されない限り看護師等が必要とする 医療情報を含む表示画面が表\示されることはないから,本件明細書1に記 載されたセキュリティの向上という効果を奏するといえる。

◆判決本文

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令和1(行ケ)10148  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和2年10月7日  知的財産高等裁判所

 コンピュータシステム(医薬品相互作用チェックシステム)について、進歩性違反なしとした審決が維持されました。

(3) 原告の主張に対する判断
ア 原告は,「医薬品」の語は,販売名(商品名),一般名あるいは,薬効, 有効成分及び投与経路を特定できるコードを意味するとの本件審決の認定は,リパ ーゼ事件判決に反していると主張する(前記第3の1(2)ア)。 特許請求の範囲から発明を認定するに当たり,特許請求の範囲に記載された発明 特定事項の意味内容や技術的意義を明らかにする必要がある場合に,技術常識を斟 酌することは妨げられないというべきであり,リパーゼ事件判決もこのことを禁じ るものであるとは解されない。 そして,本件発明1における「相互マスタ」に登録される「一の医薬品」と「他 の一の医薬品」が,いずれも,販売名(商品名)又は一般名,薬価基準収載用薬品 コードであれば薬効,投与経路・有効成分(7桁のコード)以下の下位の番号によ って特定されるものなど,具体的に当該医薬品の薬効,投与経路及び有効成分が特 定できるレベルのものを意味すると認められることは,前記(2)ウ(ア)のとおりであ り,特許請求の範囲の記載や技術常識からこのように判断できるものであることは, 前記(2)ウ(ア)で判断したとおりである。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
イ 原告は,本件審決の要旨認定は,「医薬品」の概念と,「医薬品」を表現\nするデータ(本件明細書の【0040】)を区別する本件明細書の記載と矛盾すると 主張する(前記第3の1(2)イ(ア))。 しかし,「相互マスタ」に登録される「一の医薬品」と「他の一の医薬品」につい て,具体的に当該医薬品の薬効,投与経路及び有効成分が特定できるレベルのもの を意味すると判断することは,データの格納の構成について判断しているものであ\nり,本件明細書の【0040】の記載にも沿うものであるから,本件明細書の記載 と矛盾するものではない。
原告は,本件審決の「医薬品」の認定は,「相互作用が発生する医薬品の組み合わ せ」の概念と,その表現方法,すなわち医薬品の組み合わせを表\現するためのデー タの概念・種類(薬効コード)を区別している本件特許の請求項2の記載に反する ものであるとも主張する(前記第3の1(2)イ(ウ))が,同様に,「相互マスタ」に登 録される「一の医薬品」と「他の一の医薬品」について,具体的に当該医薬品の薬 効及び有効成分が特定できるレベルのものを意味すると判断することは,データの 格納の構成について判断しているものであり,本件特許の請求項2の記載にも沿う\nものであるから,本件特許の請求項2の記載と矛盾するものではない。
ウ 原告は,本件審決は,特許請求の範囲に記載のない構成要素を付加して\n「医薬品」の文言を殊更狭く要旨認定をしており,サポート要件違反,実施可能要\n件違反,明確性要件違反の無効理由が存在することを示すものである旨の主張をす る(前記第3の1(2)イ(オ))が,本件発明1における「相互マスタ」に登録される「一 の医薬品」と「他の一の医薬品」が,いずれも,販売名(商品名)又は一般名,薬 価基準収載用薬品コードであれば薬効,投与経路・有効成分(7桁のコード)以下 の下位の番号によって特定されるものなど,具体的に当該医薬品の薬効,投与経路 及び有効成分が特定できるレベルのものを意味すると認められることは,前記(2) ウ(ア)のとおりであり,そのように解することから,本件発明1にサポート要件違反, 実施可能要件違反,明確性要件違反があるとは認められないから,原告の上記主張\nを採用することはできない。
エ 原告は,本件審決の理論で相互作用マスタに格納されるデータの概念の レベルについて解釈を行うと,結局どの概念のレベルまで特定すれば本件発明1の 範囲に含まれ,どの概念のレベルでは当該範囲に含まれないのか判然とせず,発明 の外縁が不明確となると主張する(前記第3の1(3)エ(ウ))。 しかし,既に判示したとおり,本件発明1において,「相互マスタ」に登録される 「一の医薬品」と「他の一の医薬品」について,具体的に当該医薬品の薬効,投与 経路及び有効成分が特定できるレベルのものを意味すると認められるのであり,そ のように解することが,本件発明1の外縁を不明確にするということはできない。 また,原告は,本件明細書の【0040】が「薬効コード」は「何でもよい」と していることを指摘するが,この段落の記載は,本件特許の特許請求の範囲の記載 を超えたものを意味していると認めることはできないから,「何でもよい」というの も,具体的に当該医薬品の薬効,投与経路及び有効成分が特定できるレベルであれ ば「何でもよい」と述べているにすぎないと認められる。 オ その他の原告の主張を採用することができないことは,既に判示したと ころから明らかである。
(4) 以上によると,本件審決の一致点及び相違点の認定に誤りはなく,それに 基づく相違点1,2についての容易想到性の判断(前記第2の4(1)ウ)も誤りはな いから,取消事由1は理由がない。
3 取消理由2(本件発明9の容易想到性の判断の誤り)について
(1) 原告は,本件審決は,本件発明1の要旨認定を誤った結果,請求項1の従 属項である請求項9に係る本件発明9の要旨認定をも誤り,引用例との一致点,相 違点の認定を誤ったと主張する。 しかし,前記2で判示したところによると,本件発明9と甲1発明には,少なく とも前記第2の4(1)イの相違点1〜4が認められることになる。そして,相違点1 及び2についての容易想到性の判断(前記第2の4(1)ウ)にも誤りがないから,そ の余の点を判断するまでもなく,本件発明9は,当業者が容易に発明をすることが できたものとは認められない。 したがって,取消事由2は理由がない。
(2) なお,原告は,本件発明9は,個別マスタを共通マスタと別に設け,個別 マスタを優先して処理する点において,甲1発明と相違するが,本件審決は,この 点の容易想到性の判断を誤ったものであると主張する。 原告の上記主張は,令和元年12月10日付けの原告準備書面(1)において主張さ れたものではなく,この準備書面に対し,被告らから令和2年2月10日付け被告 ら第1準備書面で反論がされた後の同年3月27日付け原告準備書面(2)において 初めて主張されたものであるから,時機に後れた攻撃防御方法の提出であるが,取 消事由2については,前記(1)のとおり,原告の上記主張について判断するまでもな く判断することができるので,上記主張は,訴訟の完結を遅延させるものではない。 したがって,上記主張を却下することはしないこととする。

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令和2(ネ)10023  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和2年8月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 モバイル送金・決済サービスについて特許権侵害を主張しましたが、知財高裁(2部)は、1審(東地40部)と同様に、技術的範囲に属しないと判断しました。被控訴人(1審被告)はLINE PAYです。イ号システム、本件特許については1審判決に詳しく説明されています。

 「(1) 構成要件A等の「ホワイトカード」及び「使用限度額」の意義\nア 前記1(1)のとおり,本件明細書等では,段落【0002】〜【000 5】において本件発明の課題が説明されているところ,同課題は,クレジットカー ドについてのものであり,プリペイドカードサービスやデビットカードサービスに ついてのものではない。そして,段落【0006】において,「以上の課題を解決 するために,本発明は,・・・ホワイトカード使用限度額引き上げシステムを提供 する。」と記載され,さらに,段落【0007】〜【0009】において,上記課 題を解決するための具体的構成が記載されている。これらの記載に,「ホワイト\nカード」の用語は,クレジットカードに関して使用された場合は,「カード会社が 個人向けに発行する最もベーシックなクレジットカード」を意味するものと認めら れること(乙6,7)を併せ考慮すると,段落【0006】〜【0009】の「ホ ワイトカード」は,段落【0002】〜【0005】に記載されたカードであるク レジットカードを意味するものと認められる。 一方で,本件明細書等には「ホワイトカード」がプリペイドカードやデビット カードを含む旨の記載は存在しないから,本件明細書等の「ホワイトカード」には, プリペイドカードやデビットカードは含まれないものと解される。
イ 前記1(1)のとおり,本件明細書等には,段落【0002】〜【000 5】で,従来技術として,クレジットカードについて,ユーザの支払能力などに応\nじて所定期間内で使用可能な金額である「使用限度額」が契約時にある程度固定さ\nれ,使用限度額の引上げなどの変更がなかなかできない,あるいは煩雑な手続が必 要となるという課題があること,先行技術であるクレジットカード管理システムに 関する発明の乙8発明は,ユーザの利用実績により使用限度額を変更できるという ものであるが,同発明によっても,ユーザが他者から送金を受けた場合に使用限度 額を変更することはできないという課題があることが記載され,段落【0006】 で,上記の課題を解決するために,本件発明は,ユーザが他者から送金を受けたこ とにより使用限度額を引き上げることができるシステムを提供することが記載され ており,これらの記載からすると,本件発明における「使用限度額」は,従来技術 における「使用限度額」と同様に,クレジットカードの使用限度額を意味するが, ユーザに対する入金があると所定の手続を経ずに引き上げられるものであると解す るのが相当である。 したがって,本件発明における「使用限度額」は,ユーザが所定期間内に使用 することのできる金額の上限額を意味し,その額は,ユーザとの契約時には,その 支払能力(信用力)に応じて設定され,「ある程度固定される」ものであるが,そ\nの後,ユーザに対する入金があった場合,所定の手続を経ずに引き上げられるもの であると認められる。
ウ 以上のとおり,本件発明における「ホワイトカード」はクレジット カードを意味し,「使用限度額」は,「契約時に設定され,契約時には,ある程度固 定される,所定期間内で使用可能な金額」を意味するものというべきである。\n
(2) 控訴人の主張について
ア 控訴人は,本件発明の課題について「使用限度額に関しては契約時に ある程度固定されるため,限度額の引上げなどの変更がなかなかできない,あるい は煩雑な手続きが必要となる」という従来技術の課題(段落【0003】)は乙8 発明により解決済みであり,本件発明の課題は,他者からの送金の受金等による ユーザの所持金の増加を速やかに使用限度額に反映させることにある(段落【00 05】)と主張する。 しかし,本件明細書等の段落【0003】と段落【0005】の記載によると, 乙8公報に記載された従来技術は,「予め定められた使用限度額内での利用実績に\n応じて算出変更」することにより使用限度額を変更することを可能にするものであ\nるが,それでは「他者からの送金を受金することなどでユーザの所持金が当該クレ ジットカード契約時の平均所得以上に増えたとしても,カード会社に逐一連絡など して所定の手続きを経なければそれが使用限度額に反映され」ないという課題を解 決し得ないことから,本件発明は,本件特許請求の範囲に規定された構成を採用す\nることにより,入金を受け付けた旨の情報に基づいて,所定の手続(煩雑な手続) を経ることなく,ホワイトカードの使用限度額を引き上げることを可能としたもの\nと認められる。
このように,乙8発明は,「使用限度額に関しては契約時にある程度固定される ため,限度額の引上げなどの変更がなかなかできない,あるいは煩雑な手続きが必 要となる」という従来技術の課題のうちの一部を「クレジットカードの使用限度額 を利用実績に応じて算出変更する技術」によって解決したにすぎず,本件発明は, 乙8発明により解決できなかった従来技術の「他者からの送金を受金することなど でユーザの所持金が当該クレジットカード契約時の平均所得以上に増えたとしても, カード会社に逐一連絡などして所定の手続きを経なければそれが使用限度額に反映 されることは無い」という課題を解決したものであるから,控訴人の上記主張は理 由がない。

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◆平成30(ワ)13927

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令和1(ネ)10066  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和2年6月17日  知的財産高等裁判所(2部)  東京地方裁判所(40部)

 コンピュータ関連発明の特許権侵害事件で、1審の被告敗訴部分が取り消されました。理由は乙14から新規性無しです。乙14は1審で時期に後れた攻撃防御として採用されなかった証拠です。個人的には、新規性無しというレベルの証拠があるにもかかわらず、時期に後れたとして、1審判決を出すのは引っかかります。

 構成要件6)(「前記識別情報を前記ウェブサーバに向けて送出可能な状\n態から送出不可能な状態へと変化させるステップを,前記ウェブサーバに向けて前\n記識別情報が送出されてから一定期間が満了した場合に,又は前記ウェブサーバへ アクセスされた回数が基準に達した場合に実行する機能とを」)について\n
(ア) 「一定期間」の始期について
a 乙14では,「ウェブページ・・・を顧客のブラウザに表示させる」\n(段落[0032]),「バートの広告は・・・顧客にのみ表示されることになる」(段落[0033],「広告描画エンジン74は,キャンペーン管理インターフェイス・・・を広告主に表\示する」(段落[0042]),「表示ページ中でバートの広告を順位付\nける」(段落[0045]),「クリックして表示する方法」,「広告は,広告主の完全な電話番号を表\示していないが,その代わりに・・・残りの部分を表示するための\nハイパーリンクを含む。」(段落[0059]),「新聞の告知欄は,消費者がかける電話番号を表示するテレビコマーシャルと同様に」(段落[0070]),「歯科医らは\n同業者よりも上に表示されることを望む場合に高い料金を支払うことができる。広\n告会社は,架電単価が最も高いものから最も低いものへと降順に歯科医を表示する。」\n(段落[0089]),「広告会社は,ウェブサイト上に3つの広告を表示するとき,\n広告に現れる固有の電話番号を動的に割り当てる。」(段落[0090]),「広告主 に対応する広告が少なくとも2つの位置の第1の位置に表示された場合に・・・」\n(請求項11)などにおいては,「表示(display)」は,「情報が画面に映される(it shows it on its screen)」,「画面に単語や写真等を見せる(to show words, pictures, etc. on a screen)」,「コンピュータの画面に情報を見せる(to show information on a computer screen)」などの意味で用いられていることが認めら れる。
しかし,乙14には,「広告会社は,ウェブサイト上に3つの広告を表示すると\nき,広告に現れる固有の電話番号を動的に割り当てる。」(段落[0090]), 「広告会社は一日中10人の歯科医を何百もの異なるサイトに絶えず表示してい\nる。」(段落[0092])などのように,「表示」について,ユーザ端末等の画面の\nみに情報を映すという意味に限定されず,システム(広告会社)が要求パートナー のウェブサイトに対して電話番号を割り当てた広告等の情報を提示することをも含 むと理解することができる記載がある。 また,乙14の「一実施形態において,ある特定の広告主の広告がある時間にあ る特定のウェブサイトにある特定の固有の電話番号と共に表示されたことをシステ\nムが記録する。ますます多くの広告が異なるウェブサイトに表示されるため,一実\n施形態において,システムは割り当てられた電話番号がそれぞれ最後に表示された\nのはいつかを記録する。」(段落[0095])との記載では,「システムが記録す る」とされていて,システムが,ユーザ端末等の画面に電話番号が割り当てられた 広告が映されたことを把握し,それを記録に反映することについての記載が全くな いことからすると,ここにいう「表示」は,ユーザ端末等の画面のみに情報を映す\nという意味に限定されず,システム(広告会社)が要求パートナーのウェブサイト に対して電話番号を割り当てた広告等の情報を提示することを含む意味であると理 解することができる。
そして,構成要件(c)のとおり,乙14発明の要求パートナーの検索エンジン\nは,「検索要求に対する検索結果内に,システムから送信された『固有の電話番号が 挿入された広告』を表示する」ものであり,構\成要件(b),(c)のとおり,要求 パートナーの検索エンジンのウェブサイト等に情報を提示することは,システムが 「固有の電話番号が挿入された広告」を当該要求パートナーへ送信することにより 行われるのであるから,乙14発明において「表示」というときに,システムが,\n「固有の電話番号が挿入された広告」を,要求パートナーのウェブサイトに提示さ せるために送出するという意味をも含むと理解することができる。また,構成要件\n(d)の「表示されたことを記録し」についても,システムが,「固有の電話番号が\n挿入された広告」を要求パートナーのウェブサイトに提示させるために送出したこ とを含むと理解することができる。 したがって,乙14発明において,固有の電話番号が再利用のために「電話番号 のプール」に戻されるまでの期間の始期である「表示されてからある一定期間」に\nいう「表示されてから」は,「固有の電話番号が挿入された広告が要求パートナーの\n検索エンジンに送出」されたときを含むものと解することができる。
b これに対し,1審原告は,当業者は,「ウェブページが何時の時点で ユーザ端末に表示されたか」を把握するためのウェブビーコン等の周知技術を参酌\nして乙14の記載を理解するため,ユーザ端末等に電話番号が表示された時期を容\n易に把握することができるから,乙14における「表示してから」は,文字どおり,\nユーザ端末等に電話番号が表示された時点と解すべきであると主張する。\nしかし,上記aのとおり,乙14には,システムが,ユーザ端末等の画面に電話 番号が割り当てられた広告が映されたことを把握することについて記載も示唆もな く,また,乙14のシステムは,「固有の電話番号が挿入された広告」を提供した ことを記録することにより,要求パートナーのウェブサイトに「電話番号が割り当 てられた広告」が提示されたことを把握できるから,乙14発明の出願時に,We bページ(又は電子メール)上にグラフィックを設置し,利用者が当該Webペー ジ(又は電子メール)を開いた際に,自社のサーバに対してGET要求をし,どの IPアドレスのマシンが,いつ,どのWebページにアクセスしたのかについての 情報をトレースすることができるというウェブビーコンなどの技術が周知技術であ ったとしても,乙14発明がこの技術を用いることを前提としたものであると理解 されるとは認められない。
また,乙14発明は,固有の電話番号を提供するには費用がかかるため,広告及 びウェブサイト毎に固有の電話番号を割り当ててペイ・パー・コールの実績型広告 を実施するための架電トラッキングを実施すると,非常に多くの固有の電話番号, すなわち非常に多くの費用が必要になるとの課題(段落[0076])に対して,「当 該方法では,電話番号は,ジャスト・イン・タイム方式で広告に動的に割り当てら れ,所定期間,電話番号が表示されない又は架電されないと,そのとき当該電話番\n号は,割り当て解除されて,再利用される。」(段落[0006])ことにより上記課 題を解決するものである。そうすると,このような乙14発明において,「所定期間」 の始期を,ユーザ端末等に電話番号が表示された時点に限定するような技術的な必\n要性は特に認められない。1審原告は,「一定期間」の始期を「送出されてから」と する本件発明は,ユーザの動作部分を対象としておらず,サーバの側で完結するも のであり,「一定期間の始期」がユーザ端末等に「表示されてから」とする乙14発\n明は技術思想が異なると主張するが,乙14発明の上記のような意義を考慮すると, 乙14発明において,システム設計の便宜(一定期間の計測の容易性)よりも,ユ ーザ側の利益(表示期間の確保)を優先させる必要性は特に認められないから,1\n審原告が主張するような本件発明と乙14発明との技術思想の違いを認めることは できない。 かえって,乙14発明において,「表示」をユーザ端末等に電話番号が表\示された 時点と解すると,通信エラー等で電話番号が送出されたがユーザ端末等に表示され\nなかった場合には,「一定期間」が進行しないことになり,乙14発明の上記の課題 が解決されないことになる。 したがって,1審原告の上記主張を採用することはできない。
c また,1審原告は,乙14の段落[0059]で引用されている米 国公開公報(甲33)によると,乙14発明の構成要件(c)における「表\示」は, ユーザの「コンピュータの画面に情報を見せる(to show information on a computer screen)」という意味を有するものとして使用されていると主張する。 しかし,乙14の段落[0059]には,広告が要求パートナーのウェブサイト を介してユーザに提示されるに当たり,広告が,広告主の電話番号又は電話番号の 残りの部分を表示するためのハイパーリンクを含んでいる方法が記載されており,\nその中で,甲33に記載されている「クリックして表示する方法」が引用されてい\nるにすぎないから,仮に,甲33の「表示」が1審原告主張の「表\示」の意味のみ を有するものとして用いられているとしても,甲33の記載をもって乙14の「表\n示」を1審原告主張のように認めるべき事情があるということはできない。 1審原告は,乙14発明の[0078]の「表示された」の解釈について,1審\n原告の主張に沿った内容を記載した意見書(甲32)を提出するが,上記説示に照 らし,この意見書の記載内容を採用することはできない。
d 以上によると,乙14発明においての「表示されてから」とは,要\n求パートナーの検索エンジンに向けて電話番号が「送出」されたときを含むと認め るのが相当であるから,本件発明と乙14発明には「一定期間」の始期について相 違点がないことになる。
(イ) 「『送出可能な状態』である」ことについて\n
a 前記(2)によると,乙14発明では,エンドユーザから要求パートナ ー(ある検索エンジンのウェブサイト)に対して検索要求がされると,「ジャスト・ イン・タイム方式」で,未割り当ての電話番号のプール内にある電話番号の中から 「固有の電話番号」となる電話番号が検索要求におけるキーワードと関連付けがさ れた特定の広告主の広告に対して直前に動的に割り当てられて,その広告に自動的 に挿入されるものであり(段落[0006],[0033]〜[0035]),そのよ うに「固有の電話番号」が挿入された広告は,検索結果のページ内に表示され,「固\n有の電話番号」は,「表示されてからある一定期間」が経過した場合には,「再利用」\nのために「電話番号のプール」に戻され(段落[0006],[0077]〜[00 81]),また,「問合せをもたらすが架電がない場合」には,この「固有の電話番号」が「表示されてからある一定期間」が経過するまでの「所定期間」の間,「動的に割\nり当てられた電話番号」は「その広告に関連付けられる」(段落[0082])ので あるから,乙14発明の「固有の電話番号」は,広告情報と関連づけられて送出さ れ,「表示されてからある一定期間」が経過するまでの「所定期間」の間は,広告情\n報と関連付けられていることが認められる。
b もっとも,乙14の段落[0078]には,固有の電話番号が表示\nされてから一定時間が経過した場合や固有の番号が架電されてから一定時間が経過 した場合,システムは自動的にその番号を再利用し,番号のプールに戻すことがで きるなどの記載はあるが,乙14には,ある要求パートナー(検索エンジンのウェ ブサイト)に固有の電話番号が表示された後,番号のプールに戻るまでの間に,当\n該電話番号が,同じ要求パートナー(検索エンジンのウェブサイト)で新たに検索 された際に同一の広告に表示されるのか否かについての明示の記載はない。\nしかし,乙14発明は,固有の電話番号を提供するには費用がかかるため,広告 及びウェブサイト毎に固有の電話番号を割り当ててペイ・パー・コールの実績型広 告を実施するための架電トラッキングを実施すると,非常に多くの固有の電話番号, すなわち非常に多くの費用が必要になるとの課題(段落[0076])に対して,「当 該方法では,電話番号は,ジャスト・イン・タイム方式で広告に動的に割り当てら れ,所定期間,電話番号が表示されない又は架電されないと,そのとき当該電話番\n号は,割り当て解除されて,再利用される。」(段落[0006])ことにより上記課 題を解決するものである。 そして,ペイ・パー・コールの実績型広告を実施するための架電トラッキングで は,支払先を特定するために,架電があった電話番号が,どの検索エンジンのウェ ブサイトで表示されたものなのかさえ特定できればよいのであるから,同じ検索エ\nンジンのウェブサイトの第2の顧客の検索に対して,第1の顧客の検索によって割 り当てた電話番号とは異なる電話番号を新たに割り当てて表示する必要はなく,同\nじ電話番号を再び割り当てて表示することにより,管理する電話番号の数を減らす\nことは,乙14発明が当然の前提としていると解される。そうでなければ,所定期 間「固有の電話番号」を広告情報と関連付けておく意義が乏しいことになる。1審 原告は,表示されてから一定期間,当該番号が送出不可能\である場合に,当該期間, 同じ要求パートナーや同じコンテキストで同じ番号が表示されないとしても,一定\n期間の長さなどを適宜調整するなどすれば,発明の課題は十分解決することができ\nると主張するが,1審原告が主張する方法をとるよりも,同じ要求パートナーの同 じコンテキストに同じ番号を表示する方が管理する電話番号の数を減らすことに資\nするのであるから,1審原告の主張を採用することはできない。 そうすると,乙14の段落[0078]の記載は,エンドユーザから要求パート ナーの検索エンジンに対する検索要求に対して,広告に「ジャスト・イン・タイム 方式」でプール内にある電話番号を割り当てるに当たって,同じ要求パートナー又 は同じコンテキストにおいて,広告が表示されてから所定期間内の電話番号は,再\n度「固有の電話番号」として前記「広告」に割り当てられ,前記「所定期間内の電 話番号」が挿入された広告が要求パートナーの検索エンジンに送信されることを示 していると解される。
これに対し,1審原告は,乙14発明において,表示されてから一定期間,電話\n番号が送出不可能であったとしても,すでに送出された電話番号を「ウェブサーバ」\nに表示させ続けることにより,同じ要求パートナーや同じコンテキストについて同\nじ番号を表示することは可能\であるから,乙14発明において,所定の期間,電話 番号が送出可能である必要はない旨主張するが,乙14発明は,ジャスト・イン・\nタイム方式であり,検索された都度,電話番号が割り当てられるものであるから, 1審原告が主張するような構成を採るものであると解することはできない。\n
c 以上によると,乙14発明は,「固有の電話番号」が「表示されてか\nらある一定期間」が経過するまでの「所定期間」の間,識別情報(「固有の電話番号」 は広告情報(「その広告」)と関連づけられており,当該期間内の,エンドユーザか ら要求パートナーの検索エンジンに対する検索要求に対して,同じ要求パートナー 又は同じコンテキストにおいて,広告に関連付けられた電話番号が挿入された広告 が要求パートナーの検索エンジンに送信され前記エンドユーザに対して表示される\nことになるから,本件発明における,「一定期間」が終了して「送出不可能な状態」\nとなるまで「送出可能な状態」である点は,乙14発明との一致点となる。1審原\n告は,乙14の段落[0078],[0086]及び[0098]の記載から,広告 に「ジャスト・イン・タイム方式」で割り当てられたプール内にある電話番号は, 表示されてから所定期間の間「送信可能\状態」が継続しているとの1審被告の主張 は,本件発明の「一定期間」(構成要件6))と乙14発明の「所定期間」を混同する ものであると主張するが,乙14発明の「所定期間」については前記aのとおり認 められるのであり,1審原告の主張するところは前記aの判断を左右するものでは ない。
(ウ) 前記ウによると,乙14発明は,構成要件3)を備えていることが認め られる。そして,前記(ア),(イ)によると,乙14発明の「一定期間」の始期である 「『固有の電話番号』が『表示されてから』」とは,本件発明の「一定期間」の始期\nである「前記ウェブサーバに向けて前記識別情報が送出されてから」に相当し,乙 14発明には,「『一定期間』の間『送出可能な状態』であること」が記載されてい\nることが認められる。 したがって,乙14発明は,本件発明の構成要件6)を備えていると認められる。

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平成30(ワ)31428  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 令和2年6月30日  東京地方裁判所

 JR東海に対する侵害事件です。原告は「座席管理システム」(3995133号)の均等侵害を主張しましたが、第1要件、第2要件を満たさないとして、否定されました。

 (3)ア  第1要件にいう特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請 求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する\n特徴的部分であり,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許発明 の課題及び解決手段とその効果を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲 の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部\n分が何であるかを確定することによって認定される(知的財産高等裁判所平 成27年(ネ)第10014号同28年3月25日判決)。
ここで,本件明細書をみると,従来の技術においては,券情報と発券情報 の2つの情報をそれぞれ端末機に対して伝送していたため情報量が2倍に なり通信回線の負担が2倍になっていた。本件発明は,このような従来の技 術と異なり,「ホストコンピュータ」において,券情報と発券情報という2つ の情報に基づいて1つの座席表示情報を作成するものであり,それによって,\n端末機へ伝送される情報量が半減されて通信回線の負担が軽減されるとい う効果を奏するものである(【0002】〜【0007】,【0020】)。
このような本件明細書の発明の詳細な説明の記載に照らせば,本件発明に おいて,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であ\nる本質的部分は,「ホストコンピュータ」が券情報と発券情報との2つの情 報に基づいて1つの「座席表示情報」を作成する作成手段を有し,そのよう\nにして作成された「座席表示情報」が「ホストコンピュータ」から端末機に\n伝送される点にあるといえる。 被告システムにおいては,券情報と発券情報との2つの情報に基づいて1 つの情報が作成されるサーバーはなく,したがって,それらの2つの情報に 基づいて作成された1つの情報を端末機に伝送するサーバーもない。そうす ると,本件発明の本質的部分において,本件発明の構成と被告システムの構\ 成は異なる。したがって,被告システムが均等侵害の第1要件を充足するこ とはない。
また,被告システムは,端末機に対して券情報と発券情報という2つの情 報に基づいて作成された1つの情報が伝送されるものではないから,券情報 と発券情報がそれぞれ端末機に伝送されるシステムに比べて通信回線の負 担と端末機の記憶容量及び処理速度を半減するものではない。したがって, 本件発明と同一の作用効果を奏するものではなく,第2要件を満たさない。
イ 原告は,第1要件について,本件発明の特許請求の範囲に記載された構成\nと被告システムの構成の異なる部分は,サーバーと通信回線の個数に関する\n相違であって,本件発明の本質的部分に関係するものとはいえない旨主張す る。
しかし,上記アのとおり,券情報と発券情報とに基づく情報が作成され, そのようにして作成された情報が伝送されるサーバーがあることは,均等侵 害の第1要件にいう本件発明の本質的部分であるといえ,被告システムは, その本質的部分において,本件発明と異なる。
また,原告は,本件発明の作用効果は,車掌が携帯する端末機に表示され\nる各指定座席の利用状況(自動改札通過情報及び発売実績情報の有無)を車 掌が目視で確認できるようにして,車内改札を本来空席であるはずの座席に 座っている乗客に対して従来のように切符の提示を求めるだけで足りるよ うにしたものであり,これにより車内改札の省略化を図るというものであり, 被告システムの作用効果と同じである旨主張する。
しかし,前記3(1)のとおり,本件明細書の記載に照らせば,従来技術と比較した本件発明の効果は,券情報と発券情報がそれぞれ端末機に伝送されるシステムに比べて通信回 線の負担と端末機の記憶容量及び処理速度を半減するところにある。したが って,被告システムが本件発明と同じ作用効果を有するとはいえない。 (4)上記(3)のとおり,被告システムは,少なくとも均等侵害の第1要件,第2要 件を充足せず,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして本件発明\nの技術的範囲に属するものであるということはできない。

◆判決本文

本件特許の訂正審判についての審決取消訴訟事件です。

◆平成28(行ケ)10069

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平成30(ネ)10085  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月8日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審で差し止めが認められていました。被告が控訴しましたが知財高裁(4部)を控訴棄却されました。サポート要件については原審でも具備していると判断されています。

 争点2−1(本件特許は特許法36条6項1号に違反しているか)
 控訴人は,本件明細書の発明の詳細な説明には,構成要件Hに対応する「シ\nフト機能」に係る構\成について,「いったんスルー注文」及び「決済トレー ル注文」と組み合わせた,複数の新規注文の全て及び複数の決済注文の全て がそれぞれ1回ずつ約定した場合に複数の新規注文の全て及び複数の決済注 文の全てに対応する個数の新たな複数の新規注文及び新たな複数の決済注文 を発注させることしか記載されておらず,構成要件Hに含まれる「シフト機\n能」を「いったんスルー注文」及び「決済トレール注文」に組み合わせたも\nの以外の構成のものについては記載されていないことからすれば,構\成要件 Hは,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえないから,特許 法36条6項1号所定の要件(以下「サポート要件」という。)に適合する とはいえない旨主張する。
ア そこで検討するに,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載中に は,構成要件Hの「前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記\n複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたこ とを検知すると,前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知 の情報を受けて,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりも さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成す る」との記載において,「注文情報生成手段」が生成する「所定価格だけ 高い売り注文価格の情報」を含む「売り注文情報」の個数を規定する記載 はないから,当該「売り注文情報」は,複数の場合に限らず,一つの場合 も含むものと理解できる。
イ(ア) 次に,本件明細書の発明の詳細な説明には,1)「シフト機能」につ\nいて,「金融商品取引管理装置1や金融商品取引管理システム1Aにお いて,既に発注した新規注文と決済注文をそれぞれ約定させたのち,「シ フト機能」による処理を併用した取引を行うことも可能\である。この「シ フト機能」による注文は,上述した,「いったんスルー注文」や「決済\nトレール注文」や,各種のイフダン注文(例えば後述する「リピートイ フダン注文」や「トラップリピートイフダン注文」)等に基づいて,新 規注文と決済注文が少なくとも1回ずつ約定したのちに,更に新規注文 や決済注文が発注される際に,先に発注済の注文の価格や価格帯とは異 なる価格や価格帯にシフトさせた状態で,新たな注文を発注させる態様 の注文形態である。」こと(【0078】),2)「シフト機能」は,「相\n場価格の変動により,元の第一注文価格や元の第二注文価格よりも相場 価格の変動方向側に新たな第一注文価格の第一注文情報や新たな第二注 文価格の第二注文情報を生成し,相場価格を反映した注文の発注を行う ことができる」(【0018】)という効果を奏すること,3)「発明の 実施の形態3」は,「この実施の形態3の金融商品取引管理システムに おいては,「いったんスルー注文」と「決済トレール注文」とを,「ら くトラ」による注文と組み合わせ,さらに「シフト機能」を行わせる状\n態を示す。」(【0138】)ものであるが,「上記の「シフト機能」\nは,上記発明の実施の形態1や,発明の実施の形態2の構成において適\n用することもできる。」こと(【0151】)及び「上記各実施の形態 は本発明の例示であり,本発明が上記各実施の形態のみに限定されるこ とを意味するものではないことは,いうまでもない。」こと(【016 4】)の記載がある。
上記1)の記載から,「シフト機能」は,「新規注文と決済注文が少な\nくとも1回ずつ約定したのちに,更に新規注文や決済注文が発注される 際に,先に発注済の注文の価格や価格帯とは異なる価格や価格帯にシフ トさせた状態で,新たな注文を発注させる態様の注文形態」であり,シ フトされる先に発注済の注文には,「新規注文」又は「決済注文」の一 方のみの構成又は双方の構\成が含まれること,先に発注済の一つの注文 の「価格」をシフトさせる構成のものと先に発注済の複数の注文の「価\n格帯」をシフトさせる構成のものが含まれることを理解できる。\nまた,上記1)ないし3)の記載から,「シフト機能」は,「相場価格を\n反映した注文の発注を行うことができる」という効果を奏し,「いった んスルー注文」,「決済トレール注文」や,各種のイフダン注文(例え ば・・・「リピートイフダン注文」や「トラップリピートイフダン注文」)」 等の注文方法とは別個の処理であること,「シフト機能」にこれらの各\n種の注文方法のいずれを組み合わせるかは任意であることを理解できる。 ウ(ア) 本件明細書の発明の詳細な説明には,図35に示す「実施の形態 3」(【0144】ないし【0148】)として,シフト機能に決済\nトレール注文を組み合わせたトラップリピートイフダン注文で行われ, 決済注文S5,S4が約定した後に,元の買い注文と同じ注文価格の 買い注文B5,B4及び元の売り注文S5,S4と同じ注文価格の売 り注文S5,S4が再度生成されるが,この時点ではシフトは発生せ ず,通常のリピートイフダン注文が繰り返され,その後相場価格が変 動して,S1ないしS3の売り注文価格がトレールし,S1ないしS 3が最も高い注文価格の売り注文として同時に約定すると,再度生成 された売り注文S5,S4は約定していないにも関わらずこれをキャ ンセルして,S1ないしS5のシフトが実行されることが記載されて いる。上記記載は,構成要件Hに含まれる,「シフト機能\」に「いっ たんスルー注文」及び「決済トレール注文」を組み合わせた構成の一\nつであることが認められる。
また,シフト機能に決済トレール注文を組み合わせない場合には,\n図35において,S2及びS3の売り注文価格がトレールしないため, それぞれの注文情報が生成された時点における価格のとおり,それぞ れ別々に約定し,その場合,実施の形態3の取引例でS5,S4が約 定した段階ではシフトが生じていないのと同様に,S3,S2が約定 した段階ではシフトが生じず,その後に最も高い売り注文価格の売り 注文であるところのS1が約定した段階でシフトが生じることになる ことを理解できる。 そうすると,複数の売り注文情報のうち最も高い売り注文価格の売 り注文が約定すると,それよりも所定価格だけ高い売り注文価格の情 報を含む売り注文情報を生成するという構成要件Hに係る構\成は,本 件明細書の上記記載から認識できるから,本件明細書の発明の詳細な 説明に記載されているということができる。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成29(ワ)24174

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令和1(行ケ)10110 審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和2年6月18日  知的財産高等裁判所

 債権の決済方法は発明ではないと認定されました。出願人は銀行です。問題のクレームは以下のようにシンプルです。別途分割出願もあります。

【請求項1】 電子記録債権の額に応じた金額を債権者の口座に振り込むための第1の振込 信号を送信すること, 前記電子記録債権の割引料に相当する割引料相当料を前記電子記録債権の債 務者の口座から引き落とすための第1の引落信号を送信すること, 前記電子記録債権の額を前記債務者の口座から引き落とすための第2の引落 信号を送信することを含む,電子記録債権の決済方法。

 本願発明の発明該当性について
 前記(2)の観点から,本願発明の発明該当性について検討する。 ア(ア) 前記(1)イ(イ)のとおり,本願発明は,従来から利用されている電子 記録債権による取引決済における割引について,債権者をより手厚く保 護するため,割引料の負担を債務者に求めるよう改訂された下請法の運 用基準に適合し,かつ,債務者や債権者の事務負担や管理コストを増大 させることなく,債務者によって割引料の負担が可能な電子記録債権の決済方法を提供するという課題を解決するための構\成として,本願発明に係る構成を採用したものである。一方,本願発明の構\成のうち,「(所定の)金額を(電子記録債権の)債権者の口座に振り込むための振込信号を送信すること」,及び「(所定 の)金額を電子記録債権の債務者の口座から引き落とすための引落信号 を送信すること」は,電子記録債権による取引決済において,従前から 採用されていたものであり,また,「電子記録債権の額を(電子記録債権 の)債務者の口座から引き落とす」ことは,下請法の運用基準の改訂前 後で,取扱いに変更はないものである。 そうすると,本願発明は,「電子記録債権の額に応じた金額を債権者の 口座に振り込む」ことと,「前記電子記録債権の割引料に相当する割引料 相当料を前記電子記録債権の債務者の口座から引き落とす」こととを, 前記課題を解決するための技術的手段の構成とするものであると理解できる。\n
(イ) また,本願明細書には,「本発明」の効果として,「電子記録債権の 割引が行われる場合,債務者や債権者の事務負担や管理コストを増大さ せることなく,割引料を負担する主体を債務者とすることで,割引困難 な債権の発生を効果的に抑制することが可能となるという効果を奏する」ことが記載されている(前記(1)イ)。 一方,本願発明の特許請求の範囲(請求項1)には,電子記録債権の 決済方法として,「電子記録債権の額に応じた金額を債権者の口座に振 り込むための第1の振込信号を送信すること」,「前記電子記録債権の割 引料に相当する割引料相当料を前記電子記録債権の債務者の口座から 引き落とすための第1の引落信号を送信すること」,「前記電子記録債権 の額を前記債務者の口座から引き落とすための第2の引落信号を送信 すること」が記載されているに過ぎないため,かかる構成を採用することにより,「自然法則を利用した」如何なる技術的手段によって,債務者\nや債権者の事務負担や管理コストを増大させないという効果を奏する のかは明確でなく,本願明細書にもこの点を説明する記載はない。 なお,本願明細書には,「本発明」の実施形態1及び2の決裁方法は, 割引料の負担主体が債権者と債務者のいずれの場合にも対応すること ができるため,債権者と債務者は,従来利用してきた電子決済サービス を引き続き利用することができ,支払業務等の負担の軽減と人的資源を 引き続き有効に活用することができる旨の記載があるが(前記(1)イ(カ)),これは,従来から利用されている電子記録債権による取引決済における割引を対象とする発明であることによって,当然に奏する効果であるものと理解できる。
また,本願明細書に記載された本願発明の効果のうち,「割引困難な債 権の発生を効果的に抑制することが可能となる」という点については,「本発明」の実施形態1及び2に関する本願明細書の【0051】及び\n【0082】の記載(「また,電子記録債権を割引した際の割引料を債務 者が負担する場合,債権者は割引の際に一時的に負担した割引料を債務 者から回収することができる。さらに,割引料相当料の負担を軽減する ための方策を構築するための動機づけを債務者に対して与えることができるため,支払遅延や割引困難な債権の発生を効果的に抑制すること\nが可能となる。」)に照らすと,かかる効果は,電子記録債権の割引料を債務者が負担する方式に改めたことによる効果であることを理解でき\nる。
(ウ) 以上によれば,本願発明は,電子記録債権を用いた決済方法におい て,電子記録債権の額に応じた金額を債権者の口座に振り込むとともに, 割引料相当料を債務者の口座から引き落とすことを,課題を解決するた めの技術的手段の構成とし,これにより,割引料負担を債務者に求めるという下請法の運用基準の改訂に対応し,割引料を負担する主体を債務\n者とすることで,割引困難な債権の発生を効果的に抑制することができ るという効果を奏するとするものであるから,本願発明の技術的意義は, 電子記録債権の割引における割引料を債務者負担としたことに尽きると いうべきである。
イ 前記アで認定した技術的課題,その課題を解決するための技術的手段の 構成及びその構\成から導かれる効果等の技術的意義を総合して検討すれ ば,本願発明の技術的意義は,電子記録債権を用いた決済に関して,電子 記録債権の割引の際の手数料を債務者の負担としたことにあるといえる から,本願発明の本質は,専ら取引決済についての人為的な取り決めその ものに向けられたものであると認められる。 したがって,本願発明は,その本質が専ら人為的な取り決めそのものに 向けられているものであり,自然界の現象や秩序について成立している科 学的法則を利用するものではないから,全体として「自然法則を利用した」 技術的思想の創作には該当しない。 以上によれば,本願発明は,特許法2条1項に規定する「発明」に該当 しないものである。
ウ これに対し原告は,(1)請求項に係る発明が自然法則を利用しているかど うかは,本願発明の構成要件全体を単位として判断すべきものであるから,本件審決のように,本願発明の一部の構\成要件を単位とした判断には意味がなく,本件審決の判断には誤りがある,(2)仮に,本願発明の一部の構成要件を単位とした判断をする場合であっても,本願発明の各処理の実行は,\n全て信号の送受信によって達成されるところ,信号の送受信は,金融取引 上の業務手順そのものを特定するだけで達成できるものではなく,自然法 則を利用することで初めて達成できるものである,(3)本願発明を全体とし てみれば,「第1の引落信号」の送信と「第2の引落信号」の送信とを別々 に行うことができる構成を有していることから,「債務者の口座から割引料相当額を引き落とす時期」と「債務者の口座から電子記録債権の額を引き\n落とす時期」とを分けることができ,その結果,債務者が「割引料」と「電 子記録債権の額」とを区別して管理することが容易になり,例えば,「債務 者は,事務的な負担の増大を伴うことなく,一定期間に支払わなければな らない割引料相当料を容易に,かつ正確に把握することができる。」(本願 明細書【0017】)という効果を奏することができ,また,「第1の引落 信号を送信する」という構成は,債務者が割引料を負担するに当たって,実際の現金を用いなくても電子的な情報のやり取りによって,手続的負担\nを抑制するという効果を奏するから,全体として特許法2条1項の「自然 法則を利用した技術的思想の創作」に該当する,(4)本願発明を「コンピュ ータソフトウエア関連発明」であるとみても,「第1の引落信号」及び「第2の引落信号」を区別して送信する構\成は,コンピュータ同士の間で行われる必然的な技術的事項を越えた技術的特徴であるから,自然法則を利用 した技術的思想の創作である旨主張する。 まず,上記(1)の点について,本願発明を全体として考察した結果,「自然 法則を利用した」技術的思想の創作には該当しないと判断されることにつ いては,前記イのとおりである。 上記(2)の点については,前記アのとおり,本願発明において,「信号」を 「送信」することを構成として含む意義は,電子記録債権による取引決済において,従前から採用されていた方法を利用することにあるのに過ぎな\nい。すなわち,前述のとおり,本願発明の意義は,電子記録債権の割引の 際の手数料を債務者の負担としたところにあるのであって,原告のいう「信 号」と「送信」は,それ自体については何ら技術的工夫が加えられること なく,通常の用法に基づいて,上記の意義を実現するための単なる手段と して用いられているのに過ぎないのである。そして,このような場合には, 「信号」や「送信」という一見技術的手段に見えるものが構成に含まれているとしても,本願発明は,全体として「自然法則を利用した」技術的思\n想の創作には該当しないものというべきである。 上記(3)の点について,本願明細書の記載(【0017】)によれば,原告 が主張する「債務者は,事務的な負担の増大を伴うことなく,一定期間に 支払わなければならない割引料相当料を容易に,かつ正確に把握すること ができる。」との効果は,「金融機関」が,「電子的通信手段を用い,割引料 に相当する金額・・・を定期的・・・に算出し,各債務者に対して割引料相当料が 確定したことを定期的に通知する」ことにより奏するものであることを理 解できるところ,上記の構成は,本願発明の構\成に含まれないものである。 また,「債務者の口座から割引料相当額を引き落とす時期」と「債務者の口 座から電子記録債権の額を引き落とす時期」とを分けることにより,債務 者が「割引料」と「電子記録債権の額」を区別して管理することが容易に なるとの効果については,本願明細書に記載されていないし,本願発明の 特許請求の範囲(請求項1)には,「第1の引落信号を送信すること」と「第 2の引落信号を送信すること」が記載されているに過ぎず,その構成に上記信号を送信する時期や,上記信号に基づきいつどのように引落しが行わ\nれるかを含むものではない。
そして,実際の現金を用いなくても電子的な情報のやり取りによって, 手続的負担を抑制するという効果は,前記ア(イ)で説示したように,電子 記録債権による取引決済における割引を対象とする発明であることによっ て,当然に奏する効果である。
上記(4)の点については,請求項1には,3つの信号を送信することが記 載されるにとどまり,ソフトウエアによる情報処理が記載されているものではない。したがって,本願発明は,コンピュータソ\フトウエアを利用するものという観点からも,自然法則を利用した技術的思想の創作であると はいえない。 以上のとおり,原告の上記主張は,いずれも採用することができない。
(3) 小括
以上によれば,本件審決が,本願発明は,特許法2条1項の「自然法則 を利用した技術的思想の創作」とはいえないから,同法29条1項柱書に 規定する要件を満たしておらず,特許を受けることができないものである 旨判断した点に誤りはなく,原告主張の取消事由1は理由がない。

◆判決本文

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令和1(行ケ)10085  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和2年6月4日  知的財産高等裁判所(3部)

 ゲームの特許について進歩性無しとした審決が取り消されました。理由は「「ゲーム上の取決めにすぎない」として,他の公知技術等を用いた論理付けを示さないまま容易想到と判断できない」というものです。出願人は「グリー(株)」です。

 相違点6に係る構成が容易想到であると判断するに当たっての審決の論理構\成は,次のとおりである。(1)「手持ちのカード」が他のフィールド又は領域への移動に伴いその数を減 じたときに「手持ちのカード」を補充するという構成を採用するに当たって,どのフィールド又は領域への移動を補充の契機とするかはゲーム上の\n取決めにすぎない。 (2) よって,第7領域への移動をカードの補充の契機とする引用発明の構成を,第3領域(敵ヒーローへの攻撃を行うための領域)への移動を補充の\n契機とする本願発明の構成に変更することは,ゲーム上の取決めを変更することにすぎない。\n(3) よって,引用発明の構成を本願発明における構\成とすることも,ゲーム 上の取決めの変更にすぎず,当業者が容易に想到し得た。
(2) しかしながら,審決の上記論理構成は,次のとおり不相当である。ア 審決は,引用発明の認定に当たって「カード」の種類に言及していない が,CARTEによれば,第10領域から第11領域へのカードの補充の 契機となるのは,「シャードカード」(深緑の地色に白抜きで円形と三日 月形が表示されているカード)の第11領域から第7領域への移動及び第7領域から第6領域への移動である(00分39秒〜40秒,00分49\n秒〜50秒等)。 そして,「シャードカード」は,専ら「マナ」(カードのセッティング やスキルの発動に必要不可欠なエネルギー<00分42秒>)を増やすため に用いられるカードであり,その移動先はシャードゾーン(第7領域)又 はマナゾーン(第6領域)に限られ,敵との直接の攻防のためにアタック ゾーン(第3領域)又はディフェンスゾーン(第4領域)に移動させられ ることはない。これに対し,「クリーチャーカード」は,敵のクリーチャ ーやヒーローとの攻防に直接用いられるものであって,第11領域から適 宜アタックゾーン(第3領域)又はディフェンスゾーン(第4領域)に移 動させられ,攻防の能力を表\す「APの値」及び「HPの値」を有してい る。
イ このように,引用発明におけるカードの補充は,本願発明におけるそれ との対比において,補充の契機となるカードの移動先の点において異なる ほか,移動されるカードの種類や機能においても異なっており,相違点6は小さな相違ではない。そして,かかる相違点6の存在によって,引用発\n明と本願発明とではゲームの性格が相当程度に異なってくるといえる。し たがって,相違点6に係る構成が「ゲーム上の取決めにすぎない」として,他の公知技術等を用いた論理付けを示さないまま容易想到と判断すること\nは,相当でない。
(3) 被告の主張について
被告は,手持ちのカードの数が減じたときにこれを補充する構成(乙7,乙8)とするかこれを補充しない構\成(乙9,乙10)とするかは,ゲーム制作者がゲームのルールを決める際に適宜決めるべき設計的な事項にすぎな いから,引用発明において,第3領域(アタックゾーン)にカードを配置し た場合でも第11領域の手持ちカードが補充されるようにすることは,何ら 技術的な困難性があることではなく,まさに,提供しようとするゲーム性に 応じたゲーム上の取決めにすぎない旨主張する。 しかしながら,相違点6は,ゲームの性格に関わる重要な相違点であって, 単にルール上の取決めにすぎないとの理由で容易想到性を肯定することはで きないことは,(2)において説示したとおりである。。

◆判決本文

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令和1(行ケ)10072  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和2年3月17日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明「ホストクラブ来店勧誘方法及びホストクラブ来店勧誘装置」について、進歩性無しとした拒絶審決が取り消されました。

 引用発明の販売促進の対象を「ホストクラブ」のサービスとし,ホストクラブへ の「来店」の「勧誘」の目的で使用した場合,「仮想現実動画」は,潜在顧客を対象 とした,ホストクラブで提供するサービスを疑似体験する動画となり得ると解され る。しかしながら,引用例1には,「仮想現実動画」について,「メンタルケア」を行うものとすることや,「潜在顧客の心理状態に応じて選択され潜在顧客の心理状態に応 じて異なるメンタルケアを行う複数の異なる」仮想現実動画ファイルとすることに ついて,記載も示唆もない。また,かかる事項が周知であったと認めるに足りる証拠もない。そうすると,引用発明に基づき,相違点2’に係る「潜在顧客の心理状態に応じて 選択され潜在顧客の心理状態に応じて異なるメンタルケアを行う複数の異なるホス トクラブ仮想現実動画ファイル」の構成を当業者が容易に想到し得たとはいえない。\nよって,相違点2’に係る本件補正発明の構成は,当業者が容易に想到し得たもの\nではない。
ウ 相違点4’の容易想到性について
前記イのとおり,相違点2’に係る「潜在顧客の心理状態に応じて選択され潜在顧 客の心理状態に応じて異なるメンタルケアを行う複数の異なるホストクラブ仮想現 実動画ファイル」の構成を当業者が容易に想到することができたとはいえない以上,\n「異なる心理状態の表記が各々されているとともに潜在顧客の心理状態に応じて選\n択される複数のコマンドボタン」を「各ホストクラブ仮想現実動画ファイル」に「対 応」させることを,当業者が容易に想到することができたとはいえない。 よって,相違点4’に係る本件補正発明の構成は,当業者が容易に想到し得たも\nのではない。
エ 被告の主張について
被告は,(1)引用発明におけるサービスの販促活動の内容は,広告代理店と広告主 であるサービス提供者との間の取決めに即したものとならざるを得ず,「仮想現実動 画」を「ホストクラブ」への「来店」の「勧誘」となる内容として「心理状態に応じ て選択され潜在顧客の心理状態に応じて異なるメンタルケアを行う」ものとするこ とは,引用発明の販促活動を「ホストクラブ」への「来店」の「勧誘」とすることに 伴って生ずることにすぎず,また,(2)コマンドボタンに動画の内容を表記すること\nは周知技術であるところ,かかる動画の内容としてサービスの「メンタルケア的な 側面」を捉えた表示を行うことも,周知技術の採用に当たって,広告代理店とサー\nビスの提供者との間の取決めに即して,適宜決定すべきことである旨主張する。 しかし,引用例1には,テーマパークへの来場を勧誘したいサービスの提供者が, テーマパークの魅力を潜在顧客に伝える目的で,来場すると体験できるアトラクシ ョンを疑似体験するための仮想現実動画を提供することの記載はあるものの,その 際に,当該サービスのメンタルケア的な側面に応じた複数の異なる仮想現実動画を サーバーに記憶させておき,潜在顧客が疑似体験したいサービスを自由に選択でき るようにすることや,当該サービスのメンタルケア的な側面を仮想現実動画のタイ トル等として表記した複数のボタンを設けることの記載はなく,かかる示唆もない。\nそして,引用発明を「ホストクラブ」への「来店」の「勧誘」に適用した場合に, 販促支援の内容は,販促支援をする広告代理店とこれを受ける広告主との間の取決 めに即したものとなるとしても,「仮想現実動画」を,「心理状態に応じて選択され 潜在顧客の心理状態に応じて異なるメンタルケアを行う複数の異なる」ものにする ことが必然とはいえない。 また,コマンドボタンに動画の内容を表記することが周知技術であるとしても,\n取決めの下でなされる販促活動がかかる周知技術を踏まえたものになることが,必 然とはいえない上,仮にかかる周知技術を適用したとしても,前記ウのとおり,「潜 在顧客の心理状態に応じて選択され潜在顧客の心理状態に応じて異なるメンタルケ アを行う複数の異なるホストクラブ仮想現実動画ファイル」の構成を当業者が容易\nに想到することができたとはいえない以上,「異なる心理状態の表記が各々されてい\nるとともに潜在顧客の心理状態に応じて選択される複数のコマンドボタン」を「各 ホストクラブ仮想現実動画ファイル」に「対応」させるとの構成を,当業者が容易に\n想到することができたとはいえない。

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令和1(ネ)10042  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和2年2月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明の侵害事件です。会計ソフトについて非侵害と判断された1審判断が維持されました。均等侵害も第1要件を満たしていないとして否定されました。 該当特許の公報は以下です。

◆公報
該当特許は無効審判もありますが、2020年1月に、特許は有効と判断されています(無効2018-800140)。

3 争点2(均等論)について
控訴人は,仮に本件発明の構成要件Hは「社会保障給付」が「財源措置(C\n2)」に含まれる構成であると解した場合には,被告製品においては,「社会\n保障給付」が,「財源措置(C2)」に含まれておらず,「純経常費用(C1)」 に含まれている点で本件発明と相違することとなるが,被告製品は,均等の第 1要件ないし第3要件を充足するから,本件発明の特許請求の範囲に記載され た構成と均等なものとして,本件発明の技術的範囲に属する旨主張するので,\n以下において判断する。
(1) 前記2(2)認定のとおり,被告製品は,少なくとも構成要件B3及びHを\n充足するものと認められないから,被告製品は,構成要件Hの構\成以外に, 構成要件B3の構\成を備えていない点においても本件発明と相違するものと 認められる。 しかるところ,控訴人の主張は,被告製品に構成要件B3の構\成について も相違部分が存在し,被告製品と本件発明は構成要件B3及びHにおいて相\n違することを前提とするものではないから,その前提において理由がない。
(2)ア 次に,被告製品の第1要件の充足性について,念のため判断する。 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び前記1(2)認定の本件 明細書の開示事項を総合すれば,本件発明は,国民が将来負担すべき負債 や将来利用可能な資源を明確にして,政策レベルの意思決定を支援するこ\nとができる「財務諸表を作成する会計処理のためのコンピュータシステム」\nを提供することを課題とし,この課題を解決するために「純資産の変動計 算書」(「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1〜C4)」) を新たに設定し,当該年度の政策決定による資産変動を明確にできるよう にしたことに技術的意義があり,具体的には,構成要件B1ないしIの構\ 成を採用し,純資産変動額や将来償還すべき負担の増減額を「処分・蓄積 勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1〜C4)」に表示し,当該年\n度の政策決定による資金変動を明確にすることができるようにしたことに より,国民の資産が当期の予算措置で増えるのか又は減るのか,また,そ\nの財源の内訳から将来の国民負担がどの程度増えるのか又は減るのかを一 目で知ることができ,政策決定者は純資産変動額を勘案して政策を遂行す ることができるという効果を奏するようにしたこと(【0002】,【0 005】,【0007】ないし【0010】,【0021】,図1)に技 術的意義があるものと認められる。
そして,本件発明の上記技術的意義に鑑みると,本件発明の本質的部分 は,「資金収支計算書勘定記憶手段及び閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)\n及び損益勘定作成・記録手段」から,国家の政策レベルの意思決定を記録 ・会計処理するために,「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定) (C1〜C4)」を作成・記録する損益外純資産変動計算書勘定作成・記 録手段を備え(構成要件B3),損益外純資産変動計算書勘定作成・記録\n手段の記録は,その期における損益外の純資産増加(C3,C4)と純資 産減少(C1,C2)の2つで構成され,損益勘定(行政コスト計算書勘\n定)の収支尻(貸借差額)である「純経常費用(B7)」が処分・蓄積勘 定(損益外純資産変動計算書勘定)の「純経常費用(C1)」に振替えら れ(構成要件F),「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」\nの貸方と借方の差額(収支尻)が,「当期純資産変動額(C5)」という 形で,最終的には「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)」の「純資産(国民\n持分)(B4)」の部に振り替えられて,「閉鎖残高勘定(貸借対照表勘\n定)」の借方(左側)と貸方(右側)がバランスし(構成要件G),「処\n分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)」の借方側(勘定の左側) の「財源措置(C2)」は,具体的には社会保障給付やインフラ資産を整 備した際の資本的支出のような損益外で財源を費消する取引を指し(構成\n要件H),処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の貸方側(勘 定の右側)の「資産形成充当財源(C4)」は,財源措置として支出がさ れた場合,財源は費消されるが,その一部分は,インフラ資産のように将 来にわたって利用可能な資産形成に充当されるため,その支出の時点で政\n府の純資産(国民持分)が何らかの資源が現金以外の形で会計主体として の政府の内部に残っていると考えることができ,将来世代も利用可能な資\n産が当期どれだけ増加したかを示している(構成要件I)という構\成を採 用することにより,当該年度の政策決定による資金変動を明確にし,国民 の資産が当期の予算措置で増えるのか又は減るのか,また,その財源の内\n訳から将来の国民負担がどの程度増えるのか又は減るのかを一目で知るこ とができ,政策レベルの意思決定を支援することができるようにしたこと にあるものと認めるのが相当である。
しかるところ,被告製品においては,「資金収支計算書勘定記憶手段及 び閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定)及び損益勘定作成・記録手段」から「処\n分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)(C1〜C4)」を作成・ 記録する損益外純資産変動計算書勘定作成・記録手段を備えておらず,ま た,「社会保障給付」が「財源措置(C2)」に含まれていないため,構\n成要件B3及びHを充足せず,当該年度の政策決定による資金変動を明確 にし,財源の内訳から将来の国民負担がどの程度増えるのか又は減るのか を一目で知ることができるようにして政策レベルの意思決定を支援するこ とができるようにするという本件発明の効果を奏するものと認めることは できない。 したがって,被告製品は, 本件発明の本質的部分を備えているものと認 めることはできず,被告製品の相違部分は,本件発明の本質的部分でない ということはできないから,均等論の第1要件を充足しない。 よって,その余の点について判断するまでもなく,被告製品は,本件発 明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとは認められない。\n
イ(ア) これに対し控訴人は,本件明細書の記載によれば,本件発明の本質 的部分(課題解決原理)は,(1)(C)の処分・蓄積勘定(純資産変動計 算書勘定)が損益外の純資産増加(C3,C4)(貸方)と純資産減少 (C1,C2)(借方)の2つで構成され(構\成要件F),期末にその 貸方と借方の差額(収支尻)が当期純資産変動額(C5)という形で閉 鎖残高勘定(貸借対照表勘定)の純資産(国民持分)(B4)の部に振\nり替えられる(構成要件G)ことで,国民が将来負担すべき負債を明確\nにするという点,(2)(C)の処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書 勘定)の貸方側において,将来世代も利用可能な資産が当期どれだけ増\n加したかを示している(財源が固定資産などに転化したもの,すなわち 税収等の財源が使用されて減少したが,将来世代が利用可能な資産の形\nで増加したと解釈できるものを計上する)資産形成充当財源(C4)の 金額が,将来利用可能な資源を明確にする(構\成要件I)という点,(3) 処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)と資金勘定(資金収支 計算書勘定),閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定),損益勘定(行政コス\nト計算書勘定)との「勘定連絡(勘定科目間の金額の連動)」がプログ ラムに設定されていることが,政策レベルの意思決定と将来の国民の負 担をコンピュータ・シミュレーションする会計処理を可能にするという\n点にあり,被告製品は,本件発明の本質的部分を備えている旨主張する。 しかしながら,本件発明の本質的部分は前記アのとおり認めるのが相 当であり,また,上記(3)の点については,本件発明は,請求項2に係る 発明とは異なり,「コンピュータ・シミュレーション」を行うことを発 明特定事項とするものではないから,本件発明の本質的部分であるとい うことはできない。 したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(イ) また,控訴人は,「財源措置」とは,将来利用可能な資源の増加を\n伴うか否かにかかわらず,「当期に費消する資源の金額」を意味するも のであり,「純経常費用(C1)」と「財源措置(C2)」を包括する 上位概念であるから,この意味で「純経常費用(C1)」と「財源措置 (C2)」は同質的であり,個別の政府活動が「行政レベルの業務執行 上の意思決定」と「国家の政策レベルの意思決定」のいずれに分類され たとしても,処分・蓄積勘定(純資産変動計算書勘定)の借方の金額, すなわち,「当期に費消する資源の金額」には変化はないから,本件発 明の課題解決原理として不可欠の重要部分である処分・蓄積勘定の収支 尻(貸借差額),すなわち「当期純資産変動額」に影響を及ぼすもので はないことからすると,被告製品の構成要件Hに係る相違部分(被告製\n品においては,「社会保障給付」が,「財源措置(C2)」に含まれて おらず,「純経常費用(C1)」に含まれている点)は,本件発明の本 質的部分とは無関係な些細な相違にすぎない旨主張する。 しかしながら,本件明細書には,(1)処分・蓄積勘定(損益外純資産変 動計算書勘定)の借方の「純経常費用(C1)」は,「損益勘定(行政 コスト計算書勘定)」の収支尻である「純経常費用」が振り替えられて 計上されるところ(【0026】,【0035】,図1),「損益勘定 (行政コスト計算書勘定)」は,主として行政レベルの業務執行上の意 思決定を対象とするもので,行政コスト(損益)計算区分に計上される 行政コスト(計上損益)は少なければ少ないほど効率的な行政運営であ ることを意味するものであること(【0036】),(2)処分・蓄積勘定 (損益外純資産変動計算書勘定)の借方の「財源措置(C2)」は,社 会保障給付やインフラ資産を整備した際の資本的支出のような,「損益 外で財源を費消する取引」を指し(【0027】),「財源の使途」(損 益外財源の減少)に属する勘定科目群は,主として国家の政策レベルの 意思決定の対象として,現役世代によって構成される内閣及び国会が,\n予算編成上,どこにどれだけの資源を配分すべきかを意思決定するもの\nであり(【0037】,図2),社会保障給付は,上記勘定科目群の「移 転支出への財源措置」に計上される非交換性の支出(対価なき移転支出) であること(【0040】)の開示があることに照らすと,本件発明に おいては,「純経常費用(C1)」と「財源措置(C2)」は同質的な ものであるとはいえず,「財源措置(C2)」に含まれる社会保障給付 にいくら財源を配分するのかは国家の政策レベルの意思決定の対象であ るといえるから,控訴人の上記主張は採用することができない。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成30(ワ)10130

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平成31(行ケ)10038  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和2年2月19日  知的財産高等裁判所

  CS関連発明について、進歩性無効理由無しとした審決が維持されました。原告FC2、被告ドワンゴです。

 以上によると,甲2及び3から共通して把握できる技術は,「テレビ放 送の受像機において,メインのテレビ放送の映像とともに,文字放送を受信して文 字放送の文字をプログラム制御によりスクロール表示する際に,メインのテレビ放\n送の映像に文字が含まれている場合,メインのテレビ放送の映像の文字と重ならな いように文字放送の文字の表示位置を変更してスクロール表\示する技術」であり, 甲19及び25から共通して把握できる技術は,「FlashのActionSc riptのhitTestを用いることにより,ムービークリップの領域判定を行 う技術」である。 このように,甲2及び3から把握できる技術と,甲19及び25から把握できる 技術は共通するものではないから,甲2,3,19及び25に共通する慣用技術を 把握することはできない。
カ 原告は,甲1発明と甲2等技術は,プログラミングという技術分野に属 するとともに,動画と文字情報とを配信するという技術分野に属することで共通す るため,甲1発明に甲2等技術を適用する動機付けがあると主張する。 甲1発明は,ライブ映像とライブ閲覧者からのコミュニケーション情報(例えば, チャット〔テキスト文による情報〕)とを一つの画面でリアルタイムで同期表示する\n機能を有するライブ配信サーバ(構\成1a)と,クライアントであるライブ閲覧者 の複数のライブ閲覧者端末(構成1b)とが,通信ネットワークを介して接続され\nて構成されるライブ配信システム(構\成1c)に関する発明である。そして,甲1 発明の前記ライブ閲覧者端末が再生するマルチメディアコンテンツは,「ライブ映 像データ」であり(構成1a,構\成1a2,構成1a5,構\成1b4),前記ライブ 閲覧者端末が表示する複数のチャット文は,ライブ閲覧者が入力した「テキスト文\nによる情報」(構成1a,構\成1a5,構成1b5)である。\n他方,甲2及び3に記載された技術事項は,上記オ(オ)のとおり,テレビ放送の受 像機において,メインのテレビ放送の映像とともに,文字放送を受信して文字放送 の文字をプログラム制御によりスクロール表示する際に,メインのテレビ放送の映\n像に文字が含まれている場合,メインのテレビ放送の映像の文字と重ならないよう に文字放送の文字の表示位置を変更してスクロール表\示する技術である。 そうすると,甲1発明は,ライブ配信サーバとライブ閲覧者端末とが通信ネット ワークを介して接続されて構成されるライブ配信システムに関する発明であるのに\n対して,甲2及び3に記載された技術事項は,テレビの文字放送の受信機の技術で あるから,両者は,その前提となるシステムが異なる。 また,甲1発明と甲2及び3に記載された技術事項とは,文字を表示する点では\n共通するものの,表示される文字は,甲1発明では,ライブ閲覧者が入力するチャ\nット文であるのに対し,甲2及び3に記載された技術事項は,メインのテレビ放送 の映像に含まれる文字と文字放送の文字であるから,対象とする文字が異なる。 したがって,甲1発明と甲2及び3に記載された技術とは,技術が大きく異なる といえるのであり,プログラミングに関するものであることや動画と文字情報を配 信するものであるということ,文字と文字の重なり合いが生じないようにする技術 であることだけでは,甲1発明に甲2及び3に記載された技術を適用する動機付け があると認めることはできないから甲1発明に甲2及び3に記載された技術を適用 して本件特許発明1を容易に発明することができたとはいえない。 また,甲19及び25には,文字列情報の表示位置の制御については何ら開示さ\nれていないから,甲1発明に甲19及び25に記載された技術を適用して本件特許 発明1を容易に発明することができたとはいえない。
キ 原告は,甲1発明と甲2等技術は,視認性の低下という課題が共通する と主張するが,前記のとおり,甲1発明は視認性の低下という課題を有しないため, 甲1発明と甲2等技術が課題において共通するとは認められない。
ク 以上によると,その余の点を判断するまでもなく,甲1発明に甲2等技 術を適用して本件特許発明1を容易に発明をすることができたと認められないから, 本件審決の判断に誤りはない。

◆判決本文

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平成31(行ケ)10039  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和2年2月19日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性無効理由無しとした審決が維持されました。原告FC2、被告ドワンゴです。

 上記(1)によると,本件特許発明は,「放送されたテレビ番組などの動画に 対してユーザが発言したコメントをその動画と併せて表示するシステム」という背\n景技術を前提とし(段落【0002】),「コメントの読みにくさを低減させる」とい う課題を解決するための発明であり(段落【0005】),動画を再生するとともに, 前記動画上にコメントを表示する表\示装置であって,前記コメントと,当該コメン トが付与された時点における,動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画\n再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記 憶部と,前記動画を表示する領域である第1の表\示欄に当該動画を再生して表示す\nる動画再生部と,前記再生される動画の動画再生時間に基づいて,前記コメント情 報記憶部に記憶されたコメント情報のうち,前記動画の動画再生時間に対応するコ メント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し,当該 読み出されたコメントを,前記コメントを表示する領域である第2の表\示欄に表示\nするコメント表示部とを有し,前記第2の表\示欄のうち,一部の領域が前記第1の 表示欄の少なくとも一部と重なっており,他の領域が前記第1の表\示欄の外側にあ り,前記コメント表示部は,前記読み出したコメントの少なくとも一部を,前記第\n2の表示欄のうち,前記第1の表\示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表\ 示することを特徴とするものであり(段落【0006】),本件特許発明により,「オ ーバーレイ表示されたコメント等が,動画の画面の外側でトリミングするようにし\nて,コメントそのものが動画に含まれているものではなく,動画に対してユーザに よって書き込まれたものであることが把握可能となり,コメントの読みにくさを低\n減させることができる」(段落【0012】)という効果を奏するものであることが 認められる。
(3) 本件特許発明における「コメント」について検討すると,本件特許発明1 は,「(1A)動画を再生するとともに,前記動画上にコメントを表示する表\示装置 であって,(1B)前記コメントと,当該コメントが付与された時点における,動画 の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間と\nを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部と,」を構成要件としている。\n構成要件1Bによると,「コメント」が付与された時点で,「動画の最初を基準と\nした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間」が記憶されるこ\nとになるから,「コメント」は,それが表示される表\示装置において,動画を再生す る時に付与され,付与された時点の動画再生時間が,コメント付与時間としてコメ ント情報記憶部に記憶されるものであると解される。そして,「コメント」は,「動 画を再生するとともに,前記動画上にコメントを表示する表\示装置」(1A)におい て,動画を再生する時に付与されるものであるから,コメントを付与する者は,表\n示装置において,動画を再生して閲覧するユーザであることを読み取ることができ る。 そうすると,本件特許発明における「コメント」とは,表示装置において,動画\nを閲覧するユーザが,動画の再生開始後の任意の時点に,動画に対して付与するも のと解することができる。
・・・・
これに対し,原告は,相違点1について,甲1の「テキスト」は,ユ ーザが発言するものが排除されることはなく,「コメント」を含むから,本件審決の 相違点1の認定には誤りがあると主張する。 甲1には,ユーザとの双方向の情報伝達が行える環境が整ってきたとの記載はあ る(段落【0002】)ものの,甲1発明は,前記ア認定のとおりのものであって, 動画コンテンツ作製者側が「動画コンテンツ」の個々の動画に応じて,または1つ の動画内でも個々の場面に応じて表示されるように予\め作成した「データコンテン ツ」が,「動画コンテンツ」とともに「コンテンツ」を構成し,その「データコンテ\nンツ」はインターネットのホームページのデータに対応するものであり,代表的に\nはテキストや静止画を含み,場合によっては音声などのデータを含むものであるか ら,甲1発明の「テキスト」とは,コンテンツ作製者側が「動画コンテンツ」の個々 の動画に応じて,または1つの動画内でも個々の場面に応じて指定した「テキスト」 であり,ユーザの投稿したテキストデータをその構成に含むとは認められない。\n原告は,甲1について,ユーザからのコメントが付与されたデータコメントを配 信することも予定されているというべきであると主張するが,甲1発明の「データ\nコンテンツ」は上記認定のとおりのものであって,そこにユーザからのコメントが 含まれると認めることはできない。 また,原告は,インターネットで公開されるインタラクティブなサービスではテ キスト情報の送受信を行う場合,ユーザが投稿したコメントの送受信に容易に拡張 可能であることは当業者の常識であるとも主張するが,甲1発明が前記のような内\n容であり,甲1には,ユーザがコメントを投稿することについての記載があるとは 認められないことからすると,甲1発明がユーザが送信したコメントをその構成に\n含むものであると認めることはできない。 さらに,原告は,甲22,24及び25はユーザが送信したデータをテキストデ ータと表記しているから,「テキスト」であることをもって「コメント」を排除する\nと解することはできないと主張するが,上記のとおり,甲1発明は,ユーザが送信 したデータをその構成に含むものではなく,原告の指摘することは,上記判断を左\n右するものではない。 したがって,本件特許発明1と甲1発明の相違点として,相違点1を認めること ができる。
・・・
本件特許発明1における「コメント」は,表示装置において,ユーザ\nが動画を再生している時に付与され,表示装置から,ユーザによりいつでも付与可\n能であるのに対し,甲1発明の「データコンテンツ」の「テキスト」は,コンテン\nツ作製者側で「データコンテンツ」として予め作成されたものであって,ユーザに\nより表示装置で付与されるものではないし,表\示装置において再生している時に付 与されるものでもない。 したがって,本件特許発明1における「コメント」と,甲1発明における「デー タコンテンツ」の「テキスト」とは,ユーザによる付与が可能か否か,付与を行う\n装置,付与を行う時において異なり,このように異なる「データコンテンツ」の「テ キスト」を「コメント」に置き換えることは,甲1発明の前提となる装置構成の変\n更を必要とするものであって,甲1発明の「データコンテンツ」の「テキスト」を ユーザが付与する「コメント」に容易に置き換えることができるものとは認められ ない。 よって,甲1発明の「データコンテンツ」の「テキスト」を「コメント」に置き 換えることは,当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。 (イ) これに対し,原告は,甲1の段落【0002】の記載や,WEB2. 0という技術常識によると,「テキスト」を利用者からの情報伝達を可能とする「コ\nメント」に置換することができる旨主張する。 しかし,甲1には,ユーザがコメントを投稿することについての記載は全くなく, 段落【0002】の記載があり,誰もがウェブサイトを通して自由に情報を発信で きるように変化したウェブの利用状態であるWeb2.0が知られていたとしても, 甲1発明の「データコンテンツ」をユーザが付与する「コメント」に置き換えるこ とが容易であるとは認められない。
(ウ)a 原告は,甲22に基づき,動画配信において,その魅力を高めるた めに,コンテンツ作製側で,個々の動画に応じて,または,1つの動画内でも個々 の場面において指定される「テキスト」を利用者からの情報伝達を可能とする「コ\nメント」に置換することには十分な動機付けがあると主張する。\n甲22は,発明の名称を「ストリーミング配信方法」とする発明の公開特許公報 であり,「動画コンテンツをネットワークを介して利用者端末にストリーミング配 信するストリーミングサーバと,ストリーミング配信中の動画コンテンツに関連付 けられたウェブ掲示板又はチャット領域をネットワークを介して利用者端末に提供 するウェブサーバと,動画コンテンツの配信を受け,ウェブ掲示板又はチャット領 域のテキスト書込部にテキストデータからなるメッセージを書き込む利用者端末と からなるストリーミング配信システムにおいて,ストリーミングサーバは,ウェブ サーバの書込ログファイルに格納されたテキストデータを収集し,収集されたテキ ストデータをストリーミング配信中の動画コンテンツに重畳し,テキストデータの 重畳された動画コンテンツを利用端末に配信するストリーミング配信システム」を 採用することにより,「利用者は,非常に便利であり,会場の客席の様な雰囲気を味 わうことができる」技術(以下,「甲22技術」という。)が記載されていることが 認められる。 他方,甲1発明は,「ネットワーク環境」をユーザへのデータコンテンツの配信に 用いたものであり,「データコンテンツ」を双方向に情報伝達するものではないから, 甲22技術があることをもって,甲1発明の「データコンテンツ」の「テキスト」 をユーザが付与する「コメント」に置換する動機付けがあるということはできない。
b 原告は,動画とユーザが入力した文字データ(コメント)を同期表\n示させることは,本件原出願日の時点において慣用技術であった(甲26〜34) から,甲1発明に当該慣用技術を適用して甲1の「テキスト」を「コメント」に置 換することは容易であると主張する。 甲26〜34には,映像を見ながらユーザがリアルタイムでテキストによるコミ ュニケーションを行う技術(以下,「甲26等技術」という。)が開示されているこ とが認められる。 しかし,甲1発明は,「ネットワーク環境」をユーザへのデータコンテンツの配信 に用いたものであり,「データコンテンツ」を双方向に情報伝達するものではないか ら,原告の主張する甲26等技術が慣用技術であるとしても,甲1発明の「データ コンテンツ」の「テキスト」をユーザが付与する「コメント」に置換する動機付け があるとは認められない。
c 原告は,動画と同時に表示するデータコンテンツはユーザが指定す\nるのでなければ,コンテンツ作製者側で指定するのが通常であり,甲22や甲26 〜34には,甲 1 発明における「コンテンツ作製者側で,個々の動画に応じて,ま たは,1つの動画内でも個々の場面に応じて相応しいデータコンテンツおよび表示\n態様が指定される」ことの記載も示唆もないということはできないと主張する。 しかし,甲26〜34は,ユーザがデータコンテンツを指定することを前提とし たものであるから,原告の主張は失当である。原告は,甲33「コメントを表示す\nる際には,入力する際に指定された場所を指し示すように,指定された場所毎にコ メントを表示する,映像コメント入力・表\示方法を提案する。」(段落【0008】),甲34「提供された増補は,配置の命令と,持続時間の命令とを有してもよい」(段 落【0006】)の記載も指摘するが,いずれもユーザ側が指定する場合に関する記 載であるから,甲1発明における「コンテンツ作製者側で,個々の動画に応じて, または,1つの動画内でも個々の場面に応じて相応しいデータコンテンツおよび表\n示態様が指定される」が記載又は示唆されていると読み取ることはできない。 なお,甲22技術の内容は,コンテンツ作製者側が,利用者端末から収集したテ キストデータを,ストリーミング配信中の動画コンテンツに重畳し,テキストデー タの重畳された動画を利用者端末に配信するものであるが,このような甲22技術 があるからといって,甲1発明の「データコンテンツ」の「テキスト」を「コメン ト」に置換する動機付けがあるとはいえないことは,前記(1)イ(ウ)aのとおりであ る。

◆判決本文

原告被告の異なる別特許の審取事件です。 こちらも無効理由無しとした審決が維持されています。

◆平成31(行ケ)10038

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平成30(ワ)12609  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月9日  東京地方裁判所

 原告は、ヤマハです。技術的範囲に属する、無効理由無しと判断されました。被告は本件アプリを設計変更して、本件新アプリに変更しましたが、本件アプリについては引き続き差止請求が認められました。

 被告は,(1)乙2公報は,音響IDとインターネットを用いて,放音装置から放音 された音響IDによって識別される識別対象の情報に対し,これと関連する任意の 関連情報をサーバから端末装置に供給できる乙2技術を開示しているところ,本件 発明1も乙2技術を採用するものであり,相違点1−1ないし同1−4は,識別対 象,複数の関連情報の選択条件,関連情報の内容に係る相違にすぎず,当業者が適 宜設定できるものである旨主張するとともに,(2)当業者は,乙2技術を乙4課題の 解決に応用して,相違点1−1ないし同1−4に係る本件発明1の構成を容易に想到し得た旨主張する。\n
しかしながら,まず,被告の上記(1)の主張については,前記1(2)認定のとおり, 本件発明1は,コンピュータを,(i)放音される「案内音声である再生対象音」と 「当該案内音声である再生対象音の識別情報」を含む音響を収音して識別情報を抽 出する情報抽出手段,(ii)サーバに対し,抽出した識別情報とともに「端末装置に て指定された言語を示す言語情報」を含む情報要求を送信する送信手段,(iii)「前 記案内音声である再生対象音の発音内容を表」し,情報要求に含まれる識別情報に対応するとともに「相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求\nの言語情報で指定された言語に対応する関連情報」を受信する受信手段,(iV)受信 手段が受信した関連情報を出力する出力手段として機能させるプログラムの発明であり,乙2公報等に音響IDとインターネットを利用するという点で本件発明1と\n同様の構成を有する情報提供技術が開示されていたとしても,その手順や方法を具体的に特定し,使用言語が相違する多様な利用者が理解可能\な関連情報を提供できるという効果を奏するものとした点において技術的意義が認められるものであるか ら,相違点1−1ないし同1−4に係る本件発明1の構成が当業者において適宜設定できる事項であるということはできない。\nまた,被告の上記(2)の主張については,前記イのとおり,乙4公報に,発明が解 決しようとする課題の一つとして,システムを複数の言語に対応させること(以下, 単に「乙4発明の課題」という。)が記載されているものの,以下のとおり,乙2 発明1を乙4発明の課題に組み合わせる動機付けは認められず,仮に,乙4発明の 課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照するなどして乙2発明1の構\成に変更を加え たとしても相違点1−1ないし同1−4に係る本件発明1の構成に到達しないから,採用することができない。\n
(ア) 乙2発明1を乙4発明の課題を組み合わせる動機付け
a 前記のとおり,乙2発明1は,放送中のテレビ番組に関連した情報を提供す る情報提供システムに用いられる携帯端末装置に関するものであり,放送中のテレ ビ番組の場面を識別する音声信号である音響IDを用い,ID解決サーバを介して 当該場面に関連する情報を取得するものであるのに対し,前記イ(イ)のとおり,乙 4発明は,利用者が携帯する携帯型音声再生受信器を用いた美術館や博物館等の展 示物に係る音声ガイドサービスに関するものであり,展示物に固有のIDを赤外線 等の無線通信波によって発信し,携帯受信器が発信域に入ると上記IDを受信し, 展示物の音声ガイドが自動的に再生されるものであり,サーバに接続してインター ネットを介して情報を取得する構成を有しないから,両発明は,想定される使用場面や発明の基本的な構\成が異なっており,乙2発明1を乙4発明の課題に組み合わせる動機付けは認められない。
b 被告は,(1)乙4発明は,放音装置を利用した情報提供技術という乙2技術と 同じ技術分野に属するものであること,(2)乙2技術は汎用性の高い技術であり, 様々な放音装置を含むシステムに利用されていたこと(乙11ないし13),(3)端 末装置とサーバとの通信システムを利用する情報提供技術は周知のものであったこ と(乙2,5,6,8,11ないし13等)などによれば,当業者において,乙2 技術を乙4課題の解決に応用する動機付けがある旨主張する。 しかしながら,乙2発明1と乙4発明がいずれも放音装置を利用した情報提供技 術であるという限りで技術分野に共通性が認められ,また,本件優先日1当時,音 響IDとインターネットを利用し,又は端末装置とサーバとの通信システムを利用 する情報提供技術が乙2公報以外の公開特許公報に開示されていたとしても,いず れも乙4発明とは想定される使用場面や発明の基本的な構成が異なることは前記のとおりであり,乙4発明の課題の解決のみを取り上げて乙2発明1を適用する動機\n付けがあると認めるに足りない。
(イ) 乙2発明1に対する乙4発明等の適用
また,以下のとおり,乙4発明の課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照するなどして乙2発明1の構\成に変更を加えたとしても,本件発明1の構成に到達しない。\n前記第2の2(2)ア(ウ)認定の特許請求の範囲,前記(1)認定の本件明細書1の発明 の詳細な説明,図面,弁論の全趣旨に照らすと,本件発明1は,概要,以下のとお りのものであると認められる。
ア 本件発明1は,端末装置の利用者に情報を提供する技術に関する(【0001】)。
イ 従来から,美術館や博物館等の展示施設において利用者を案内する各種の技 術が提案されていたが,各展示物の識別符号が電波や赤外線で発信装置から送信さ れるものであったため,電波や赤外線を利用した無線通信のための専用の通信機器 を設置する必要があった。本件発明1は,そのような問題を踏まえてされたもので あり,無線通信のための専用の通信機器を必要とせずに多様な情報を利用者に提供 することを目的とする(【0002】,【0004】)。
ウ 本件発明1は,(1)案内音声である再生対象音を表す音響信号と当該案内音声である再生対象音の識別情報を含む変調信号とを含有する音響信号に応じて放音さ\nれた音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出手段,(2)情報抽出手 段が抽出した識別情報を含む情報要求を送信する送信手段,(3)情報要求に含まれる 識別情報に対応するとともに案内音声である再生対象音に関連する複数の関連情報 のいずれかを受信する受信手段,(4)受信手段が受信した関連情報を出力する出力手 段としてコンピュータを機能させることにより,赤外線や電波を利用した無線通信に専用される通信機器を必要とせずに,案内音声である再生対象音の識別情報に対\n応する関連情報を利用者に提供することを可能とする(【0005】)。
エ 以上に加えて,本件発明1は,前記送信手段が,当該端末装置にて指定され た言語を示す言語情報を含む情報要求を送信し,前記受信手段が,情報要求の識別 情報に対応するとともに相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち情報要求の 言語情報で指定された言語に対応する関連情報を受信するという構成を採用するこ\nとにより,相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち情報要求の言語情報で指 定された言語に対応する関連情報を受信することができ,使用言語が相違する多様 な利用者が理解可能な関連情報を提供できるという効果を奏するものである(【0\n006】等)。
2 本件アプリの広告等について
証拠(甲6,7)によれば,次の事実が認められる。
(1) 被告作成の「Sound Insight(サウンドインサイト)」と題す る本件アプリを用いたシステムに関する広告(甲6。以下「本件広告」という。) には,次のとおり記載されていた。
ア (1)「映像・音声にのせて,情報配信」,(2)「動画・音楽などの音に人間には 聞こえない音波信号(音波ID)を埋め込み,テレビ・サイネージ・スピーカー等 から再生し,スマートフォンアプリで音波信号(音波ID)を受信する事により, 紐づいた情報をスマートフォン上に自動表示」,(3)(音波信号に紐づく情報を表示\nする手順の一つとして)「映像・音声に重畳した音波信号を発する」
イ (1)「音で情報を配信」,(2)「『Sound Insight』は,人には聞 こえない音波信号(音波ID)を使い,映像や音に合わせてアプリを連動できます。 利用者が信号音を意識することなくスマートフォン上に情報を表示します。」\n
ウ 「多言語で配信可能 日本語のほか,英語,中国語,台湾語,韓国語,ロシ ア語など多言語で情報配信できます。」
エ (使用例の一つとして)「バスの車内案内では 多国語で停留所情報や地域 の情報を案内できます。」
(2) 本件アプリのダウンロード用のウェブサイト(甲7。「本件ダウンロードサ イト」という。)には,次のとおり記載されていた。 「『サウンドインサイト』は,空港,駅,電車,バスなどの様々な場所に設置さ れた各種スピーカーから送信された音波を,専用アプリをインストールしたスマー トフォンで受信することで,関連する情報を自動で表示させることのできるサービ\nスです。・・・『サウンドインサイト』の活用により,・・・外国人観光客へ空港・駅などのアナウンスに関連する情報を多言語で情報提供する『言語支援用途』・・・などで活 用いただくことができます。」
3 争点1(本件アプリは本件発明1の技術的範囲に属するか)について
(1)争点1−1(本件アプリは構成要件1Bを充足するか)について\n
ア 構成要件1Bに対応する本件アプリの構\成に係る事実認定
(ア) 前記第2の2(5)ア(ア)のとおり,本件アプリは,スピーカー等の放音装置か ら,識別情報であるIDコードを表す音響IDを含む音響が放音されると,これを\n収音し,当該音響IDからIDコードを検出するものとしてスマートフォンを機能\nさせるものであるところ,前記2(1)のとおり,本件広告には,「映像・音声にのせ て」,「動画・音楽などの音」に埋め込んで,「映像・音声に重畳」させて音響I Dを放音することが記載されているほか,使用例の一つとして,バスの車内案内で は多言語で停留所情報等を提供することができることが記載されていること,同(2) のとおり,本件ダウンロードサイトには,本件アプリは,空港,駅,電車,バス等 に設置された放音装置から送信された音波を,スマートフォンで受信することで, 関連する情報を自動で表示させることのできるサービスを提供するものであること\nが記載されていることなどからすると,被告から音響IDの提供を受けた顧客にお いて,案内音声を識別するものとしてIDコードを使用し,これを案内音声ととも に放音装置から放音することは,本件アプリにつき想定されていた使用形態の一つ であるというべきである。そうすると,本件アプリは「案内音声と当該案内音声を 識別するIDコードを含む音響IDとを含有する音響を収音し,当該音響からID コードを抽出する情報抽出手段」(構成1b)を備えていると認めるのが相当であ\nる。
(イ) 被告は,本件アプリが構成1bを備えていることを否認し,その理由として,\n(1)被告サービスにおいて,被告は,放音される音響やIDコードの識別対象を決定 しておらず,これらを選択,決定しているのは顧客であって,いずれも「案内音声」 に限られるものではないこと,(2)本件アプリの利用場面の中で,最も多くの需要が 見込まれているのは商品説明の場合であるが,商品説明において,放音装置から音 声が発せられることは必須ではなく,かえって,音声が放音されるとスマートフォ ンに表示される情報を理解する妨げになることを主張する。\nしかしながら,被告の上記(1)の主張は,構成要件1B所定の音響が放音されない\n場合があることを指摘するにとどまるものであり,前記(ア)のとおり,本件広告に おいても,案内音声を収音する使用形態を回避させるような記述はなく,むしろ, そのような使用形態を想定したものとなっていたというべきであるから,前記認定 を覆すに足りないというべきである。 また,被告の上記(2)の主張について,本件アプリにつき最も多くの需要が見込ま れていたのが商品説明の場面であったとしても,被告において,そのような使用形 態に特化したものとして本件アプリを広告宣伝していたものでもなく,前記認定を 覆すに足りない。
イ 構成要件1Bに係るあてはめ\n
以上の認定を踏まえて検討すると,構成1bの「案内音声」は,本件発明1の\n「案内音声である再生対象音を表す音響信号」に対応し,構\成1bの「案内音声を 識別するIDコードを含む音響ID」は,本件発明1の「案内音声である再生対象 音の識別情報を含む変調信号とを含有する音響信号」に対応する。 そして,本件発明1は,コンピュータを所定の手段として機能させるプログラム\nに係る発明であり,構成要件1Bは,放音された所定の音響を収音した収音信号か\nら識別情報を抽出する情報抽出手段を規定するものであるから,構成要件1B所定\nの音響が放音された場合に,これを収音し,識別信号を抽出する手段としてコンピ ュータを機能させるプログラムであれば,これと異なる用途でコンピュータを機能\ させ得るとしても,又は音響が放音されない場面があるとしても,同構成要件を充\n足すると解すべきところ,本件アプリは,同所定の音響を収音し,当該音響からI Dコードを抽出するものとしてスマートフォンを機能させるものであるから,放音\nされる音響やIDコードの識別対象を選択しているのが顧客であり,音響が放音さ れない使用方法が選択され得るとしても,構成要件1Bを充足する。\n
(2)争点1−2(本件アプリは構成要件1Dを充足するか)について\n
ア 構成要件1Dの「関連情報」の言語の解釈\n
(ア) 構成要件1Dは,「関連情報」について,「前記案内音声である再生対象音\nの発音内容を表す関連情報であって,前記情報要求に含まれる識別情報に対応する\nとともに相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求の言語情報 で指定された言語に対応する関連情報」と規定しているから,「関連情報」の言語 は,相異なる言語に対応するものの中から情報要求の言語情報で指定された言語に 対応するものと解すべきである。
(イ) 被告は,「関連情報」は,第1言語で発音される案内音声の発音内容を第1 言語で表した文字列であると解すべきであるとし,その理由として,原告が本件訂\n正審判請求1の際に訂正事項が明細書の記載事項の範囲内であることを示す根拠と して本件明細書1の【0041】を挙げていたことを指摘するが,構成要件1Dは\n上記のとおりのものであるから,「関連情報」が案内音声の言語と同一のものであ ると解するのは文言上無理がある。また,同段落には,第2言語に翻訳することな く,第1言語の指定文字列のまま関連情報Qとする実施例が開示されているが,こ れは第1実施形態の変形例の一つ(態様1)にすぎず,原告が本件訂正審判請求1 の際に同段落を指摘したからといって,当該実施例の態様に限定して「関連情報」 の言語について解釈するのは相当でない。
イ 構成要件1Dに対応する本件アプリの構\成に係る事実認定
(ア) 前記第2の2(5)ア(ウ)及び同イのとおり,本件アプリは,管理サーバから, リクエスト情報に含まれるIDコード及びアプリ使用言語の情報に対応する情報の 所在を示すものとして送信されるアクセス先URLを受信するものとしてスマート フォンを機能させるものであり,管理サーバには,1個のIDコードに対応させて,\n6個までのアプリ使用言語に対応するURLを記憶することができるところ,前記 2(1)のとおり,本件広告には,日本語のほか,英語,中国語,台湾語,韓国語,ロ シア語など多言語で情報配信できることが記載されており,使用例の一つとして, バスの車内案内では多言語で停留所情報等を提供することができることが記載され ていること,同(2)のとおり,本件ダウンロードサイトには,外国人観光客に対して, 空港・駅等のアナウンスに関連する情報を多言語で情報提供する用途に用いること ができることが記載されていることなどからすると,顧客において,リクエスト情 報に含まれるIDコードに対応する案内音声の発音内容を表す情報について,当該\n案内音声とは異なる言語に対応する複数の情報を管理サーバに記憶させ,リクエス ト情報に含まれるアプリ使用言語に対応する情報をスマートフォンに送信するよう にすることは,本件アプリにつき想定されていた使用態様の一つであるというべき である。そうすると,本件アプリは,「前記案内音声の発音内容を表す関連情報で\nあって,前記リクエスト情報に含まれるIDコードに対応するとともに,6個まで のアプリ使用言語に対応する複数の情報のうち,前記リクエスト情報のアプリ使用 言語に対応する情報を受信する受信手段」(構成1d)を備えていると認めるのが\n相当である。
(イ) 被告は,本件アプリが構成1dを備えていることを否認し,その理由として,\n
(1)被告サービスにおいて,被告は,本件スマートフォンが受信する情報を決定して おらず,これを選択,決定しているのは顧客であって,構成要件1D所定のものに\n限られないこと,(2)被告は,本件アプリに係る実証実験において,本件アプリを用 いて「案内音声である再生対象音の発音内容」を関連情報として出力したことはな く,外国語に翻訳した内容を関連情報として出力したこともないこと,(3)被告は, 今後,顧客に対し,案内音声である再生対象音の発音内容を表す他国語の関連情報\nを提供することを禁ずる旨の約束をする意思があることを主張する。 しかしながら,被告の上記(1)の主張は,本件スマートフォンの受信する情報が構\n成要件1D所定の情報ではない場合があることを指摘するにとどまるものであり, 前記(ア)のとおり,本件広告及び本件ダウンロードサイトにおいても,案内音声の 発音内容を表し,リクエスト情報に含まれるアプリ使用言語に対応する情報を受信\nする使用形態を回避させるような記述はなく,むしろ,そのような使用形態を想定 したものとなっていたというべきであるから,被告の実証実験では同構成要件所定\nの情報を受信しなかったこと(上記(2)),被告が今後も同構成要件所定の使用態様\nで本件アプリを使用しないことを約束する意思を有していること(上記(3))を併せ 考慮しても,前記認定を覆すに足りないというべきである。
ウ 構成要件1Dに係るあてはめ\n
構成要件1Bにおいて規定するとおりにコンピュータを機能\させるものであれば, 同構成要件を充足するとの前記(1)イにおける検討と同様に,構成要件1D所定の情\n報を受信する手段としてコンピュータを機能させるプログラムであれば,受信する\n情報が同構成要件所定のものではない場面があるとしても,同構\成要件を充足する と解すべきところ,本件アプリは,構成1dを備えており,スマートフォンを「前\n記案内音声の発音内容を表す関連情報であって,前記リクエスト情報に含まれるI\nDコードに対応するとともに,6個までのアプリ使用言語に対応する複数の情報の うち,前記リクエスト情報のアプリ使用言語に対応する情報を受信する受信手段」 として機能させるものであるから,本件スマートフォンが受信する情報を選択して\nいるのが顧客であるとしても,構成要件1Dを充足する。\n
4 争点4(本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものか)につい て
(1) 争点4−1(本件発明1は乙2公報により進歩性を欠くか)について
・・・
(イ) 乙2発明1
前記(ア)によれば,乙2発明1は,放送中のテレビ番組に関連した情報を提供す る情報提供システムに用いられる携帯端末装置に関するものであり(【000 1】),テレビ番組の場面を識別する音声信号である音響IDを用い,ID解決サ ーバを介して当該場面に関連する情報を取得することを容易にした携帯端末装置等 を提供することを目的とするものであって(【0005】等),本件発明1に対応 する構成として,次の各構\成を有すると認められる。
「携帯端末装置を,
放送中のテレビ番組の放送音声と重畳して放音される,当該番組の場面を識別す る音声信号である音響IDを収音し,前記音響IDからIDコードにデコードする 情報抽出手段,
携帯端末装置に記憶されたIDコードをID解決サーバに送信する送信手段,
前記IDコード及び前記ID解決サーバが当該IDコードを受信した時刻に基づ いて当該ID解決サーバによりID/URL対応テーブルにおいて検索された対応 するURLを受信し,放送されたテレビ番組の場面に関連する情報を当該URLで 指示されるコンテンツサーバから受信する受信手段,及び,
前記受信手段が受信した情報を携帯端末装置上で表示する出力手段として機能\させるプログラム。」
(ウ) 乙2発明1と本件発明1の対比
乙2発明1と本件発明1を対比すると,これらは,次のaの点で一致し,少なく とも,次のbの点で相違すると認められる。
a 一致点
「コンピュータを,再生対象音を表す音響信号と識別情報を含む変調信号とを含有する音響信号に応じて放音された音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出手段,前記情報抽出手段が抽出した識別情報を含む情報要求を送信する送信手段,\n前記情報要求に含まれる識別情報に対応する関連情報を受信する受信手段,および, 前記受信手段が受信した関連情報を出力する出力手段として機能させるプログラム。」\n
b 相違点
(a) 相違点1−1(構成要件1B)\n
本件発明1では,「案内音声・・・を表す音響信号」と「当該案内音声である再生対\n象音の識別情報」が放音されるのに対し,乙2発明1では,「放送中のテレビ番組 の放送音声」と「当該番組に対応し,当該番組の場面を識別する音声信号である音 響ID」が放音される点
(b) 相違点1−2(構成要件1C)\n
本件発明1では,端末装置からサーバに送信される「情報要求」に含まれる情報 は,「識別情報」と「当該端末装置にて指定された言語を示す言語情報」であるの に対し,乙2発明1では,携帯端末装置からID解決サーバに送信される情報は 「IDコード」のみであり,「端末装置にて指定された言語を示す言語情報」は含 まれない点
(c) 相違点1−3(構成要件1D(1))
本件発明1では,端末装置が受信する「関連情報」は,「案内音声である再生対 象音の発音内容を表す」のに対し,乙2発明1では,「放送されたテレビ番組の場\n面」に関連する内容を表す点\n
(d) 相違点1−4(構成要件1D(2))
本件発明1では,端末装置が受信する「関連情報」は,「相異なる言語に対応す る複数の関連情報のうち,前記情報要求の言語情報で指定された言語に対応する関 連情報」であるのに対し,乙2発明1では,携帯端末装置がこれに対応する情報を 受信しない点
(エ) 相違点に関する被告の主張について
a 相違点1−1(構成要件1B)\n
被告は,乙2発明1の「IDコード」は,番組と同時に,番組の放送音声という 「再生対象音」も識別しているから,「再生対象音の識別情報」が放音される点で は本件発明1と相違しない旨主張する。 しかしながら,乙2公報に「この音響IDは,放送中の番組に対応するものであ り,放送音声に重畳されて放音される。」(【0014】)と記載されており,I D/URL対応テーブルを示す図4においても,受信時間帯に対応する番組の「シ ーン」が特定されていること(【0025】)などからすると,乙2発明1の「ID コード」は,放送中の番組に対応し,当該番組の場面を識別する音声信号であって, 番組の放送音声を識別するものではないから,本件発明1の「再生対象音の識別情 報」に対応する構成を有するものとは認められない。\n
b 相違点1−2(構成要件1C)\n
被告は,乙2発明1では,ユーザがボタンスイッチを押した時刻は「端末装置に て指定された・・・情報」に該当するから,「端末装置にて指定された・・・情報」が「言 語を示す言語情報」であるか「ボタンスイッチの操作タイミングを示す情報」であ るかの点でのみ本件発明1と相違する旨主張する。 しかしながら,乙2公報に「番組を視聴しているユーザ6は,番組を視聴し興味 ある場面が映し出されると,スマートフォン2を操作する(たとえばボタンを押下 する)。このときの操作により,スマートフォン2は記憶していたIDコードをI D解決サーバ4に送信する。」(【0014】)と記載されていることなどからする と,乙2発明1において,携帯端末装置から送信される情報はIDコードのみであ り,ID解決サーバは当該IDコード及び受信時刻で対応するURLを検索するも のであるから,本件発明1の「端末装置にて指定された・・・情報」に対応する構成を\n有するとは認められないというべきである。
c 相違点1−3(構成要件1D(1))
被告は,乙2発明1で,携帯端末装置が受信する情報は,番組の特定の場面に対 応する放送音声に関連するものであるから,端末装置が受信する「関連情報」が 「再生対象音」である点では本件発明1と相違しない旨主張する。 しかしながら,乙2公報に「この対応するURLは,ユーザ6がスマートフォン 2を操作したときに放送されていた(テレビ1の画面に映し出されていた,または 音声で再生されていた)場面に関連する情報を提供するインターネットサイトのU RLである。」(【0014】)と記載されていることなどからすると,乙2発明1 において,携帯端末装置が受信する情報は,放送されたテレビ番組の場面に関連す るものであり,放送音声に関連する情報であるとは認められない。
d 相違点1−4(構成要件1D(2))
被告は,乙2発明1では,番組中の相異なる場面に対応する「複数の関連情報」 が存在し,そのうち選ばれた情報を受信しているから,「関連情報」が対応してい るのが「言語」であるか「場面」であるかの点でのみ本件発明1と相違する旨主張 する。 しかしながら,乙2発明1において,携帯端末装置が受信する放送中の番組の場 面に関する情報は「相異なる言語に対応する」ものでもないから,ID解決サーバ に番組内の相異なる場面に対応する情報が複数記憶されていたとしても,これを構\n成要件1Dの「相異なる言語に対応する複数の関連情報」との構成に対応するもの\nと認めることはできない。
イ 乙4発明の内容等に係る事実認定
・・・
(イ) 乙4発明の概要 前記(ア)によれば,乙4公報には,概要,次のとおりの内容の乙4発明が開示さ れていると認められる。 すなわち,乙4発明は,利用者が携帯する携帯型音声再生受信器を用いた美術館 や博物館等の展示物に係る音声ガイドサービスに関するものであり(【000 1】),(1)電波によって情報を伝達する従来技術によると,対象物以外のガイド音 声を受信して利用者に誤った情報を提供するおそれがあったこと(【0005】) を踏まえ,展示物に固有のIDを赤外線等の無線通信波によって発信するID発信 機を展示物ごとに一定の間隔で設置し,利用者が携帯する携帯受信器が発信域に入 ると上記IDを受信し,展示物の音声ガイドが自動的に再生される構成を採用する\nことにより,情報提供するIDの受信範囲を限定することが容易になり,隣接する 対象展示物との混信を回避した音声ガイドシステムを可能とするという作用効果を\n奏するものであり(【0008】ないし【0010】,【0014】),また,(2) そのシステムを複数の言語に対応させようとすると,多数のチャンネルの割当てが 必要となり,その選択操作を利用者が行う必要があったこと(【0007】)を踏 まえ,多言語に翻訳された音声ガイドのデータを携帯受信器に蓄積し,その中から 再生する言語を選択するという構成を採用することにより,多くの外国人利用者に\nも携帯受信器を操作することなくガイド音声を提供することができるという作用効 果を奏するものである(【0012】,【0020】)。
ウ 乙5発明の内容等に係る事実認定
・・・
(イ) 乙5発明の概要 前記(ア)によれば,乙5公報には,概要,次のとおりの内容の乙5発明が開示さ れていると認められる。 すなわち,乙5発明は,公共の場所等に掲載された文書等の掲載物を様々な言語 に翻訳して提供する情報提供装置等に関するものであり(【0001】),文書の 内容を様々な言語で利用者に正しく提供することを主たる課題とし(【000 6】),2次元コードと複数の言語に対応する言語コードをその内容として含むコ ード画像をユーザ端末装置によって読み取り,ユーザにおいて所望の言語を選択す るなどして,インターネットを介して,文書等の掲載物の翻訳ファイルにアクセス というものである(【0015】,【0025】,【0035】,【0038】)。
エ 容易想到性についての判断
被告は,(1)乙2公報は,音響IDとインターネットを用いて,放音装置から放音 された音響IDによって識別される識別対象の情報に対し,これと関連する任意の 関連情報をサーバから端末装置に供給できる乙2技術を開示しているところ,本件 発明1も乙2技術を採用するものであり,相違点1−1ないし同1−4は,識別対 象,複数の関連情報の選択条件,関連情報の内容に係る相違にすぎず,当業者が適 宜設定できるものである旨主張するとともに,(2)当業者は,乙2技術を乙4課題の 解決に応用して,相違点1−1ないし同1−4に係る本件発明1の構成を容易に想\n到し得た旨主張する。 しかしながら,まず,被告の上記(1)の主張については,前記1(2)認定のとおり, 本件発明1は,コンピュータを,(i)放音される「案内音声である再生対象音」と 「当該案内音声である再生対象音の識別情報」を含む音響を収音して識別情報を抽 出する情報抽出手段,(ii)サーバに対し,抽出した識別情報とともに「端末装置に て指定された言語を示す言語情報」を含む情報要求を送信する送信手段,(iii)「前 記案内音声である再生対象音の発音内容を表」し,情報要求に含まれる識別情報に\n対応するとともに「相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求 の言語情報で指定された言語に対応する関連情報」を受信する受信手段,(iV)受信 手段が受信した関連情報を出力する出力手段として機能させるプログラムの発明で\nあり,乙2公報等に音響IDとインターネットを利用するという点で本件発明1と 同様の構成を有する情報提供技術が開示されていたとしても,その手順や方法を具\n体的に特定し,使用言語が相違する多様な利用者が理解可能な関連情報を提供でき\nるという効果を奏するものとした点において技術的意義が認められるものであるか ら,相違点1−1ないし同1−4に係る本件発明1の構成が当業者において適宜設\n定できる事項であるということはできない。 また,被告の上記(2)の主張については,前記イのとおり,乙4公報に,発明が解 決しようとする課題の一つとして,システムを複数の言語に対応させること(以下, 単に「乙4発明の課題」という。)が記載されているものの,以下のとおり,乙2 発明1を乙4発明の課題に組み合わせる動機付けは認められず,仮に,乙4発明の 課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照するなどして乙2発明1の構\成に変更を加え たとしても相違点1−1ないし同1−4に係る本件発明1の構成に到達しないから,\n採用することができない。
(ア) 乙2発明1を乙4発明の課題を組み合わせる動機付け
a 前記のとおり,乙2発明1は,放送中のテレビ番組に関連した情報を提供す る情報提供システムに用いられる携帯端末装置に関するものであり,放送中のテレ ビ番組の場面を識別する音声信号である音響IDを用い,ID解決サーバを介して 当該場面に関連する情報を取得するものであるのに対し,前記イ(イ)のとおり,乙 4発明は,利用者が携帯する携帯型音声再生受信器を用いた美術館や博物館等の展 示物に係る音声ガイドサービスに関するものであり,展示物に固有のIDを赤外線 等の無線通信波によって発信し,携帯受信器が発信域に入ると上記IDを受信し, 展示物の音声ガイドが自動的に再生されるものであり,サーバに接続してインター ネットを介して情報を取得する構成を有しないから,両発明は,想定される使用場\n面や発明の基本的な構成が異なっており,乙2発明1を乙4発明の課題に組み合わ\nせる動機付けは認められない。
b 被告は,(1)乙4発明は,放音装置を利用した情報提供技術という乙2技術と 同じ技術分野に属するものであること,(2)乙2技術は汎用性の高い技術であり, 様々な放音装置を含むシステムに利用されていたこと(乙11ないし13),(3)端 末装置とサーバとの通信システムを利用する情報提供技術は周知のものであったこ と(乙2,5,6,8,11ないし13等)などによれば,当業者において,乙2 技術を乙4課題の解決に応用する動機付けがある旨主張する。 しかしながら,乙2発明1と乙4発明がいずれも放音装置を利用した情報提供技 術であるという限りで技術分野に共通性が認められ,また,本件優先日1当時,音 響IDとインターネットを利用し,又は端末装置とサーバとの通信システムを利用 する情報提供技術が乙2公報以外の公開特許公報に開示されていたとしても,いず れも乙4発明とは想定される使用場面や発明の基本的な構成が異なることは前記の\nとおりであり,乙4発明の課題の解決のみを取り上げて乙2発明1を適用する動機 付けがあると認めるに足りない。
(イ) 乙2発明1に対する乙4発明等の適用
また,以下のとおり,乙4発明の課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照するなど\nして乙2発明1の構成に変更を加えたとしても,本件発明1の構\成に到達しない。
a 相違点1−1(構成要件1B)\n
(a) 前記のとおり,乙4発明は,展示物ごとに設置されたID発信機から赤外線 等の無線通信波によって展示物に固有のIDが発信されるものであり,「案内音声 ・・・を表す音響信号」を放音するものではなく,「当該案内音声である再生対象音の\n識別情報」を含む音響信号を放音するものでもないから,乙4発明の構成を参照し\nて乙2発明1の構成に変更を加えたとしても,相違点1−1に係る本件発明1の構\ 成に到達しない。
(b) 被告は,乙4発明の音声ガイドは「案内音声」に相当するから,「案内音声」 を識別する構成を採用することは容易であった旨主張するが,上記のとおり,乙4\n発明のIDは展示物を識別するものであり,当該展示物に係る音声ガイドを識別す るものではないから,乙4発明は「案内音声」を識別する構成を開示するものでは\nない。
b 相違点1−2(構成要件1C)\n
前記のとおり,乙4発明は,サーバに接続してインターネットを介して情報を取 得するという構成を有しないものであり,端末装置からサーバに「識別情報」と\n「当該端末装置にて指定された言語を示す言語情報」が送信されることはないから, 乙4発明の課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照して乙2発明1の構\成に変更を加 えることによって,相違点1−2に係る本件発明1の構成に到達することはない。\n
c 相違点1−3(構成要件1D(1))
前記のとおり,乙4発明は,サーバに接続してインターネットを介して情報を取 得するという構成を有しておらず,IDによって識別される展示物のガイド音声を\n再生するものであって,端末装置が「案内音声である再生対象音の発音内容を表す」\n情報を受信することはないから,乙4発明の課題を踏まえ,乙4発明の構成を参照\nして乙2発明1の構成に変更を加えることによって,相違点1−3に係る本件発明\n1の構成に到達することはない。\n
d 相違点1−4(構成要件1D(2))
前記のとおり,乙4発明は,多言語に翻訳された音声ガイドのデータを携帯受信 器に蓄積し,その中から再生する言語を選択することによって,IDによって識別 される展示物のガイド音声を所定の言語で再生するという構成を有するものの,サ\nーバに接続してインターネットを介して情報を取得するという構成を有していない\nから,端末装置が「相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち,前記情報要求 の言語情報で指定された言語に対応する関連情報」を受信することはなく,乙4発 明の構成を参照して乙2発明1の構\成に変更を加えることによって,相違点1−4 に係る本件発明1の構成に到達することはない。\n
・・・
5 争点6(差止めの必要性は認められるか)について
被告は,本件アプリについて差止めの必要性は認められないとし,その理由とし て,(1)本件口頭弁論終結時点において,本件アプリに係るサービスは実用化されて いなかったこと,(2)被告は,平成30年5月以降,本件アプリの配信を中止し,多 言語で情報配信を行う機能を取り除いた本件新アプリを配信しており,本件訴訟の\n結果によって本件アプリに係る事業を再開するか否かを決定する予定であること,\n(3)被告は,今後,顧客に対し,案内音声である再生対象音の発音内容を表す他国語\nの関連情報を提供することを禁ずる旨の約束や,案内音声である第1言語の再生対 象音が表す発音内容を第2言語で表\現した情報を提供することを禁ずる旨の約束を する意思があることを主張する。 しかしながら,前記認定のとおり,本件アプリは,本件発明1の技術的範囲に属 し,本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものとは認められないから, 前記第2の2(4)のとおり,被告は,少なくとも,平成29年5月頃から平成30年 6月頃まで,本件アプリを作成し,譲渡等及び譲渡等の申出をし,平成28年6月\nから平成29年3月までの間に3回にわたり本件アプリを使用することによって本 件特許権1を侵害していたものである。 これらに加えて,被告が本件訴訟において本件アプリが本件発明1の技術的範囲 に属することを否認して争い,本件特許1について特許無効審判により無効にされ るべきであると主張していること,弁論の全趣旨によれば,被告は,現在も,ウェ ブサイトに本件アプリの説明や広告を掲載していると認められ,被告が本件アプリ の作成等を再開することが物理的に不可能な状況にあるとは認められないことなど\nも考慮すると,被告は,今後,本件特許権1を侵害するおそれがあるものというべ きであるから,原告が被告に対し,その侵害の予防のため,本件アプリの作成等の\n差止を求める必要性は認められるものというべきである。

◆判決本文

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平成31(行ケ)10021  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和2年1月29日  知的財産高等裁判所

 マネースクエアHDの特許権について、訂正を認めないとの審決がなされましたが、知財高裁はこれを取り消しました。被告は外為オンラインです。

(2) 訂正事項1−1ないし1−3の特許法126条5項の要件の適合性の判 断の誤りについて
 原告は,本件審決が,本件訂正のうち,本件訂正前の請求項1の記載を本 件訂正後の請求項1に訂正する訂正事項1−1(請求項1の記載を引用する 請求項2,請求項2の記載を引用する請求項3ないし5,及び請求項1ない し5の記載を引用する請求項7も同様に訂正),本件訂正前の請求項2の記 載を本件訂正後の請求項2に訂正する訂正事項1−2(請求項2の記載を引 用する請求項3ないし5,及び請求項2ないし5の記載を引用する請求項7 も同様に訂正)及び本件訂正前の請求項6の記載を本件訂正後の請求項6に 訂正する訂正事項1−3は,本件訂正前の「売買取引開始時に,成行注文を 行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文を有効とし」との事項 について,当該事項が「前記注文情報生成手段」によるものであり,「該成 行注文を決済するための指値注文」だけでなく,「前記成行注文を決済する ための逆指値注文」についても有効とするとの事項を追加したものであるが, 当該訂正事項については,願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の 範囲内においてしたものとはいえず,新規事項を追加するものであるから, 本件訂正は,特許法134条の2第9項で準用する同法126条5項の規定 に適合しないと判断したのは誤りである旨主張するので,以下において判断 する。
・・・
以上によれば,本件明細書には,「本発明」の「一の実施形態」とし て,「注文情報生成手段」である「注文情報生成部16」が,「第一の 注文情報群」の生成をする際に,「第一の注文情報群」に含まれる「第 一注文」及び「第二注文」についてそれぞれ有効及び無効の設定を行い, 「約定情報生成手段」である「約定情報生成部14」が「第一の注文情 報群」に含まれる「第一注文51a」に基づく「成行注文」の約定処理 を行った時点で,その「成行注文」を決済するための「第二注文」(指 値注文)及び「逆指値注文」を「無効」から「有効」に変更する処理を 行うことの開示があることが認められる。 そうすると,本件明細書には,「注文情報生成手段」(「注文情報生 成部16」)が,「第一の注文情報群」の生成をする際に,「第一の注 文情報群」に含まれる注文情報の有効/無効の設定を行う技術的事項の 開示があるものと認められる。
また,「本発明」の上記実施形態においては,「注文情報生成手段」 (「注文情報生成部16」)が,「第一の注文情報群」に含まれる「第 一注文51a」の「成行注文」を決済するための「第二注文」(指値注 文)及び「逆指値注文」を「無効」から「有効」に変更する処理は,「約 定情報生成手段」(「約定情報生成部14」)によって行われ,「注文 情報生成手段」(「注文情報生成部16」)が行うものではないが,本 件明細書には,「上記実施形態は本発明の例示であり,本発明が上記実 施の形態に限定されることを意味するものではないことは,いうまでも ない。」(【0076】)との記載があることに照らすと,「本発明」 は,「第一注文」の「成行注文」を決済するための「第二注文」(指値 注文)及び「逆指値注文」を「無効」から「有効」に変更する処理は, 「約定情報生成手段」(「約定情報生成部14」)が行う形態のものに 限定されないことを理解できる。
イ 本件訂正後の特許請求の範囲(請求項1)には,・・・
上記記載によれば,訂正事項1−1により,本件訂正前の「売買取引開 始時に,成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文 を有効とし」との事項について,「該成行注文を決済するための指値注文」 だけでなく,「前記成行注文を決済するための逆指値注文」についても有 効とするとの事項を追加したものであり,本件訂正発明1においては,「注 文情報生成手段」が「売買取引開始時」に「成行注文を行うとともに,該 成行注文を決済するための指値注文および前記成行注文を決済するための 逆指値注文を有効とし」とする処理を行うことを理解できる。 しかるところ,前記ア認定のとおり,(1)本件訂正前の請求項1には,「注 文情報生成手段」が「売買取引開始時」に「成行注文を行うとともに,該 成行注文を決済するための指値注文を有効とし」との処理を行うことの記 載があり,本件明細書の【0009】には,本件訂正前の請求項1と同内 容の記載があること,(2)本件明細書には,「注文情報生成手段」(「注文 情報生成部16」)が,「第一の注文情報群」の生成をする際に,「第一 の注文情報群」に含まれる注文情報の有効/無効の設定を行う技術的事項 の開示があること,(3)本件明細書に記載された「本発明」の「一の実施形 態」では,「第一の注文情報群」に含まれる「第一注文51a」の「成行 注文」を決済するための「第二注文」(指値注文)及び「逆指値注文」を 「無効」から「有効」に変更する処理は,「約定情報生成手段」(「約定 情報生成部14」)によって行われ,「注文情報生成手段」(「注文情報 生成部16」)が行うものではないが,本件明細書の【0076】の記載 に照らすと,「本発明」は,「第一注文」の「成行注文」を決済するため の「第二注文」(指値注文)及び「逆指値注文」を「無効」から「有効」 に変更する処理は,「約定情報生成手段」(「約定情報生成部14」)が 行う形態のものに限定されないことを理解できることからすると,本件訂 正後の請求項1の「前記注文情報生成手段」は「売買取引開始時に,成行 注文を行うとともに,該成行注文を決済するための指値注文および前記成 行注文を決済するための逆指値注文を有効とし」との構成は,本件出願の\n願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面すべての記載事項を総合 することにより導かれる技術的事項の関係において,新たな技術的事項を 導入するものではないものと認められるから,訂正事項1−1は,本件出 願の願書に添付した明細書等に記載された事項の範囲内においてしたもの であって,新規事項の追加に当たらないものと認められる。 したがって,訂正事項1−1は特許法126条5項の要件に適合するも のと認められる。同様に,訂正事項1−2及び1−3は同項の要件に適合 するものと認められる。
ウ これに対し,被告は,・・・
訂正事項1−1に係る本件訂正は,本件出願の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものではなく,新たな技術的事項を導入する ものであるから,新規事項の追加に当たる旨主張する。
 しかしながら,前記ア(ア)認定のとおり,本件訂正前の請求項1の記載 から,本件発明1においては,「注文情報生成手段」が主体となって「売 買取引開始時」に「成行注文を行うとともに,該成行注文を決済するため の指値注文を有効とし」との処理を行うことを理解できるものであり,ま た,本件訂正前の請求項1に「注文情報生成手段」が上記処理を行うこと の記載があるかどうかの問題とその記載があることを前提とした場合にサ ポート要件に違反することになるかどうかの問題とは,別異の問題である から,上記(1)の点は採用することができない。 また,前記イ認定のとおり,本件明細書には,「注文情報生成手段」(「注 文情報生成部16」)が,「第一の注文情報群」の生成をする際に,「第 一の注文情報群」に含まれる注文情報の有効/無効の設定を行う技術的事 項の開示があること及び本件明細書の【0076】の記載に照らすと,「本 発明」は,「第一注文」の「成行注文」を決済するための「第二注文」(指 値注文)及び「逆指値注文」を「無効」から「有効」に変更する処理は, 「約定情報生成手段」(「約定情報生成部14」)が行う形態のものに限 定されないことを理解できるから,上記(2)の点は採用することができない。 したがって,訂正事項1−1に係る本件訂正は,本件出願の願書に添付 した明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではなく,新規事項の追 加に当たるとの被告の主張は理由がない。
(3) 小括
以上のとおり,訂正事項1−1ないし1−3は特許法126条5項の要件 に適合するものと認められるから,訂正事項1−1ないし1−3が同項に適 合しないことを理由に本件訂正は認められないとした本件審決の判断は誤り である。かかる判断の誤りは,無効理由の存否の審理の対象となる発明の要 旨の認定の誤りに帰することになるから,審決の結論に影響を及ぼすもので ある。

◆判決本文

本件の対象特許とは、下記の侵害事件の対象特許です。

◆平成29(ネ)10027

◆平成27(ワ)4461

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平成30(ワ)4901  不当利得返還請求事件  特許権  民事訴訟 令和2年1月23日  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属するものの、特29-2の規定により権利行使不能と判断されました。\n

 以上より,乙12−1発明は,1つ又は複数の画像をカメラやネットワーク を通じて入手し,1つ又は複数の電話番号に対応付けてこれらの画像を記憶し,当 該電話番号から着呼があったときに,これらの画像を切り替えて表示させ,これに\nより,発信者を識別しやすくするという効果を有する,無線携帯端末に関する発明 であるということができる。
(3) 本件発明1と乙12−1発明との対比
ア 乙12−1発明に係る無線携帯端末において,1つの電話番号に2つの画像 を対応付けて記憶させた場合,当該電話番号から着呼があった際,2つの画像が, 時刻や着呼の回数等による一定の規則性に従って表示される。このとき,特定の着\n呼時に表示されない方の画像については,当該電話番号との対応関係を維持したま\nま,画像メモリに記憶され続けており,「表示選択がOFF」にされているといえ\nる(前記2(3)参照。)。乙12−1発明における「メモリ」及び「画像メモリ」は, それぞれ本件発明1における「電話帳データメモリ」及び「画像データメモリ」に 対応する。
イ そうすると,本件発明1と乙12−1発明との間には,(1)本件発明において は,画像をメモリ番号に対応付けているが,乙12発明においては,画像を電話番 号に対応付けている点(相違点(1)),(2)本件発明1においては,新たに入手・記憶 された第2画像が優先的に表示されるが,乙12発明においては,新たに入手・記\n憶された画像が優先的に表示されるか否か不明である点(相違点(2)),という相違 点が存するとも考えられるため,これらの相違点が設計上の微差にすぎないか,実 質的な相違点であるかについて,以下検討する。
ウ 相違点(1)について
本件特許1の出願当時,携帯電話やハンドフリー電話の分野においては,携帯電 話等の端末において,特定の電話番号をメモリ番号に対応付けて記憶させることは, 複数の名前や電話番号を含む情報を整理するなどの目的に広く使われる,周知の技 術であったことが認められる(乙13ないし15)。 そうすると,画像を,ある電話番号と対応付けられたメモリ番号に対応付けて記 憶させるか,それとも,直接,当該電話番号と対応付けて記憶させるかという違い は,設計上の微差にすぎないというべきである。
エ 相違点(2)について
乙12−1発明において,ある特定の電話番号に対して既に1つ又は複数の画像 が対応付けられて記憶されている場合において,新たな画像をカメラやネットワー クを通じて入手し,当該電話番号に対応付けて記憶させたとして,当該電話番号か ら着呼があった際,当然に,その新たな画像が優先的に着信画面に表示されるよう\nになるということはできない。 しかし,乙12の段落【0032】の記載(「複数の画像を一つの電話番号と対 応させ,着呼毎に変えたり,時間によって変えたり,着呼時に順番に出したりする こともできる。」)によれば,乙12−1発明は,複数の画像を一つの電話番号に 対応付ける機能部を有しており,これを使用して,当該電話番号の着呼に応じて,\n複数の画像から一つの画像を選択しており,かかる選択を,着呼毎に変更したり, 時間に応じて変更したり,一回の着呼に対して複数の画像を順番に変更したりする ことにより,様々な表示を行っているものと認められる。\nしたがって,乙12−1発明において,電話番号と対応する複数の画像からどの 画像を選択するかということは任意に設定することが可能であり,複数の画像のう\nち,新たに入手した画像を優先的に選択することや,上記機能部において,これま\nで記憶されていた複数の画像のうち,表示しない画像と当該電話番号との対応付け\nを削除するか否かということは,必要に応じて,当業者が適宜選択し得る設計的事 項である。また,かかる選択をしたことに伴う顕著な効果も認められない。 よって,乙12−1発明において,複数の画像のうち,新たに入手した画像を選択 して表示し,これまで記憶されていた複数の画像と当該電話番号との対応付けを削\n除せずに,これまで記憶されていた複数の画像と当該電話番号との対応関係を維持 することは,当業者が適宜選択し得る設計的事項であるといえ,奏せられる効果に 著しい差も認められない。したがって,相違点(2)についても,設計上の微差にすぎ ないということができる。
(4) まとめ
以上より,本件発明1は,実質的に,乙12−1発明と同一であるから,特許法 29条の2により特許を受けることができないものであって,同法123条1項2 号の無効理由があり,特許無効審判により無効とされるべきものと認められる。

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平成30(ワ)8302  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年11月14日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、特許侵害事件です。原告(会社)の本人訴訟です。東京地裁47部は、構成要件Fを充足しないと判断しました。

 前記(1)の記載によると,次のとおり認められる。
ア 本件各発明以前にも,コンピュータシステムにおけるシステム利用者の 入力行為を支援する従来技術としては,マウスを右クリックすることによ り,マウスが指し示している画面上のポインタ位置に応じた操作コマンド のメニューが表示される「コンテキストメニュー」や,画面上でマウスポ\nインタがウィンドウの枠やファイルのアイコンなどに重なった状態でマ ウスの左ボタンを押し,そのままの状態でマウスを移動させ,別の場所で マウスの左ボタンを離すマウス操作である「ドラッグ&ドロップ」などが あった。しかして,「コンテキストメニュー」には,マウスの左クリックを 行うまではメニューが画面に表示され続け,また,利用者が間違って右ク\nリックを押してしまった場合には,利用者の意に反して画面上に表示され\nてしまうので不便であるなどの課題があり,また,「ドラッグ&ドロップ」 には,継続的な動作,例えば,移動させる位置を決めないで徐々に画面を スクロールさせていくような動作に適用させるのが難しいという課題が あったところである(段落【0001】〜【0005】)。
イ 本件各発明は,このような課題を解決するため,入力手段における命令 ボタンが利用者によって押されてから,離されるまでの間に,ポインタの 位置を移動させる命令を受信すると,画像データである操作メニュー情報 を出力手段に表示させ,入力手段における命令ボタンが利用者によって離\nされると,出力手段に表示されていた操作メニュー情報の表\示を終了させ ることにより,普段は画面上に操作メニュー情報を表示させずに,利用者\nにとって必要な場合に簡便に表示させることを可能\にするという構成を\n採用したものといえる(段落【0022】,【0023】,【0051】)。そ して,スムーズな画面操作を可能とするため,操作メニュー情報が表\示さ れている状態において,これをポインタで指定した場合,すなわち,実行 される命令結果を利用者が理解できるように出力手段に表示した画像デ\nータである操作メニュー情報が占める座標位置の範囲にポインタの座標 位置が入った場合に,「操作メニュー情報にポインタが指定された場合に 実行される命令」として特定された,例えば,出力手段に表示される画面\n(ビュー)をスクロールさせるような命令など,コンピュータシステムに 対する命令が実行され,操作メニュー情報が占める座標位置の範囲に,ポ インタの座標位置が入らなくなるまで当該実行を継続するという構成を\n採用したものといえる(段落【0009】,【0012】,【0013】,【0 016】,【0023】,【0051】)。
ウ 以上のような,本件各特許請求の範囲の記載文言及び本件明細書の各記 載によれば,本件各発明は,コンピュータシステムにおけるシステム利用 者の入力行為を支援するため,「コンテキストメニュー」や「ドラッグ&ド ロップ」における,操作メニュー情報が利用者に意に反して表示されるこ\nとに関わる課題や,移動先を決めないで画面をスクロールさせるような継 続的な動作に関わる課題を解決すべく,操作メニュー情報については,普 段は画面上に表示させずに,利用者にとって必要な場合に簡便に表\示させ るという構成を採用し,その上で,物理的に操作メニュー情報が占める座\n標位置の範囲にポインタの座標位置が入っているときに,コンピュータシ ステムに対する命令が実行されるようにして,スムーズな画面操作が可能\nとなるという構成を採用したものといえる。このような構\成を採用した以 上,構成要件B,E,F及びGの「操作メニュー情報」とは,利用者にと\nって,その表示,非表\示を明確に認識できることが前提となっており,物 理的に操作メニュー情報が占める座標位置の範囲が明確になっている必 要があることは明らかである。 そうすると,構成要件B,E,F及びGの「操作メニュー情報」につい\nては,利用者にとっての,視覚的な見地からの,命令内容の表示や実行の\n簡便性を実現する構成を意味するものであるものといえ,そのような見地\nに照らし,同「操作メニュー情報」とは,利用者が,その表示の有無を視\n覚的に認識でき,その表示内容から,所望の命令を実行した結果について\nも理解できるような,画像データである必要があるものと解するのが相当 である。
そして,構成要件Fの,(1)「操作メニュー情報がポインタにより指定さ れる」と「操作メニュー情報に関連付いている命令」を「実行」する,及 び(2)「操作メニュー情報がポインタにより指定されなくなるまで当該実行 を継続する」との文言については,画像データである操作メニュー情報の 座標位置が利用者に視覚的に認識できることを前提に,(1)画面上に表示さ\nれた画像データである操作メニュー情報が占める座標位置の範囲に,ポイ ンタの座標位置が入った場合に,特定の命令を実行し,(2)操作メニュー情 報が占める座標位置の範囲に,ポインタの座標位置が入らなくなるまで当 該実行が継続され,入らなくなった場合には,当該実行が継続されないこ とを意味し,かかる動作状況を満たす命令であることをもって,「操作メニ ューに関連付いている命令」に当たるものと解するのが相当である。
(3) 「操作メニュー情報」(構成要件B,E,F,G)の充足性\n
ア 以上を前提に,まず,「操作メニュー情報」(構成要件B,E,F,G)\nの充足性につき検討するに,被告製品の構成のエ(イ)ないし(エ)及び\nオ(イ)ないし(エ)のとおり,本件ホームアプリにおける上ページ一部 表示及び下ページ一部表\示(以下「上ページ一部表示等」という。)は,画\n像データであり,その内容や表示位置からすれば,これを見た利用者は上\nページ又は下ページにスクロールする結果を理解できるといえるから,利 用者が,その表示の有無を視覚的に認識でき,その表\示内容から,所望の 命令を実行した結果についても理解できるような,画像データに当たるも のというべきであって,「操作メニュー情報」を充足するものと認められる。 イ これに対し,被告は,上ページ一部表示等は,単にホーム画面が縮小表\ 示されることによって当該ホーム画面の隣のホーム画面が見えているに すぎず,実行される命令を表す文字も,矢印表\示等何らかの操作ができる ことを示す絵や記号も表示されておらず,表\示自体から上ページ又は下ペ ージにスクロールするといった実行される命令結果を理解できる画像で はない旨を主張する。 しかし,被告製品の構成エ(イ)及びオ(イ)のとおり,上ページ一部\n表示等が表\示されるのは,利用者が移動させたいショートカットアイコン をロングタッチして,ドラッグ操作をして同アイコンを移動させる等して, 縮小モードになった状態であることからすれば,同アイコンを移動したい 利用者が,1つ上のページ又は1つ下のページの一部を表示した画像であ\nる上ページ一部表示等を見て,上ぺージ又は下ページが存在することのみ\nならず,上ページ一部表示等までドラッグすれば,上ページ又は下ページ\nに画面をスクロールさせることができるものと理解することも可能とい\nうべきである。 以上によれば,被告の上記主張は採用することができない。
ウ 他方,原告は,上ページ一部表示等のみならず,「左上領域」「右上領域」\n又は「左下領域」「右下領域」(以下「左上領域等」という。)も「操作メニ ュー情報」に該当する旨を主張する。 しかし,左上領域等は,被告製品の構成エ(ウ)及びオ(ウ)のとおり,\n特定の座標位置で囲まれた領域にすぎず,利用者が,その表示の有無を視\n覚的に認識でき,その表示内容から,所望の命令を実行した結果について\nも理解できるような,画像データに当たるものとは認められない。前記ア の説示に照らしても,左上領域等が,「操作メニュー情報」に当たるとは認 められず,同説示のとおり,「操作メニュー情報」に該当するのは,上ペー ジ一部表示等に限られるというべきである。\n以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。
(4) 「操作メニュー情報がポインタにより指定される」と「操作メニュー情報 に関連付いている命令」を「実行」する,及び「操作メニュー情報がポイン タにより指定されなくなるまで当該実行を継続する」(構成要件F)の充足性\n ア 被告製品においては,被告製品の構成のエ(ウ)(エ)及びオ(ウ)(エ)\nのとおり,左上領域等の占める座標位置の範囲に,原告が「ポインタの座 標位置」に当たると主張(前記第2の3(2)[原告の主張]イ)する「当該 ショートカットアイコンをドラッグしている指等のタッチパネル上の位 置」又は「当該ショートカットアイコンをドラッグしているマウスカーソ\nルの先端の位置」の座標位置(以下「指等及びマウスカーソルの先端の座\n標位置」という。)が入った場合に「上ページスクロール1」,「上ページス クロール2」,「下ページスクロール1」,「下ページスクロール2」を生じ させる命令(以下,併せて「ページスクロール命令」という。)が実行され, 左上領域等の占める座標位置の範囲に指等及びマウスカーソルの先端の\n座標位置が入らなくなるまでページスクロール命令が継続され,入らなく なった場合には当該実行が継続されないことが認められる。
しかし,前記(3)のとおり,被告製品において,「操作メニュー情報」に 該当するのは上ページ一部表示等であるところ,証拠(甲19,乙11〜\n13)によれば,上ページ一部表示等が占める座標位置の範囲と左上領域\n等の占める座標位置の範囲とは必ずしも一致せず,上ページ一部表示等は,\n左上領域等と一部重なる座標位置に表示されているにすぎないことが認\nめられる。このため,(1)上ページ一部表示等が占める座標位置の範囲に,\n指等及びマウスカーソルの先端の座標位置が入っていても,その位置が左\n上領域等の占める座標位置の範囲外であればページスクロール命令が実 行されず,また,(2)上ページ一部表示等が占める座標位置の範囲に,指等\n及びマウスカーソルの先端の座標位置が入っていなくとも,その位置が左\n上領域等の占める座標位置の範囲内であればページスクロール命令が実 行・継続されることとなる。 このような被告製品の動作状況から検討すると,ページスクロール命令 の実行や継続は,指等及びマウスカーソルの先端の座標位置が,利用者が\nその範囲を視覚的に認識することができない,左上領域等の占める座標位 置の範囲に入っているかどうかによるものであり,これが肯定されれば, 指等及びマウスカーソルの先端の座標位置が上ページ一部表\示等の占め る座標位置の範囲に入っていなくても,ページスクロール命令が実行され 継続されるものである一方,上記が否定されれば,指等及びマウスカーソ\nルの先端の座標位置が上ページ一部表示等の占める座標位置の範囲に入\nっていても,ページスクロール命令は実行され継続されないこととなるも のである。 すなわち,被告製品においては,指等及びマウスカーソルの先端の座標\n位置が,偶々,上ページ一部表示等と左上領域等が重なる部分の占める座\n標位置の範囲に入った場合に限って,ページスクロール命令が実行・継続 されているにすぎないものである。これに照らせば,ページスクロール命 令については,飽くまで利用者が視覚的に認識できない左上領域等の範囲 において実行・継続されるものであって,上ページ一部表示等の範囲にお\nいて実行・継続されるものではないのであるから,上ページ一部表示等に,\nページスクロール命令が関連付いているとまでは認めるに足りないとい うほかない。 したがって,上記のとおりの被告製品の構成は,構\成要件Fの「操作メ ニュー情報がポインタにより指定される」と「操作メニュー情報に関連付 いている命令」を「実行」する,及び「操作メニュー情報がポインタによ り指定されなくなるまで当該実行を継続する」という文言(構成要件F)\nを充足するとは認められない。
イ 原告の主張について
(ア) まず,原告は,上ページ一部表示等のみならず左上領域等も「操作\nメニュー情報」に相当する旨主張するが,前記(3)に説示したとおり,左 上領域等は,「操作メニュー情報」には当たるとはいえない。
(イ) また,原告は,上ページスクロール1が生じるのは,処理手段が上ペ ージスクロール1を行うプログラムを実行していることを意味するとこ ろ,同プログラムは上ページ一部表示が表\示されていないと実行されな いから,上ページ一部表示と同プログラムとは関連付いている旨主張す\nる。 しかし,前記説示のとおり,本件発明の構成要件F(「関連付いている」)\nについては,画像データである操作メニュー情報の座標位置が利用者に 視覚的に認識できることを前提に,(1)画面上に表示された画像データで\nある操作メニュー情報が占める座標位置の範囲に,ポインタの座標位置 が入った場合に,特定の命令を実行し,(2)操作メニュー情報が占める座 標位置の範囲に,ポインタの座標位置が入らなくなるまで当該実行が継 続され,入らなくなった場合には,当該実行が継続されないことを意味 し,かかる動作状況を満たす命令であることをもって,「操作メニューに 関連付いている命令」に当たるものと解するのが相当であるところであ る。しかして,被告製品においては,指等及びマウスカーソルの先端の\n座標位置が,偶々,上ページ一部表示等と左上領域等が重なる部分の占\nめる座標位置の範囲に入った場合に限って,ページスクロール命令が実 行されているにすぎないものであって,ページスクロール命令について は,飽くまで利用者が視覚的に認識できない左上領域等の範囲において 実行・継続されるものであり,上ページ一部表示等の範囲において実行・\n継続されるものではないというのである。 以上によれば,原告の上記指摘をもって,直ちに,上ページ一部表示\nと上記プログラムとが関連付いており,上ページ一部表示等の有無とペ\nージスクロール命令の実行の可否が関連付いているとまで認めることは できず,他に,両者の関連付けを推認させるに足りる事情も見当たらな い。 以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。
(ウ) 原告は,構成要件Fの「操作メニュー情報がポインタにより指定さ\nれなくなるまで当該実行を継続する」には,「終了」といった記載はない から,操作メニュー情報がポインタにより指定されなくなった際に当該 実行が終了することまで求めてはおらず,実行がいつ終了するかは同構\n成要件とは関係がない旨を主張する。 しかし,上記(2)ウで述べたとおり「操作メニュー情報がポインタによ り指定されなくなるまで当該実行を継続する」とは,操作メニュー情報 がポインタにより指定されている場合に当該実行が継続されることのみ ならず,操作メニュー情報がポインタにより指定されなくなった場合に は当該実行が継続されなくなることまで意味するものと解すべきところ, 前記アで述べたとおり,被告製品において,指等及びマウスカーソルの\n先端の座標位置が上ページ一部表示等の占める座標位置の範囲に入って\nいない場合であっても,左上領域等の占める座標位置に入っていればペ ージスクロール命令の実行が継続されるものである以上,被告製品は上 記の構成要件を充足しないというべきである。なお,原告の主張する「実\n行」の「終了」が何を意味するか必ずしも判然としないが,仮に,上記 構成要件の解釈として,操作メニュー情報がポインタにより指定されて\nいる場合に当該実行を継続することのみを意味し,操作メニュー情報が ポインタにより指定されなくなった場合に当該実行が継続されないこと までは含んでいないとする旨を主張する趣旨であるとしても,そもそも そのような解釈は,本件各特許請求の範囲の文言及び本件明細書の記載 に照らし,上記構成要件の解釈として失当と言わざるを得ない。\n

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平成31(行ケ)10005  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和元年9月19日  知的財産高等裁判所

 周知技術を適用する動機付けなしとして、CS関連発明について、知財高裁2部は、拒絶審決を取り消しました。

 前記2(1)のとおり,引用文献1には,「近年,コンテンツマネジメントシステム (以下,CMS(Content Management System)という) によりウェブアプリケーションとして公開するコンテンツを構築し,管理すること\nが行われている(例えば,特許文献1参照)。ところで,近年,ネイティブアプリケ ーションをダウンロードしてインストールすることができるスマートフォンが普及 している。スマートフォンのユーザは,ネイティブアプリケーションをインストー ルする場合,アプリケーションを提供する所定のアプリケーションサーバにアクセ スし,所望のネイティブアプリケーションを検索する。しかしながら,CMSによ って構築されるウェブアプリケーションは,ウェブサイトとして構\築されるため, 検索サイトの検索結果として表示されることがあるものの,アプリケーションサー\nバから検索することができない。したがって,アプリケーションサーバにおいてネ イティブアプリケーションを検索したユーザに,CMSにより開発したウェブアプ リケーションを利用してもらうことができないという問題がある。これに対して, CMSによって構築したウェブアプリケーションと同等の機能\を有するネイティブ アプリケーションを開発し,当該ネイティブアプリケーションをアプリケーション サーバにアップロードすることも考えられる。しかしながら,ネイティブアプリケ ーションを新規に開発するには,多大な開発工数が必要であった。本発明は,ネイ ティブアプリケーションを容易に生成することができるアプリケーション生成装置, アプリケーション生成システム及びアプリケーション生成方法を提供することを目 的とする。」(段落【0002】,【0004】〜【0007】)と記載されており,同記載からすると,引用発明は,CMSによって構築されるウェブアプリケーション\nは,アプリケーションサーバから検索することができないため,アプリケーション サーバにおいてネイティブアプリケーションを検索したユーザに,CMSにより開 発したウェブアプリケーションを利用してもらうことができないこと及びCMSに よって構築したウェブアプリケーションと同等の機能\を有するネイティブアプリケ ーションを新規に開発するには,多大な開発工数が必要となることを課題とし,同 課題を解決するためのネイティブアプリケーションを生成する装置であることが認 められる。 引用発明は,上記課題を解決するために,前記(1)アで認定したとおり,既存のウ ェブアプリケーションのロケーションを示すアドレスや所望の背景画像を示すアド レス等の情報を入力するだけで,当該ウェブアプリケーションの表示態様を変更し\nて,同ウェブアプリケーションが表示する情報を表\示するネイティブアプリケーシ ョンを生成できるようにしたものと認められる。
イ 被告は,携帯通信端末の動きに伴う動作を行うネイティブアプリケーシ ョンを生成すること,特に,PhoneGapに係る技術が周知であると主張する。
(ア) 前記アのとおり,引用発明は,アプリケーションサーバにおいて検索で きるネイティブアプリケーションを簡単に生成することを課題として,同課題を, 既存のウェブアプリケーションのアドレス等の情報を入力するだけで,同ウェブア プリケーションが表示する情報を表\示できるネイティブアプリケーションを生成す ることができるようにすることによって解決したものであるから,ブログ等の携帯 通信端末の動きに伴う動作を行わないウェブアプリケーションの表示内容を表\示す るネイティブアプリケーションを生成しようとする場合,生成しようとするネイテ ィブアプリケーションを携帯通信端末の動きに伴う動作を行うようにする必要はな く,したがって,設定ファイルを設定するパラメータを「携帯通信端末に固有のネ イティブ機能を実行するためのパラメータ」とする必要はない。もっとも,引用文\n献1の段落【0024】には,ブログ等と並んで「ゲームサイト」が掲げられてお り,ゲームにおいては,加速度センサにより横画面と縦画面が切り替わらないよう に制御する必要がある場合が考えられる(引用文献5参照)が,ウェブアプリケー ションとして提供されるゲームは,(1)常に携帯通信端末の表示画面を固定する必要\nがあるとはいえないこと,(2)加速度センサにより,携帯通信端末の姿勢に対応した 画面回転表示を制御する機能\は携帯通信端末側に備わっており,端末側の操作によ って,表示画面を固定することができ,そのような操作は一般的に行われているこ\nと,(3)引用文献1の段落【0024】の「ゲームサイト」は,携帯通信端末の表示\n画面を固定する必要のないブログ,ファンサイト,ショッピングサイトと並んで記 載されており,また,引用文献1には,加速度センサについて何らの記載もないこ とからすると,当業者は,上記の「ゲームサイト」の記載から,パラメータを「携 帯通信端末に固有のネイティブ機能を実行するためのパラメータ」とすることの必\n要性を認識するとまではいえないというべきである。 また,引用発明によって生成されるネイティブアプリケーションは,HTMLや JavaScriptで記述されるウェブページを表示できるから,引用発明によ\nり,乙4に記載されたHTML5 APIのGeolocationを用いて携帯 通信端末の動きに伴う動作を行うウェブアプリケーションの表示内容を表\示するネ イティブアプリケーションを生成しようとする場合も,生成されるネイティブアプ リケーションは,設定情報に含まれているウェブアプリケーションのアドレスに基 づいて,同ウェブアプリケーションに対応するウェブページを取得し,取得したウ ェブページのHTMLやJavaScriptの記述に基づいて,同ウェブアプリ ケーションの内容を表示でき,したがって,ネイティブアプリケーションの生成に\n際して,設定ファイルを設定するパラメータを「携帯通信端末に固有のネイティブ 機能を実行させるためのパラメータ」とする必要はない。\nさらに,被告主張周知技術に係る各種文献にも,引用発明の上記の構成の技術に\nおいて,「携帯通信端末に固有のネイティブ機能を実行させるためのパラメータ」に\n応じて設定ファイルを設定することの必要性等については何ら記載されていない (甲2〜5,7,8,乙1〜3)。
(イ) 前記アのとおり,引用発明は,簡易にネイティブアプリケーションを生 成することを課題として,既存のウェブアプリケーションのアドレス等の情報を入 力するだけで,当該ウェブアプリケーションが表示する情報を表\示するネイティブ アプリケーションを生成できるようにしたのであり,具体的には,前記(1)アのとお り,入力しようとするウェブアプリケーションのロケーションを示すアドレス及び 表示態様に基づいて,テンプレートアプリケーション111に含まれる設定情報の\n内容を書き換えるだけで目的とするウェブアプリケーションの表示する情報を表\示 できるネイティブアプリケーションを生成でき,テンプレートアプリケーション1 11に含まれるプログラムファイル113については,新たにソースコードを書く\n必要はないところ,証拠(甲3,5,7,乙1〜3)によると,PhoneGap によってネイティブアプリケーションを生成するためには,HTMLやJavaS cript等を用いてソースコード(プログラム)を書くなどする必要があるもの\nと認められるから,引用発明に,上記のように,新たにソースコードを書くなどの\n行為が要求されるPhoneGapに係る技術を適用することには阻害事由がある というべきである。
被告は,(1)PhoneGapでは,PhoneGapのプラグインの仕組みを使 って,GPSなど端末のネイティブ部分にアクセス可能であり,端末のGPS機能\ にアクセスすることで,GPSで取得した端末の現在位置が中心となるように地図 を表示することが可能\となるから,引用発明において地図表示アプリケーションを\n生成する際に,PhoneGapのフレームワークを採用することで,ネイティブ 機能であるGPS機能\が利用可能となり,携帯通信端末の動きに伴う動作を設定可\n能となり,また,(2)AndroidManifest.xmlに「android: screenOrientation =”landscape”」の1行を追加し たり(Androidの場合),「Landscape Right」又は「Lan dscape Left」のアイコンを選択すること(iOSの場合)で,スマー トフォンの画面を横画面に固定可能となり,縦画面に固定する設定を施す場合,A\nndroidManifest.xmlに「android:screenOri entation =”portrait”」の1行を追加したり(Android の場合),「portrait」のアイコンを選択すること(iOSの場合)で,ス マートフォンの画面を縦画面に固定可能となるから,引用発明において,アプリケ\nーションを生成する際に,PhoneGapのフレームワークを利用することで, 「携帯通信端末に固有のネイティブ機能を実行させるためのパラメータ」に応じて,\n携帯通信端末において実行される「アプリケーションの,携帯通信端末の動きに伴 う動作」を規定する設定ファイルを備えることとなると主張する。 しかし,上記のとおり,引用発明にPhoneGapの技術を適用することの動 機付けはないから,被告の上記主張は,その前提を欠くものであって,理由がない。
(ウ) 以上からすると,引用発明に,被告主張周知技術を適用することの動機 付けは認められないというべきである。

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平成28(ワ)16912  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月4日  東京地方裁判所

 CS関連発明についての特許権侵害事件です。東京地裁40部は、差止、102条2項による損害賠償を認めました。損害賠償額は計算鑑定人が計算しています。総額は不明です。 なお、クレームは「〜情報管理プログラム。」です。

2 争点1−1(被告プログラムにおける架電番号が「架電先の電話器を識別す る識別情報」に当たるか)について
(1) 証拠(甲6,7)及び弁論の全趣旨を総合すれば,本件不動産サイトにお ける物件の連絡先への架電等の仕組みは,以下のとおりであると認められる。
ア 本件不動産サイトにおいて,ユーザが特定の不動産物件の詳細情報を選 択すると,例えば,以下の画面のような,当該物件についてのウェブペー ジが表示され,同ページの下段・右側に「電話」ボタンが表\示される。
イ 上記「電話」ボタンをユーザが選択すると,例えば,次の画面に遷移す る。同画面には,架電番号が表示されるとともに「このページを開いて\nから10分以内にお電話をお願いいたします。」「上記無料通話番号は, 今回のお問合せ用に発行したワンタイムの電話番号です。」と表示される。\n
ウ ユーザが上記画面に表示された架電番号に架電すると,当該物件を管\n理する不動産業者に宜接通話が繋がるが,一定時間を経過すると,当該 架電番号に架電しでも電話は繋がらず,接続先がない旨の自動音声案内 が流れる。
エ 上記イの画像の表示から,架建言することなく10分以上経過してから, 間一携帯端末で,同一の不動産物件について架電番号を表示すると,例え\nば,以下のとおり,別の架電番号が表示される。\n
オ 上記ウにより繋がらなくなった架電番号は, 53Jのユーザ、端末や商品に 対応した電話番号として再利用し得る。なお,ユーザが,同架電番号に いったん架電をすると,その後も,同番号は端末上にリダイヤノレのため 再表示され,同時に,別の端末において異なる物件の連絡先として同ー\nの架電番号が表示され得る。\n
(2) 被告は,被告プログラムにおける架電番号が「架電先の電話器を識別する 識別情報J (構成要件(1))に該当しないので,被告プログラムは,構成要件\n(1)を充足しないと主張する。 しかしr識別情報」の意義については,本件明細書等の段落(0019) には「識別情報とは,架電先に関連付けられることによりその架電先を識別 する情報であj ると記載されているところ,証拠(甲6,7,乙2) によれ ば,被告プログラムを使用してサービスを提供している本件不動産サイトに おいては,ユーザが希望する物件を選択すると,当該物件の詳細情報が表示\nされた画面に問合せのための専用電話番号が表示され,当該番号が表\示され るとその時点で架電番号がロックされた状態となり,その表示から一定期間,\n当該架電番号に架電するとその不動産業者に架電されるとの事実が認められ る。そうすると,被告プログラムにおける架電番号は,「架電先に関連付け られることによりその架電先を識別する情報」であり,構成要件(1)にいう 「識別情報」に該当するということができる。
(3) また,原告が行った実験結果(甲8・実施結果1。なお,以下の実験結果 はいずれも被告プログラムを使用している本件不動産サイトを利用したもの である。)によれば,(i)本件不動産サイトのユーザが,端末を用い,特定 の物件の連絡先画面を表示させると,特定の架電番号が表\示された,(ii)そ のまま架電せずに前記連絡画面を閉じ,再び物件の連絡先画面を表示させる\nと同じ架電番号が表示された,(iii)ユーザが,異なる端末の電話機能を用い,\n同一の架電番号に架電しても,同一の連絡先である広告主に接続されたとの 事実が認められる。 上記結果は,被告プログラムにおいて,ある端末に特定の物件の連絡先に 繋がる架電番号を表示させると,それにより当該番号と架電先が関連付けら\nれ,それ以降は当該架電番号に対応する連絡先の不動産業者が識別されると の上記(1)の認定を裏付けるものであり,同結果に照らしても,被告プログ ラムにおける架電番号は,構成要件(1)にいう「識別情報」に該当するという ことができる。
(4) これに対し,被告は,架電番号と発信者番号とで架電先を識別するので, 架電番号は,本件発明にいう「識別情報」に当たらないと主張し,端末に表\n示させた架電番号に発信者番号非通知の設定で架電した場合,架電先にも接 続されないという実験結果(乙3)は被告主張を裏付けるものであると主張 する。 しかし,架電前においては,被告プログラムは当該ユーザの発信者番号を 知らないはずであるから,架電前において,同プログラムが架電番号と発信 者番号とで架電先を識別するとは考え難い。上記実験において端末に表示さ\nれた架電番号に架電した場合に架電先に接続されなかったのは,後記のとお り,被告プログラムが当該架電番号に架電した時点以降,架電番号と発信者 番号とで架電先が識別されていること(この点については当事者間に争いが ない。)に起因するものと考えるのが相当であって,上記実験結果は,架電 前において表示された架電番号と架電先が関連付けられることを否定するに\n足りるものではない。 むしろ,原告の行った実験結果(甲9)によれば,発信者番号を送信し得 ないパーソナルコンピュータに本件不動産サイトを表\示した場合であっても, 物件の連絡先に繋がる架電番号が表示され,携帯端末から当該番号に架電し\nたところ,当該連絡先に接続したとの事実が認められ,これによれば,被告 プログラムは,架電前の時点において,架電番号により架電先を識別してい ると推認することが相当である。
(5) 被告は,乙8の実験2の結果は,被告プログラムにおいて,1つの架電番 号が,同時に複数のユーザが複数の架電先に接続するために利用されている ことを示しているので,当該架電番号のみでは架電先を識別し得ないと主張 する。
しかし,上記実験は,(i)本件不動産サイトのユーザが,端末(1)を用い, 物件1の連絡先画面を表示させると架電番号が表\示された,(ii)端末(1)の電 話機能で当該番号に架電した後,1990台分の仮想端末を用い,それぞれ\n物件2の連絡先画面を表示させた,(iii)その後,上記(i)の時点から10分 以内に,端末(2)で物件2の連絡先画面を表示すると,同一の架電番号が表\示 された,(iV)上記(iii)の後,前記(i)から10分以内に,端末(1)で再び物件 1の連絡先画面を表示すると,同一の架電番号が表\示されたというものであ ると認められる。 同実験の(iii)において,端末(2)において物件2の連絡先画面が表示された\nのは,上記(i)のとおり,端末(1)により架電をした後であるから,物件2の 連絡先画面が表示された時点においては,物件1の連絡先は,架電番号のみ\nではなく,架電番号と発信者番号とで識別されるようになっており,それゆ えに,物件2の連絡先画面において同一の架電番号を表示することが可能\に なったものと考えられる。 そうすると,上記実験も,架電前において表示された架電番号と架電先が\n関連付けられることを否定するに足りるものではないというべきである。
(6) 被告は,乙10の実験結果も,同一の架電番号が同時に複数のユーザによ って未架電の異なる架電先に架電するための番号として用いられることを示 していると主張する。
ア 乙10の実験は,(i)本件不動産サイトのユーザが,端末(1)を用い,物 件1の連絡先画面を表示させると架電番号Xが表\示され,同番号に架電し た(午前2時10分),(ii)その後,端末(1)で物件2の連絡先画面を表示\nさせると,架電番号Yが表示された(午前2時10分),(iii)その後,1 994台分の仮想端末を用い,物件3の連絡先画面を表示させ,それぞれ\n架電番号を表示させた,(iV)端末(2)を用い,前記(ii)の表示から10分以\n内に,物件3の連絡先画面を表示させると,架電番号Yが表\示され(午前 2時14分),続いて端末(2)から架電番号Yに架電した(午前2時15 分),(v)端末(3)を用い,前記(ii)の表示から10分以内に,物件4の連\n絡先画面を表示させると,架電番号Yが表\示された(午前2時15分), (vi)前記(ii)の表示から10分以内に,端末(1)〜(3)において,再度各物件 について架電番号を表示させると,いずれの端末においても架電番号Yが\n表示されたというものであると認められる。\n
イ 上記実験結果のうち,(iv)〜(vi)において端末(1)〜(3)において架電番 号Yが表示されたこと,取り分け,端末(1)において架電番号Yに架電をし ていないにもかかわらず,端末(1)及び(3)に架電番号Yが表示されたことに\nついては,ある端末(この場合は端末(1))から架電すると,当該端末の発 信者番号が被告プログラムに登録され(この点は争いがない。被告準備書 面9の14頁参照),架電済みの端末に払い出された未架電の架電番号に ついても,架電番号と発信者番号とで識別されることによるものであると 考えられる。 このことは,原告が行った実験結果(甲15)からも裏付けられる。す なわち,同実験(甲15・実験A−1,2)は,(i) 本件不動産サイト のユーザが,端末Aを用い,物件Aの連絡先画面を表示させると,架電番\n号Aが表示された,(i) 端末Aの電話機能で架電番号Aに架電した後,\n端末Aで物件Bの連絡先画面を表示させると,架電番号Bが表\示された, (iii) 前記(ii)から10分以内に,端末Bの電話機能を用い架電番号Bに\n架電しても,物件Bの連絡先である広告主には接続されなかった,(iv)他 方,前記(iii)の代わり,端末Aの電話機能を用いて架電すれば,物件Bの\n連絡先である広告主に接続されたというものであると認められる。同実験 結果によれば,架電済みの端末に払い出された未架電の架電番号について も,架電番号と発信者番号とで識別されるものと認めるのが相当である。 そうすると,上記アの(iv)〜(vi)において架電番号Yが表示されたの\nは,その時点において,端末(1)及び(2)については,架電番号Yと各端末の 発信者番号により関連付けが行われていたからであり,同実験結果も,架 電前において表示された架電番号と架電先が関連付けられることを否定す\nるに足りるものではないというべきである。
(7) 以上によれば,被告プログラムにおいて,未架電の端末にのみ架電番号が 表示されている場合には,当該架電番号は,「架電先に関連付けられること\nによりその架電先を識別する情報」であり,構成要件(1)にいう「識別情報」 に該当するということができる。そして,前記判示のとおり,被告プログラ ムが架電後においては架電番号と発信者番号とで架電先を識別しているとし ても,このことは被告プログラムが構成要件(1)を充足するとの結論を左右す るものではないというべきである。 したがって,被告プログラムは,構成要件(1)を充足する。
・・・
(1) 特許法102条2項所定の利益の額について ア 特許法102条2項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額は, 侵害者の侵害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売すること によりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した 限界利益の額であり,その主張立証責任は特許権者側にあるものと解すべ きである(知的財産高裁平成30年(ネ)第10063号令和元年6月7 日判決参照)。 本件における計算鑑定の結果によれば,被告プログラムについては,平 成25年6月分から平成30年9月分までの間,別紙2−3(1)欄記載の売 上高があり,製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費の額は同 (2)欄記載のとおりであるので,その限界利益の額は同(3)欄記載のとおりで あると認めることができる。
イ これに対し,原告は,●(省略)●であることを指摘し,別紙2−3(2) 欄記載の変動費に含まれる●(省略)●からの仕入費の額については,そ の利益相当額50%を控除した額とするべきであると主張する(なお,当 裁判所は,この点に関する原告の主張のうち,●(省略)●が,被告サー ビスを実質的に運営する共同事業者であって,共同不法行為者に当たるな どとする主張については,時機に後れた攻撃防御方法を理由とする却下を した。)。しかし,●(省略)●されるべきものでないことは当然であり, また,その仕入価格が不当に高額に設定されていたといったような事情を 認めるに足りる証拠もないのであるから,この点に関する原告の主張を採 用することはできない。
ウ 他方,被告は,別紙2−3(2)欄記載の金額のほか,(1)通信回線及び通信 機器設備の利用料,(2)派遣労働者の費用,(3)専用プログラムの開発費も, 変動費又は個別固定費として控除すべきであると主張する。 しかし,証拠(乙30〜32)によれば,上記(1)〜(3)の費用は,被告プ ログラムにのみ費消されたものではなく,被告の提供する他のサービスに ついても費消されているものであると認められ,被告プログラムの作成や 販売に直接関連して追加的に必要となった経費であるということはできな い。 したがって,これを売上高から控除すべきであるとの被告主張は採用し 得ない。
エ もっとも,本件において,原告の請求の対象となる限界利益は,平成2 5年5月26日から平成31年4月30日までの利用に対するものである のに対し,前記計算鑑定は,平成25年6月分から平成30年9月分まで の売上を対象とするところ,乙27及び弁論の全趣旨によれば,これら各 月分の売上は,それぞれ前月分の利用に対応することが認められる。そこ で,平成25年5月の利用については,同年6月分の限界利益の額を日割 り計算し,平成30年9月から平成31年4月までの利用については,平 成30年4月分から同年9月分までの限界利益の額の平均額を採用するの が相当である。そうすると,特許法102条2項所定の利益の額は,この 計算によって得た別紙2−1(2)欄記載の額に,それぞれの時期における同 2−3(3)欄記載の消費税率を加算した額と計算されることになる。
(2) 推定覆滅事由について
被告は,被告サービスに対する本件発明の寄与率は0%と解すべきである として,特許法102条2項における推定覆滅事由があり,その割合は10 0%であると主張する。
ア 同条項における覆滅については,侵害者が主張立証責任を負うものであ り,侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因果関係を阻害 する事情がこれに当たると解され,同条1項ただし書の事情と同様,同 条2項についても,これらの事情を推定覆滅の事情として考慮すること ができるものと解される。(前掲知的財産高等裁判所判決参照)
イ 被告は,被告プログラムの訴求ポイントは,PhoneCookieと いう独自技術を用い,ウェブと電話から得られるトランザクション情報を 効果的に利用する点であるのに対し,本件発明の特徴点は,補正手続にお いて付加された構成要件(6)であるから,被告プログラムと本件発明は訴求 ポイントが異なると主張する。 しかし,本件発明は,その構成要件が一体となって所期の効果,すなわ\nち,「架電先を識別するための識別情報を広告情報ごとに動的に割り当て て,識別情報の再利用を可能とすることにより,識別情報の資源の有効活\n用及び枯渇防止を図る」(段落【0049】)とともに,「ウェブページ への提供期間や提供回数に応じて動的に識別情報を変化させることにより, 広告効果を時期や時間帯に基づき把握すること」(段落【0050】)を 可能にするものであり,構\成要件(6)が出願審査の過程において補正により 付加されたとしても,同構成要件のみが本件発明の特徴点であると解する\nことはできない。 他方,被告プログラムを使用している本件不動産サイト(甲6)におい ては,ユーザーによる架電の負担の軽減が課題として掲げられるとともに, 「その時・その人にだけ有効な『即時電話番号』を発行」し,「静的に電 話番号を割り振るのではなく,ユーザーのアクションに応じて動的に電話 番号を割り振」るとの内容を有することが記載されていることが認められ る。 上記本件不動産サイトに記載された「その時・その人にだけ有効な『即 時電話番号』を発行」し,「動的に電話番号を割り振」ることは,「識別 情報の資源の有効活用及び枯渇防止を図る」などの本件発明の効果を発揮 する上で不可欠な要素であり,被告プログラムにおいてもこうした構成を\n備えた結果,その顧客は本件発明と同様の効果を享受しているものという ことができる。 被告は,被告サービスの訴求ポイントについて,PhoneCooki eという独自技術を用い,ウェブと電話から得られるトランザクション情 報を効果的に利用することができる点にあると主張するが,同技術が被告 サービスの売上に貢献したことを具体的に示す証拠はない。 そうすると,被告プログラムがPhoneCookieという独自技術 を用いているとしても,この点を覆滅事由として考慮することはできない というべきであり,被告がそのために被告を特許権者とする特許技術(特 許第5411290号,特許第5719409号)を使用していることも, 上記結論を左右しない。
ウ 被告は,本件発明のうち架電番号の再利用という部分の機能は,従来技\n術にすぎないと主張する。 しかし,原告が従来技術として挙げるLRU方式は,前記判示のとおり, 使用されてから最も長い時間が経った架電番号から順に利用する方式であ り,本件特許とはその採用している方式が異なるものであり,本件発明が 従来技術として利用しているものではない上,市場において本件発明と同 様の効果を奏する代替可能な技術として原告の提供するサービスと競合関\n係にあるということはできない。 また,被告は,被告を特許権者とする前記特許明細書に記載された方式 によっても,本件発明を代替することが可能であると主張するが,同方式\nは,架電番号の在庫が尽きた場合に,これを初期化し,その初期化したこ とを通知するものであり(乙18・段落【0095】),本件特許とはそ の採用している方式が異なるものであり,本件発明が従来技術として利用 しているものではない上,市場において本件発明と同様の効果を奏する代 替可能な技術として原告の提供するサービスと競合関係にあるということ\nはできない。 以上のとおり,本件発明のうち架電番号の再利用という部分の機能が従\n来技術にすぎないとの被告主張は理由がなく,この点を推定覆滅事由とし て考慮することもできない。
エ したがって,本件においては,被告が得た利益の全部又は一部について 推定を覆滅する事由があるということはできない。
(3) 小括
前記のとおり,特許法102条2項の「利益」の額は,別紙2−1(2)欄記 載の額に同(3)欄の消費税率を乗じた額であり,同項における推定覆滅事由が あるとは認められないので,被告が賠償すべき額は,その10%に相当する 弁護士費用相当額を加算し,一円単位に切り捨てた別紙2−1(5)欄のとおり と計算される。また,弁論の全趣旨によれば,これらの損害の発生日は,遅 くとも,それぞれ同(6)記載の日であると認められるので,各同日から支払済 みまでの遅延損害金の請求をすることができる。

◆判決本文

◆別紙1

◆別紙2

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令和1(ネ)10052  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年12月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明についての特許侵害事件です。知財高裁(2部)も、1審と同じく、技術的範囲に属しないと判断しました。

ア 控訴人は,構成要件1Aは,画像情報を取得する機能\の有無に限らず, 「画像情報・・・を対応するパターンに変換するパターン変換器」であると主張する。 本件発明1の構成要件1Aは,「画像情報,音声情報および言語を対応するパター\nンに変換するパターン変換器と,パターンを記録するパターン記録器と,」というも のであるところ,画像情報を取得する機能の有無に限らないという控訴人の主張に\nよると,本件発明1は,パターンに変換する画像情報が取得されたものでない場合 には,パターン変換器は,予め保持している画像情報を対応するパターンに変換す\nるものということになるが,このとき画像情報は,パターンに変換されることも,ま た,パターンとして記録されることもなく,画像情報として予め保持されていたも\nのということになる。 しかし,本件発明1の特許請求の範囲及び本件明細書等1には,画像情報が,パタ ーンに変換されることも,また,パターンとして記録されることもなく,予め保持さ\nれたものであるとは読み取ることができる記載はない上,かえって,本件明細書等 1の段落【0017】には,「【課題を解決するための手段】(請求項1に対応)」 として,「この発明における思考パターン生成機は画像情報,音声情報および言語を パターンに変換する。画像情報は画像検出器により検出され,対象物に応じたパタ ーンに変換される。・・・」と記載され,画像検出器により検出されるものとされて いる。 したがって,本件発明1の構成要件1Aが,画像情報を取得する機能\の有無に限 らないとの控訴人の主張を採用することはできない。 そして,本件装置が,外部から入力された表情等に関する画像をパターンに変換\nする機能を有していると認めるに足りる証拠がないことは,原判決「事実及び理由」\nの第4の2(2)イに判示するとおりである。 よって,本件装置が構成要件1Aを充足していると認めることはできない。\n
イ 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載や被控訴人の主 張によると,本件装置内部で生成したパターン化されている画像に関する情報(画 像情報)からディスプレイに表示するための画素データ(画像パターン)に変換され\nていることが分かると主張する。 しかし,構成要件1Aの「パターン変換器」が行うものとして記載された「画像情\n報・・・を対応するパターンに変換する」処理でいうところの「パターン」とは,画 像,音声及び言語に係る事象の特徴を,計算機たる検出器が識別することができる 「1」,「0」等の何らかの信号の組合せに変換したものを意味すると解されること は,原判決「事実及び理由」の第4の2(1)アが判示するとおりである。 そして,本件装置が,「本件装置内部で生成したパターン化されている画像に関す る情報から,ディスプレイに表示するための画素データを作成する」としても,この\nことが,画像,音声及び言語に係る事象の特徴を,計算機たる検出器が識別すること ができる信号の組合せに変換する処理に当たらないことは明らかである。 したがって,控訴人の主張を採用することはできない。
ウ 以上によると,本件製品が構成1Aを充足すると認めることはできない。\n
(3) 争点2−2(構成要件1Bの充足性)について\n
ア 控訴人は,本件製品の紹介ビデオ(甲79)によると,顧客の銀行口座に 関する情報に対応するデータにパターンの変更が行われているから,本件装置はパ ターンを変更していると主張する。 しかし,「パターン」とは,画像,音声及び言語に係る事象の特徴が計算機たる検 出器が識別することのできる信号の組合せに変換されたものであり,「パターンの 変更」とは,このような信号の組合せ自体を変更するものである(原判決「事実及び 理由」の第4の2(3)ア)。顧客の銀行口座に関する情報に変更が行われているとし ても,このようなことは,パターンとパターンの結合関係を変更することによって も行うことができるから,本件装置の内部において,上記のような意味での「パター ンの変更」が行われていることを示すとは直ちに認められず,控訴人の主張を採用 することはできない。
イ 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載や,本件製品の 紹介ビデオ(甲80)の説明によると,本件装置は「質問」に対し,学習の前と後で 回答内容が更新できるため,「回答内容」についてパターンの変更が実施されている と主張する。 しかし,本件装置が回答内容を更新しているということは,入力された言語情報 に対応する回答が変更されたということになるが,「言語に係る事象の特徴が変換 された信号の組合せ」が変更されたのか否かは明らかではないから,控訴人の主張 を採用することはできない。
ウ 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)や本件製品の紹介ペー ジ(甲81)に,「アメリアが文章をパーツに分解して,各単語の役割と,他の単語 との関係を解釈する」とある点について,本件装置は,「文章(=文,パターン)」 を「パーツ(文要素や単語)」に分解するという「変更」を実施していると主張する。 しかし,本件装置が,「文章(=文,パターン)」を「パーツ(文要素や単語)」 に分解するということは,文章を,文要素や単語に分解して認識していることを意 味しているにすぎないとも考えられ,言語の「パターン」を変更しているとは直ちに 認められない。
エ 以上によると,本件装置が構成要件1Bを充足するとは認められない。\n
(4) 争点2−4(構成要件1Dの充足性)について\n
ア 控訴人は,原判決が構成要件1Dについて,「有用と判断した情報のみを\n記録する」として,「のみ」を含むクレーム解釈をしたことが,請求項に記載のない ことを含めたものであり,誤りがあると主張する。 しかし,「有用と判断した情報のみを記録する」と解釈すべきことは,原判決「事 実及び理由」の第4の2(4)アが判示するとおりであり,控訴人の主張を採用するこ とはできない。
イ 控訴人は,甲31及び38に「業務に特化した情報を学習するため,業務 に不要な情報での不必要な学習や成長はしない」との記載があることから,本件装 置が有用な情報のみを記録するとの機能を備えていると主張する。\nしかし,価値ある入力した情報のみを記録するということをしなくても,入力さ れたそれぞれの情報の結合関係を生成しながら知識体系を構築することは可能\であ る上,本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)には,「全ての質問がアメリアの経験 や知識に加えられる」との説明があるから,「業務に特化した情報を学習するため, 業務に不要な情報での不必要な学習や成長はしない」からといって,本件装置が構\n成要件1Dの「有用な情報のみを記録している」とは認められない。
ウ 控訴人は,本件製品の紹介ビデオの説明(甲12の図5,甲79,80) やパンフレットの記載(甲11の2)によると,本件装置は,入力した情報の価値を 分析し,有用な情報を自律的に記録していると主張する。 しかし,上記の紹介ビデオの説明やパンフレットの記載は,アメリアが同僚と顧 客のやりとりを観察し,処理マップを自分で作成するというものや顧客に必要な質 問を投げかけ,それに対する顧客の回答に応答するというものであり,それから直 ちに有用な情報を取捨選択し有用な情報のみを記録しているとは認められない上, 本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)には,「全ての質問がアメリアの経験や知識 に加えられる」との説明があるから,本件製品が構成要件1Dの「有用な情報のみを\n記録している」とは認められない。
エ 以上によると,本件装置が構成1Dを充足すると認めることはできない。\n
(5) 争点3(構成要件2C等の充足性)について\n
ア 控訴人は,構成要件2C等の「評価」と「自律的に知識を獲得」ないし「自\n律的に知識を構築」の関係は並列であると主張するが,控訴人の上記主張を採用す\nることができないことは,原判決「事実及び理由」の第4の3(2)ア及びイが判示す るとおりである。 したがって,構成要件2C等の「評価」と「自律的に知識を獲得」ないし「自律的\nに知識を構築」の関係が並列であるとの控訴人の主張を採用することはできない。\n
イ 控訴人は,前記関係が直列の関係であるとしても,本件装置が構成要件\n2C等を充足すると主張する。 (ア) 意味の評価について
控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載や本件製品の紹介ビデオ (甲12の図5)の説明などから,本件装置は,「同じ言葉の異なる用法」の中から 「最も文脈にあてはまる用法」がどれかを評価し,知識を構築しており,本件装置\nは,情報(意味)を評価し,知識の獲得を実施していると主張する。 しかし,本件製品のパンフレット(甲11の2の3頁)の「彼女は同じ言葉の異な る用法を見分けるために文脈をあてはめることで,暗示されている意味を完全に理 解します。」との記載は,本件装置が,文脈をあてはめて言葉の用法を見分けている というにすぎず,本件装置が情報(意味)を評価した上で,その評価を踏まえて妥当 性が確認された情報を知識として獲得していることを示していると認めることはで きない。 また,本件製品の説明ビデオ(甲12の図5)によると,「全ての質問がアメリア の経験や知識に加えられる」のであるから,本件装置が,意味を評価した上で,その 評価を踏まえて妥当性が確認された情報を知識として獲得していると認めることは できない。 これに対し,控訴人は,本件製品の紹介ビデオ(甲12の図5)の上記説明につい て,意味を評価し,その結果に基づいて自律的に有益な知識を獲得する機能を有し,\n全ての質問を知識として加えるというケースはあり得ると主張するが,上記の説明 は,単に全ての質問を知識として加えるという意味に理解するほかなく,本件装置 が意味を評価した上で全ての質問を知識として加えるという意味に理解することは できないから,控訴人の主張を採用することはできない。
(イ) 新規性の評価について
a 控訴人は,本件製品のパンフレットの(甲11の2)の記載からする と,本件装置は,遭遇した状況が知識として記録している場面と似ておらず,自分で 問題に対処できないことを識別する機能を有するから,新規性を評価し,知識の獲\n得を実施している旨主張する。 しかし,本件発明2は,「自律的に知識を獲得」するというものであり,人の手を 介することを予定しているものではない。しかるところ,本件製品のパンフレット\n(甲11の2の9頁)には,「自力で問題に対処できない場合,人間の同僚にその問 題を引き継ぎます。」と記載されていて,人間の同僚が介入することが予定されてい\nる上,本件装置がその後同僚の様子を見て特定の状況に対する最善の手順を見つけ ることがあるとしても,本件製品の紹介ビデオ(甲80)では,「生成した処理ステ ップの使用を管理者が了承すると,直ぐに彼女は同様の質問に対して自分自身で対 応できるようになります」と記載されていて,管理者が了承しないと,知識として獲 得されないから,本件装置が「自律的に知識を獲得」するということはできない。 仮に,控訴人が主張するように,新しい処理ステップに関しては,本件装置の管理 者が了承する前に,既に生成し,記録しているとしても,本件装置の管理者が了承し なかった処理ステップまでが知識として獲得されるものではないから,本件装置が 「自律的に知識を獲得」すると認めることはできない。
b なお,本件製品の説明ビデオ(甲12の図5)によると,「全ての質 問がアメリアの経験や知識に加えられる」のであるから,本件装置が,新規性を評価 した上で,その評価を踏まえて妥当性が確認された情報を知識として獲得している と認めることはできないことは,上記(ア)と同様である。
(ウ) 真偽を評価する機能\n
a 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)や紹介ビデオ(甲 12の図5,甲79,80)には,本件装置が的確な質問を発して,「真実を明らか にする」機能(=真偽を評価する機能\)を有していることが示されていると主張す る。 しかし,本件製品のパンフレット(甲11の2)には,「問題の根本を見極めるた めの的確な質問ができる能力を持った」,「問題を明らかにするために必要な質問を\n投げかけることで,答えを提示することができます。」(6頁)との記載や,「事実 を明らかにするための的確な質問を発し,人間と同じように問題の明確な性質を顕 在化させることができるのです。」(11頁)との記載があるところ,これらの記載 と本件製品の紹介ビデオ(甲79,80)によると,本件装置の質問は,顧客の要望 を明らかにするためのものであって,真偽を判断するためのものであるとは認めら れないから,本件装置が,真偽を判断した上で,自律的に知識を獲得していると認め ることはできない。
b 控訴人は,知識に対して論理を当てはめ,プロセス全体の各ステッ プを自律的に進め,論理的な結論を得るためには,本件装置は,何が真であり,何が 偽であるかを評価する必要があると主張する。 しかし,論理的な結論を得るためには,情報間の結合関係を正確にする必要はあ るが,必ずしも入力した言語情報の真偽の妥当性を評価する必要性は認められない。
c なお,本件製品の説明ビデオ(甲12の図5)によると,「全ての質 問がアメリアの経験や知識に加えられる」のであるから,本件装置が,真偽を評価し た上で,その評価を踏まえて妥当性が確認された情報を知識として獲得していると 認めることはできないことは,前記(ア)と同様である。
(エ) 論理の妥当性について
a 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載や,本件製 品の紹介ビデオ(甲79)によると,本件装置は,「積極的に論理を当てはめ」,「事 実を明らかにするための明確な質問を発し」,「問題の明確な性質を顕在化し」,「論 理的な結論を得て」,「事実を明らかにするための的確な質問」及び「回答」を記録 して知識を獲得するという一連の動作を実施していることが分かるから,本件装置 は,情報を評価(論理の妥当性)し,知識の獲得を実施していると主張する。 しかし,「論理的な結論」,「知識に対して積極的に論理を当てはめることにより, アメリアは問題を解決することもできます。彼女が知っている情報の本体に立ち返 ることで,自然言語で述べられた質問を元に事実を明らかにするための的確な質問 を発し,人間と同じように問題の明確な性質を顕在化させることができるのです。」 との本件製品のパンフレット(甲11の2の11頁)の記載や,アメリアの「質問」 に対する顧客の「回答」が記録された本件製品の紹介ビデオ(甲79)からは,本件 装置が入力した言語情報の論理の妥当性を確認しているとまでは読み取れないし, また,論理的な結論を得るためには,情報間の結合関係を正確にする必要はあるが, 必ずしも入力した言語情報の論理の妥当性を評価する必要性は認められないから, 控訴人の主張を採用することはできない。
b 控訴人は,本件製品のパンフレット(甲11の2)の記載によると, 本件装置は,論理を適用し(=論理の妥当性を評価し),経験を通して学習している (=記録している),すなわち,言語情報の論理の妥当性を評価し,経験した内容を 知識として獲得していると主張する。 しかし,本件装置が,「・・・論理を適用し,暗示されている内容を推定し,経験 を通して学び,感情すらも察知」(甲11の2の3頁)するものであるとしても,こ のことから本件装置が入力した言語情報の論理の妥当性を評価しているとは直ちに 認められないから,控訴人の主張は採用できない。
c 控訴人は,本件製品の紹介ビデオ(甲79)には,本件装置が条件付 き処理を実施していることから,論理的に対応し,情報を記録していると主張する。 しかし,本件装置が,顧客の回答が「はい(yes)」なら,受取人リストに追加し, 回答が「いいえ(no)」なら,受取人リストに追加しないという処理をするとしても, このことは,顧客の回答に基づいた処理をしていることを示すにすぎず,本件装置 が論理の妥当性を評価しているとは認められない。 d なお,本件製品の説明ビデオ(甲12の図5)によると,「全ての質 問がアメリアの経験や知識に加えられる」のであるから,本件装置が,論理性を評価 した上で,その評価を踏まえて妥当性が確認された情報を知識として獲得している と認めることはできないことは,前記(ア)と同様である。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)15518

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平成30(ネ)1008 特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月8日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 外為オンラインVSネースクエアの控訴事件です。1審では差止請求が認められました。知財高裁も同じ判断です。

構成要件Hの「前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,…さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報\nを含む売り注文情報を生成する」の意義について (ア) 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載から,構成要件Dの「注文情報生成手段」は,「前記金融商品の買い注文を行うた\nめの複数の買い注文情報」を生成する「買い注文情報生成手段」(構成要件B)と「前記買い注文の約定によって保有したポジションを,\n約定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報を 生成」する「売り注文情報生成手段」とから構成され,「売り注文情報」を生成するのは,構\成要件Dの「注文情報生成手段」のうちの「売り注文情報生成手段」であることを理解できるから,構成要件Gの「注文情報生成手段」及び構\成要件Hの「前記注文情報生成手段」は,いずれも「売り注文情報生成手段」を意味するものと理 解できる。
そうすると,構成要件Hの「前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の\n売り注文が約定されたことを検知すると,前記注文情報生成手段は, 前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記複数の売り注文 のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注 文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」にいう「前記注文情 報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」,「前 記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価 格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」と の記載は,「売り注文情報生成手段」が,「前記約定検知手段」の 「前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が 約定された」との「検知の情報を受けて」,当該「最も高い売り注 文価格」よりも「さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含 む売り注文情報を生成する」ことを規定したものであり,「売り注 文情報生成手段」が行う処理を規定したものと解される。 次に,本件明細書には,「シフト機能」による注文は,「新規注文と決済注文が少なくとも1回ずつ約定したのちに,更に新規注文\nや決済注文が発注される際に,先に発注済の注文の価格や価格帯と は異なる価格や価格帯にシフトさせた状態で,新たな注文を発注さ せる態様の注文形態」であること(【0078】),この「シフト 機能」は,「相場価格の変動により,元の第一注文価格や元の第二注文価格よりも相場価格の変動方向側に新たな第一注文価格の第一\n注文情報や新たな第二注文価格の第二注文情報を生成し,相場価格 を反映した注文の発注を行うことができる」(【0018】)とい う効果を奏することの開示がある。そして,構成要件Hの文言及び本件明細書の上記記載から,構\成要件Hは,「シフト機能」のうち,\n更に「決済注文」(売り注文)が発注される際に,先に発注済の「決 済注文」(売り注文)がシフトする構成のものを規定したものであることを理解できる。他方で,本件明細書には,「シフト機能\」のうち,更に「決済注文」(売り注文)が発注される際に,先に発注 済の「決済注文」(売り注文)がシフトする構成の場合において,新たな「買い注文」の発注やその約定によって,「シフト機能\」の効果等が影響を受け得ることについての記載や示唆はない。 以上の本件発明の特許請求の範囲(請求項1)及び本件明細書の 記載を総合すると,構成要件Hの「前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」,「前記複数の売り注文\nのうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注 文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」とは,「売り注文情 報生成手段」(前記注文情報生成手段)が,「前記約定検知手段」 の「前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文 が約定された」との「検知の情報」を受けたことに基づいて,「さ らに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生 成する」構成のものであれば,新たな「買い注文情報」の生成や「買い注文」の約定又はその検知に関わりなく,構\成要件Hに含まれるものと解される。
(イ) これに対し控訴人は,(1)本件発明の特許請求の範囲(請求項1) の記載によれば,構成要件Hの「前記検知の情報を受けて,…さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成\nする」とは,直前の検知の情報を条件として,これに続いて,前記 の売り注文が発生するという意味であって,これらの間に他の処理 が介在する記載はないこと,(2)本件明細書には,従前の新規注文B 1ないしB5及び従前の決済注文S1ないしS5が全部約定したこ とを検知し,この検知の情報を受けて,新たな新規注文B1ないし B5及び新たな決済注文S1ないしS5を一括発注するものであり (【0142】ないし【0154】,図35),「前記検知の情報 を受けて」(構成要件H)と,「さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」(構\成要件H)との間に,他の手続が介在するもの,例えば,新たな新規注文B1ないし B5と新たな決済注文S1ないしS5とを新規に一括発注せずに, まずは新たな新規注文B1ないしB5を発注し,その約定を検知し てから,新たな決済注文S1ないしS5を発注するようなものにつ いての開示はないこと,(3)本件出願の経過において,被控訴人は, 拒絶理由通知を受けて,本件手続補正書及び本件意見書を提出して, 本件出願に係る旧請求項1に構成要件EないしGを新たに加え,構\ 成要件Hを補正する手続補正を行うとともに,本件意見書において, シフトが生じるための条件として,最も高い売り注文の約定状況の みを監視することとし,それ以外の処理を監視することを除外する 旨を主張したことを総合すると,構成要件Hの「前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記複数の\n売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高 い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成すること」にいう 「前記検知の情報を受けて」とは,「前記相場価格が変動して,前 記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文 価格の売り注文が約定されたことを検知すると」,他の処理を何も 介在せずに,直ちに「前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文 価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り 注文情報を生成する」ことを意味するものと解すべきである旨主張 する。
しかしながら,上記(1)の点については,本件発明の特許請求の範 囲(請求項1)の記載中には,構成要件Hの「前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」と「前記複数\nの売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ 高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」との間に, 「他の処理を何も介在せずに」とか「直ちに」との文言は存在しな い。
次に,上記(2)の点については,前記(ア)で説示したとおり,構成要件Hは,「シフト機能\」(【0078】)のうち,更に「決済注文」(売り注文)が発注される際に,先に発注済の「決済注文」(売 り注文)がシフトする構成のものを規定したものであるところ,本件明細書には,「シフト機能\」のうち,更に「決済注文」(売り注文)が発注される際に,先に発注済の「決済注文」(売り注文)が シフトする構成の場合において,新たな「買い注文」の発注やその約定によって,「シフト機能\」の効果等が影響を受け得ることについての記載や示唆はない。また,控訴人が挙げる本件明細書の記載 (【0142】ないし【0154】,図35)は,「発明の実施の 形態の3」に係るものであるが,本件明細書には,「上記の「シフ ト機能」は,上記発明の実施の形態1や,発明の実施の形態2の構\ 成において適用することもできる。」こと(【0151】)及び「上 記各実施の形態は本発明の例示であり,本発明が上記各実施の形態 のみに限定されることを意味するものではないことは,いうまでも ない。」こと【0164】の記載があることに照らすと,控訴人が 挙げる本件明細書の上記記載から構成要件Hを限定解釈すべき理由はない。\n
さらに,上記(3)の点については,被控訴人は,本件手続補正書(乙 14)により,本件出願に係る旧請求項1について,「前記相場価 格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち, 最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると, 前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受 けて,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさら に所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成 する」(下線は,補正箇所を示す。)と補正し,本件意見書(乙1 5)において,「本願発明においては,一の注文手続で生成された 複数の売り注文情報に基づく複数の売り注文よりも高い売り注文情 報の生成…は,一の注文手続で生成された複数の売り注文情報に基 づく複数の売り注文のうちの最も高い売り注文の約定…が検知され たことを基準に行われることになります。そのため,システムにお いては,特定の注文に係る注文情報(相場の移動方向側である,最 も高い買い注文価格の買い注文に係る買い注文情報や,最も低い売 り注文価格の売り注文に係る売り注文情報)の約定状況のみを監視 すれば,新たな注文情報の生成(一の注文手続で生成された中で最 も高い売り注文価格よりも高い売り注文価格の売り注文情報の生成 …を,ただちに生成することができ,システムの情報保持や情報監 視のための負担が大きくなることはありません。これにより,本願 発明においては,新たな注文情報の生成や,その注文情報に基づく 注文の発注等の処理を,システム負荷の軽い,簡易な手順によって 処理することができるという効果を奏します。」と述べたことが認 められるが,他方で,本件手続補正書及び本件意見書は,平成29 年4月11日付けの拒絶理由通知(乙18)において「引用文献1 に記載された発明に引用文献2に記載の技術を適用し,引用文献1 に記載された発明において,繰り返し注文を行う際,相場価格の上 昇傾向に対応して以前の注文価格よりも高い価格の注文情報を生成 するように構成することは,当業者ならば容易に為し得ることである。」との進歩性欠如の指摘を受けて提出されたものであることに\n照らせば,本件手続補正書及び本件意見書は,本件発明が,複数の 売り注文のうち最も高い売り注文価格の売り注文の約定に基づいて, 同注文価格よりも高い価格の売り注文を生成する点に技術的意義を 有し,進歩性を有する旨を主張したものであって,本件意見書の「約 定状況のみを監視すれば」,「ただちに生成する」といった記載か ら,両者の間に他の処理を介在させる構成や時間的間隔が存在する構\成を本件発明から除外したものということはできない。したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
ウ 構成要件Hの充足性について
(ア) 前記2(3)イ(イ)のとおり,(1)ないし(4)の売り注文のうち,最も高 い注文価格の番号113の売りの指値注文(指定価格114.90 円)が約定した後に,番号113の注文価格より「0.62円」高 い番号96の売りの指値注文(指定価格115.52円)がされて いることに照らすと,被告サーバにおいては,約定検知手段が複数 の売り注文のうち最も高い売り注文価格の売り注文の約定を検知す ると,注文情報生成手段が,この検知の情報を受けたことに基づい て,約定した最も高い売り注文の売り注文価格よりもさらに所定価 格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成したこと が認められる。 したがって,被告サーバは,構成要件Hを充足するものと認められる。\n
・・・・
控訴人は,本件明細書の発明の詳細な説明には,構成要件Hに対応する「シフト機能\」に係る構成について,「いったんスルー注文」及び「決済トレー\nル注文」と組み合わせた,複数の新規注文の全て及び複数の決済注文の全て がそれぞれ1回ずつ約定した場合に複数の新規注文の全て及び複数の決済注 文の全てに対応する個数の新たな複数の新規注文及び新たな複数の決済注文 を発注させることしか記載されておらず,構成要件Hに含まれる「シフト機能\」を「いったんスルー注文」及び「決済トレール注文」に組み合わせたもの以外の構成のものについては記載されていないことからすれば,構\成要件 Hは,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものといえないから,特許 法36条6項1号所定の要件(以下「サポート要件」という。)に適合する とはいえない旨主張する。 ア そこで検討するに,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載中に は,構成要件Hの「前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたこ\nとを検知すると,前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知 の情報を受けて,前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりも さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成す る」との記載において,「注文情報生成手段」が生成する「所定価格だけ 高い売り注文価格の情報」を含む「売り注文情報」の個数を規定する記載 はないから,当該「売り注文情報」は,複数の場合に限らず,一つの場合 も含むものと理解できる。
イ(ア) 次に,本件明細書の発明の詳細な説明には,(1)「シフト機能」について,「金融商品取引管理装置1や金融商品取引管理システム1Aにお\nいて,既に発注した新規注文と決済注文をそれぞれ約定させたのち,「シ フト機能」による処理を併用した取引を行うことも可能\である。この「シ フト機能」による注文は,上述した,「いったんスルー注文」や「決済トレール注文」や,各種のイフダン注文(例えば後述する「リピートイ\nフダン注文」や「トラップリピートイフダン注文」)等に基づいて,新 規注文と決済注文が少なくとも1回ずつ約定したのちに,更に新規注文 や決済注文が発注される際に,先に発注済の注文の価格や価格帯とは異 なる価格や価格帯にシフトさせた状態で,新たな注文を発注させる態様 の注文形態である。」こと(【0078】),(2)「シフト機能」は,「相場価格の変動により,元の第一注文価格や元の第二注文価格よりも相場\n価格の変動方向側に新たな第一注文価格の第一注文情報や新たな第二注 文価格の第二注文情報を生成し,相場価格を反映した注文の発注を行う ことができる」(【0018】)という効果を奏すること,(3)「発明の 実施の形態3」は,「この実施の形態3の金融商品取引管理システムに おいては,「いったんスルー注文」と「決済トレール注文」とを,「ら くトラ」による注文と組み合わせ,さらに「シフト機能」を行わせる状態を示す。」(【0138】)ものであるが,「上記の「シフト機能\」は,上記発明の実施の形態1や,発明の実施の形態2の構成において適用することもできる。」こと(【0151】)及び「上記各実施の形態\nは本発明の例示であり,本発明が上記各実施の形態のみに限定されるこ とを意味するものではないことは,いうまでもない。」こと(【016 4】)の記載がある。 上記(1)の記載から,「シフト機能」は,「新規注文と決済注文が少なくとも1回ずつ約定したのちに,更に新規注文や決済注文が発注される\n際に,先に発注済の注文の価格や価格帯とは異なる価格や価格帯にシフ トさせた状態で,新たな注文を発注させる態様の注文形態」であり,シ フトされる先に発注済の注文には,「新規注文」又は「決済注文」の一 方のみの構成又は双方の構\成が含まれること,先に発注済の一つの注文 の「価格」をシフトさせる構成のものと先に発注済の複数の注文の「価格帯」をシフトさせる構\成のものが含まれることを理解できる。また,上記(1)ないし(3)の記載から,「シフト機能」は,「相場価格を反映した注文の発注を行うことができる」という効果を奏し,「いった\nんスルー注文」,「決済トレール注文」や,各種のイフダン注文(例え ば…「リピートイフダン注文」や「トラップリピートイフダン注文」)」 等の注文方法とは別個の処理であること,「シフト機能」にこれらの各種の注文方法のいずれを組み合わせるかは任意であることを理解できる。\n
ウ(ア) 本件明細書の発明の詳細な説明には,図35に示す「実施の形態 3」(【0144】ないし【0148】)として,シフト機能に決済トレール注文を組み合わせたトラップリピートイフダン注文で行われ,\n決済注文S5,S4が約定した後に,元の買い注文と同じ注文価格の 買い注文B5,B4及び元の売り注文S5,S4と同じ注文価格の売 り注文S5,S4が再度生成されるが,この時点ではシフトは発生せ ず,通常のリピートイフダン注文が繰り返され,その後相場価格が変 動して,S1ないしS3の売り注文価格がトレールし,S1ないしS 3が最も高い注文価格の売り注文として同時に約定すると,再度生成 された売り注文S5,S4は約定していないにも関わらずこれをキャ ンセルして,S1ないしS5のシフトが実行されることが記載されて いる。上記記載は,構成要件Hに含まれる,「シフト機能\」に「いっ たんスルー注文」及び「決済トレール注文」を組み合わせた構成の一つであることが認められる。\nまた,シフト機能に決済トレール注文を組み合わせない場合には,図35において,S2及びS3の売り注文価格がトレールしないため,\nそれぞれの注文情報が生成された時点における価格のとおり,それぞ れ別々に約定し,その場合,実施の形態3の取引例でS5,S4が約 定した段階ではシフトが生じていないのと同様に,S3,S2が約定 した段階ではシフトが生じず,その後に最も高い売り注文価格の売り 注文であるところのS1が約定した段階でシフトが生じることになる ことを理解できる。 そうすると,複数の売り注文情報のうち最も高い売り注文価格の売 り注文が約定すると,それよりも所定価格だけ高い売り注文価格の情 報を含む売り注文情報を生成するという構成要件Hに係る構\成は,本 件明細書の上記記載から認識できるから,本件明細書の発明の詳細な 説明に記載されているということができる。
(イ) これに対し控訴人は,図35には,S5,S4が約定した後に再 度S5,S4が生成されることの記載はなく,B5,B4には,直後 に「キャンセル」と記載されていることからすれば,S5,S4が約 定しても,元の買い注文B5,B4と同じ注文価格の買い注文B5, B4がそもそも生成されないか,生成されてもすぐにキャンセルされ ていると理解できること,加えて,本件明細書の【0144】ないし 【0147】にも,新たな新規注文B5及びB4は,個別に生成され るのではなく,(従前の)決済注文の全ての約定((従前の)決済注 文S1ないしS3の約定)を待って,新たな新規注文B1ないしB3 とともに新たな新規注文が一括して生成されることが開示されている ことからすると,図35には,同図右上のS1ないしS3が同時に約 定し,もって,B5ないしB1及びS5ないしS1の全てが1回ずつ 約定した後に,「シフト機能」によるシフトが行われ,新たなB5ないしB1及びS5ないしS1が一括的に生成される場合が示されてい\nるに過ぎず,B5,B4に対応する決済注文S5,S4が約定すると, 元の買い注文B5,B4と同じ注文価格の買い注文B5,B4が再度 生成されることを看取できない旨主張する。 しかしながら,図35には,明示の記載はないが,決済注文S5, S4が約定した後に,元の買い注文と同じ注文価格の買い注文B5, B4及び元の売り注文S5,S4と同じ注文価格の売り注文S5,S 4が再度生成され,通常のリピートイフダン注文が繰り返されること は,「図30に示すように,相場価格64が上昇から下落に転じ,1 ドル=100.60円未満になると,約定情報生成部14は,決済注 文S4,S5を約定させる処理を行う。これにより,(新規注文情報 18114,18115に基づく)新規注文B4,B5と,(決済注 文情報18119,18120に基づく)決済注文S4,S5による イフダン注文の取引がそれぞれ成立する。これにより,注文情報生成 部16は,元の新規注文B4,B5と元の決済注文S4,S5と同じ, 新たな新規注文B4,B5と元の決済注文S4,S5を生成する。」 (【0132】)との記載に照らしても明らかである。 したがって,控訴人の上記主張は,その前提において,採用するこ とができない。
エ 以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,「シフト機能」を「いったんスルー注文」及び「決済トレール注文」に組み合わせた構\成のもの(実施の形態3)のほか,構成要件Hに含まれる,これ以外の構\成の もの(最も高い売り注文価格の特定の一の売り注文が約定されたことを検 知すると,前記注文情報生成手段が,更に所定価格だけ高い「一の売り注 文情報」を生成するもの)についての開示があることが認められる。 したがって,構成要件Hは,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであることが認められ,本件発明はサポート要件に適合するものと認\nめられるから,これと異なる控訴人の前記主張は理由がない。

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平成30(ワ)12609  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月9日  東京地方裁判所

 スマホ用のアプリについての特許侵害事件です。東京地裁29部は、無効理由無し、差止の必要性ありとして請求を認容しました。原告はヤマハ(株)です。被告アプリの名称から、下記サービスがヒットしましたが、これかどうかは不明です。https://www.cbnet.co.jp/archives/1978

 本件発明1は,(1)案内音声である再生対象音を表す音響信号と当該案内音声である再生対象音の識別情報を含む変調信号とを含有する音響信号に応じて放音さ\nれた音響を収音した収音信号から識別情報を抽出する情報抽出手段,(2)情報抽出手 段が抽出した識別情報を含む情報要求を送信する送信手段,(3)情報要求に含まれる 識別情報に対応するとともに案内音声である再生対象音に関連する複数の関連情報 のいずれかを受信する受信手段,(4)受信手段が受信した関連情報を出力する出力手 段としてコンピュータを機能させることにより,赤外線や電波を利用した無線通信に専用される通信機器を必要とせずに,案内音声である再生対象音の識別情報に対\n応する関連情報を利用者に提供することを可能とする(【0005】)。
エ 以上に加えて,本件発明1は,前記送信手段が,当該端末装置にて指定され た言語を示す言語情報を含む情報要求を送信し,前記受信手段が,情報要求の識別 情報に対応するとともに相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち情報要求の 言語情報で指定された言語に対応する関連情報を受信するという構成を採用することにより,相異なる言語に対応する複数の関連情報のうち情報要求の言語情報で指\n定された言語に対応する関連情報を受信することができ,使用言語が相違する多様 な利用者が理解可能な関連情報を提供できるという効果を奏するものである(【0006】等)。\n
・・・
被告は,(1)乙9公報は,音響IDとインターネットを用いて,放音装置から放音 された音響IDによって識別される識別対象の情報に対し,これと関連する任意の 関連情報をサーバから端末装置に供給できる乙9技術を開示しているところ,本件 発明1も乙9技術を採用するものであり,相違点1−5ないし同1−7は,情報要 求に含まれる情報の内容,複数の関連情報の選択条件,関連情報の内容に係る相違 にすぎず,当業者が適宜設定できるものである旨主張するとともに,(2)当業者は, 乙9発明1に,乙10発明又は乙5公報及び乙10公報記載の周知技術,並びに周 知技術(乙14等)を組み合わせるなどして,相違点1−5ないし同1−7に係る 本件発明1の構成を容易に想到し得た旨主張する。しかしながら,まず,被告の上記(1)の主張については,前記(1)エと同様に,乙9 公報等に音響IDとインターネットを用いた同種の情報提供が開示されていたとし ても,本件発明1は,その手順や方法を具体的に特定し,使用言語が相違する多様 な利用者が理解可能な関連情報を提供できるという効果を奏するものとした点において技術的意義が認められるものであるから,相違点1−5ないし同1−7に係る\n本件発明1の構成が当業者において適宜設定できる事項であるということはできない。\n
・・・
5 争点6(差止めの必要性は認められるか)について 被告は,本件アプリについて差止めの必要性は認められないとし,その理由とし て,(1)本件口頭弁論終結時点において,本件アプリに係るサービスは実用化されて いなかったこと,(2)被告は,平成30年5月以降,本件アプリの配信を中止し,多 言語で情報配信を行う機能を取り除いた本件新アプリを配信しており,本件訴訟の結果によって本件アプリに係る事業を再開するか否かを決定する予\定であること,
(3)被告は,今後,顧客に対し,案内音声である再生対象音の発音内容を表す他国語の関連情報を提供することを禁ずる旨の約束や,案内音声である第1言語の再生対\n象音が表す発音内容を第2言語で表\\現した情報を提供することを禁ずる旨の約束を する意思があることを主張する。 しかしながら,前記認定のとおり,本件アプリは,本件発明1の技術的範囲に属 し,本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものとは認められないから, 前記第2の2(4)のとおり,被告は,少なくとも,平成29年5月頃から平成30年 6月頃まで,本件アプリを作成し,譲渡等及び譲渡等の申出をし,平成28年6月から平成29年3月までの間に3回にわたり本件アプリを使用することによって本\n件特許権1を侵害していたものである。 これらに加えて,被告が本件訴訟において本件アプリが本件発明1の技術的範囲 に属することを否認して争い,本件特許1について特許無効審判により無効にされ るべきであると主張していること,弁論の全趣旨によれば,被告は,現在も,ウェ ブサイトに本件アプリの説明や広告を掲載していると認められ,被告が本件アプリ の作成等を再開することが物理的に不可能な状況にあるとは認められないことなども考慮すると,被告は,今後,本件特許権1を侵害するおそれがあるものというべ\nきであるから,原告が被告に対し,その侵害の予防のため,本件アプリの作成等の差止を求める必要性は認められるものというべきである。\n

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平成30(行ケ)10178  特許取消決定取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和元年10月24日  知的財産高等裁判所

 インターネット上のブログの証拠能力が争われました。アーカイブのウェイバックマシンに保存された資料の公知日の認定が争われました。公知日の認定に誤りなしとして、無効とした審決を維持しました。\n

 前記アの記載によれば,甲1は,2017年(平成29年)9月 1 日に インターネットで検索して表示された「ドラコレ旅日記 GREE のアプリ 「ドラゴンコレクション」を楽しむ管理人の日記」と題する「FC2ブロ グ」のコピーであること,同ブログは,広告欄の「スポンサーサイト」, ブログ本文の「11/25 更新情報」,「最新コメント」,「関連記事」等の 各項目で構成されていること,「11/25 更新情報」の項目の右横には「20 11.11.25 23:18 Cat:旅日記」(画像3)との表示があること,同項目欄\nに掲載された記事(本件更新情報)には,「「友情のきずな」キャンペー ンを開催中です。」,「期間:11/25(金)14:00〜11/29(火)14:00」と の記載があること(画像4)が認められる。 上記記載から,本件更新情報は,「11/25 更新情報」の項目の右横に表\n示された「2011.11.25 23:18」(2011年11月25日23時18分) に更新され,保存されたことが認められる。 したがって,本件更新情報は,本件出願前(出願日平成25年9月27 日)の平成23年(2011年)11月25日,電気通信回線を通じて公 衆に利用可能となったものと認められる。\nそうすると,本件決定が本件更新情報に基づいて認定した引用発明1は, 本件出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に該当す\nるものと認められる。
ウ 原告の主張について
原告は,(1)甲1の「スポンサーサイト」の項目欄の直下には,本件出願 後の平成29年(2017年)7月21日に制作発表されたゲーム「みん\nなでにゃんこ大戦争」(甲20)の画像が表示されているから,本件更新\n情報が公衆に利用可能となったのは,早くても同日である,(2)甲1におい ては,少なくとも,ゲーム「みんなでにゃんこ大戦争」の画像が表示され\nた部分,「最新コメント」の項目欄の各コメント部分,「関連記事」の項 目欄の「【バトルイベント】神獣の魂【予告】(2011/12/09)」及び「エ レボスの坑道結果報告(2011/12/06)」の部分は,平成23年11月25 日より後に書き換えられたものであるから,本件更新情報についても,同 日より後に書き換えられた可能性を否定できない旨主張する。\nしかしながら,上記(1)の点については,甲1の「スポンサーサイト」の 項目欄には,「みんなでにゃんこ大戦争 新機能登場!」の画像の下に「上\n記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。」,「新し\nい記事を書く事で広告が消せます。」と表示されていること,「FC2ブ\nログ」の仕様等を定めた「FC2ブログマニュアル」(甲10)には,「ロ グの有効期間」の項目に,「(1か月新規投稿がない場合は,記事部にス ポンサー広告が表示されます。)」との記載があること,平成30年5月\n2日及び平成31年3月13日に甲1の URL を検索した際,本件更新情報 の記載がある一方で,スポンサーサイトの項目欄に表示された画像は,「み\nんなでにゃんこ大戦争 新機能登場!」とは異なる画像が表\示されたこと (甲11ないし13,乙1)に照らすと,甲1の「スポンサーサイト」の 項目欄に表示される広告は,甲1の URL を検索した時点で1か月以上ブロ グの更新がされていない場合に,FC2ブログの運営者であるFC2が契 約しているスポンサー広告が表示されるものであって,ブログの記載内容,\n更新日時とは関係しないことが認められる。 また,上記(2)の点については,甲1を構成する「11/25 更新情報」の項 目欄とは異なる他の項目欄に掲載された情報が平成23年11月25日よ り後に更新された事実があるからといって本件更新情報が同日より後に書 き換えられた可能性があることを基礎付けることはできない。\nしたがって,原告の上記主張は理由がない。

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平成31(ネ)10034  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月31日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審は、コンピュータプログラムにかかる特許について、構成要件FおよびGを有していないとして、技術的範囲に属しないと判断しました。知財高裁はこれを維持しました。

 構成要件Gの「前記上位ノード変数データ」の意義について\n
a 本件発明の構成要件Fの「前記スクリプトは,当該ノードデータに\n含まれる変数データである自ノード変数データと,当該ノードの直系 上位ノードのノードデータに含まれる変数データである上位ノード変 数データを利用した演算を行って,前記自ノード変数データの値を求 める代入用スクリプトを含んでおり」との記載及び構成要件Gの「前\n記表示された木構\造のノードのうちの選択されたノードの前記自ノー ド変数データ,前記上位ノード変数データ及び前記スクリプトを表示\nするノードデータテーブル表示ステップ」との記載から,本件発明の\n「上位ノード変数データ」は,「当該ノードの直系上位ノードのノー ドデータに含まれる変数データ」であり,構成要件Fの「前記自ノー\nド変数データの値」を求める「代入用スクリプト」による演算に利用 される「変数データ」であることを理解できる。 次に,本件明細書には,「上位ノード変数データ」に関し,「変数 情報は,各ノードが保持するデータであって,変数名に対応させて記 憶される。記憶される変数は,下位ノードから参照される公開変数と, 自ノード内でのみ使用する限定変数を含む。また,変数の値(「変数 データ」と記述する場合もある。)は,固定値が設定されても,スク リプトの実行によって演算された値が設定されてもよい。また,UR Lが設定されてもよい。どのような値が設定されるかは任意である。」 (【0031】),「代入用スクリプトは,自ノードの変数の値を演 算するためのものである。代入用スクリプトは,自ノードの変数の値 である自ノード変数データと,そのノードの直系上位ノードの公開変 数の値である上位ノード変数データを利用して記述することが可能で\nある。」(【0032】),「公開変数表示領域に表\示される公開変 数は,自ノードの公開変数51と,直系上位ノードの公開変数52を 含み,直系上位のノードの公開変数52は,自ノードの公開変数51 と異なる色で表示される(図10では,フォントを変えて示してある。)。\nまた,公開変数には,固定値が入力される公開変数と,代入用スクリ プトの実行によって計算される公開変数があり,修飾領域に「なし」 あるいは「要計算」を表示することによりに区別される。」(【00\n65】)との記載がある。 そして,図10には,「直系上位ノードの公開変数の値である上位 ノード変数データ」として,「52」に「変数名」及びそれに対応す る「値」が示されている(例えば,「変数名」の欄「パネル色」・「値」 欄「KW−400」)。 これらの記載によれば,本件明細書には,「上位ノード変数データ」 にいう「変数データ」は,「変数の値」を含むデータであることの開 示があることが認められる。 以上の本件発明の特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載によ れば,構成要件Gの「前記表\示された木構造のノードのうちの選択さ\nれたノードの前記自ノード変数データ,前記上位ノード変数データ及 び前記スクリプトを表示するノードデータテーブル表\示ステップ」に いう「前記上位ノード変数データ」は,「当該ノードの直系上位ノー ドのノードデータ」に含まれる「変数の値」を含むデータであると解 される。
b これに対し控訴人は,本件明細書の【0032】における「変数の 値(「変数データ」と記述する場合もある。)」との記載は,「変数 データ」という用語を,文脈によって,変数の値を指す意味で用いる こともあるという注意書きであると理解できること,「変数データ」 は,変数名と変数の型を意味するというのが,プログラミングに関す る通常の用語であること(甲24),実質的にも,本件発明が「ノー ドデータテーブル表示ステップ」において上位ノード変数データを表\ 示させる目的は,表示された木構\造の個々のノードに対応付けられた 詳細情報を簡単に表示することができる(【0009】)ことにより,\n文書ファイル(プログラム)の編集を容易にする点にあり,変数名が 分かれば,その目的を達成することができることからすると,本件発 明の「上位ノード変数データ」は,本件明細書において文脈上変数の 値を意味すべき場合を除き,変数名を指すと解すべきである旨主張す る。 しかしながら,本件明細書には,「上位ノード変数データ」が変数 名のみで構成される場合を含むことについての記載や示唆はない。\nまた,前記aの本件明細書の記載に照らすと,【0032】の「変 数の値(「変数データ」と記述する場合もある。)」との記載は,「変 数データ」は「変数の値」を意味することを示した記載であると解す るのが自然であり,これが変数の値を指す意味で用いることもあると いう注意書きであるということはできない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(イ) 被告プログラムにおける「ノードデータテーブル表示ステップ」の\n有無について
a 控訴人は,入力コネクタは,親ボックスから引き渡される値を記憶 する変数が図形化されたものであり,入力コネクタの名称が構成要件\nGにおける「上位ノード変数データ」に該当すること,インスペクタ 及びスクリプトエディタに表示される入力コネクタの名称に関する\n情報の表示は,上位ノード変数データを表\示するものであることから すると,被告プログラムは,「上位ノード変数データ」を表示する「ノ\nードデータテーブル表示ステップ」を備えている旨主張する。\nしかしながら,前記(ア)a認定のとおり,構成要件Gの「前記上位\nノード変数データ」は,「当該ノードの直系上位ノードのノードデー タ」に含まれる「変数の値」を含むデータであると認められるところ, 入力コネクタの名称は,「変数の値」であるとはいえないから,控訴 人の上記主張は,その前提を欠くものであり,理由がない。
b 控訴人は,被告プログラムの構成g’に関し,被告プログラムのS\nay Textボックスの「スクリプトエディタ」において「親から の変数を取得」機能を使う場合,上位ノードであるSayボックスの\n変数から利用可能なものを一覧表\示する機能があるから,被告プログ\nラムは,「上位ノード変数データ」を表示する「ノードデータテーブ\nル表示ステップ」を備えている旨主張する。\n しかしながら,控訴人の上記主張は,「スクリプトエディタ」にお いて,どのような「上位ノード変数データ」が表示されるのかについ\nて具体的に主張するものではないから,その主張自体理由がない。
c 以上によれば,被告プログラムは,「上位ノード変数データ」を表\n示する「ノードデータテーブル表示ステップ」を備えているものと認\nめることはできないから,構成要件Gの「前記表\示された木構造のノ\nードのうちの選択されたノードの前記自ノード変数データ,前記上位 ノード変数データ及び前記スクリプトを表示するノードデータテーブ\nル表示ステップ」を備えているものと認めることはできない。\n
ウ まとめ
以上のとおり,被告プログラムは,構成要件Gの「木構\造を表示する木\n構造表\示ステップ」及び「ノードデータテーブル表示ステップ」を備えて\nいるものと認められないから,構成要件Gを充足しない。\n

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◆平成29(ワ)31706

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平成30(ワ)7123  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年10月24日  大阪地方裁判所

 CS関連発明についての侵害事件で、大阪地裁21部は技術的範囲に属しないと判断しました。争点は「前記指定地域の外に出た後,再び前記指定地域内に戻っても,同じ前記広告情報を前記無線通信装置に送信しない」という用語の技術的意義です。

ア そもそも,特許発明の技術的範囲は,願書に添付した特許請求の範囲の 記載に基づいて定めなければならないとされている(特許法70条1項)。 そこで,本件特許の特許請求の範囲の請求項1をみると,構成要件Eとして,次\nのように記載されている。 「前記広告情報管理サーバは,前記無線通信装置が一旦前記指定地域の外に出た 後,再び前記指定地域内に戻っても,同じ前記広告情報を前記無線通信装置に送信 しないこと,を特徴とする無線通信サービス提供システム。」 ここでは, 「前記広告情報管理サーバは,同じ前記広告情報を前記無線通信装置に送信しな いこと,を特徴とする無線通信サービス提供システム。」 と記載されるのではなく,「前記無線通信装置が一旦前記指定地域の外に出た後, 再び前記指定地域内に戻っても,」という文言(以下「本件指定地域に関する文言」 という。)がみられる。 このように,構成要件Eには本件指定地域に関する文言がわざわざ付加されてい\nるから,その文言には何らかの意味があるものとして理解すべきであり,構成要件\nEについて本件指定地域に関する文言がない場合と同じ解釈をすることは許されず, その文言によって本件発明1の構成が特定(限定)されているものと理解するのが\n相当である。
イ そこで,本件指定地域に関する文言の意義について検討すると,ここで いう「指定地域」とは,構成要件C及びDの記載を踏まえると,広告提供者から入\n手した配信先情報に含まれる,広告提供者が広告情報を配信する地域として指定し た地域のことである。 そして,構成要件Eは,構\成要件Dにおいて,無線通信装置が少なくとも1回は 広告情報の配信を受けたことを踏まえたものであるから,無線通信装置がその時点 で上記指定地域内に存在していたことが前提となるが,無線通信装置は,その性質 上,(1)その指定地域内に存在し続ける場合((1)の場合)もあれば,(2)指定地域外に 出る場合もあり,後者の場合については,指定地域外に出たままの場合((2)−1の 場合)もあれば,一旦指定地域外に出た後,再び指定地域内に戻る場合((2)−2の 場合)も想定される。 このうち,指定地域外に出たままの場合((2)−1の場合)に,無線通信装置に同 じ広告情報が送信されないことは明らかであるが(これは構成要件Eによるもので\nはなく,指定地域内の無線通信装置に広告情報を送信するという構成要件Dの構\成 による作用効果である。),指定地域内に存在し続けている場合((1)の場合)及び 一旦指定地域外に出た後,再び指定地域内に戻った場合((2)−2の場合)には,無 線通信装置に同じ広告情報が送信される可能性がある。\nそうすると,本件指定地域に関する文言は,無線通信装置に同じ広告情報が送信 される可能性がある場合のうち,上記(2)−2の場合だけを記載し,上記(1)の場合を あえて記載していないことになる。
ウ 以上のことを踏まえると,構成要件Eは,広告情報管理サーバが,特に,\n無線通信装置が一旦指定地域外に出た後,再び指定地域内に戻った場合に,同じ広 告情報を無線通信装置に送信しないことを特徴とするということを記載したものと 解すべきこととなる。 もっとも,これは,広告情報管理サーバが広告情報を無線通信装置に送信するも のであること(構成要件C)を踏まえ,同じ広告情報を再送信するかどうかという\n機能ないし作用効果に着目して記載されたものであり,その具体的構\成について, 当該広告情報管理サーバは,単に,同じ広告情報を無線通信装置に再送信しないよ うにする構成を備えているだけでは足りず,一旦指定地域外に出た後,再び指定地\n域内に戻ったことを把握して,当該無線通信装置に,同じ広告情報を再送信しない ようにする構成を備えていなければ,構\成要件Eを充足するとはいえないと解すべ きである。
エ 原告の主張について
(ア) 原告は,本件明細書の【0070】の記載を指摘し,構成要件Eは,\n広告情報管理サーバが,無線通信装置への広告の配信回数が0であるか1であるか を表す送信済フラグに基づいて,無線通信装置が一旦配信エリアの外に出た後,再\nび配信エリア内に戻った場合には,広告情報を再送しないようにする態様を含むも のと解すべきであると主張する。 原告の主張のように,構成要件Eが,無線通信装置への広告の配信回数のみによ\nって広告情報を再送信しないようにする態様を含むと解する立場をとると,無線通 信装置が一旦配信エリアの外に出た後,再び配信エリア内に戻った場合だけでなく, 無線通信装置が配信エリア内に存在し続けている場合にも,同じ広告情報が再送信 されなければ構成要件Eを充足することになる。\nしかしながら,「一旦前記指定地域の外に出た後,再び前記指定地域内に戻って も」という構成要件Eの用語は,一義的に明確というべきであるし,特許請求の範\n囲には,発明を特定するために必要な事項が記載され(特許法36条5項),特許 発明の技術的範囲が,特許請求の範囲の記載に基づいて定められることは前述のと おりであるから(同法70条1項),前記(2)−1と(2)−2の態様を区別する構成な\nしに,広告情報の配信回数を制限し得ることをもって,構成要件Eを充足すると解\nすることはできない。
(イ) 本件明細書の【0070】では,広告情報管理サーバによる広告情報 (広告メッセージ)の配信方法等について記載されており,広告を配信する際,「個 人情報データベースに項目として本広告メッセージに対応する広告IDを追加し, 送信済フラグを立てる。これにより,同じユーザに対して同一の広告メッセージを 重複して送信することがなくなる。即ち,携帯端末1Aが一旦指定地域の外に出た 後,再び指定地域内に戻っても,この送信済フラグが立っていれば,同じ広告メッ セージを送信しない。」と記載されている。 この記載のうち,「即ち」よりも前の記載は,個人情報データベースに配信した 広告メッセージに対応する広告IDを追加し,送信済フラグを立てると,その広告 メッセージの配信を受けたユーザーに対しては,同一の広告メッセージを重複して 送信することがなくなるとの当然の機能ないし作用効果を記載したものと解される\nが,「即ち」の後ろの記載は,「携帯端末1Aが一旦指定地域の外に出た後,再び 指定地域内に戻っても,この送信済フラグが立っていれば,同じ広告メッセージを 送信しない。」というものであり,前記イで判示したとおり,携帯端末1Aが指定 地域内に存在し続けており,同一の広告メッセージを重複して受信する可能性があ\nる場合があえて除かれていることから,「即ち」の前の記載と同視し得るものと認 めることはできず,「即ち」の前の記載と後ろの記載とは,本来,「即ち」という 接続詞を用いて接続することのできる関係にはないといわざるを得ない。 したがって,構成要件Eは,【0070】の「即ち」の後ろの記載に対応するも\nのであるが,上記検討したところによれば,「即ち」の前の記載が,構成要件Eの\n意味内容である,あるいは,本件発明1の実施例であるということはできない。 また,【0070】は【0069】の後に記載されているところ,【0069】 では,広告情報管理サーバが,広告配信サービス契約を結んだ全てのユーザの携帯 端末の位置情報を時々刻々更新しており,常にそれら端末の現在位置を把握してい ることが記載されている。そして,【0070】の「即ち」の後ろでは,無線通信 装置が指定地域内に存在し続けている場合が除かれていることからすると,そこで は,特に,無線通信装置が一旦指定地域外に出た後,再び指定地域内に戻った場合 に,同じ広告メッセージを送信しないということを記載したものと読むのが自然で ある。 以上のことを踏まえると,【0070】の記載内容によって,前記ウの解釈は左 右されないというべきである。
(ウ) 本件特許の出願経過について
・・・・
(d) 原告は,同日,特許庁審査官に対し,意見書を提出し,上記補正 後の特許請求の範囲の請求項1について,その内容を記載した上で,「特に,『前 記広告情報管理サーバは,前記無線通信装置が一旦前記指定地域の外に出た後,再 び前記指定地域内に戻っても,同じ前記広告情報を前記無線通信装置に送信しない こと』に特徴付けられるものであります。」「本願発明は,かかる特徴的な構成を\n有機的に関連付けて具備することにより,明細書の段落0070に記載した通り, 『これにより,同じユーザに対して同一の広告メッセージを重複して送信すること がなくなる。即ち,携帯端末1Aが一旦指定地域の外に出た後,再び指定地域内に 戻っても,この送信済フラグが立っていれば,同じ広告メッセージを送信しない。』 という特有の作用・効果を奏するものであります。」などと説明した。また,原告 は,拒絶理由通知における引用文献との対比の項目でも,上記構成を含む構\成を「最 大の特徴」とした上で,引用文献にはこの構成についての記載や示唆は一切なく,\n補正後の請求項に係る各発明は,引用文献に記載された発明から当業者が容易に発 明することができたものではないと結論付けていた(乙1)。
(e) その後,上記請求項26を本件特許の設定登録時のもの(前記第 2の1(3)ウ参照)と同じ内容に変更する補正がされるなどした後,本件特許につい て特許査定がされた。
c 前記bで認定した本件特許の出願経過に照らし検討すると,確かに, 構成要件Eは本件明細書に【0070】の記載があることを踏まえて追加されたも\nのであることがうかがわれるが,原告は,上記補正に当たって,構成要件Eの構\成 を「特徴的な構成」などと位置付けた上で,この構\成を含む構成についての記載や\n示唆が引用文献には一切ないことを前提として,これを強調していた。 他方で,乙3の1の1ないし乙4の2によれば,本件特許が出願された平成12 年9月以前から,インターネットを利用した広告情報(バナー広告)の配信サービ スの分野においては,ユーザー(利用者)に対して同じ広告が配信(表示)される\n回数をコントロール(制限)することによって,「バナーバーンアウト」(広告に 反応がなくなる状態)ないし「バナー飽き(wearout)」を防止し,効果的な宣伝広 告を実現することが広く行われていたと認められる。この点,原告も,乙3の1の 1等で触れられているダブルクリック社の DART や乙4の1,2の公知技術が,広告 の配信回数を管理するものであることを認めている。 そうすると,原告が本件特許の出願経過において,単に,本件特許の出願前から 広く行われ,公知技術でもあった同じ広告の配信回数を管理するという構成による\n機能ないし作用効果を構\成要件Eに記載し,これを本件特許の「特徴的な構成」な\nどとして強調していたとは考え難い。 むしろ,前記認定の原告による本件特許の出願経過における説明内容に加え,本 件特許の出願当時,広く行われ公知とされていた技術を前提とすれば,原告は,特 に,無線通信装置が一旦指定地域外に出た後,再び指定地域内に戻った場合に,同 じ広告情報を無線通信装置に送信しないようにする構成を強調していたと理解する\nのが自然である。 したがって,先に判示した構成要件Eの解釈は,原告による本件特許の出願経過\nにおける説明等とも整合的ということができ,これに反する原告の主張は採用でき ない。

◆判決本文

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平成30(ネ)10006等  特許権侵害行為差止等請求控訴,同附帯控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月11日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 ゲームの特許について、約1.7億円の損害賠償が認められました。1審よりも損害賠償額が上がりました。これは1審では、A事件は特許無効と判断されましたが、知財高裁はA事件の特許に無効理由無しと判断したためです。

 これに対し控訴人は,本件発明A1の「拡張ゲームプログラムおよび /またはデータ」は,標準のゲーム内容に加え,拡張されたゲーム内容 を楽しむことが可能となるものであるから(本件明細書Aの【0020】\n等),標準のゲーム内容を置き換えるゲームプログラム及び/又はデー タを含まないと解され,本件発明A1と公知発明1との間には,相違点 1−1及び1−2のほかに,相違点1−3ないし1−5が存在する旨主 張する。
そこで検討するに,本件発明A1の特許請求の範囲(請求項1)の記 載によれば,「所定の拡張ゲームプログラムおよび/またはデータ」は, 「標準ゲームプログラムおよび/またはデータに加えて,ゲームキャラ クタの増加および/またはゲームキャラクタのもつ機能の豊富化および\n/または場面の拡張および/または音響の豊富化を達成するためのゲー ムプログラムおよび/またはデータ」であり,「第2の記憶媒体」に「包 含」されるものであって,「上記第2の記憶媒体が上記ゲーム装置に装 填され」,「上記ゲーム装置が」「第1の記憶媒体」が「包含する」「所 定のキーを読み込んでいる場合に」,「上記標準ゲームプログラムおよ び/またはデータと上記拡張ゲームプログラムおよび/またはデータの 双方によってゲーム装置を作動させ」ることを理解できる。 一方,上記特許請求の範囲には,「上記標準ゲームプログラムおよび /またはデータと上記拡張ゲームプログラムおよび/またはデータの双 方によってゲーム装置を作動させ」た場合に動作する「上記標準ゲーム プログラムおよび/またはデータ」が,「上記標準ゲームプログラムお よび/またはデータ」の全部であると限定して解釈すべき根拠となる記 載はない。そして,本件明細書Aの発明の詳細な説明にも,「上記標準 ゲームプログラムおよび/またはデータと上記拡張ゲームプログラムお よび/またはデータの双方によってゲーム装置を作動させ」る場合とは, 「上記標準ゲームプログラムおよび/またはデータ」の一部しか作動し ない場合を含まないものであり,「上記標準ゲームプログラムおよび/ またはデータ」の全部が動作することが必要であると解釈すべき根拠と なる記載はない。 前記(ア)のとおり,本件公知発明1の「勇士の紋章DDII」は,魔洞戦 紀DDIから転送されたキャラクタの魔洞戦紀におけるレベルが16以 上であるときには,(1)そのキャラクタの勇士の紋章におけるレベルが最 初から2となり,(2)神殿で祈ると「ゆうけんしのしそん じゅんくよ。 がんばるのだぞ。」とのメッセージが表示され,アイテム「くさのつゆ」\n及び「しろきのこ」が1つ増える,という動作機能を実行するゲームプ\nログラム及び/又はデータを包含するものである。 そうすると,上記(1)の点は,「勇士の紋章」の標準のゲーム内容であ ればレベル1からスタートするゲームキャラクタのレベル(乙A4の2・ 11枚目,乙A8の1・8頁)をレベル2からスタートできるようにす るものであり(乙A4の1・8枚目),上記(2)の点は,標準のゲーム内 容であれば金貨(GOLD)で支払わなければ取得できないアイテム(乙 A4の1・13枚目,乙A4の2・8枚目)を神殿で祈ることで取得で きるようにするものであって(乙A9・2頁,乙A10・3頁),いず れも新たな機能をゲームキャラクタに持たせるものであるから,これが\n「ゲームキャラクタのもつ機能の豊富化」に当たることは明らかである。\nまた,上記(2)の点は,「勇士の紋章」の標準のゲームの内容であれば, 神殿で祈ると「あなたのたたかいが ぶじおわりますよう。あくまに わ ざわいを!」とのメッセージのみが表示される場面を,神殿で祈ると「ゆ\nうけんしのしそん じゅんくよ。がんばるのだぞ。」とのメッセージが 表示され,アイテム「くさのつゆ」及び「しろきのこ」が1つ増えると\nいう場面とするものであるから,これが「場面の拡張」に当たることも 明らかである。 以上によれば,本件公知発明1の「勇士の紋章DDII」は,「標準ゲ ーム機能部分を実行する標準ゲームプログラム及び/又はデータ」に加\nえて,「ゲームキャラクタのもつ機能の豊富化」及び「場面の拡張」を\n達成するためのゲームプログラム及び/又はデータ,すなわち,本件発 明A1の「拡張ゲームプログラムおよび/またはデータ」を包含するも のといえる。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(ウ) 他方,被控訴人は,公知発明1における「所定のキー」に相当する「キ ャラクタ(じゅんく)のレベルが16以上であることを示す情報」とは, (1)魔洞戦紀DDIが装填されたことを示すデータ及び(2)キャラクタ(じ ゅんく)のレベルが16以上であるセーブデータである旨主張する。 そこで検討するに,証拠(甲A4の1,4の2,13の2)及び弁論 の全趣旨によれば,本件ゲームシステムA1において,まず,勇士の紋 章DDIIを装填し,次いで,「まどうせんきのAメンをいれてください」 というインストラクションに基づき,魔洞戦紀DDIを装填し,キャラ クタ「じゅんく」を選択した後,再度,勇士の紋章DDIIを装填した場 合には,勇士の紋章においてもキャラクタ「じゅんく」でプレイできる ことが認められる。 しかしながら,魔洞戦紀DDIを装填することにより当然に,本件発 明A1の「拡張ゲームプログラムおよび/またはデータ」に相当する, 本件公知発明1の「ゲームキャラクタのもつ機能の豊富化」及び「場面\nの拡張」を達成するためのゲームプログラム及び/又はデータと,標準 ゲームプログラム及び/又はデータの双方によって,ファミリーコンピ ュータが作動されるものではない。前記(ア)及び(イ)のとおり,本件公知 発明1の「標準ゲームプログラムおよび/またはデータと拡張ゲームプ ログラム及び/又はデータの双方によってファミリーコンピュータを作 動させ」るには,魔洞戦紀DDIから,キャラクタ(じゅんく)のレベ ルが16以上であるセーブデータを読み込むことが必要であり,かかる データを読み込んでいない場合には,上記のようにインストラクション に基づき魔洞戦紀DDIを装填するなどの作業をしたとしても,本件公 知発明1の「標準ゲームプログラムおよび/またはデータのみによって ファミリーコンピュータを作動させる」こととなる。 以上によれば,上記(1)のデータは,本件公知発明1の「拡張ゲームプ ログラムおよび/またはデータ」を作動させる条件であるとはいえない から,本件発明A1の「所定のキー」に相当する本件公知発明1の「キ ャラクタ(じゅんく)のレベルが16以上であることを示す情報」には, 上記(1)のデータは含まれないといえる。 したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。
イ 本件発明A1と本件公知発明1の対比 本件発明A1と本件公知発明1とを対比すると,以下の相違点が存在す ることが認められる。
(相違点1−1)
一の記憶媒体,二の記憶媒体が,本件発明A1は,「記憶媒体(ただし, セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)」であるのに対し,本件公\n知発明1は「セーブデータなどを記憶可能なディスク」である点。\n
(相違点1−2)
本件発明A1の「第1の記憶媒体」は,セーブデータを記憶可能な記憶\n媒体を除くから,「所定のキー」はセーブデータを含まないのに対し,本 件公知発明1では,魔洞戦紀DDIに包含される「所定のキー」が,魔洞 戦紀DDIに記憶されたセーブデータであって,魔洞戦紀DDIにセーブ されたキャラクタのレベルが21であることを示す情報である点。
ウ 相違点の容易想到性について
(ア) 本件公知発明1の技術思想
本件公知発明1の内容に加え,前記アに掲記の各証拠及び弁論の全趣 旨を総合すれば,(1)ディープダンジョン(DD)シリーズの後作「勇士 の紋章」は,前作「魔洞戦紀」の続編であって,両者は,魔洞戦紀にお いて,魔王が勇剣士に倒され平和を取り戻したものの,勇士の紋章にお いて,魔王が復活し,勇剣士が再び冒険するという一連のストーリーを 有するゲームであること,(2)「魔洞戦紀」の勇剣士のキャラクタを,「勇 士の紋章」に転送することにより,「魔洞戦紀」の「勇剣士」を,「勇 士の紋章」の「勇士」として復活させることができること,(3)「魔洞戦 紀」において,キャラクタのレベルが16以上であれば,レベル1から ではなく,レベル2のキャラクタとして「勇士の紋章」でプレイできる こと,(4)このような場合に,「魔洞戦紀」から転送されたレベル16以 上のキャラクタは,「勇士の紋章」においては「勇剣士の子孫」として 復活すること,(5)「魔洞戦紀」のキャラクタリストは,「魔洞戦紀」に おいて,特定のキャラクタでゲームをプレイしている途中で中断し,そ の後,中断した場面からゲームを再開してプレイするために,ディスク にセーブされたものと解されることが認められる。 上記認定事実によれば,本件公知発明1は,前作と後作との間でスト ーリーに連続性を持たせた上,後作のゲームにおいても,前作のゲーム のキャラクタでプレイしたり,前作のゲームのプレイ実績により,後作 のゲームのプレイを有利にしたりすることによって,前作のゲームをプ レイしたユーザに対して,続編である後作のゲームもプレイしたいとい う欲求を喚起し,これにより後作のゲームの購入を促すという技術思想 を有するものと認められる。
(イ) 相違点1−1について
前記(ア)のとおり,本件公知発明1は,キャラクタでプレイするゲーム において,セーブされたキャラクタを前作のゲームから後作のゲームに 転送するものであり,前作のゲームにおいて,プレイ途中でセーブして, なおかつ,キャラクタのレベルが16以上である場合に,後作のゲーム において,ゲームのプレイが有利になるという特典が与えられるもので ある。 そうすると,本件公知発明1は,少なくとも,前作において,ゲーム をプレイ途中でセーブするとともに,ゲームをある程度達成した,すな わち,前作のゲームにおいて,キャラクタのレベルが16以上となるま でプレイしたという実績があることが,後作においてプレイを有利にす るための必須の条件であり,「キャラクタ」,「プレイ実績」を示す情 報を前作の記憶媒体にセーブできることが本件公知発明1の前提であっ て,「キャラクタ」,「プレイ実績」の情報をセーブできない記憶媒体 を採用すると,前作のゲームにおける「キャラクタ」,「プレイ実績」 の情報が記憶媒体に記憶されないこととなり,「前作のゲームのキャラ クタで,後作のゲームをプレイする」,「前作のキャラクタのレベルが 16以上であると,後作において拡張ゲームプログラムを動作させる」 という本件公知発明1を実現することができなくなることは明らかであ る。 したがって,仮に,被控訴人の主張するとおり,ゲームプログラム及 び/又はデータを記憶する媒体としてCD−ROMを用いることが本件 特許Aの出願前において周知技術であり,また,同一タイトルのゲーム をCD−ROMやROMカセットに移植することが一般的に行われてい る事項であったとしても,本件公知発明1において,記憶媒体を,ゲー ムのキャラクタやプレイ実績をセーブできない「記憶媒体(ただし,セ ーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)」に変更する動機付けはな\nく,そのような記憶媒体を採用することには,阻害要因がある。 以上のとおりであるから,本件公知発明1において,相違点1−1に 係る本件発明A1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たもの\nであるとは認められない。
(ウ) 相違点1−2について
前記(イ)と同様の理由により,本件公知発明1において,相違点1−2 に係る本件発明A1の構成を採用することは,動機付けを欠き,むしろ\n阻害要因があるというべきであるから,当業者が容易に想到し得たもの であるとは認められない。
(エ) 被控訴人の主張について
これに対し被控訴人は,相違点1−1及び1−2は,本件訂正Aによ り,「第1の記憶媒体」及び「第2の記憶媒体」から「セーブデータを 記憶可能な記憶媒体」が除かれ,その結果,「所定のキー」からセーブ\nデータが除かれたこと(「除くクレーム」とされたこと)により生じた ものであることを前提として,除くクレームとする訂正により,形式的 に主引用発明との間に相違点が存在すると認められる場合は,(1)相違点 に係る構成によって,技術的観点から主引用発明と異なる作用効果が存\n在するか否かを検討し,(2)技術的意義が認められない場合には,実質的 な相違点とはいえず新規性が否定されると解すべきであり,(3)技術的意 義が認められた場合には,当業者において適宜なし得る設計事項に過ぎ ないか否かを検討し,設計事項に過ぎない場合には,進歩性が否定され ると解すべきであるところ,本件訂正Aは,シリーズ化された一連のゲ ームソフトを買い揃えていくことにより,豊富な内容のゲームを楽しむ\nことができるようにするという本件発明A1の課題との関係では,技術 的な解決手段を示したものとはいえず,技術的意義がないものであって, 本件発明A1の作用効果や技術的思想は,本件訂正Aの前後で変わらな いから,相違点1−1及び1−2は,実質的に相違点とはいえず,少な くとも,当業者が適宜なし得る設計事項である旨主張する。 しかしながら,前記(イ)及び(ウ)のとおり,本件公知発明1において, 相違点1−1及び1−2に係る本件発明A1の構成を採用することは,\n動機付けを欠き,むしろ阻害要因があるというべきものである。 また,本件発明A1において,「第1の記憶媒体」及び「第2の記憶 媒体」を「セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く」ものとすること\nは,前作のプレイ実績にかかわらず,後作において拡張ゲームプログラ ム及び/又はデータによってゲームを楽しむことができるという作用効 果を奏するものであって,技術的意義を有するものであることからする と,相違点1−1及び1−2は,実質的な相違点であるといえるし,当 業者が適宜なし得る設計事項であるとは認められない。 したがって,被控訴人の上記主張は採用することができない。
(オ) 小括
以上のとおり,本件公知発明1において,相違点1−1及び1−2に 係る本件発明A1の構成とすることには,動機付けがなく,むしろ阻害\n要因があるため,当業者が容易に想到し得たこととは認められない。 したがって,本件発明A1は,当業者が本件公知発明1に基づき容易 に発明をすることができたものであるとは認められない。
・・・・
特許法102条3項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき 金銭の額に相当する額」については,平成10年法律第51号による改 正前は「その特許発明の実施に対し通常受けるべき金銭の額に相当する 額の金銭」と定められていたところ,「通常受けるべき金銭の額」では 侵害のし得になってしまうとして,同改正により「通常」の部分が削除 された経緯がある。 特許発明の実施許諾契約においては,技術的範囲への属否や当該特許 が無効にされるべきものか否かが明らかではない段階で,被許諾者が最 低保証額を支払い,当該特許が無効にされた場合であっても支払済みの 実施料の返還を求めることができないなど様々な契約上の制約を受ける のが通常である状況の下で事前に実施料率が決定されるのに対し,技術 的範囲に属し当該特許が無効にされるべきものとはいえないとして特許 権侵害に当たるとされた場合には,侵害者が上記のような契約上の制約 を負わない。そして,上記のような特許法改正の経緯に照らせば,同項 に基づく損害の算定に当たっては,必ずしも当該特許権についての実施 許諾契約における実施料率に基づかなければならない必然性はなく,特 許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき,実施に対し受ける べき料率は,むしろ,通常の実施料率に比べて自ずと高額になるであろ うことを考慮すべきである。 したがって,実施に対し受けるべき料率は,(1)当該特許発明の実際の 実施許諾契約における実施料率や,それが明らかでない場合には業界に おける実施料の相場等も考慮に入れつつ,(2)当該特許発明自体の価値す なわち特許発明の技術内容や重要性,他のものによる代替可能性,(3)当 該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の 態様,(4)特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に 現れた諸事情を総合考慮して,合理的な料率を定めるべきである。
(イ) 認定事実
a 本件特許Aについての実際の実施許諾契約の実施料率は,本件訴訟 に現れていない。 そして,証拠(乙A115,116,乙B28)及び弁論の全趣旨 によれば,以下の事実が認められる。
(a) 株式会社帝国データバンクが「知的財産の価値評価を踏まえた特 許等の活用の在り方に関する調査研究報告書〜知的財産(資産)価 値及びロイヤルティ料率に関する実態把握〜(平成22年3月)」 (乙B28。本件調査報告書)を作成するに当たって行った,特許 権に関するロイヤルティ率情報のアンケート(以下「本件アンケー ト」という。)の結果を記載した表2−2には,技術分類を「家具,\nゲーム」とする特許のロイヤルティ料率の平均は2.5%(最大値 4.5%,最小値0.5%,標準偏差1.5%)(件数14件)と 記載されている。
(b)本件調査報告書には,本件アンケート調査結果の回答及び集計に 当たっての前提条件について,(1)ライセンス・アウト(ライセンス を与える側)の立場での回答であること,(2)国内同業他社へのライ センスを想定していること,(3)通常実施権(ライセンス提供先を独 占的にする訳ではなく,複数の者とライセンスを行うことができる 形態)によるライセンスを想定していること,(4)正味販売高に対す る料率を想定していること,(5)特殊な事情(エンタイアマーケット バリュールール(特許技術が製品の一部に使われているだけだとし ても,侵害された部品を含む製品全体の単価に基づいて損害額を計 算するルール)によるロイヤルティ算定,契約相手の事情など)を 捨象したケースであること,(6)ロイヤルティ料率相場はカテゴリ選 択肢で回答であるが,集計時には各選択肢の中央値をロイヤルティ 料率として集計を行ったことが記載されている。
(C) 経済産業省知的財産政策室編の「ロイヤルティ料率データハンド ブック〜特許権・商標権・プログラム著作権・技術ノウハウ〜」(平 成22年8月31日発行)の「II 各国のロイヤルティ料率」には, (1)ロイヤルティ算定方式として最も広く採用されているのは,定率 方式であり,そのロイヤルティは,「対象製品の販売価格×ロイヤ ルティ料率」として算定されること,(2)販売価格の対象となるロイ ヤルティベースには,総販売価格,純販売価格(正味販売価格), 小売価格等が使用されるが,実務面では,純販売価格(正味販売価 格)が採用されることが比較的多いとされること,(3)純販売価格(正 味販売価格)は,総販売価格から一定の費用項目を控除した残額と して定義され,控除費用項目としては,一般的に,輸送費,保険料, 倉庫保管費用,リベート,包装梱包費等,販売地によって変動する 可能性のある費用項目が中心となるが,業界慣行や製品種類等によ\nって異なることが記載されている。
b 前記(1)アのとおり,本件発明A1は,ゲームプログラム及び/又は データを記憶する記憶媒体を所定のゲーム装置に装填してゲームシス テムを作動させる方法であって,上記記憶媒体は,少なくとも,所定 のゲームプログラム及び/又はデータと,所定のキーとを包含する第 1の記憶媒体と,所定の標準ゲームプログラム及び/又はデータに加 えて所定の拡張ゲームプログラム及び/又はデータを包含する第2の 記憶媒体とが準備され,上記第2の記憶媒体が上記ゲーム装置に装填 されるとき,上記ゲーム装置が上記所定のキーを読み込んでいる場合 には,上記標準ゲームプログラム及び/又はデータと上記拡張ゲーム プログラム及び/又はデータの双方によってゲーム装置を作動させる ことにより,ユーザにとっては,一回の購入金額が適正なシリーズも のの記憶媒体を買い揃えてゆくことによって,最終的に極めて豊富な 内容のゲームソフトを入手したのと同じになり,メーカにとっては,\n膨大な内容のゲームソフトを,ユーザが購入しやすい方法で提供でき\nるという効果をもたらすものである。 このように,本件発明A1は,ゲームシステム作動方法の発明であ り,その構成及び効果は上記のとおりであるところ,イ−9号方法等\nは本件発明A1の技術的範囲に属するものであり,イ−9号製品等は, ゲーム装置に装填してゲームを実行するためのゲームソフトであって,\n本件発明A1の「第2の記憶媒体」に相当する,同発明を実施するた めに不可欠の物である。そして,前記(1)イのとおり,イ−9号製品等 は,本編ディスク(第1の記憶媒体)から所定のキーを読み込むこと により,アペンドディスク(第2の記憶媒体)に記録された標準のゲ ームプログラム及び/又はデータに加えて,拡張ゲームプログラム及 び/又はデータを作動させることができるものであるから,本件発明 A1は,イ−9号製品等にとって,相応の重要性を有するものといえ る。 また,家庭用ゲーム機などの情報処理装置を対象としたシステム作 動方法に関し,本件発明A1の上記技術についての代替技術が存在す ることはうかがわれない。
c(a) 前記bのとおり,本件発明A1は,イ−9号製品等に記録された 拡張ゲームプログラム及び/又はデータを作動するに当たり不可欠 な技術であるところ,家庭用ゲーム機本体に装着してゲームを楽し むゲームソフトにおけるゲームキャラクタのもつ機能\,場面,音響 が豊富であることは,通常,需要者の購入動機に影響を与えるもの といえる。 そして,被控訴人は,イ−9号製品等を販売するに当たり,製品 解説書(甲A5,7,8,10,11)において,MIXJOY機 能について紹介し,前作のディスク(本編ディスク)があると本作\n(アペンドディスク)とのMIXJOYを楽しむことができ,前作 のシナリオを本作のキャラクタでプレイしたり,前作では特定のキ ャラクタとのみ迎えることができたエンディングを全てのキャラク タと迎えることができたりする旨を説明している。 これらの事情を考慮すると,本件発明A1をイ−9号製品等に用 いることにより被控訴人の売上げ及び利益に貢献するものと認めら れる。
・・・
a 前記(イ)のとおり,本件訴訟において本件特許Aの実際の実施許諾 契約の実施料率は現れていないところ,本件特許Aの技術分野が属す る分野の近年の統計上の平均的な実施料率が,本件アンケート結果で は2.5%(最大値4.5%,最小値0.5%,標準偏差1.5%) であり,同実施料率は正味販売高に対する料率を想定したものである ことが認められる。そして,このことを踏まえた上,侵害品に係るゲ ームソフトにおいては,ゲームのキャラクタや内容,販売方法の工夫\n等が,その売り上げに大きく貢献していることは否定できないとはい え,本件発明A1に係る技術も,売上げの向上に相応の貢献をしてい ると認められることや,本件発明A1の代替となる技術は存在しない こと,控訴人と被控訴人は競業関係にあることなど,本件訴訟に現れ た事情を考慮すると,特許権侵害をした者に対して事後的に定められ るべき,本件での実施に対し受けるべき料率(以下「本件実施料率A」 という。)は,消費税相当額を含む被控訴人の正味販売価格に対し, 3.0%を下らないものと認めるのが相当である。
b 被控訴人は,別紙1「販売開始日一覧表」記載の販売開始日から本\n件特許権Aの存続期間満了日までのイ−9号製品等の売上高(被控訴 人の卸売価格)が,別紙7「売上高(補正後)」の「売上高」欄記載 のとおりであると主張するところ,イ−9号製品等の売上高(被控訴 人の卸売価格)が上記金額を超えるものであることを認めるに足りる 証拠はない。そこで,同金額に消費税相当額(5%)を加えた金額を, 実施料算定の基礎となる価格とするのが相当である。 もっとも,前記(イ)c(C)のとおり,イ−9号製品等のうちには,本件 発明A1の「第2の記憶媒体」に該当するゲームソフトのほかに,1\n個ないし5個の当該ゲームソフトと同一シリーズのゲームソ\フト(記 憶媒体)が含まれるパッケージ商品も存在するところ,これらのゲー ムソフトは,本件発明A1についての本件特許権Aを侵害するもので\nはなく,かつ,イ−9号製品等に含まれなくとも,単体で販売の対象 となる商品である。また,前記(イ)a(b)のとおり,本件調査報告書には, 本件アンケート調査結果の回答及び集計に当たっての前提条件につい て,特殊な事情(エンタイアマーケットバリュールール(特許技術が 製品の一部に使われているだけだとしても,侵害された部品を含む製 品全体の単価に基づいて損害額を計算するルール)によるロイヤルテ ィ算定,契約相手の事情など)を捨象したケースであることが記載さ れている。そうすると,侵害品以外のゲームソフトの価格に相当する\n部分については,本件実施料率Aを乗じるべき販売価格から控除する のが相当というべきであるから,イ−9号製品等の販売価格を侵害品 であるゲームソフトとそれ以外のゲームソ\フトとの合計数で除したも のをもって,本件実施料率Aを乗ずべき売上高とするのが相当である。 また,前記(イ)c(C)のとおり,イ−19及び23(2)号製品には,本件 発明A1の「第2の記憶媒体」に該当するゲームソフトのほかに,「最\n強データ収録CD−ROM」やグッズが同梱されているものもあるが, 上記CD−ROMは,ゲームソフトで使用するデータ(キャラクタの\n能力値等が最大の状態のデータ)が記録されているに過ぎず,それら\nが単独で商品として流通するものではないから,当該製品の販売価格 全体をもって,本件実施料率Aを乗ずべき売上高とするのが相当であ る。 他方,イ−39号製品(「遥かなる時空の中で3十六夜記 プレミ アムBOX」(希望小売価格9800円))は,同日付で発売された イ−35号製品(「遥かなる時空の中で3十六夜記」(希望小売価格\n4980円))に対して,4820円高く価格が設定され,その製品 の相違は同梱グッズのみであって,イ−39号製品に含まれる同梱グ ッズの価格は,おおむね同製品の2分の1に相当するものといえるか ら,同製品の販売価格の2分の1を本件実施料率Aを乗ずべき売上高 とするのが相当である。 さらに,イ−40号製品(「遥かなる時空の中でプレミアムBOX コンプリート」)は,本件発明A1の「第2の記憶媒体」に該当する ゲームソフトのほかに,これと同一の「遥かなる時空の中でシリーズ」\nのゲームソフト5個が含まれるところ,同製品についても,イ−39\n号製品と同様に,同梱グッズの価格は,これと対応するゲームソフト\nの価格のおおむね2分の1に相当するものといえる。そうすると,同 製品の販売価格の12分の1をもって,本件実施料率Aを乗ずるべき 売上高とするのが相当である。
c 以上によれば,本件特許権Aの侵害について,特許法102条3項 により算定される損害額は,別紙10のとおり計算され,その合計額 は1億1667万3710円となる。
(エ) 控訴人の主張について
控訴人は,(1)本件発明A1及びA2は,イ号製品のユーザにおいて実 施されるゲームシステム作動方法であること,イ号製品のような本件特 許権Aの間接侵害を構成する製品の製造販売に関する特許権者の許諾は,\n当該製品がユーザに販売されることを当然の前提とすることなどから, 実施料率算定の基礎となるイ−9号製品等の売上高は,被控訴人の卸売 価格ではなく小売価格とすべきである,(2)イ−9号製品等に同梱される アイテムがある場合でも,イ号製品は,同梱されたアイテムを含む製品 全体で一個の商品(販売単位)であり,製品の販売等行為全体が一個の 特許権侵害を構成するから,イ−9号製品等の販売価格全体が本件実施\n料率Aに乗ずべき価格となる旨主張する。 しかしながら,上記(1)の点については,控訴人の主張を裏付けるに足 りる客観的な証拠はない。前記(イ)aのとおり,本件特許Aの技術分野が 属する分野の近年の統計上の平均的な実施料率は,正味販売高に対する 料率を想定したものであることからすると,実施料算定の元となる売上 高は,被控訴人のイ−9号製品等の販売価格,すなわち卸売価格とする のが相当である。 上記(2)の点については,前記(ウ)bのとおり,イ−9号製品等のうち, 本件発明A1の「第2の記憶媒体」に該当するゲームソフト以外のゲー\nムソフトを含むものや,同梱されたグッズが,商品構\成や価格構成上,\n明らかにゲームソフトとは別の価値を有するもの,すなわち,別個の商\n品として扱われていると判断し得るものについては,これらのゲームソ\nフト及びグッズの価格に相当する金額を本件実施料率Aを乗ずべき価格 から控除するのが相当である。 控訴人の主張するその余の点も,前記(ウ)の判断を左右するものでは ない。
(オ) 被控訴人の主張について
被控訴人は,(1)実施料率算定の基礎となるべき正味販売価格に消費税 相当額は含まれない,(2)本件調査報告書によれば,「家具,ゲーム」の 技術分野には,「ビデオゲーム」のような全体の一部に特許発明が実施 されているもの以外に,「家具」,「カードゲーム,盤上ゲーム,ルー レットゲーム;小遊技動体を用いる室内用ゲーム」も含まれるため,本 件特許Aの実施料率は,上記実施料率の平均値(2.5%)より低くな る,(3)同梱グッズについても,別紙7「売上高(補正後)」記載のとお り,そのアイテム数に応じて売上高を補正すべきである,(4)本件発明A 1は,セーブデータを「所定のキー」とする方法,「拡張ゲームプログ ラム等」の一部を「所定のキー」とする方法,第2の記憶媒体に「拡張 ゲームプログラム等」のみを記憶する方法により,同発明と同様の作用 効果を奏しながら,同発明を回避することができる,(5)控訴人は,競業 者と特許クロスライセンス契約を締結し,「ライセンスなどの特許権の 有効活用を促進」するとしたプレスリリースを公開しており(乙A83 の1〜3),むしろ開放的ライセンスポリシーを採用している,(6)イ号 製品は,武将やステージを新規に追加するものというよりは,「違った 遊びを提供するという概念で開発」されたものであり,本編ディスクで はプレイできなかったモードを提供することが主眼となった製品であっ て,それ単体でも十分楽しめる内容である反面,MIXJOYをするこ\nとで可能となるのは,本編ディスクでプレイできたモードやシナリオを\nアペンドディスクでもプレイできるというものであり,MIXJOYを 行う場面は限定されている旨主張する。 しかしながら,上記(1)の点については,消費税相当額も被控訴人の販 売価格の一部としてそれに含まれているものであるから,損害額の算定 に当たって消費税相当額を控除すべき理由はない。 上記(2)の点については,前記(イ)a(a)のとおり,本件アンケート結果 を記載した,本件調査報告書の表2−2には,技術分類を「家具,ゲー\nム」とする特許のロイヤルティ料率の平均は2.5%であり,件数は1 4件である旨が記載されているものの,アンケート回答者の保有する特 許の内容,特許の実施品について,具体的な記載はない。したがって, 本件調査報告書の記載からは,本件特許Aの実施料率が,上記実施料率 の平均値より低くなると認めることはできない。 上記(3)の点については,前記(イ)c(C)のとおり,イ−9号製品等に同梱 されているグッズは,本件発明A1の「第2の記憶媒体」に相当するゲ ームソフトの付属物というべきものであって,単独で商品として流通す\nるものではないから,イ−39及び40号製品に同梱されたグッズを除 き,当該製品の販売価格全体をもって,本件実施料率Aを乗ずべき売上 高とするのが相当である。
上記(4)の点については,i)前記(5)ウ(エ)のとおり,本件発明A1にお いて,「第1の記憶媒体」及び「第2の記憶媒体」を「セーブデータを 記憶可能な記憶媒体を除く」ものとすることは,前作のプレイ実績にか\nかわらず,後作において拡張ゲームプログラム及び/又はデータによっ てゲームを楽しむことができるという技術的意義を有するものであり, セーブデータを「所定のキー」とする方法は,本件発明A1と同様の作 用効果を奏するものではなく,また,記憶媒体をセーブデータを記憶可 能なものにした場合は,大量の記憶容量を有し,安価で大量生産が可能\ なCD−ROM,DVD−ROM等の読み出し専用メモリーを用いるこ とができなくなること,ii)本件発明A1は,第1の記憶媒体に記憶され た「所定のキー」を読み込むだけで,第2の記憶媒体に記録された標準 ゲームプログラム及び拡張ゲームプログラムによりゲーム装置を作動さ せるものであって,装置の作動中に第1の記憶媒体を入れ換え可能なも\nのであるが,「拡張ゲームプログラム等」の一部を「所定のキー」とす る方法では,標準ゲームプログラム及び拡張ゲームプログラムによるゲ ーム装置の作動中に,第1の記憶媒体を装填し続ける必要があること, iii)第2の記憶媒体に「拡張ゲームプログラム等」のみを記憶する方法 では,第2の記憶媒体単体で,標準ゲームプログラム及び拡張ゲームプ ログラムによりゲーム装置を作動させることができないことから,これ らの方法が本件発明A1の代替技術であるとはいえない。
上記(5)の点については,たとえ,特許権者が開放的ライセンスポリシ ーを有しているとしても,そのことは,特許権侵害者に対して事後的に 定めるべき実施料率を下げる理由にはならないものというべきである。 上記(6)の点については,前記(イ)c(a)のとおり,本件発明A1により ゲームキャラクタのもつ機能,場面,音響が豊富になるという効果は,\n通常,需要者の購入動機に影響を与えるものであるといえ,イ−9号製 品等においても,MIXJOY機能により,前作のシナリオを本作のキ\nャラクタでプレイしたり,前作では特定のキャラクタとのみ迎えること ができたエンディングを全てのキャラクタと迎えることができたりする ものであって,被控訴人は製品解説書でかかる機能を紹介し,宣伝して\nいるものである。そうすると,本件発明A1は,これをイ−9号製品等 に用いることにより被控訴人の売上及び利益に相応の貢献をするものと 認められるものであって,イ−9号製品等が単体でも十分楽しめるもの\nか否かという点や,MIXJOYを行う場面が限定されているか否かと いう点は,上記判断を左右するものではない。 被控訴人の主張するその余の点も,前記(ウ)の判断を左右するもので はない。

◆判決本文
1審はこちらです。

◆判決本文
判決理由は、A、B事件にそれぞれ分けられています。

◆A事件

◆B事件

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平成29(ワ)44181  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月18日  東京地方裁判所

 東京地裁(40部)は、構成要件11D等における「送信先」としては、「ドメイン」を含まないとして、技術的範囲に属しないと判断しました。均等侵害も第1要件を満たさないと判断されました。問題の構成要件における特定は、「受信した電子メールに設定された複数の送信先を個々の送信先に分割する分割手段」というものです。原告キヤノンITソ\リューションズ(株)代理人鮫島弁護士、被告デジタルアーツ(株)代理人大野聖二弁護士です。

 原告は,制御ルールのリストの例示である【図5】の「条件定義部」の 「受信者」欄に,「*@zzz.co.jp」が定められており,これはドメインを表\nすものであるから,「送信先」には電子メールアドレスのみならず,ドメ インを含むと主張する。 しかし,前記のとおり,本件明細書等1には,制御ルールに関し,「「条 件定義部」は,「発信者(送信元)」,「受信者(宛先)」,「その他条 件」から構成される。…「受信者(宛先)」には,メール送受信端末11\n0から取得する電子メールの宛先(To,Cc,Bcc)の電子メールア ドレス(受信者情報) が設定されている」(段落【0040】),「「発 信者(送信元)」,「受信者(宛先)」には,それぞれ電子メールアドレ スを複数設定することができ,アスタリスクなどのメタ文字(ワイルドカ ード)を使うことによって任意の文字列を表すこともできる」(段落【0\n041】)と記載されており,これらの記載によれば,上記「*@zzz.co.jp」 は,ドメインを意味するのではなく,「*」に任意の文字列を含み,ドメイ ン名を「zzz.co.jp」とする複数の電子メールアドレスを意味するという べきである。
原告は,「*@zzz.co.jp」がドメインを意味することは,複数の特許文献 (甲24,30〜32,乙15)などの記載からも裏付けられると主張す るが,特許請求の範囲や発明の詳細な説明において使用される言葉の意義 は各発明により異なることから,構成要件11D等の「送信先」の意義は\n本件特許に係る特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載に基づいて 解釈されるべきである。本件明細書等1の「*@zzz.co.jp」がドメインを意 味すると解し得ないことは上記判示のとおりであり,原告の挙げる他の文 献等の記載は上記結論を左右するものではない。
(イ) 原告は,本件明細書等の段落【0061】及び【図4】のステップS4 02には,「受信者」の「宛先」単位で電子メールの分割をすることを記 載しているが「受信者」の「宛先」にはドメインも含まれると主張する。 しかし,段落【0061】には「各宛先(受信者)のそれぞれを単一の 宛先としたエンベロープをそれぞれ生成する」と記載されているところ, 同エンベロープの生成を説明する【図12】には,送信先(受信者) の電 子メールアドレスとして設定されている「A」,「B」,「C」のそれぞ れを単一の宛先とするエンベロープ情報をそれぞれ生成することが図示 されているのであるから,同段落の「各宛先(受信者)」とは電子メール アドレスを意味するというべきである。
(ウ) 原告は,本件明細書等1の段落【0003】に記載の従来技術である乙 15公報における「宛先」には「電子メールアドレス」又は「ドメイン」 であることが記載されており,本件発明1において分割する単位をドメイ ンとしてもこの従来技術の課題を解決することができると主張する。 そこで,乙15公報をみるに,その段落【0032】には,【図2】の 「項目203,205にあっては,アカウントを*として,ドメインのみ を指定するとした設定も可能である」と記載されているが,ここにいう項\n目203は送信メールの一時保留機能を利用する場合であって,一時保留\nせずに,即配信したいメールアドレスの即配信リストを設定する項目であ り,同図の項目205は,全ての送信保留中メールを本人(送信者)に配 送する場合であって,配送を希望しない送信保留中メールを本人(送信者) に送信しないメールアドレスの送信不要リストを設定する項目である(段 落【0030】)。【図2】
このように,項目203及び同205は即配信又は送信不要リストを設 定するためのものであるから,段落【0032】の趣旨は,一時保留せず に即配信したいメールアドレスの即配信リスト(項目203)や,送信保 留中メールを本人(送信者)に送信しないメールアドレスの送信不要リス ト(項目205)に,任意のドメイン名を有する複数のメールアドレスを 一括して設定することも可能であることを述べたものにすぎず,電子メー\nルの「宛先」にドメインが含まれることを示すものということはできない。 そうすると,同段落の記載をもって従来技術である乙15公報における 「宛先」に「ドメイン」が含まれると解することはできないので,原告の 上記主張は前提において採用し得ないというべきである。
(エ) 原告は,電子メールをドメイン単位で分割する場合でも本件発明1の課 題を解決し得ると主張する。 しかし,電子メールをドメイン単位で分割するとなると,同一ドメイン の複数の電子メールのうち,一つのみの送出を保留すべきような場合に上 記課題を解決し得ないことは,前記判示のとおりである。 原告は,本件発明1はいかなる場合でも電子メールの送出制御を効率的 に行うことを課題と設定しているのではないと主張するが,本件発明1が その課題を解決し得ない構成を含むとは考え難く,特許請求の範囲及び本\n件明細書等1の記載に照らしても,「送信先」にドメインを含むとは解し 得ないことも,前記判示のとおりである。
エ 以上のとおり,構成要件11D等における「送信先」は「電子メールアド\nレス」のみを指し,「ドメイン」を含まないと解することが相当である。
・・・・
特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載,特に明細書 記載の従来技術との比較から認定されるべきであるところ(知財高裁平成2 7年(ネ)第10014号同28年3月25日判決),本件明細書等1には, 従来技術の「複数の送信先が記載された電子メールに対しては,誤送信の可 能性がある送信先が1つでも含まれていれば,その他の送信先に対するメー\nル送信までもが保留,取り消しがされることとなる」(段落【0004】) という課題を解決するため,電子メールに設定された複数の送信先を個々の 送信先に分割し,記憶手段に記憶されている制御ルール等に従って,電子メ ールの送出に係る制御内容を決定し,決定された制御内容に従って電子メー ルの送信制御を行うなどの構成を備えることにより,「ユーザによる電子メ\nールの誤送信を低減可能とすると共に,宛先に応じた電子メールの送出制御\nを行うことにより効率よく電子メールを送出させることができる」(段落【0 008】)などの効果を奏するものである。
イ 原告は,本件特許1の特許メモ(乙9)などを根拠に,本件発明1の本質 的部分は,「送出制御内容を,電子メールの送信元と送信先とに対応付けた 制御ルールと,分割された電子メールの送信先と送信元とに従って,分割さ れた送信先に対する電子メールの送出に係る制御内容を決定すること」(構\n成要件11E)にあると主張する。 しかし,本件発明1の従来技術として挙げられているのは乙15公報であ り,本件明細書等1に記載されている課題は「複数の送信先が記載された電 子メールに対しては,誤送信の可能性がある送信先が1つでも含まれていれ\nば,その他の送信先に対するメール送信までもが保留,取り消しがされるこ ととなる」というものであるところ,同課題を解決するためには,電子メー ルに設定された複数の送信先を電子メールアドレスごとに分割した上で,制 御ルールを適用することが不可欠である。そうすると,構成要件11D等に\n係る構成は本件発明1の本質的部分というべきである。\n 原告は,特許メモ(乙9)の記載を根拠とするが,同メモには,本件特許 の出願時の複数の公知文献に本件発明1に係る構成が記載されているかど\nうかが記載されているにすぎず,本件発明1の従来技術として挙げられた乙 15公報との対比がされているものではなく,また,本件発明1の本質的部 分の所在を検討するものでもないので,同メモに基づいて,本件発明1の本 質的部分が構成要件11Eに係る構\成にあるということはできない。

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平成31(行ケ)10056  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和元年10月8日  知的財産高等裁判所

 外為オンラインVSマネースクエアHDの侵害訴訟(平成29(ワ)2417)の対象特許(6154978号)についての無効審決取消訴訟です。無効理由無しとした審決が維持されました。

 これに対し原告は,(1)甲1には,複数の売り注文の中で最も高い売り注 文価格の売り注文が約定されたことを注文情報生成部の約定検知手段が検 知する構成が開示されていること(【0146】,【0147】,図7A,\n図19),(2)甲2の記載事項([0085],図6,図7)によれば,甲2 発明の1は,1回限りのイフダンオーダー(繰り返さないLOCK注文) を前提として,「相場価格が上昇する状況」にあると予想した投資家が,\n上昇する相場に追従するように,従前のものより所定価格だけ増加させた イフダンオーダーを生成することを繰り返すことで,利益を得ることを可 能にした発明であるといえること,(3)甲1発明は,「複数の売り注文のう ちいずれかの売り注文が約定されたことを検知すると,同じ売り注文価格 の情報を含む売り注文情報を再度生成するものであって,相場価格が一定 の範囲内で変動する状況で利益を得ることを目的とする発明」であり,甲 2発明の1の従来技術に相当するものであるから,甲2発明の1は,甲1 発明に相当する発明に甲2発明の1を適用することを示唆していること, (4)甲1発明と甲2発明の1とは,金融商品の取引に関する技術分野に属し ている点で技術分野が共通すること,「顧客に利益をもたらす装置を提供 する」という目的(課題)が共通し,イフダンオーダーを利用することに よって機会喪失のリスクを低減するという機能においても共通することに\n照らすと,甲1及び甲2に接した当業者は,甲1発明における「約定検知 手段が,複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定 されたことを検知」した場合の「注文情報生成手段」の動作について,甲 2発明の1の「従前のものより所定価格だけ増加させたイフダンオーダー を生成する」という動作を適用する動機付けがあるから,甲1発明におい て,「約定検知手段が,複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の 売り注文が約定されたことを検知」した場合に「複数の売り注文のうち最 も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を 含む売り注文情報」を生成する動作とする構成(相違点1−1に係る本件\n発明1の構成)とすることを容易に想到することができたものである旨主\n張する。
しかしながら,上記(1)の点については,原告の指摘する甲1の記載は, 第一〜第五の注文情報群181s21〜181s25のうち,いずれの第 二注文(181u21〜181u25)が約定した場合においても,当該 第二注文を含む注文情報群を再度生成することを示したものであり,特に 最も高い売り注文価格の売り注文が約定した場合(181u25)に着目 した処理を記載したものではないし,前述のとおり,甲1には,本件明細 書記載の「シフト機能」(【0078】)に関する記載や示唆はない。\n 上記(2)及び(3)の点については,甲2には,甲2発明の1が,1回限りの イフダンオーダー(繰り返さないLOCK注文)を前提として,「相場価 格が上昇する状況」にあると予想した投資家が,上昇する相場に追従する\nように,従前のものより所定価格だけ増加させたイフダンオーダーを生成 することを繰り返すことで,利益を得ることを可能にした発明であること\nの開示があるものといえるが,他方で,甲2には,複数のイフダンオーダ ーによるLOCK処理を行うことについての記載も示唆もないことに照ら すと,甲1発明が甲2発明の1の従来技術に相当するものであるとはいえ ないし,甲2発明の1が,甲1発明に相当する発明に甲2発明の1を適用 することを示唆しているということもできない。また,甲1には,複数の イフダンオーダー(複数の売り注文)のうち,「最も高い売り注文価格の 売り注文」が約定されたことを検知すると,注文情報生成手段が「前記複 数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い 売り注文価格の情報を含む売り注文情報」を生成するという構成(構\成要 件1H)についての記載も示唆もない。
そうすると,甲1及び甲2に接した当業者においては,甲1発明と甲2 発明の1が,金融商品の取引に関する技術分野に属している点で技術分野 が共通し,イフダンオーダーを利用することにより,利便性を高めるなど の機能面においても共通すること(上記(4))を勘案しても,甲1発明にお ける「約定検知手段が,複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の 売り注文が約定されたことを検知」した場合の「注文情報生成手段」の動 作について,甲2発明の1における「インクリメントオプション」に係る 構成あるいは原告のいう「従前のものより所定価格だけ増加させたイフダ\nンオーダーを生成する」という動作を適用する動機付けがあるものと認め ることはできない。また,甲2発明の1の上記構成は,相違点1−1に係\nる本件発明1の構成全部を含むものではないから,甲1発明に甲2発明の\n1の上記構成を組み合わせることを試みたとしても,当業者が,甲1発明\nにおいて,相違点1−1に係る本件発明1の構成とすることを容易に想到\nすることができたものと認めることはできない。

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◆平成29(ワ)2417

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平成30(ワ)24717  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月17日  東京地方裁判所(46部)

 ゼンリンに対する地図表示に関する特許侵害事件です。争点は、構\成要件D、Fの「各ページを適宜に分割して区画化し,…住宅建物の所在する番地を前記地図上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対応させて掲載」を具備していない、さらに均等侵害についても第1要件を満たさないと判断されました。

 特許請求の範囲の「各ページを適宜に分割して区画化し,…住宅建物の所 在する番地を前記地図上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画 の記号番号と一覧的に対応させて掲載」という記載(構成要件D,E及びF)\nに照らせば,構成要件Dの「適宜に分割して区画化」とは,ページの特定の\n部分に記号番号を付し番地とこれに対応するページの特定の部分を一覧的 に示したりすることができるよう,検索すべき領域の地図のページを分割し, 認識できるようにすることといえる。 そして,本件発明は, 前記1(2)のとおり、地図上に公共施設や著名ビル等 以外の住宅及び建物は番地のみを記載するなどし,全ての建物等が所在する 番地について,記載ページと当該ページ内で分割された区画のうち当該番地 が記載された区画を一覧的に対応させて掲載した索引欄を設けることによ って,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅地図の提供を可能\にする というものであり,本件発明の地図の利用者は,索引欄を用いて,検索対象 の建物等が所在する地番に対応する,ページ及び当該ページにおける複数の 区画の中の該当の区画を認識した上で,当該ページの該当区画内において, 検索対象の建物等を検索することが想定されている。そのためには,当該ペ ージについて,それが線その他の方法によって複数の区画に分割され,利用 者が該当の区画を認識することができる必要があるといえる。そうすると, 本件明細書に記載された本件発明の目的や作用効果に照らしても,本件発明 の「区画化」は,ページを見た利用者が,線その他の方法及び記号番号によ り,検索対象の建物等が所在する区画が,ページ内に複数ある区画の中でど の区画であるかを認識することができる形でページを分割することをいう といえる。
 また 前記(2)のとおり、本件明細書には発明の実施の形態において,本件 発明を実施した場合における住宅地図の各ページの一例として別紙「本件明 細書図2」及び「本件明細書図5」が示されているところ,これらの図にお いては,いずれも道路その他の情報が記載された長方形の地図のページが示 されたうえで,そのページが,ページ内にひかれた直線によって仕切られて 複数の区画に分割されており,その複数の区画にそれぞれ区画番号が付され ている。また,本件明細書図4の索引欄には,番地に対応する形でページ番 号及び区画番号が記載されており,利用者は,検索対象の建物の番地から, 索引欄において当該建物が掲載されているページ番号及び区画番号を把握 し,それらの情報を基に,該当ページ内の該当区画を認識して,その該当区 画内を検索することにより,目的とする建物を探し出すことが記載されてい る(【0028】)。ここでは,上記の特許請求の範囲の記載や発明の意義に 従った実施の形態が記載されているといえる。 加えて,本件明細書には,本件発明の「区画化」の用語を定義した記載は なく,【0017】ないし【0032】及び別紙「本件明細書図1」ないし 「本件明細書図5」で記載された実施形態以外には本件発明の実施形態の具 体的記載はない。なお,後記イのとおり,本件明細書の【0033】【00 37】に記載された地図は,本件発明の実施形態を記載したものとはいえな い。
したがって,本件明細書における発明の実施の形態に係る記載からしても, 構成要件Dの「適宜に分割して区画化」とは,ページを見た利用者が,線そ\nの他の方法及び記号番号により,検索対象の建物等が所在する区画が,ペー ジ内に複数ある区画の中でどの区画であるかを認識することができる形で ページを分割することをいうと解される。
イ これに対し,原告は,本件明細書(【0033】【0037】)は,本件発明 の実施形態として,コンピュータが自動的に区画を探し出し,当該区画を画 面中央に配置し,当該区画内にある所望の建物をユーザが直接認識できる電 子住宅地図(全戸氏名入り電子住宅地図)を開示しており,このような構成\nを備える電子住宅地図では,ユーザが視覚的に地図内の位置を分かりやすく 探せるように仕切り線を設ける必要はないから,「区画化」もまたユーザが 目に見える形で仕切る構成に限定されない旨主張する。\n確かに,本件明細書には,全戸氏名入り電子住宅地図として「戸番地(住 所地番及び号)をキーとして,電子電話帳11の氏名データと,住所入り電 子住宅地図12のポリゴンデータとを連結する。」(【0035】),「この全戸 氏名入り電子住宅地図14は,パソコン13のキーボードから氏名を入力す\nれば,その人物の居住する建物を中心にした地図がパソコン13の表\示装置 に表示され,その人物の居住する建物にマークが付されて,そのマークが点\n滅する。」(【0037】)との記載がある。
しかし,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)には,上記【0037】 記載の動作に対応する構成の記載はない。また,本件明細書には,「公官庁\nや住宅関係の企業では,今まで通り氏名入りの住宅地図を必要とする場合も 考えられる。そのような場合でも,…全戸氏名入りの住宅地図を作成するこ とができる。」(【0033】)との記載があるところ,上記記載中の「今まで 通り氏名入りの住宅地図」とは,「建物表示に住所番地ばかりではなく,居\n住者の氏名も全て併記」された「従来の住宅地図」(【0002】)を指すと 解されること,【0037】の全戸氏名入り電子住宅地図14においては, 利用者がパソコン13のキーボードから氏名を入力することによりその人\n物が居住する建物を検索する場合,マークの付された建物に表示された氏名\nを視認することによって検索の目的とする建物との同一性を確認するもの と理解できることからすると,全戸氏名入り電子住宅地図14は,「全戸」 の氏名が表示された地図であるものと認められる。そうすると,全戸氏名入\nり電子住宅地図14は,構成要件Bの「検索の目安となる公共施設や著名ビ\nル等を除く一般住宅及び建物については居住人氏名及び建物名称の記載を 省略し」の構成を備えていない。\n
 したがって,本件明細書記載の全戸氏名入り電子住宅地図14は,本件発 明の実施形態に含まれるとは認めることはできない。なお,本件発明の出願 経過によれば,本件特許出願の願書に最初に添付した明細書(乙8の2,8 の3)記載の特許請求の範囲は旧請求項1ないし11からなり,旧請求項7 ないし11には,「全戸氏名入り電子住宅地図作成方法」に係る発明の記載 があり,発明の詳細な説明中の【0014】ないし【0016】に旧請求項 7ないし11を引用した記載部分があったが,同年10月21日付けの手続 補正(乙9)により,旧請求項1の文言を補正し,旧請求項2ないし11及 び【0014】ないし【0016】を削除する補正がされたこと,上記補正 後の請求項1は,拒絶査定不服審判請求と同時にされた平成13年6月7日 付けの手続補正により本件発明の特許請求の範囲記載の請求項1と同一の 記載に補正されたこと(乙10)に照らすと,本件明細書の【0033】な いし【0038】記載の全戸氏名入り電子住宅地図14に関する記載は,平 成11年10月21日付けの手続補正により削除された旧請求項7ないし 11記載の「全戸氏名入り電子住宅地図作成方法」に係る発明の実施形態で あると認められる。 以上によれば,本件明細書記載の全戸氏名入り電子住宅地図14が本件発 明に含まれることを前提とする原告の上記主張は採用することができない。
・・・・
原告は,仮に縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図が,各ペー ジに線その他の方法及び記号番号を付されていない点において構成要件Dと相違\nするとしても,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,均等の 成立要件(第1要件ないし第3要件)を満たしているから,本件発明と均等なも のとして,本件発明の技術的範囲に属する旨主張する。 前記2(1)のとおり,本件発明の技術的意義は,検索の目安となる建物を除く建 物名称や居住者氏名の記載しないため,高い縮尺度で地図を作成することにより 小判で,薄い,取り扱いの容易な廉価な住宅地図を提供することや(構成要件B\n及びC),地図の更新のために氏名調査等の労力を要しないことによって廉価な住 宅地図を提供することを可能にするとともに,地図上に公共施設や著名ビル等以\n外の住宅及び建物は番地のみを記載し,地図のページを適宜に分割して区画化し たうえで,全ての建物等の所在する番地を,当該番地の記載ページ及び記載区画 を特定する記号番号と一覧的に対応させた索引欄を付すことによって,簡潔で見 やすく迅速な検索を可能にする住宅地図を提供すること(構\成要件DないしF) を可能にする点にあるものと認められる。\n
 しかしながら、被告地図においては前記2(1)で認定したとおり,地図を記載した各ページを線その他の方法及び記号番号によりユーザの目に見える形で複 数の区画に仕切られていないため,ユーザが所在番地の記載ページ及び区画の記 号番号の情報から検索対象の建物等の該当区画を探し,区画内から建物を探し出 すことができないから,迅速な検索が可能であるということはできない。\nしたがって,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,本件発 明の本質的部分を備えているものとは認めることができず,同被告地図の相違部 分は,本件発明の本質的部分でないということはできないから,均等の第1要件 を充足しない。よって,その余の点について判断するまでもなく,縮尺レベル「50m」「60m」「70m」の被告地図は,本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとは認められないから,本件発明の技術的範囲に属すると認めることはで\nきない。

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平成30(ネ)10071  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年9月11日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 「人脈関係登録システム」(CS関連発明)について、1審では第1要件を満たしていないと判断されましたが、知財高裁(3部)も同様に、均等の第1要件を満たさないとして判断しました。1審被告は、DMMです。

 このような乙2の記載によれば,サーバーコンピューター330 とクライアントコンピューター370がワールドワイドウェブ36 0を介して接続され,サーバーコンピューター330に登録された ユーザーによって入力される連絡相手情報を含むユーザー情報デー タベース340が設けられた構成において,1)メンバーA(本件各 発明における第一の登録者)がメンバーB(本件各発明における第 二の登録者)に任意の許可レベルでリンクされ,メンバーBがメン バーC(本件各発明における第三の登録者)に任意の許可レベルで リンクされる場合に,メンバーCがメンバーBに友人の友人許可を 与え,メンバーBもメンバーAに友人の友人許可を与える場合には, メンバーAは,メンバーCについての友人の友人通知を受信する資 格があること,2)「友人テーブル」がユーザー(本件各発明におけ る登録者)を互いに関連付け,3)「友人の友人システム」によって, 第1のユーザー(本件各発明における第一の登録者)は,第1のユ ーザーと同じ都市に住んでいるか,又は第1のユーザーが所属する グループに所属する連絡相手の連絡相手の名前を探索でき,第1の ユーザーが友人の友人探索を実行し,友人の友人である第2のユー ザー(本件各発明における第三の登録者)の場所を特定した後に, 第1のユーザーは第1のユーザーの個人アドレス帳に第2のユーザ ーを追加するために,第2のユーザーにリンクすることができ,4) 第1のユーザーが第2のユーザーを指定すると,第2のユーザーは, 第1のユーザーが第2のユーザーに「リンクした」という通知を受 信し,5)第2のユーザーがリンクに応じることを選択する場合には, 第2のユーザーはデータフィールド許可を設定して第1のユーザー のために個人情報等の閲覧を許可することの通知を送信し,この通 知を受信したときに,第1のユーザーの個人アドレス帳に第2のユ ーザーの職業や個人情報等を表示する構\成の記載がある。
c 以上のとおりの本件優先日当時の従来技術に照らせば,より広範で 深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートする人間関係登録システ ムを提供するとの課題について,上記のような解決手段が存在したも のということができる。
ウ このように,本件明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載 されているところは,優先権主張日の従来技術に照らして客観的に見て 不十分なものであるから,本件明細書に記載されていない上記イ(イ)のと おりの従来技術も参酌して従来技術に見られない特有の技術的思想を構\n成する特徴的部分を認定すべきことになる。 そして,上記イ(イ)のとおりの従来技術に照らせば,本件各発明は,主 要な点においては,従来例に示されたものとほぼ同一の技術を開示する にとどまり,従来例が未解決であった技術的困難性を具体的に指摘し, その困難性を克服するための具体的手段を開示するものではないから, 本件各発明の貢献の程度は大きくないというべきであり,上記従来技術 に照らし,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する部分につ\nいては,本件各発明の特許請求の範囲とほぼ同義のものとして認定する のが相当である。
エ そうすると,被告サーバが構成要件1D及び2Dの構\成を備えていない のは前記1に説示のとおりであるから,被告サーバは本件各発明の本質 的部分の構成を備えるということはできず,均等の第1要件を充足しな\nい。
オ 控訴人の主張について
(ア) 控訴人は,引用発明は具体的にはネットワークを通じて連絡相手情 報を管理する発明であって,相互に情報を交換し合うことによって新 たに人間関係を締結するというソーシャルネットワーキングサービス\n(SNS)の発明ではないから,本件各発明とは技術思想が根本的に 異なるものであり,本件各発明の本質的部分を認定するに当たり参照 されるべき従来技術ではないと主張する。 しかし,本件明細書にはソーシャルネットワーキングサービス(SN\nS)であることの記載はなく,上記イに説示したところに照らせば,本 件各発明と引用発明は,いずれも共通の人間関係を結んでいる登録者の 検索を可能とし,新たに人間関係を結び,これを登録することができる\n発明である点で共通するものであるから,本件各発明の従来技術として 引用発明を参照することができるというべきである。
(イ) 控訴人は,本件各発明の構成のうち,従来技術に見られない特有の\n技術的思想を構成する特徴的部分は,「登録者が互いにメッセージを\n送信し合うことによって人間関係を結ぶ(友達になる)という意思が 合致した場合(合意が成立した場合)に,当該登録者同士を関連付け て記憶するという技術を前提として,共通の人間関係を結んでいる登 録者(友達の友達)の検索を可能とし,新たに人間関係を結ぶことが\nできるようにすることによって,より広範で深い人間関係を結ぶこと ができるという構成」にあると主張する。\nしかし,従来技術との比較において本件各発明の貢献の程度は大きく なく,本件各発明の本質的部分は特許請求の範囲とほぼ同義のものと認 定すべきことは上記イ及びウに説示したとおりである。
(ウ) 控訴人は,2人の個人が互いに人間関係を結んでいるかどうかは, 多分に個人の主観的な評価を伴う問題であって,引用発明において個 人情報の閲覧を許可したからといって,人間関係を結ぶことを承諾し たということにはならないと主張する。しかし,引用発明は,第1の ユーザーが第2のユーザーをリンクすると,第2のユーザーはその旨 の通知を受信し,リンクに応じる場合は第2のユーザーが第 1 のユーザ ーにデータフィールド許可を設定でき,第2のユーザーは第1のユー ザーに個人情報許可,仕事情報許可,経路交差通知許可などを与える ことができるのであり,これは,人間である第1のユーザーと人間で ある第2のユーザーが関係を結ぶことに他ならないから,第1のユー ザーと第2のユーザーが人間関係を結ぶものと理解することができる。
(エ) さらに,控訴人は,乙2の【0072】,【0073】に「友人の 友人システム」という表現は存在するものの,その実質は,自己の個\n人アドレス帳に他のメンバーが登録されている場合に,当該他のメン バーの個人アドレス帳の中を検索するというものにすぎず,「友人」 とは,本件各発明における当事者間の合意によって結ばれるところの 「人間関係」とは別物であると主張するが,本件各発明において「人 間関係を結ぶ」ことの意義について,引用発明における構成を除外す\nることを示す記載はなく,引用発明において,第1のユーザーがリン クし,第2のユーザーがリンクに応じることにより,人間関係が結ば れるといえることについては,上記説示のとおりである。

◆判決本文

原審はこちらです。

◆平成29(ワ)22417

本件特許権の別被告(ミクシィ)の事件があります。 こちらも、1審、控訴審とも非侵害と判断されています。

◆平成29(ネ)10072

◆平成28(ワ)14868

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平成30(行ケ)10131等  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和元年7月22日  知的財産高等裁判所

 無効と判断された請求項についての判断が、相違点の認定の誤りがあるとして、取り消されました。

 以上によれば,本件発明1と引用発明3の一致点及び相違点は次のとお りであると認められる。
(ア) 対比
a 前記ア(イ)のとおり,本件発明1の「相互作用マスタ」は,「一の医 薬品」及び「他の一の医薬品」が販売名(商品名)か一般名かこれを 特定するコードや,薬効,有効成分及び投与経路を特定することがで きるコードのレベルの概念で統一して格納され,1)A薬品から見たB 薬品の相互作用が発生する組み合わせについての情報と,2)B薬品か ら見たA薬品の相互作用が発生する組み合わせについての情報とは, データとして個々別々のものとして格納され,また,1)A薬品から見 たB薬品に関する相互作用が発生する組み合わせについての情報と, 3)A薬品から見たC薬品の相互作用が発生する組み合わせについての 情報とも,データとして個々別々のものとして格納されるものである。 これに対し,前記イ(ア)のとおり,引用発明3の相手テーブル部の一般 名コード,薬効分類コード,BOXコードの各欄には,必ずしもすべ てにコードが格納されているとは限らない。
したがって,引用発明3の「医薬品相互作用チェックテーブル10 5」と,本件発明1の「相互作用マスタ」とは,「一の医薬品から見 た他の医薬品の相互作用が発生する組み合わせを個別に格納する相互 作用をチェックするためのマスタ」である点で共通するが,本件発明 1が「一の医薬品から見た他の一の医薬品の場合と,前記他の一の医 薬品から見た前記一の医薬品の場合の2通りの主従関係で,相互作用 が発生する組み合わせを格納する」のに対し,引用発明3では,「一 の医薬品から見た他の医薬品の一般名コード,薬効分類コード,BO Xコードかの少なくともいずれかについて,相互作用が発生する組み 合わせを格納し,また,他の一の医薬品から見た医薬品の一般名コー ド,薬効分類コード,BOXコードかの少なくともいずれかについて, 相互作用が発生する組み合わせを格納する」点で相違する。
b 本件発明1は「自己医薬品と相手医薬品との組み合わせ」と, 「相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせ」についての合 致の有無を判断するものであるのに対し,前記第2の3ウ(ア)及び上 記イ(イ)によれば,引用発明3は,1)医薬品相互作用チェックテーブル 105において,「自己テーブル部」に,「自己医薬品」に係る「一 般名コード」,「薬効分類コード」,「BOXコード」が存在するか をそれぞれ検索し,2)いずれかのコードが存在していれば,処方医薬 品相互作用チェックテーブルTの形態で「一時記憶テーブル110」 に記憶し,3)「一時記憶テーブル110」に記憶したデータの「相手 テーブル部」に,「相手医薬品」に係る「一般名コード」,「薬効分 類コード」,「BOXコード」が存在するかをそれぞれ検索し,4)い ずれかのコードが存在していれば,「自己医薬品」と「相手医薬品」 とが相互作用を有する組み合わせが存在すると判断するものである。 そうすると,引用発明3の「検索処理」と本件発明1の「相互 作用チェック処理」とは,いずれも,「入力された新規処方データ の各医薬品を自己医薬品及び相手医薬品とし,自己医薬品と相手 医薬品の組み合わせについて,相互作用をチェックするためのマ スタに基づいて相互作用をチェックするための処理」を実行する 点で共通するものの,引用発明3の「検索処理」は,自己医薬品 と相手医薬品と間で,一般名コード,薬効分類コード,BOXコ ードのいずれかの組み合わせが存在すれば相互作用を有する組み 合わせであると判断するものであり,自己医薬品と相手医薬品と の組み合わせと相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせと の,医薬品の組み合わせ同士の合致を判断しているとはいえない から,本件発明1の「自己医薬品と相手医薬品との組み合わせと 相互作用マスタに登録した医薬品の組み合わせが合致するか否か を判断することにより,相互作用チェック処理を実行する」「相 互作用チェック処理」とは相違する。
(イ) 一致点及び相違点
以上によれば,本件発明1と引用発明3は,次の一致点において一致 し,前記第2の3(2)ウ(ウ)記載の相違点4−1のほか次の相違点におい て相違することが認められる。
a 一致点
「一の医薬品から見た他の医薬品の相互作用が発生する組み合わせを個 別に格納する相互作用をチェックするためのマスタを記憶する記憶手 段と, 入力された新規処方データの各医薬品を自己医薬品及び相手医薬品 とし,自己医薬品と相手医薬品の組み合わせについて,上記マスタに 基づいて相互作用をチェックするための処理を実行する制御手段と, 前記制御手段による自己医薬品と相手医薬品の間の相互作用をチェ ックするための処理の結果を,表示する表\\示手段と, を備えたことを特徴とする医薬品相互作用チェック装置」
b 相違点
〔相違点4−8〕
相互作用をチェックするためのマスタが,本件発明1では,「一の 医薬品から見た他の一の医薬品の場合と,前記他の一の医薬品から見 た前記一の医薬品の場合の2通りの主従関係で,相互作用が発生する 組み合わせを格納する」のに対し,引用発明3では,「一の医薬品か ら見た他の医薬品の一般名コード,薬効分類コード,BOXコードか の少なくともいずれかについて,相互作用が発生する組み合わせを格 納し,また,他の一の医薬品から見た医薬品の一般名コード,薬効分 類コード,BOXコードかの少なくともいずれかについて,相互作用 が発生する組み合わせを格納する」点。
〔相違点4−9〕
相互作用をチェックするための処理が,本件発明1では,自己医薬 品と相手医薬品との組み合わせと相互作用マスタに登録した医薬品の 組み合わせが合致するか否かを判断するのに対し,引用発明3では, 「自己テーブル部」に「自己医薬品の一般名コードが存在するか」, 「自己医薬品の属する薬効分類コードが存在するか」,「自己医薬品 に付与されたBOXコードが存在するか」をそれぞれ検索して,いず れかのコードが存在していれば,処方医薬品相互作用チェックテーブ ルTの形態で一時記憶テーブル110に記憶し,一時記憶テーブル1 10に記憶したデータの「相手テーブル部」に,「相手医薬品の一般 名コードが存在するか」,「相手医薬品の属する薬効分類コードが存 在するか」,「相手医薬品に付与されたBOXコードが存在するか」 をそれぞれ検索して,いずれかのコードが存在していれば,「自己医 薬品」と「相手医薬品」とが相互作用を有する組み合わせが存在する と判断するものである点。
エ 以上のとおりであるから,審決は,本件発明1と引用発明3の相違点の 認定に際し,相違点4−8,4−9を看過したものであり,相違点の認定 の誤りがあるというべきである。

◆判決本文

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平成30(行ケ)10166  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和元年6月20日  知的財産高等裁判所

 対戦ゲームについて進歩性なしとした拒絶審決が維持されました。

 前記2(1)〜(3)のとおり,周知技術Aは,引用文献1が属する対戦型コ ンピュータゲームの分野における周知技術である。 そして,前記2(2),(3)のとおり,引用文献3には,プレイヤキャラクタと敵キャ ラクタの強さのバランスをとることを目的とし,プレイヤキャラクタの強さに応じ た強さの敵キャラクタを出現させることで,プレイヤキャラクタに対して強すぎた り弱すぎたりすることのないようにして,ゲームの興味を持続させる効果を生じさ せることが記載され,また,引用文献4には,ユーザの競技レベルに相応しい他の ユーザを対戦相手とすることを目的とし,ユーザの競技レベルに応じた競技レベル の対戦相手を選択することで,相手が弱すぎたり強すぎたりすることがなくなり, 各ユーザは実力が伯仲した相手との対戦を楽しむことができるという効果を生じさ せることが記載されていることからすると,周知技術Aは,ゲームに抽出されるキ ャラクタやプレーヤのレベルをキャラクタやプレーヤのレベルに合わせることによ り,ゲームを楽しいものとするという技術思想に基づくものであると認められると ころ,引用発明1も,前記3(1)で認定したとおり,支援すべきプレイヤの支援度合 いに応じた人数の第三者勢力を登場させて,プレイヤ同士の操作経験に基づく優劣 のアンバランスを調整することにより,拮抗かつ緊張感のあるゲームとするという 技術思想に基づくものであると認められるから,周知技術Aと引用発明1とは共通 の技術思想を有しているといえる。 したがって,引用発明1及び周知技術Aは,技術分野及び技術思想が共通するか ら,引用発明1に周知技術Aを適用する動機付けはあるというべきである。
(イ) 原告は,引用文献3,4に記載された技術は,いずれも,第3者登場 型に属する対戦アクションゲームに関する技術ではないし,また,第1のプレーヤ キャラクタの情報及び第2のプレーヤキャラクタの情報の組合せに基づいて第3者 キャラクタが抽出されるというものでもないから,本願発明とは技術分野を異にす ると主張する。 しかし,前記(ア)のとおり,引用発明1に周知技術Aを適用することの動機付けは 認められるというべきであり,動機付けが認められるためには,第三者登場型対戦 ゲームであるという点の共通性は必要ないというべきである。 したがって,周知技術Aが第三者登場型対戦ゲームではないことを前提とする原 告の上記主張は理由がない。
エ(ア) ところで,相違点1は,第3者キャラクタを抽出してマッチングさせ る設定処理に関して,本願発明は,「複数のキャラクタの中から,第3者キャラクタ を抽出」しているのに対して,引用発明1は,「NPC人数を増減設定」している点 である。すなわち,本願発明と引用発明1とは,第3者キャラクタを抽出してマッ チングさせる設定処理に関して,当該第3者キャラクタが,複数のレベルのキャラ クタの中からレベルの合うキャラクタが抽出されるのか,それとも,同一のレベル のキャラクタが抽出され,その人数を増減させることによりレベルを合わせるのか の点で相違するのであるから,第3者キャラクタを抽出してマッチングさせる設定 処理に関して,引用発明1の「NPC人数を増減設定」するという構成(同一のレ\nベルのキャラクタが抽出され,その人数を増減させることによりレベルを合わせる という構成)に代えて,周知技術Aの「複数の種類のキャラクタ又はプレーヤの中\nから,キャラクタ又はプレーヤのレベルに応じて特定のキャラクタ又はプレーヤを 抽出すること」という構成にすることで,本願発明の構\成となるものと認められる。
(イ) 原告は,本願発明の課題は,「対戦者同士の操作経験に基づくゲーム優 劣のアンバランスを第3者キャラクタを登場させることにより調整する従来技術が, 対戦ゲームとしての面白みに欠ける」ことであり,プレーヤのレベル等に応じた相 手側キャラクタを抽出するというものではないから,引用発明1及び周知技術1と は課題が異なる旨主張するが,本願発明の課題が上記のとおりであるとしても,引 用発明1に周知技術Aを適用することが困難となるということはできず,また,引 用発明1に周知技術Aを適用すると,本願発明の構成となるのであるから,原告の\n上記主張は理由がない。
オ 以上より,引用発明1に周知技術Aを適用して,本願発明を容易に想到 することができるというべきである。
カ なお,原告は,本願発明は,第3者キャラクタの参戦により従来にない 白熱した対戦ゲームを楽しむことができるという各引用文献に記載の発明の作用効 果とは異なる格別の作用効果を奏する旨主張するが,同効果は,引用発明1に周知 技術Aを適用した発明にも認められる作用効果であって,格別のものとはいえない から,原告の上記主張は理由がない。

◆判決本文

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平成31(ネ)10019  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和元年7月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について均等主張も否定されました。1審では、構成要件Dについて均等主張をしていませんでした。控訴審では構\成要件Dの均等侵害を主張しましたが、第1要件を満たしていないと判断されました。被控訴人(1審被告)はYAHOO(株)です。

 本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載及び前記(2)の本件明細 書の開示事項を総合すると,本件発明の技術的意義は,従来の住宅地図に おいては,建物表示に住所番地及び居住者氏名も全て併記されていたため,\n肉眼でも判別可能な実用性を確保するために縮尺度を低いものにする必要\nがあり,これに伴って全体として地図の大型化や大冊化を招き,この大型 化や大冊化が氏名の記載変更作業の実地調査に係る人件費と相俟って住宅 地図を高価格なものとし,更に氏名の公表を希望しない住人についても住\n宅地図に氏名を登載してしまうこととなるため,プライバシーの保護とい う点からも問題を有し,また,従来の住宅地図の付属の索引は,住所の丁 目及びそれぞれの丁目に該当するページだけが掲載されていたため,「目 的とする居住地(建物)を探し出す作業」(検索)が,煩雑で面倒であり, 迅速さに欠け,非能率な作業となっていたという課題があったことから,\n本件発明の住宅地図は,この課題を解決するため,検索の目安となる公共 施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については,居住人氏名や建物 名称の記載を省略し,住宅及び建物のポリゴンと番地のみを記載すること により,縮尺度の高い,広い鳥瞰性を備えた構成の地図とし(構\成要件B 及びC),地図の各ページを適宜に分割して区画化した上で,地図に記載 の全ての住宅建物の所在番地を,住宅建物の記載ページ及び記載区画を特 定する記号番号と一覧的に対応させた付属の索引欄を設ける構成(構\成要 件DないしF)を採用することにより,小判で,薄い,取り扱いの容易な 廉価な住宅地図を提供することができ,また,上記索引欄を付すことによ って,全ての建物についてその掲載ページと当該ページ内の該当区画が容 易に分かるため,簡潔で見やすく,迅速な検索の可能な住宅地図を提供す\nることができるという効果を奏することにあるものと認められる。
イ この点に関し控訴人は,本件発明の技術的思想(技術的意義)は,「検 索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住宅及び建物については 居住人氏名や建物名称の記載を省略し住宅及び建物のポリゴンと番地のみ を記載すると共に,縮尺を圧縮して」(本件発明の構成要件B及び構\成要 件Cの前半)という構成により,「記載スベースを大きく必要とせず」(本\n件明細書の【0039】),これにより「広い鳥瞰性を備えた地図を構成」\n(構成要件Cの後半)する点にある旨(前記第2の4(1)エの「当審におけ る控訴人の主張」(ア))を主張する。
しかしながら,発明の技術的意義は,明細書に開示された従来技術の課 題について,特許請求の範囲の記載及び明細書の記載に基づいて,当該発 明がその課題の解決手段として採用した構成及びその構\成による効果を踏 まえて認定すべきものと解されるところ,控訴人の上記主張は,本件明細 書において,従来の住宅地図の付属の索引には,住所の丁目及びそれぞれ の丁目に該当するページだけが掲載されていたため,「目的とする居住地 (建物)を探し出す作業」(検索)が,煩雑で面倒であり,迅速さに欠け, 非能率であるという課題があったこと(【0003】),本件発明は,上\n記課題を解決するための手段として,地図の各ページを適宜に分割して区 画化した上で,地図に記載の全ての住宅建物の所在番地を,住宅建物の記 載ページ及び記載区画を特定する記号番号と一覧的に対応させた付属の索 引欄を設ける構成(構\成要件DないしF)を採用したことにより,全ての 建物についてその掲載ページと当該ページ内の該当区画が容易に分かるた め,簡潔で見やすく,迅速な検索を可能としたという効果を奏すること(【0\n039】)の開示があることを考慮しないものであるから,採用すること ができない。
・・・
控訴人は,仮に本件発明の構成要件Dの「区画化」の構\成が,地図が記載 されている各ページについて,記載されている地図を線その他の方法によっ て仕切って複数の区画に分割し,その各区画を特定する番号又は記号番号を 付し,利用者が,線その他の方法及び記号番号により,当該ページ内にある 複数の区画の中の当該区画を認識することができる形で複数の区画に分割す ることを意味するものと解し,また,仮に構成要件Fの「索引欄に…住宅建\n物の所在する番地を前記地図上における…記載ページ及び記載区画の記号番 号と一覧的に対応させて掲載した」との構成が,索引欄に所在番地の記載ペ\nージ及び区画の記号番号がユーザの目に見える形で掲載される構成に限られ\nると解した場合には,被告地図は,各ページに線その他の方法及び記号番号 が付されていない点及び「特定の緯度・経度を含む地点データと縮尺レベル 19ないし20を含むURL」が画面に「一覧的に」表示されていない点で\n本件発明と相違することとなるが,被告地図は,均等の成立要件(第1要件 ないし第3要件)を満たしているから,本件発明と均等なものとして,本件 発明の技術的範囲に属する旨主張する。 しかしながら,前記1(3)ア認定の本件発明の技術的意義に鑑みると,本件 発明の本質的部分は,検索の目安となる公共施設や著名ビル等を除く一般住 宅及び建物については,居住人氏名や建物名称の記載を省略し,住宅及び建 物のポリゴンと番地のみを記載することにより,縮尺度の高い,広い鳥瞰性 を備えた構成の地図とし(構\成要件B及びC),地図の各ページを適宜に分 割して区画化した上で,地図に記載の全ての住宅建物の所在番地を,住宅建 物の記載ページ及び記載区画を特定する記号番号と一覧的に対応させた付属 の索引欄を設ける構成(構\成要件DないしF)を採用することにより,小判 で,薄い,取り扱いの容易な廉価な住宅地図を提供することができ,また, 上記索引欄を付すことによって,全ての建物についてその掲載ページと当該 ページ内の該当区画が容易に分かるため,簡潔で見やすく,迅速な検索の可 能な住宅地図を提供することができる点にあるものと認められる。\n
しかるところ,被告地図においては,前記2(1)ウ及び(2)認定のとおり, 地図を記載した各ページを線その他の方法及び記号番号によりユーザの目に 見える形で複数の区画に仕切られておらず,索引欄に住宅建物の所在番地の 記載ページ及び区画の記号番号がユーザの目に見える形で掲載されていない ため,構成要件D及びFを充足せず,ユーザが所在番地の記載ページ及び区\n画の記号番号の情報から検索対象の建物の該当区画を探し,区画内から建物 を探し当てることができないから,このような索引欄を利用した迅速な検索 が可能であるということはできない。\nしたがって,被告地図は,本件発明の本質的部分を備えているものと認め ることはできず,被告地図の相違部分は,本件発明の本質的部分でないとい うことはできないから,均等論の第1要件を充足しない。

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)34450

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平成30(行ケ)10146  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 令和元年6月27日  知的財産高等裁判所(4部)

 パチンコ機の発明について進歩性なしとした拒絶審決が、取り消されました。理由は動機付けがないというものです。

 前記(1)の記載事項によれば,本願明細書には,本願発明に関し,次のよ うな開示があることが認められる。
ア 遊技性を向上させるために,貯留部に遊技領域を流下する遊技球そのも のを物理的かつ一時的に保持して,遊技球の流下タイミングを遅延させる ように構成し,遊技者が手元のボタンを押下することで貯留した遊技球が\n落下可能となるようにした従来のパチンコ機は,例えば,大当たり遊技中\nに遊技者がボタンを操作すれば,貯留部内の遊技球が大入賞口に向かって 一気に放出されるため,多くの遊技球を大入賞口に入賞させることができ たが,遊技球を物理的に貯留する手段を設ける必要があるため,部品点数 が多くなり,コストが嵩むといった課題があり,また,遊技球が流下する 領域を狭めることとなり,好ましくなく,その一方で,大当たり遊技中に 単に遊技球を発射して大入賞口内に入賞させるだけでは,遊技の面白みに 欠けるという実情があった(【0004】,【0006】)。
イ 「本発明」は,上記実情に鑑み,推奨する遊技球のルートを遊技者が容 易に打ち分けることができ,遊技性を向上させることのできるパチンコ機 を提供することを目的とし,この目的を達成するための手段として,遊技 領域に打ち出された遊技球が特別電動役物へ向かう,少なくとも2つのル ートが前記遊技領域内に設けられ,前記2つのルートは,共に遊技球が物 理的に貯留されることなく流下可能に構\成されていると共に,一方のルー トに比べて他方のルートの方が,遊技球が遊技領域に打ち出されてから前 記特別電動役物に到達するまでの時間が短くなるように構成され,前記一\n方のルートは前記遊技領域のうち主に左側の領域が用いられ,前記他方の ルートは前記遊技領域のうち主に右側の領域が用いられ,前記一方のルー トを流下する遊技球を検知する第1遊技球検知センサと,前記他方のルー トを流下する遊技球を検知する第2遊技球検知センサと,前記大入賞口に 入賞した遊技球を検出する大入賞口検知センサと,前記2つのルートのう ち推奨するルートを遊技者に報知する推奨ルート報知手段と,をさらに備 え,大当たり遊技制御手段は,前記大入賞口を開放するよう前記特別電動 役物を作動させた後に,前記大入賞口にM個(ただし,Mは自然数)の遊 技球が入賞したことを条件に前記大入賞口を閉鎖するよう前記特別電動役 物を作動させるラウンド遊技を複数回行う内容の前記大当たり遊技を提供 し,前記推奨ルート報知手段は,遊技球が前記他方のルートを流下してい る状態で,前記第2遊技球検知センサが所定個数の遊技球を検知した後に, 前記一方のルートを推奨するルートとして遊技者に報知するようにした構\n成を採用した(【0007】,【0009】)。 これにより「本発明」は,推奨する遊技球のルートを遊技者が容易に打 ち分けることができ,遊技性を向上させることのできるパチンコ機を提供 することができるという効果を奏する(【0011】)。
・・・
 被告は,引用発明と引用例2に記載された事項は,共に遊技球を流下さ せるルートが複数あり,そのうち片方のルートに遊技球を発射させた方が 有利となる状態がある遊技機に関する発明又は技術であり,技術分野が共 通しているといえるから,引用発明に引用例2に記載された事項を適用す る手がかりがあり,引用発明に引用例2に記載された事項を適用すること ができることからすると,当業者は,引用発明のパチンコ遊技機に,引用 例2に記載された事項を適用して,相違点2及び3に係る本願発明の構成\nとすることを容易に想到することができたものであるから,これと同旨の 本件審決の判断に誤りはない旨主張する。 そこで検討するに,引用例1には,引用発明において,「一方のルート」 に相当する「遊技球滞留部32」を流下する遊技球を検知する遊技球検知 センサ及び「他方のルート」に相当する「遊技球流下部31」を流下する 遊技球を検知する遊技球検知センサを設けることについての記載や示唆は ない。また,引用例1には,遊技球が「遊技球流下部31」を流下してい る状態で,当該遊技球を検知する遊技球検知センサが所定個数の遊技球を 検知した後に,「遊技球滞留部32」を推奨するルートとして遊技者に報 知する手段を設けることについての記載や示唆はない。
 次に,前記2(2)イ認定のとおり,引用例1には,「本発明」は,遊技者 が可変入賞装置の入賞口の開放前に,報知装置による入賞口の開放の予告\nに基づいて,まず「遊技球滞留部」を狙って遊技球を発射し,次に「遊技 球流下部」を狙って遊技球を発射する打ち分けを可能とし,これにより「遊\n技球滞留部」からの遊技球と「遊技球流下部」からの遊技球とが合流して, 可変入賞装置に入賞することとなるため,時間の経過に応じて遊技球を打 ち分けることにより,可変入賞装置への大量の入賞を狙うことを可能とし\nた効果を奏すること(【0009】,【0011】)の開示があるところ, その実施形態である引用発明においては,大入賞口が10秒後に開放され ることを予告する報知用ランプ17aと大入賞口を開放する5秒前に点灯\nする報知用ランプ17bとを設け,遊技者は,報知用ランプ17aの点灯 により大入賞口が10秒後に開放されることを知ったとき,「遊技球滞留 部32」を狙って遊技球を発射し,「遊技球滞留部32」に複数の遊技球 を滞留させ,大入賞口を開放する5秒前に報知ランプ17bが点灯するこ とにより,「遊技球流下部31」を狙って遊技球を発射し,合流地点に設 けられた可変入賞装置11の大入賞口に,短時間で大量の遊技球が入賞す るようにした構成(構\成e,g)を備えている。このように引用発明は, 大入賞口が開放されるまでの時間を報知用ランプ17a又は17bの点灯 により報知することにより,時間の経過に応じて遊技球を打ち分けること を可能とした発明であるといえる。\n
 一方,前記(1)イ認定のとおり,引用例2には,第1の方向側の遊技領域 (例えば,左側の遊技領域)及び第2の方向側の遊技領域(例えば,右側 の遊技領域)にそれぞれ通過ゲート,始動口等が設け,右打ちをすべき遊 技状態のときに,左側の遊技領域に設けられた左通過ゲートに遊技球が通 過すると,左打ちが行われていると判定して,液晶表示装置に右打ちを促\nす画像を表示させ,左打ちをすべき遊技状態(通常遊技状態)のときに,\n右側の遊技領域に設けられた右通過ゲートに遊技球が通過すると,液晶表\n示装置に左打ちを促す画像を表示させていた従来の遊技機においては,遊\n技者が遊技状態に合わせて正しい方向側の遊技領域に遊技球を発射させる 発射操作を行っているにもかかわらず,たまたま少量の遊技球が誤った方 向側の遊技領域を流下し,誤った方向側の遊技領域に設けられた通過ゲー トや始動口等を通過してしまったときに,正しい方向側の遊技領域に遊技 球を発射させることを促すことが報知され,正しい方向側の遊技領域に遊 技球を発射させている遊技者に煩わしさや不快感を与えるという問題があ ったため(【0007】),「本発明」は,第2の方向側の第2通過領域 を進入した遊技球を検出する第2通過領域検出手段により検出された検出 回数の計数を行う第2通過領域計数手段によって予め定められた検出回数\nが計数されると,報知手段により第1の方向側の遊技領域に遊技球を発射 することを促す発射操作情報の報知を行わせる構成を採用し,これにより,\n現在の遊技状態と各遊技領域に設けられた通過領域に遊技球が進入した回 数(検出回数)を参照して発射操作情報の報知を行うので,たまたま少量 の遊技球が誤った方向側の遊技領域を流下したとしても誤差として判定で きるため,遊技者の発射操作に対応したより正確な発射操作に関する報知 を行うことができ,快適な遊技を行わせることができるという効果を奏す ること(【0008】,【0018】)の開示がある。このように引用例 2記載の遊技機は,第1の方向側の遊技領域(左側の遊技領域)を流下す る遊技球を検出する検出手段,第2の方向側の遊技領域(右側の遊技領域) を流下する遊技球を検出する検知手段及び第1の方向側又は第2の方向側 の遊技領域に遊技球を発射することを促す発射操作情報の報知手段を備え, 報知手段による報知を現在の遊技状態と各遊技領域に設けられた検出手段 によって検出された遊技球が進入した回数(検出回数)を参照して行うこ とにより,遊技者が正しい方向側の遊技領域に遊技球を発射させる発射操 作を行っているにもかかわらず,たまたま少量の遊技球が誤った方向側の 遊技領域を流下したとしても誤差として判定し,正しい方向側の遊技領域 に遊技球を発射することを促す発射操作情報の報知を行わないようにして, 遊技者に煩わしさや不快感を与えることのないようにしたものといえる。
 そうすると,引用発明と引用例2記載の遊技機は,共に遊技球を流下さ せるルートが複数あり,そのうち片方のルートに遊技球を発射させた方が 有利となる状態がある遊技機において,上記有利となる状態となった場合 にその有利な方向の遊技領域に遊技球を発射することを促す報知を行うこ とに関する発明又は技術である点において,技術分野が共通しているとい えるが,他方で,引用発明では,遊技者が可変入賞装置の入賞口(大入賞 口)の開放前に,大入賞口が開放されるまでの特定の時間を報知装置によ り予告(報知)することにより,有利な方向の遊技領域に遊技球を発射す\nることを促すものであるのに対し,引用例2記載の遊技機は,遊技者が有 利な方向(正しい方向側)の遊技領域に遊技球を発射させる発射操作を行 っているにもかかわらず,たまたま少量の遊技球が誤った方向側の遊技領 域を流下したとしても誤差として判定し,正しい方向側の遊技領域に遊技 球を発射することを促す発射操作情報の報知を行わないようにしたもので あり,報知の目的及びタイミングが異なるものと認められる。
 また,引用発明において引用例2記載の遊技機の構成(本件審決認定の\n引用例2に記載された事項)を適用することを検討したとしても,具体的 にどのように適用すべきかを容易に想い至ることはできないというべきで ある。そうすると,引用例1及び引用例2に接した当業者は,大入賞口が開放 されるまでの特定の時間を報知装置により予告(報知)する引用発明にお\nいて,報知の目的及びタイミングが異なる引用例2記載の遊技機の構成(本\n件審決認定の引用例2に記載された事項)を適用する動機付けがあるもの と認めることはできない。したがって,当業者は,引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて,相違点2及び3に係る本願発明の構成を容易に想到することができ\nたものと認めることはできないから,被告の上記主張は理由がない。

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平成30(ワ)10130  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年4月24日  東京地方裁判所(29部)

 CS関連発明の侵害事件です。会計ソフトについて非侵害と判断されました。均等も第1要件を満たさないと判断されました。 該当特許の公報は以下です。 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-4831955/B4E648E4A31FB8F27049717998C719922F602DAF55832B56FBCB639C750A8DAC/15/ja 該当特許は無効審判もありますが、審決は見れない状態です(無効2018-800140)

 ア 特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なか った技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想 に基づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にあることに照らすと,特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のう\nち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである。\n
イ これを本件についてみると,前記のとおり,本件発明は,従来の現金主義に 基づく公会計では,政策レベルの意思決定に利用することは困難であったことに鑑 みて,国民が将来負担するべき負債や将来利用可能な資源を明確にして,政策レベルの意思決定を支援することができる会計処理方法及び会計処理を行うためのプロ\nグラムを記録した記憶媒体を提供することを課題とし,その課題を解決するための 手段として,純資産の変動計算書勘定を新たに設定し,当該年度の政策決定による 資産変動を明確にするとともに,将来の国民の負担をシミュレーションすることが できる会計処理方法を提案するものである。 そして,前記のとおり,本件発明の処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘 定)は,国家の政策レベルの意思決定を記録,会計処理するために設定された勘定 であるのに対し,資金収支計算書勘定は,従来の公会計において単式簿記システム で扱ってきた資金(現金及び現金同等物)の受入と払出を記録するものであり,閉 鎖残高勘定(貸借対照表勘定)及び損益勘定(行政コスト計算書勘定)も,企業会計における複式簿記・発生主義会計として用いられてきたものであるから,本件発\n明の課題解決手段である当該年度の政策決定による資産変動の明確化や将来の国民 の負担のシミュレーションは,国家の政策レベルの意思決定を対象とする処分・蓄 積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)によって行われるものと解するのが相当で ある。その上で,本件発明は,資金収支計算書勘定と閉鎖残高勘定(貸借対照表勘定),損益勘定(行政コスト計算書勘定)と処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計\n算書勘定),処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)と閉鎖残高勘定(貸 借対照表勘定)の各勘定連絡を前提として,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に,当該年度における純資産増加(C3,C4)及び純資産減少(C1,\nC2)並びにこれらの差額(収支尻)である純資産変動額(C5)が表示される構\ 成を採用しており,将来の国民の負担をシミュレーションするためには資産変動の 内訳も認識される必要があると認められることにも照らせば,本件発明の課題解決 手段である当該年度の政策決定による資産変動の明確化や将来の国民の負担のシミ ュレーションは,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に表示される純資産増加(C3,C4)及び純資産減少(C1,C2)並びにこれらの差額(収支\n尻)である純資産変動額(C5)によって行われるものと解するのが相当である。 また,上記のような解釈は,本件発明によるシミュレーションに関する本件明細 書の説明とも整合する。すなわち,本件明細書には,「次に,本発明の特徴である シミュレーションについて説明する。損益外純資産変動計算書には,行政コストと, 当期に費消する財源措置で国民の純資産として将来に残る資産の科目からなる財源 措置とそれ以外の科目からなる財源措置と,当期に調達する財源で国民の純資産と して将来に残る資産の科目からなる財源とそれ以外の科目からなる財源と,国民の 純資産として将来に残る資産の原因別増減額と,再評価による差額と,国民の純資 産として将来に残る資産の原因別増減額充当のために手当てされた財源と,会計処 理により,それらから導き出された現役世代の負担額と,将来世代の負担額,赤字 公債相当額,建設公債相当額などの金額が表の中に表\示される。」(【0069】), 「本発明によるシミュレーションは,現役世代の負担額と,将来世代の負担額,赤 字公債相当額,建設公債相当額などの金額に,目標とするべき金額を設定して,行 政コストや財源措置をどのように調整すれば目標とするべき金額が達成できるかを 演算するための手順を予め複数のプログラムとして設定する。」(【0070】)などとして,本件発明によるシミュレーションについて,損益外純資産変動計算書に表\示される行政コスト,財源措置,財源及び資産の原因別増減額等から導き出される 現役世代の負担額,将来世代の負担額,赤字公債相当額及び建設公債相当額等によ って行われることが説明されており,本件発明の課題解決手段である当該年度の政 策決定による資産変動の明確化や将来の国民の負担のシミュレーションが処分・蓄 積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に表示される純資産増加(C3,C4)及び純資産減少(C1,C2)並びに純資産変動額(C5)によって行われるという\n上記の解釈と整合する。
そうすると,本件発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,国家の政策レベルの 意思決定に係る会計処理を対象とする処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘 定)を採用した上で,同勘定に表示される純資産減少(C1,C2)を構\成する勘 定科目の内容を具体的に規定する構成要件Hは,本件発明の課題解決手段を具体化する特有の技術的思想を構\成する特徴的部分であると認めるのが相当である。したがって,本件発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,社会保障給付等の損 益外で財源を費消する取引を「財源措置(C2)」に含める構成(構\成要件H)は, 本件発明の本質的部分であると認められる。
ウ この点,原告は,社会保障給付を処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書 勘定)の「財源措置(C2)」に含める構成は,本件発明の非本質的部分であるとし,その理由として,1)本件発明の技術的思想の中核をなす特徴的原理は,純資産 変動計算書勘定の存在,4つの勘定の勘定連絡の設定,自動仕訳と勘定連絡を通じ 政策レベルの意思決定と将来の国民の負担をシミュレーションできる会計処理方法 のプログラミングにあり(本件明細書【0008】,【0010】,【0021】, 【0031】参照),社会保障給付を行政コスト計算書に計上する被告製品の構成は,本件発明の特徴的原理と無関係であること,2)社会保障給付を処分・蓄積勘定 (損益外純資産変動計算書勘定)の借方の財源措置に計上する構成を,損益勘定(行政コスト計算書勘定)に計上する構\成に置換したとしても,損益勘定(行政コスト計算書勘定)は処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)に振り替えら れるから,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の借方と貸方の差額 (収支尻)に示されている損益外の純資産変動額は同額となり,純資産変動額や将 来償還すべき負担の増減額を財務諸表の中に表\示することにより当該年度の政策決 定による資産変動を明確にするとともに,将来の国民の負担をシミュレーションで きるという同一の作用効果を奏することなどを主張する。 しかしながら,前記のとおり,本件発明は,国家の政策レベルの意思決定を対象 とするものとして,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)という新たな 勘定を設定するものであり,当該年度の政策決定による資産変動の明確化や将来の 国民の負担のシミュレーションを通じた政策レベルの意思決定の支援は,処分・蓄 積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)によって実現されるものと解するのが相当 であり,本件明細書においても,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定) 以外の勘定を用いて将来の国民の負担のシミュレーション等が行われることは説明 されていない(原告が指摘する本件明細書【0031】は,適切な勘定連絡を設定 することがシミュレーションをする前提として必要になることを説明するものであ り,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)以外の勘定を用いてシミュレ ーションを行うことを説明するものとは認められない。)。 そうすると,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の借方に計上され る金額の総額及び貸借差額が結果的に同一になるとしても,処分・蓄積勘定(損益 外純資産変動計算書勘定)以外の勘定を参照しなければ,国家の政策レベルの意思 決定に関する勘定科目(社会保障給付を含む)及びその金額が明らかにならないよ うな構成は,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)を通じて国家の政策レベルの意思決定を支援する本件発明とは作用効果が異なるというべきである。\n
エ また,原告は,従来技術に対する本件発明の貢献の程度は大きいから,本件 発明の本質的部分は,「処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の導入に より,将来世代に対して負担が現実的に先送りされた金額や将来利用可能な資源の増加額を可視化する」という構\成要件Hを上位概念化したものであって,被告製品は,そのような構成を備えていると主張する。原告の主張は必ずしも明確でないが,従来技術に対する本件発明の貢献の程度に\n照らし,本件発明の構成のうち,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計算書勘定)の設定以外のものは非本質的部分であると主張する趣旨であれば,本件出願日前に\n頒布された刊行物である乙12文献において,資金収支計算書勘定,貸借対照表勘定及び行政コスト計算書勘定に加えて,納税者,すなわち,国民の資産の変動を明\nらかにするための勘定として,財源措置・納税者持分増減計算書勘定を設ける構成が示されていることに照らし,少なくとも,処分・蓄積勘定(損益外純資産変動計\n算書勘定)の設定のみを従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると認めることはできないから,採用することができない。\n
オ そこで,被告製品をみると,被告製品では,前記のとおり,社会保障給付が 行政コスト計算書に計上されており,純資産変動計算書には,行政コスト計算書の 収支を基礎付ける勘定科目(社会保障給付を含む)及びその金額が示されていない ことが認められ,「純経常費用(C1)と並んで財源措置(C2)という項目もあ るが,これは具体的に言えば社会保障給付や…を指しており」(構成要件H)を充足するとはいえないから,本件発明と本質的部分において相違する。したがって,\n被告製品は,均等の第1要件を満たすとはいえない。

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平成29(ワ)31706  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年3月27日  東京地方裁判所

 東京地裁29部は、コンピュータプログラムにかかる特許について、構成要件FおよびGを有していないとして、技術的範囲に属しないと判断しました。

 そこで,被告プログラムが「木構造」を有するか,すなわち,被告プログラムを\n使用して表示されるフローダイアグラムの親子関係が示されている部分が「木構\ 造」であるかについて検討する。
原告は,前記イ(イ)の1)から4)までのSayボックスの接続関係について,木構\n造,すなわち階層リードで接続され,ノードの親子関係が示されている部分である と主張するのでこれをみると,前記イ(イ)のとおり,Sayボックスについて,S ayボックスのonStartコネクタから出発して,SayボックスのonSt oppedコネクタに接続されているのであり,SayボックスのonStart コネクタ及びonStoppedコネクタは,いずれも,Sayボックスの構成要\n素である以上,Sayボックスのフローダイアグラムにおけるボックスの接続関係 は,Sayボックスから出発してSayボックスに戻る閉路として表示されている\nことになり,木構造であるとはいえない。\nその他,階層リードで接続され,ノードの親子関係が示されている部分が全て木 構造であることを認めるに足りる証拠もない。\nそうであれば,被告プログラムは,「木構造」を有しているとはいえず,したが\nって,「木構造表\示ステップ」(構成要件G)を充足しないというべきである。\n
エ(ア) この点,原告は,「木構造」の意義について,ノード(点)とエッジ\n(線)から構成される図として表\示されるものであって,閉路を含まない概念であ るとした上で,前記イ(イ)でみたSayボックスの構成は,閉路ではないと主張す\nる。すなわち,被告プログラムのSayボックスのフローダイアグラムにおいて, 3)Say Textボックスの出力コネクタから1)Sayボックスの入力コネクタ に直接リードが接続されている場合には,SayボックスからSayボックスに戻 る閉路であるといえるが,3)Say Textボックスの出力コネクタは,4)Sa yボックスの出力コネクタに接続されており,1)Sayボックスの入力コネクタと 4)Sayボックスの出力コネクタは異なるものとして表示されているのであるから\n閉路ではない旨主張する。 しかしながら,「木構造」はコネクタの接続関係ではなく,ノード間の接続関係\nを表示するものであり,被告プログラムにおいて,それはボックス間の接続関係を\n表示するものであるところ,別紙6の図2は,別紙6の図1に表\示されたフローダ イアグラムのうち,Sayボックスの構成要素を表\示した図であって,前記認定の とおり,SayボックスのonStartコネクタとSayボックスのonSto ppedコネクタはいずれもSayボックスの構成要素であるから,Sayボック\nスのonStartコネクタとSayボックスのonStoppedコネクタの表\n示位置が離れているとしても,Sayボックスから出発してSayボックスへ戻る 接続関係がないとみることはできない。よって,原告の上記主張はその前提を欠き, 採用することができない。
(イ) また,原告は,出力コネクタであるonStoppedは,ボックスの動 作が終了したことを示すにすぎず,Say TextボックスのonStoppe dコネクタから出力されたデータは,Sayボックスを経由して流れることはない から,Sayボックスのフローダイアグラムは,データの流れの観点からみても閉 路ではない旨主張する。しかしながら,証拠(乙30,31)及び弁論の全趣旨に よれば,Say TextボックスのonStoppedコネクタから出力された データは,Sayボックスを経由していることが認められるから,原告の主張はそ の前提を欠き,採用できない。
オ 小括
以上のとおり,被告プログラムは,「木構造表\示ステップ」(構成要件G)を充\n足しない。
(2) 争点1−4(被告プログラムは,「自ノード変数データ,前記上位ノード変 数データ及び前記スクリプトを表示するノードデータテーブル表\示ステップ」(構\n成要件G)を充足するか)について
ア 「ノードデータテーブル表示ステップ」及び「ノード変数データ」の意義について\n
まず,「ノードデータテーブル表示ステップ」の意義について検討すると,「テ\nーブル」は,表,一覧表\を意味するところ,本件明細書等(【0046】,【00 55】,【0057】,【0065】,【0066】,【図6】,【図10】)に おいて,「ノードデータテーブル」に相当するデザインテーブルは,自ノード変数 データ及び全ての直系上位ノード変数データを表示する領域(【図6】における公\n開変数表示領域)と,代入用スクリプトを表\示する領域を含む一覧表になっており,\n「図6に示した状態で,表示された木構\造及びノードデータの編集が可能であり」\n(【0054】),「ノードデータとして1まとまりになっている」(【005 5】)と記載されていることにも照らせば,「ノードデータテーブル」とは,「ノ ードデータ」の一覧表であり,上位ノード変数データ,自ノード変数データ及び代\n入用スクリプトを同時に表示するものと解するのが一般的かつ自然である。\n次に,ノードデータテーブルが表示する「ノード変数データ」の意義について検\n討すると,本件明細書等には,「変数の値(「変数データ」と記述する場合もあ る。)」(【0031】),「ノードの直系上位ノードの公開変数の値である上位 ノード変数データ」(【0032】)と記載されており,これと異なる解釈を導く ような説明がされていることは認められないから,「ノード変数データ」は,変数 の値を意味すると解するのが自然かつ合理的である。
 イ この点,原告は,「テーブル」の意義について,本件明細書等に「デザイン テーブル20は,ツリービューア10に表示されたノードのうちの選択されたノー\nドが有する情報を表示する領域であり」(【0046】)と記載されているから,\n「テーブル」(構成要件G)は,情報を表\示する領域を意味すると主張する。しか しながら,この記載はデザインテーブルの性質を説明するものにすぎず,「テーブ ル」の意義を一般的意味より広く解釈すべきことを示唆する記載とみることはでき ないから,原告の同主張は採用することができない。 また,原告は,「ノード変数データ」の意義について,本件特許の請求項1及び 請求項9並びに本件明細書等の記載(【0008】【0017】)には,「前記自 ノード変数データの値」という文言があり,「変数データ」は,「変数データの 値」と区別して用いられているから,「ノードデータテーブル表示ステップ」にお\nいて,変数の値を表示することは必要ではなく,また,上位ノード変数データと自\nノード変数データとを同時に表示することも必要ではないと主張するが,同主張は,\n前記認定に照らして採用することができない。
ウ 被告プログラム
(ア) 被告プログラムの構成g\n
まず,原告は,被告プログラムのフローダイアグラム画面上のインスペクタに表\n示された入力コネクタの名称が「上位ノード変数データ」に当たると主張している ところ,入力コネクタの名称は変数の値ではないから,「上位ノード変数データ」 に当たると認めることはできない。よって,被告プログラムは,「上位ノード変数 データ」「を表示するノードデータテーブル表\示ステップ」を充足しない。
(イ) 被告プログラムの構成g’\n
また,原告は,被告プログラムのSay Textボックスのスクリプトエディ タにおいて親からの変数の取得機能を使う場合,上位ノードであるSayボックス\nの変数のうち利用可能なものを一覧表\示させることができる機能があるから,被告\nプログラムは,「上位ノード変数データ」「を表示するノードデータテーブル表\示 ステップ」を充足すると主張する。
この点,Say Textボックスにおいて親からの承継を選択した場合,別紙 3−1被告プログラム説明書図19のとおり,インスペクタ上に,Say Tex tボックスの変数Speed(%)の値が表示されるが,これはSay Text ボックスにおいて表示されるものであるから自ノード変数を表\示しているものと認 められ,「上位ノード変数データ」を表示しているとみることはできない。よって,\n被告プログラムは,一覧表として「自ノード変数データ」及び「上位ノード変数デ\nータ」を同時に表示しているということはできない。\nさらに,原告は,別紙6の図3のように,上位ノード変数と代入用スクリプトを 同時に表示することができる旨主張するが,同図の表\示形態を一覧表とみることは\nできない上,同図では,上位ノードの名称が表示されているにとどまり,上位ノー\nド変数の値が表示されていると認めることはできないから,「ノード変数データ」\nを一覧表として表\示しているということはできず,原告の同主張は採用することが できない。
加えて,本件全証拠によっても,behavior.xar内に,親からの承継 の機能に関して,自ノード変数データ及び上位ノード変数データを利用した演算を\n行って自ノード変数データの値を求める「代入用スクリプト」があると認めるに足 りる証拠はないから,被告プログラムは,「前記スクリプトを表示するノードデー\nタテーブル表示ステップ」を充足すると認めることはできない。\nエ 以上のとおり,被告プログラムは,「自ノード変数データ,前記上位ノード 変数データ及び前記スクリプトを表示するノードデータテーブル表\示ステップ」 (構成要件G)を充足しない。\n

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平成30(ネ)10060  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成31年3月20日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 UI関連の発明について、1審では、新規性無しの無効理由ありとして請求棄却されました。1審では、訂正審判がなされ審決が確定しましたが、時期に後れた主張であるして、口頭弁論は再開しませんでした。知財高裁は、構成要件Fが不明瞭のため要件を具備しないと判断されました。被告はAppleです。

 まず,構成要件Fの「入力」との文言の意味について検討する。
 (ア) 本件明細書には,構成要件Fの「入力」の意味を直接定義していると認めるに足りる記載は見当たらない。\n他方で,本件明細書には,複数の箇所で「入力」との文言が使用され ているところ,例えば,段落【0008】の「摩擦力による入力を,直 接的または間接的に検出する」のように「物理的な力を加えること」と の意味や,段落【0012】の「図14は,…文字を入力する例を示し た図である。」のように「コンピュータに情報を与えること」との意味 など,同一の文言であるにもかかわらず文脈によって異なる意味で使用 されている。 なお,本件訂正審決は,本件明細書の段落【0035】及び【006 2】の記載に基づいて,本件発明の「『当該変更結果を当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの(判決注:原文のまま)記憶部に\n記憶させる』とは,(背景の変更などの)変更結果を,(フォルダYに 保存することなどの)表示対象に対する情報として記憶することを意味しているといえる。」と判断しているが,これは構\成要件Fの「入力」 は「コンピュータに情報を与えること」を意味すると解したものといえ る。
(イ) この点について,控訴人は,構成要件Fの「入力」は,「力入力検出手段」により検出された当該表\示対象に対する「力入力」,すなわち「物理的な力を加えること」を意味すると主張する。 しかし,この解釈は,構成要件H,A及びDでは,「物理的な力を加えること」として「力入力」との文言が明示的に使用されているにもか\nかわらず,構成要件Fでは敢えて「入力」のように異なる文言が使用されていることと整合しない。\n
また,構成要件Fの「入力」は,「当該変更結果」,すなわち,「保持された表\示対象以外の表\示態様を変更することにより,当該表\示対象を相対的に変更させた結果」を目的語としていると解し得るところ,こ の場合に「入力」を「物理的な力を加えること」と解釈することは不自 然である。さらに,「として」は,前に置かれた語を受けて,その状態, 資格,立場等であることを表す語であるところ,「入力」を「物理的な力を加えること」と解すると,「入力として・・・記憶させる」との文言が\n意味するところを理解できないというべきである。
(ウ) 控訴人は,本件訂正審決が「当該変更結果を当該表示対象に対する入力として・・・記憶部に記憶させる」とは,「(背景の変更などの)変更結\n果を,(フォルダYに保存することなどの)表示対象に対する情報として記憶することを意味している」と判断したことを指摘して,当該判断\nは控訴人の上記主張と整合するとも主張する。 しかし,「物理的な力を加えること」と「コンピュータに情報を与え ること」とは別個の概念であるから,構成要件Fの「入力」を「物理的な力を加えること」と解した上で,本件訂正審決の判断のように「コンピュータに情報を与えること」との意味をも有すると直ちに理解することは困難である(物理的な力が加わったことをコンピュータに検出させる場合には,両者の意味が重なっているともいい得るが,本件においては,上記説示のとおり,少なくとも「物理的な力を加えること」と解することは不自然であるから,両者の意味が重なっている場合と断ずることもできない。)。\n
(エ) 以上によれば,控訴人の主張によっては,構成要件Fの「入力」の意味を一義的に理解することは困難であるというほかない。\n
イ 仮に,構成要件Fの「入力」を,本件訂正審決が判断したように,「コンピュータに情報を与えること」と解したとしても,次のとおり,構\成要件Fの意義は依然として不明確であるというべきである。
(ア) 構成要件Fの「当該表\示対象」は,構成要件Cの「前記位置入力手段にて検出された位置の表\示対象」をいうと解される。本件明細書には,この「表示対象」の意味についても,直接定義していると認めるに足りる記載は見当たらないものの,発明の詳細な説明の記載に照らせば,アイコン等(【0021】),アイコンや文字列等(【0029】),アイコンや文字,記号,図形,立体表\示対象など(【0035】)がこれに当たるものと解される。 しかし,表示画面にアイコン等を表\示させ,利用者が当該表示画面に接触した位置を検出し,当該接触位置に応じて処理を行う入出力装置においては,表\示画面に表示するアイコン等のデータそのもの(例えば,スマートフォンの画面に表\示されているカメラ様の画像データ)と,当該アイコン等と紐づけされた実体(例えば,カメラアプリケーション) とは,別個のものとされていることが多いと解されるところ,本件明細 書の記載を精査しても,本件発明における「表示対象」が具体的にどのようなものであるのかは明らかといえない。\n
(イ) また,上記ア(イ)のとおり,構成要件Fの「当該変更結果」は,「保持された表\示対象以外の表示態様を変更することにより,当該表\示対象を相対的に変更させた結果」と解し得るところ,「相対的に変更させた結果」についても,背景として設定されている画像が移動したピクセル数や,保持された表示対象と重なることとなったアイコン等の有無及びその種類など,さまざまなものがあり得る。\n そして,構成要件Fによれば,この「相対的に変更させた結果」は,「当該表\示対象」に対する情報として与えるものであるが,ある対象に与え得る情報は,当該対象がアプリケーションかデータかや,その実装方法によっても大きく異なるものと解される。 そうすると,上記(ア)のとおり,「当該表示対象」が具体的に意味するところが明らかでない上に,「相対的に変更させた結果」の意味内容も特定されていないことを考え合わせると,「当該変更結果を当該表\示対象に対する入力として記憶部に記憶させる」の意義も明らかでないというべきである。
(ウ) この点に関し,本件訂正審決は,本件明細書の段落【0035】及び 【0062】の記載に基づいて,「当該表示対象に対する入力として前記コンピュータの(判決注:原文のまま)記憶部に記憶させる」とは,「表\示要素『B』のデータをフォルダXからフォルダYに移動させて保存することを意味している」と判断した。しかし,本件訂正審決の説示においても,「表示要素『B』のデータ」がいかなるデータであるのかが具体的に特定されているとはいい難い。\n また,本件明細書の段落【0035】記載の「フォルダX」及び「フォルダY」と段落【0062】記載の「WINDOW1」及び「WINDOW2」の関係も明らかでなく,いかなる情報が「相対的に変更させた結果」に該当し,「フォルダXからフォルダYに移動させ」ると理解することになるのかについても具体的な指摘がされているとはいえない。
ウ 以上検討したところによれば,結局のところ,構成要件Fの意義は不明確というべきである。そして,構\成要件Fの意義が不明確である以上,被告各製品が構成要件Fを充足すると認めることはできない。\n

◆判決本文

1審はこちらです。

◆平成29(ワ)14142

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平成29(ワ)34450  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年1月31日  東京地方裁判所(46部)

 CS関連発明について、構成要件Dを有していないとして、非侵害の認定がされました。被告はヤフー株式会社です。
 前記(1)によれば,本件発明の意義は以下のとおりであると認められる。 従来の住宅地図は,建物表示に住所番地だけでなく居住者氏名も全て併記さ\nれていたため,氏名を記載するためのスペースを確保するために住宅地図の縮 尺を高くすることができず,そのため,地図の大きさも比較的大きくする必要 があるとともに,地図に氏名が記載されることによるプライバシー侵害や利用 者の検索への支障を生じたり,地図の更新作業のための調査に膨大な労力と人 件費がかかったりするという課題があった。また,住宅地図に付されている索 引についても,住所のうち丁目と,それぞれの丁目に該当するページが掲載さ れているだけであったため,同一の丁目の中で番地が異なっている多くの建物 の中から目的とする建物を探し出す必要があった。 本件発明は,居住者氏名を記載しないため,高い縮尺度で地図を作成するこ とにより小判で,薄い,取り扱いの容易な廉価な住宅地図を提供することや, 地図の更新のために氏名調査等の労力を要しないことによって廉価な住宅地 図を提供することを可能にするとともに,地図上に公共施設や著名ビル等以外\nは住宅番地のみを記載し,地図のページを適宜に分割して区画化したうえで建 物の所在する番地と記載ページと記載区画の記号番号を一覧的に対応させた 索引欄を付すことによって,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅地図\nを提供することを可能にするものである。\n
2 争点1−4(構成要件D(「該地図を記載した各ページを適宜に分割して区画\n化し」)についての文言侵害の有無) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 被告地図プログラムは,ユーザが,インターネット上の「https:/ /以下省略」のURLにアクセスし,所定の操作をするなどすると,ユーザ の端末にインストールされているWebブラウザを介して,ユーザ端末のデ ィスプレイに地図を表示できるようにしたプログラムである。\n被告地図プログラムにより表示される地図では,縮尺レベルが1〜20の\n20段階に分かれており,縮尺レベル20が最も詳細(縮尺率が小さい)な もので,縮尺レベル1が最も広域(縮尺率が大きい)なものである。各縮尺レベルに応じて,地図用のデータが存在する。 りディスプレイの画面に表示さ\nれる地図の画面表示等は,別紙「被告地図プログラムの構\成(分説)」記載の とおりである。(以上につき,甲13ないし19,乙1,22,弁論の全趣旨)
イ 被告地図において,市区町村名,町名,丁目及び番の表示の右側に〔地図〕\nと表示された部分等にはハイパーリンクが設定されており,そのハイパーリ\nンクに係るURLは,冒頭に「https://以下省略」と記載され,そ の後の記載がパラメータであることを示す「?」が記載された後に,「lat =…&lon=…&ac=…&az=…」及び「z=…」という記載を含む ものである。前記のlat,lon,ac,azが示す各値は,それぞれ当 該地点に係る緯度,経度,都道府県及び市区町村の住所コード,町,丁目, 番又は号の番号を示し,zが示す値は縮尺レベルを示す。ユーザがディスプ レイ画面上で当該ハイパーリンクをクリックすると,その緯度経度を含む地点データと縮尺データを含むURLが被告地図の地図提供サーバに送信さ れる。地図提供サーバが,この地点データに係る地点を含み,かつ,縮尺デ ータに係る縮尺のメッシュ地図を地図データベースサーバから読み出し,ユ ーザのパソコンに送信することにより,ユーザのディスプレイ画面上におい\nて当該緯度経度を中心とした所定の縮尺の地図が表示される。(甲4ないし\n19,弁論の全趣旨)
ウ インターネットに接続した状態で被告地図をユーザのディスプレイ画面 に表示し,その後,インターネットの接続を停止した上で地図表\示画面をス クロールさせると,地図が表示されない部分が画面上に表\示される。(甲3 4,弁論の全趣旨)
エ 被告地図プログラムにおける縮尺レベル19の縮尺は,概ね1/1250 から1/2857の範囲であり,被告地図における縮尺レベル20の縮尺は, 概ね1/615程度である。(甲33,乙1,弁論の全趣旨)
(2)本件明細書には、前記1(1)記載のほか、(発明の実施の形態)として以下 の記載がある。なお,以下の図1ないし5は,それぞれ,本判決別紙本件明細 書図1ないし5である。 ア 段落【0017】
・・・
(3)構成要件Dの「適宜に分割して区画化」について\n
構成要件Dの「適宜に分割して区画化」の意義について,特許請求の範囲の\n「各ページを適宜に分割して区画化し,…住宅建物の所在する番地を前記地図 上における前記住宅建物の記載ページ及び記載区画の記号番号と一覧的に対 応させて掲載」という記載(構成要件D,E及びF)に照らせば,構\成要件D の「適宜に分割して区画化」とは,記号番号を付すことや番地と対応する区画 を一覧的に示すことができる区画を作成することが可能となるように,検索す\nべき領域の地図のページを分割し,認識できるようにすることといえる。 そして,本件発明は, 前記1(2)のとおり、地図上に公共施設や著名ビル等以 外は住宅番地のみを記載するなどし,全ての建物が所在する番地について,掲 載ページと当該ページ内で分割された該当区画を一覧的に対応させて掲載し た索引欄を設けることによって,簡潔で見やすく迅速な検索を可能にする住宅\n地図の提供を可能にするというものであり,本件発明の地図の利用者は,索引\n欄を用いて,検索対象の建物が所在する地番に対応する,ページ及び当該ペー ジにおける複数の区画の中の該当の区画を認識した上で,当該ページの該当区 画内において,検索対象の建物を検索することが想定されている。そのために は,当該ページについて,それが線その他の方法によって複数の区画に分割さ れ,利用者が該当の区画を認識することができる必要があるといえる。そうす ると,本件明細書に記載された本件発明の目的や作用効果に照らしても,本件 発明の「区画化」は,ページを見た利用者が,線その他の方法及び記号番号に より,検索対象の建物が所在する区画が,ページ内に複数ある区画の中でどの 区画であるかを認識することができる形でページを区分することをいうとい える。 前記(2)のとおり、本件明細書には、発明の実施の形態において,本件発明を 実施した場合における住宅地図の各ページの一例として別紙「本件明細書図2」 及び「本件明細書図5」が示されているところ,これらの図においては,いず れも道路その他の情報が記載された長方形の地図のページが示されたうえで, そのページが,ページ内にひかれた直線によって仕切られて複数の区画に分割 されており,その複数の区画にそれぞれ区画番号が付されている。また,本件明細書図4の索引欄には,番地に対応する形でページ番号及び区画番号が記載 されており,利用者は,検索対象の建物の番地から,索引欄において当該建物 が掲載されているページ番号及び区画番号を把握し,それらの情報を基に,該 当ページ内の該当区画を認識して,その該当区画内を検索することにより,目 的とする建物を探し出すことが記載されている(段落【0028】)。ここでは, 上記の特許請求の範囲の記載や発明の意義に従った実施の形態が記載されて いるといえる。そして,「区画化」の意義に関係して,他の実施の形態は記載さ れていない。
以上によれば,構成要件Dの「区画化」とは,地図が記載されている各ペー\nジについて,記載されている地図を線その他の方法によって仕切って複数の区画に分割し,その各区画に記号番号を付すことであり,索引欄を利用すること で,利用者が,線その他の方法及び記号番号により,当該ページ内にある複数 の区画の中の当該区画を認識することができる形で複数の区画に分割するこ とを意味すると解するのが相当である。 原告は,被告地図において,縮尺レベル19の住宅地図及び縮尺レベル20 の住宅地図がそれぞれ構成要件Dの「該地図を記載した各ページ」に該当する\nと主張した上で,被告地図のデータは,画面に表示されるときに区分された形\nでその一部が表示されるから構\成要件Dの「適宜に分割して区画化」されると 主張するとともに,「メッシュ化」され,また,複数のデータとして管理されて いるから構成要件Dの「適宜に分割して区画化」することになると主張する。\nしかし,仮に,縮尺レベル19の住宅地図及び縮尺レベル20の住宅地図が それぞれ構成要件Dの「該地図を記載した各ページ」に該当するとしても,利\n用者は,画面に表示されている地図を見ているのであって,線その他の方法及\nび記号番号により,ページにある複数の区画の中で,検索対象の建物が所在す る地番に対応する区画を認識することができるとはいえない。被告地図におい て「メッシュ化」がされていて,また,被告地図に係るデータが複数のデータ として管理されているとしても,被告地図プログラムの構成(分説)及び前記\nアないしウに照らし,利用者は,「メッシュ化」されている範囲や区分された データを通常認識しないだけでなく,それらに対応する記号番号を認識するこ とはない。したがって,被告地図において,線その他の方法及び記号番号によ り,ページにある複数の区画の中で,検索対象の建物が所在する地番に対応す る区画を認識することができるとはいえない。そうすると,前記 に照らし, 被告地図において,「各ページ」が,「適宜に分割して区画化」されているとは いえない。 これらによれば,被告地図について,構成要件Dの「適宜に分割して区画化」\nがされているとは認められない。

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平成27(ワ)8974  特許権侵害差止等請求事件  特許権 平成30年12月13日  大阪地方裁判所

 論点はいろいろありますが、主観的間接侵害における多用途品に対して差止請求が認められました。
(4) 被告表示器A,被告製品3の製造,販売等の行為についての直接侵害の成否
ア 被告表示器Aはプログラマブル表\示器であり,被告製品3はそれらにイ ンストールするソフトウェアであり,前提事実(前記第2の2(4)エ)のとおり,被 告表示器Aは被告製品3のソ\フトウェアがなければ作動せず,被告製品3のソフトウェアは被告表\示器においてのみ有効に機能する関係にあると認められるから,ユ\nーザがそれらの一方のみを使用することはないといえる。このため,原告は,1)被 告表示器Aと被告製品3は,その販売形態にかかわらず,実質的には常にセット販売されていると評価すべきものであり(セット販売理論),また,2)被告製品3のソフトウェアはユーザの下で必ず被告表\示器にインストールされるのであるから,ユーザは被告の道具としてインストールを行うにすぎない(道具理論)として,被告 表示器Aと被告製品3の各製造,販売等は,同一機会でされるものであるか否かを問わず,被告製品3のOSがインストールされた被告表\示器Aの製造,販売等と同視すべきであると主張する。
イ 被告表示器A,被告製品3は,それらが個別に販売される場合はもとより,同一の機会に販売される場合であっても,被告製品3の基本機能\OS及び拡張/オプション機能OSのうちの回路モニタ機能\等部分のインストールがいまだされ ない状態であるから,それらは直接侵害品(実施品)としての構成を備えるに至っておらず,それを備えるにはユーザによるインストール行為が必要である。\nこのような場合,確かに,ユーザの行為により物の発明に係る特許権の直接侵害 品(すなわち実施品)が完成する場合であっても,そのための全ての構成部材を製造,販売する行為が,直接侵害行為と同視すべき場合があることは否定できない。\nしかし,構成部材を製造,販売する行為を直接侵害行為(すなわち実施品の製造,販売行為)と同視するということは,ユーザが構\成部材から実施品を完成させる行為をもって構成部材の製造,販売とは別個の生産行為と評価せず,構\成部材の製造, 販売による因果の流れとして,構成部材の製造,販売行為の中に実質的に包含されているものと評価するということであるから,そのように評価し得るためには,製\n造,販売された構成部材が,それだけでは特許権の直接侵害品(実施品)として完成してはいないものの,ユーザが当然に予\定された行為をしてそれを組み合わせる などすれば,必ず発明の技術的範囲に属する直接侵害品が完成するものである必要 があると解するのが相当である。換言すれば,ユーザの行為次第によって直接侵害 品が完成するかどうかが左右されるような場合には,構成部材の製造,販売に包含され尽くされない選択行為をユーザが行っているのであるから,構\成部材を製造,販売した者が間接侵害の責任を負うことはあっても,直接侵害の責任を負うことは ないと解すべきである。
ウ このような観点から本件の事実関係について検討すると,前記(2)キ(イ) で認定した事実によれば,被告表示器Aにおいて回路モニタ機能\等を使用するため には,ユーザが,被告製品3をインストールしたパソコンで,動作設定を「回路モニタ」とする拡張機能\スイッチが配置されたプロジェクトデータを作成する必要があり,拡張/オプション機能OSのうちの回路モニタ等部分が転送対象として自動的に選択されるのも,ユーザが上記のようなプロジェクトデータを作成した場合の\nみであると認められる。これを換言すれば,そもそもユーザによって上記のような プロジェクトデータが作成されず,したがってこれが被告表示器Aにインストールされない場合には,ユーザが敢えて拡張/オプション機能\OSのうちの回路モニタ等部分を転送対象として選択しない限り,被告表示器Aに回路モニタ機能\等が備わることはないのである。 また,被告製品1−2については一部の機種では,そもそも回路モニタ機能等を使用できない。また,回路モニタ機能\等が使用可能な機種についても,これを使用\nするためにはオプション機能ボードを購入して設置する必要がある。そして,そもそもこれはオプションの部材であるから,ユーザがこれを購入して設置することが\n当然に予定されていると認めることはできないし,乙17及び18によれば,回路モニタ機能\等に対応している被告製品1−2を購入した者のうち,オプション機能\nボードを購入しなかった者が相当程度存したと認められる(原告は,乙17及び1 8は裏付け証拠がないから信用性を欠く旨主張するが,記載内容は一定の具体性を持っており,その内容が不合理であることをうかがわせる事情も認められず,かえ って,オプション機能ボードがまさにオプション品であることからすると,相当程度の者が購入しないというのは合理的であるから,具体的な割合はともかく,少な\nくともオプション機能ボードを購入しなかった者が相当程度存したと認められるという限度ではその信用性を認めるのが相当である。)。\nなお,被告製品1−1では,回路モニタ機能等が標準装備されているが,前記(2) ア(オ)での認定のとおり,被告製品1−1は他の点でも被告製品1−2にない機能を有しており,特にラダー編集機能\は,甲5のカタログでも回路モニタ機能等と並ん\nで強調されているものであることからすると,被告製品1−1を購入する者が須く 回路モニタ機能等を使用することを当然の前提としてこれを購入するとまで認めることは困難である。そして,これらの事情は,被告表\示器2Aについても妥当すると考えられる。
 以上のことを踏まえると,被告が販売した被告表示器Aや被告製品3だけでは,直ちに本件発明1の直接侵害品(実施品)が完成するわけではないし,ユーザが被\n告表示器Aを被告製のPLCに接続した上で,被告製品3の拡張/オプション機能\ OSのうちの回路モニタ機能等部分をインストールすることが必ず予\定された行為 であると認めることもできない。したがって,ユーザの行為によって直接侵害品が 完成するかどうかが左右されるような場合に該当するといわざるを得ない。
エ 以上に対し原告は,被告が被告製品1や2等のカタログにおいて,回路 モニタ機能等を強調していることや,被告表\示器Aが他の被告製品と比べて高額で あること等からすると,本件発明1を全く実施しないという使用態様が被告表示器Aと被告製品3のユーザの下で経済的,商業的又は実用的な使用形態としてあると\nは認められないと主張している。 しかし,前記ウで述べた事情からすると,カタログで強調されているからといっ て,ユーザが必ず回路モニタ機能等を使用するとまで認めることはできない。原告は,他の回路モニタ機能\等を使用できない被告製品(被告製品1−3等)との価格差も指摘するが,当該他の機種では回路モニタ機能等を使用することはできないものの,前記認定の被告表\示器Aと他の機種との画面サイズや機能の違いを踏まえる\nと,被告表示器Aを購入する者が回路モニタ機能\等を使用することを当然の前提としてこれを購入するものであるとまで認めることもできない。 なお,原告は,他社が回路モニタ機能等を使用できない廉価な製品を販売していること(甲23,24)を指摘しているが,それと被告表\示器Aや被告製品3とでは回路モニタ機能等以外の機能\が異なっており,またハード面での差異や購入後の サポートの内容も異なっていること(甲5,23,乙17)などを踏まえると,原 告のこの指摘によって上記事情が基礎付けられるともいえない。 以上より,本件発明1を全く実施しないという使用態様が,被告表示器Aと被告製品3の経済的,商業的又は実用的な使用形態でないと認めることはできないから,\n原告の上記主張は採用できない。なお,原告は東京地裁平成13年10月31日判 決を引用しているが,本件と事案を異にするから,本件には妥当しないというべき である。
オ 以上より,直接侵害の成立は認められない。したがって,仮に被告表示器Aと被告製品3の販売行為を実質的にセット販売と評価し得るとしても,その販\n売行為をもって本件特許権1の直接侵害行為と評価することはできない。
(5) 以上より,被告による被告表示器Aと被告製品3の製造,販売等の行為は本件特許権1の直接侵害行為に該当しない。\n
カ 主観的要件について
(ア) 特許法101条2号においては,「発明が特許発明であること」(主観 的要件1))及び発明に係る特許権の直接侵害品の生産に用いる「物がその発明の実 施に用いられること」(主観的要件2))を知りながら,その生産,譲渡等をすること が間接侵害の成立要件として規定されている。
(イ) 主観的要件1)について
a 被告は,本件発明1(本件特許1に係る発明)の存在を知った時期 は,本件第1特許の特許請求の範囲を本件発明1に係る構成要件のように訂正することを認めるとの審決(甲20)がされたことを知った平成28年11月16日で\nあると主張している。 そこで,まず,特許発明について特許請求の範囲の訂正があった場合には,訂正後の特許請求の範囲に係る発明を知った時に主観的要件1)を満たすことになるのか, それとも,訂正前の特許請求の範囲に係る発明を知っていれば,特許請求の範囲が 訂正された後の発明との関係でも,主観的要件1)を満たすことになるのかを検討す る。 特許法101条2号が主観的要件1)を間接侵害の要件とした趣旨は,同号の対象 品は適法な用途にも使用することができる物であることから,部品等の販売業者に 対して,部品等の供給先で行われる他人の実施内容についてまで,特許権が存在す るか否かの注意義務を負わせることは酷であり,取引の安全を害するとの点にある。 他方,特許請求の範囲等の訂正は,特許請求の範囲の減縮や誤記等の訂正等を目的 とするものに限られ(特許法126条1項),特許請求の範囲等の訂正は,願書に (最初に)添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にお いてしなければならず(同条5項),かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変 更するものであってはならないとされている(同条6項)。そして,特許請求の範囲 等の訂正をすべき旨の審決が確定したときは,その訂正後における特許請求の範囲 により特許権の設定の登録がされたものとみなされる(同法128条)。 以上のように,特許請求の範囲の訂正が認められる場合が上記のように限定され ていることを踏まえると,訂正前の特許請求の範囲に係る特許発明を知っていれば, 特許請求の範囲が訂正された後の特許発明との関係でも,主観的要件1)を満たすこ とになると解するのが相当である。このように解しても,特許法101条2号が主 観的要件1)を求めた趣旨に反するわけではないし,第三者にとって不意打ちとなる こともないからである。 なお,本件第1特許の特許請求の範囲の訂正も誤記の訂正及び特許請求の範囲の 減縮を目的とするもので,その他の訂正の要件も満たしており(甲19の1ないし 20),被告製品3は本件発明1の技術的範囲に属する以上,上記訂正前の本件発明 1の技術的範囲にも属することは明らかである。
b 本件では,被告は訂正前の本件発明1の存在を知っていたことを自認しているものの,その時期は原告からの警告書を受領した平成25年4月2日で あると主張している。これに対し,原告は被告が訂正前の本件発明1の存在をその 登録時の平成17年7月22日から知っていたと主張していることから,以下,被 告が平成25年4月2日よりも前に訂正前の本件発明1の存在を知っていたかを検 討する。
(a) 証拠(甲1,5,34,乙1ないし3,19,20)及び弁論の 全趣旨によれば,次の事実が認められる。
・・・
確かに,上記(a)の4)と5)の事実だけを見れば,原告の主張は理解し得ないわけで はないが,表示されたラダー回路の接点・コイルの指定による検索機能\\\自体は,被 告自身が平成8年12月以降,販売している「MELSEC QnA」という汎用シーケンサにおいて採用されていたのであり,GOT900で初めて採用された機 能とは認められない。そして,GOT900では,「MELSEC QnA」とは異なり,タッチパネル によって接点・コイルを指定するものとされており,これは変更点であり,訂正前 の本件発明1との共通点ではあるが,このような変更がされたのは,そもそもの操 作方法が「MELSEC QnA」ではキーボードであったのに対し,GOT90 0ではタッチパネルが採用されていたためとみることも可能である。したがって,上記事実から,被告が本件第1特許の出願を知っていたことが推認されるとまでい\nうことはできない。 そして,GOT1000でワンタッチ回路ジャンプ機能が採用されたのは,GOT900においてタッチパネル上で接点・コイルを指定して検索する機能\能\\が採用さ\nれていたことの延長線上にあるものと見ることも決して不合理ではない。 以上のような事実関係に照らせば,被告が本件第1特許の登録時に訂正前の本件 発明1の存在を知っていたとまで推認することはできない。そして,平成25年4 月2日にされた原告から被告への警告書の送付以外に,被告が訂正前の本件発明1 の存在を認識し得たことをうかがわせる事情は認められない。
なお,原告は,被告と原告はトヨタからの受注を獲得すべくしのぎを削っていた こと(甲32)や,原告や被告が他社との契約において,納入品の製作・納入に当 たり,第三者の特許権等を侵害しないよう,万全の注意を払うべき旨が明記されて いること(甲41)を指摘しているが,これらは一般的な事項にすぎず,上記具体 的な事実関係に照らせば,被告が訂正前の本件発明1を知っていたことを推認させ る事実になるとはいえない。 したがって,被告が平成25年4月2日より前に訂正前の本件発明1の存在を知 っていたと認めることはできない。
c 以上より,被告が訂正前の本件発明1の存在を知ったのは平成25年4月2日であると認められる。
(ウ) 主観的要件2)について
a 被告は,被告製品3には本件発明1を実施しない実用的他用途が存 在しており,また基本的に販売代理店に対して被告製品3を販売しているにすぎな いから,被告製品3がユーザの下で本件発明1の実施に用いられることを知らない と主張している。
b まず,どのような場合に主観的要件2)を満たすものと考えるべきか, すなわち,適法な用途にも使用することができる物の生産,譲渡等が特許「発明の 実施に用いられることを知りながら」したといえるのはどのような場合かについて 検討する。 そもそも,特許法101条2号の間接侵害は,適法な用途にも使用することがで きる物(多用途品)の生産,譲渡等を間接侵害と位置付けたものであるが,その成 立要件として,主観的要件2)を必要としたのは,対象品(部品等)が適法な用途に使用されるか,特許権を侵害する用途ないし態様で使用されるかは,個々の使用者 (ユーザ)の判断に委ねられていることから,当該物の生産,譲渡等をしようとす る者にその点についてまで注意義務を負わせることは酷であり,取引の安全を著し く欠くおそれがあることから,いたずらに間接侵害が成立する範囲が拡大しないよ うに配慮する趣旨と解される。 このような趣旨に照らせば,単に当該部品等が特許権を侵害する用途ないし態様 で使用される一般的可能性があり,ある部品等の生産,譲渡等をした者において,そのような一般的可能\性があることを認識,認容していただけで,主観的要件2)を 満たすと解するのでは,主観的要件2)によって多用途品の取引の安全に配慮するこ ととした趣旨を軽視することになり相当でなく,これを満たすためには,一般的可 能性を超えて,当該部品等の譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋然性が高い状況が現実にあり,そのことを当該部品等の生産,譲渡等をした者において認識,認\n容していることを要すると解するべきである。 他方,主観的要件2)について,部品等の生産,譲渡等をする者において,当該部 品等の個々の生産,譲渡等の行為の際に,当該部品等が個々の譲渡先等で現実に特 許発明の実施に用いられることの認識を必要とすると解するのでは,当該部品等の 譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋然性が高い状況が現実にあることを認識, 認容している場合でも,個別の譲渡先等の用途を現実に認識していない限り特許権 の効力が及ばないこととなり,直接侵害につながる蓋然性の高い予備的行為に特許権の効力を及ぼすとの特許法101条2号のそもそもの趣旨に沿わないと解される。\n以上を勘案すると,主観的要件2)が認められるためには,当該部品等の性質,その客観的利用状況,提供方法等に照らし,当該部品等を購入等する者のうち例外的 とはいえない範囲の者が当該製品を特許権侵害に利用する蓋然性が高い状況が現に 存在し,部品等の生産,譲渡等をする者において,そのことを認識,認容している ことを要し,またそれで足りると解するのが相当であり,このように解することは, 「その物がその発明の実施に用いられることを知りながら」との文言に照らしても 不合理な解釈ではない。
ア 本件の間接侵害への特許法102条1項の適用の可否
上記認定事実のとおり,本件では,被告製品3はプログラム(ソフトウェア)\nであるのに対し,原告の製品は表示器(ハードウェア)に予\めプログラム(ソフト\nウェア)がインストールされた完成品であるという相違がある。このことも踏まえ, 被告は,間接侵害には特許法102条1項は適用されないと主張している。 特許法102条1項本文は,侵害者が「侵害の行為を組成した物」を「譲渡した ・・数量」に,特許権者等が「その侵害行為がなければ販売することができた物」の 「単位数量当たりの利益の額」を乗じて得た額を,特許権者等が受けた損害の額と することができる旨を定める。この規定は,侵害行為がなければ特許権者等が利益 を得たであろうという関係があり,そのために特許権者等に損害が発生したと認め られることを前提に,特許権者等の損害額の立証負担を軽減する趣旨に基づくもの であるが,そこに定める損害額の算定方法からすると,これにより算定される損害 の額は,特許権者等の「その侵害行為がなければ販売することができた物」の逸失 販売利益に係る損害の額であることを前提にしており,さらに,侵害者の「侵害の 行為を組成した物」の譲渡行為と特許権者等の「その侵害行為がなければ販売する ことができた物」の販売行為とが同一の市場において競合する関係にあることも前 提としているものと解される。 他方,物の発明に係る間接侵害が対象とするのは,実施品の「生産に用いる物」 の譲渡等であり,実施品を構成する部品だけでなく,実施品を生産するための道具\nや原料等の譲渡等もこれに含まれるから,必ずしも侵害者の間接侵害品の譲渡行為と特許権者等の製品(部品等のこともあれば完成品のこともある)の販売行為とが 同一の市場において競合するとは限らない。そして,本件のように間接侵害品が部 品であり,特許権者等が販売する物が完成品である場合には,前者は部品市場,後 者は完成品市場を対象とするものであるから,両者の譲渡・販売行為が同一の市場 において競合するわけではない。しかし,この場合も,間接侵害品たる部品を用い て生産された直接侵害品たる実施品と,特許権者等が販売する完成品とは同一の完 成品市場の利益をめぐって競合しており,いずれにも同じ機能を担う部品が包含さ\nれている。そうすると,完成品市場における部品相当部分の市場利益に関する限り では,間接侵害品たる部品の譲渡行為は,それを用いた完成品の生産行為又は譲渡 行為を介して,特許権者等の完成品に包含される部品相当部分の販売行為と競合す る関係にあるといえるから,その限りにおいて本件のような間接侵害行為にも特許 法102条1項を適用する素地がある。 したがって,本件では,以上の考え方に基づき各要件の解釈をすることを前提に,特許法102条1項の適用を肯定するのが相当である。
イ 「侵害の行為がなければ販売することができた物」について
(ア) この要件に該当する「物」について,原告は,プログラム(ソフトウ\nェア)を表示器(ハードウェア)にインストールした原告の製品全体であると主張\nするのに対し,被告は,原告がハードウェアとソフトウェアを別個に販売していな\nいことから,原告の製品はソフトウェアである被告製品3と競合関係にないとして,\n原告の製品が「侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たらないと主 張している。 しかし,前記アで述べたところからすると,本件のような間接侵害の場合の「侵 害の行為がなければ販売することができた物」とは,特許権者等が販売する完成品 のうちの,侵害者の間接侵害品相当部分をいうものと解するのが相当である。
(イ) これを本件についてみると,原告の製品では回路モニタ機能や「追い\nかけモニタ機能」及び「ズームアップ検索機能\」が使用可能で,これは被告製品3\nで使用可能な回路モニタ機能\やワンタッチ回路ジャンプ機能(本件発明1の構\成要 件1E及び1Fの構成を充足する機能\)と同様の機能であって,これが原告の製品\nに予めインストールされているプログラム(ソ\フトウェア)による機能であること\nは明らかである。したがって,原告の製品と被告製品3を用いた完成品とは,その ようなソフトウェアが格納又はインストールされているという点で共通していると\nいうことができるから,原告の製品は,被告製品3を用いた完成品と市場で競合する物であるということができる。 そうすると,本件での「侵害の行為がなければ販売することができた物」とは, 原告の製品全体のうちの,被告製品3に対応するプログラム(ソフトウェア)部分\nである。
ウ 「譲渡数量」(侵害者が譲渡したその侵害の行為を組成した物の数量)に ついて
本件では被告による被告製品3の生産,譲渡等の行為について間接侵害の成 立が認められるから,被告製品3が「その侵害の行為を組成した物」に該当する。 なお,原告は被告表示器Aもこれに含まれると主張して,原告の製品(完成品)\nの単位利益に乗じるものとして被告表示器Aの販売数を問題としているが,被告表\ 示器Aの製造,販売について間接侵害が成立しないことは,前記3(1)及び(2)エ(ア) で判示したとおりであり,そうである以上,特許法102条1項の適用に当たって, 被告表示器Aが「その侵害の行為を組成した物」に該当することはないというべき\nである。 そして,原告は,被告製品3を「その侵害の行為を組成した物」とする場合の予\n備的な主張として,被告製品3の販売数を譲渡数量としているところ,平成25年 4月1日から平成29年12月末までの被告製品3の販売数は,合計●(省略)● 台である(前記(2)ウ)。 被告が本件発明1(本件特許1)の存在を知ったのは平成25年4月2日であり, 同日以降の被告製品3の譲渡等について間接侵害が成立することから,上記認定の販売数から同月1日の販売数を控除する必要がある。本件の主張立証から同日の販 売数は明らかでないから,同月の販売数(●(省略)●台)を4月の日数である3 0で除した●(省略)●台(1台未満は四捨五入)を同月1日の販売数と認めるほ かない。したがって,同月2日から平成29年12月末までの被告製品3の販売数 は,合計●(省略)●台と認められる。 なお,被告は,間接侵害が成立するのは主観的要件を具備して行った被告製品3 の生産,譲渡等のみであり,その立証がされていないと主張しているが,被告の行 為が間接侵害の主観的要件を具備していることは,前記3(2)カで判示したとおりで ある。
エ 侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益 額について
(ア) 原告の製品全体の平成25年度の1台当たりの限界利益額が●(省略) ●円であることは,当事者間に争いがなく(前記(2)イ),その他の年度についても同様と推認されるところ,上記イで認定したとおり,「侵害の行為がなければ販売す ることができた物」に当たるのは原告の製品のうちのプログラム(ソフトウェア)\n部分であるから,原告の製品のうちソフトウェア部分の限界利益額をもって「単位\n数量当たりの利益額」に当たるとみるべきことになる。
(イ) この点に関し,被告は,自らの製品のカタログ(甲5)記載の表示器\n(被告製品1−1)とソフトウェア(被告製品3−1)の参考標準価格を参考にし\nて,原告の製品のうちソフトウェア部分の限界利益額を算出すべき旨主張している。\nこれに対し,原告は被告が被告表示器の価格を高く設定し,ソ\フトウェアである被 告製品3の価格を低く設定するビジネスモデルをとっているから,被告の価格設定 を参考とすべきではなく,本件発明1の価値の高さに鑑み,ソフトウェア部分の寄\n与度は9割を下らないと主張する趣旨と解される。 被告製品1−1の参考標準価格は22万円から53万円,被告製品1−2の参考 標準価格は22万円から43万円であるのに対し,被告製品3−1の参考標準価格 は,単体ライセンス品で●(省略)●万円,200ライセンスまで登録可能なサイ\nトライセンス品で4万円である(前記2(2)ア(カ),(キ)参照)。このように,サイト ライセンス品と単体ライセンス品との価格差がわずかであり,被告表示器のような\n生産設備に用いる装置の場合,通常は複数台が購入され,その場合にはサイトライ センス品が購入されると考えられることからすると,通常の場合には,被告表示器\n1台当たりに必要なソフトウェア費用が極めて安価になり,原告が指摘するようなソ\フトウェアで利益を上げないビジネスモデルが存在している可能性もある。その\nため,サイトライセンス価格や実際の被告表示器1台当たりのソ\フトウェア費用 (被告の主張によっても平成26年における被告表示器Aの販売台数は被告製品3\nの販売枚数の約60倍であるから被告主張のとおり単価は500円となる。)を参考 として,被告表示器の参考標準価格と比較する場合には,ソ\フトウェアの価値が不 当に低く算定されることになり,相当でないと考えられる。しかし,単体ライセン ス品の参考標準価格を用いる場合には,被告表示器1台のみを購入する場合が想定\nされるから,この場合にはソフトウェアによる採算も軽視されないはずであるし,\n単体ライセンス品の参考標準価格は●(省略)●万円であるから,被告表示器のよ\nうなハードウェアと被告製品3のようなソフトウェアに要する一般的な原価の差も\n考えると,ハードウェアとソフトウェアの価値が相応に反映されていると考えられ\nる。
他方,原告は,原告の製品における本件発明1の寄与度が9割を下らないと主張 するが,前記1の認定・判示によれば,従来技術を参酌して導かれる本件発明1の 特徴的技術手段は,表示されたラダー回路の出力要素を指定して入力要素を検索す\nるに当たり,出力要素の指定をタッチにより行うという点にすぎないから,製品全 体に対するその寄与度は9割を大きく下回ると考えられる。 以上からすると,本件で原告の製品の利益におけるソフトウェア部分の利益を算\n定するには,被告表示器1Aと被告製品3−1の参考標準価格を参考にして原告の\n製品におけるソフトウェア部分の限界利益額を算定するほかないというべきである。\nこれを参考にして被告表示器1Aと被告製品3−1の合計額に占める被告製品3\n−1の価格割合を算定すると,被告表示器1A(ただし,被告製品1−2のうちそ\nもそも回路モニタ機能等を使用できない機種及び生産を終了した機種は除く。)のカ\nタログ記載の参考標準価格は,平均すると●(省略)●円(税抜)であり(甲5), 被告製品3−1の通常の単体ライセンス品の参考標準価格は●(省略)●万円であ る(税抜)から,被告製品3−1の価格の全体に占める割合は,●(省略)●%(0.1%未満四捨五入)と認められる。 なお,被告は被告製品1−1の参考標準価格の平均値をもとに算定しているが, 被告製品3−1がインストールされて回路モニタ機能等が使用され得る被告製品に\nは被告製品1−2も含まれるから,被告製品1−2の参考標準価格も参考にすべき である。また,被告は1枚の被告製品3が約60台の被告表示器Aにインストール\nされていることを前提に,被告製品3の価格を500円として算定しているが,そ のような場合の価格が被告製品3の価値を反映したものであるのかについては前記 のとおり問題があるから,被告製品3−1の通常の単体ライセンス品の参考標準価 格である●(省略)●万円をもって同製品の価格であると認めるのが相当である。
(ウ) 以上より,原告の製品のうちソフトウェア部分の限界利益額(1台当\nたりの金額)は,上記(ア)記載の金額に●(省略)●%を乗じた4118円と認めら れる。
オ 「販売することができないとする事情」の有無
(ア) まず,被告は被告製品3と原告の製品とが競合することはないから, 原告の譲渡数量の全部について,原告が販売することができない事情が存在すると 主張しているが,この主張に理由がないことは,前記アで認定・判示したとおりで ある。
(イ) 次に,被告は,被告製品3を購入した者の全てが回路モニタ機能を使\n用しているわけではないとか,回路モニタ機能を使用するのにオプション機能\ボー ドの設置が必要な被告製品1−2を購入した者のうちオプション機能ボードを購入\nしたのは約4分の1にとどまり,実際に回路モニタ機能等を使用していないユーザ\nはさらに多く存在すると主張する。 特許法101条2号に係る間接侵害品たる部品等は,特許権を侵害しない用途な いし態様で使用することができるものである。そして,そのような部品等の譲渡は,譲渡先での使用用途ないし態様のいかんを問わず間接侵害行為を構成するが,実際\nに譲渡先で特許権を侵害する用途ないし態様で使用されていない場合には,譲渡先 の顧客は当該特許発明の価値に吸引されて当該部品等を購入したわけではないから, 間接侵害品の売上げに当該特許権が寄与しておらず,そのような譲渡先については, 間接侵害行為がなければ特許権者の製品が販売できたとはいえないことになる。し たがって,特許権者等の損害額の算定に当たっては,そのような事情は,特許法1 02条1項ただし書の事由を構成すると解するのが相当である。\nこれを本件についてみると,先に2(4)イ(イ)で述べたとおり,乙17及び18に よれば,回路モニタ機能等に対応している被告製品1−2を購入した者のうち,オ\nプション機能ボードを購入しなかった者が相当程度存したと認められ,被告製品1\n−1や被告表示器2Aのユーザが須く回路モニタ機能\等を目的にこれらを選ぶとま で認めることは困難である。このように譲渡先が回路モニタ機能等を利用しない場\n合があることは,特許法102条1項ただし書の事由として考慮すべきであるが, その程度が明らかでないから,その考慮は極めて限定的になし得るにとどまるとい うべきである。
(ウ) 次に,被告は,1)原告がPLC用表示器の市場において意味のあるシ\nェアを有していないこと,2)原告の製品のソフトウェアに占める本件発明1の貢献\n度(寄与度)は高くても0.1%を上回ることはないこと,3)原告が宣伝広告活動において「追いかけモニタ機能」や「ズームアップ検索機能\」を重視していなかっ たことを指摘している。
a 特許法102条1項ただし書の「販売することができないとする事 情」は,侵害行為がなければ特許権者等の製品を侵害品と同じ数量だけ販売できた との相当因果関係を阻害する事情を対象とするものである。
b そして,被告の主張1)について,前記(2)エ認定の事実によれば,プ ログラマブル表示器について,原告のシェア(販売数量)と被告のシェア(販売数\n量)との間には,非常に大きな差異があったと認められるところ,シェアの格差に は,製品の魅力以外にも,営業力やブランド力等の差異も多分に影響するものであ るから,原告と被告のシェアに大きな格差があるという事情は,このような営業力 やブランド力等の差異という観点から,「販売することができないとする事情」を基 礎付ける1つの事情にはなるといえる。
c また,原告のシェアが小さいという上記の被告の主張1)は,被告以 外の他社の同種製品(競合品)が市場に多数存在しているから,被告製品3が販売 されなかったとしても,被告の製品が吸収した需要は他社の競合品が吸収し,原告 の製品の売上増加にはつながらないとの趣旨を含み,また,同様に上記の被告の主 張2)は,本件発明1の価値が低いから,被告製品3が販売されなかったとしても原 告の製品の売上増加にはつながらないとの趣旨と解される。 この点については,一般に侵害者の侵害品は特許発明の作用効果を奏するものと して顧客吸引力を有する製品であるから,それと同等の機能ないし効果を奏するも\nのでなければ,特許発明の実施品に対抗して需要を吸収し得る競合品として重視す ることができない。しかし,前記1の認定・判示によれば,従来技術を参酌して導 かれる本件発明1の特徴的技術手段は,表示されたラダー回路の出力要素を指定し\nて入力要素を検索するに当たり,出力要素の指定をタッチにより行うという点にす ぎない。また,前記1で認定したとおり,従来製品として,モニタ上に表示される\n異常種類のうち特定のものをタッチして指定すると,その指定された異常種類に対 応する異常現象の発生をモニタしたラダー回路が表示され,さらにそのラダー回路\nの接点をタッチしてコイルを検索することができ,1回前に検索されたラダー図と 前回路の検索もできる構成を備える製品(乙11のもの)や,同様の製品において\n異常種類の原因となるコイルの指定や接点の指定をタッチパネル上の入力画面でデ バイス名又はデバイス番号を入力して行う製品(被告のGOT900)も存在して いた。そうすると,本件発明1に係る機能をすべて使用することができる製品が被\n告の製品以外に存在していなかったとしても,上記のような製品は存在しており, そのような製品でも,異常現象の発生時にラダー回路図面集を参照しなくても真の 異常原因を特定したり,原因の特定のために次々にラダー回路を読み出していった りすること自体は可能であり,それほど複雑な操作を要するものではないと認められるから,原告の製品とほぼ同様の機能\を備えたものであるといえる。 また,原告の製品が,上記の本件発明1の特徴的技術手段を備えるか否かも必ず しも明らかでない。 したがって,本件では,競合品の存在により,被告製品3が販売されなかったと きに原告の製品が同じだけ販売されたとの相当因果関係は,かなり大きな程度で阻 害されると認めるのが相当である。
d また,上記被告の主張3)は,原告の製品において本件発明1の機能\nは重要なものではないから,被告製品3が販売されなくとも,需要者が原告の本件 発明1の機能に惹かれて原告の製品を購入することがないとの趣旨と解される。\nしかし,原告は,カタログに甲26の図を掲載することに加え,各製品の主な特 徴の1つとして,「異常発生時,画面操作のみで問題箇所まで追いかけることができ る」ということを記載していたのであるから,実際に重要な機能として位置付けら\nれており,そして,これらの機能を顧客に対してアピールしていたと認められ,こ\nの点については被告の上記主張は採用できない。
(エ) 以上のことを踏まえると,本件では,被告製品3が販売されなかった ときに原告の製品が同じだけ販売されたとの相当因果関係は,かなり大きな程度で 阻害されると認められる。 しかし,本件における被告製品3の譲渡数量は,前記のとおり●(省略)●枚で あるが,被告によれば,平成26年の被告表示器Aの販売台数は被告製品3の約6\n0倍であるというのであるから,少なくとも被告製品3は1枚当たり約60台の被 告表示器Aにインストールされたといえる。これに対し,原告の製品は,表\示器に ソフトウェアがインストールされた完成品であり,前記エで認定したそのソ\フトウ ェア相当部分の単位利益の額は,表示器1台のソ\フトウェア相当部分の利益額であ り,その販売数量も表示器の販売数量と同じになるべきものである。そうすると,\n本件において,「販売することができないとする事情」として,侵害行為がなければ 特許権者等の製品を侵害品と同じ数量だけ販売できたとの相当因果関係を阻害する 事情の程度を判断するに当たっては,このような数量ベースの差を考慮すべきであ り,原告の製品のソフトウェア部分の数量ベースから見ると,いわば被告製品3の\n販売数量が実質的には約60倍ある関係にあることになるから,そのことを踏まえ て,被告製品3の販売行為がなければ原告の製品のソフトウェア部分を被告製品3\nの販売数量と同じ数量だけ販売できたとの相当因果関係がどの程度阻害されるかを 検討すべきである。 そして,このような考慮に基づく場合には,前記(イ)及び(ウ)で述べた諸事情を考 慮するとしても,本件において,被告製品3の譲渡数量●(省略)●枚の全部又は 一部を「販売することができないとする事情」があるとは認められない。
カ 譲渡数量に単位数量当たりの利益を乗じた額
上記ウないしオの判断を踏まえると,特許法102条1項に基づく原告の損 害額は,次のとおり,●(省略)●円と認められる。
(計算式) ●(省略)●台×4118円=●(省略)●円
(4) 原告の特許法102条2項に基づく主張について
ア 特許法102条2項は,侵害者が侵害行為により受けた利益の額を特許 権者等が受けた損害の額と推定すると定めるところ,この規定の趣旨は先に同条1 項について述べたのと同様であると解される。したがって,先に同条1項について 述べたのと同様の考え方の下に,本件において同条2項の適用を肯定するのが相当 である。
イ 侵害者が侵害の行為により受けた利益の額
(ア) これについて,原告は,被告による被告表示器Aの販売利益も含めて\n特許法102条2項の損害推定が働くと解すべきと主張している。 しかし,特許法102条2項は「その者(注:侵害者)がその侵害の行為により 利益を受けているときは,その利益の額」を特許権者等が受けた損害の額と推定す ると規定しているところ,本件で原告の本件特許権1の侵害が認められたのは,被 告による被告製品3の生産,譲渡等であり,被告表示器Aの製造,販売については\n間接侵害の成立は否定されたから,被告による被告表示器Aの販売利益が上記「利\n益の額」に含まれないことは明らかである。これに反する原告の主張は条文の文言 に照らして採用できない。
(イ) 原告は被告製品3について,販売数や平均売価,限界利益率を推計し て主張しているが,これらを認めるに足りる証拠がないことは,前記(2)ウで判示し たとおりである。そこで,被告の利益額は,被告が開示した販売額(売上額)及び 限界利益率をもとに算定するほかない。
a 被告製品3の売上額
前記(2)ウで認定した別紙「被告製品3の販売数量・販売額」記載の販売 額等をもとに,被告が本件発明1(本件特許1)の存在を知った平成25年4月2 日から平成29年12月末までの売上額(販売額)を認定すると,次のとおり,● (省略)●円と認められる(平成25年4月1日の販売数を●(省略)●枚とみる ことにつき,前記(3)ウ参照)。 (計算式) ●(省略)●円−●(省略)●円(平成25年4月1日から同年9 月末までの販売数)×●(省略)●(同年4月2日から同年9月末までの販売数) ÷●(省略)●(同年4月1日の販売数を含んだもの)=●(省略)●円(計算過 程で生ずる1円未満の端数は四捨五入)
b 被告の限界利益率
前記(2)ウで認定した被告の限界利益率は,●(省略)●%である(別紙 「被告の変動費の内訳,加重平均値及び限界利益率」の(3)参照)。
c 被告の利益額
上記a及びbによれば,●(省略)●円と認められる。なお,これによ れば,被告製品3の1枚当たりの利益額は,●(省略)●円である(計算式:● (省略)●円÷●(省略)●台=●(省略)●円)。これは,前記原告の製品のソフ\nトウェア部分の単位利益額の約●(省略)●倍である。
ウ 推定覆滅事由について
(ア) 原告は被告製品3につき本件発明1の寄与度を50%と主張している のに対し,被告はこれを1万分の1と主張するとともに,被告製品3の特徴的技術 手段の顧客への訴求力が極めて低いとか,本件発明1の技術的・商業的な価値は高 くないなどと主張している。 ここで考えるべき寄与度は,製品の顧客吸引力上の寄与度であるから,被告が主 張するようなデータ量などという物理的な側面に着目することは相当でないが,先 に特許法102条1項ただし書について述べたところ((3)オ(ウ)b,c)と同様, 本件発明1の特徴的技術手段は,表示されたラダー回路の出力要素を指定して入力\n要素を検索するに当たり,出力要素の指定をタッチにより行うという点にすぎず, 異常発生時のラダー回路の検索機能を備えた競合品も存在していたことに加え,被\n告製品3は回路モニタ機能等以外の様々な機能\を使用可能とするプログラム(描画\nソフトを含む。)が格納されていることからすると,被告製品3における本件発明1の寄与度は相当程度に低いということはできる。\nしかし,そうであるとしても,原告が原告の製品のソフトウェア部分をどの程度\n販売することができたかについては,先に特許法102条1項について述べたとこ ろ(前記(3)オ(エ))と同様,被告製品3と原告の製品のソフトウェア部分とでは,\n数量ベースが異なり,被告製品3の販売数量が,原告の製品のソフトウェア部分の\n数量ベースから見ると実質的には約60倍ある関係にあることを踏まえる必要があ る。
(イ) 他方,単位数量当たりの限界利益の額の差も推定覆滅に影響するとこ ろ,その点については,被告製品3が原告の製品のソフトウェア部分の約●(省略)\n●倍大きいこと(逆にいえば,原告の製品のソフトウェア相当部分が被告製品3の\n約●(省略)●%にとどまること)も考慮する必要がある。
(ウ) 以上の事情を踏まえると,推定覆滅率は●(省略)●%と認めるのが 相当である。
(エ) 以上より,特許法102条2項に基づく原告の損害額は,次のとおり,●(省略)●円と認められる。ただし,前記(3)で認定した同条1項に基づく原告の 損害額(●(省略)●円)の方が高いことから,その額を認容することとする。 (計算式) ●(省略)●円×●(省略)●=●(省略)●円
(5) 弁護士費用
原告は本件訴訟の追行等を原告訴訟代理人に委任したところ(当裁判所に顕著 な事実),被告の特許権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用は,430万円と 認めるのが相当である。
(6) 以上より,原告の損害額は合計4702万8368円と認められる。
9 争点7(本件特許権1又は3の間接侵害を理由とする被告製品3及び4の生 産,譲渡等の差止め及び廃棄を命じることの可否)
(1) 被告による被告製品3の製造,販売及び同製品に係るコンピュータ・プロ グラムの使用許諾について,本件特許権1の間接侵害(特許法101条2号)が成 立するから,被告製品3(被告製品3に係るソフトウェアを記録した媒体と解され\nる。)の生産,譲渡及び同製品に係るコンピュータ・プログラムの使用許諾について の差止めを認容すべきである。 また,被告製品3の製品は本件特許権1の侵害の行為を組成した物に当たり,ま た被告は現在に至るまで被告製品3を生産,譲渡等していることに照らせば,同製 品が同特許権を侵害する用途として使用されるおそれがあるから,その侵害の予防\nのために同製品の廃棄を命じる必要性・相当性が認められる。
(2) なお,被告は,被告製品3には適法な用途があるから,その生産,譲渡等 を全面的に差し止め,廃棄を命じるのは過剰である旨主張する。 しかし,被告製品3に適用な用途があるとしても,被告製品3が本件発明1の特 徴的技術手段を担う不可欠品であり,その譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋 然性が高い状況が現実にあり,そのことを被告において認識,認容していると認め られる以上,その生産,譲渡等を全面的に差し止め,その廃棄を命じるのが,多用途品であっても侵害につながる蓋然性の高い行為に特許権の効力を及ぼすこととし た特許法101条2号の趣旨に沿うものというべきであるし,そのように解しても, 被告は,被告製品3から本件発明1の技術的特徴手段を除去する設計変更をすれば 間接侵害を免れるのであるから,被告製品3の生産,譲渡等の差止め命令及び廃棄 命令が過剰な差止め・廃棄命令であるとは解されない(なお,被告製品3にこのよ うな設計変更をした場合でも,製品名が変わらない場合には,差止判決の対象外と するために請求異議訴訟を経ることが必要になるが,そのような起訴責任を転換す る負担を被告が負うことはやむを得ないというべきである。)。

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平成29(ワ)24174  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月24日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、特許権(6154978号)侵害が認められました。原告マネースクウェア、被告外為オンラインです。損害賠償は請求されておらず、サーバの差止だけです。事実認定のところで、実際に〜すると、〜〜となるという事実から、構成要件の充足を認定しています。
 イ 被告サーバにおける「注文情報」
(ア) 前記第2の2(4)イ認定のとおり,被告サービスにおいて注文が行われると, 別表のとおり被告サーバの処理が記録されるところ,前記2認定の被告サービスの内容,別表\の各欄の内容及び被告サーバの処理に照らすと,被告サーバにおいて,注文が行われた時点,すなわち,「注文日時」欄記載の日時に,同欄記載の注文を 識別するための注文番号,「注文日時」欄記載の注文日時,「取引」欄記載の新規 注文又は決済注文の別,「通貨P」欄記載の取引対象となる通貨の種類,「売」欄 記載の売り注文であるか否か,「買」欄記載の買い注文であるか否か,「新規注文」 欄記載のイフダンオーダーを構成する新規注文の注文番号,「執行条件」欄記載の成行注文,指値注文,逆指値注文の注文種別,「指定R」欄記載の指定価格,「期\n限」欄記載の注文の有効期限といった個々の注文の内容を規定する情報が生成され ていると推認することができる。 また,被告サーバにおいて,市場に発注された個々の注文が約定等したことが検 知されると,「注文状況」欄に,その注文が「無効」,「約定」,「取消」のいず れの状況にあるかが,「約定R」欄に,約定価格が,「約定等日時」欄に,注文が 約定等した日時が,すなわち,約定等の結果に係る情報が記録されていると推認す ることができる。 そうすると,少なくとも,被告サーバに記録されている注文番号,注文日時,新 規注文又は決済注文の別,取引対象となる通貨の種類,売り注文であるか,買い注 文であるか,イフダンオーダーを構成する新規注文の注文番号,成行注文,指値注文,逆指値注文の注文種別,指定価格,注文の有効期限といった個々の注文の内容\nを規定する情報は,個々の買い注文又は売り注文を行うために必要となる情報であ るということができ,本件発明の「注文情報」に該当する。 (イ) 以上より,被告サーバでは,本件発明の構成要件BないしHの「注文情報」に相当する情報が生成されていると認められる。
ウ 小括
前記のとおり,被告サーバでは,構成要件BないしHの「注文情報」に相当する情報が生成されているところ,これらの構\成要件の充足性について,後記(2),(3)に おいて検討する構成要件G及びHを除いた構\成要件BないしFの充足性については 次のとおりであり,被告サーバは構成要件BないしFをいずれも充足する。すなわち,本件発明の「注文情報」に関する前記判示を踏まえ,被告サーバの構\成を構成要件BないしFと対比すると,被告サーバは,例えば,番号114,111,108,105の買い注文に係る買い注文情報のような複数の買い注文情報を\n生成する買い注文情報生成手段を備えるものであるから,「金融商品の買い注文を 行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成手段」(構成要件B)を備えており,また,例えば,番号113,110,107,104の売り注文に\n係る売り注文情報のような複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段を 備えるものであるから,「前記買い注文の約定によって保有したポジションを,約 定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文 情報生成手段とを有する注文情報生成手段」(構成要件C及びD)を備えている。さらに,被告サーバは,別表\に「注文状況」欄及び「約定等日時」欄等があることから明らかなように,「前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検 知手段とを備え」(構成要件E)るものであり,また,例えば,番号113,110,107,104の売り注文のように,指定価格が114.90円,114.2\nなるものであるから,「前記複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報は, それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報」(構成要件F)を備えている。
(2) 争点1−2(被告サーバは構成要件Hを充足するか)
ア 構成要件Hは,「前記相場価格が変動して,前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知する\nと,前記注文情報生成手段は,前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて,前記 複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注 文価格の情報を含む売り注文情報を生成する…」というものであり,文言上,「複 数の売り注文のうち,最も高い売り注文価格の売り注文」1個が約定したときに 「複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り 注文価格の情報を含む売り注文情報」1個が生成される構成を含むと解するのが相当である。\nこれを被告サーバについてみると,前記2(2)認定のとおり,被告サーバは,約定 検知手段が,例えば,番号113,110,107,104の売りの指値注文のよ うな複数の売り注文のうち,指定価格を114.90円とする最も高い売り注文価 格の番号113の売り注文が約定されたことを検知すると,注文情報生成手段は, この検知の情報を受けて,指定価格を番号113の指定価格114.90円より0. 62円高い115.52円とし,これを含む売り注文情報である番号96の新たな 売りの指値注文を生成するものであるから,構成要件Hを充足する。
イ 被告は,構成要件Hは,「複数の売り注文」全てが約定したときに,「注文情報生成手段」が新たに「複数の売り注文情報」全て「を生成する」ことを意味す\nると解すべきであるとし,その理由として,1)構成要件Hの「最も高い売り注文価格の売り注文注文が約定されたことを検知」したときは,「最も高い売り注文価格」\nより低い価格の売り注文が既に約定していることが明らかであるから,構成要件Gの「前記複数の売り注文情報」が全て約定したときを意味すること,2)本件明細書 の【0145】ないし【0147】においては,全ての売りの指値注文が約定して 初めて,新たな買いの指値注文(B1ないしB5)及び売りの指値注文(S1ない しS5)の全てが同時に行われていること,3)構成要件Hの「前記注文情報生成手段」が引用している構\成要件C及びDにおいて,「注文情報生成手段」は「複数の売り注文情報」全て「を生成する」ものであるとされていることなどを主張する。 しかしながら,被告が理由として挙げる1)については,構成要件Hの文言にない限定を付すものである上,「注文情報生成手段」が「複数の売り注文情報」を「一\nの注文手続」で生成することを規定しているにすぎない構成要件Gについて,「注文情報生成手段」が常に「複数の売り注文情報」を生成することを規定するとの限\n定を加えた解釈を前提としていることから,採用することはできない。 また,被告が理由として挙げる2)についても,本件明細書の【0145】ないし 【0147】は,構成要件Hに対応する「シフト機能\」に「決済トレール機能」等を組み合わせた実施例にすぎないから採用し得ない。後記4(1)のとおり,全ての売 り注文が約定しなければ「シフト機能」を適用できないとするものでもない。したがって,被告の主張は採用することができない。
ウ また,被告は,被告サーバが「前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文 価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報」に係る「売り注文情報を 生成する」時点は,「前記約定検知手段が,前記複数の売り注文のうち,最も高い 売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知」したときではなく,買いの成行 注文の約定を検知したときであるから,構成要件Hを充足しないと主張し,買いの成行注文が売り注文に先行して行われていることを示す事情として,別表\において,番号96の売りの指値注文が「2014/11/7 22:29」に約定すると, 同一時刻に番号89の買いの成行注文だけが行われ,約定しているのに対し,番号 85の売りの指値注文は「2014/11/7 22:30」に行われていること などを指摘する。 被告の主張の趣旨は必ずしも明確でないが,仮に,個々の注文が有効なものとし て市場に発注された時点で,被告サーバで「注文情報」が生成されると主張するも のであれば,前記2(3),3(1)イ認定のとおり,被告サーバにおいて,市場に発注前 の売りの指値注文及び逆指値注文であっても,他の注文とともに,注文が行われた 時点で,注文番号等の注文情報が生成されていることと整合せず,採用することが できない。

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平成29(ネ)10073  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年10月29日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 マネースクウェアVS外為オンライン事件は、控訴審でも、技術的範囲に属しないと判断されました。成行注文であるNo.97の買い注文またはNo.88に係る注文情報が、構成要件Eの「新たな一の価格の新たな前記第一注文情報」と均等であるとの主張も、置換容易性がないとして、否定されました。
 前記前提事実からすると,被控訴人サービスは,買い注文から入った場 合は,取引開始後の最初の買い注文を成行注文とし,同注文と対をなす売り注文を 指値注文とし,同売りの指値注文が約定することをトリガとして新たな価格帯での 取引として,買いの成行注文に係る注文情報を生成させることとし,その後,同買 いの成行注文と対をなす売りの指値注文が約定することをトリガとして,更に新た な価格帯での取引を行い,以降,これを繰り返すという構成を採用していることが\n認められる。
被控訴人サービスの上記構成を前提として,被控訴人サービスの構\成と本件発 明の構成とを比較すると,まず,本件発明においては,第一注文情報及び第二注文\n情報とも指値注文とする構成であるのに対し,被控訴人サービスにおいては,1)第 一注文情報のうち取引開始後最初の取引の第一注文情報と,相場価格の変動後の新 たな価格帯での最初の取引の第一注文情報のみを成行注文とする構成である点で異\nなり,この点で,被控訴人サービスは構成要件E2)を充足しないが,特定の事項を トリガとして生成する成行注文においては,トリガとなる事項をどのように構成す\nるかの点もその内容となっているものと解されること,被控訴人サービスにおいて は,2)相場変動後の新たな価格帯での最初の成行注文に係る注文情報の生成を,旧 価格帯における成行注文と対をなす指値注文の約定をトリガとして行わせる構成と\nしたことが,上記1)の構成と一体となって技術的な意義を有するものと解されるこ\nとから,上記1)及び2)の構成(以下「本件相違構\成」)を本件発明の構成との相違\n点として把握して検討するのが相当である。 この点,控訴人は,被控訴人サービスと本件発明とは,本件発明が「検出され た前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定された値以上となった場合に」,新\nたな価格の「買いの指値注文」を設定するのに対し,被控訴人サービスは,「検出 された前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定された値以上となり,売りの指\n値注文が約定した場合に」,新たな価格の「買いの成行注文」を設定する点で相違 すると主張して均等侵害の主張をしているが,同主張は,被控訴人サービスにおい ては変動後の価格帯で生成されるすべての買い注文が成行注文であるとして,本件 設定できることからすると,相場価格が指定価格となることをトリガとする構成が\n想到し易いものと考えられる。
また,前記1のとおり,本件発明は,同じ価格帯でイフダンオーダーを自動的 に繰り返すことのできる従来の発明の課題を解決したものであり,同じ価格帯での イフダンオーダーを自動的に繰り返すことを前提としているところ,被控訴人サー ビスのように本件相違構成を採用すると,新たな価格帯における取引を行わせるた\nめに必要な相場価格の変動幅は,取引開始時に設定された第二注文情報の指値注文 と取引開始時の相場価格の差額と一致することになり,その結果,同じ価格帯での イフダンオーダーを継続させるためには,相場価格が変動した場合に,旧価格帯の 成行注文と対をなす売りの指値注文の約定をトリガとして,旧価格帯における指値 注文に係る注文情報群も生成させる構成を採用するなどの工夫をする必要が生じる\n(被控訴人サービスでは,同一の価格帯でのイフダンオーダーを継続させるために は,No.113の売りの指値注文の約定をトリガとして,新たな価格帯の取引で あるNo.97の買いの成行注文に係る注文情報を生成するだけでなく,旧価格帯 の取引であるNo.100及びNo.99の各注文に係る注文情報群をも生成させ る必要がある。なお,本件発明においても,顧客が「予め設定された値」を第二注\n文情報の指値価格と第一注文情報の指値価格の差額以下の値と設定することを可能\nとするのであれば,同じ価格帯でのイフダンオーダーを継続させるためには,相場 価格が変動しても,旧価格帯での取引を継続させる構成としておく必要があるが,\n上記の設定ができないようにすれば,上記の構成とする必要はない。)。このよう\nな理由から,被控訴人サービスは,本件相違構成を採用するためには,相場価格が\n変動した場合に,旧価格帯の成行注文と対をなす指値注文の約定をトリガとして, 旧価格帯における指値注文に係る注文情報群も生成させる必要があり,この点を考 慮すると,本件発明に本件相違構成を適用するに当たっては,相応の検討が必要で\nあったというべきである。 以上のことに,本件全証拠によっても,被控訴人サービスが開始された時点に おいて,本件相違構成を採用した金融商品取引に係るサービスが存在したことや,\n本件相違構成を開示した文献があったとは認められないことを併せ考慮すると,本\n件相違構成に係る置換をすることは当業者が容易に想到することができたとは認め\nられないというべきである。

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原審はこちらです。

◆平成28(ワ)21346

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平成28(ワ)3856 特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年9月19日  東京地方裁判所(29部)

 ドワンゴVSFC2の特許権侵害について、文言侵害および均等侵害が否定されました。第1,第5要件を満たさないというものです。
 以上のとおり,「第1の表示欄」は動画を表\示するために確保された領域(動画表\n示可能領域),「第2の表\示欄」はコメントを表示するために確保された領域(コメン\nト表示可能\領域)であり,「第2の表示欄」は「第1の表\示欄」よりも大きいサイズで いずれも固定された領域であると解されるところ,被告ら各装置においては,動画表\n示可能領域(被告ら装置1における「StageオブジェクトA」,被告ら装置2及\nび3における<iflame>要素又は<video>要素)とコメント表示可能\領 域(被告ら装置1における「CommentDisplayオブジェクトD」,被告 ら装置2及び3における<canvas>要素)は同一のサイズであるから,被告ら 各装置は,「第1の表示欄」及び「第2の表\示欄」に相当する構成を有するとは認め\nられない。したがって,被告ら各装置は,本件発明1−1の「第1の表示欄」(構\成要 件1−1C,1−1E,1−1F)及び「第2の表示欄」(構\成要件1−1D,1−1 E,1−1−1F)を充足するとは認められず,本件発明1−1の技術的範囲に属するとは認められない。 そして,被告ら各装置は,同様に,本件発明1−5の「第1の表示欄」及び「第2\nの表示欄」(構\成要件1−5J)を充足せず,そうである以上,「第2の表示欄」を構\ 成要素とする「コメント表示部」(構\成要件1−1D,1−2H,1−5J,1−6L)も充足しないから,本件発明1−2,1−5及び1−6の技術的範囲に属するとは認 められない。 また,本件発明1−9及び1−10は,発明の対象が「プログラム」であるが,発 明の対象を「表示装置」とする本件発明1−1及び1−2と対応するものである。したがって,被告ら各プログラムは,本件発明1−1及び1−2と同様に,「第1の表\ 示欄」(構成要件1−9B,1−9E)及び「第2の表\示欄」(構成要件1−9E)を\n充足せず,本件発明1−9を引用している本件発明1−10の構成要件1−10Hも\n充足しないから,本件発明1−9及び1−10の技術的範囲に属するとは認められない。以上のとおりであるから,被告ら各装置及び被告ら各プログラムは,文言上,本件 発明1の技術的範囲に属するとは認められない。
・・・
ア 特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかっ た技術的課題の解決を実現するための,従来技術に見られない特有の技術的思想に基 づく解決手段を,具体的な構成をもって社会に開示した点にあるから,特許発明にお\nける本質的部分とは,当該特許発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に 見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである。そして,\n上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて, 特許発明の課題及び解決手段とその作用効果を把握した上で,特許発明に係る特許請 求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部\n分が何であるかを確定することによって認定されるべきである(知財高裁平成27年 (ネ)第10014号同28年3月25日特別部判決・判時2306号87頁参照。)。
イ これを本件についてみると,前記2(3)で説示したとおり,本件発明2は,複数 のコメントが書き込まれても,コメントの読みにくさを低減させることができる表示\n装置,コメント表示方法及びプログラムを提供することを目的とするものであって,\nコメント表示部によって表\示されるコメントが他のコメントと重なるか否かを判定 し,コメントが重なると判定した場合に,コメント同士が重ならない位置にコメント を表示させるようにし,複数のコメントが表\示される場合において,コメント同士が 動画上で重なってしまい,各コメントが判読できなくなってしまうことを防止するこ とができるようにするとともに,動画の再生中に他の端末装置から入力されたコメン トをリアルタイムに受信して当該動画上に表示し,そのコメントをダイナミックに変\n動させることにより,リアルタイムな双方向のコミュニケーションを可能にし,大人\n数でコメントを交換する面白みを増加させる発明である。上記の「動画の再生中に他 の端末装置から入力されたコメントをリアルタイムに受信して当該動画上に表示し,\nそのコメントをダイナミックに変動させることにより,リアルタイムな双方向のコミ ュニケーションを可能にする」という作用効果は,コメント配信サーバが端末装置か\nらコメント情報を受信してそれを送信するタイミングがリアルタイムに行われるこ と,すなわち,構成要件2−1Cに規定されているように「前記コメント配信サーバ\nが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信 されるコメント情報を受信」との構成によって実現されているのであり,本件特許2\nの出願経過においても,上記構成は,表\示すべき文字情報があらかじめ決定されてい る従来技術との比較において,「ユーザの端末装置から送信されるコメントを受信し て表示するものであり,コメントを受信する毎に,表\示するコメントがダイナミック に変動する点」が相違すると説明されている。そうすると,構成要件2−1Cは,動\n画の再生中に他の端末装置から入力されたコメントをリアルタイムに受信して当該 動画上に表示し,そのコメントをダイナミックに変動させることにより,リアルタイ\nムな双方向のコミュニケーションを可能にする」という作用効果を奏する構\成を具体 的な構成として特定したものであり,この構\成が従来技術にみられない特有の技術的 思想を構成する特徴的部分であり,本件発明2における本質的部分であるというべき\nである。
ウ 他方,前記のとおり,被告ら各装置は構成要件2−1Cを充足せず,被告ら各\nプログラムは構成要件2−9Bを充足しないから,被告ら各装置及び被告ら各プログ\nラムが本件発明2の本質的部分を備えているということはできず,本件発明2と被告 ら各装置及び被告ら各プログラムは本質的部分において相違すると認められる。
(3) 第5要件(特段の事情)について
前記2(2)において認定したとおり,本件特許2の出願経過として,1)特許庁審査官 は,平成22年11月24日を起案日とする拒絶理由通知書(乙24)において,出 願当初の特許請求の範囲請求項1ないし6及び8ないし12に係る各発明について, 特許法29条2項の規定により特許を受けることができない旨を通知し,2)原告は, 平成23年1月31日付け手続補正書(乙25)において明細書を補正し,請求項1 に「前記コメント配信サーバが前記端末装置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメント情報を受信し,前記コメント情報記憶部に 記憶する受信部と,」との構成を,請求項9に「前記コメント配信サーバが前記端末装\n置からコメント情報を受信する毎に当該コメント配信サーバから送信されるコメン ト情報を受信し,」との構成を付加して変更し,3)特許庁審査官はこれに対して特許 査定をしたものである。 上記の出願経過からすれば,原告は,拒絶理由を回避するために構成要件2−1C\n及び構成要件2−9Bを備えた発明に限定して特許を受けたものといえるから,上記\n構成要件の全部又は一部を備えない発明について,本件発明2の技術的範囲に属しな\nいことを承認したか,少なくとも外形的にそのように解される行動をとったものと理 解することができる。 したがって,均等の成立を妨げる特段の事情があるというべきであり,均等の第5 要件を充足しない。

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平成29(ワ)22417  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年8月29日  東京地方裁判所

 CS関連発明の侵害事件です。裁判所(29部)は、技術的範囲に属しないと判断しました。均等侵害も第1要件を満たさないとしました。
 (2)本件各発明の意義
上記(1)の本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の特許請求の範囲請 求項1及び3の記載によれば,本件各発明は,より広範で深い人間関係を結ぶための, 人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサーバ,人脈関係登録プログラムと当該 プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に関するものであり,より広\n範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポートするために,上記人脈関係登録シス テム等を提供することを目的とするものであって,登録者相互間の合意によって人間 関係が結ばれたとき,記録手段を備えたサーバに,人間関係を結んだ登録者の個人情 報又は識別情報を関連付けて記憶することで,個人情報又は識別情報を含む検索キー ワードによって第二の登録者と人間関係を結んでいる第三の登録者の個人情報又は 識別情報を検索することができるようにするという発明である,と認められる。
2 被告サーバの構成について\n証拠(甲16,乙4,7)及び弁論の全趣旨によれば,被告サーバにおいて,人間 関係を記憶する手順は,次のとおりであり,これを図示すると,別紙「被告サーバの 動作フロー」のとおりである(同別紙では,アカウント1号を甲,アカウント2号を 乙と表記している。)と認められる。すなわち,他のユーザと人間関係を結ぶ申\請をす ることを意味する「友達申請」(以下,単に「友達申\請」という。)をするユーザを「アカウント1号」,友達申請をされるユーザを「アカウント2号」として説明すると,1) アカウント1号が「友達申請をする」と示されたボタンをクリックする(画面08),\n2)被告サーバがアカウント1号に確認画面を送信する,3)アカウント1号が「送信す る」と示されたボタンをクリックする(画面09),4)被告サーバが記憶手段に友達申\n請に係るデータを登録する,5)被告サーバが記憶手段にアカウント1号及びアカウン ト2号の人間関係が結ばれた旨の友達リストの仮登録をする,6)被告サーバがアカウ ント2号に友達申請がされたことを通知する(画面12),7)被告サーバがアカウン ト1号に友達申請の完了画面を送信する(画面11),8)アカウント2号が被告サー バにアカウント1号のプロフィールを要求する(画面13,14),9)被告サーバが記 憶手段からアカウント1号のプロフィールを取得する,10)被告サーバがアカウント2 号にアカウント1号のプロフィールを送信する,11)アカウント2号が「友達になる」 と示されたボタンをクリックする(画面15),12)被告サーバが記憶手段の友達リス トを更新して本登録をし,友達として関連付けることが完了する,13)被告サーバがア カウント1号に友達申請が承認されたことを示すメール(甲16)を送信する,とい\nうものである。 そうすると,被告サービスにおいては,被告サーバの記憶手段にアカウント1号と アカウント2号の人間関係が結ばれたとして関連付けられた後に,アカウント1号に 対して友達申請が承認されたことを示すメールが送信されるという処理がされるの\nであり,アカウント1号とアカウント2号が友達として記憶された後に,仮にアカウ ント1号に対し友達申請が承認された旨が通知されなかったとしても,被告サーバに\nおいては,アカウント1号とアカウント2号が友達であると記憶されているといえる。
3 争点1(被告サーバは,文言上,本件各発明の技術的範囲に属するか)について 事案に鑑み,まず,争点1−3(被告サーバは構成要件1D及び2Dを充足するか)\nについて判断する。
(1) 構成要件1Dは,「上記第二のメッセージを送信したとき,上記第一の登録者\nの個人情報と第二の登録者の個人情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段 と,」というものであり,本件発明1においては,サーバが,第二の登録者と人間関係 を結ぶことを希望する旨の第一の登録者からのメッセージである「第一のメッセージ」 を受信して同メッセージを第二の登録者の端末に送信し,第二の登録者からこれに合 意する旨のメッセージである「第二のメッセージ」を受信して,同メッセージを第一 の登録者に送信したことを条件として,又は送信した後で,第一の登録者の個人情報 と第二の登録者の個人情報とを関連付けて記憶手段に記憶するものとして規定して いるということができる。 そして,構成要件1Dの「個人情報」が「識別情報」に置き換えられているほかは,\n構成要件1Dと文言を共通にする構\成要件2Dについても,サーバが第二のメッセー ジを送信したことを条件として,又は送信した後で,第一の登録者の識別情報と第二 の登録者の識別情報とを関連付けて記憶手段に記憶するものとして規定していると 認められる。
(2) この点,原告は,構成要件1D及び2Dにおける「送信したとき」の「とき」\nは「ある幅をもって考えられた時間」という意味であるとして,構成要件1D又は2\nDは,第一の登録者の個人情報又は識別情報を第二の登録者の個人情報又は識別情報 とが関連付けられた後に第二のメッセージが送信される場合をも含む旨を主張する が,「送信したとき」とは,送信したことを条件とする旨表す表\現であると解釈するの が一般的かつ自然な解釈であるというべきであり,また,これが時を表す表\現である と解釈したとしても,送信という動作が完了していることを表す表\現が用いられてい ることからすると,送信することが関連付けることに先行すると解釈するのが一般的 かつ自然であって,本件明細書その他にも異なる解釈を導く説明は見当たらない。 したがって,構成要件1D及び2Dの記載は,送信の実行が先行し,その後に関連\n付ける旨の実行がされることを規定していると解され,原告の上記主張を採用するこ とはできない。
(3)そこで,被告サービスについてみると,前記2において認定したとおり,被告 サービスにおいては,被告サーバの記憶手段に第一の登録者に相当するアカウント1 号と第二の登録者に相当するアカウント2号が友達として登録されて関連付けるこ とが終了した後に,アカウント1号に対して友達申請が承認されたことを示すメール\nが送信されるという処理がされるのであるから,被告サーバは,「第二のメッセージ を送信したとき」に,「上記第一の登録者の個人情報と第二の登録者の個人情報とを 関連付けて上記記憶手段に記憶する手段」又は「上記第一の登録者の識別情報と第二 の登録者の識別情報とを関連付けて上記記憶手段に記憶する手段」を有しているとい うことはできない。したがって,その余の点について判断するまでもなく,被告サー バは,構成要件1D及び2Dを充足しない。\nよって,被告サーバは,文言上,本件各発明の技術的範囲に属すると認めることは できない。
・・・・
これを本件についてみると,前記1(2)で説示したとおり,本件各発明は,より 広範で深い人間関係を結ぶための,人脈関係登録システム,人脈関係登録方法とサー バ,人脈関係登録プログラムと当該プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記\n録媒体に関するものであり,より広範で深い人間関係を結ぶことを積極的にサポート するために,上記人脈関係登録システム等を提供することを目的とするものであって, 登録者相互間の合意によって人間関係が結ばれたとき,記録手段を備えたサーバに, 人間関係を結んだ登録者の個人情報又は識別情報を関連付けて記憶することで,個人 情報又は識別情報を含む検索キーワードによって第二の登録者と人間関係を結んで いる第三の登録者の個人情報又は識別情報を検索することができるようにするとい う発明である。そして,登録者相互間の合意は,メールの交換によって行われるもの されている(段落【0011】,【0015】)。そうすると,本件各発明の構成要件1D及び2Dの「第二のメッセージを送信したとき,…関連付けて上記記憶手段に記憶\nする」という構成は,登録者相互間の合意(メッセージの交換)によって人間関係が\n結ばれたとき,記録手段を備えたサーバに,人間関係を結んだ登録者の個人情報又は 識別情報を関連付けて記憶するという課題解決手段を具体的な構成として特定した\nものであって,この構成が従来技術に見られない特有の技術的思想を構\成する特徴的 部分であり,本件各発明における本質的部分というべきである。 これに対し,原告は,より広範で深い人間関係を結ぶために共通の人間関係を結ん でいる登録者の検索を容易にするということが本件各発明の本質であり,本件各発明 における友達申請メッセージ(第一のメッセージ)や承認メッセージ(第二のメッセ\nージ)のやり取りに係る構成は,人間関係を結ぶための「合意の手段」としての意味\nを有するにすぎず,本件各発明において非本質的な部分である旨主張する。 しかしながら,本件各発明の構成要件1D及び2Dの「第二のメッセージを送信し\nたとき,…関連付けて上記記憶手段に記憶する」という構成が,本件各発明の課題解\n決手段を具体的な構成として特定したものであることは前記のとおりであるから,個\n人情報又は識別情報を関連付けて記憶する過程のみを切り離して,それらの処理のタ イミングを規定したものにすぎないということはできず,本件各発明の非本質的部分 であるということはできない。また,本件各発明は,個人情報又は識別情報を含む検 索キーワードによって第二の登録者と人間関係を結んでいる第三の登録者の個人情 報又は識別情報を検索することを内容とするものである(構成要件1Eないし1G,\n2E)が,それを超えて,共通の人間関係を結んでいる登録者の検索を容易にすると いうことが,本件各発明の課題又は目的とされて本件各発明の構成として具体的に反\n映されているとはいえず,原告の主張を裏付けるに足る本件明細書の記載その他の証 拠はない。 したがって,原告の主張は採用することができない。
ウ そうすると,本件各発明の構成要件1D及び2Dの「第二のメッセージを送信\nしたとき,…関連付けて上記記憶手段に記憶する」という構成は,本件各発明におけ\nる本質的部分であると解されるところ,前記説示のとおり,被告サーバは,メッセー ジを交換する前に,登録者相互間の関連付けが終了するのであって,上記構成を有し\nていないから,その相違部分が本件各発明の本質的部分ではないとはいえず,均等の 第1要件(非本質的部分)を充足しない。

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平成29(ワ)40193  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成30年9月6日  東京地方裁判所

 CS関連発明に関する侵害訴訟です。東京地裁46部は、「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体」の意義を審査経過などから判断し、技術的範囲に属しないと判断しました。原告グリー、被告Supercellです。
 プレートがゲーム空間内の所定の範囲に適用されることがあることが記載さ れ,また,前記(2)イのとおり,本件明細書には,発明を実施するための形態と して,プレイヤがテンプレートの作成を指示したとき,「範囲選択画面」が表\n示され,そこにおいては,ゲーム空間の一部について,テンプレートが作成さ れる範囲が表示されていること,テンプレートが作成される範囲について,例\nとして,プレイヤが任意の2点をタップして,当該2点を対頂点とすることで 定められることがあること,ゲーム空間の一部に対して,そのテンプレートが 適用されることが記載されている。他方,本件明細書には,「ゲーム空間」の 選択に関して,上記内容とは異なる内容の記載はない。 さらに, 原告は,本件意見書において,補正により加えられた「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体」との記載について,プレイヤがゲーム空間のうちのテンプレートが作成される範囲を指定するという段落【0037】の記載を挙げた上で,プレイヤがゲーム空間の左上の点および右下の点をタップすることで,ゲーム空間の全部の範囲を選択することができることを意味する旨述べて,その記載が当初明細書から自明であると述べている。
以上によれば,本件明細書には,本件各発明のテンプレートはゲーム空間内 の所定の範囲について作成,適用されるもので,その範囲についてプレイヤが 定めることが記載されており,原告もそのことを前提として,プレイヤがゲー ム空間内の全部の範囲をテンプレートの範囲とすると定めることによりゲー ム空間の全体が選択されることになるという意見を述べたといえる。 上記の本件明細書及び本件意見書の記載を参酌すれば,構成要件1C及び2\nDの「プレイヤによって選択されたゲーム空間の全体」における「選択」とは, テンプレートの作成について,プレイヤがテンプレートとするゲーム空間内の 一定の範囲を選択することを前提として,テンプレートを作成する際に,プレ イヤがゲーム空間内の全部の範囲を選択することを意味するものと解釈する のが相当である。
これに対し,原告は,構成要件1C及び2Dにおける「ゲーム空間の全体」\nとは文字通りゲーム空間全体を意味するのであってゲーム空間のうちどの部 分を選択するかの決定権をプレイヤが有していることを必須の構成要素とは\nするものではないと主張し,また,本件明細書の第1及び第2実施形態は,テ ンプレートの作成,適用の具体例を示したにすぎないなどと主張する。 しかし,「ゲーム空間の全体」がプレイヤによって選択されるとしても,プレ イヤによってどのような態様による選択がされるかについては,特許請求の範 囲の記載からは明らかではない。本件明細書には,テンプレートの作成に当た って,プレイヤがゲーム空間内の一定の範囲を選択することは記載されている が,それ以外の選択に関する構成については何ら記載も示唆もないから,前記\nと異なる態様でのプレイヤによる選択について,本件明細書に記載や示唆が あるとはいえないし,原出願日の当業者の技術常識に照らして明らかであると もいえない。また,原告は,本件特許の出願経過(甲22)において,プレイ ヤがタップする任意の2点をゲーム空間の左上及び右下の点とすれば「ゲーム 空間の全体」になるなどと説明しており,この説明はプレイヤにおいてゲーム 空間内の一定の範囲を選択することを前提としているものといえ,前記 の解 釈に沿うものといえる。原告の主張は採用することができない。
上記(1)で認定のとおり,本件ゲームは,プレイヤが基本画面においてレイア ウトエディタのアイコンをタップしてレイアウトエディタ画面を表示させ,レ\nイアウトに対応する縮小画面を選択,保存することによって新たなレイアウト を作成するというものである。そうすると,そこにはプレイヤがゲーム空間内 の一定の範囲を選択するという機能や動作は全く存在していない。したがって,本件プログラム及び本件携帯端末は,いずれも構\成要件1C及び2Dを充足しない。

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平成29(行ケ)10218  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年8月9日  知的財産高等裁判所

 UFJ銀行の出願(CS関連発明)について、拒絶審決が維持されました。争点は、進歩性です。
 引用発明1はコンピュータ上の対話型処理を行うシステムである。また,当業者 は,本願出願日時点において,コンピュータ上の対話型処理システムである引用発 明1には,コンピュータによる対話型処理の「円滑化を図る」という周知の課題が あることを理解し,引用発明1の通信端末に,キャラクタが動いているような表示\nをするとの周知の解決手段の適用を試みるということができる。 一方,引用発明2はコンピュータ上の対話型処理を行うナビゲーション装置であ る(引用例2【0038】【0050】【0051】)。また,引用発明2は,表\n示装置にエージェントを表示し,回答時に当該エージェントの口が開くというもの\nであるから,当業者は,かかる構成を,コンピュータによる対話型処理の「円滑化\nを図る」という周知の課題を解決するための,周知の解決手段の一つ,すなわち通 信端末にキャラクタが動いているような表示をする構\成の一つであると理解する。 そうすると,引用発明1に上記周知の課題があることを認識し,これに上記周知 の解決手段の適用を試みる当業者は,同じ技術分野に属し,かかる課題を解決する 手段である引用発明2を,引用発明1に適用することを動機付けられるというべき である。
ウ 原告の主張について
(ア) 原告は,周知の課題として「メディアコミュニケーションの円滑化を図る」 などと認定することは,課題を殊更に上位概念化するものであると主張する。 しかし,引用発明1及び2は,いずれもコンピュータ上の対話型処理システムの 技術分野に関するものである。そして,このような技術分野に関する前記各文献に は,「ユーザが自然に計算機へ音声入力できる雰囲気」(周知例1・97頁),「反 応のない機械に対して発話するために間が掴み辛い」(甲6【0002】),「ユ ーザと電子機器とがコミュニケーションを取り易い環境を構築」(乙9【0019】),\n「人間を相手にしているかのような自然なコミュニケーションを通じた情報入力」 (乙10【0008】),「より自然な対話を実現」(乙11・31頁右欄)など と,コンピュータ上の対話型処理システムにおいて,対話型処理の「円滑化を図る」 必要性が複数指摘されている。 したがって,本願出願日時点において,コンピュータによる対話型処理の「円滑 化を図る」ことは,周知の課題であったと認定することができ,これは課題を殊更 に上位概念化するものということはできない。
(イ) 原告は,引用例1には本件補正発明の課題が記載されていないから,当業 者には,引用発明1に基づき相違点に係る本件補正発明の構成に到達しようという\n動機付けがないと主張する。 しかし,前記のとおり,引用発明1及び2は,コンピュータ上の対話型処理シス テムの技術分野に関するものであって,このような技術分野では,本願出願日時点 において,コンピュータによる対話型処理の「円滑化を図る」ことは周知の課題で あったものである。そして,本件補正発明は,システム上で仮想オペレータとユー ザが対話を行うというものであり(本件補正明細書【0001】【0046】), コンピュータ上の対話型処理システムの技術分野に関するものであるから,本件補 正発明は,引用発明1及び2と同様に,上記周知の課題を含むものである。また, そもそも,引用発明1を出発点として本件補正発明の構成に到達するか否かを検討\nするに当たり,引用発明1が本件補正発明の課題を必ず有していなければならない ということはできない。 したがって,引用例1には本件補正明細書に記載された本件補正発明の課題と同 じ課題が記載されていないから動機付けを欠く,との原告の主張は採用することが できない。
(4) 引用発明2を適用した引用発明1の構成
ア 前記(2)ウ(ウ)のとおり,引用発明2には,「現実の事業者のオペレータを模 造した人物を表示装置に表\示するナビゲーション装置において,当該模造した人物 が話しているように表示するため,待機中と比較して,回答側センターの応答音声\nデータをスピーカから出力させる際に,当該模造した人物の口を開くように当該模 造した人物を表示すること。」との具体的な構\成が含まれている。 イ 一方,本件補正発明の構成は,通信端末において,回答メッセージ等を再生\nする際,これを再生しない時と比較し,仮想オペレータの「一部が大きな動作を行 うように」仮想オペレータを表示するというものである。そして,仮想オペレータ\nの一部の大きな動作がどのようなものであるかについて,本件補正明細書において 何ら特定されていない。 また,仮想オペレータの一部の大きな動作について,本件補正明細書【0071】 には,「仮想オペレータの口や目を動かすようにしてもよい。あるいは手を動かす など,説明を行うジェスチャーをするようにしてもよい。すなわち,メッセージが 再生されていない時と比較し,仮想オペレータの一部がより大きな動作を行うよう にプログラムを構成してもよい。」と記載されている。したがって,待機中と比較\nして模造された人物が「口を開く」との構成は,本件補正発明における「一部」の\n「大きな動作」に含まれるものである。 さらに,仮想オペレータの一部が大きな動作をすることによって得られる効果に ついて,本件補正明細書【0072】には,「音声合成技術を活用して仮想オペレ ータと対話するため,ユーザは無機質な対話を強制されることなく,自然な対話を 行うことができる」と記載されている。もっとも,「自然な対話」の程度について は何ら特定されておらず,回答時に模造された人物が「口を開」けば,回答時にお いても待機中と同様に口を閉じている場合と比較して,円滑なコミュニケーション が図られているような印象を与えることができる。したがって,回答時に模造され た人物が「口を開く」との引用発明2の構成によって,「自然な対話を行う」とい\nう本件補正発明の効果を奏することができる。
ウ したがって,引用発明2における前記具体的な構成を引用発明1に適用すれ\nば,本件補正発明の構成に至るというべきである。\n

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平成29(行ケ)10097  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月29日  知的財産高等裁判所

 ゲームプログラムについて、進歩性ありとした審決が維持されました。
 前記1(1)の認定事実によれば,本件発明は,ユーザがシリーズ化された一連のゲ ームソフトを買い揃えるだけで,標準のゲーム内容に加え,拡張されたゲーム内容\nを楽しむことを可能とすることによって,シリーズ化された後作のゲームの購入を\n促すという技術思想を有するものと認められる。 これに対し,前記1(2)の認定事実によれば,公知発明は,前作と後作との間でス トーリーに連続性を持たせた上,後作のゲームにおいても,前作のゲームのキャラ クタでプレイをしたり,前作のゲームのプレイ実績により,後作のゲームのプレイ を有利にすることによって,前作のゲームをプレイしたユーザに対し,続編である 後作のゲームもプレイしたいという欲求を喚起することにより,後作のゲームの購 入を促すという技術思想を有するものと認められる。 そうすると,公知発明は,少なくとも,前作において実際にプレイしたキャラク タをセーブするとともに,前作のゲームにおいてキャラクタのレベルが16以上と なるまでプレイしたという実績(以下「プレイ実績」という。)をセーブすることが, その技術思想を実現するための必須条件となる。そのため,前作において実際にプ レイしたキャラクタ及びプレイ実績に係る情報をセーブできない記憶媒体を採用し た場合には,後作のゲームにおいても,前作のゲームのキャラクタでプレイをした り,前作のゲームのプレイ実績により,後作のゲームのプレイを有利にすることが できなくなる。このことは,前作のゲームをプレイしたユーザに対し,続編のゲー ムをプレイしたいという欲求を喚起することにより,後作のゲームの購入を促すと いう公知発明の技術思想に反することになる。 したがって,当業者は,公知発明1のディスクについて,前作において実際にプ レイしたゲームのキャラクタ及びプレイ実績をセーブできない記憶媒体,すなわち, 「記憶媒体(ただし,セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)」に変更しよう\nとする動機付けはなく,かえって,このような記憶媒体を採用することには,公知 発明の技術思想に照らし,阻害要因があるというべきである。 仮に,先行技術発明A等(甲20の1及び2,甲21の1及びの2,甲91,甲 92のゲーム等を含む。以下同じ。)のように,2本のゲームのROMカセットを所 有し,ゲーム機のスロットに挿入するのみで拡張されたゲーム内容を楽しめるゲー ムが周知技術であったとしても,これを公知発明1に対して適用するに当たり,公 知発明1のディスクを,ゲームのプレイ実績をセーブできない記憶媒体,すなわち, 「記憶媒体(ただし,セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)」に変更すると,\n上記のとおり,後作のゲームにおいても,前作のゲームのキャラクタでプレイをし たり,前作のゲームのプレイ実績により,後作のゲームのプレイを有利にすること ができなくなるから,前作のゲームをプレイしたユーザに対し,後作のゲームの購 入を促すという公知発明の技術思想に反することになる。 また,仮に,ゲームに登場するキャラクタをゲームプログラムにプリセットして おき,プレイヤーがキャラクタを適宜選択できるようにすることが,本件特許の出 願当時において,技術常識であったとしても,公知発明1の「キャラクタのレベル が16以上である」というゲームのプレイ実績を,プリセットされたキャラクタに 係る情報に変えると,後作のゲームにおいても,前作のゲームのキャラクタでプレ イをしたり,前作のゲームのプレイ実績により,後作のゲームのプレイを有利にす ることができなくなるから,上記と同様に,公知発明の技術思想に反することにな る。 以上によれば,公知発明1において,所定のゲーム装置の作動中に入れ換え可能\nな記憶媒体,一の記憶媒体及び二の記憶媒体を,ディスクから「記憶媒体(ただし, セーブデータを記憶可能な記憶媒体を除く。)」に変更して相違点1ないし3に係る\n構成とすることは,当業者が容易になし得たことであるとはいえないとした審決の\n判断に誤りはなく,取消事由1は,理由がない。
(3) 原告の主張について
原告は,公知発明1の技術思想について,魔洞戦紀DDI(前作ゲーム)に記憶 された切換キーがゲーム装置で読み込まれている場合に,勇士の紋章DDII(後作 ゲーム)で,標準ゲームプログラムに加えて,拡張ゲームプログラムでもゲーム装 置を作動させるものであり,これによりゲーム内容を豊富化してユーザに前作の購 入を促すというものであるから,本件発明の技術思想と同じであると主張する。そ して,原告は,上記主張を前提とした上で,上記切換キーには,「魔洞戦紀DDIが 装填された」という条件1に係る情報と「キャラクタのレベルが16以上である」 という条件2に係る情報とが含まれているところ,公知発明1の技術思想である「ユ ーザに前作の購入を促す」ことは,切換キーのうち「魔洞戦紀DDI」が装填され たという条件1に係る情報のみで達成できるのであるから,当業者であれば,その 目的を達成するために,「キャラクタのレベルが16以上である」という条件2に係 る情報を切換キーから除くなどして,記憶媒体についてもセーブデータが記憶可能\nな記憶媒体としないことは容易であり,かえって,このような場合には,よりユー ザの負担なく拡張ゲームプログラムが楽しめるようになるのであるから,前作の購 入を促すことが可能であるともいえ,公知発明1の切換キーに「キャラクタのレベ\nルが16以上である」という条件2に係る情報であるセーブデータを含ませるか否 かは,当業者が適宜選択できる設計事項であると主張する。 しかしながら,上記(2)のとおり,公知発明は,前作と後作との間でストーリーに 連続性を持たせた上,後作のゲームにおいても,前作のゲームのキャラクタでプレ イをしたり,前作のゲームのプレイ実績により,後作のゲームのプレイを有利にす ることによって,前作のゲームをプレイしたユーザに対し,続編である後作のゲー ムもプレイしたいという欲求を喚起することにより,後作のゲームの購入を促すと いう技術思想を有するものと認められる。 そうすると,公知発明は,少なくとも,前作のキャラクタをセーブするとともに, キャラクタのプレイ実績をセーブすることが,その技術思想を実現するための必須 条件となるから,キャラクタ及びプレイ実績に係る情報をセーブできない記憶媒体 を採用した場合には,公知発明の技術思想に反することになる。 したがって,「キャラクタのレベルが16以上である」という条件2に係る情報を 切換キーから除くなどして,記憶媒体についてセーブデータが記憶可能な記憶媒体\nとしないことは,公知発明を都合よく分割してその必須条件を省略しようとするも のであるから,上記のとおり,公知発明の技術思想に反することは明らかである。 以上によれば,原告の主張は,その余の点を含め,公知発明の技術思想を正解し ないものに帰し,採用することができない。

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平成29(行ケ)10148  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成30年3月26日  知的財産高等裁判所(4部)

 CS関連発明の進歩性なしとした審決について、引用発明の認定に誤りはあるが、結論としては妥当として審決が維持されました。
 本件審決は,引用発明の「仮情報」は「固定情報」であることが示唆され ている旨判断した。
a この点について,被告は,本願発明の「固定情報」は,複数の取引ごとに変 化しない情報であればよく,取引のたびごとに生成削除されたとしても,生成のた びに同じ値の「仮情報」が生成されていれば「固定情報」であるといえる,実際, 引用発明において,仮情報は,口座取引の内容と無関係に生成される値であり,口 座取引内容に応じて値を変化させる必要がない旨主張する。 しかし,引用例1の【図3】のステップS310〜S311には,「仮情報」を 口座情報に基づいて生成することの記載はないし,「仮情報」はセキュリティの観 点から取引ごとに異なるものとすることが通常であるところ,引用例1にこれを同 じにすることを示唆する記載もない。したがって,引用発明において,生成のたび に同じ値の「仮情報」が生成されることが示唆されているとはいえない い。
b 被告は,引用例1の「ホストコンピュータ30においては,事前に仮情報デ ータと顧客口座情報の対応を検証し,ホスト側データ保管部302に保管しておい ても構わない。」(【0045】)との記載は,「仮情報」を複数の取引にまたが\nって用い得ることを示唆している旨主張する。 しかし,前記イ(イ)のとおり,事前に仮情報データと顧客口座の対応が検証され る場合であっても,「仮情報」は取引終了時に削除されることからすれば,「仮情 報」が複数の取引にまたがって用い得ることが示唆されているとはいえない。
c 被告は,引用例1の「仮情報使用の有効期限と有効回数を設けることも可能\nである。」(【0086】),「仮情報に有効期限と有効回数を設けることにより, 第3者等による不正利用防止のセキュリティを向上させることができる。」(【0 087】)との記載によれば,引用発明の「仮情報」を有効期限や有効回数が設け られた情報のような固定情報として生成することが示唆されている旨主張する。 しかし,「有効期限」(【0086】【0087】)は,携帯端末装置が仮情報 を受け取ってから,現金自動取引装置に仮情報を入力するまでの期限のことと解さ れ,「有効期限」の定めがあるからといって,1回の取引を超えて「仮情報」が使 用されることを示唆するとはいい難い。そして,「有効回数」(【0086】【0 087】)は,仮情報の使用回数を,1回限りではなく,数回としたものと解され るが,前記イ(イ)のとおり,引用発明は,課題解決手段として,顧客口座情報を用 いない手段を採用しているのであるから,「有効回数」の定めがあるからといって, 「固定情報」であることが示唆されているとはいい難い。
d したがって,引用発明の「仮情報」は「固定情報」であることが示唆されて いる旨の本件審決の判断には誤りがあるが,相違点2を容易に想到することができ た旨の本件審決の判断は,結論において正当である。

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平成29(ネ)10072  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成30年1月25日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について非侵害であるとした1審判断が維持されました。なお、控訴審の控訴理由書で、均等の主張を追加しましたが、時期に後れた主張として、却下されました。
 当裁判所は,当審の第1回口頭弁論期日において,民事訴訟法297条,1 57条1項に従い,上記均等侵害の主張を時機に後れた攻撃防御方法に当たる ものとして却下した。その理由は次のとおりである。 すなわち,控訴人は,控訴理由書第2の部分(13〜21頁)において,構\n成要件1D,1F及び2Dに関し,原判決の「送信したとき」の文言解釈は明 らかに誤りであるが,仮に原判決のとおりに解釈したとしても,被控訴人サー バが少なくとも本件各発明と均等なものとして,その技術的範囲に含まれるこ とを予備的に主張するとして,新たに均等侵害の主張を追加した。\nしかしながら,前記のとおり,原審における争点整理の経過に鑑みれば,「送 信したとき」に関するクレーム解釈や被控訴人サーバの内部処理の態様如何に よって構成要件充足,非充足の結論が変わり得ることは,控訴人としても当初\nから当然予想できたというべきであり,そうである以上,控訴人は,原審の争\n点整理段階で予備的にでも均等侵害の主張をするかどうか検討し,必要に応じ\nてその主張を行うことは十分可能\であったといえる(特許権侵害訴訟において 計画審理が実施されている実情を踏まえれば,そのように考えるのが相当であ るし,少なくとも控訴人についてその主張の妨げとなるような客観的事情があ ったとは認められない。)。 ところが,控訴人は,原審の争点整理段階でその主張をせず,また,第4回 弁論準備手続期日(平成29年2月14日)において乙25陳述書が提出され た後も,その内容について特に反論することなく,第5回弁論準備手続期日(同 年3月23日)において「侵害論については他に主張・立証なし」と陳述し, そのまま争点整理手続を終了させたものである。 しかるところ,控訴人が,上記のとおり当審に至り均等侵害の主張を追加す ることは,たとえ第1回口頭弁論期日前であっても,時機に後れていることは 明らかであるし,そのことに関し控訴人に故意又は重大な過失が認められるこ とも明らかといえる。 また,予備的にせよ,均等侵害の主張がされれば,均等の各要件についてそ\nれぞれ主張と反論を整理する必要が生じるのであるから,訴訟の完結を遅延さ せることとなることも明らかである。 したがって,当裁判所は,上記のとおり,当審の第1回口頭弁論期日におい て,かかる均等侵害の主張を時機に後れた攻撃防御方法に当たるものとして却 下した次第である。

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◆1審はこちらです。平成28(ワ)14868

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平成29(ネ)10027  特許権侵害差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年12月21日  知的財産高等裁判所(2部)  東京地方裁判所

CS関連発明について、控訴審で差止請求が認められました。無効理由については「時機に後れた」として採用されませんでした。1審は、均等侵害も第1、第2、第3要件を満たさない、分割要件違反、および一部のクレームについてサポート要件違反があると判断していました。
 引用発明1は,前記ア(イ)のとおり,「毎度の自動売買では自動売買テーブルでの 約定価より真下の安値の買取り及び約定価より真上の高値の売込みが同時に発注さ れるよう設定されたものであって,それにより,先に約定した注文と同種の注文を 含む売込み注文と買取り注文を同時に発注することで,株価が最初の売買価の値段 の範囲から上下に変動する場合に,所定の収益を発生させることに加え,口座の残 高及び持ち株の範囲において,株の現在価を無視して株の値段への変動を一向に予\n測することなく,従前の株の買取り値より株価が下落すると所定量を買い取り,買 取り値より株価が上がると所定量を売り込むこと」を特徴とするものである。 このように,引用発明1において,従前の株の買取り値より株価が下落すると所 定量を買い取り,買取り値より株価が上がると所定量を売り込む,という,連続し た買取り又は売込みによる口座の残高又は持ち株の増大をも目的とするものである から,このような設定に係る構成を,約定価と同じ価格の注文を含む注文を発注対\n象に含めるようにし,それを「繰り返し行わせる」設定に変更することは,「約定価 より真下の安値の買取り」及び「約定価より真上の高値の売込み」を同時に発注す ることにより,「従前の株の買取り値より株価が下落すると所定量を買取り,買取り 値より株価が上がると所定量を売込む」という,引用発明1の特徴を損なわせるこ とになる。 そうすると,引用発明1を本件発明の構成1Hに係る構\成の如く変更する動機付 けあるといえないから,構成1Hに相当する構\成は,引用発明1から当業者が容易 に想到し得たものとはいえない。
エ 被控訴人の主張について
被控訴人は,本件発明1と引用発明1との相違点は,引用発明1が本件発明1の 構成1Fのうち「前記一の注文価格を一の最高価格として設定し」ていない点であ\nり,その余の点では一致していることを前提に,本件発明1は,引用発明1から容 易想到である,と主張する。 しかし,前記イのとおり,本件発明1と引用発明1とは,引用発明1が本件発明 1の構成1Hの構\成を有していない点について相違している。被控訴人の主張は, その前提を欠き,理由がない。
・・・・
4 なお,被控訴人は,口頭弁論終結後に,本件発明1が無効とされるべきであ ることが明白である事由があるとして,口頭弁論再開を申し立てるが,無効事由の\n根拠となるべき資料は10年以上前に作成されていたものであり,上記無効事由は, 被控訴人が重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法であって, これによって訴訟の完結を遅延させることとなるから,却下されるべきものである から,口頭弁論を再開しない。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成27(ワ)4461

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平成29(行ケ)10025  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年12月21日  知的財産高等裁判所

 外為オンラインVSマネースクウェアの侵害訴訟の対象となった特許(特5650776号)についての無効審判の審決取消訴訟です。マネースクウェアの保有する特許について無効理由無しとした審決が維持されました。
 本件発明1と引用発明とを対比すると,少なくとも,1)「金融商品の売 買取引を管理する金融商品取引管理装置であること,2)前記金融商品の売買注文を 行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力手段を備えること,3)該注文入 力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生\n成する注文情報生成手段を備えること,及び,4)一の前記売買注文申込情報に基づ\nいて,所定の前記金融商品の売り注文又は買い注文の一方を成行又は指値で行う第 一注文情報と,該金融商品の売り注文又は買い注文の他方を指値で行う第二注文情 報と,を含む注文情報群を複数回生成することで共通し,5)引用発明が,「前記金融 商品の売り注文又は買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報」を生成し ていない点で相違している。
イ 本件発明1の構成1Gは,「前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定\nされたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記 第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効に」(1 G前段)するとともに,「以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と, 前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に 基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行 われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」(1G後段)という ものである。構成1G前段は,売買取引開始時において,同じ注文情報群に含まれ\nる第一注文情報に基づく成行注文が約定した後で,第二注文情報に基づく該指値注 文が約定されたときに,次の注文情報群の前記第一注文情報に基づく注文が,上記 売買取引開始時に約定された成行注文の価格と同じ価格の「指値注文」として有効 に生成されることとを意味するものである。 これに対し,引用発明は,前記2(2)のとおり,代替実施形態においては,パート 1注文とパート2注文とで形成されるLOCK注文を再度自動的に繰り返すもので ある。このことは,引用文献の図6では,代替実施形態において情報を入力する際 に「指値注文」と「成行注文」を選択する欄しかない上,引用文献の[0085] には,「『サイクル数44』の追加によって,投資家は,より多くの利益を得ること を望んで,LOCK処理に自動的に再入力できるようになるであろう。」と記載され ており,図7には,サイクル数選択「44」を経て同じ注文が繰り返される旨の矢 印が記載されていることからしても,明らかであるということができる。したがっ て,1回目のLOCK注文の第一注文が成行注文である場合には,繰り返されるL OCK注文の第一注文も成行注文であり,1回目のLOCK注文の第一注文が指値 注文である場合には,繰り返されるLOCK注文の第一注文も指値注文であるとい うことができる。
ウ 以上より,本件発明1と引用発明とは,本件発明の構成1Gの点におい\nて相違している。

◆判決本文

◆関連発明(特5525082号)についての審決取消訴訟です。こちらも権利有効維持です。

平成29(行ケ)10024

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平成29(ネ)10038  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成29年11月28日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について、1審と同じ理由で、技術的範囲に属しない、均等侵害も否定されました。
 前記イを踏まえて,構成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を\n移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示する」を検討\nすると,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」とは,タ ッチパネルを含む入力手段から,画面上におけるポインタの座標位置を移動させる 命令(電気信号)を処理手段が受信することである。そして,利用者がマウスにお ける左ボタンや右ボタンを押す操作に対応する電気信号ではなく,マウスにおける 左ボタンや右ボタンを押したままマウスを移動させる操作(ドラッグ操作)に対応 する電気信号を,入力手段から処理手段が受信することを含むものである。また, 本件発明1は,利用者が入力手段を使用してデータ入力を行う際に実行される入力 支援コンピュータプログラムであり,利用者が間違ってマウスの右クリックを押し てしまった場合等に利用者の意に反して画面上に操作コマンドのメニューが表示さ\nれてしまう等の従来技術の課題を踏まえて,システム利用者の入力を支援するため, 利用者が必要になった場合にすぐに操作コマンドのメニューを画面上に表示させる\n手段を提供することを目的とするものである。 そうすると,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」と は,タッチパネルを含む入力手段から,画面上におけるポインタの座標位置を,入 力支援が必要なデータ入力に係る座標位置(例えば,ドラッグ操作を開始する座標 位置)からこれとは異なる座標位置に移動させる操作に対応する電気信号を,処理 手段が受信することを意味すると解するのが相当である。 そして,前記第2の1(3)イのとおり,本件ホームアプリにおいて,控訴人が「操 作メニュー情報」に当たると主張する左右スクロールメニュー表示は,利用者がシ\nョートカットアイコンをロングタッチすることにより表示されるものであるが,ロ\nングタッチは,ドラッグ操作などとは異なり,画面上におけるポインタの座標位置 を移動させる操作ではないから,入力手段であるタッチパネルからロングタッチに 対応する電気信号を処理手段が受信することは,「入力手段を介してポインタの位置 を移動させる命令を受信する」とはいえない。 したがって,ロングタッチにより左右スクロールメニュー表示が表\示されるとい う本件ホームアプリの構成は,構\成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を 移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示する」という\n構成を充足するとは認められない。\n
エ 控訴人は,本件ホームアプリでは,タッチパネルに指等が触れると,「ポ インタの座標位置」の値が変化し,「カーソル画像」もこの位置を指し示すように移\n動するところ,ロングタッチは,タッチパネルに指等が触れるといった動作を含む から,被控訴人製品の処理手段はロングタッチにより「『ポインティングデバイスに よって最後に指示された画面上の座標』を移動させる命令」を受信するといえ,本 件ホームアプリは,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」 という構成を有していると主張する。\nしかし,本件ホームアプリにおいて,ロングタッチに含まれるタッチパネルに指 等が触れることに対応して,ポインタの座標位置を,「ポインティングデバイスによ って最後に指示された画面上の座標」位置から,指等がタッチパネルに触れた箇所 の座標位置に移動させることを内容とする電気信号が生じる(甲7の1・2)とし ても,前記ウのとおり,ロングタッチは,画面上におけるポインタの座標位置を移 動させる操作ではないから,上記電気信号は,画面上におけるポインタの座標位置 を移動させる操作に対応する電気信号とはいえない。また,「ポインティングデバイ スによって最後に指示された画面上の座標位置」は,ロングタッチの直前に行って いた別の操作に係るものであり,入力支援が必要なデータ入力に係る座標位置では ないから,上記電気信号は,画面上におけるポインタの座標位置を,入力支援が必 要なデータ入力に係る座標位置からこれとは異なる座標位置に移動させることを内 容とするものでもない。 そうすると,本件ホームアプリのロングタッチ又はこれに含まれるタッチパネル に指等が触れることに対応して,ポインタの座標位置を,「ポインティングデバイス によって最後に指示された画面上の座標」位置から,指等がタッチパネルに触れた 箇所の座標位置に移動させることを内容とする電気信号が生じることをもって,構\n成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信する」とい う構成を充足するとはいえない。\n オ 控訴人は,タッチパネルでは,指等が触れていれば継続的に「ポインタ の位置を移動させる命令」である「ポインタの位置を算出するためのデータ」を受 信し,「ポインタの位置」が一定時間,一定の範囲内に収まっている場合にはロング タッチであると判断されるから,ロングタッチを識別するために入力されるデータ 群には「ポインタの位置を移動させる命令」が含まれると主張する。 しかし,前記第2の1(3)イのとおり,本件ホームアプリは,ロングタッチにより 左右スクロールメニュー表示がされる構\成であるところ,ロングタッチは,継続的 に複数回受信するデータにより算出された「ポインタの位置」が一定の範囲内で移 動している場合だけでなく,当初の「ポインタの位置」から全く移動しない場合を 含むことは明らかであり(甲8),ロングタッチであることを識別するまでの間に「ポ インタの位置」を一定の範囲内で移動させることを内容とする電気信号は,前者に おいては発生しても,後者においては発生しないのであるから,そのような電気信 号をもって,構成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を\n受信する」という構成を充足するとはいえない。\n カ 以上によると,本件ホームアプリが構成要件Eを充足すると認めること\nはできない。
(2) 均等侵害の成否
ア 控訴人は,本件ホームアプリにおける「利用者がタッチパネル上のショ ートカットアイコンを指等でロングタッチする操作を行うことによって操作メニュ ー情報が表示される」という構\成は,「利用者がタッチパネル上の指等の位置を動か して当該ショートカットアイコンを移動させる操作を行うことによって操作メニュ ー情報が表示される」という本件発明1の構\成と均等であると主張する。 そこで検討すると,前記(1)ア及びイによると,本件発明1は,コンピュータシス テムにおけるシステム利用者の入力行為を支援する従来技術である「コンテキスト メニュー」には,マウスの左クリックを行う等するまではずっとメニューが画面に 表示され続けたり,利用者が間違って右クリックを押してしまった場合等は,利用\n者の意に反して画面上に表示されてしまうので不便であるという課題があり,従来\n技術である「ドラッグ&ドロップ」には,例えば,移動させる位置を決めないで徐々 に画面をスクロールさせていくような継続的な動作には適用が困難であるという課 題があったことから,システム利用者の入力を支援するための,コンピュータシス テムにおける簡易かつ便利な入力の手段を提供すること,特に,1)利用者が必要に なった場合にすぐに操作コマンドのメニューを画面上に表示させ,2)必要である間 についてはコマンドのメニューを表示させ続けられる手段の提供を目的とするもの\nである。 そして,本件発明1は,上記課題を解決するために,本件特許の特許請求の範囲 請求項1の構成,すなわち,本件発明1の構\成としたものであるが,特に,上記1) を達成するために,「入力手段における命令ボタンが利用者によって押されたことに よる開始動作命令を受信した後…において」(構成要件D),「入力手段を介してポイ\nンタの位置を移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示\nする」(同E)という構成を採用し,上記2)を達成するために,「利用者によって当 該押されていた命令ボタンが離されたことによる終了動作命令を受信するまで」(同 D),「操作メニュー情報を…出力手段に表示すること」(同E,F)を「行う」(同\nD)という構成を採用した点に特徴を有するものと認められる。\nそうすると,入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すること によってではなく,タッチパネル上のショートカットアイコンをロングタッチする ことによって操作メニュー情報を表示するという,本件ホームアプリの構\成は,本 件発明1と本質的部分において相違すると認められる。
イ 控訴人は,利用者がドラッグ&ドロップ操作を所望している場合に操作 メニュー情報を表示することが本質的部分であると主張する。\nしかし,前記(1)ア及びイのとおり,マウスが指し示している画面上のポインタ位 置に応じた操作コマンドのメニューを画面上に表示すること自体は,本件発明1以\n前から「コンテキストメニュー」という従来技術として知られていたところ,前記 (2)アのとおり,本件発明1は,この「コンテキストメニュー」がマウスを右クリッ クすることにより上記メニューを表示することに伴う課題を解決することをも目的\nとして,利用者が必要になった場合にすぐに操作コマンドのメニューを画面上に表\n示させるために,「入力手段における命令ボタンが利用者によって押されたことによ る開始動作命令を受信した後…において」(構成要件D),「入力手段を介してポイン\nタの位置を移動させる命令を受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示す\nる」(同E)という構成を採用した点に特徴を有するものと認められる。したがって,\n本件発明1において,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部\n分は,利用者がドラッグ&ドロップ操作といった特定のデータ入力を所望している 場合にその入力を支援するための操作メニュー情報を表示すること自体ではなく,\n従来技術として知られていた操作コマンドのメニューを画面に表示することを,「入\n力手段における命令ボタンが利用者によって押されたことによる開始動作命令を受 信した後…において」(構成要件D),「入力手段を介してポインタの位置を移動させ\nる命令を受信する」(同E)ことに基づいて行うことにあるというべきである。 そうすると,入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すること によってではなく,タッチパネル上のショートカットアイコンをロングタッチする ことによって操作メニュー情報を表示するという,本件ホームアプリの構\成は,既 に判示したとおり,本件発明1と本質的部分において相違するというべきである。

◆判決本文

◆1審はこちら。平成28(ワ)10834


 

◆関連事件はこちら。平成29(ネ)10037

◆1審はこちら。平成28(ワ)13033

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平成28(ワ)35763  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月27日  東京地方裁判所(47部)

 CS関連発明の特許侵害事件です。当事者は、FREEとマネーフォワードです。均等の主張もしましたが、第1、第5要件を満たさないと判断されました。
 本件明細書の従来技術として上記ウの公知文献は記載されておらず,同記 載は不十分であるため,上記公知文献に記載された発明も踏まえて本件発明\nの本質的部分を検討すべきである。 そして,上記公知文献の内容を検討すると,上記ウ1),2)から,取引明細 情報は,取引ごとにマッチング処理が行われることからすれば,乙4に記載 されたSaaS型汎用会計処理システムにおいても,当該取引明細情報を取 引ごとに識別することは当然のことである。 また,上記ウ3)の「取得明細一覧画面上」の「各明細情報」は,マッチン グ処理済みのデータであるから,「取得明細一覧画面」は「仕訳処理画面」 といえる。 さらに,上記ウ3)の「仕訳情報入力画面」は,従来から知られているデー タ入力のための支援機能の一つに過ぎず(段落【0002】,【0057】),表示され\nた取引一覧画面上で各取引に係る情報を当該画面から直接入力を行うこと及 び該入力の際プルダウンメニューを使用することも普通に行われていること (特開2004-326300号公報(乙5)段落【0066】-【0081】)から すれば,「取引明細一覧画面」に仕訳情報である「相手勘定科目」等を表示\nし変更用のプルダウンメニューを配置することは当業者が適宜設計し得る程 度のことである。 以上によれば,本件発明1,13及び14のうち構成要件1E,13E及\nび14Eを除く部分の構成は,上記公知文献に記載された発明に基づき当業\n者が容易に発明をすることができたものと認められるから,本件発明1,1 3及び14のうち少なくとも構成要件1E,13E及び14Eの構\成は,い ずれも本件発明の進歩性を基礎づける本質的部分であるというべきである。 このことは,上記イの本件特許に係る出願経過からも裏付けられる。 原告は,構成要件1E,13E及び14Eの構\成について均等侵害を主張 していないようにも見えるが,仮に上記各構成要件について均等侵害を主張\nしていると善解しても,これらの構成は本件発明1,13及び14の本質的\n部分に該当するから,上記各構成要件を充足しない被告製品1,2並びに被\n告方法については,均等侵害の第1要件を欠くものというべきである。
・・・
(なお,本件においては,原告から「被告が本件機能につき行った特許出願にか\nかる提出書類一式」を対象文書とする平成29年4月14日付け文書提出命令の 申立てがあったため,当裁判所は,被告に対し上記対象文書の提示を命じた上で,\n特許法105条1項但書所定の「正当な理由」の有無についてインカメラ手続を 行ったところ,上記対象文書には,被告製品及び被告方法が構成要件1C,1E,\n13C,13E,14C又は14Eに相当又は関連する構成を備えていることを\n窺わせる記載はなかったため,秘密としての保護の程度が証拠としての有用性を 上回るから上記「正当な理由」が認められるとして,上記文書提出命令の申立て\nを却下したものである。原告は,上記対象文書には重大な疑義があるなどとして, 口頭弁論再開申立書を提出したが,そのような疑義を窺わせる事情は見当たらな\nいから,当裁判所は,口頭弁論を再開しないこととした。)

◆判決本文
 

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平成28(ワ)21346  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年7月20日  東京地方裁判所(46部)

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないと判断されました。
 原告は,上記2)の売りの指値注文が約定した時点が構成要件Eの「検出\nされた前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定された値以上となった」\nに該当すると主張し,それによって,高値側の「新たな一の価格」及び 「新たな他の価格」の注文情報群が生成されているとする(原告第3準備 書面17,18頁等)。 そこで,このことを前提として検討すると,被告サービスにおいては, 上記のとおり,上記2)の時点の直後に高値側に買いの成行注文及び売りの 指値注文(上記4)の各注文)の注文情報が生成,発注された。 もっとも,上記4)の各注文のうち,売り注文は指値注文であるが買い注 文は成行注文であるところ,前記(2)のとおり構成要件Eの「注文情報」は\n指値注文に係る注文情報をいい,成行注文に係る注文情報を含まないと解 される。そうすると,4)の買い注文に係る注文情報は,構成要件Eの新た\nな「第一注文情報」に該当しないというべきである。 他方,上記6)の注文はいずれも指値注文であり,これらの注文に係る注 文情報は構成要件Eの「第一注文情報」及び「第二注文情報」に該当し得\nるものといえる。しかし,6)の各注文は,2)の時点の直後に3)の各注文が された後,3)の成行の買い注文の約定価格よりも高値側に価格が変動し, 3)の売りの指値注文が約定した5)の時点の後にされるものである。そうす ると,6)の各注文に係る注文情報は,「検出された前記相場価格の高値側 への変動幅が予め設定された値以上となった」時点である2)の時点におい て,成就の有無が判断できる他の条件の付加なく,また,直ちに生成され たものということはできない。別表1の取引においても,6)の注文は,2) の時点から約35時間50分後にされ,また,その間に5)の売りの指値注 文の約定等がされた後にされている。 そうすると,「検出された前記相場価格の高値側への変動幅が予め設定\nされた値以上となった場合」に,上記6)の注文に係る「第一注文情報」及 び「第二注文情報」が「設定」されたということはできない。 ウ 以上によれば,被告サービスは構成要件Eの「検出された前記相場価格\nの高値側への変動幅が予め設定された値以上となった場合,・・・高値側\nに・・・新たな前記第一注文情報と・・・新たな前記第二注文情報とを設 定」を充足しない。
(6) これに対し,原告は,1)「注文情報」につき,ア)本件発明の特許請求の範 囲上,指値注文か成行注文を区別していない,イ)本件発明の効果に照らすと 注文が指値注文か成行注文かを区別する必要がない,ウ)発明の実施に形態に おける注文に成行注文が含まれる旨の記載がある,以上のことから成行注文 が含まれると解すべきであると,2)「場合」につき上記条件以外の条件を付 加することを排除する趣旨でないと,3)「設定」につき実際に注文情報を生 成するものでなく,情報を生成し得るものとして記録しておけば足りると, 4)被告サービスは指値注文のイフダンオーダーの中に本件発明を構成しない\n買いの成行注文を付加したものにすぎないと各主張する。 しかし,上記1)につき,ア)は,本件明細書において,「注文情報」の語そ れ自体は指値注文と成行注文の区別を明示していない一方で,前記(2)アのと おり,特許請求の範囲の記載全体をみれば,構成要件Eを含む特許請求の範\n囲の記載における「注文情報」は指値注文をいうと解されるのであり,イ)は 背景技術,発明が解決しようとする課題の各記載(前記1(1)ア,イ)の趣旨 を併せて考慮するとむしろ指値注文のイフダンオーダーに関する発明である ことが示唆される。ウ)は,本件明細書の発明の実施の形態の記載(前記1(2)) によれば,当該形態においては成行注文も生成され得る(段落【0031】) 一方で通常の成行注文につきイフダンオーダーの手順(ステップS21〜2 8)を行わないとされている(段落【0101】,【図3】,【図4】)から, 生成された成行注文はイフダンオーダーに関する注文を構成しないことが明\nらかである。そうすると,原告が指摘する上記ア)〜ウ)はいずれも構成要件E\nの「注文情報」に成行注文が含まれると解すべき根拠とならない。 上記2)及び3)については,前記(3)及び(4)において説示したところ 上記4)につき,前記?に説示したとおり,被告サービスにおける買いの成 行注文(注文番号97)は売りの指値注文(同96)と同時に注文されてい るから,当該成行注文がイフダンオーダーの一部を構成していると認められ\nるところ,前記の「注文情報」,「場合」,「設定」の各解釈に加え,本件発明 の意義が指値注文のイフダンオーダーを相場価格の変動にかかわらず自動的 に繰り返し行うことにあることを前提とすれば,イフダンオーダーにおいて 成行注文を介在させる構成は,本件発明において解決すべき課題と異なるこ\nと,成行注文によって直ちに金融商品のポジションを得る効果が得られるこ とにおいて本件発明の構成と異なるものであるから,これを本件発明外の付\n加的構成とみることはできない。\n

◆判決本文

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平成28(ワ)14868  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟  平成29年7月12日  東京地方裁判所(40部)

 CS関連発明についての特許権侵害事件です。文言「送信したとき」が論点となりました。「送信したことを条件として」という意義として、非侵害と判断しました。
イ ところで,広辞苑第六版(甲9)によれば,「とき」とは,「(連体修飾 語をうけ,接続助詞的に)次に述べることの条件を示すのに使う。…の場 合。」を意味するものであり,また,大辞林第三版(甲10)においても 「(連体修飾句を受けて)仮定的・一般的にある状況を表す。(...する) 場合。」とされており,用字用語新表記辞典(乙22)では「『とき』は条\n件・原因・理由・その他,『場合』よりも小さい条件のときに用いること がある。」,最新法令用語の基礎知識改訂版(乙23)では「『時』は時点 や時刻が特に強調される場合に使われるのに対して,『とき』は一般的な 仮定的条件を表す場合に使われる。」と記載されている。これらからすれ\nば,構成要件1D及び1Fにおける「送信したとき」の「とき」は,条件\nを示すものであると解するのが相当である。
ウ この点に関して原告は,「送信したとき」の「とき」は「同じころ」と いう意義を有するものであり,「ある程度の幅をもった時間」を意味する と主張する。 たしかに,広辞苑第六版及び大辞林第三版には,上記イで指摘した意義 の他に,原告が主張するような意義も掲載されている(甲9,10)。し かし,広辞苑第六版(甲9)には「おり。ころ。」を意味する「とき」の用 例として「ときが解決してくれる」「しあわせなときを過ごす」といった ものが掲載されており,「送信したとき」のような具体的な行為を示す連 体修飾語を受けた用例は記載されていない。また,大辞林第三版(甲10) をみると「ある幅をもって考えられた時間」を意味する「とき」の用例と して,「将軍綱吉のとき」「ときの首相」「ときは春」などというものが 掲載されており,やはり「送信したとき」のような具体的な行為を示す連 体修飾語を受けた用例は記載されていない。 そして,抽象的で,空間的及び時間的に広い概念を表現した上記各用例\nと比べると,「送信したとき」という表現は,その指し示す行為が相当程\n度に具体的かつ直接的であることから,およそ用いられる場面が異なると いうべきである。 また,原告が指摘する審決(甲11)には,「とき」という用語につい て「ある程度の幅を持った時間の概念を意味する」旨の判断がされている が,当該審決は,「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始されるときに, 前記転送手段によって前記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用\n数値情報を読み出して判定する」という記載における「前記9個の可変表\n示部の可変表示が開始されるときに」という文言について,「前記9個の\n可変表示部の可変表\示が開始されると『同時』又は『間をおかずに』」と いう意味ではなく,「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始され」た後, 「前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判定する」までの間に他\nの処理がされるとしても,「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始され るときに」に当たると判断したものであって,「前記転送手段によって前 記判定領域に転送された前記特定表示態様判定用数値情報を読み出して判\n定」した後に「前記9個の可変表示部の可変表\示が開始され」たとしても, 上記文言を充足するなどと判断したものではないから,本件における「送 信したとき」の解釈において参酌することは相当ではない。 そうすると,構成要件1D及び1Fの「送信したとき」における「とき」\nが「ある程度の幅をもった時間」を意味するものということはできない。 また,本件明細書等1をみても,「送信したとき」の「とき」について, 「条件」ではなく「時間」を意味することをうかがわせる記載はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。
エ 以上から,構成要件1D及び1Fの「送信したとき」とは,「送信した\nことを条件として」という意義であると認めることが相当である。
・・・・
以上からすると,被告サーバは,第二のメッセージを受信したことを条件 として「マイミク」であることを記憶し,「マイミク」である旨の記憶をし たことを条件として「第二のメッセージ」を送信するという構成を有してい\nるものであって,第二のメッセージを送信したことを条件として「マイミク」 であることを記憶するという構成を有するものではないと認められる。\nしたがって,被告サーバは,「第二のメッセージを送信したとき」に「上 記第一の登録者の識別情報と第二の登録者の識別情報とを関連付けて上記記 憶手段に記憶する手段」を有しているということはできないから,その余の 点について判断するまでもなく,構成要件1D及び1Fを充足しない。\n

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平成28(行ケ)10220  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年7月4日  知的財産高等裁判所(4部)

 CS関連発明について、認定については誤っていないとしたものの、 引用例には、本願発明の具体的な課題の示唆がなく、相違点5について、容易に想到するものではないとして、進歩性無しとした審決が取り消されました。  確かに,引用例には,発明の目的は,複数の事業者と,税理士や社会保険労務士 のような専門知識を持った複数の専門家が,給与計算やその他の処理を円滑に行う ことができるようにするものであり(【0005】),同発明の給与計算システム及び 給与計算サーバ装置によれば,複数の事業者と,税理士や社会保険労務士のような 専門知識を持った複数の専門家を,情報ネットワークを通じて相互に接続すること によって,給与計算やその他の処理を円滑に行うことができること(【0011】), 発明の実施の形態として,複数の事業者端末と,複数の専門家端末と,給与データ ベースを有するサーバ装置とが情報ネットワークを通じて接続された給与システム であり,専門家端末で給与計算サーバ装置にアクセスし,給与計算を行うための固 定項目や変動項目のデータを登録するマスター登録を行い(【0018】〜【002 1】),マスター登録された情報とタイムレコーダ5から取得した勤怠データとに基 づき,給与計算サーバ装置で給与計算を行い,給与担当者が,事業者端末で給与明 細書を確認した上で,給与振り込みデータを金融機関サーバに送信する(【0022】 〜【0025】,【0041】〜【0043】,図7のS11〜S20)ほか,専門家 が専門家端末を介して給与データベースを閲覧し(【0031】〜【0033】),社 会保険手続や年末調整の処理を行うことができる(【0026】〜【0030】,【0 044】,【0045】,図7のS21〜S28)とする構成が記載されていることが\n認められる。 しかし,引用文献が公開公報等の特許文献である場合,当該文献から認定される 発明は,特許請求の範囲に記載された発明に限られるものではなく,発明の詳細な 説明に記載された技術的内容全体が引用の対象となり得るものである。よって,引 用文献の「発明が解決しようとする課題」や「課題を解決するための手段」の欄に 記載された事項と一致しない発明を引用発明として認定したとしても,直ちに違法 とはいえない。 そして,引用例において,社労士端末や税理士端末に係る事項を含まない,給与 計算に係る発明が記載されていることについては,上記(2)のとおりであるから,こ の発明を引用発明として認定することが誤りとはいえない。 ・・・・ ウ 以上のとおり,周知例2,甲7,乙9及び乙10には,「従業員の給与支払 機能を提供するアプリケーションサーバを有するシステムにおいて,企業の給与締\nめ日や給与支給日等を含む企業情報及び従業員情報を入力可能な利用企業端末のほ\nかに,1)従業員の取引金融機関,口座,メールアドレス及び支給日前希望日払いの 要求情報(周知例2),2)従業員の勤怠データ(甲7),3)従業員の出勤時間及び退 勤時間の情報(乙9)及び4)従業員の勤怠情報(例えば,出社の時間,退社の時間, 有給休暇等)(乙10)の入力及び変更が可能な従業者の携帯端末機を備えること」\nが開示されていることは認められるが,これらを上位概念化した「上記利用企業端 末のほかに,およそ従業員に関連する情報(従業員情報)全般の入力及び変更が可 能な従業者の携帯端末機を備えること」や,「上記利用企業端末のほかに,従業員\n入力情報(扶養者情報)の入力及び変更が可能な従業者の携帯端末機を備えること」\nが開示されているものではなく,それを示唆するものもない。 したがって,周知例2,甲7,乙9及び乙10から,本件審決が認定した周知技 術を認めることはできない。また,かかる周知技術の存在を前提として,本件審決 が認定判断するように,「従業員にどの従業員情報を従業員端末を用いて入力させ るかは,当業者が適宜選択すべき設計的事項である」とも認められない。 (3)動機付けについて 本願発明は,従業員を雇用する企業では,総務部,経理部等において給与計算ソ\nフトを用いて給与計算事務を行っていることが多いところ,市販の給与計算ソフト\nには,各種設定が複雑である,作業工程が多いなど,汎用ソフトに起因する欠点も\nあることから,中小企業等では給与計算事務を経営者が行わざるを得ないケースも 多々あり,大きな負担となっていることに鑑み,中小企業等に対し,給与計算事務 を大幅に簡便にするための給与計算方法及び給与計算プログラムを提供することを 目的とするものである(本願明細書【0002】〜【0006】)。 そして,本願発明において,各従業員が入力を行うためのウェブページを各従業 員の従業員端末のウェブブラウザ上に表示させて,同端末から扶養者情報等の給与\n計算を変動させる従業員情報を入力させることにしたのは,扶養者数等の従業員固 有の情報(扶養者数のほか,生年月日,入社日,勤怠情報)に基づき変動する給与 計算を自動化し,給与計算担当者を煩雑な作業から解放するためである(同【00 35】)。 一方,引用例には,発明の目的,効果及び実施の形態について,前記2(1)のとお り記載されており,引用例に記載された発明は,複数の事業者端末と,複数の専門 家端末と,給与データベースを有するサーバ装置とが情報ネットワークを通じて接 続された給与システムとし,専門家端末で給与計算サーバ装置にアクセスし,給与 計算を行うための固定項目や変動項目のデータを登録するマスター登録を行うこと などにより,複数の事業者と,税理士や社会保険労務士のような専門知識を持った 複数の専門家が,給与計算やその他の処理を円滑に行うことができるようにしたも のである。 したがって,引用例に接した当業者は,本願発明の具体的な課題を示唆されるこ とはなく,専門家端末から従業員の扶養者情報を入力する構成に代えて,各従業員\nの従業員端末から当該従業員の扶養者情報を入力する構成とすることにより,相違\n点5に係る本願発明の構成を想到するものとは認め難い。\nなお,引用発明においては,事業者端末にタイムレコーダが接続されて従業員の 勤怠データの収集が行われ,このデータが給与計算サーバ装置に送信されて給与計 算が行われるという構成を有するから,給与担当者における給与計算の負担を削減\nし,これを円滑に行うということが,被告の主張するように自明の課題であったと しても,その課題を解決するために,上記構成に代えて,勤怠データを従業員端末\nのウェブブラウザ上に表示させて入力させる構\成とすることにより,相違点5に係 る本願発明の構成を採用する動機付けもない。\n

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平成28(行ケ)10071  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成29年6月14日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は、相違点の認定誤りです。
 ア 本件審決は,「保護方法データベース」に記憶された「入力元のアプ リケーション」が保護対象データである「ファイル」を処理するのは自明 であり,機密事項を保護対象データとして扱うことは当該技術分野の技術 常識であることから,引用発明の「入力元のアプリケーション」,「識別 子」はそれぞれ,本願発明の「機密事項を扱うアプリケーション」,「機 密識別子」に相当し,また,引用発明の「保護方法データベース」に「入 力元のアプリケーション」の「識別子」が記憶されていることは明らかで あるから,引用発明の「保護方法データベース」は本願発明の「機密事項 を扱うアプリケーションを識別する機密識別子が記憶される機密識別子記 憶部」に相当する旨認定・判断した。 イ(ア) しかし,前記認定に係る本願明細書及び引用例1の記載によれば, 本願発明における「機密識別子」は「機密事項を扱うアプリケーション を識別する」ものとして定義されている(本願明細書【0006】等) のに対し,引用発明におけるアプリケーションの「識別子」は,アプリ ケーションを特定する要素(アプリケーション名,プロセス名等)とし て位置付けられるものであって(引用例1【0037】等),必ずしも 直接的ないし一次的に機密事項を扱うアプリケーションを識別するもの とはされていない。
(イ) また,本願発明は,「すべてのアプリケーションに関して同じ保護 を行うと,安全性は高くなるが,利便性が低下するという問題が生じ る」(本願明細書【0004】)という課題を解決するために,「当 該アプリケーションが,前記機密識別子記憶部で記憶されている機密 識別子で識別されるアプリケーションであり,送信先がローカル以外 である場合に」「送信を阻止」するという構成を採用したものである。\nこのような構成を採用することによって,「機密事項を含むファイル\n等が送信によって漏洩することを防止することができ」,かつ,「機 密識別子で識別されるアプリケーション以外のアプリケーションにつ いては,自由に送信をすることができ,ユーザの利便性も確保するこ とができる」という効果が奏せられ(本願明細書【0007】),前 記課題が解決され得る。このことに鑑みると,本願発明の根幹をなす 技術的思想は,アプリケーションが機密事項を扱うか否かによって送 信の可否を異にすることにあるといってよい。 他方,引用発明において,アプリケーションは,機密事項を扱うか否 かによって区別されていない。すなわち,そもそも,引用例1には機密 事項の保護という観点からの記載が存在しない。また,引用発明は,柔 軟なデータ保護をその解決すべき課題とするところ(【0008】), 保護対象とされるデータの保護されるべき理由は機密性のほかにも考え 得る。このため,機密事項を保護対象データとして取り扱うことは技術 常識であったとしても,引用発明における保護対象データが必ず機密事 項であるとは限らない。しかも,引用発明は,入力元のアプリケーショ ンと出力先の記憶領域とにそれぞれ安全性を設定し,それらの安全性を 比較してファイルに保護を施すか否かの判断を行うものである。このた め,同じファイルであっても,入力元と出力先との安全性に応じて,保 護される場合と保護されない場合とがあり得る。 これらの点に鑑みると,引用発明の技術的思想は,入力元のアプリケ ーションと出力先の記憶領域とにそれぞれ設定された安全性を比較する ことにより,ファイルを保護対象とすべきか否かの判断を相対的かつ柔 軟に行うことにあると思われる。かつ,ここで,「入力元のアプリケー ションの識別子」は,それ自体として直接的ないし一次的に「機密事項 を扱うアプリケーション」を識別する作用ないし機能は有しておらず,\n上記のようにファイルの保護方法を求める上で比較のため必要となる 「入力元のアプリケーション」の安全性の程度(例えば,その程度を示 す数値)を得る前提として,入力元のアプリケーションを識別するもの として作用ないし機能するものと理解される。\nそうすると,本願発明と引用発明とは,その技術的思想を異にするも のというべきであり,また,本願発明の「機密識別子」は「機密事項を 扱うアプリケーションを識別する」ものであるのに対し,引用発明の 「アプリケーションの識別子」は必ずしも機密事項を扱うアプリケーシ ョンを識別するものではなく,ファイルの保護方法を求める上で必要と なる安全性の程度(例えば,数値)を得る前提として,入力元のアプリ ケーションを識別するものであり,両者はその作用ないし機能を異にす\nるものと理解するのが適当である。
(ウ) このように,本願発明の「機密識別子」と引用発明の「識別子」が 相違するものであるならば,それぞれを記憶した本願発明の「機密識 別子記憶部」と引用発明の「保護方法データベース」も相違すること になる。
ウ 以上より,この点に関する本件審決の前記認定・判断は,上記各相違点 を看過したものというべきであり,誤りがある。
エ これに対し,被告は,相違点AないしBの看過を争うとともに,仮に相 違点Bが存在するとしても,その点については,本件審決の相違点1に 関する判断において事実上判断されている旨主張する。 このうち,相違点AないしBの看過については,上記ア及びイのとお りである。 また,本件審決の判断は,1)引用例2に記載されるように,ファイル を含むパケットについて,内部ネットワークから外部ネットワークへの 持ち出しを判断し,送信先に応じて許可/不許可を判定すること,すな わち,内部ネットワーク(ローカル)以外への送信の安全性が低いとし てセキュリティ対策を施すことは,本願出願前には当該技術分野の周知 の事項であったこと,2)参考文献に記載されるように,機密ファイルを あるアプリケーションプログラムが開いた後は,電子メール等によって 当該アプリケーションプログラムにより当該ファイルが機密情報保存用 フォルダ(ローカル)以外に出力されることがないようにすることも, 本願出願前には当該技術分野の周知技術であったことをそれぞれ踏まえ て行われたものである。 しかし,1)に関しては,本件審決の引用する引用例2には,送信の許 可/禁止の判定は送信元及び送信先の各IPアドレスに基づいて行われ ることが記載されており(【0030】),アプリケーションの識別子 に関する記載は見当たらない。また,前記のとおり,引用発明における 識別子は,アプリケーションが機密事項を扱うものか否かを識別する作 用ないし機能を有するものではない。\n2)に関しては,参考文献記載の技術は,機密情報保存用フォルダ内の ファイルが当該フォルダの外部に移動されることを禁止するものである ところ(【0011】),その実施の形態として,機密情報保存用フォ ルダ(機密フォルダ15A)の設定につき,「システム管理者は,各ユ ーザが使用するコンピュータ10内の補助記憶装置15内に特定の機密 ファイルを保存するための機密フォルダ15Aを設定し,ユーザが業務 で使用する複数の機密ファイルを機密フォルダ15A内に保存する。」 (同【0018】)との記載はあるものの,起動されたアプリケーショ ンプログラムが機密事項を扱うものであるか否かという点に直接的に着 目し,これを識別する標識として本願発明の機密識別子に相当するもの を用いることをうかがわせる記載は見当たらない(本件審決は,参考文 献の記載(【0008】,【0009】,【0064】)に言及するも のの,そこでの着目点は機密ファイルをあるアプリケーションプログラ ムが開いた後の取扱いであって,その前段階として機密ファイルを定め る要素ないし方法に言及するものではない。)。このように,当該周知 技術においては,アプリケーションが機密事項を扱うものであるか否か を識別する機密識別子に相当するものが用いられているとはいえない。 なお,参考文献の記載(【0032】等)によれば,アプリケーショ ンプログラムのハンドル名がアプリケーションの識別子として作用する ことがうかがわれるが,参考文献記載の技術は,アプリケーションが実 際に機密ファイルをオープンしたか否かによって当該アプリケーション によるファイルの外部への格納の可否が判断されるものであり,入力元 と出力先との安全性の比較により処理の可否を判断する引用発明とは処 理の可否の判断の原理を異にする。また,扱うファイルそのものの機密 性に着目して機密ファイルを外部に出すことを阻止することを目的とす る点で,扱うファイルそのものの機密性には着目していない引用発明と は目的をも異にする。このため,引用発明に対し参考文献記載の技術を 適用することには,動機付けが存在しないというべきである。 そうすると,相違点Bにつき,引用発明に,引用例2に記載の上記周 知の事項を適用しても,本願発明の「機密識別子」には容易に想到し得 ないというべきであるし,参考文献記載の周知技術はそもそも引用発明 に適用し得ないものであり,また,仮に適用し得たとしても,本願発明 の「機密識別子」に想到し得るものではない。そうである以上,相違点 Bにつき,本件審決における相違点1の判断において事実上判断されて いるとはいえない。

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平成29(ワ)13033  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年2月23日  東京地方裁判所

 入力支援コンピュータプログラムクレーム(CS関連発明)についての特許権侵害事件です。東京地裁(46部)は、文言侵害・均等侵害とも否定しました。
 文言侵害の成否
ア 構成要件Eは,本件発明1の特許請求の範囲の記載によれば,処理手段\nが入力手段を介して「ポインタの位置を移動させる命令」を受信すると操 作メニュー情報を表示するものである。この「ポインタの位置を移動させ\nる命令」につき,本件明細書(甲2)には,1)「入力手段を介してポイン タの位置を移動させる命令を受信する」とは,入力手段としてのポインテ ィングデバイスから,画面上におけるポインタの座標位置を移動させる電 気信号を処理手段が受信することである(課題を解決するための手段,段 落【0020】),2)命令ボタンを押し続けたままで出力手段としてのデ ィスプレイの画面上に表示されているポインタの移動命令を行う,例えば,\n利用者がマウスにおける左ボタンや右ボタンを押したままマウスを移動さ せる行為がこれに該当する(発明を実施するための最良の形態,段落【0 079】)と記載されている。これに加え,本件発明1におけるポインタ が画面上に表示され,画面上の特定の位置を指し示すものをいうことに鑑\nみると,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令」とは,利 用者が画面上に表示されているポインタの位置を移動させる操作を行うこ\nとを意味すると解するのが相当である。 一方,本件ホームアプリにおいて,原告が「操作メニュー情報」に当た ると主張する左右スクロールメニュー表示は,利用者がショートカットア\nイコンをロングタッチすることにより表示されるものであり(前記前提事\n,画面上に表示されているポインタ(ショートカットアイコン並\nびに青い線の交点及び白い円形の画像。前記1(3))の位置を移動させる操 作により表示されるとは認められない。\n以上によれば,本件ホームアプリが構成要件Eを充足すると認めること\nはできない。
イ これに対し,原告は,「ポインタの位置の移動」とは,ポインタが画面 上に表示されるか否かにかかわらず,コンピュータプログラムがポインタ\nの座標位置の情報の書換えを行うことをいうと主張するが,前記1(1)のと おりポインタは画面上に表示されるものであるから,原告の主張は前提を\n欠き,これを採用することができない。なお,本件ホームアプリにおいて は,タップ操作やスライド操作の際にもポインタの座標位置の書換えが行 われることが認められるが(甲8の1及び2),これらの操作では左右ス クロールメニュー表示は表\示されないのであるから,本件ホームアプリが 「ポインタの座標位置の書換え」により左右スクロールメニュー表示を表\ 示するものでないことは明らかである。 また,原告は,タッチパネルでは指等が触れていれば継続的にポインタ の位置を移動させる命令を受信しており,ロングタッチを識別するために 入力されるデータ群には「ポインタの位置を移動させる命令」が含まれる から,本件ホームアプリは構成要件Eを充足するとも主張する。しかし,\nこの主張は「ポインタの位置を移動させる命令」を受信してもロングタッ チと識別されるまでは左右スクロールメニュー表示が表\示されないことを いうものにほかならず,失当というほかない。
均等侵害の成否
ア 原告は,本件ホームアプリにおける「利用者がタッチパネル上のショー トカットアイコンを指等でロングタッチする操作を行うことによって操作 メニュー情報が表示される」という構\成は「利用者がタッチパネル上の指 等の位置を動かして当該ショートカットアイコンを移動させる操作を行う ことによって操作メニュー情報が表示される」という本件発明の構\成と均 等であると主張するので,この点について検討する。
・・・・
ウ 本件明細書の上記各記載によれば,本件発明1は,従来の技術において はドラッグ&ドロップを行うに際して継続的な操作に適用させるのが困難 であるなどといった問題点があったことから,1)利用者が必要になった場 合にすぐに操作コマンドメニューを画面上に表示させ,かつ,2)必要であ る間はこれを表示させ続けられる手段の提供を目的とするものである。そ\nして,上記1)を達成するために「入力手段を介してポインタの位置を移動 させる命令を受信すると」操作メニュー情報を表示し(構\成要件E),上 記2)を達成するために出力手段に表示した操作メニュー情報がポインタに\nより指定されなくなるまで命令の実行を継続する(同F)という構成を採\n用した点に特徴を有するものと認められる。そうすると,入力手段を介し てポインタの位置を移動させる命令を受信することによってではなく,ポ インタがロングタッチされることによって操作メニュー情報を表示すると\nいう構成は,本件発明1と本質的部分において相違すると解すべきである。\n
エ これに対し,原告は,利用者がドラッグ&ドロップ操作を所望している 場合に操作メニュー情報を表示することが本質的部分であると主張する。\nそこで判断するに,原告が操作メニュー情報に当たると主張する左右スク ロールメニュー表示は,ショートカットアイコンをホーム画面の別のペー\n一方,本件ホームアプリにおいてロングタッチがされた場合に常にショー トカットアイコンをホーム画面の別のページへ移動させるドラッグ&ドロ ップ操作が行われると認めるに足りる証拠はない。そうすると,ロングタ ッチがされたことをもって上記のドラッグ&ドロップ操作が所望されてい るとみることはできないから,本質的部分に関する原告の上記主張を前提 としても,均等による本件特許権の侵害をいう原告の主張は採用すること ができない。

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◆関連事件です。同じく請求棄却です。平成29(ワ)13034

◆こちらも本件特許権は同じで請求棄却です。平成26(ワ)65

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平成27(ワ)4461  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成29年2月10日  東京地方裁判所

 CS関連発明の特許権侵害訴訟です。東京地裁は、均等侵害も第1、第2、第3要件を満たさない、分割要件違反、および一部のクレームについてサポート要件違反があるとして請求棄却しました。
 特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の 記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的\n部分であると解すべきである。 そして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づ いて,特許発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で,特許発 明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的 思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定さ\nれるべきである。すなわち,特許発明の実質的価値は,その技術分野に おける従来技術と比較した貢献の程度に応じて定められることからすれ ば,特許発明の本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載,特に 明細書記載の従来技術との比較から認定されるべきである。 ただし,明細書に従来技術が解決できなかった課題として記載されて いるところが,出願時の従来技術に照らして客観的に見て不十分な場合\nには,明細書に記載されていない従来技術も参酌して,当該特許発明の 従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が認定さ\nれるべきである。 また,第1要件の判断,すなわち対象製品等との相違部分が非本質的 部分であるかどうかを判断する際には,上記のとおり確定される特許発 明の本質的部分を対象製品等が共通に備えているかどうかを判断し,こ れを備えていると認められる場合には,相違部分は本質的部分ではない と判断すべきであり,対象製品等に,従来技術に見られない特有の技術 的思想を構成する特徴的部分以外で相違する部分があるとしても,その\nことは第1要件の充足を否定する理由とはならないと解すべきである (知的財産高等裁判所平成28年3月25日(平成27年(ネ)第100 14号)特別部判決参照)。
イ 原告は,本件発明1の本質的部分は「一の注文手続で,同一種類の金 融商品について,複数の価格にわたって一度に注文を行うこと」及び 「その注文と約定を繰り返すようにしたこと」にとどまると主張する。 この点,確かに,本件明細書等1には,本件発明1の課題として, 「本発明は・・・システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うこと なく指値注文による取引を効率的かつ円滑に行うことができる金融商品 取引管理方法を提供することを課題としている。」(段落【0006】) との記載がある。この記載に,「請求項1・・・に記載の発明によれば, ・・・一の注文手続きを行うことで,同一種類の金融商品を複数の価格 にわたって一度に注文できる。」(段落【0017】),「請求項1・ ・・に記載の発明によれば,・・・約定した第一注文と同じ第一注文価 格における第一注文の約定と,約定した第二注文と同じ前記第二注文価 格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせるように設定するこ とにより,第一注文と第二注文とが約定した後も,当該約定した注文情 報群による指値注文のイフダンオーダーを繰り返し行うことが可能にな\nる。」(段落【0018】)との各記載も併せれば,原告の主張する 「一の注文手続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたっ て一度に注文を行うこと」及び「その注文と約定を繰り返すようにした こと」との部分が本件発明1の本質的部分,すなわち従来技術に見られ ない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であるように見えなくもな\nい。 しかし,本件発明1に係る特許(本件特許1)の出願時の従来技術に 照らせば,本件明細書等1に本件発明1の課題として記載された「シス テムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく指値注文による取 引を効率的かつ円滑に行うことができる金融商品取引管理方法を提供す ること」(段落【0006】)は,本件発明1の課題の上位概念を記載 したものにすぎず,客観的に見てなお不十分であるといわざるを得ない。\n以下,詳述する。
以上の各記載に,上記エのとおり,引用文献1には既に「一の注文手 続で,同一種類の金融商品について,複数の価格にわたって一度に注文 を行う」という技術が開示されていたことも併せれば,本件発明1は, 単に一の注文手続で複数の価格にわたって一度に注文を行うだけではな く,「請求項1・・・の発明」による「売買注文申込情報」,すなわち,\n「金融商品の種類」(構成要件1B−1),「注文価格ごとの注文金額」\n(構成要件1B−2),「注文価格」(構\成要件1B−3),「利幅」 (構成要件1B−4)及び「値幅」(構\成要件1B−5)を示す各情報 に基づいて,同一種類の金融商品を複数の価格について指値注文する注 文情報からなる注文情報群を生成することにより,金融商品を売買する 際,一の注文手続きを行うことで,同一種類の金融商品を複数の価格に わたって一度に注文できるという点にその本質的部分があるというべき である。
カ これを被告サービス1についてみると,被告サービス1では「利幅」 (構成要件1B−4)及び「値幅」(構\成要件1B−5)を示す情報が 入力されないのであるから,本件発明1と被告サービス1の相違点が特 許発明の本質的部分ではないということはできない。 したがって,被告サービス1については,均等の要件のうち第1要件 を満たさない。
(4) 第2要件(置換可能性)について
次に,均等の第2要件について検討する。 原告は,本件発明1の課題は「専門的な知識がなく,必ずしも正確に相場 変動を予測することができなくても,また,常に相場に付ききりとならなく\nても,FX取引により所望の利益を得ること」にある旨主張している。 しかし,仮に本件発明1の課題が原告の主張するところにあるとしても, 本件発明1と被告サービス1とは,課題解決原理が全く異なる。 すなわち,本件発明1では,顧客に利幅(構成要件1B−4)及び値幅\n(構成要件1B−5)をはじめとして全ての注文を直接的かつ一義的に導き\n出すに足りる情報を入力させた上,これにより,買いの指値注文及び売りの 指値注文からなる注文のペアを複数生成させ,この複数の注文のペアからな る注文を行うことで,上記課題を解決している。 一方,被告サービス1では,顧客が3)「参考期間」を選択しさえすれば, 4)「想定変動幅」を提案し,専門的な知識が必要である利幅(構成要件1B\n−4)及び値幅(構成要件1B−5)を顧客に入力させることなく,複数の\n注文のペアからなる注文を行うことで,上記課題を解決している。すなわち, 被告サービス1では,顧客に全ての注文を直接的かつ一義的に決定させるの ではなく,顧客には専門的な知識が必要とされる情報を入力させないまま, 注文を行わせるものである。 このように,本件発明1と被告サービス1は,金融商品の相場変動を正確 に予測することができなくてもFX取引による所望の利益を得るという課題\nを,顧客に利幅(構成要件1B−4)及び値幅(構\成要件1B−5)という 専門的な知識が必要である情報を入力させることで解決するか(本件発明 1),それともこれらの情報を入力させないまま解決するか(被告サービス 1)という課題解決原理の違いがあり,そのため作用効果も異なってくるも のといわざるを得ない。 したがって,均等の第2要件に関する原告の主張は理由がない。
(5) 第3要件(容易想到性)について
さらに,均等の第3要件について検討する。
ア 原告は,甲15公報及び甲17公報並びに他の証券会社の提供した 「クイック仕掛け(買いゲリラ100pips)」という機能に照らせば,値幅\nを直接入力せずに他の情報を入力してこれらの情報から値幅を算出して 決定するという構成や,あらかじめ設定された値を用いるという構\成は, 被告サービス1の提供開始時において既に公知の構成であったと主張す\nるので,以下検討する。
イ まず,甲15公報の「要約」欄には,以下の記載がある。
・「注文情報生成部は,取り引きの上限価格と,取り引きの下限価格と, 同時に生成される注文情報群の数とを取得し,取得された値に基づいて, 第一注文どうしの価格差が一定となり,第二注文どうしの価格差が一定 となり,かつ,同一の注文情報群に属する第一注文と第二注文との価格 差が一定となるように,第一注文及び第二注文の価格をそれぞれ演算す る。」 また,甲17公報には,以下の記載がある。
・「前記表示手段における上側の接触位置に対応して表\示された前記価 格情報に基づいて上限価格を設定すると共に前記表示手段における下側\nの接触位置に対応して表示された前記価格情報に基づいて下限価格とを\n設定させると共に,前記注文発注手段に対し,前記上限価格と前記下限 価格との間に形成された前記発注価格帯において前記注文情報を発注さ せることを特徴とする金融商品取引システム。」(【請求項1】)
・「前記注文発注手段は,前記任意の発注条件として,前記金融商品の 注文個数情報を備え,前記発注価格帯において,前記注文個数情報に基 づく複数の前記注文情報を,それぞれの価格差が均等な指値注文を発注 するように生成することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一つに記 載の金融商品取引システム。」(【請求項7】)
・「ポジション・ペアの数は,第一形態注文入力画面33(図8)で注文個 数入力欄(図示せず)に入力された注文個数情報の数値,又は,発注価 格帯の数値を値幅入力欄(図示せず)に入力された数値で割った値のう ちの整数値と同じ個数に等しく設定される。」(段落【0082】)
ウ 上記各記載を踏まえ,原告は,甲15公報にはトラップを仕掛ける範 囲(「取引の上限価格」と「取引の下限価格」)と,トラップの本数 (「同時に生成される注文情報群の数」)を入力し,これらの情報に基 づいて値幅及び利幅(「第一注文どうしの価格差」及び「同一の注文情 報群に属する第一注文価格と第二注文価格との差」)を一定となるよう に演算して決定する構成が開示されており,また,甲17公報にも,ト\nラップを仕掛ける範囲(タッチパネルの上下の接触位置に対応する「発 注価格帯」)と,トラップの本数(「注文個数情報」)を入力し,これ らの情報に基づいて,値幅が均等となるように演算して決定する構成が\n開示されていると主張する。 しかし,被告サービス1においては,そもそも注文情報群の数(原告 の主張する「トラップの本数」)を顧客が入力する構成とはなっていな\nい。すなわち,原告の主張によっても,被告サービス1では,顧客は6) 「対象資産(円)」欄に金額を入力するのみであり,被告サーバにおい てその額の証拠金で生成可能な数の注文情報群を生成するというのであ\nる。 加えて,前述のとおり,本件発明1(構成要件1B)と被告サービス\n1の相違点は,本件発明1では構成要件1B−4(利幅を示す情報)及\nび構成要件1B−5(値幅を示す情報)を入力するのに対し,被告サー\nビス1では2)「注文種類」ないし6)「対象資産(円)」の五つの情報を 入力する点にあるところ,甲15公報及び甲17公報にはこれらの五つ の情報の入力については何ら開示されていない。 エ さらに,他の証券会社の提供した「クイック仕掛け(買いゲリラ 100pips)」という機能についてみても,原告によれば,同機能\では利幅 及び値幅はあらかじめ設定されていて,顧客が入力するものではないと いうのである。そうすると,利幅(構成要件1B−4)及び値幅(構\成 要件1B−5)が顧客の入力に係る本件発明1に対し,利幅(構成要件\n1B−4)及び値幅(構成要件1B−5)があらかじめ設定されている\n「クイック仕掛け(買いゲリラ100pips)」の技術を適用する基礎がそも そも存在しないものといわざるを得ない。 オ 以上によれば,本件発明1の構成を被告サービス1のものに置換する\nことについて,当業者が被告サービス1の開始時点において容易に想到 することができたとはいえない。 したがって,均等の第3要件に関する原告の主張は理由がない。
・・・・
原出願である本件特許2に係る本件明細書等2の段落【0005】ないし 【0008】の記載によると,本件特許2は,従来技術の課題として,取引 開始直後の注文が成行注文のイフダンオーダーをすることができなかったこ と及びイフダンオーダーを繰り返し行えなかったことを技術課題として設定 している。 この課題を解決する手段として,本件明細書等2では,取引開始直後に約 定する成行注文の約定価格を基準として,注文情報群を生成し,これに基づ いて,決済注文である指値注文及び逆指値注文を行い,当該指値注文が約定 すると,新たな注文情報群を生成させ,これに基づいて,先行する成行注文 の約定価格と同一の価格の指値注文を行い,当該指値注文が約定すると,当 該新たな注文情報群に基づいて,当該指値注文の決済注文であって,先行す る決済注文である指値注文及び逆指値注文と同一の価格の指値注文及び逆指 値注文を行うことが開示されている。 すなわち,本件明細書等2の段落【0044】では,「・・・成行リピー トイフダンでは,一回目のイフダンでは,第一注文で買い注文または売り注 文の一方を成行で行ったのち,第二注文で買い注文または売り注文の他方を 指値で行う。・・・この第二注文の約定の後,指値の第一注文(このときの 指値価格は一回目の成行注文での約定価格とする)と指値の第二注文とから なるイフダンが,複数回繰り返される。」とされ,段落【0062】では 「ここで,本実施形態の第一注文は,一回目は成行注文で行われるが,二回 目以降は指値注文で行われる。このため,約定情報生成部14は,当該成行 注文の約定価格を,二回目以降の第一注文の指値価格に設定する。」とされ た上,【図7】においても,2回目以降の指値の第一注文の価格を1回目の 成行注文の約定価格とする旨の記載がある。そして,証拠(乙11,13) 及び弁論の全趣旨によれば,これらの段落【0044】及び【0062】並 びに【図7】は,出願当初の明細書等から補正がされていないものと認めら れる。
(4) そこで,構成要件3F−2の「前記指値注文」の構\成と,本件明細書等2 の記載とを比較すると,本件明細書等2には2回目以降の指値の第一注文の 価格を1回目の成行注文の約定価格とすることしか開示されておらず,2回 目以降の指値の第一注文の価格を任意の価格にできるといった記載はない。 また,2回目以降の指値の第一注文の価格をどのような価格にするのか,言 い換えると,1回目の成行注文の約定価格以外のどのような価格に設定する のか,そのための方法等は一切開示されていない。 そうすると,本件明細書等2の出願当初及び分割直前の明細書等には,そ の技術課題及び課題を解決するための手段からみて,2回目以降の指値の第 一注文の価格を任意の価格に設定できることが形式的にも実質的にも記載さ れていないものといわざるを得ない。 したがって,本件発明3の構成要件3F−2は,分割出願の出願日が原出\n 願の出願日へ遡及するための要件である,上記1)及び2)の要件のいずれも満 たさないから,本件発明3に係る特許出願には特許法44条2項の適用がな く,分割要件違反となるものというべきである。
(5) 原告の主張に対する判断
この点に関して原告は,本件発明2及び3の技術思想は「顧客が煩雑な注 文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを繰り返し行うことができて, システムを利用する顧客の利便性を高めると共にイフダンオーダーを行う際 に顧客が被るリスクを低減させることができる。」ことにあり,2回目以降 の第一注文の指値価格をどのようなものにするのかは,上記技術思想とは直 接の関係がないため,当業者において適宜選択・決定すれば足りる事項であ ると主張する。 しかし,上記(3)において引用したところからすれば,本件発明2の技術 思想は,先行する成行注文の約定価格と同一の価格の指値注文を行うところ にもあるということになる。そうすると,本件明細書等2に対し,システム が2回目以降の指値の第一注文の指値価格を決定するという構成を追加する\nことは,新たな技術的事項を導入するものというべきであるから,原告の上 記主張はその前提を欠き,採用することができない。 (6) 以上によれば,本件発明3に係る特許出願の出願日は,原出願の出願日ま で遡及せず,現実の出願日である平成26年11月13日となるところ,本 件発明2に係る特許出願の出願公開の公開日は平成25年7月11日である から(甲4の2),本件発明3の新規性は,本件発明3を下位概念化した本 件発明2によって,否定されることになる。 したがって,本件発明3に係る特許は,特許法29条1項3号に違反して されたものであるから,同法123条1項2号によって特許無効審判により 無効にされるべきものである。
・・・・
(1) 特許制度は,明細書に開示された発明を特許として保護するものであり, 明細書に開示されていない発明までも特許として保護することは特許制度の 趣旨に反することから,特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件が定 められたものである。 したがって,同号の要件については,特許請求の範囲に記載された発明が, 発明の詳細な説明の欄の記載によって十分に裏付けられ,開示されているこ\nとが求められるものであり,同要件に適合するものであるかどうかは,特許 請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に 記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか,すなわち, 発明の詳細な説明の記載と当業者の出願時の技術常識に照らし,当該発明に おける課題とその解決手段その他当業者が当該発明を理解するために必要な 技術的事項が発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討して判断すべ きものと解される。
(2) これを本件についてみるに,原告の主張によれば,構成要件3F−2の\n「前記指値注文」とは,その価格については何の限定もなく,任意の指値価 格をその指値価格とする指値注文ということになる(前記10(3))。しかる に,前記10(3)で引用した本件明細書等2の段落【0044】及び【006 2】並びに【図7】は,本件明細書等3の段落【0042】及び【0060】 並びに【図7】に相当するところ,これらの段落等にも,その技術課題及び 課題を解決するための手段からみて,2回目以降の指値の第一注文の価格を 任意の価格に設定できることが形式的にも実質的にも記載されているとはい えない。 そうすると,当業者において,本件発明3の解決手段その他当業者が当該 発明を理解するために必要な技術的事項が,本件明細書等3の発明の詳細な 説明に記載されているものと認めることはできない。
(3) したがって,本件発明3は特許法36条6項1号に規定するサポート要件 を満たしていないことになるから,本件発明3に係る特許は同法123条1 項4号によって特許無効審判により無効にされるべきものである。

◆判決本文

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平成28(ワ)37954  承継参加申立事件  特許権  民事訴訟 平成29年1月31日  東京地方裁判所(第47民)

 録画機構を含まないとして、構\成要件を具備せず非侵害と判断されました。外付けのHDDを準備するのはユーザであるというものです。
 以上の特許請求の範囲や「発明の詳細な説明」の記載を総合すると,本 件発明は,デジタル格納部を含むユーザテレビ機器を備えた双方向テレビ 番組ガイドシステムに係る発明であるというべきである。 なお,明細書の【図1】(本件発明による例示的システムとされている。 段落【0011】ないし【0013】参照)においても,本件発明の「双 方向テレビ番組ガイドシステム」が,主設備(12),番組ガイドデータ ソース(14),テレビ配信設備(16),ユーザテレビ機器(22)を\n全て含むことが示されている。 イ 他方で,証拠(甲10の1及び2,14,16)及び弁論の全趣旨によ れば,被告物件である液晶テレビ製品は,単に放送を受信するだけで,い ずれもそれ自体に録画できるメモリー部分(デジタル格納部)を備えてお らず,録画先としては,外付けのUSBハードディスクやレグザリンク対 応の東芝レコーダーとされており,これらを被告物件に接続することによ って初めて,被告物件で受信した番組を上記ハードディスク等に録画する ことが可能であるものと認められる。
ウ 以上のとおり,本件発明は,デジタル格納部を含むユーザテレビ機器を 備えた双方向テレビ番組ガイドシステムに係る発明であるから,被告物件 (液晶テレビ製品)が本件発明の技術的範囲に属するというためには,被 告物件が「番組をデジタル的に格納可能な部分」を含むことが必要である\nところ,被告物件は,それ自体にテレビ番組をデジタル録画可能なメモリ\nー部分を有していないから,この点において,構成要件Cを充足しないと\nいうべきである。
エ これに対し,原告は,本件発明は「双方向テレビ番組ガイドシステム」 の発明であって,テレビ本体やデジタル格納デバイス自体の発明ではなく, 構成要件Aは「双方向テレビ番組ガイドシステム」が「ユーザテレビ機器\n(22)」自体を備えることを規定するものではないし,構成要件Cも,\nあくまで複数の番組をデジタル的に格納する「手段」を構成要件の内容と\nして規定するものであって,デジタル格納デバイスを規定しているわけで はないから,被告物件自体がUSBハードディスクを備えているか否かは, 本件発明の構成要件充足性には無関係である旨主張する。\nしかしながら,原告の上記主張は,上記で説示した特許請求の範囲や明 細書の各記載(例えば,本件発明の目的が「従来双方向番組ガイドシステ ムにより提供されたものよりも高度な機能を提供するように番組ガイドを\n用いることを可能にするデジタル格納部を備えた双方向番組ガイドシステ\nムを提供すること」であるとの明細書の記載(段落【0006】)等)に 明らかに反するものであるから,採用することができない。
(2) 構成要件Dの充足性について\n ア 証拠(甲7,乙14,15)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が 認められる。
・・・
イ このように,本件特許の出願人であったユナイテッド社は,本件特許の 出願段階で,特許庁に対し,本件発明が「引用文献3」(本件の乙20に 相当する。)記載の発明とは異なり,進歩性を有することを示すことを目 的として,本件発明では,同文献記載の発明とは異なり,「番組データが 格納される前に,番組が格納される」旨主張していたものである。そして, 特許庁では,ユナイテッド社の以上のような主張をも考慮した上で,本件 発明は「引用文献3」記載の発明とは異なり,かつ同発明からは容易想到 ではないとして,特許査定をしたものと解される。そうであれば,本件発 明の構成要件Dにおける番組の格納と番組データの格納の先後関係につい\nては,ユナイテッド社の上記主張のとおり,「番組データが格納される前 に番組が格納される」ものと解すべきであり,上記特許出願人の地位を承 継した原告が上記特許出願人による上記主張内容と異なる主張を本件訴訟 においてすることは,禁反言の原則に反するものとして許されないという べきである。
ウ そうであるところ,被告物件において「番組データが格納される前に番 組が格納(録画)される」という先後関係があるものとは認められないか ら,被告物件は,構成要件Dを充足しない。
エ なお,原告は,回答書(乙14)における引用文献3についての説明は, 単に本件発明と引用文献3記載の発明の内容の違いを説明したにすぎない とも主張するが,原告の同主張を前提としても,上記特許出願人が本件特 許の出願過程において上記のような説明をしたことに何ら変わりはないか ら,原告の上記主張は上記説示を何ら左右するものではない。

◆判決本文

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平成28(ネ)10027  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年11月24日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審判決の後に訂正審判を請求し、独立特許要件ありとして認められましたが、知財高裁は引用文献の認定を誤っているとして、進歩性なしと判断しました。なお、本件においては、訂正の抗弁について、時機に後れた抗弁とは認定されませんでした。
 事案に鑑み,被控訴人が主張する本件各訂正発明に係る特許の無効理由の うち,乙16発明に基づく新規性及び進歩性欠如について,以下判断する(な お,控訴人ら 被控訴人主張の抗弁につき,時機に後れた攻撃防御方法として却下すべき旨を述べるが,少なくとも,これらの主張 が「訴訟の完結を遅延させる」ものでないことは明らかであるから,時機に後れた攻撃防御方法としての却下はしないこととする。)。
・・・
 このように,乙16文献には,ユーザによって選択された商品を表示\nする際に,「はこだてビールオリジナルギフトセット」というジャンル の表題の下に,「はこだてビールギフトAセット」,「はこだてビールギ\nフトBセット」等の複数の商品の商品名,価格,写真が一覧表示された\nWebページ画像( のページ)が表示されることが記載されて\nいるのであるから,選択された商品情報の表示の際に,店舗カテゴリを\n示す情報と店舗カテゴリに分類される商品を示す情報を表示することが\n記載されているものといえるのであって,控訴人らの上記主張は,その 前提において理由がない。 なお,本件訂正を認めた訂正2016−390052事件に係る審決 (甲70)は,本件訂正発明1について独立特許要件の有無を判断する に当たり,乙16文献の記載について,上記と異なる認定(控訴人ら主 張のとおりの認定)をしているが,乙16文献の記載からは、上記で述 べたとおりのことが読み取れるというべきであるから,上記審決の認定 は是認できない。

◆判決本文

◆1審はこちらです。平成26(ワ)25282

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平成27(ワ)8704    特許権  民事訴訟 平成28年5月12日  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないと判断されました。
「電子ショッピングシステム」の意義についても,本件明細書中に明確な定 義はないが,「ショッピング」が一般的な意味において売買を指すことは明らかで あるし,加えて構成要件Fからすると,この電子ショッピングには,少なくとも「注\n文」と「受注」が起きることが必要であるし,また本件明細書の【0001】には, 【発明の属する技術分野】として「本発明は,例えばレコードショップ等が加盟す るフランチャイズ制の電子ショッピングシステムに関し,インターネットを利用し た電子商取引の技術分野に関する。」とあり,さらに【発明の効果】を記載した【0 042】に「受注データにしたがって当該会員に商品を引き渡すと共に代金を受領 することにより,自らホームページを所持しなくても,インターネットを利用した 商取引が可能となる。」とあることから,ここにいう「電子ショッピングシステム」\nとは,インターネットを利用してされる有償の商品の取引を指すものと解するのが 相当であり,その取引においては,「注文」と「受注」,すなわち売買契約締結に 向けて顧客からの具体的法律行為がなされ得ることが必要であると解される。 これに対し,原告は,電子ショッピングシステムの定義について,商品の広告, 受発注,設計,開発,決済などのあらゆる経済活動と捉えるもので,商品の宣伝で あってもこれに含まれる旨主張するところ,確かに,本件明細書には,「電子ショ ッピングシステム」でなす経済活動について,「電子商取引」(【0001】,【0 005】,【0038】,【0043】),「商取引」(【0013】,【004 2】)などとする記載があり,さらに証拠(甲19ないし21)によれば,「電子 商取引」の定義については上記原告主張に一部沿うものが認められる。 しかし,「宣伝」に触れる記載(甲19)は,取引ではなく,インターネット上 の商行為について触れるものであるし,「広告」を含む通商産業省の定義(甲20) は,その当時の郵政省の定義とは異なることからすると,これは省庁の規制目的で 対象範囲の定義をしていると理解でき,直ちに一般的に通用する定義に結びつくも のとはいえない。 そして,そもそも,ここでは本件発明の構成要件にいう「電子ショッピングシス\nテム」の定義を問題にしているのであるから,上記説示のとおり本件明細書の記載 を考慮して解すべきであって,したがって,「電子ショッピンング」に,少なくと も原告の主張するような宣伝,広告までを含んで解することはできないというべき である。 (イ) これを前提に被告システムにつき検討するに,被告システムは,前記認定の とおり,顧客は各提携企業のホームページにおいて,講演会の講師を選択し,当該 講師の「講演を依頼する」タグを選択することにより現れる問合せ画面に名称,住 所,電話番号等の自らを特定する情報を記載し,さらに講演の希望内容を入力する などして送信すると本部のサーバーがこれを受信し,それに伴って各提携企業サー バーにeメールが送信されることで各提携企業が得る上記情報を基に,顧客を訪問 する,電話ないしメール等で連絡を取り合うなど営業活動をして,顧客の希望に沿 った講演会の内容・レベル・対象・講師・構成などを聴取し,顧客と契約できるよ\nう交渉を行うという方式である。 すなわち,被告システムの役割は,講演開催運営を取り扱う各提携企業に対し, 講演開催希望者がインターネットを使ってアクセスするホームページを設けて,そ の潜在的需要を顕在化させ,もって各提携企業が営業活動をすべき講演開催希望者 の情報を得ることができるというところまでであり,その後の講演開催実現に至る までの営業活動は,インターネット外,すなわち被告システム外の接触交渉が予定\nされているというものである。また,その機会における顧客が被告システムを利用 して「お問い合わせ(講演依頼)」をする行為は,漠然とした講演開催希望に基づ くものであってもよく,したがって,これにより提携企業との間で講演開催に向け ての交渉が開始されたとしても,それだけでは当事者間に法的な関係が直ちに生じ たとはいえないから,被告システムは,それは最終的に締結されるだろう講演開催 委託契約に向けての各提携企業の営業活動の契機を与えるものにすぎないものとい える。そして,このように見ると,被告システムでされている内容は,潜在的需要 者をインターネットでアクセスさせ,その潜在的な需要を顕在化させ,その情報を もとに実際の営業活動に結びつけるという,一般的な広告宣伝の手法と何ら変わら ないものといい得る。 なお,被告システム利用者の中には,希望講師のみならず講演会開催の日時,場 所とも確定して利用する者が含まれることはあり得るところ,その場合,そのよう な「お問い合わせ(講演依頼)」によるアクセス行為は,商品購入の注文に極めて 似ているといえるが,その場合であっても,被告システムを介して,そのアクセス を受けた各提携企業は,自らが講演する主体ではなく,また掲載講師のスケジュー ルを管理している主体とも認められないから,直ちに承諾,すなわち「受注」する ことができるわけではなく,その後,講師との関係を調整して,具体的講演開催に 向けて交渉を重ねる必要があるはずであって,したがって,利用者の 「お問い合わ せ(講演依頼)」をいかに具体化しても,これを売買契約における「注文」に準じ るものということができるわけではない。 したがって,被告システムは,構成要件Aにいう「電子ショッピングシステム」\nには相当しないというべきである。

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平成27(行ケ)10139  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成28年5月18日  知的財産高等裁判所

 ゲーム機について、進歩性違反なしとした審決が維持されました。また、手続き違背についても、無効審判における審理事項通知書とは異なる認定をする場合に意見申立の機会を与える必要はないと判断されました。
     本件発明1は,前記2(2)のとおり,従来のスロットマシンにおいては,メ モリのデータに異常が生じると,遊技店の従業員等の操作により選択・設定された 設定値ではなく,あらかじめ定められた設定値を自動的に設定し,ゲームの進行が 可能な状態に復帰させているので,本来であれば,遊技店側の操作により選択・設\n定された設定値に基づく当選確率を適用して内部抽選が行われ,入賞の発生が許容 されるべきであるのに,スロットマシンにより自動的に設定された設定値に基づい てゲームが行われることとなるため,ゲームの公平性が損なわれてしまうという問 題があったことから,ゲームの公平性を図ることができるスロットマシンを提供す ることを課題とし,その解決手段として,特許請求の範囲請求項1の構成を採用し,\n特に,不能化解除手段については,第1の不能\化手段によりゲームの進行が不能化\nされた状態においても第2の不能化手段によりゲームの進行が不能\化された状態に おいても,設定操作手段の操作に基づいて許容段階設定手段により設定値が新たに 設定されたことを条件に,ゲームの進行が不能化された状態を解除し,ゲームの進\n行を可能とする構\成を採用したものである。
(イ) これに対し,引用発明1は,前記3(2)のとおり,従来のパチンコ機におい て採用されているチェックサムを用いたエラーのチェック方式では,メモリーにバ ックアップ電源を持たないので,チェックサムの内容が電源遮断後,消去されてし まい,スロットマシン固有の設定値に関するエラーのチェックが困難であるという 問題があったことから,設定値を含む遊技データのチェックサムを,バックアップ 電源により保持することにより,電源投入時に,設定値に関するエラーの発生を検 査することができるようにし,エラーを発見した場合には,スロットマシンの遊技 を停止して,段階設定値の設定の待機待ちの状態にすることができるようにすると ともに,段階設定値を手動で変更することができるようにすることを課題とするも のであって,不能化解除手段については,第1の不能\化手段によりゲームの進行が 不能化された状態において,設定操作手段の操作に基づいて許容段階設定手段によ\nり設定値が新たに設定されたことを条件に,ゲームの進行が不能化された状態を解\n除し,ゲームの進行を可能とするが,そもそも第2の不能\化手段を備えず,第2の 不能化手段を備えないため,第2の不能\化手段によりゲームの進行が不能化された\n状態を解除し,ゲームの進行を可能とする構\成も備えないものである。 そして,引用例1には,ゲームの公平性を図るために,第2の不能化手段及びそ\nのための不能化解除手段を備えること,第2の不能\化手段のための不能化解除手段\nを第1の不能化手段のための不能\化解除手段と共通にすることについては,記載も 示唆もない。 したがって,引用発明1において,第2の不能化手段及びそのための不能\化解除 手段を備え,その上で,更に,第2の不能化手段のための不能\化解除手段を第1の 不能化手段のための不能\化解除手段と共通のものとすることについて動機付けがあ るということはできない。
・・・
イ 審理事項通知書(甲21)によれば,「合議体の暫定的な見解」として, 「引用例1に記載されている,ステップ3のRAMチェックサム検査とステップ4 のチェックサムの一致判定とを実行するチェックサム検査手段と,ステップ5の段 階設定値が正常か否かを判定する段階設定値判定手段とは別の構成であるから,引\n用発明1における,段階設定値が適正か否かの判断を個別に行うものではない「チ ェックサム検査手段」は,引用発明1の「記憶データ判定手段」に相当するもので ある。」旨示していたことが認められる。これに対し,本件審決においては,「電 源投入時における「制御を行うためのデータ」に異常があるか否かの判定とに関す る技術が,技術的に関連の深いまとまりのある技術単位であることを考慮して,本 件発明1と引用発明1とを対比し直した。」として,本件発明1と引用発明1との 相違点として,相違点1を認定した。 しかし,審判における最終的な判断の論理が,審判手続の経過において示された 暫定的な見解と異なるとしても,審判手続において,改めて上記論理を当事者に通 知した上で,これに対する意見を申し立てる機会を当事者に与えなければならない\nものではない。そうすると,かかる機会を与えなかったことを理由として,本件審 判手続に審理不尽の違法があるとまでいうことはできない。

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平成27(ネ)10127  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成28年4月27日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 均等の第5要件で侵害なしとした一審判断が維持されました。
 前記(2)の認定事実によれば,第1手続補正前の時点では,特許請求の範囲の請求項1において,「計算」については,「Web−POSサーバ・システム」で行われるのか,あるいは,「Web−POSクライアント装置」で行われるのかを含め,発明特定事項としては何ら規定されていなかったが,控訴人は,第1手続補正によって,特許請求の範囲の請求項1において,「計算」について,「Web−POSサーバ・システム」で行われる構成に限定し,その後にした第2手続補正において,特許請求の範囲を本件請求項1の構\成要件F4のとおり補正し,この第2手続補正に基づく特許請求の範囲の請求項1(本件請求項1)について,特許査定を受けたものであるということができる。そして,第2手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(本件請求項1)の「該数量に基づく計算」,すなわち,本件特許発明の構成要件F4の「該数量に基づく計算」は,「Web−POSサーバ・システム」では行われず,「Webブラウザ」を備える「Web−POSクライアント装置」で行われるものと解さざるを得ないことは,前記1のとおりである。そうすると,本件出願手続において,第1手続補正前の時点では,「計算」について,発明特定事項として何らの規定もされていなかった特許請求の範囲の請求項1について,控訴人は,第1手続補正により,「計算」が「Web−POSサーバ・システム」で行われる構\成に限定し,その後の第2手続補正によって,この構成に代えて,あえて「該数量に基づく計算」が「Web−POSクライアント装置」で行われる構\成に限定して特許査定を受けたものということができる。上記事実に鑑みれば,控訴人において,「該数量に基づく計算」が,被告方法のように「Web−POSサーバ・システム」で行われる構成については,本件特許発明の技術的範囲に属しないことを承認したもの,又は外形的にそのように解されるような行動をとったものと評価することができる。したがって,均等の第5要件の成立は,これを認めることができない。\n

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◆一審はこちら。平成26(ワ)27277

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平成26(ワ)34145  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年1月14日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、「注文情報」に該当しないので非侵害と判断されました。被告がアスクルです。
 本件明細書(甲2)の発明の詳細な説明の欄には,本件発明の実施形態が記載されているところ(段落【0027】〜【0134】,【図1】〜【図21】),この実施形態においては,「Web−POSクライアント装置」の表示画面に「明細フォーム」(カテゴリ,メーカコード,商品番号,商品名,単価,数量,金額といった注文商品明細が表\示されているもの。【図10】〜【図12】,【図17】〜【図21】。)が表示され,「オーダ・ボタン」のクリックに応答して,「Web−POSサーバ・システム」へ明細フォーム中のカテゴリ,メーカコード等の全フィールドを送信し,「Web−POSサーバ・システム」においてこの明細フォームを受信することとなっているところ(段落【0056】,【0111】〜【0125】,【0127】,【図12】),「オーダ・ボタン」のクリックにより「Web−POSサーバ・システム」が受信するのが「注文情報」であることから(構\成要件F4),上記明細フォームは「注文情報」に相当するので,「注文情報」には商品名,価格等の商品基礎情報が含まれている。また,本件明細書には本件発明の他の実施形態の説明も記載されているが(段落【0134】〜【0139】),いずれも「明細フォーム」を利用するものであり,「注文情報」に商品基礎情報を含まない構成についての記載は見当たらない。\nこれら本件明細書の記載を考慮して「注文情報」の意義を解釈すると,本件発明は,「Web−POSクライアント装置」の表示画面に明細フォームその他商品基礎情報を含む情報を表\示した上で,「オーダ・ボタン」のクリックに応答して,これらの情報を「Web−POSサーバ・システム」に送信するという構成を採用したものと認められる。したがって,「Web−POSクライアント装置」が送信して「Web−POSサーバ・システム」が受信する商品の注文に関する情報にカテゴリ,メーカコード,商品名,価格等の商品基礎情報が含まれていない場合には,構\成要件F4,G及びHの「注文情報」に当たらないと解するのが相当である。 ウ 「注文情報」を上記のように解釈することは,本件特許の出願経過における原告の説明とも一致する。すなわち,原告は,平成23年10月9日付け意見書(乙20)において,引用文献1(乙11)との相違点につき,1)引用文献1における注文情報は購入者ごとに生成される情報であって,この購入者ごとの注文情報は,商品識別情報等を含んだ商品ごとの情報である本件発明の「注文情報」とは異なる(乙20の11〜12頁),2)用文献1には,商品注文明細情報の生成及び表示過程に関する詳細な記載がなく,ユーザが注文した情報に売上管理等に必須となる商品識別情報及びこれに対応する商品基礎情報が含まれていないのに対し,本件発明では「注文情報」に商品識別情報とこれに対応する商品基礎情報が含まれている(同12〜13頁)と説明しており,これら1)及び2)の説明は上記の解釈と整合するということができる。

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平成26(ワ)25282  損害賠償等請求事件  特許権  民事訴訟 平成28年1月14日  東京地方裁判所

 「電子ショッピングモールシステム」について、新規性なしとして侵害否定されました。興味深いのは、当該動作を行うための構成を有することは、当該動作から明らかと認定した点です。被告は楽天です。原告は訂正審判を請求しましたが、訂正拒絶理由が通知されて最終的には、取り下げています。審査における審査メモには「参考文献には、ユーザが電子ショッピングモールを訪れた当初は共通カテゴリを用いて商品が提示され、ある商品が選択された後にはその商品を販売する店舗が独自に定めた店舗カテゴリを用いて商品が提示される構\成が記載されておらず、一方、本願発明はそれにより、電子ショッピングモール全体としての統一感を保ちつつも、店舗の個性を発揮して他店舗との差別化を図ることができるという顕著な効果を発揮。」とあります。
 ア 乙16文献には次の趣旨の記載がある。(乙16) 楽天市場のオンラインショッピングなら,ジャンルを掘り下げていくだけで目的の商品まで簡単にたどり着くことができる。ここでは北海道・函館の地ビールを検索する。トップページの「商品名で調べる」又は「商品別」をクリックして商品名で探すこともできる。表示されているジャンル名「ドリンク・アルコール類」から開始し,その先は「ビール・地ビール」→「地ビール」→「北海道」とジャンルが絞られていき,その度にそれぞれのジャンルでの検索結果に商品名が表\示される。金額も表示されるので,わざわざ店のホームページにアクセスしなくても商品を選べるのは利点だ。(66頁) 商品別で検索したときも,商品名をクリックすれば,店舗のホームページにアクセスして,その商品の紹介ページが見られる。「はこだてビール」の店舗のホームページには「オリジナルギフトセット」というジャンルがあり,このジャンルの画像や価格,セット名を一覧表示することができたので,その中から商品を選ぶことにした。(68頁)
イ 楽天市場のトップページから順次表示されるものであり,楽天市場の全体\nルギフトセット」のジャンルは,特定の商品を取り扱う店舗のホームページに表示されるものであり,当該店舗が設定した商品分類に基づく店舗カテゴリであると,それぞれ認めることができる。そして,乙16文献に記載されたインターネットショッピングモールに係る発明(乙16発明)においては,ある共通カテゴリが示された場合に・・・のであるから,商品と共通カテゴリ及び店舗カテゴリを示す情報が相互に結び付けられるように記憶されていると認められる。また,ある店舗が取り扱う商品に係る情報から当該店舗独自のカテゴリ及びこれに分類される商品が表\示される(同)のであるから,ある商品がどの店舗カテゴリに属するか,その店舗カテゴリにどの商品が属するかを識別するに足りる情報が記憶されているということができる。
ウ 以上によれば,乙16発明は,本件各発明の前記争いのある各構成をいずれも備えていると認められる。\n

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平成26(ワ)23926  損害賠償  特許権  民事訴訟 平成27年12月11日  東京地方裁判所

 ソニーのブルーレイレコーダのお出かけ転送機能\について、侵害か否かが争われました。裁判所は侵害なしと判断しました。
 本件明細書等をみると,本件各発明が適用される第1実施形態を説明する図1には,記憶再生装置に当たる「DVDレコーダ1」に「USB I/F」が具備されているものと図示されており,これについて「USBインターフェイス40は,USBポート41を介して接続される外部の機器と各種信号をやり取りするためのインターフェイスである。」(段落【0045】)と説明されている。そして,図1の「DVDレコーダ1」には,上記「USBI/F」とは別に,「無線LANモデム」が図示されており,これについて,「無線LANモデム60は,外部のネットワーク網と接続するためのモデムであ」り,「DVDレコーダ1は,この無線LANモデム60を介してネットワーク網に接続されるとともに,FTPサーバー3(a),及び通信局3(b)を介して,DVDレコーダ4,携帯電話5,及びパーソナルコンピュータ6と通信可能\なように構成されて」おり(段落【0047】),「無線LANモデム60が通信インターフェイスに相当」する(段落【0076】)と説明されている。そして,本件明細書等の図1には,第3の記憶媒体が,\n「DVDレコーダ1」(記憶再生装置)に内蔵された「HDD21〜HDD23」である場合と,無線LANモデム及び外部ネットワークを介して接続される「FTPサーバー3(a)」である場合の両方が図示されているにもかかわらず,通信インターフェイスについては,ネットワーク網に接続する無線LANモデムのみが記載されていること,本件各発明においては,記憶再生装置から動画情報を送信する先の端末が「通信端末」と呼称されており,ネットワーク網を経由した通信機能を有した端末であることが示唆されていると考えられ,ネットワーク網を経由した通信を想定していることがうかがえること,本件明細書等を精査しても,USBインターフェイスが通信インターフェイスに当たる場合があることを示唆する記載がないことなどからすると,本件明細書等は,通信インターフェイスからUSBインターフェイスを除外していると解するのが相当である。したがって,本件各発明における「通信インターフェイス」には,「USBインターフェイス」は含まれないというべきである。
(3) 以上によれば,USBインターフェイスを有しているにすぎない被告製品(イ〜ホ)は,構成要件B1,C1,H1,G2及びH2を充足しない。\n6 争点(1)カ(均等侵害の成否)について
原告の主張する均等侵害は争点(1)エ及びオに関し文言侵害が認められない場合の予備的主張であるところ,前記3及び4のとおり,本件では,その他の構\成要件において文言非充足であるから,原告の主張する均等侵害は理由がない。

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平成27(行ケ)10093  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年11月30日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について審決は進歩性有りと判断しましたが、知財高裁は引用文献の認定誤りを理由に、これを取り消しました。
 甲1発明3の「データ管理部」に格納されている「安全管理情報」 は,「工事にかかる安全情報で,事故歴等を入力しておくと,同じ工事 を次に行う場合に参考になる」情報であり(甲1の段落【0024】), 例えば,「代表作業用キーワード(細別)」が「コンクリート打設」で\n「規格」が「大」の場合は,「ポンプ車等車の出入りと通行人を誘導す る管理人 1」であり,「代表作業用キーワード(細別)」が「コンク\nリート打設」で「規格」が「小」の場合は,「1輪車運転中,障害物に よるバランスに注意」である(甲1の段落【0041】,【0044】, 図2及び3)。 しかるところ,上記「安全管理情報」の「ポンプ車等車の出入りと通 行人を誘導する管理人 1」とは,「大規模コンクリート打設」には, 「ポンプ車,コンクリートミキサー車,砂利運搬車の出入り等に関する 安全を確保するために交通整理を行う管理人が必要になる。」(甲1の 段落【0044】)というものであり,「ポンプ車等車の出入り」とい う「危険有害要因」に対応して発生し得る交通事故(「事故型分類」) に対する予防策として交通整理を行う管理人が必要であることを示した\nものといえるから,上記「安全管理情報」は,本件発明1の「危険有害 要因および事故型分類を含む危険情報」に該当することが認められる。 また,上記「安全管理情報」の「1輪車運転中,障害物によるバラン スに注意」とは,「障害物」という「危険有害要因」に対応して「1輪 車運転中に障害物によってバランスを崩すことによる事故」(「事故型 分類」)が発生し得ることを示したものといえるから,上記「安全管理 情報」も,本件発明1の「危険有害要因および事故型分類を含む危険情 報」に該当することが認められる。 そして,甲1発明3の「データ管理部」に格納されている「原価管理 情報」及び「安全管理情報」は,甲1の図1ないし図3に示すように, いずれも「代表作業用キーワード(細別)」(「コンクリート打設」)\n及びその各「規格」(「大」,「中」,「小」)ごとに関連付けられて 格納されていることが認められ,「安全管理情報」の格納の態様は,「工 事名称」(「代表作業用キーワード(細別)」)に関連付けられた「要\n素」(「規格」)に関連付けられたものといえるから,甲1発明3の「デ ータ管理部」には,本件発明1の「前記要素に関連付けられた危険有害 要因および事故型分類を含む危険情報が規定されている危険源評価マス ターテーブル」(相違点2に係る本件発明1の構成)が格納されている\nものと認められる。
(ウ) この点に関し,本件審決は1)甲1発明3においては,本件発明1 の「歩掛マスターテーブル」と「危険源評価マスターテーブル」に共通 に格納される「要素」に相当するものが存在しないから,本件発明1の 「要素」の構成を有するものではない,2)甲1の記載をみても,「デー タ管理部」に格納される情報をが「テーブル」として格納するとの記載 はなく,そのことが自明ともいえない,3)甲1発明3の「安全管理情報」 は,本件発明1のように工事にかかるリスクを抽出する目的で,各作業 工程において発生しうる危険としての「有害要因」とその「事故型分類」 とに整理分類して設定したものではないから,本件発明1の「危険有害 要因」及び「事故型分類」に相当する情報は含まれておらず,本件発明 1とは「危険情報」である点で共通するに留まるとして,本件発明1の 「危険源評価マスターテーブル」が存在しない旨認定した。 しかしながら,上記1)の点については,甲1発明3において,「歩掛 マスターテーブル」と「危険源評価マスターテーブル」に共通に格納さ れる「要素」に相当するものが存在することは,前記ア(カ)認定のとお りである。 また,上記2)の点については,前記(イ)認定のとおり,甲1発明3に おける「安全管理情報」の格納の態様は,「工事名称」(「代表作業用\nキーワード(細別)」)に関連付けられた「要素」(「規格」)に関連 付けられたものであるから,複数のデータ項目が関連付けられて「表」\n形式で記憶されているものと認められ,「テーブル」に該当するものと いえる。 さらに,上記3)の点については,本件発明1の特許請求の範囲(請求 項1)には,「事故型分類」に係る「分類」の方式や態様を規定した記 載はなく,本件明細書にも,「事故型分類」の語を定義した記載はない ことに照らすと,甲1発明3の「安全管理情報」は,工事にかかるリス クを抽出する目的で,各作業工程において発生しうる危険としての「有 害要因」とその「事故型分類」とに整理分類して設定したものではない からといって,本件発明1の「危険有害要因」及び「事故型分類」に相 当する情報に該当しないということはできない。 以上によれば,本件審決の上記認定は,誤りである。

◆判決本文

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平成26(ネ)10102  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年11月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について、進歩性がないので104条の3により権利できないとした1審判断が維持されました。
 相違点に係る本件発明1の構成は,「危険源評価データ生成手段」が「前\n記演算手段を使用して,前記危険源評価マスターテーブルを参照して,前 記内訳データ生成手段により生成された内訳データに含まれる各要素に基 づき,当該各要素に関連する危険有害要因および事故型分類を抽出し,該 抽出した危険有害要因および事故型分類を含む危険源評価データを生成す る」(構成要件2−E)というものである。\n本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載には,「危険源評価デ ータ」が抽出した危険有害要因及び事故型分類を含むことのみが特定され ており,その形式や態様等が特定されているわけではないから,「危険源 評価データ」は,抽出した危険有害要因及び事故型分類を含むものであり さえすれば足りるものと解される。 他方,乙5発明において,「内訳データ」に含まれる「要素」である「規 格」に基づき,「危険源評価マスターテーブル」を参照し,「当該要素に 関連する危険有害要因及び事故型分類」(「安全管理情報」)を抽出して いることは,前記(4)オ認定のとおりである。 そして,乙5発明において,上記抽出した「安全管理情報」を利用する ためにこれをデータとして出力し,「危険有害要因及び事故型分類を含む 危険源評価データ」を「生成」するように構成することは,当業者であれ\nば格別の困難なく行うことができたことが認められる。 したがって,乙5に接した当業者であれば,相違点に係る本件発明の構\n成(構成要件2−Eの構\成)を容易に想到することができたものと認めら れる。

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成25(ワ)19768

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平成26(ワ)27277  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年10月14日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、均等の第5要件を満たしていないとして侵害不成立と判断されました。
 事案に鑑み,まず,前記1において認定説示した本件特許発明と被告方法とが相違する部分(構成要件F4と被告方法との相違部分)に関し,均等の第5要件(上記(1)5))の成否を検討する。
前記1(3)において認定説示したとおり,本件特許の出願人である原告は,本件特許の出願手続において,当初(分割出願時)は,「数量に基づく計算」を「Web−POSクライアント装置」により行うか,「Web−POSサーバ・システム」により行うかについて,本件特許請求の範囲により規定していなかったところ,第1手続補正により,本件特許請求の範囲に「3)商品オーダ内容の操作に関する表示制御,すなわち,上記Web−POSクライアント装置の入力手段を有する表\示装置に表示された上記商品の注文明細情報について,ユーザが,該入力手段により,オーダ内容(数量)を入力(選択)すると,該オーダ内容に基づく計算が上記Web−POSサーバ・システムにおいて行われると共に,その結果が上記Web−POSクライアント装置に通知され,また,ユーザが,該入力装置により,オーダ操作(オーダ・ボタンをクリック)を行うと,該商品の注文明細情報に対する該オーダ内容に基づく計算結果の販売情報または注文情報が該Web−POSサーバ・システムにおいて取得(受信)されること」との構\成を付加しようとしたこと,特許庁審査官は,同構成を付加する補正は,願書に最初に添付された明細書,特許請求\nの範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく,特許法17条の2第3項に違反するなどの理由により,第1手続補正を同法53条1項により却下する旨の決定をしたこと,原告は,同却下決定を受けて,第2手続補正により,本件特許請求の範囲に「ユーザが,該入力手段により数量を入力(選択)すると,該数量に基づく計算が行われると共に,」との構成を付加したことが認められ,また,同補正により,本件請求項1記載の発明は,「該数量に基づく計算」が「Web−POSクライアント装置」により行われるものに限定されたと解すべきである。
そうすると,原告は,本件特許の出願手続において,被告方法のような「該数量に基づく計算」が「Web−POSサーバ・システム」により行われ,その結果が「Web−POSクライアント装置」に通知される構成について,これを明確に認識しながら,あえて本件特許請求の範囲から除外したものと外形的に評価し得る行動をとったものというべきである(なお,原告は,前記1において認定説示した本件特許発明と被告方法とが相違する部分〔構\成要件F4と被告方法との相違部分〕以外については,被告方法が本件特許発明と同一であるか,少なくとも均等であると主張しているのであるから,同主張を前提とする限り,被告方法は,客観的にみて,本件特許の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものにあたることになるといえる。)。
この点,原告は,第1手続補正が却下されているとか,第2手続補正のうち,構成要件F4に関する部分は,サポート要件(特許法36条6項1号)違反の拒絶理由の解消を目的としたものであるなどと主張するが,第1手続補正が却下されたとの事実は,出願人である原告が,被告方法のような「該数量に基づく計算」が「Web−POSサーバ・システム」により行われ,その結果が「Web−POSクライアント装置」に通知される構\成を明確に認識していたとの上記認定を左右するものではなく,また,原告が当該構成を明確に認識しており,第2手続補正により本件請求項1記載の発明が「該数量に基づく計算」が「Web−POSクライアント装置」により行われるものに限定されたと解される以上,第2手続補正のうち,構\成要件F4に関する部分についての補正の目的が原告主張のとおりであったとしても,被告方法のような構成をあえて本件特許請求の範囲から除外したものと外形的に評価し得る行動をとったとの上記認定判断が左右されるものではない。\nしたがって,均等の第5要件の成立は,これを認めることができない。

◆判決本文

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平成27(ネ)10047  差止請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年9月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 CS関連発明について、特許権侵害でないとした一審判断が維持されました。
 これを本件ホームアプリについてみるに,本件ホームアプリがイン ストールされた被告製品においては,利用者がタッチパネル上のショー トカットアイコンを指で長押し(ロングタッチ)すると,その際のホー ム画面のページ番号に応じて,画面上に左右スクロールメニュー表示が\n表示され,当該ページが,左端ページであれば「右スクロールメニュー\n表示」のみが,右端ページであれば「左スクロールメニュー表\示」のみ が,それ以外のページであれば「左右スクロールメニュー表示」がいず\nれも表示されるものであり(前記1(3)イ(ア)),左右スクロールメニュ ー表示は,利用者がタッチパネル上のショートカットアイコンを指で長\n押し(ロングタッチ)する操作を行うことによって表示されるものであ\nって,利用者がタッチパネル上の指の位置を動かすことにより,当該シ ョートカットアイコンを移動させる操作によって表示されるものとはい\nえない。 このことは,1)甲32の1及び2(控訴人作成の「被告製品の映像及 び映像説明書」)によれば,本件ホームアプリにおいて,タッチパネル 上のポインタ(ショートカットアイコン)を指で長押し(ロングタッチ) すると,ショートカットアイコンは,ぶるぶる振動する振動状態に遷移 し,振動状態になれば,ショートカットアイコンを移動させる操作(ド ラッグ操作)を行わなくても,画面右端に右スクロールメニューが表示\nされることが認められること,2)甲17の2(被控訴人作成の「IS04 取扱説明書」)によれば,「ロングタッチする」という項目に,「画面 の項目やアイコンを指で押さえたままにします。」と記載されているか ら,本件ホームアプリにおける「ロングタッチ」とは,ショートカット アイコンを指で押さえたままにすること,すなわち,指を移動しないま ま,ショートカットアイコンを押し続ける操作であり,指の移動を伴う ドラッグ操作は含まれないことからも明らかである。 したがって,本件ホームアプリにおいて,控訴人が主張する「操作メ ニュー情報」である左右スクロールメニュー表示を表\示させるための電 気信号は,ショートカットアイコンを押し続ける操作(ロングタッチ) が行われたことを検知した電気信号であって,ショートカットアイコン を移動させる操作(ドラッグ操作)が行われたことを検知した電気信号 ではない。 そうすると,本件ホームアプリにおいては,利用者が入力手段を介し て画面上のポインタ(ロングタッチをしたショートカットアイコン)の 位置を移動させる操作を行ったことを検知して,その操作をポインタの 座標位置を移動させる命令(電気信号)に変換し,処理手段がその電気 信号を受信することによって,控訴人が主張する「操作メニュー情報」 である左右スクロールメニュー表示を画面上に表\示させているものとは いえないから,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を 受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示する」(構\成要件E) 処理が実行される構成を備えているものと認めることはできない。\n

◆判決本文

 

◆ 一審はこちらです。平成26年(ワ)第65号

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平成26(行ケ)10231  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年8月6日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、本件発明の要旨認定が誤っているとして、進歩性なしとした審決が取り消されました。  
 補正発明における「第1の写真アルバム」が格納されている「デバイス」 とは,請求項の記載上では「分散型ネットワークに参加しているいずれかのデバイ ス」であればよいから,特定のデバイスに限定されるものではない。また,「同期 させる手段」によって「同期」される「他の写真アルバムであって前記第1の写真 アルバムに関係付けられる他の写真アルバム」が格納されている「前記デバイス以 外のデバイス」も,請求項の記載上では「分散型ネットワークに参加している」デ バイスであればよいから,特定のデバイスに限定されるものではない。 そうすると,ある場合には修正された「第1の写真アルバム」が格納されている 「デバイス」が,別の場合には「同期させる手段」によって当該修正に「同期」さ れる写真アルバムが格納されている「デバイス」となることが想定されており,そ の逆の状況も想定されるから,分散型ネットワークに参加しているデバイスはいず れも,「第1の写真アルバム」が格納されているデバイスとなり得るし,また,「同 期させる手段」によって「同期」される写真アルバムが格納されているデバイスと なり得ることとなる。したがって,補正発明の装置においては,分散型ネットワー クに参加しているある特定の「デバイス」とそれ以外の「デバイス」と間において, 「写真アルバム」変更の検出による関連する他方の「写真アルバム」の自動的な同 期が,双方向に行われるものと認められる。
(2) 引用発明は,第2,3(2)ア記載のとおりに認定されるところ,サーバ2 及びミラーサーバ7は,更新オブジェクト情報やイベントをその都度受信端末へ提 供するが,仮に,受信端末側においてオブジェクトが変更されたとしても,更新オ ブジェクト情報やイベントが,データベース・サーバないし他の受信端末へ提供さ れることは想定されていない。すなわち,オブジェクトの変更等の検出による更新 オブジェクト情報の提供は,一方向にのみ行われるものと認められる。
(3) そうすると,引用発明は,補正発明における「分散された写真アルバムの 集合を自動的に同期させる」との構成,すなわち,ある特定の「デバイス」とそれ\n以外の「デバイス」と間において,「写真アルバム」変更の検出による関連する他 方の「写真アルバム」の自動的な同期を双方向に行う構成に相当する構\成を含むも のではない。この意味で,補正発明と引用発明との相違点は,補正発明の場合は, 「分散型ネットワークにおいて,写真アルバムの集合を自動的に同期させる装置」 であるのに対し,引用発明の場合は,「分散型ネットワークにおいて,多数のデー タベースへデータを同期させる装置」であると認定すべきである。
(4) 被告は,取消事由2は取消事由1を前提とした主張であるところ,取消 事由1は失当であるから,取消事由2も失当である旨主張する。 しかしながら,前記のとおり,審決が,引用発明を「多数のデータベースへの データ配信システム」と認定した点に誤りはないものの,取消事由2における原告 の主張は,引用発明が「分散型ネットワークにおいて,不特定多数のデータベース へデータを同期させる」装置と認定すべきことを前提として,審決がこれを誤認 した結果,補正発明と引用発明との相違点の認定も誤ったというものである。 したがって,必ずしも取消事由1を前提とするものではなく,被告の主張は理 由がない。
(5) 審決は,上記認定の相違点の容易想到性を判断せずに補正発明の進歩性を 否定したものであるから,特許法29条2項の適用を誤ったものであり,取消しを 免れない。 264/085264

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平成27(ネ)10019  特許権に基づく損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年7月15日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 クラウドシステムについての特許侵害訴訟(CS関連発明)にて、控訴審でも、技術的範囲に属しないと判断されました。1審は、詳細な説明(目的・効果など)を参酌して、技術的範囲に属しないと判断していました。
 控訴人は,甲30文献を根拠に,テンプレートが,仮想マシンの情報等を含 むデータファイルであり,複写の対象となる実体を有するものであって,ハードウ エア資源を割り付けられることによって仮想マシンとして機能するものであるから,\n被控訴人商品のテンプレートは,本件発明の構成要件Aの「レンタルエンジン」に\n該当するものであり,さらに,インターネット接続も含めて総合試験が実施され動 作保証がされた被控訴人商品の「テンプレート」は,「インターネットに接続する」 「レンタルエンジン」に該当する旨主張する。 そこで,検討するに,甲30号証によれば,仮想マシンによる仮想システムは, ユーザーが,ユーザーインターフェース画面から,所望の処理能力を有する仮想マ\nシンとそのOSを選択し,この選択された仮想マシンとOSに対してハードウエア 資源内の必要なハードウエア資源を割り付けることで行われる(段落【0003】), 構築した仮想システムを別のユーザーに複写したい場合には,テンプレートファイ\nルを複写して複写テンプレートを作成し,その複写テンプレートに新たなハードウ エア資源を割り付けて,元の仮想システムと同じ仮想システムを生成することが行 われている(段落【0006】),データセンタは,管理サーバや複数のサーバと複 数のストレージ及び複数のネットワーク機器を有するハードウエア資源群を備えて おり,ユーザーが作成する仮想マシンを有する仮想システムの情報を有するテンプ レートファイルに,ハードウエア資源群内のハードウエアを割り付けて仮想システ ムを構築し運用する管理サーバを有する(段落【0014】),ユーザーが,仮想マ\nシンとそれにインストールするOS等を選択してオーダーすると,オーダーした仮 想マシンを有する仮想システムのテンプレートがハードウエア資源群内のサーバの ハードディスク領域内に生成され(段落【0022】),管理サーバが,ユーザーが 作成した仮想システムのテンプレート内の仮想マシンや仮想ストレージに,サーバ やストレージなどのハードウエア資源を割り付けることによって,仮想システムが 構築され,運用可能\になる(段落【0027】)ことが認められる。そして,「サー バ群#1内には,複数のサーバが設けられていて,それらのサーバはスイッチSW を介してネットワークで均質に接続され,コアスイッチC−SWを介してネットワ ークNWに接続され,インターネットからアクセス可能である(段落【0016】)」\nとされる。 そうすると,甲30文献におけるテンプレートについても,それのみでは,実体 のある仮想マシン・仮想システムであるとはいえないし,テンプレートにサーバや ストレージなどのハードウエア資源を割り付けることによって,初めて実体のある 仮想マシン・仮想システムとして,インターネットからアクセス可能となることが\n認められるのであるから,このテンプレートと,テンプレートにハードウエア資源 を割り付けることによって生成される仮想マシンは,コンピュータ技術上同一のも のということはできない。そして,前記認定のとおり,被控訴人商品のテンプレー トは,デザインスタジオの頁において,メニューとして表示されるものであるから,\n被控訴人商品におけるテンプレートは,被控訴人商品のサービスポータルの表示画\n面において,顧客が利用する仮想マシン及び仮想システムの構成のメニューとして\nの選択候補を意味するにすぎない。 以上によれば,甲30文献によっても,被控訴人商品の「テンプレート」が本件 発明の「レンタルエンジン」に該当するものと認めることはできない。

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◆原審はこちら。平成25年(ワ)第16060号

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平成27(ネ)10006  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年5月21日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 インターネットオークション・ショッピングの価格比較サイトの運営が特許権侵害かが争われました。知財高裁は、侵害でないとした1審判断を維持しました。争点は複数主体による侵害、間接侵害、均等侵害など種々ありましたが、そもそも構成要件が欠落しているとして請求棄却です。
 前記(3)イ(イ)認定のとおり,被告サーバーは,被告サイトにアクセ スしたユーザーのクライアント端末の要求に基づいて,そのディスプレ イ上に,予め被告サーバーに保管されていた過去に開催されたオークシ\nョン商品の縮小画像のアイコン2を含む画面3を表示させ(原判決別紙\n物件目録の別紙図9,12参照),ユーザーによってアイコン2がクリ ックされると,当該クリックされたアイコン2に対応する上記商品の画 像4,落札価格等の商品情報を主表示した画面5を表\\示(同原判決別紙 物件目録の別紙図9,12参照)させる構成を有するが,被告サーバー\nに予め保管されていた過去に開催されたオークション商品の縮小画像,\n画像,落札価格等の商品情報は,ヤフー社が一般に公開しているAPI に接続してヤフー社が運営管理するヤフーサーバーから送信された「ヤ フオク!」のオークション情報であるものと認められる。 しかるところ,ヤフーサーバーから送信された「ヤフオク!」の上記 オークション情報は,「ヤフオク!」のWebサイトのWebページの 情報であり,そのWebサイトの運営又は管理の主体はヤフー社である から,「商品の広告をネット上で紹介提供」する参加企業が運営又は管 理する「Webサイト」又はそのトップページとしてのホームページで ある「参加企業のホームページ」に該当するものと認めることはできな い。 控訴人は,この点について,ヤフーサーバーには,「ヤフオク!」の 個別のオークション商品ごとのWebページのデータがオークションコ ードごとの場所(ドメインないしURL)に保管されており,このオー クション商品ごとのWebページは,「ヤフオク!」における「出店者」 である参加企業が自由に編集可能なオークション商品ごとのWebペー\nジであり,その運用又は管理の主体は参加企業であるといえるから,「 参加企業のホームページ」に該当し,ヤフーサーバーには「参加企業の ホームページ」を保管する「バナーサーバー」が存在する旨主張する( なお,控訴人の上記主張は,前記第3の1(2)アのとおり,「争点1−イ」 に関するものであるが,その主張内容に照らし,「争点1−ア」におい ても主張するものと解される。)。
しかしながら,前記(3)ウ(イ)の認定事実によれば,「ヤフオク!」の サイトの個別のオークション商品のWebページには,「商品の情報」 (「即決価格」,「残り時間」,「入札件数」,「個数」,「開始時の 価格」,「最高額入札者」,「開始日時」,「終了日時」,「商品説明 を読む」等),「商品画像」(小さな画像をクリックすると,拡大表示\nされる。),「出品者の情報」(「出品者(自己紹介),「評価」,「 出品者への質問」,「出品者のその他のオークションを見る」),「商 品画像」等が掲載されるが,当該Webページは,ヤフー社が自ら運営 又は管理する自社のWebページであることが明らかである。 また,「ヤフオク!」のサイトのオークション商品のWebページに 掲載される「商品の情報」及び「出品者の情報」は出品者によって入力 され,「商品画像」は出品者によってアップロードされるが,その入力 項目はヤフー社によって設定され(甲74),Webページにおける各 情報の表示スタイルもヤフー社によって定められたものであり,表\\示さ れる情報の入力等が出品者によって行われるからといって,当該Web ページが出品者が運営又は管理する「Webサイト」又はそのトップペ ージとしてのホームページであるということはできない。

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◆1審はこちらです。平成25年(ワ)247069

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平成26(ネ)10107  特許権侵害行為差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年5月14日  知的財産高等裁判所  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないとした1審判断が維持されました。争点が「一覧出力形式」という用語の意味です。
 控訴人は,「一覧」とは「全体に一通り目を通すこと」という意味も包含するのであって,「全体を一目で分かるように」する場合に限る必要はないし,本件発明1に対する課題解決のための手段という観点からも,出願経緯からも,出力を1回に限定する必要もなく,被控訴人方法は構成要件1Dを充足すると主張する。\n確かに,「全体を一目で分かるように」するためには,全体が画面に表示される必要があるものの,その場合,画面への表\示までに送信されるデータが一度で出力されなければならない必然性はない。また,【0055】にあるとおり,本件発明1は,画面をスクロールする場合を含むのであって,この場合,画面上表示されない画像データについては事前に送信しなくても,表\示するためのスクロールの時点までに送信されていれば,全体を確認することができる以上,画面上表示されない画像データについては事前に送信しない方法も考えられ,このような観点からしても,画\n 像出力の回数を1回に限定する必要はない。また,本件発明1の目的,作用効果を果たすためには,事業者は,顧客に対し,預かった複数の品物の全てについて一目で分かるように,すなわち,複数の品物の全ての画像を含むように生成したウェブページとして1回の呼出操作で,ウェブページに含まれる品物に対応した画像を閲覧できるように提示する必要があるが,このことを表現するものとして,控訴人の主張するとおり,「一覧」は「全体に一通り目を通す」ものと解釈することも一応は可能\である。 しかしながら,そう解釈した場合であっても,顧客が自らの預かり品の「全体」の範囲を簡単に把握,理解できない方法では,すなわち,自分が行った1回の呼出操作で全ての商品の画像が同一ウェブページに表示されず,出力されていない画像が他に存在する構\成に基づく方法では,顧客が,表示されていない品物の存在を失念している場合には,他のカテゴリーにアクセスしたり,同一カテゴリー内にある他の画像を呼び出したりすることは考えられないのであって,自分が預けた品物を全て正確に把握するという上記課題を解決できないから,「全体に一通り目を通す」ことにならない。そうすると,1回の呼出操作で全ての商品の画像が同一ウェブページに表\示されない新旧いずれの方法についても,被控訴人方法がこの要件を欠くものとなる。 したがって,被控訴人方法は,本件発明1の技術的範囲に属しない。同様の理由で,被控訴人方法は,本件発明2及び3の技術的範囲に属さず,被控訴人装置も,本件発明4から6の技術的範囲に属しない。

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平成26(ネ)10015  債務不存在確認請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年3月19日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審での訂正の再々抗弁も理由なしと判断されました。
 本件訂正発明1のメッセージ提供手段は,特許請求の範囲(甲7の2)の記載によれば,「前記連絡先番号に係る広告主に対し,前記広告情報に基づく架電である旨のメッセージを提供するメッセージ提供手段」というものである。 ここに,「前記広告情報」とあるのは,「いずれの広告情報に基づいて架電してきたかを識別するための識別番号と連絡先番号とを関連情報として有するデータベース」との発明特定事項中の「広告情報」を指すものであるから,この広告情報は,識別番号を有する「いずれの広告情報」を意味することとなる。すると,「前記広告情報に基づく架電である旨」は「いずれの広告情報に基づく架電である旨」と解することができる。このことは,1)本件訂正発明1が,識別番号に基づいて接続処理をするにもかかわらず,一転して,メッセージ提供手段が提供するメッセージのみがその識別番号を利用しないことが不自然なこと,2)メッセージ提供手段が提供するメッセージが,「広告情報に基づく架電である」それ自体を通知するものであるとした場合,「いずれの広告情報に基づいて架電してきたかを識別するための識別番号」と,広告情報と識別番号との関連付けを明示した意味がなくなってしまうことからみても,肯定することができる。 したがって,特許請求の範囲の記載からは,メッセージ提供手段が提供するメッセージは,「いずれの広告情報に基づく架電である旨」すなわち「複数の広告情報のうちのいずれの広告情報に基づく架電である旨」と解することができる。
(b) 本件明細書の記載
本件明細書(甲1)には,次の記載がある。
・・・
これらの記載によれば,CTI演算部は,あらかじめ記録された所定の応答音声データを応答検知部623Cから出力できるところ,その音声データを,識別番号に従った音声データとすることを妨げる記載はないから,本件訂正明細書の記載を参酌しても,上記特許請求の範囲の記載の検討結果を左右するものとまではいえない。 (c) 被控訴人らの主張について 被控訴人らは,本件訂正発明1のメッセージ提供手段が提供するメッセージは,本件訂正明細書の【0039】【0156】【図10】の記載からみて,「広告情報に基づく架電である」旨であると主張する。 しかしながら,当該メッセージの内容についての特許請求の範囲の記載は,前記のとおり解釈され,明細書における上記各記載のメッセージの内容は,例示にすぎないほか,その記載における「○○からの入電です。」の「○○」も,「広告情報を閲覧した利用者からの入電です。」の「広告情報」も,「いずれの広告情報」と解釈する余地があるから,被控訴人ら主張の記載は,メッセージ提供手段が提供するメッセージが,単に,「広告情報に基づく架電である」旨の通知であることを積極的に根拠付けるものとまではいい難い。 被控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(d) 小括
以上のとおり,本件訂正発明1のメッセージ提供手段が提供するメッセージは,広告主に対して,「複数の広告情報のうちのいずれの広告情報に基づき架電したきたか」を通知するものであり,その広告情報の具体的な内容を広告主に通知することと特定するものと認められる。
・・・・・
上記(a)〜(c)の記載によれば,発信者からの呼を受けた転送元が,その呼を転送先に転送する際に,呼に関するメッセージを提供しているといえ,このような架電接続方式は周知技術であったと認められる。 控訴人は,甲33は,広告に関するものではなく,受信者の利便を目的とするので,甲12A発明とは分野,目的を異にする旨を主張する。しかしながら,相違点である構成【訂正1−G】は,専ら通話の転送の際のメッセージ提供に係るものといえ,控訴人主張の甲33と甲12A発明との相違が,転送の際のメッセージの提供に係る甲33に記載の事項を,相違点に係る周知技術の認定資料とすることを妨げることはない。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
c 容易想到性
甲12A発明は,電話3からの呼を受けたサーバが,その呼をアクセス先の電話に接続(転送)する架電接続方式であるといえる。また,上記bのとおり,発信者からの呼を受けた転送元が,その呼を転送先に転送する際に,呼に関するメッセー ジを提供する架電接続方式は周知技術である。 そうすると,甲12A発明と周知技術は,ともに呼の転送を行う架電接続方式であるから,甲12A発明において,周知技術を採用し,呼をアクセス先の電話に転送する際に,呼に関するメッセージを提供するように設計変更することに格別の困難性は認められない。そして,甲12A発明のサーバは,受けた呼が,どのような種類の広告を見た発信者からの呼であるかを認識できるのであるから(甲12の【0025】),呼をアクセス先の電話に転送する際に,呼に関するメッセージとして,どのような種類の広告を見た発信者からの呼である旨,すなわち,いずれの広告情報に基づく架電である旨のメッセージを提供するように構成することは,当業者であれば容易に想到し得るものであり,その構\成をとったことによる効果も,甲12A発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
(ウ) 控訴人の主張について
1)控訴人は,相違点に係る本件訂正発明1の構成により,着信応答時に,直ちに広告効果があったか否かを広告主に伝えることを可能\とする顕著な効果を奏する旨を主張する。 しかしながら,相違点に係る本件訂正発明1の構成,すなわち,広告主に対しいずれの広告情報に基づく架電である旨のメッセージを提供する構\成が,当業者にとって容易に組み合わせられることは,前記のとおりであり,そのような構成を採用した場合,着信応答時に広告効果があったか否かが分かるのは当然の帰結であるから,控訴人主張の上記効果は,甲12A発明及び周知技術から,当業者が予\測し得る範囲内のものである。 控訴人の上記主張は,採用することができない。 2) 控訴人は,甲12A発明は,架電がすべて広告情報を視聴した者からされるため,アクセス先に対して広告情報に基づく架電である旨のメッセージの提供をする実益はなく,甲12A発明に本件訂正発明1の構成【訂正1−G】を組み合わせる動機付けがない旨を主張する。\n しかしながら,甲12A発明の構成は,広告を視聴せず「アクセス先電話番号」に架電したユーザの存在を排除するものではなく,このことは,本件訂正発明1と全く同様である。\n控訴人の上記主張は,その前提に誤りがあり,採用することができない。 イ 本件訂正発明6 上記アの認定判断によれば,本件訂正発明6が,甲12B発明及び周知技術から容易に想到できたことは明らかである。

◆判決本文

対応する無効審決に対する取消訴訟はこちらです。平成26(行ケ)10184

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平成26(ワ)65  差止請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年2月27日  東京地方裁判所

 携帯電話の入力支援方法についての特許権の技術的範囲に属しないと判断されました。
 ア 振動状態のショートカットアイコンが移動可能な状態になることについて甲3,甲17の1,甲32の1・2及び弁論の全趣旨によれば,本件ホームアプリにおいて,振動状態でないショートカットアイコンにドラッグ操作を行っても指の動きに追従して移動することはないが,振動状態のショートカットアイコンにドラッグ操作を行うと,指の動きに追従して移動することが認められる。\nそうすると,ロングタッチは,「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン)の位置を移動可能な状態に切り替える命令」とみることができる。原告は,「させる」とは「ある行為をするように仕向ける」という意味であるから,「ポインタの位置を移動させる命令」とは,「ポインタの座標位置を移動させる状態に切り替える命令」という意味であると主張する。\nしかし,「させる」とは「ある行為をするように仕向ける」という意味であるから(甲27),「ポインタの位置を移動させる命令」とは,「ポインタの位置を移動するよう仕向ける命令」すなわち「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」を意味することは一義的に明確であって,これを「ポインタの位置を移動可能な状態に切り替える命令」であると解釈する余地はない。「ある行為をするように仕向ける」ことと,「ある行為が可能\な状態に切り替える」こととが異なることは明らかであるから,「させる」に前者の意味があるとしても,後者の意味があることにはならない。原告の主張は失当である。 本件明細書の段落【0052】〜【0101】の実施例の説明を見ても,構成要件Eにいう「ポインタの位置を移動させる命令」に対応するものとしては,「例えば,マウスにおける左ボタンや右ボタンを押したままマウスを移動させること(ドラッグ操作)や,キーボードにおける特定のキーを押しつつマウスを移動させる行為,等が該当する。」(段落【0079】)とされ,「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」をもって「ポインタの位置を移動させる命令」としているのであって,「ポインタの位置を移動可能\な状態に切り替える命令」をもって「ポインタの位置を移動させる命令」とすることについては何らの記載も示唆もない。このような本件明細書の記載を参酌すれば,「ポインタの位置を移動させる命令」が「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」を意味し,「ポインタの位置を移動可能\な状態に切り替える命令」を意味しないことは一層明らかである。\nしたがって,ロングタッチが「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン)の位置を移動可能な状態に切り替える命令」であったとしても,構\成要件Eにいう「ポインタの位置を移動させる命令」に当たるということはできない。
イ 振動状態のショートカットアイコンがやや下に移動することについて ロングタッチにより振動状態となったショートカットアイコンは,元々の位置よりやや下に移動して振動するものと認められる。 しかし,甲32の1・2によれば,Facebookアイコンをロングタッチすると,ロングタッチ中のFacebookアイコンのみならず,ロングタッチしていないEvernoteアイコンやTwitterアイコンも元々の位置よりやや下に移動して振動状態となっていることが認められる。 そうすると,ロングタッチが,「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン)の位置」を「元々の位置よりもやや下に移動させる」ことを指示する命令ということはできない。ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコンがやや下に移動するのは,他のショートカットアイコン(非「ポインタ」)の移動と同様,振動状態になったことを示す付随的な動作にすぎず,このような付随的な動作が生じることをもって,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令(=移動を指示する命令)」であるということはできない。
ウ 振動状態のショートカットアイコンが小刻みに振動することについて 甲32の1によれば,ロングタッチにより振動状態となったロングタッチ中のショートカットアイコン(=「ポインタ」)は小刻みに振動することが認められるが,これも,他のショートカットアイコン(非「ポインタ」)の振動と同様,振動状態になったことを示す付随的な動作にすぎず,このような付随的な動作が生じることをもって,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令(=移動を指示する命令)」であるということはできない。
(6) 「ポインタの位置」を「『Multi Touch』ソフトウェアがカーソ\\ルや数値で表示する座標位置」とした場合原告は,甲32の1・2において「Multi Touch」と題するソフトウェアが赤いカーソ\ルの位置や画面左上の数値で表示する座標位置の変化をもって,「ポインタの位置の移動」であるかのような主張をする(原告準備書面(2)42頁)。しかし,原告は,「Multi Touch」と題するソフトウェア(及びこれにデータを提供していると主張する「MotionEvent」と題するソフトウェア)がどのようなデータを検出しており,それが本件発明にいう「ポインタ」の定義を満たすのかについて主張立証をしないから(指を離した状態でも,また「ショートカットアイコンが指に追従する」状態でなくてもカーソ\ルが表示されているのであるから,「タッチパネル上の指の座標位置」でも,「指の動きに追従するショートカットアイコンの座標位置」でもないことは明らかである。),当該ソ\フトウェアが何を検出しているにせよ,それが本件発明にいう「ポインタ」に当たると認めることはできず,仮にロングタッチにおいて上記ソフトウェア上のカーソ\\ルや数値で表示される座標位置が変動するとしても,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令」に当たるとはいえない。(7) 本件ホームアプリが「ポインタ」を用いるものでない場合被告の主張するとおり,本件ホームアプリが「ポインタ」を用いるものでないと解釈した場合には,当然ながら,「ポインタの位置を移動させる命令」も存在しない。 (8) 以上のとおり,本件ホームアプリにおける「ポインタ」をどのように解釈するにせよ,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令」であるとはいえないから,その余の点につき判断するまでもなく,本件ホームアプリは,本件発明の構成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すると……操作メニュー情報を……表\示する」出力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムであるとは認められない。

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平成26(行ケ)10153  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年3月5日  知的財産高等裁判所

 スロットマシンについて、進歩性違反なしとした審決が取り消されました。理由は動機付けありおよび本件発明の認定誤りです。
 被告は,甲1発明の扉開閉監視手段(サブCPU82及びセンサ)は,設定値の変更とは無関係であるから,甲1発明の扉開閉監視手段に甲5,甲15及び甲16に記載の設定値の変更に関連する技術事項を適用する動機付けはない旨を主張する。 しかしながら,甲1発明の技術分野(遊技機)と,甲5,甲15及び甲16からうかがわれる周知技術の分野(遊技機)は,同一であり,特段の阻害事由がないのであれば,当業者は,公知の発明に周知の技術を適用しようと動機付けられるところ,上記特段の阻害事由は認められない。 のみならず,甲1発明の扉開閉監視手段は,甲1に,「図55はドアオープン監視機能画面を示している。スロットマシン1の電源が断たれている間,主に遊技店の営業時間外の間に,前面扉37が開けられたことを,例えばセンサといったハードウエアで監視している。そして,スロットマシン1に電源が投入された時に,サブCPU82は,そのハードウエアをチェックし,前面扉37が開けられた形跡を検出した場合には,図示するようなメッセージを液晶表\\示装置22に表示する。遊技店関係者は,このメッセージにより,営業時間外に遊技機に不正行為が行われた可\n 能性が高いことを把握することが出来る。」(【0265】)と記載されているように,不正行為の監視を目的とするものであるところ,その不正行為とは,とりもなおさず,設定の変更のことなのであるから(【0253】),甲1に接した当業者は,更なる不正手段の防止のために,甲1発明の扉開閉監視手段に甲5,甲15及び甲16からうかがわれる不正変更防止の周知技術を適用しようと,強く動機付けられるといえる。\n
・・・
相違点6は,本件発明1の構成【C9】を甲1発明が備えていないというものである。そして,構\\成【C9】は,本件発明1の構成【C2】によって遊技用記憶手段に含まれた,1)所定の確率に基づいて算出される払出率について設定された段階を示す情報を記憶する特定領域,2)遊技の進行状況に関する情報を記憶する領域として記憶すべき情報の重要度に応じて分けられた特別領域,及び3)一般領域の3領域のうち,一般領域に記憶されている情報を,設定変更手段による段階の変更の際に初期化すると特定するものである。 これら,「特定領域」「特別領域」「一般領域」が何を示すものかについては,本件明細書を参酌する必要があるといえるが,これら3領域のうちのいずれが段階変更の際に初期化されるかは,本件明細書の記載を参酌するまでもなく特許請求の範囲の記載から一義的に明らかであり,本件明細書の記載を参酌する必要はない。すな わち,構成【C9】により初期化されるとされたのは一般領域のみであり,特定領域や特別領域の初期化の有無については,構\\成【C9】は何ら限定を付すものではない。
ウ 小括
以上によれば,前記の審決は,相違点6が,一般領域の初期化に係るものであるのにもかかわらず,上記各刊行物記載の発明が,「特定領域」「特別領域」「一般領域」の区分という相違点1に係る事項を有しないことと,特別領域の初期化という相違点6とは関連のない技術事項を有しないことを理由とし,上記各刊行物に相違点6に係る本件発明1の構成の記載がないと判断したものであって,合理的根拠を欠くことが明らかである。\nそうであれば,この点において,審決の判断過程には,誤りがあるといわざるを得ない。

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平成26(ネ)10114  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成27年2月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 知財高裁は、インターネットショッピングサイト「ZOZOTOWN」に対して、特許権に基づく、損害賠償請求を棄却した1審判断を維持しました。 1審判決はなぜかアップされてません。
 被告ウェブサイトは,被控訴人が多数のファッションブランドの商品を販売するインターネットショッピングサイトであり,被控訴人は,ブランド各社から納入を受けた商品を被告ウェブサイトにアクセスしたユーザーに対し,被控訴人の名義で販売しており,被告ウェブサイトで商品情報画像のアイコン2(別紙1の図2)がユーザーによってクリックされると,関連商品が表示されるリンク先のページ(別紙1の図3及び図4)は,被控訴人の自社のページであること,被告ウェブサイトで表\示される他のページも,いずれも被控訴人の自社のページであり,被告ウェブサイトには,被控訴人以外の他の企業が管理するホームページに誘導するバナー広告が存在しないことが認められる。 したがって,被告ウェブサイトを使用する被告システムには,「商品の広告をネット上で紹介提供」する参加企業が運営又は管理する「Webサイト」又はそのトップページとしてのホームページである「参加企業のホームページ」が存在するものと認めることはできず,ひいては,被告システムにおいて,「参加企業のホームページ」を保管する「バナーサーバー」が存在するものと認めることはできない。

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平成26(行ケ)10146  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年2月26日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明「電子カルテの指示文書作成装置」について、拒絶審決が維持されました。
 引用発明は,従前の紙カルテにおいては,患者別の医師指示簿から当日行うべきオーダーを抽出し,実施記録の記入に至るまでの間,かなりの量の人手による転記及び運搬作業を要し,その事務量の多さに加え,医療事故を招くミスを発生させるおそれがあり,また,医療チーム内の情報の共有化が困難であるなどの問題があったことから,それらを解決するために,医師が事前に一定の日付という条件が満たされれば実施するよう指示した処置,すなわち,「日付を条件とする処置」につき,条件が満たされ,看護師等が実施すべき状況に至ったものを自動的に選択し,同選択により確定した指示に係る処置を,画面に一覧表示してスタッフ等の関係者に伝えるネットカルテに係るものである(乙1号証)。
イ 甲2発明は,前述したとおり,処置の失念等の医療上のミス発生防止を目的の1つとしており,前述した引用発明の目的との間に共通性が認められる。また,甲2発明は,医師が事前に一定の「予見される症状」という条件が満たされれば実施するよう指示した処置,すなわち,「予\\見される症状を条件とする処置」につき,当該症状が現れて条件が満たされ,実施すべき状況に至った処置などを自動的に表示し,関係する医療従事者に伝えるという発明であり,医師による事前の条件付指示につき,当該条件が満たされ,実施すべき状況に至った指示に係る処置を自動的に選択し,同選択により確定した指示に係る処置を,表\\示して医療に携わる関係者に伝えるという点において,引用発明と共通する。 ウ 以上に鑑みれば,当業者において,医療上のミス発生防止を更に徹底するために,引用発明につき,対象とする医師による事前の条件付指示の選択肢を増やすことを考えて甲2発明を適用する動機は,十分にあるものといえる。\nそして,引用発明に甲2発明を適用すれば,対象とする医師による事前の条件付指示につき,引用発明に係る日付を条件とするもののみならず,予見される症状を条件とするものも選択できるようにすること,すなわち,相違点1のうち,前述した「1)条件に合致すると処置が確定する,ナースなどが実行する指示項目が,本願 発明においては,「日付」を条件とするもの又は「予見される症状」を条件とするもののいずれかであるのに対し,引用発明においては,前者のみであること」に係る構\\成に,容易に想到し得るものというべきである。 相違点1のうち,前述した「2)実施すべき指示につき,本願発明においては,操作者が選択して確定指示を発行するのに対し,引用発明においては,システムにおいて自動的に選択されて確定指示が発行されること」については,当業者が必要に応じて適宜決定し得る設計的な事項といえる。 以上によれば,相違点1につき,容易想到性を認めた本件審決の判断に,誤りはない。

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平成26(ワ)7856  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年2月24日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、構成要件を備えていないとして、特許権侵害が否定されました。
 前記前提事実及び上記認定事実に基づき構成要件1D並びに2C及び2Dにいう「第1記録領域」及び「第2記録領域」の意義についてみるに,まず,特許請求の範囲の「記録媒体の第1記録領域」及び「記録媒体の第2記録領域」との記載によれば,第1記録領域及び第2記録領域は,記録媒体が有する記録領域全体のうちそれぞれ一部分を占める領域であり,相互に区別されて存在するものであることが明らかである。また,「第1データを・・・第1記録領域に書き込み」,「第2データを・・・第2記録領域に書き込\nむ」との記載によれば,データを書き込む際には,それが第1データであるか第2データであるかに応じて,記録領域全体のうちどの領域に書き込まれるのかが定まっているとみることができる。 このような特許請求の範囲の記載によれば,記録媒体の記録領域は,第1記録領域及び第2記録領域(並びに管理領域その他の領域)に物理的に区分されており,第1データが記録される第1記録領域に第2データが書き込まれたり,第2データが記録される第2記録領域に第1データが書き込まれたりすることはないと解すべきものとなる。 そして,上記の解釈は,前記(1)イの本件明細書の記載,すなわち,半導体メモリには第1記録領域と第2記録領域が形成されており,第1データの書き込みは第1記録領域の書込可能容量に達した場合に終了し,第2データの書き込みは第2記録領域の書込可能\容量に達した場合に終了する旨の記載に沿うものであって,本件明細書(甲4)の発明の詳細な説明及び図面に,これと異なる構成(第1データが記録されるべき領域への第2データの書き込み又は第2データが記録されるべき領域への第1データの書き込みを許容するような構\成)を示唆する記載は見当たらない。 そうすると,第1記録領域及び第2記録領域は,記録媒体の記録領域を物理的に区分して形成された別個の領域であると解するのが相当である。
・・・
 被告機器及び被告運行管理方法においては,センサから出力され,一次記録領域に記録された加速度データを,トリガ判定閾値を超えるなどの条件を満たすデータ(原告が第1データに当たると主張するもの。以下「甲データ」という。)であるか,事故判定閾値を超えるなどの条件を満たすデータ(原告が第2データに当たると主張するもの。以下「乙データ」という。)であるかに応じて,記録媒体(CFカード)に形成された別個のファイルに記録するとされている(別紙被告機器・・・)。そして,原告の認めるとおり,CFカードの記録領域は物理的に区分されておらず,甲データ又は乙データに対応するファイルが記録領域全体のうちどの部分に形成されるかは書き込みをする際に定まるというのであるから,CFカード中の空き領域には甲データ及び乙データのいずれもが書き込まれ得るということができる。 以上によれば,被告機器及び被告運行管理方法は本件各特許発明の「第1記録領域」及び「第2記録領域」に相当する構成を有していないと判断するのが相当である。\n

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平成24(ワ)15693  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年1月23日  東京地方裁判所

 図書保管管理システム(CS関連発明)について、技術的範囲に属しないと判断されました。また、訂正の抗弁についても、「再訂正によって特許の無効理由が解消されるとは認められない」と判断されました。
 本件発明が物の発明であることに鑑みると,構成要件1Fの「…ステーションに搬送されて,…要求図書が取り出されたコンテナまたは…返却されたコンテナに対して…更新する」との文言から,上記更新手段は,\n ステーションに搬送された状態で,図書が取り出された状態のコンテナ又は図書が返却された状態のコンテナに対して,記憶手段の記憶内容を更新するという構成を示していると解するのが自然である。そして,本件明細書等には,「図書館員がコンソ\ール54を操作して返却完了の指示を中央処理装置39に入力すると,図書コードと,…コンテナ番号とを組み合わせ,その組み合わせたデータを…前記ハードディスク47等に登録する。」(段落【0051】),「…図書館員がコンソール54を操作して取り出し完了の指示を中央処理装置39に入力すると,…更新する。」(段落【0058】)というように上記解釈を裏付ける記載はあるが,その一方で,本件明細書等には,ステーションに搬送されていない状態で,図書の取り出し又は返却の完了していない状態のコンテナに対して更新するものとする更新手段の構\成については,記載されていないし,かかる構成の示唆すらない。\nさらに,前記の本件明細書等の記載には,「…図書の取り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,…記憶内容が更新される」(段落【0010】),「このようなサイズ別フリーロケーション方式による図書の保管管理手段を採用することにより,…同一寸法の図書ならば,その寸法の図書を収容するためのコンテナ内に任意に返却することが可能となるので,…自動化による図書の取り出し及び返却作業の能\率を効果的に向上させることができる」(段落【0011】)と記載されており,これらの記載から,本件発明において前提とされるサイズ別フリーロケーション方式は,同一寸法の図書ならばコンテナ内に任意に返却することが可能な構\成,すなわち,同一寸法の図書であればその寸法の図書を収容するためのコンテナ内に空きのある限り任意に収容することが可能な構\成とされているものと理解することができる。そして,コンテナ内に空きのある限り図書を任意に収容するためには,図書の取 り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,更新手段が記憶内容を更新する,すなわち,図書の取り出しや返却が行われた状態にあるコンテナに対して記憶内容を更新することが必要であり,そのような構成が本件発明におけるサイズ別フリーロケーション方式の前提となっているものと解される。
ウ したがって,構成要件1Fの「…ステーションに搬送されて,…要求図書が取り出されたコンテナまたは…返却されたコンテナに対して…更新する更新手段」とは,ステーションに搬送された状態で図書が返却された状態のコンテナに対して記憶内容を更新する構\成を具備する更新手段をいうものと解するのが相当である。
・・・
以上のイないしオによれば,乙22公報,乙26公報,乙23公報,乙27公報には,自動倉庫の分野で幅が異なる棚領域を設けること,又は,自動倉庫の分野で幅及び高さがそれぞれ異なる棚領域を設けることが記載されており,これらのことが従来周知の技術的事項であると認められる。 また,乙26公報及び乙27公報に記載されているように,自動倉庫に格納される収容物がコンテナ又は容器に収納した状態で格納されることは,周知の事項であり,乙27公報に記載されているように,収容物の寸法に応じて大きさの異なる容器を使い分けることも,従来から一般的に行われていることであると認められる。そして,このコンテナ又は容器が収容される棚領域が,収容物の大きさ(寸法)に対応したものとなることは自明の事項である。 以上によれば,前記イないしオから,「収容物の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ異なる複数の棚領域を有する倉庫とそれぞれが収容された棚領域に対応した寸法を有する複数の収容物を収容する複数のコンテナを備えた自動公庫」との事項が周知技術であると認められる。 キ そして,乙12発明と上記カで認定した周知技術は,コンテナ等に収容物を収容し,このコンテナを,棚等を有する収容場所に格納するものであるという点で共通するから,乙12発明に上記周知技術を適用することは, 当業者が容易になし得たことであると認められる。

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平成25(ワ)16060  特許権に基づく損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成27年1月16日  東京地方裁判所

 クラウドシステムについての特許侵害訴訟(CS関連発明)です。裁判所は詳細な説明(目的・効果など)を参酌して、技術的範囲に属しないと判断しました。
 上記アからすると,被告商品における「テンプレート」は,被告のサービスポータルの表示画面において,顧客が利用する仮想マシン及び仮想システムの構\成のメニューとしての選択候補を意味するにすぎないものと認められる。 この点,原告は,被告商品における「テンプレート」は,総合試験を経て動作保証された,即時稼働可能な状態で提供される仮想マシンそのものであり,予\め用意されたテンプレートのコピーにより仮想マシンが作成されるのであるから,構成要件Aの「レンタルエンジン」に該当する旨主張する。\nしかし,前記認定に係る本件発明の特徴からすれば,ユーザーからのリクエスト時にレンタルエンジンは実在するものでなければならないところ,上記のとおり,被告商品においては,ユーザーの選択により仮想マシンが配備される,つまり,ユーザーが選択しない限り仮想マシンは配備されず,ユーザー自らが必要な構成や機能\を選択してシステム構築を行うものであるから,ユーザーのリクエスト時に実在しない仮想マシンをレンタルエンジンととらえることはできない。まして,テンプレートをコピーすることにより仮想マシンが作成されることを前提としても,テンプレートを実在するレンタルエンジンととらえることもできない。ユーザーからのリクエスト時にテンプレート上に表\示されたリソースの動作保証がされていることと表\示されたリソースから構\成されるコンピューターが現実に存在することが異なることは明らかである。 ウ 以上のとおり,被告商品における「テンプレート」を,構成要件Aの「レンタルエンジン」ととらえることはできず,ほかに被告商品において構\成要件Aにいう「レンタルエンジン」に該当すると認めるべき構成は見当たらない。\n

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平成26(行ケ)10048  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成27年1月28日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について進歩性無しとした審決が維持されました。
 原告は,発明の容易想到性を肯定するためには,従来技術とは異なる何らかの構成を採用するに至る契機となる事実がなければならないにもかかわらず,審決は,明確な理由なく容易想到性を認めた旨主張する。\nしかし,引用例1発明及び引用例2発明は,複数の商品を置く場合の商品販売システムという点で共通し,引用例2発明は専門店についても含むことが明記され,書店における書籍の販売も含むものである。また,引用例1発明は,書籍の在庫不足の場合などに販売機会を喪失すること,立ち読みによる書籍の破損等を課題としているところ,引用例2発明は,売り場面積の有効活用,商品の汚損等を課題とするものであって,これを書店について考えれば,書籍の種類が少ない場合に多くの顧客を集めることができないこと,書籍の汚損が生じることを課題として含むものであるから,課題としても共通するものである。そうすると,引用例1及び引用例2に接した当業者であれば,書店において書籍ビュアーを置く際に,引用例2発明に開示されている商品見本の一部をディスプレイに置き換えるという技術及びディスプレイに書籍の外観を表示して書籍を陳列する方法と書籍を書棚に陳列する方法を混在させるという技術を適用して,書籍とともに書籍の外観が表\示されたディスプレイを書棚に置く動機付けがあるというべきである。 したがって,引用例1及び引用例2に接した当業者であれば,引用例1発明に引用例2発明を適用する動機付けがあるというべきであって,これにより,相違点(1)に係る構成を容易に想到することができるというべきである。\nしたがって,原告の主張は理由がない。
(3) 以上によれば,相違点(1)について,審決が,引用例2発明の商品見本陳列棚をディスプレイ群に置き換えることは可能であって,この置換えにおいて,商品見本陳列棚の一部をディスプレイに置き換えても,商品見本を陳列するという目的は達成でき,書店においては,引用例2発明の商品の陳列は書棚の書籍に他ならず,書棚の一部をディスプレイにしたところで,書籍の陳列という目的は達成できる旨判断したことは相当であって,原告の取消事由1は理由がない。\n

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平成25(ワ)3480  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年12月11日  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属さないと判断されました。
 前記3のとおり,本件特許発明4(請求項4)が,いずれも請求項1の従属項である請求項2または請求項3の発明に,「前記ユーザエージェントは,前記第三者エージェントと協働して仕事を行うマルチエージェントで構成されている」との構\成を付加していることから,本件特許発明1(請求項1)は,マルチエージェントシステムの構成を前提とするものではないと解する余地がある。\nしかしながら,本件特許発明1(請求項1)には,「自律的なソフトウェアモジュールとしてのエージェント」,「コンテンツ提供手段」,「プロフィール情報受付手段」,「マッチング判断を行うエージェント」,「中立性を有する第三者エージェント」,「コンテンツ提供システム」といった構\成が使用されており,単に「マルチエージェント」の言葉が使用されていないことのみを理由として,複数のエージェントが協働するマルチエージェントシステムの構成が開示されていないと即断することはできない。\nむしろ,上記のとおり,原出願はマルチエージェントシステムの構成を前提とするものであるから,その曾\孫出願をさらに分割してされた本件特許が,複数のエージェントの協働という限定のない,単にエージェントの存在のみを内容とするシステムを権利内容とするとは考え難い(仮にそうであるとすると,分割要件の問題となるほか,前記3(2)において認定した従来技術との関係において,新規性,進歩性も問題となる。また,上記のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,マルチエージェントシステムを前提に課題を解決する発明が開示されていると認められるが,請求項1に単なるエージェントの存在のみで構成される発明が記載されているものとした場合,サポート要件の点も問題となる。)。\nまた,前記3のとおり,原出願の明細書では,発明の実施の形態として,ゼネラルマジック社が開発した通信用言語であるテレスクリプトによる自律ソフトウェアとしてのエージェントを採用することなどが記載されているが,その前後の記載から,これがマルチエージェントシステムの採用を前提とする内容であることは明らかであるところ,本件明細書にも,前述のとおり,発明の実施の形態として,ゼネラルマジック社が開発した通信用言語であるテレスクリプトによる自律ソ\フトウェアとしてのエージェントを採用することが記載されており,これによれば,本件明細書は,原出願にかかる明細書同様,エージェント同士が協調して動作するマルチエージェントシステムを利用することで課題を解決するとの構成を開示するものと認められ,本件特許の特許請求の範囲の文言についても,これを前提に理解すべきものである。
(3) あてはめ
以上によれば,本件特許の構成要件A−1の「自律的なソ\フトウェアモジュールとしてのエージェント」については,他のソフトウェアモジュールとしてのエージェントと,課題解決のために協調して動作するマルチエージェントシステムの一部を意味するものと解するのが相当である。\n被告システムについては,前記2で認定したところであるが,携帯電話等のユーザー端末,被告が利用するサーバー群及びコンテンツ提供業者のそれぞれにソフトウェアがインストールされ,相互に情報のやり取りをする事実は認められるものの,被告システムのエージェントが,ユーザーのエージェントあるいはコンテンツ提供業者のエージェントと,課題解決のために協調して動作するマルチエージェントシステムが構\成されている事実は,本件で提出された証拠によっては認定することができない。 そうすると,被告物件イ−2(iコンシェル)は構成要件A−1を充足せず,本件特許発明1の技術的範囲に属しないというべきである。\n

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平成26(行ケ)10051  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年10月22日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性無しとした審決が維持されました。出願人は住友不動産(株)です。
 本願発明において,「単位改修価格情報」を,「ビル全体を新築するための標準全体新築費用と,既存ビル全体を新築同様の状態へと改修するための標準全体改修費用との割合に応じて,新築ビルの単位規模あたりの新築価格より小さく設定」したのは,改修工事として標準的な工事内容を想定した場合には,改修費用は,新築費用よりも小さくなることに着目して,新築工事と改修工事の全体費用の差に応じて単位規模当たりの改修価格を設定し,同様に,単位規模当たりの改修工期を,単位規模当たりの新築工期より小さい値に設定したものである。ここで,建物の改修工事は,既設建物のうち再利用可能な部分については,再利用することを前提とするものであるから,一定程度の再利用可能\\な部分を有する建物に対する標準的な改修工事においては,躯体,土工事,杭工事の費用が新築工事よりも大幅に安く,給排水,空調,電気,エレベータ,仮設(足場),外構の費用も削減されることは,明らかといえる。一方,著しく老朽化した建物など,再利用可能\\な部分が極めて少ない建物に対する改修工事においては,改修費用が,新築費用よりもむしろ大きくなり,工期も長くなる場合があり得る。建物の状況によっては,上記両用の場合があり得るにもかかわらず,本願発明において,「単位改修価格情報」を,改修工事の対象となる建物の個別の状況を反映することなく,「ビル全体を新築するための標準全体新築費用と,既存ビル全体を新築同様の状態へと改修するための標準全体改修費用との割合に応じて,新築ビルの単位規模あたりの新築価格より小さく設定」し,「単位改修工期情報」を,「ビル全体を新築するための標準全体新築工期と,既存ビル全体を新築同様の状態へと改修するための標準全体改修工期との割合に応じて,新築ビルの単位規模あたりの新築工期より小さく設定」したのは,審決が認定するように,「専ら,ビル全体の改修工事の方が新築の場合よりメリットがあることを顧客に説明し,契約を円滑に進めるための商業上の都合によるもの」と認められる。そして,顧客との契約を円滑に進めるために,顧客に対する契約の提示者が,価格などについて,商業上の都合により設定すること,及びその価格設定に際して,標準的な費用を算出して価格設定の根拠として用いることは,適宜なし得ることといえる。また,概算工事費等を算出する場合において,単位規模当たりの工事費,工期を算出しようとする際,所定の標準値を算出した上で,標準値に対する「割合」を用いて算出することは,常とう手段である。以上によれば,引用例1発明を「ビル全体を新築同様の状態へと改修する全体新築化改修依頼」に適用するに当たり,「工事価格」(改修価格)及び「工事工期」(改修工期)を,所定の標準値との「割合」に応じて,「新築ビルの単位規模あたりの新築価格より小さく設定」し,あるいは,「新築ビルの単位規模あたりの新築工期より小さく設定」することには,格別の技術的意義は認められず,当業者が適宜なし得る設計事項であるといえ,この旨判断した審決の判断に誤りはない。

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平成26(行ケ)10018  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟 平成26年10月16日  知的財産高等裁判所

 コンピュータにおける処理について、クレームの”記憶装置”には、揮発性のRAMは含まないとして、審決を取り消しました。 
 審決は,本願発明の「記憶装置」は,その記憶するデータ内容や記憶構造を限定しない「記憶装置」と捉えることができることから,引用発明の「主記憶装置」に相当するとして一致点を認定した。しかし,前記1(2)及び(3)ウで判示したとおり,本願発明の「記憶装置」は,システム内に含まれ,ファイル・システムを含む記憶装置であるところ(請求項1),本願明細書の発明の詳細な説明に照らして,その技術的意義を理解すると,ハード・ディスク等の不揮発性の大容量記憶手段であり,少なくとも揮発性のRAMはこれに含まれないものと解される。これに対し,引用発明の「主記憶装置」は,「オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムをプログラム格納手段から読み出して一時的に記憶する揮発性の主記憶装置」(【請求項1】)で,【発明の実施の形態】の図1の「RAM103」(【0037】)に相当するものであって,「RAM103はCPU101がプログラムを実行するとき,必要なデータを一時的に記憶させる作業領域として使用される揮発性の記憶装置であり,例えばDRAMからなる。」(【0038】)と記載されており,ファイル・システムによって,プログラム等のファイルをフォルダやディレクトリを作成することにより管理したり,ファイルの移動や削除等の操作方法を定めたりすることは記載されていない。そうすると,本願発明の「記憶装置」と,引用発明の「主記憶装置」は相違するものであるから,両者を一致するとした審決の認定は誤りである。そして,引用発明が,「プログラム起動時,起動時間を短縮できる演算装置および演算装置を利用した電子回路装置を提供することを目的」(【0015】)とし,前回終了時に,主記憶装置に記憶されているデータを不揮発性記憶装置に待避させ,演算装置の再起動時に,当該データを主記憶装置に転送することによって,前回の電源オフ時のオペレーティング・システム及びアプリケーション・プログラムの実行状態を再現するものであることからすれば,引用発明における演算装置の再起動時の不揮発性装置からのデータの転送先は,必ず主記憶装置でなければならず,引用発明における揮発性の「主記憶装置」をファイル・システムを含む不揮発性の記憶装置に置き換えることには阻害要因があるというべきである。したがって,審決には,「記憶装置」に関して,本願発明は「ファイル・システム」が含まれる不揮発性の記憶装置であるのに対し,引用発明は,揮発性の「主記憶装置」であるという相違点を看過した誤りがあり,同相違点の看過は,容易想到性の判断の結論を左右するものである。
(3) 被告の主張について
被告は,請求項1を引用する請求項5には,揮発性か不揮発性か限定されていない「固形メモリ装置」(solid state memory),すなわち,RAMのように揮発性だが高速な固形メモリ装置,及び,メモリカードのように不揮発性だが低速の固形メモリ装置の双方が含まれることが記載されているから,本願発明の「記憶装置」にはあらゆる記憶装置が含まれる旨主張する。しかし,そもそも本願明細書には,「固形メモリ装置」について,「RAMのように揮発性だが高速な固形メモリ装置」が含まれるとの記載はないから,被告の主張は理由がない。

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平成26(行ケ)10109 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年10月6日  知的財産高等裁判所

 この事件は、出願から審決取消訴訟の判決まで1年6月かかっていません。私の知ってる限り、出願から判決まで最速です。公開公報が出る前に、判決文にて発明の内容が公表された珍しい案件です。
 引用発明の「ロール情報」(保守プログラム識別子)は,前記ア2)のとおり,監視動作の機能であるプログラム(トナーの残量監視プログラム,紙詰まり監視プログラム)や通知動作の機能\であるプログラム(通報プログラム)等の動作内容が類似する機能ごとに付与されているものであり,「トナーの残量」「紙詰まり」及び「通報」等は,各保守プログラムの役割を表\しているといえる。 また,前記(1)アのとおり,「ロール情報」(保守プログラム識別子)が「紙詰まり」である場合の保守プログラムリストの例として,4つ(複数)の紙詰まり検出プログラムがダウンタイムの短い順に順位付けされており,保守プログラム選択部30によって選択の対象とされるものである。 そして,情報処理の技術分野において,複数のプログラムを連続して実行する際に,前に実行した処理結果(情報)に基づいて,後続の処理を行うことは技術常識であると認められる。 そうすると,「紙詰まり」というロール情報(保守プログラム識別子)に,複数の呼び出し用プログラム(保守プログラム)が関連付けられており,その複数の呼び出し用プログラム(保守プログラム)から1つの呼び出し用プログラム(保守プログラム)を選択して実行する引用発明において,「紙詰まり」に対する呼び出し用プログラム(保守プログラム)の呼び出し順序よりも前に実行する呼び出し用プログラム(保守プログラム)がある場合 に,その呼び出し用プログラム(保守プログラム)から出力された情報に基づいて,実行対象とする1つの呼び出し用プログラム(保守プログラム)を選択するように構成することは,当業者であれば容易に想到し得るものである。\n

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平成25(行ケ)10276  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成26年9月11日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について進歩性を否定した審決が維持されました。
 前記(1)アによれば,甲1発明のサイバーマネーが原告の主張する通用ポイントとして利用されることは認められる。 しかし,甲1発明を本件発明1と対比するに当たっては,甲1発明のサイバーマネーが本件発明1の共通ポイントに相当するかを検討するのであるから,本件発明1の共通ポイントの技術的意義を明らかにした上で,甲1発明のサイバーマネーが 共通ポイントに相当するかを検討すべきであり,本件発明1の共通ポイントの意義と関係づけることなく,甲1発明のサイバーマネーの意義を単独で検討しても意味はない。 そこで,本件発明1の共通ポイントの技術的意義について検討するに,本件特許の請求項1の記載によれば,第1のクライアント企業のポイントが交換レートに基づいて共通ポイントに交換され,その共通ポイントが第2のクライアント企業のポイントとして精算レートに基づいて精算されるものである。 そうすると,共通ポイントとは,第1のクライアント企業のポイントと第2のクライアント企業のポイントを交換するに当たり,その仲立ちをするものであり,企業ポイントとの間で設定された交換レート又は精算レートに基づいて,企業ポイントとの間で交換されるものである。 次に,甲1発明の内容をみるに,前記(1)アによれば,売渡注文の場合は,売渡注文のボーナスポイントの数量を注文者のポイント情報DBに保有されている数量から控除するとともに,所定の交換レートに基づいて算出されたサイバーマネーとしてこれを注文者のポイント情報DBに格納して交換し,買受注文の場合は,買い受けるポイントに対して所定の交換レートに基づいて注文者がポイント情報DBに保有するサイバーマネーを控除するとともに,買い受けたボーナスポイントの数量を注文者のポイント情報DBに格納して交換するものである。 そうすると,甲1発明のサイバーマネーは,売渡注文と買受注文を連続的に観察した場合には,A企業のポイントとB企業のポイントを交換する当たり,その仲立ちをするものであり,企業ポイントとの間で設定された所定の交換レートに基づいて,企業ポイントとの間で交換されるものである。そして,甲1公報の発明の効果欄の記載によれば,消費者は少額多種のボーナスポイントを他の一種類のボーナスポイントに交換することができるというのであるから,甲1発明は売渡注文と買受注文が連続的に行われる場合を予定しているものというべきである。\n以上によれば,甲1発明のサイバーマネーは,本件発明1の共通ポイントに相当 するものということができる。

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平成25(ワ)5744  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月18日  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないと判断されました。均等侵害も否定されました。
(ア)「一覧出力形式」のうち,「一覧」には,「全体の概略が簡単にわかるようにまとめたもの」(甲14),「全体が一目で分かるようにしたもの」(乙4)という意味があり,「出力」には,「機器・装置が入力を受けて仕事をし,外部に結果を出すこと」(甲14),「原動機・通信機・コンピュータなどの装置が入力を受けて仕事または情報を外部へ出すこと」(乙4)という意味があり,「形式」には,「物事を行うときの,則るべき一定の手続きや方法・様式」(甲14),「事務などを進めるための,文書の体裁や執るべき手続」(乙4)という意味がある。 構成要件1Dには,第1通信装置の記憶手段に記憶された複数の品物の画像データの中から,ユーザ情報に対応するものを「一覧出力形式」で,すなわち,全体を一覧できるように,情報を外部へ出す方法で,第2通信装置へ送信する旨が記載されている。ここで,「全体」とは,「ユーザ情報に対応するもの」,すなわち,ユーザ情報に対応する複数の品物の画像データの全てであると読み取ることができる。
(イ)発明が解決しようとする課題,課題を解決するための手段及び発明の効果において,顧客がどの衣類を預けたか忘れてしまうことがあるが,事業者が預かっている対象物の内容を画像で視覚的に示すことによって,顧客が,預けている衣類を正確に把握でき,その中から,返却を要求したい衣類を事業者に対して容易かつ的確に知らせることができる旨が指摘されており,P1は,本件特許出願の過程で,同様の指摘や補正をしている。このような目的,作用効果のためには,事業者は,顧客に対し,預かった複数の品物の全てについて,1回の出力で,その画像を閲覧できるように提示する必要がある。 発明の実施の形態においても,預かり物の全ての画像データが読み込まれ,その結果,注文情報データベースから抽出した所定の注文情報と,預かり物画像データベースから読み込んだ衣類の画像データによって生成される「お預かり表」のウェブページに,抽出された全てのレコードに記述されている画像データパスの画像データが表\示され,全ての画像データを閲覧することが可能となる。
(ウ)前記(ア)及び(イ)を併せ考えると,「一覧出力形式」とは,ユーザ情報に対応する複数の品物の画像データが出力された場合,その画像データの全てが一覧できる状態,例えば,ディスプレーに表示される場合には,ひとつの画面上で閲覧できる状態(ディスプレーの大きさや画面の大きさにより,スクロールする必要が生じる場合を含む。)で,情報を外部へ出す方法を意味すると解される。
(2)構成要件1Dに対応する被告方法の構\成 証拠(甲6〜8,乙3)及び弁論の全趣旨によると,被告方法は,別紙被告方法目録記載第2の構成を備えていると認めることができる。 これによると,被告方法では,各画像データが「保管中アイテム」等のカテゴリーに分けられてサーバに記録されており,顧客があるカテゴリーのボタンをクリックすると,旧被告方法の場合,当該カテゴリーについてのみ,カテゴリー内の全ての画像が顧客側へ送信され,新被告方法の場合,当該カテゴリー内の1枚の画像のみが顧客側へ送信される。
(3)被告方法の構成要件1Dへの充足性
そうすると,被告方法は,ユーザ情報に対応する複数の品物の画像データの全てが一覧できる状態で,情報を外部へ出す方法をとっておらず,「一覧出力形式」との構成要件(構\成要件1D)を充足しない。 したがって,被告方法は,本件発明1から3までの構成要件を文言上充足すると認めることができない。\n

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平成26(行ケ)10014  審決取消請求事件  特許権  行政訴訟  平成26年9月24日  知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、29条柱書違反とした審決が維持されました。コンピュータ関連発明について自然法則の利用性が争われたのは、久しぶりですね。
そうすると,請求項に記載された特許を受けようとする発明が,特許法2条1項に規定する「発明」といえるか否かは,前提とする技術的課題,その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構\成から導かれる効果等の技術的意義に照らし,全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当するか否かによって判断すべきものである。 そして,上記のとおり「発明」が「自然法則を利用した」技術的思想の創作であることからすれば,単なる抽象的な概念や人為的な取決めそれ自体は,自然界の現象や秩序について成立している科学的法則とはいえず,また,科学的法則を何ら利用するものではないから,「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当しないことは明らかである。また,現代社会においては,コンピュータやこれに関連する記録媒体等が広く普及しているが,仮に,これらの抽象的な概念や人為的な取決めについて,単に一般的なコンピュータ等の機能を利用してデータを記録し,表\示するなどの内容を付加するだけにすぎない場合も,「自然法則を利用した」技術的思想の創作には該当しないというべきである。 そこで,まず,本件補正発明が前提としている課題についてみると,前記1ウの本願明細書の「従来技術では,文字を組み合わせて意味を持つ単語を生成する。単語は言語の中にあり,言語の中だけでその単語の意味を直接持つ。意味を直接持つ単語で物や,性質,特徴,意味,概念などの属性という情報を表わす。物を表\わす単語と属性を表わす単語とから成る単語の並びを作り,単語の並びで物の性質や物と物との関係を表\わす。複数の単語の並びを蓄積し,蓄積された単語の並びを知識としていた。この方法では,単語そのものの意味を持つ単語だけを使って知識を構築している。」(段落【0025】),「本発明は,上記の課題に鑑みてなされたものであり,物や属性の意味内容を言語に依存せずに表\現することのできる知識ベースシステムを提供することが目的とする。」(段落【0026】)との記載によれば,従来技術では言語(単語)に依存して知識のデータベ ース等を構築し,情報処理をしていたところ,本件補正発明では言語に依存せずに知識のデータベース等を構\築し,情報処理をするという目的を有していることは,一応理解することができる。
しかしながら,上記記載からは,従来技術において,知識のデータベース等が言語に依存していることによって生じている技術的課題は明らかではない。本願明細書の【背景技術】(段落【0002】ないし【段落0024】)の記載をみても,ニューラルネットワーク,人工知能,プログラミング言語,コンピュータ,インターネットなど極めて多様な内容が記載されているものの,知識に関するデータベースが言語に依存していることでどのような課題が生じているかについては,「情報を知識として蓄積する方法や,知識として記録された情報をうまく使う方法が開発できていない。」(段落【0005】)などの抽象的な記載があるにすぎず,「情報を知識として蓄積する方法」が具体的にどのような意味を有しているのか(上記段落【0025】の記載等によれば,従来技術においても情報を知識として蓄積していると考えられる。),「知識として記録された情報をうまく使う方法」において,うまく使うとはどのような意味であるのかについては明らかではない。また,PLOROGというプログラミング言語について,「子→父→祖父のような3階層以上の関係を直接的に表\わすことはできない。」(段落【0018】),「この技術で物と属性と関係とをデータベースとして保持できるが,物や属性や関係を表わす単語の並びを保持しているにすぎない。単語の並びで物の性質である属性を表\現し,単語の並びで関連を表現している。属性も関係も,単語の並びという同じ方法で表\現されている。情報を体系化したものを知識とすると,情報を現す単語を幾つか並べたものを複数個保持し,保持された単語の並びを知識としている。この方法では,3階層以上の物同士の関連を直接表わす情報は保持されていない。」(段落【0020】)などの\n記載もあるが,これらの記載をみても,言語に依存したデータベース全般において,3階層以上の物同士の関連を直接表す方法が存在するか否かについては必ずしも明らかではないし,本件補正発明において,このような関係を直接表\すことができるか否かについても不明である。
・・・・
以上を総合して検討すれば,本件補正発明については,そもそも前提としている課題の位置付けが必ずしも明らかではなく,技術的手段の構成としても,専ら概念の整理,データベース等の構\造の定義という抽象的な概念ないしそれに基づく人為的な取決めに止まるものであり,導かれる効果についてみても,自ら定義した構造でデータを保持するという本件補正発明の技術的手段の構\成以上の意味は示されていない。また,その構成のうち,コンピュータ等を利用する部分についてみても,単に一般的なコンピュータ等の機能\を利用するという程度の内容に止まっている。 そうすると,本件補正発明の技術的意義としては,専ら概念の整理,データベース等の構造の定義という抽象的な概念ないし人為的な取決めの域を出ないものであって,全体としてみて,「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当するとは認められない。

◆判決本文
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平成25(ワ)19768  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月11日  東京地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないと判断されました。
 証拠(甲6,8,11,13,乙4)及び弁論の全趣旨によれば,被告土木積算プログラムは,対象工事に含まれる作業を歩掛データベースで規定された作業に置き換えて積算データを作成することが認められる。これによれば,被告土木積算プログラムにおいては,操作者が,工程・種別・細別をそれぞれ入力して初めて一つの工程が対応し,これを繰り返して工事全体の工程の集合体である積算データ,すなわちSKF600が生成されるというものである。換言すれば,操作者は,設計書に基づき,工事全体のデータを入力する必要があるのであって,このようにして生成されるSKF600は,工事名称を入力することにより,工事名称と歩掛マスターテーブルを対応付けて,工事に含まれる要素を抽出するというステップで生成されるものではない。 そうであるから,被告製品のSKF600は,対象工事の全範囲における積算データであって,本件プログラム発明における「内訳データ」とは生成過程が異なり,その全体ないし一部をもって「内訳データ」に相当すると見ることはできない(被告製品のSKF600は,これを本件プログラム発明に対応させるとするならば,本件明細書記載の外部システムなどから得られる評価対象工事の情報に対応するものと解される。)。 (3) したがって,被告製品においては「内訳データ」が生成されないから,本件プログラム発明の構成要件1−Dを充足しない。\n

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平成25(ワ)6185  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月4日  大阪地方裁判所

 (株)ミクシィが個人から特許権侵害訴訟を提起されました。大阪地裁は、技術的範囲外として請求棄却されました。
 前記証拠及び弁論の全趣旨によると,被告物件においては,本件機能を利用して,「一緒にボタンを押す」ボタンを押した他の利用者が検索・表\示された後に,友人申請及び承認を行う場合,他の方法によって検索・表\示された利用者に対する友人申請及び承認を行う場合と同様の処理が行われること,本件機能\を利用してマイミクとなったかどうかは,被告物件のシステム上区別されていないことが認められる。これによると,被告物件において,友人申請に対する承認があったことを確認する際に,その者が所定の地理的エリア内にいることの確認は行われていないことになる。
(5) まとめ
以上を総合すると,被告物件の利用者らが「一緒にボタンを押す」ボタンを押し,付近にいる者が「一緒にいる人一覧」に検索・表示される段階では,地理的情報の利用はあるものの,「コンタクト可能\状態にするための同意」の確認はされず,他方,利用者の友人申請を他の利用者が承認する際には,「コンタクト可能\状態にするための同意」はあるものの,「所定の地理的エリア内にいる」ことの確認はされない。したがって,被告物件は,「所定の地理的エリア内にいる者によるコンタクト可能状態にするための同意がとれたことを確認するための確認手段」であるとの,構\成要件Bを充足しない。
2 争点(3)(被告物件が,構成要件Dを充足するか)について
(1) 構成要件Dは,「前記アクセス要求受付手段によりアクセス要求が受付けられた\nときに,前記確認手段による同意がとれたことの確認が行なわれたことを条件に,同意した者同士がコンタクトを取るためのコンタクト用共有ページへのアクセスを許容するためのアクセス制御手段」というものである。以下,本件特許発明の具体的内容を考慮しつつ,被告物件が構成要件Dを充足するか検討する。\n(2) 上記構成要件Dの文言からして,構\成要件D中の「前記アクセス要求受付手段」とは,構成要件Cにいう「アクセス要求受付手段」であり,「前記確認手段」とは,構\成要件Bの確認手段をいうことは明らかである。 したがって,構成要件Dは,構\成要件Bにいう同意の確認とは別に,コンタクトを希望する相手方に対する「アクセス要求」を受け付ける手段があることを前提として,構成要件Cのアクセス要求が発生した際に,構\成要件Bの同意の有無について判定を行い,同意が確認された場合に,コンタクトを許容することをその要件とするものと認められる。 (3) 原告は,被告物件において,被告構成cの「各利用者の専用ホームページに表\示される「友人リストボタン」,「メッセージボタン」,「新着メッセージが1件あります」,「つぶやきボタン」等のフィールドに張られたリンクを介して画面遷移する操作が受け付けられることが,「アクセス要求受付手段」に該当すると主張する。 この点,前掲証拠及び弁論の全趣旨によると,被告物件において,上記アクセス要求が発生するのは,すでに利用者同士がマイミクの関係にあることを前提としているのであり,マイミクとなっていない利用者同士では,「メッセージ」や「つぶやき」を利用しようとすること(アクセス要求に相当する)すらできない仕様になっていることが認められる。 (4) すなわち,被告物件は,構成要件Bにいう「同意の確認」に相当する友人申\請の承認があってはじめて,「アクセス要求受付手段」を利用できる構成となっており,上記(2)にみたとおりの,同意があるかどうかにかかわらず,コンタクトを取りたい相手方にアクセス要求を受け付ける手段や,そのアクセス要求があったときに,同意の有無を判定した上でアクセスを許容するような構成を備えていないものと認められる。また,逆に,被告物件において,原告の主張する「アクセス要求」が発生した際には,コンタクト可能\状態にすることの同意が取れたことの確認は行われず,まして,その同意が,構成要件Bの要件である,「所定の地理的エリア内にいる者による」ことの確認は行われないものと認められ,この点からも,被告物件は構\成要件Dを備えないものというべきである。 (5) その他原告が主張する事情及び本件明細書を含む全証拠を考慮しても,上記判断を覆すほどのものはない。

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平成23(ワ)29178 損害賠償等請求事件  特許権 民事訴訟 平成26年06月06日 東京地方裁判所

 CS関連発明について、均等論の主張も否定されました。無効主張に対して、訂正の抗弁をしていましたが、訂正後のクレームも技術的範囲に属しないと判断されました。
 上記(1)に判示した均等侵害の成立要件のうち1)の要件に関し,特許発明の本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうち,公開された明細書や出願関係書類の記載から把握される当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分をいうと解するのが相当である。これを本件発明についてみると,本件発明は,従来のネットワークゲームにあった課題,すなわち,くじ引きゲームのようなゲームでは,くじ引きという当たり又は外れによる偶然性に基盤が置かれるため,ユーザはゲームの進行度合いに応じて画像データの獲得率が向上する等の期待感が高まることがないため,ユーザに継続的にゲームを行わせることが困難である,という課題を解決するため,ユーザに「対価データ」の獲得を容易に行わせるとともに,ユーザに継続的にゲームを行わせるために,ユーザに対してゲームを行うことで直接に「対価データ」を付与するのではなく,「対価データ」を獲得するために必要な「ポイント」を付与するものとし,「対価データ」はその「ポイント」の対価としてユーザが獲得するものとした構\成が採用されたのであり,これが本件発明の課題解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分であるというべきである。そうすると,本件発明と被告サーバ装置との間において構成の異なる部分のうち,構\成要件A,D−1,E,F,G,D−2,C−2における「対価データ」を備える構成は,本件発明の本質的部分であるというべきである。他方,前記3のとおり,本件ゲームにおいては,「対価データ」に相当するものはなく,原告が主張する「強化された選手カード画像」は,強化ポイントによって新たにユーザに付与されるものではないから,本件発明の「対価データ」と本件ゲームの「強化された選手カード画像」の相違点は発明の非本質的部分と認めることはできない。したがって,均等侵害の成立要件の1)の要件を充たさないというべきである。

◆判決本文

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平成25(ネ)10099 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成26年05月21日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明の特許権侵害事件です。知財高裁は、1審と同じく技術的範囲に属しないとして控訴を棄却しました。
 控訴人の主張は,要するに,構成要件A,C及びI に記載された各プログラムの実行手順及び実行内容としての領域確保は,単なる画面表示上の表\現によって他と区別できる部分が表示されることでも十\分であるというものと整理される。しかしながら,前記認定判断(原判決引用部分)のとおり,本件発明は,初期フレームプログラムがクライアント装置において実行されて,商品カテゴリーリストの表示領域が表\示装置に第1フレームとして表示された上で,引き続き,クライアント装置からサーバ装置に対し,第1フレームをターゲットとして商品カテゴリーリストを表\示するためのカテゴリーリストプログラムを送信するよう要求するHTTPメッセージが送信され,これを受けてサーバ装置が読み出したカテゴリーリストプログラムがクライアント装置に送信され,これが実行された結果,商品カテゴリーリストがWebブラウザに表示されるという過程を経るという構\成をとった方法の発明なのである。また,前記認定判断(原判決引用部分)のとおり,本件発明は,初期フレームプログラムがクライアント装置において実行されて,商品PLUリストの表示領域が表\示装置に第2フレームとして表示された上で,引き続き,クライアント装置からサーバ装置に対して,第2フレームをターゲットとしてPLUリストサーバプログラムの実行を指示するHTTPメッセージが送信され,サーバ装置がPLUリストサーバプログラムを起動して生成したPLUリストプログラムがクライアント装置に対し送信され,これが実行された結果,商品PLUリストがWebブラウザに表\示されるという過程を経るという構成をとった方法の発明なのである。したがって,前記説示のとおり,画面上の表\現の前提として観念的には当該部分の表示のための表\示領域の確保が先行しているとみたとしても,構成要件の充足のためには,上記過程がその順序で順次実行されている必要があるところ,前記認定判断(原判決引用部分)のとおり,被控訴人システムにおいては,各画面は一つのHTML文書であって,サーバ装置からクライアント装置に対して一括して送受信されているものであり,各画面の各表\示とその表示領域の確保とは同時にされているのであるから,本件発明の構\成に従った過程が実行されているとみる余地はない。以上のとおりであるから,控訴人の上記主張は,採用することのできないものである。

◆判決本文

◆関連事件です。平成25(ネ)10108平成26年05月21日知財高裁

◆1審はこちらです。平成23(ワ)21126平成25年10月17日東京地裁

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平成25(行ケ)10207 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年04月17日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、動機付け無しとして、拒絶審決が取り消されました。出願人は、三菱東京UFJ銀行です。
 相違点2は,本願発明は,「インターネットを介して利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するのに対し,引用発明は,そのような手段を有するとはされていない点である。本件審決は,上記相違点2について,引用発明の具体的動作として,「アクセス可能なサーバー/アプリケーションのID/パスワードの束」を受け取る具体例が示されているが,ユーザーがどの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定して,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取るようにすることは,当業者が適宜になし得ることであり,その際に,「Webのアプリケーション」に対して「SSO環境を構\\築できる」ような製品である場合に,「インターネットを介して」,どの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定する情報を「SSOサーバー」に送るようにすることも,当業者が適宜になし得ることにすぎないから,引用発明を,「インターネットを介して利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するようなものとすることは,当業者が適宜になし得ることである旨判断した。 ア 前記1のとおり,本願発明における認証代行処理手段は,利用者の選択により,利用者の認証情報が登録されているリンク先が指定された場合に,利用者に代わって当該リンク先の認証処理を代行する機能を有するものである。すなわち,本願発明における認証代行処理手段は,利用者によるリンク先の指定情報及びその利用者情報を受け取って,リンク先情報登録手段から該当するリンク先情報(URL情報など)を,また認証情報格納手段から利用者のそのリンク先における認証情報(リンク先における利用者のユーザーID及びパスワードなど)を,それぞれ読み出すと共に,ひな形スクリプト/モジュール格納手段から,該当するリンク先のひな形スクリプトを読み出して,リンク先用の認証処理スクリプト(対象とするリンク先に自動的に接続処理を開始する処理をHTMLとJavaScriptにて記載したもの)を作成し,上記リンク先情報及び認証処理スクリプトを,利用者のブラウザに転送するので,利用者側のブラウザは,送られてきたリンク先情報で,目的とするリンク先にリンクすると共に,上記認証処理スクリプトに基づいて,ブラウザが,リンク先で実行される認証処理で表\\示される画面構成に対し,自動的に上記認証情報を埋め込んでいくため,利用者は,何ら選択したリンク先への操作を行わなくても,認証処理が自動的に実行されることになる。その結果,本願発明は,利用者が,ポータルサイトなどにおいてリンク先の選択を行うだけで,該リンク先に対して,何ら特別な操作を行わなくても,認証処理が自動的に実行されるため,それが終了した段階で,当該リンク先へのログインが可能\\となるという効果を奏し得るものである。そうすると,本願発明は,利用者の選択により,利用者の認証情報が登録されているリンク先が指定され,「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」(相違点2に係る構成)によって,上記利用者によるリンク先の指定情報を受け取った認証代行処理手段が,利用者に代わって当該リンク先の認証処理を代行するものと認められる。
イ これに対し,引用発明は,前記3のとおり,SSOサーバーにログインすると,アクセス可能なサーバー/アプリケーションのID/パスワードの束と,各サーバー/アプリケーションの種類ごとに用意され,ログイン操作を自動化するスクリプトが,SSOサーバーからクライアント・モジュールに配布され,クライアント・モジュールは,ログイン操作を自動化するスクリプトを実行するものである。ここで,アクセス可能\\なサーバー/アプリケーションのID/パスワードの束とは,SSOサーバーにログインしたユーザーが,アクセスすることができる全てのサーバー/アプリケーションのID/パスワードの組合せであると理解することができる。また,前記3アのとおり,引用例の記載及び本技術分野における技術常識に照らせば,引用発明のSSOサーバーは,各サーバー/アプリケーションのリンク先情報を登録しておくリンク先情報登録手段を有し,クライアントモジュールは,SSOサーバーから,各サーバー/アプリケーションのリンク先情報を受け取るものである。そして,引用発明では,上記の構成を採用することによって,ユーザーは,一度のログイン操作で,アクセス可能\\な全てのアプリケーションを利用できるとの機能(シングル・サインオン(SSO)機能\\)を有すると認められる。そうすると,引用発明においては,一度SSOサーバーにログインすれば,クライアント・モジュールは,SSOサーバーにログインしたユーザーがアクセス可能な全てのサーバー/アプリケーションのID/パスワードの組合せ,各サーバー/アプリケーションの種類ごとのログイン操作を自動化するスクリプト,及び各サーバー/アプリケーションのリンク先情報を受け取るから,それ以降,SSOサーバーとの通信を行う必要がなく,ログイン操作を自動化するスクリプトを実行することで,シングル・サインオン機能\\を果たすとの作用効果を奏すると認められる。しかるに,このような構成を採用する引用発明について,SSOサーバーが「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するものとした上で,ユーザーがどの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定して,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取るように構\\成を変更するとすれば,利用者が情報閲覧手段よりリンク先の指定を行う都度,クライアント・モジュールは,SSOサーバーとの通信を行い,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取り,上記指定された「サーバー/アプリケーション」へのログイン操作を自動化するスクリプトを実行することにより,シングル・サインオン機能を果たすことになる。しかし,それでは,一度SSOサーバーにログインすれば,クライアント・モジュールは,それ以降,SSOサーバーとの通信を行う必要がなく,ログイン操作を自動化するスクリプトを実行できるとの引用発明が有する上記の作用効果が失われることとなる。したがって,引用発明において,相違点2に係る本願発明の構\\成に変更する必要性があるものとは認められない。このように,引用発明について,SSOサーバーが「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」を有するもの(相違点2に係る構成とすること)とした上で,ユーザーがどの「サーバー/アプリケーション」にアクセスしたいかを指定して,その指定された「サーバー/アプリケーション」の「ID/パスワード」を受け取るように構\\成を変更することについては,引用発明が本来奏する上記作用効果が失われるものであって,その必要性が認められないから,引用発明における上記構成上の変更は,解決課題の存在等の動機付けなしには容易に想到することができない。しかして,引用例には,引用発明について上記構\\成上の変更をすることの動機付けとなるような事項が記載又は示唆されていると認めることはできない。
ウ 前記アのとおり,本願発明は,利用者の選択により,利用者の認証情報が登録されているリンク先が指定され,「利用者の情報閲覧手段よりリンク先の指定に関する情報を受信する手段」(相違点2に係る構成)によって,上記利用者によるリンク先の指定情報を受け取った認証代行処理手段が,利用者に代わって当該リンク先の認証処理を代行するものであるから,本願発明と引用発明とは,相違点2に係る構\\成により,作用効果上,格別に相違するものであり,引用発明において,相違点2に係る本願発明の構成を採用することは,当業者が適宜なし得る程度のものとは認められない。\n

◆判決本文

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平成25(行ケ)10246 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年03月26日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性無しとした審決が維持されました。また、審決の一致点の認定について誤りがあるものの、相違点として認定しているので結論に影響がないとしました。
 前記1(1),(2)のとおり,本願発明の「電子マネー残高記憶手段」は,「プリペイドタイプの電子マネーの購入時に使用されたユーザ携帯端末の機種固有情報を,電子マネーIDおよび電子マネーの残高と対応付けて電子マネー毎に」「格納」するものであるところ,引用発明の「ユーザ別残高DB」は,「各電子マネー毎の,発行ID,ポイント数(残高),優先順位(支払優先順位),及び各電子マネーのポイント数(残高)を合算した合算残高,が関連付けられて,ユーザ番号毎に蓄積され」るものであり,ここで引用発明の「電子マネー」は「プリペイド型電子マネー」である。そうすると,本願発明の「電子マネー残高記憶手段」と引用発明の「ユーザ別残高DB」とは,審決が一致点として認定した「プリペイドタイプの電子マネーのユーザ特定情報を,電子マネーID及び電子マネーの残高と対応付けて電子マネー毎に」「格納」する点では一致するが,「ユーザ特定情報」に関し,本願発明は,「プリペイドタイプの電子マネーの購入時に使用されたユーザ携帯端末の機種固有情報」であるのに対し,引用発明は,「ユーザ番号(ユーザ固有のユーザID)」である点で相違しており,この点において,引用発明の「ユーザ別残高DB」は,本願発明の「電子マネー残高記憶手段」に相当するとはいえないから,審決の認定には誤りがある。しかし,審決は,この相違する点を「相違点1」として認定しており,後記3のとおり,相違点1についての容易想到性の判断に誤りはないから,この誤りは,審決の結論に影響を及ぼすものではない。

◆判決本文

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平成25(ワ)1723 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年02月20日 大阪地方裁判所

 CS関連発明について、包袋禁反言の原則により非侵害と認定されました。
 上記ア及びイによれば,本件特許発明1の構成要件Dの「項目定義手段」は,複数のデータベース(テーブル)で用いることのできるデータ項目(フィールド)を定義するための構\成であり,構成要件Eの「データベース・項目関連付け手段」は,項目定義手段によってデータベース(テーブル)の作成とは独立して定義されたデータ項目(フィールド)を各データベース(データベース)に,「追加,削除又は変更する」,すなわち割り当てる構\成であると解される。本件特許発明1は,このような構成を採用したことにより,項目定義手段によってデータ項目(フィールド)の定義を変更すると,それが全てのデータベース(テーブル)に反映されることになる(データ項目(フィールド)を複数のデータベース(テーブル)で共用することができる。)という作用効果を奏するものであることも認められる。また,上記ウによれば,最初に何らかのデータベース(テーブル)を作成し,次にこのデータベース(テーブル)を構\成するデータ項目(フィールド)を作成する構成は,本件特許発明1の技術的範囲から除外されるものと解される。これに反する主張は包袋禁反言の原則により許されないものというべきである。\n
・・・
上記アによれば,被告システムの「バインダ」は本件特許発明1の「データベース」(テーブル)に相当し,被告システムの「部品」のうち「文字入力ボックス」や「数値入力ボックス」等を用いて作成したフィールドは本件特許発明1の「データ項目」に相当するものであることが認められる。原告は,訴状別紙被告システム説明書の「被告製品の構成g」の記載において,被告システムでは,「部品」を任意に追加,削除又は変更することができるから構\成要件Gを充足する旨の主張をしている。これは被告システムの「部品」が「データ項目」に相当するものであることを前提とする主張である(前記第3の1【原告の主張】(1)gはこの主張を前提としたものである。)。しかし,上記のとおり,被告システムの「部品」のうち「文字入力ボックス」や「数値入力ボックス」等を用いて作成したフィールドが,本件特許発明1の「データ項目」に相当するものであり,「部品」自体は「データ項目」ではない。上記原告の主張は前提を誤るものである。・・・・そもそも,被告システムは,最初に「バインダ」(データベース)を作成し,次に「文字入力ボックス」や「数値入力ボックス」等の「部品」を用いてバインダを構成するフィールド(データ項目)を作成する構\成のものである。このようにして作成されたフィールド(データ項目)は,個々のバインダ(データベース)に専属するものである。前記(2)イ(イ)のとおり,本件特許発明1の「データ項目を共用する」とは,項目定義手段によってデータ項目(フィールド)の定義を変更すると,それが全てのデータベース(テーブル)に反映されることをいうものであるところ,上記のような被告システムの構成からすると,このような本件特許発明1の作用効果を奏するものとは認められない。しかも,前記(2)ウのとおり,原告は,本件特許出願の手続において,最初に何らかのデータベース(テーブル)を作成し,次にこのデータベース(テーブル)を構成するデータ項目(フィールド)を作成する構\成は,本件特許発明1の構成と異なることを明確に述べており,このことからすると,被告システムが本件特許発明1の技術的範囲に属する旨の原告の主張は包袋禁反言の原則により許されないものというべきである。以上によれば,被告システムは,本件特許発明1の「複数のデータベースで共用することができるデータ項目を定義する項目定義手段」及び「複数のデータベースの各々と上記データ項目とを関連付けるデータベース・項目関連付け手段」を備えるものと認めることはできない。\n

◆判決本文

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平成25(行ケ)10109 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年12月25日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性無しとした審決が取り消されました。
 本願発明は,車等の移動体に搭載されたナビゲーション装置を介して,移動体が走行する経路等の周辺の施設等に関する広告情報を提供する移動体広告システムにおける経路広告枠設定装置に関する発明である。従来の移動体広告システムは,移動体の位置や,予めユーザが目的地を登録することにより決定された経路に応じて広告情報を配信するものであったが,配信する広告情報が地図上の各エリアに対応付けられていたため,移動体が所定の経路を外れても,エリア内であれば,エリアに対応付けられた広告情報が配信されてしまうという解決課題があった。本願発明は,エリアに代えて地図上の経路に応じて広告情報を配信可能\な経路広告枠設定装置を提供することを目的とするものである。本願発明における経路広告枠設定装置は,通信ネットワークを介して広告主の端末と接続しており,この広告主の端末から,地図上の経路に関する,線描写によって設定された経路情報を受信し,受信した前記経路情報に広告枠を設定し,記憶部に有する経路データベースに記憶するとの構成を有するものであり,広告主は,地図上の様々な経路に広告枠を設定することができるとするものである。そして,ユーザの端末からユーザの位置情報を取得し,当該位置情報を含む経路を特定して,当該経路に関連する広告枠の広告情報をユーザの端末に送信する。\n
(2) 容易想到性の有無
引用例1発明は,広告枠を地図上のエリアに設定し,広告主が供給する広告情報と地図上のエリア情報の対応関係をデータベースに記憶し,現在位置が含まれる地図上のエリアに対応した広告情報をデータベースから読み出して,ナビゲーション装置に送信するという,移動体広告システムの発明であり,本願明細書が言及するとおり,移動体が所定の経路を外れても,エリア内であれば,エリアに対応付けられた広告情報が配信されてしまうとの未解決の課題を残した発明である。他方,引用例2は,車載ナビゲーション・システム等を使用した,位置に基づく広告の提供方法に関する発明を記載したものである。引用例2には,広告メッセージを伝えることができる位置として,通行可能な道路沿いの特定位置を「仮想広告掲示板」の位置として指定し,ナビゲーション・サービス・プロバイダは広告主との契約に基づき,設けられた「仮想広告掲示板」の位置を通過するエンドユーザに広告メッセージを伝えるとの技術事項が記載開示されている。引用例2に記載された上記技術は,通行可能\な道路沿いの特定位置を通過するユーザに対して,広告メッセージを伝えるものであり,広告メッセージが送信されるのは,ユーザが特定の位置を通過した時点である。広告枠を地図上のエリアに設定し,広告主が供給する広告情報と地図上のエリア情報の対応関係をデータベースに記憶し,現在位置が含まれる地図上のエリアに対応した広告情報をデータベースから読み出して,ナビゲーション装置に送信するという発明である引用例1発明と,通行可能な道路沿いの特定位置を「仮想広告掲示板」の位置として指定し,位置を通過するエンドユーザに広告メッセージを伝えるとの引用例2に記載された技術事項を組み合わせたとしても,本願発明における地図上の経路に広告枠を設定するとの構\成に至ることはない。また,引用例1発明に引用例2の記載事項を組み合わせても本願発明における上記構成に至らない以上,経路を線描写によって設定することが周知事項であったとしても,引用例1発明に引用例2の記載事項及び上記周知事項を組み合わせることにより本願発明の上記構\成に至ることはない。したがって,広告枠を地図上の経路に対して設定することが引用例2の段落【0060】及び【0061】の記載並びに図11から出願前公知であるとして,経路を線描写によって設定することが周知事項であることを考慮し,引用例1発明の地図上のエリアとして引用例2の記載事項にあるような道路区間(経路)を採用し,相違点の構成とすることが当業者において容易になし得ることであるとした審決の判断には誤りがある。
(3) 被告の主張に対して
被告は,引用例2における「道路区間」は本願発明における「経路」に相当し,引用例2には「道路(経路)に対して広告を設定すること」が記載されているのであるから,引用例1発明に引用例2に記載の技術事項を採用して,相違点に係る構成に至るのは容易であると主張する。しかし,引用例2に記載された「道路区間」の語は,仮想広告掲示板を設定する「道路区間」沿いの位置を特定する文脈の中で用いられたものであって,広告枠を設定する対象を意味するものとして用いられた語ではない。したがって,引用例2における「道路区間」と本願発明における「経路」とは,技術的意義において相違する。引用例2においては,移動体が当該道路区間上を移動中であったとしても,当該特定位置に至らない限り,広告メッセージは配信されないのであるから,「広告枠を経路情報に設定」することが記載されているとはいえず,被告の主張は失当である。\n

◆判決本文

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平成25(行ケ)10109 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年12月25日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性無しとした審決が取り消されました。
 本願発明は,車等の移動体に搭載されたナビゲーション装置を介して,移動体が走行する経路等の周辺の施設等に関する広告情報を提供する移動体広告システムにおける経路広告枠設定装置に関する発明である。従来の移動体広告システムは,移動体の位置や,予めユーザが目的地を登録することにより決定された経路に応じて広告情報を配信するものであったが,配信する広告情報が地図上の各エリアに対応付けられていたため,移動体が所定の経路を外れても,エリア内であれば,エリアに対応付けられた広告情報が配信されてしまうという解決課題があった。本願発明は,エリアに代えて地図上の経路に応じて広告情報を配信可能\な経路広告枠設定装置を提供することを目的とするものである。本願発明における経路広告枠設定装置は,通信ネットワークを介して広告主の端末と接続しており,この広告主の端末から,地図上の経路に関する,線描写によって設定された経路情報を受信し,受信した前記経路情報に広告枠を設定し,記憶部に有する経路データベースに記憶するとの構成を有するものであり,広告主は,地図上の様々な経路に広告枠を設定することができるとするものである。そして,ユーザの端末からユーザの位置情報を取得し,当該位置情報を含む経路を特定して,当該経路に関連する広告枠の広告情報をユーザの端末に送信する。\n
(2) 容易想到性の有無
引用例1発明は,広告枠を地図上のエリアに設定し,広告主が供給する広告情報と地図上のエリア情報の対応関係をデータベースに記憶し,現在位置が含まれる地図上のエリアに対応した広告情報をデータベースから読み出して,ナビゲーション装置に送信するという,移動体広告システムの発明であり,本願明細書が言及するとおり,移動体が所定の経路を外れても,エリア内であれば,エリアに対応付けられた広告情報が配信されてしまうとの未解決の課題を残した発明である。他方,引用例2は,車載ナビゲーション・システム等を使用した,位置に基づく広告の提供方法に関する発明を記載したものである。引用例2には,広告メッセージを伝えることができる位置として,通行可能な道路沿いの特定位置を「仮想広告掲示板」の位置として指定し,ナビゲーション・サービス・プロバイダは広告主との契約に基づき,設けられた「仮想広告掲示板」の位置を通過するエンドユーザに広告メッセージを伝えるとの技術事項が記載開示されている。引用例2に記載された上記技術は,通行可能\な道路沿いの特定位置を通過するユーザに対して,広告メッセージを伝えるものであり,広告メッセージが送信されるのは,ユーザが特定の位置を通過した時点である。広告枠を地図上のエリアに設定し,広告主が供給する広告情報と地図上のエリア情報の対応関係をデータベースに記憶し,現在位置が含まれる地図上のエリアに対応した広告情報をデータベースから読み出して,ナビゲーション装置に送信するという発明である引用例1発明と,通行可能な道路沿いの特定位置を「仮想広告掲示板」の位置として指定し,位置を通過するエンドユーザに広告メッセージを伝えるとの引用例2に記載された技術事項を組み合わせたとしても,本願発明における地図上の経路に広告枠を設定するとの構\成に至ることはない。また,引用例1発明に引用例2の記載事項を組み合わせても本願発明における上記構成に至らない以上,経路を線描写によって設定することが周知事項であったとしても,引用例1発明に引用例2の記載事項及び上記周知事項を組み合わせることにより本願発明の上記構\成に至ることはない。したがって,広告枠を地図上の経路に対して設定することが引用例2の段落【0060】及び【0061】の記載並びに図11から出願前公知であるとして,経路を線描写によって設定することが周知事項であることを考慮し,引用例1発明の地図上のエリアとして引用例2の記載事項にあるような道路区間(経路)を採用し,相違点の構成とすることが当業者において容易になし得ることであるとした審決の判断には誤りがある。
(3) 被告の主張に対して
被告は,引用例2における「道路区間」は本願発明における「経路」に相当し,引用例2には「道路(経路)に対して広告を設定すること」が記載されているのであるから,引用例1発明に引用例2に記載の技術事項を採用して,相違点に係る構成に至るのは容易であると主張する。しかし,引用例2に記載された「道路区間」の語は,仮想広告掲示板を設定する「道路区間」沿いの位置を特定する文脈の中で用いられたものであって,広告枠を設定する対象を意味するものとして用いられた語ではない。したがって,引用例2における「道路区間」と本願発明における「経路」とは,技術的意義において相違する。引用例2においては,移動体が当該道路区間上を移動中であったとしても,当該特定位置に至らない限り,広告メッセージは配信されないのであるから,「広告枠を経路情報に設定」することが記載されているとはいえず,被告の主張は失当である。\n

◆判決本文

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平成25(行ケ)10086 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年11月14日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が取り消されました。理由は引用文献の認定誤りです。
 審決は,刊行物1の記載(99頁右欄2行〜100頁右欄1行目,100頁表1)から,「・・・・・4種類のアクセス先の区別によるサイトの設定によって決定されていることから,そのために当該Webページに関連付けられたActiveX コントロールが4種類のアクセス先の区別のどれにより『設定されている』かの『判断』を当然に行っているといえ,・・・・・『複数の実行条件に関する区別のうちのどの区別がWebページに関連付けられたActiveX コントロールに与えられるかを査定し,前記与えられた実行条件に関する区別に基づいて前記ActiveX コントロールを抑制すること』がよみとれる。」と認定し(審決5頁21行〜6頁11行目),刊行物1発明は,「複数の実行条件に関する区別のうちのどの区別が前記Webページに関連付けられたActiveX コントロールに与えられるかを査定し,前記与えられた実行条件に関する区別に基づいて前記ActiveX コントロールを抑制すること」との構成(【II】)を有していると認定した(6頁33行〜7頁9行目)。しかしながら,上記アにて認定判断のとおり,刊行物1において登録されるのはActiveX コントロールではなくWebページであり,アクセス先の区別もWebページの区別により設定されるものであるから,刊行物1に,「複数の実行条件に関する区別がWebページに関連付けられたActiveX コントロールに与えられる」との記載があるとはいえない。そうすると,刊行物1発明が,「複数の実行条件に関する区別のうちのどの区別が前記Webページに関連付けられたActiveX コントロールに与えられるかを査定し,前記与えられた実行条件に関する区別に基づいて前記ActiveX コントロールを抑制すること」との構成(【III】)を有しているとはいえない。したがって,上記審決の認定は誤りである。

◆判決本文

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平成24(ワ)8053 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年10月31日 東京地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないと判断されました。
,原告は,構成要件Cの「実行されることにより」という文言は,構\成要件Dの1)ないし4)の過程全体に係っているものと読むべきであるから,初期フレームプログラムの実行と,カテゴリーリストプログラム及びPLUリストプログラムのダウンロードとの間には,厳密な前後関係は要求されておらず,また,上記の文言は,因果関係を示すものでもなく,構成要件Dの1)ないし4)の過程が初期フレームプログラムの実行なしには行われないという程度の関係を示すものにすぎないと解すべきであると主張する。しかしながら,構\成要件Cにいう「より」は,因果関係等を意味する自動詞「よる」の連用形であって,動詞等に連なる語法において用いられるものであるから,構成要件Cの「ことにより」が,構\成要件Dの1)ないし3)の「送信される」及び4)の「問い合わされる」の各動詞にそれぞれ係っていることは文法上明らかであり,これと異なる読み方をすべき根拠は見当たらない。また,仮に,構成要件Cの「実行されることにより」を原告の主張のように解したとしても,前記ア及びイのとおり,被告システムにおいては,カテゴリーリスト及び個別商品リストの表\示領域を確保するプログラムと,その内容を表示するプログラムとが,それぞれ一つのHTML文書のプログラムの実行過程において同時に実行されており,構\成要件C及びDに記載された手順を順次実行するという形では実行されていないのであるから,いずれにせよ,上記ウの結論を左右するには足りないというべきである。オ よって,原告の主張は理由がなく,被告システムの実施態様1が,構成要件A,C,D及びJに記載された各プログラムの実行手順及び実行内容を充足すると認めることはできない。\n

◆判決本文

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平成24(ワ)16103 特許権に基づく差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年08月29日 東京地方裁判所

CS関連発明について、技術的範囲外と認定されました。
 本件各発明の構成要件CないしFにいう「共用アプリケーションソ\フトウェア」がどのようなアプリケーションソフトウェアを意味するかについて検討すると,・・・本件各発明の「共用アプリケーションソ\フトウェア」は,少なくとも,1)情報データの文字数及び行数,2)印刷用紙に印字する前記情報データの個数,並びに,3)印刷用紙に印字する前記情報データの文字サイズ及び文字フォントを,統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能を有するものでなければならず,そのいずれかの機能\を欠くアプリケーションソフトウェアは,「共用アプリケーションソ\フトウェア」に当たらないものと解される。また,本件各明細書の記載をみても,前記(1)ア(ア)a及び同(イ)aのとおり,本件各発明は,従来の技術では,HTTPの記述言語と情報データを受信した端末装置との間に互換性の相違(端末装置の機種やOS,アプリケーションソフトウェア,フォント環境等の相違)があると,情報データが不規則に散在してディスプレイに表\示されたり,文字が入り乱れた乱雑な状態で印刷用紙に印字されてしまう場合があったところ,これを,情報データを中間データに変換して端末装置に送信し,端末装置にインストールされた共用アプリケーションソフトウェアの機能\により,統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力することによって,統一した所定の書式で表示又は印刷させることができるとの作用効果を有するものとされている。そして,本件各明細書において,共用アプリケーションソ\フトウェアは,「印刷用紙における文字数および行数,印刷用紙に印字する個別情報データのデータ数,文字サイズおよび文字フォント,印刷用紙の上下端縁および両側縁のマージン等を自動的に設定する機能を有し,個別情報データをディスプレイ7または印刷用紙に無駄なく最適なレイアウトで表\示または印字する機能」を有するものとされている。さらに,前記(1)ア(ア)b及び同(イ)bのとおり,本件各明細書には,本件各発明の実施例として,(ア)スポーツ用品の販売に供する紙票を出力する場合,(イ)宿泊施設の提供の取次ぎに供する紙票を出力する場合,(ウ)展示会や即売会等のイベントに参加した出展者がイベント会場に来場したユーザーに後日,紹介状や案内状等の郵便物を発送する際の郵便物に貼付する宛名ラベルを出力する場合が挙げられている。そして,このうちの(ア)を例に採ると,本件明細書1中の図6に掲記されたB5縦の紙票には,テニスラケットのメーカー名,商品名,キャッチフレーズ,性能,販売価格及び販売店名が所定の文字数以内,所定の行数以内,所定の列数以内に印字され,テニスラケットの形態(全体図)が所定の範囲に印刷されている。そして,販売店は,この紙票を,テニスラケットやショウケースに貼\付したり,広告として使用したり,紹介状や案内状と共に顧客に郵送したりすることもできる旨の作用効果が記載されている(【0079】,【0080】)。上記の1)ないし3)の一部でもレイアウトが崩れた場合は,このような作用効果を発揮することができず,各販売店が情報データを製造者から郵送やファクシミリ等で取り寄せなければならなくなり,本件各発明の課題(前記(1)ア(ア)a及び同(イ)a参照)を解決することができないこととなる。以上によれば,本件各発明にいう「共用アプリケーションソフトウェア」は,上記1)ないし3)の全てを統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能を有するものであることを要し,これらを設定する機能\を一部でも欠き,又は機能自体はあっても手動で設定しなければならないこともあるようなアプリケーションソ\フトウェアは,上記の「共用アプリケーションソフトウェア」には当たらないものと解するのが相当である。イ これを被告サービスについてみると,前記(1)エのとおり,被告サーバにおいては,あらかじめ用意されているテンプレートに従って利用明細に係るPDFファイルが作成され,これが利用者に送信されると,利用者は,元のレイアウトを変更することなく,単に,受信したPDFファイルをリーダーで表示又は印刷するにすぎないことが認められる。すなわち,被告サービスにおいて,共用アプリケーションソ\フトウェアが有するとされている基本的な機能(利用者端末の機種やOS,アプリケーションソ\フトウェア,フォント環境等の相違にかかわらず,情報データを統一された所定の形式で端末装置が出力することができるようなファイルを作成する機能)を有するアプリケーションソ\フトウェアに相当するのは,PDFファイルの作成機能を有するアクロバット等のアプリケーションソ\フトウェアであって(なお,それは,利用者端末ではなく被告サーバにインストールされているものと認められる。),利用者が利用明細に係るPDFファイルを表示又は印刷する際に使用する利用者端末のリーダーは,これには当たらないものと解される。
 ウ これに対し,原告らは,リーダーにも,元の文書に使用されたフォントが端末装置に存在しない場合に代替フォントを用いて出力する機能,元の文書を縮小して印刷する際に文字サイズ,上下端縁及びマージンを変更して出力する機能\があると主張する。しかしながら,前記(1)ウ(イ)のとおり,リーダーのフォントの設定次第では,別の端末で表示・印刷したときに元のレイアウトを保持することができず,エラーや文字化けが発生する場合もあり,これを補正するためには手動で字形を埋め込むなどの作業をしなければならないこともあることが認められる。また,同(ウ)のとおり,リーダーを使用してPDFファイルを印刷する場合,その設定次第では,常に最適のサイズでの印刷がされるとは限らないことが認められる。そうすると,リーダーに原告らの主張するような機能があるとしても,リーダーが,文字サイズ及び文字フォントを常に一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能\(前記アの3))を有するとは断定することができないものというべきである。また,この点をおくとしても,原告らは,共用アプリケーションソフトウェアが有していなければならない前記アの1)ないし3)の機能のうち,1)の情報データの文字数及び行数並びに2)の印刷用紙に印字する前記情報データの個数については,リーダーにこれを統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能があることについて主張すらしていない。なお,この点に関し,原告らは,リーダーはPDFファイルについて印刷命令が出された場合,プリンタの機種に応じたページ記述言語データを作成するところ,これはページ記述言語データにデータ数,文字数,文字サイズ,文字フォント,行数,上下端縁,マージン等を設定するものであると主張するが,それも,元のファイルのレイアウトを最適なものに設定するものではなく,元のファイルのレイアウトを何ら変更することなく,そのとおりに印刷することしかできない機能\として主張されているものと解されるから,リーダーが上記1)及び2)の機能を有していることの根拠とはならないものというべきである。したがって,原告らの主張はいずれも理由がない。 
 エ 加えて,原告らを含む出願人は,本件各特許権の出願経過において,特許庁審査官の本件各拒絶理由通知書(前記(1)イ(ア))に対して本件各意見書を提出し,これには同(イ)のとおりの記載がされていた。これをみると,原告らは,本件各発明が乙5発明とは異なるもので,かつ,当業者が乙5発明から本件各発明を容易に想到することができないものであることを裏付けるために,リーダーを用いて印刷した場合,文字フォントを統一することができず,クライアントがサーバと同一の文字フォント,サーバと同一の文字数(情報データの個数)で帳票を出力することができない場合があるのに対し,本件各発明の共用アプリケーションソフトウェアにはこのような制約がなく,規則正しく最適なレイアウトで出力することができる旨主張しているのであるから,本件各発明の共用アプリケーションソ\フトウェアはリーダーとは異なるアプリケーションソフトウェアを想定している旨の主張をしていることが明らかである。そうすると,本件各特許の出願経過においてこのような主張をし,その登録を受けた原告らが,本件訴訟において,これを翻し,リーダーが本件各発明の共用アプリケーションソ\フトウェアに当たるとの主張をすることは,信義誠実の原則に反し,許されないというべきである。この点からも,原告らの主張は理由がない。

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平成24(ワ)16103 特許権に基づく差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成25年08月29日 東京地方裁判所

CS関連発明について、技術的範囲外と認定されました。
 本件各発明の構成要件CないしFにいう「共用アプリケーションソ\フトウェア」がどのようなアプリケーションソフトウェアを意味するかについて検討すると,・・・本件各発明の「共用アプリケーションソ\フトウェア」は,少なくとも,1)情報データの文字数及び行数,2)印刷用紙に印字する前記情報データの個数,並びに,3)印刷用紙に印字する前記情報データの文字サイズ及び文字フォントを,統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能を有するものでなければならず,そのいずれかの機能\を欠くアプリケーションソフトウェアは,「共用アプリケーションソ\フトウェア」に当たらないものと解される。また,本件各明細書の記載をみても,前記(1)ア(ア)a及び同(イ)aのとおり,本件各発明は,従来の技術では,HTTPの記述言語と情報データを受信した端末装置との間に互換性の相違(端末装置の機種やOS,アプリケーションソフトウェア,フォント環境等の相違)があると,情報データが不規則に散在してディスプレイに表\示されたり,文字が入り乱れた乱雑な状態で印刷用紙に印字されてしまう場合があったところ,これを,情報データを中間データに変換して端末装置に送信し,端末装置にインストールされた共用アプリケーションソフトウェアの機能\により,統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力することによって,統一した所定の書式で表示又は印刷させることができるとの作用効果を有するものとされている。そして,本件各明細書において,共用アプリケーションソ\フトウェアは,「印刷用紙における文字数および行数,印刷用紙に印字する個別情報データのデータ数,文字サイズおよび文字フォント,印刷用紙の上下端縁および両側縁のマージン等を自動的に設定する機能を有し,個別情報データをディスプレイ7または印刷用紙に無駄なく最適なレイアウトで表\示または印字する機能」を有するものとされている。さらに,前記(1)ア(ア)b及び同(イ)bのとおり,本件各明細書には,本件各発明の実施例として,(ア)スポーツ用品の販売に供する紙票を出力する場合,(イ)宿泊施設の提供の取次ぎに供する紙票を出力する場合,(ウ)展示会や即売会等のイベントに参加した出展者がイベント会場に来場したユーザーに後日,紹介状や案内状等の郵便物を発送する際の郵便物に貼付する宛名ラベルを出力する場合が挙げられている。そして,このうちの(ア)を例に採ると,本件明細書1中の図6に掲記されたB5縦の紙票には,テニスラケットのメーカー名,商品名,キャッチフレーズ,性能,販売価格及び販売店名が所定の文字数以内,所定の行数以内,所定の列数以内に印字され,テニスラケットの形態(全体図)が所定の範囲に印刷されている。そして,販売店は,この紙票を,テニスラケットやショウケースに貼\付したり,広告として使用したり,紹介状や案内状と共に顧客に郵送したりすることもできる旨の作用効果が記載されている(【0079】,【0080】)。上記の1)ないし3)の一部でもレイアウトが崩れた場合は,このような作用効果を発揮することができず,各販売店が情報データを製造者から郵送やファクシミリ等で取り寄せなければならなくなり,本件各発明の課題(前記(1)ア(ア)a及び同(イ)a参照)を解決することができないこととなる。以上によれば,本件各発明にいう「共用アプリケーションソフトウェア」は,上記1)ないし3)の全てを統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能を有するものであることを要し,これらを設定する機能\を一部でも欠き,又は機能自体はあっても手動で設定しなければならないこともあるようなアプリケーションソ\フトウェアは,上記の「共用アプリケーションソフトウェア」には当たらないものと解するのが相当である。イ これを被告サービスについてみると,前記(1)エのとおり,被告サーバにおいては,あらかじめ用意されているテンプレートに従って利用明細に係るPDFファイルが作成され,これが利用者に送信されると,利用者は,元のレイアウトを変更することなく,単に,受信したPDFファイルをリーダーで表示又は印刷するにすぎないことが認められる。すなわち,被告サービスにおいて,共用アプリケーションソ\フトウェアが有するとされている基本的な機能(利用者端末の機種やOS,アプリケーションソ\フトウェア,フォント環境等の相違にかかわらず,情報データを統一された所定の形式で端末装置が出力することができるようなファイルを作成する機能)を有するアプリケーションソ\フトウェアに相当するのは,PDFファイルの作成機能を有するアクロバット等のアプリケーションソ\フトウェアであって(なお,それは,利用者端末ではなく被告サーバにインストールされているものと認められる。),利用者が利用明細に係るPDFファイルを表示又は印刷する際に使用する利用者端末のリーダーは,これには当たらないものと解される。
 ウ これに対し,原告らは,リーダーにも,元の文書に使用されたフォントが端末装置に存在しない場合に代替フォントを用いて出力する機能,元の文書を縮小して印刷する際に文字サイズ,上下端縁及びマージンを変更して出力する機能\があると主張する。しかしながら,前記(1)ウ(イ)のとおり,リーダーのフォントの設定次第では,別の端末で表示・印刷したときに元のレイアウトを保持することができず,エラーや文字化けが発生する場合もあり,これを補正するためには手動で字形を埋め込むなどの作業をしなければならないこともあることが認められる。また,同(ウ)のとおり,リーダーを使用してPDFファイルを印刷する場合,その設定次第では,常に最適のサイズでの印刷がされるとは限らないことが認められる。そうすると,リーダーに原告らの主張するような機能があるとしても,リーダーが,文字サイズ及び文字フォントを常に一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能\(前記アの3))を有するとは断定することができないものというべきである。また,この点をおくとしても,原告らは,共用アプリケーションソフトウェアが有していなければならない前記アの1)ないし3)の機能のうち,1)の情報データの文字数及び行数並びに2)の印刷用紙に印字する前記情報データの個数については,リーダーにこれを統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能があることについて主張すらしていない。なお,この点に関し,原告らは,リーダーはPDFファイルについて印刷命令が出された場合,プリンタの機種に応じたページ記述言語データを作成するところ,これはページ記述言語データにデータ数,文字数,文字サイズ,文字フォント,行数,上下端縁,マージン等を設定するものであると主張するが,それも,元のファイルのレイアウトを最適なものに設定するものではなく,元のファイルのレイアウトを何ら変更することなく,そのとおりに印刷することしかできない機能\として主張されているものと解されるから,リーダーが上記1)及び2)の機能を有していることの根拠とはならないものというべきである。したがって,原告らの主張はいずれも理由がない。 
 エ 加えて,原告らを含む出願人は,本件各特許権の出願経過において,特許庁審査官の本件各拒絶理由通知書(前記(1)イ(ア))に対して本件各意見書を提出し,これには同(イ)のとおりの記載がされていた。これをみると,原告らは,本件各発明が乙5発明とは異なるもので,かつ,当業者が乙5発明から本件各発明を容易に想到することができないものであることを裏付けるために,リーダーを用いて印刷した場合,文字フォントを統一することができず,クライアントがサーバと同一の文字フォント,サーバと同一の文字数(情報データの個数)で帳票を出力することができない場合があるのに対し,本件各発明の共用アプリケーションソフトウェアにはこのような制約がなく,規則正しく最適なレイアウトで出力することができる旨主張しているのであるから,本件各発明の共用アプリケーションソ\フトウェアはリーダーとは異なるアプリケーションソフトウェアを想定している旨の主張をしていることが明らかである。そうすると,本件各特許の出願経過においてこのような主張をし,その登録を受けた原告らが,本件訴訟において,これを翻し,リーダーが本件各発明の共用アプリケーションソ\フトウェアに当たるとの主張をすることは,信義誠実の原則に反し,許されないというべきである。この点からも,原告らの主張は理由がない。

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平成24(行ケ)10453 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年08月09日 知的財産高等裁判所

 スロットマシン(CS関連発明)について、無効理由無しとした審決が維持されました。
原告の技術Bが技術常識であるとの主張について
原告は,記憶領域の初期化において,技術Bが技術常識である旨主張し,その根拠として審決の認定判断並びに刊行物(甲22)及び公開特許公報(甲23〜29,31,32)の記載を挙げているが,以下の理由により,いずれも技術Bが本件特許の原出願時における技術常識であることを認定する根拠とすることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって,技術Bが本件特許の原出願時における技術常識であるとは認められず,原告の上記主張を採用することはできない。
ア 審決の認定判断について
原告は,審決書(26頁5行〜同頁12行)の記載を根拠として,審決が,本件特許発明の認定に際し,初期化テーブルを参照してアドレス情報を取得する構成が技術常識である旨認定していると主張する。しかし,審決書(25頁27行〜26頁12行)の記載によれば,審決は,まず,請求項1の「前記初期化手段は,・・・初期化領域設定手段を含み」との記載の意味につき,初期化手段に含まれる初期化領域設定手段(実施例では図44(b)の初期化テーブル)には,初期化条件の種類に対応してデータ記憶手段における初期化開始アドレスが初期化条件の種類の数だけ設定(登録)されるとともに,2種類以上の初期化条件に共通する一の初期化終了アドレスが設定(登録)されている旨解釈し,本件特許発明が初期化領域設定手段(初期化テーブル)を有するものであるとしている。そして,審決は,上記解釈を前提とした上で,請求項1における初期化手段が「前記2種類以上の初期化条件のうちいずれかの初期化条件が成立したときに,該初期化条件の種類に対応して前記初期化領域設定手段に設定された初期化開始アドレスから前記2種類以上の初期化条件に共通して前記初期化領域設定手段に設定された初期化終了アドレスまでの各アドレスが割り当てられた記憶領域を初期化する」との記載につき,その記載中に記憶領域を初期化する際に初期化領域設定手段(初期化テーブル)を参照してアドレス情報を取得することを明示する部分はないものの,技術常識に照らせば,当然に初期化領域設定手段(初期化テーブル)を参照して情報を取得することがなされているものと理解される,との認定判断をしているものである。そうすると,審決の上記認定判断部分は,請求項1の文言に基づいて同項の解釈をした結果,記憶領域を初期化する際に初期化領域設定手段(初期化テーブル)を参照してアドレス情報を取得するとの構\成を導き出しているにすぎないものと認められ,審決に記載のある「技術常識」の趣旨についても,せいぜい,本件特許発明において,初期化領域設定手段(初期化テーブル)を参照してアドレス情報を取得することは,技術常識といえる程度に当然に理解できるものであることを説示したにすぎないものというべきである。そうすると,原告の指摘する審決の記載は,技術Bが技術常識であることを認定したものと認めることはできず,原告の上記主張を採用することはできない。

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平成25(行ケ)10022 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年08月09日 知的財産高等裁判所

 珍しいケースです。CS関連発明について、29条の2で拒絶されました。裁判所は29条の2違反とした審決を維持しました。
(4) 一応の相違点に関する判断について
ア 前記(2)に認定した先願発明の内容及び先願発明における求職クライアント信用評価情報の内容に照らすと,先願発明においても,求職クライアント信用評価情報記憶部には記憶容量の限りがあること,及び,古い求職クライアント信用評価情報は現実性を失い価値が無くなるため常にデータを新鮮にする必要があることが認められる。そうすると,先願発明においてこれらに対処することは,先願明細書に明示されていなくても当然に行われるものであるといえ,先願発明に本件周知技術を付加し,あらかじめ設定された蓄積期間が経過した古い求職クライアント信用評価情報を削除し,常にデータを新鮮なものとする構成とすることは,先願明細書に記載されているに等しい事項といえる。
イ そして,本願発明と上記ア認定の先願発明に本件周知技術を付加した構成とを対比すると,先願発明に本件周知技術を付加した構\成においても,あらかじめ設定された蓄積期間が経過した古い求職クライアント信用評価情報を削除することで,先願発明における「サーバー」は,あらかじめ設定された蓄積期間が経過した求職クライアント信用評価情報を送信せず,当該蓄積期間が経過する前の求職クライアント信用評価情報だけを記憶部から読み出して「求人クライアントの通信端末」に通信手段を介して送信するようにすることができる。したがって,先願発明に本件周知技術を付加した構成は,本願発明の「前記サーバ装置は,前記記憶手段に蓄積したメッセージ情報のうち予\め設定された蓄積期間が経過したメッセージ情報を送信せず,当該蓄積期間が経過する前のメッセージ情報だけを前記記憶手段から読み出して前記求人者側端末に通信手段を介して送信」する構成を備えるものと認められる。また,先願発明に本件周知技術を付加した構\成においても,あらかじめ設定された蓄積期間が経過した古い求職クライアント信用評価情報を削除することで,現実性を失い価値が無くなった古い求職クライアント信用評価情報は削除され,常にデータを新鮮なものとすることができるので,これにより,求職者が過去を清算できるものと認められる。したがって,先願発明に本件周知技術を付加した構成における上記蓄積期間は,本願発明における「前記蓄積期間は前記求職者が過去を清算することを目的として予\め設定された期間」にも当たるものと認められる。さらに,先願発明に本件周知技術を付加することにより,蓄積期間が経過した求職クライアント信用評価情報は,求人クライアントの通信端末に提供されなくなるから,その結果として,本願発明と同様に,求人者は,求職者の印象を表す信用評価情報を見ながら求職者を選ぶことができ,かつ,信用を失った求職者は,その過去を清算して出直すことができるとの作用効果を奏するものと認められる。したがって,本願発明の作用効果は,先願発明の奏する作用効果と本件周知技術がもたらす作用効果との総和にすぎないものと認められる。
ウ 以上によれば,本願発明と先願発明との一応の相違点に係る構成は,先願発明に上記周知技術を単に付加した程度のものであり,かつ,新たな作用効果を奏するものでもない。\n

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平成24(行ケ)10409 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年07月24日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性無しとした審決が維持されました。
 上記記載によれば,本願発明において,「売却対象受電量」を「最大電力消費量以下」又は「発電増加量分以下」に設定することは,売却対象となる余剰の受電権を確保することを意味するにすぎず,それ以上の意義を有するものではなく,また,「購入対象受電量」を「最大電力消費量以上」又は「発電低下量分以上」に設定することは,購入対象となる不足の受電権を受け入れ可能にすることを意味するにすぎず,それ以上の意義を有するものではないことが認められる。そうすると,本願発明の「売却対象受電量」とは,余剰であるために売却対象となる将来の「電力量」を意味するにすぎないから,引用発明1の「余剰電力」とは,将来において売却対象となる「電力量」という点において一致し,また,本願発明の「購入対象受電量」とは,不足するために購入対象となる将来の「電力量」を意味するにすぎないから,引用発明1の「不足電力」とは,将来において購入対象となる「電力量」という点において一致する。\n

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平成24(ネ)10084 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成25年06月25日 知的財産高等裁判所

 apple vs サムスンの特許侵害事件の控訴審です。控訴審でもファイルサイズはメディア情報には該当しないと判断されました。
 控訴人は,本件発明の「メディア情報」は「メディアアイテムに特有の情報」ではなく「メディアアイテムに関する情報」と解すべきであることを前提に,原判決で,ファイルサイズが構成要件G1及びG2における「メディア情報」には該当しないと判断したのは誤りであると主張する。この点についての判断は,原判決が37頁以下の(2),(3)で説示したとおりであるが,なお次のとおり補足して判断する。本件明細書(甲2)の記載によれば,本件発明は,「ホストコンピュータおよび/またはメディアプレーヤー上のメディアコンテンツをシンクロまたは管理するための改良されたアプローチのための改良された技術」(段落【0005】)として,メディアコンテンツのシンクロ処理において,ファイル名や更新日ではなく,「メディア情報」を比較することにより,シンクロを「データ転送の量が比較的低いか最小限にされるよう適切に管理されるよう」(段落【0022】)にし,「その結果,シンクロプロセスは,よりインテリジェントに実行されえる」(段落【0010】)ようにしたものであり,また,本件特許請求の範囲における文言上,「ファイル情報」と規定することなくあえて「メディア情報」と規定しているばかりか,本件明細書等においても,「メディアアイテムが有するファイル情報」などとの用語ではなく,あえて「メディア情報」の用語が用いられ,しかも,その用語は,「メディア情報は,メディアアイテムの特徴または属性に関する」(段落【0040】)などと,メディアアイテムに関連付けて表現されていることが認められるから,本件発明における「メディア情報」とは,一般的なファイル情報の全てを包含するものではなく,音楽,映像,画像等のメディアアイテムに関する種々の情報のうち,メディアアイテムに特有の情報を意味するものと解するのが相当である。「メディア情報」なる用語はその語そのものからいかなる情報までを包含するか明確でなく,当該発明の技術的課題や作用効果を参酌してその意義を解釈しなければならないところ,原判決は,特許請求の範囲における構\成要件の記載や本件明細書の記載等を踏まえて,「メディア情報」を上記のように解釈したものであり,引用した上記各記載に照らしても,その判断を支持することができる。以上の説示に照らし,ファイルサイズが「メディア情報」に含まれないことは,原判決も「原告の主張について」と題して39頁以下のイの項で詳細に説示しているとおりであり,当裁判所が付加すべき理由はない。控訴人の上記主張は理由がない。

◆判決本文

◆1審はこちら。平成23(ワ)27941
 

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平成24(行ケ)10162 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月25日 知的財産高等裁判所

 進歩性違反および新規事項であると無効主張しましたが、無効でないとした審決が維持されました。
(3) 上記記載によれば,当初明細書等においては,「番組表を利用した視聴や録画がどの程度行われているのか」を知るために調査された「視聴率」及び「録画率」を番組表\に記載する旨,及び番組表に記載されるものとして,これらは「例示」であって,これら以外に「番組を視聴した平均人数など」が記載されるように構\成してもよい旨が明示されている。したがって,【0079】に記載された「平均人数など」が,視聴率及び録画率と併記されるか又は単独で記載されるかにかかわらず,「視聴率」及び「録画率」のみならず,「番組表を利用した視聴や録画がどの程度行われているのか」を知るための情報を記載し得ることは,当初明細書等に記載されていると認められる。そして,「どの程度行われているのか」を「多少を把握可能\な」と表現すること,及び番組表\に記載される情報を「指標」と表現することは,普通に行われているところであって,このように表\現することによって何らかの技術的な意義が追加されるものではないから,「視聴者数の多少を把握可能な」「指標」及び「録画予\約数の多少を把握可能な」「指標」という表\現が用いられたことによって,当初明細書等に記載された事項に対して新たな技術的事項が導入されたものでもない。したがって,補正事項1,2について,いずれも新規事項ということはできず,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないということはできないとした本件審決の判断に誤りはなく,取消事由2,3は理由がない。
・・・・
(3) 上記記載によれば,当初明細書等においては,番組表の提供を受けた利用者が番組表\を利用した視聴や録画がどの程度行われているのかを知りたいという課題について,利用者側端末20から番組表の要求を受けた調査者側装置10が視聴率及び録画率が記載された番組表\を作成して利用者側端末20に送信し,この番組表を受信した利用者側端末20において視聴率及び録画率が記載された番組表\を表示することによって解決することが記載されている。以上を踏まえれば,「前記利用者装置によって表\示される番組表上の番組に対応づけられて表\示されるための前記視聴指標と前記録画予約指標とであって,現在放送中の番組に対応する前記視聴指標と前記録画予\約指標とを送信する指標送信手段」(補正事項7)は,当初明細書等に記載された課題に対応するものとして当初明細書等に記載された解決手段を特定する記載であって,当初明細書等に記載された事項に対して新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。

◆判決本文

◆関連事件はこちらです。平成24(行ケ)10163

◆関連事件はこちらです。平成24(行ケ)10155

◆関連事件はこちらです。平成24(行ケ)10154

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平成24(行ケ)10175 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年03月13日 知的財産高等裁判所   

 CS関連発明について、相違点の認定に誤りはあるものの、結論に影響無しとして、進歩性なしとした審決が維持されました。
 原告は,審決が,引用発明は,「更新された行程の基本所要時間を表すデジタル情報を少なくとも含む,所定の幾つかの無線メッセージを認知」し,「受信された前記デジタルデータに応じて,前記行程の基本所要時間を表\す,記憶された前記デジタルデータを更新」するという構成において,本願発明と相違がないと認定した点(審決書12頁11行〜21行)について,引用発明と本願発明との間には,前者が,道路網のうち,現在地点から進行方向に存在する近隣の限られた区間における更新された行程の所要時間(通過所要時間)を表\すデジタルデータを受信するのに対して,後者が,現在地点や進行方向に関係なく所定の道路網の各区間における更新された行程の所要時間を表すデジタルデータを受信するという相違点が存在するにもかかわらず,審決はこれを看過していると主張する。確かに,引用発明は,所定の道路網の全ての区間のリンク旅行時間を受信するものではないことから,審決の上記認定は正確ではない。しかし,引用発明と本願発明とは,引用発明の「外部から現在の道路状況,所定の交差点間の道路(リンク)ごとの通過所要時間(リンク旅行時間)を受」する態様と,本願発明の「更新された行程の基本所要時間を表\すデジタル情報を少なくとも含む,所定の幾つかの無線メッセージを認知」する態様とが,「更新された所定の行程の基本所要時間を表すデジタル情報を少なくとも含む,所定の幾つかの無線メッセージを認知」するとの概念で共通するから,本願発明と引用発明との相違点は,原告が主張する点ではなく,被告が主張する点,すなわち,「更新された行程の基本所要時間を表\すデジタル情報を少なくとも含む,所定の幾つかの無線メッセージを認知」する態様」に関し,本願発明は,更新された行程の基本所要時間を表すデジタル情報を少なくとも含む,所定の幾つかの無線メッセージを認知するものであるのに対し,引用発明は,外部から現在の道路状況,所定の交差点間の道路(リンク)ごとの通過所要時間(リンク旅行時間)を受信するものであって,道路網の全ての区間を含むことは特定されていない点。」(相違点9)と認定すべきである。そうすると,審決には,相違点9を看過した誤りがあることになる。しかし,相違点9は,相違点8(記憶されたデジタルデータおよび受信されたデジタル情報には,当該道路網の所定の区間ごとの行程の基本所要時間が含まれている態様に関し,本願発明は,当該道路網の「各区間ごとの」行程の基本所要時間が含まれているのに対し,引用発明は,「所定の区間の」行程の基本所要時間が含まれるが,全ての区間の行程の基本所要時間が含まれることまでは特定されていない点。)に含まれており,相違点8に係る審決の進歩性判断に誤りはないから(後記3のとおり),相違点9の看過が審決の結論に影響を及ぼすことはない。\n

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平成24(行ケ)10199 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年02月14日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 引用文献2には,ユーザ自身が作成した音声,画像(静止画),動画,テキスト等を含むコンポーズドメディアを,インターネットを介して相手に送信するグリーティングカード(カードページ)に盛り込むことができる旨が記載され,引用文献3でも,ユーザが作成した画像や音楽のデータ(ファイル)をインターネットを介して相手に送信するデジタルポストカードに盛り込むことができる旨が記載されているから,審決が認定するとおり,本件優先日当時,サーバを用いてイメージデータを第三者と共用するサービスにおいて,ユーザのコンピュータに記憶されているデータをサーバに記憶させるようにすること,またかかるデータをサーバで運用されるデジタルのポストカード(電子情報で構成され,ネットワークを介して送受信されるポストカード)で利用できるようにする程度の事柄は,当業者の周知技術にすぎなかったと認められる。そうすると,本件優先日当時,引用文献1記載発明に上記周知技術を適用することにより,当業者において相違点2を解消することは容易であったということができ,この旨をいう審決の判断に誤りはない。
 この点,原告は,引用文献1のサービスは美しい料理の写真を送ることを目的としており,サービス提供者側の装置が送信コンピュータから料理の写真を受信する構成に改める動機付けがないなどと主張する。しかしながら,引用文献2において既存の画像(ファイル)に加えてユーザが保有する画像ファイルをサービス提供者のサーバに送信し,後者の画像(ファイル)もデジタルのポストカードで利用できるようにして,ポストカード作成の自由度,サービスの利便性を高めることが記載されているように,ユーザの画像(ファイル)も利用可能\とすることでポストカード作成の自由度,サービスの利便性を高めることは当業者の常識に属する事柄である。したがって,引用文献1に接した当業者において,サービス提供者側の装置が送信コンピュータから料理の写真を受信する構成に改める動機付けに欠けるところはない。仮に引用文献1のサービスが美しい料理の写真を盛り込んだデジタルのポストカードの提供を長所の一つにしているとしても,当業者が引用文献1の料理の写真をユーザのコンピュータから送信(アップロード)される写真一般に改める上で阻害事由とまではならず,当業者にとってかように構\成を改めることは容易である。また,引用文献1ではユーザがメールアドレスやメッセージの入力欄に文字情報(テキスト)を入力したり,画像を選択したりして情報(データ)をサービス提供者側の装置に送信するが,前記のとおりの周知技術を引用文献1記載発明に適用したときにユーザのコンピュータからサービス提供者側の装置(サーバ)に送信されることになるのは,文字情報等に止まらず,画像等のデータ(ファイル)が含まれることが明らかである。結局,相違点2に係る構成に当業者が想到することが容易でないとする原告の主張は採用できない。\n

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平成24(行ケ)10149 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成25年01月30日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 上記(1) ア認定の事実によれば,本願発明は,バーコード等を利用した認証方法等に関するものであり,従来とは全く異なった方式で個人の身元確認等の認証を行うことができる認証方法等を提供することを目的とし,認証用のバーコードの付与を求める顧客が,認証装置に対して顧客の携帯電話から通信回線を介してバーコード要求信号を発すると,認証装置が発信者番号を受信し,認証装置で,受信した顧客の発信者番号が顧客データベースに記録されているか否かを判定し,受信した顧客の発信者番号が顧客データベース内に存在していた場合には,バーコード信号を,通信回線を介して,顧客の携帯電話に伝送するというものである。すなわち,本願発明は,被認証者(顧客)の携帯電話のバーコード要求信号に含まれる発信者番号と認証装置の顧客データベースに記録されている発信者番号との同一性の有無を確認することによるものであって,当該携帯電話を所持し,提示した者が,被認証者自身であるか否かを照合の対象とするものとはいえない。一般に,携帯電話は,顧客本人のものを使用する可能性が高いため,被認証者の携帯電話のバーコード要求信号に含まれる発信者番号と認証装置の顧客データベースに記録されている発信者番号とが一致すれば,当該携帯電話を所持し,提示した者が顧客データベースに記録されている者である可能\性が高いとはいえるが,他人に貸与することが全くあり得ないとまではいえないから(原告も,他人に貸与することが全くあり得ないことは前提としていない。),本願発明における個人認証は,生体認証のような高い正確性を前提とするものではないと解される。一方,上記(1) イ認定の事実によれば,引用文献1には,記録媒体は,紙及び携帯型記録媒体のうちの少なくともいずれか一方であり,携帯型記録媒体としては,フロッピーディスク,100MB以上の大容量磁気ディスク等のような磁気記録媒体,メモリーカード,ICカード,切手サイズメモリーカード,PCカード等のカード型記録媒体,光磁気,相変化等を記録した光記録媒体,手のひらサイズ等の超小型PC等の小型電子機器等を用いることが可能であること(【0019】,【0021】)が記載され,上記の「記録媒体」とは,通常ユーザー装置に含まれるものであって,必ずしもユーザー装置そのものではないが(【請求項1】,【請求項4】),これを認証のための技術的手段を搭載する媒体としてみるときには,上記の携帯型記録媒体は,本願発明の携帯電話と同様の技術的意義を有するものということができる。また,携帯電話通信回線を使用する場合のユーザー装置は必然的に携帯電話になると考えられるから,ここでは,ユーザー装置として携帯電話を使用することが開示されていると認められる(【0078】)。さらに,上記の携帯型記録媒体には,「手のひらサイズ等の超小型PC」のように,携帯電話と同様に一身専属性の高いものが含まれるといえる。加えて,引用文献1には,記録媒体が宿泊券という紙の形式で利用される場合が示され,この場合にも,乱数によって発生される数字列及び文字列の少なくともいずれか一方を用いたコード情報により第三者による券の偽造を困難にする方法(【0159】,【0160】),券に暗号情報を表\示する方法(【0162】),券発行装置から送信された暗号鍵で暗号化されたパスワード情報を紙に印刷する方法(【0163】)が示される。そうすると,引用文献1には,券の発行を受けたユーザーとの同一性の確認,すなわち個人認証の方法が記載されているから,引用発明においても,一身専属性の高い携帯型記録媒体を用い,上記のような個人認証の方法を行う場合,券の発行を受けた者が券を利用できる者「顧客」である可能性が高いとはいえるが,認証の正確性は,生体認証ほどではないと理解される。したがって,引用発明が,「前記券使用装置は,前記券発行装置から受信した前記照合結果に基づいて,前記ユーザーコード情報が記録されたユーザー装置の記録媒体を持参したユーザーがその記録媒体に記録された券情報の真の利用者であるか否かを判別し,・・・前記ユーザーは,当該券を利用できる『顧客』であり,かつ当該券の利用に当たって,その真の利用者であると認証されるものであり,」との構\成を備えるとした,審決の認定に誤りがあるとはいえず,個人認証を行う点について,本願発明と引用発明との相違点の看過があるとは認められない。これに対し,原告は,引用文献1の段落【0161】に,券を持参したユーザーに身分証明書等を提示してもらい,ユーザーの名前情報と身分証明書の名前とを比較して,券の正規の使用者であるか否かを確認する旨の記載があることから,引用発明では,個人認証はできない旨主張する。しかし,同段落は,引用発明の1つの実施形態を示すものにすぎず,上記のように,引用文献1の他の記載を参照すれば,引用発明においても個人認証を行い得ることが認められるから,原告の主張は理由がない。

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平成24(行ケ)10053 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年12月25日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について記載要件違反とした審決が維持されました。
 上記記載によれば,本願発明1の構成2において,「伝送ネットワークに,当該移動無線機器においてデータに対するメモリスペースを使用できないことを指示」することの主体は,移動無線機器であり,当該移動無線機器は,伝送ネットワークの記憶手段に中間記憶されたプッシュサービスデータの量を知り,それにより「当該移動無線機器においてデータに対するメモリスペースを使用できないこと」を検知し,このことを伝送ネットワークのネットワークコンピュータに指示するものと解される。しかし,本願明細書の発明の詳細な説明には,移動無線機器が,伝送ネットワークの記憶手段に中間記憶されたプッシュサービスデータの量を知り,「当該移動無線機器においてデータに対するメモリスペースを使用できないこと」を検知するための構\成及び方法について何ら具体的な記載はない。また,当該技術分野の技術常識を参酌しても,移動無線機器が,伝送ネットワークの記憶手段に中間記憶されたプッシュサービスデータの量を知り,「当該移動無線機器においてデータに対するメモリスペースを使用できないこと」を検知するための構成及び方法が,本願明細書の発明の詳細な説明の記載から当業者に自明な事項であるとも認められない。そうすると,本願明細書の発明の詳細な説明には,「伝送ネットワークに,当該移動無線機器においてデータに対するメモリスペースを使用できないことを指示」することについて,当業者が実施することができる程度に明確かつ十\分に記載されているとは認められない。したがって,本願明細書の発明の詳細な説明の記載は,本願発明1の構成2について,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十\分に記載したものであるとは認められない。

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平成23(ワ)3572 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年11月30日 東京地方裁判所

 コンピュータ関連発明の侵害事件について、「調査者側」の「サーバ」が「利用者側」の「利用者装置」を兼ねる形態まで、特許の効力が及ぶか、公知技術から無効かが争われました。裁判所は、明細書を参酌して、「調査者側」の「サーバ」が「利用者側」の「利用者装置」を兼ねる形態までは及ばないと判断しました。
 本件発明1−1の特許請求の範囲(請求項1)の文言と本件明細書1の「発明な詳細の説明」の前記(ア)の記載事項(図面を含む。)を総合すれば,本件明細書1には,1)従来,インターネットなどの通信回線網を介して提供される複数の番組を表形式に配列した番組表\には,各番組の詳細な内容を確認したり,希望する番組を録画予約したりできるものがあるが,このような番組表\の提供を受けた利用者が,番組表中からどのような番組を選んで視聴又は録画を行ったのかを知ることができなかったため,この種の番組表\を利用した視聴や録画がどの程度行われているのかを知りたいという要望があったこと(前記(ア)b,c),2)本件発明1−1は,この要望に応えることを課題とし,番組表を利用して視聴率及び録画率を調査することができる技術を提供することを目的とするものであり,この課題を解決するための手段として,「利用者側」から「調査者側」に送信されるデータに基づいて,「調査者側」で現在放送中の番組に対応する視聴指標及び録画予\約指標を算出し,上記視聴指標及び録画予約指標を「利用者側」に送信し,「利用者側」に表\示される番組表上の番組に対応づけられて上記視聴指標及び録画予\約指標が表示されるようにするために,「調査者側」の「サーバ」において,上記データ(視聴状況情報及び録画予\約状況情報)の受信手段,上記視聴指標及び録画予約指標の算出手段及び送信手段の各手段を備える構\成を採用し(前記(ア)c,d),これにより「調査者側」においては番組の正確な視聴率及び録画率を調査することができ,「利用者側」においては利用者が番組表上で番組の視聴率及び録画率を簡単にチェックすることができるという作用効果を奏するようにしたこと(前記(ア)j,k,n,p)が開示されているものと認められる。上記認定の本件発明1 − 1 の目的及び作用効果に照らすならば,「調査者側」が行う視聴指標及び録画予約指標の調査についてはその中立性ないし客観性を確保することは当然の要請であって,かかる観点からみると,「調査者側」が自ら行う調査の調査対象となることは不合理であるから,本件発明1−1においては,「調査者側」の「サーバ」が「利用者側」の「利用者装置」を兼ねること,あるいは「利用者側」の「利用者装置」が「調査者側」の「サーバ」を兼ねることは,想定されていないものと認められる。また,本件明細書1記載の実施例は,前記(ア)lないしpのとおり,「調査者側装置10」と「利用者側端末」とは,別個独立の装置構成として記載されている。もっとも,本件明細書1には,「調査者側装置10」が「複数のコンピュータシステムで構\成されていてもよい。」(段落【0070】。前記(ア)q)との記載があるが,上記記載を段落【0070】の他の記載箇所と併せて読むと,上記記載は,「本実施形態」では「調査者側装置10が1のコンピュータシステムによって構成されたもの」を例示したことを指摘した上で,「調査者側装置10」が,「1のコンピュータシステム」ではなく,「複数のコンピュータシステム」によって構\成し得ることを説明したものであり,それ以上に,「調査者側装置」が「利用者側端末」をも含めて構成し得ることまで述べたものと解することはできない。さらに,本件明細書1を全体としてみても,「利用者側」の「利用者装置」が「調査者側」の「サーバ」の機能\の全部又は一部を兼ねることができることの記載や示唆はない。
ウ 本件発明1−1の「サーバ」の意義
(ア) 本件発明1−1の特許請求の範囲(請求項1)の記載(前記ア)を基礎に,本件明細書1の記載事項(前記イ)を考慮すると,本件発明1−1の「サーバ」(構成要件1−1F)は,「利用者装置」(構\成要件1−1A)とは別個独立の装置であって,「利用者装置」が「サーバ」の機能の全部又は一部を兼ねるものとして「サーバ」に含まれることはないものと解するのが相当である。(イ) これに対し原告は,1)「サーバ」とは,一般的に「ネットワーク上で他のコンピューターやソフト,すなわちクライアントにサービスを提供するコンピューター。」を意味するものであり,本件発明1−1の特許請求の範囲(請求項1)は,本件発明1−1の「サーバ」の装置構\成について限定を付していないこと(以下「根拠1)」という。),2)本件明細書1の【0028】,【0029】,【0070】及び図1によれば,「調査者側装置10」及び「利用者側端末20」は,いずれも「インターネットに接続される周知のコンピュータシステム」であって,特に構成を異にするものではなく,「調査者側装置10」を複数のコンピュータシステムで構\成する場合,その一つのコンピュータシステムが,「利用者側端末20」と同様の周知のコンピュータシステムで構成されてもよいことが読み取れるから,本件発明1−1の「サーバ」は,「利用者装置」とは別異の構\成要素としての「調査者側」の構成要素である必要はないこと(以下「根拠2)」という。),3)本件原出願の出願時において,同一の機能又は異なる機能\を有する複数のコンピュータが協働してサービスを提供することは周知であり,「サーバ」の文言は,利用者側の端末を含み,複数のコンピュータからなる場合を含むものとして理解され,使われていたこと(甲34ないし43)(以下「根拠3)」という。)を総合すれば,本件発明1−1の「サーバ」は,「利用者装置」とは別異の構成要素でなければならないと限定解釈すべき理由はなく,この「サーバ」の機能\の一部を「利用者装置」が担ってもよいと解すべきである旨主張する。しかしながら,原告の上記主張は,以下のとおり理由がない。
a 根拠1)及び2)について
 前記アで述べたとおり,本件発明1−1の特許請求の範囲(請求項1)の文言上,「サーバ」と「利用者装置」とは,本件発明1−1の構成要素として別個のものであることは明らかであり,一方で,請求項1には,「利用者装置」が「サーバ」の機能\の全部又は一部を兼ねることができることを規定した記載やこれをうかがわせる記載はない。次に,前記イ(イ)で述べたとおり,本件発明1−1の目的及び作用効果に照らすならば,視聴指標及び録画予約指標の調査の中立性ないし客観性の確保の観点からみて,「調査者側」が自ら行う調査の調査対象となることは不合理であり,本件発明1−1においては,「調査者側」の「サーバ」が「利用者側」の「利用者装置」を兼ねること,あるいは「利用者側」の「利用者装置」が「調査者側」の「サーバ」を兼ねることは,想定されていないものと認められる。また,原告が指摘する本件明細書1の段落【0070】における「調査者側装置10」が「複数のコンピュータシステムで構\成されていてもよい。」との記載は,「調査者側装置」が「利用者側端末」をも含めて構成し得ることを記載したものではなく,本件明細書1を全体としてみても,「利用者側」の「利用者装置」が「調査者側」の「サーバ」の機能\の全部又は一部を兼ねることができることの記載や示唆はない。以上によれば,原告が主張する根拠1)及び2)の点は,本件発明1−1の「サーバ」の機能の一部を「利用者装置」が担ってもよいと解すべきことの根拠となるものではない。b 根拠3)について原告は,根拠3)に係る具体的な裏付けとして,1)特開平10−207945号公報(甲34)の【図2】,特開平10−247177号公報(甲35)の【図1】には,「サーバ」の文言は,ネットワーク上の複数のコンピュータから構成されるものも含むことが開示されていること,2)「情報システムテクニカルガイド 分散システムのための」(1995年6月30日発行)(甲36)の「(それに対して,ピア・ツー・ピア・モデルではどのプロセスでも相互作用を開始することができる)サーバは,他のサーバに要求を発行することでクライアントになることもありえる。…クライアントとサーバは,…同一のマシンで走ることもあれば,別々のマシンで走ることもある。」(282頁)との記載,特開平10−161777号公報(甲37)の段落【0001】,特開平10−154030号公報(甲38)の段落【0010】,【0014】,特開平9−138810号公報(甲39)の段落【0231】,特開平9−51398号公報(甲40)の段落【0028】,特開平9−73410号公報(甲41)の段落【0003】には,「サーバ」の文言は,利用者側端末と機能を兼ねるコンピュータにも使われることが開示されていること,3)特開平9−91220号公報(甲42)の段落【0004】ないし【0006】,特開平10−149270号公報(甲43)の段落【0012】,【0017】には,サーバ機能とクライアント機能\を兼ねる利用者側コンピュータを「サーバ」と呼ぶことが開示されていることを指摘する。しかしながら,原告主張の上記1)ないし3)に係る開示事項(甲34ないし43)は,「サーバ」の文言が,サーバ機能とクライアント機能\を兼ねるコンピュータ(端末)に使用されていることを示すものにすぎず,サービスを提供する側が管理するサーバコンピュータの機能の一部をサービスの提供を受けるユーザー側が管理する端末に持たせることで,ユーザー側に対するサービスの提供を可能\とする構成を開示したものではない。したがって,原告主張の上記1)ないし3)に係る開示事項(甲34ないし43)は,根拠3)の裏付けとなるものではなく,結局,根拠3)は,本件発明1−1の「サーバ」の機能の一部を「利用者装置」が担ってもよいと解すべきことの根拠となるものではない。\n

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平成24(行ケ)10167 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年10月31日 知的財産高等裁判所

 パチスロ機について、独立特許要件違反として訂正を認めなかった無効審決の取消訴訟です。知財高裁は、審判の判断を維持しました。
 原告は,丙1は,ビッグボーナスなるはボーナス当選した場合に遊技効果ランプを点灯開始させるものであるが,遊技効果ランプ点灯の有無を効果音の発生の有無に代えたとしても,効果音は1種類であって,音の種類により内部的当選の種類を知らせることは示唆されていないから,甲28発明に丙1の記載事項を適用する動機付けはなく,適用したとしても相違点4に係る構成にはならないと主張する。しかし,報知すべき役の種類が多ければ,それに応じて複数の効果音を用意すればよいことは,当業者にとって自明である。よって,丙1における遊技効果ランプ点灯の有無を効果音に代えた場合に,効果音が1種類となるとしても,そのこと自体は,甲28発明に丙1の記載事項を適用することを阻害するものとは認められない。原告は,丙1には,遊技効果ランプを点灯開始させることでビッグボーナスあるいはボーナス当選を報知し,リーチ音の発生によりビッグボーナスゲーム当選を報知することに何らかの技術的意義がある旨の記載はなく,甲28発明に適用する動機付けがないと主張する。しかし,遊技効果ランプを点灯開始させることでビッグボーナスあるいはボーナス当選を報知し,リーチ音の発生によりビッグボーナスゲーム当選を報知するということの技術的意義が,遊技効果ランプとリーチ音との組み合わせによる1つの入賞態様の特定にあることは,丙1にその旨の明記がなくとも,丙1に接した当業者であれば当然に理解できる。よって,丙1にその旨が明記されているか否かは,甲28発明に丙1の記載事項を適用することの動機付けの有無を左右するものではない。原告は,訂正発明9では,各列の可変表\示が順に停止して徐々に連動表示態様が判明していき,最後の列の可変表\示が停止して連動表示態様が確定することにより,入賞態様を報知するものであるが,甲28発明は,最初のリールが停止した時に入賞態様を報知するものであり,丙1は,2番目のリールが停止してリーチ状態になったときに報知するものであるから,甲28発明に丙1の記載事項を適用しても,相違点4に係る構\成とはならないと主張する。確かに原告が主張するように,甲28発明に丙1の記載事項を適用しても,訂正発明9のような「各列の可変表示が順に停止して徐々に連動表\示態様が判明していき,最後の列の可変表示が停止して連動表\示態様が確定する」という態様には至らない。しかし,可変表示開始時における報知の種類と,その後の,可変表\示停止時における報知の種類との組合せによって,1つの入賞態様であることが報知されることが容易想到である以上,可変表示停止時における報知をどのような態様で行なうかということに格別の困難性は認められない。可変報知時における報知として,各列の可変表\示の停止と連動した連動表示を採用することによって,連動表\示態様が徐々に判明するという作用効果があるとしても,それ自体は,予測可能\なものにすぎず特別顕著なものではない。

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平成24(行ケ)10083 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年10月10日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 引用例2(特開2000−224328号,甲11)によれば,引用発明2は,携帯電話機と一体をなす読取装置により,食品メニュー等に表示されたバーコードを読み取り(段落【0006】,【0007】,【0010】),バーコードに含まれるサーバーやデータベースのアドレスを送信すると(段落【0013】,【0015】),サーバーから携帯電話機に対して食品に含まれるエネルギー量などのデータが返信され,液晶パネルに表\示される(段落【0022】)装置であると認められる。また,引用発明2のサーバーは,商品たる食品の情報を管理し,これを携帯電話機に返信するためのものであるから,補正発明の「商品管理者」に相当するものと認められる。そして,引用発明1及び2は,いずれもバーコード読取装置と双方向の通信機能を備えた携帯端末を使用し,この携帯端末により物品等に表\示されたバーコードに含まれる情報を読み取り,双方向通信機能を利用して,他の装置との間でデータの送受信を行うシステムである点で共通しており,そのような基本的なシステムを前提として,読取り・送受信の対象たるデータの内容等の個々の構\成要素について,これらの発明の組合せにより変更することは,当業者が必要に応じて定める設計上の変更にすぎないというべきである。したがって,引用発明1に引用発明2を組み合わせ,商品管理者のアドレス等の情報を読み取って,情報の送信先とし,商品管理者から送信(返信)される情報を液晶画面に表示するという構\成とし,相違点eに係る補正発明の構成とすることは,当業者であれば容易になし得るといえる。さらに,双方向通信回線としてインターネット回線を使用することについても,文献を挙げるまでもない技術常識であるから,これを上記の構\成に適用して,PHS通信方式によるデータの送受信をインターネット回線を介した送受信に変更し,これに伴い,情報の送信先である商品管理者のアドレスをインターネット情報とすること,すなわち,相違点b,cに係る補正発明の構成とすることも,当業者が容易になし得たことである。
・・・・
原告は,審決が相違点dの判断に際して挙げた甲22公報(特開2000−222520号)について,インターネットを介して取得した画像を表示する点の開示がないと主張し,また,補正発明の構\成要素を一体として判断すべきである旨主張する。しかしながら,相違点dの構成が容易想到であることは,上記(3)イのとおりである。また,各相違点に係る補正発明の構成は,周知文献を挙げるまでもない程度の周知技術,技術常識であるか,設計上の変更にすぎないものであるから,審決が,相違点dと,相違点b,c,eの容易想到性をそれぞれに判断したことに誤りはない。\n

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平成23(ワ)27941 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年08月31日 東京地方裁判所

 アップルVSサムソンの特許侵害訴訟です。裁判所は、「ファイルサイズ」は,本件発明における「メディア情報」には該当しないとして、技術的範囲に属しない、すなわち、特許権侵害なしと判断しました。損害賠償のみで、差止請求はついてなかったんですね。
 上記記載によれば,本件発明は,従前のデータファイル等の一般的なファイルについて用いられていたファイル名や更新日などの情報の比較によるシンクロ方法には,シンクロが必要か否かの判定についての信頼性に課題があり,また,その処理が遅く非効率であったことから,特にメディアファイルについて,そのような課題を克服し,効率的でインテリジェントなシンクロを実現するために,上記のような一般的なファイルに備わるファイル情報ではなく,タイトル名,アーチスト名などの属性,あるいは,ビットレート,サンプルレート,総時間などの品質上の特徴という「メディア情報」に着目し,そのような「メディア情報」の比較に基づいて,メディアアイテムをシンクロする方法を採用した発明である,と認めることができる。
・・・・
 原告は,本件発明の「メディア情報」には,当然に「ファイルサイズ」が含まれるから,被告方法は構成要件G1及びG2を充足すると主張する。しかし,前記(1)ウのとおり,本件発明における「メディア情報」は,音楽,映像,画像等のメディアアイテムに特有の情報を意味すると解すべきところ,証拠〈略〉によれば,楽曲ファイル,ワードファイル及びエクセルファイルにおいて,「ファイルサイズ」は,ファイル名や更新日時といった項目と同列に扱われている一方,楽曲ファイルにおいては,「ファイルサイズ」はアーチスト,アルバムのタイトル,トラック番号,ジャンル,タイトル,長さ,ビットレート,オーディオサンプルレートといった楽曲に特有の情報項目とは区別された項目として分類されていることが認められるから,「ファイルサイズ」は,ファイル名やファイル更新日と同様に,ワードファイルやエクセルファイルなどの通常のファイルに一般的に備わるものであって,音楽ファイル等のメディアアイテムに特有の情報とはいえないというべきである。したがって,「ファイルサイズ」は,本件発明における「メディア情報」に該当しないと認めるのが相当である。

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平成23(行ケ)10302 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年07月26日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 すなわち,i)引用文献1には,主に手動で行うことを主眼としているものの,「これらのうちいくつかはワクチンソフトウェアに実装され,自動化されている。」との説明がされており,同説明部分は,自動化がされていることを前提とした記述であると解され,また,ii)引用文献1には,「モニタリング法」について,「メモリ常駐型ワクチン」であり,「プログラムのファンクションコールやAPIの呼出しを監視する」と説明がされており,同説明部分も,自動でリアルタイムの監視を行う場合を前提とする記述であると解され,さらに,iii)引用文献1には,「動的ヒューリスティック法」について,「モニタリング法に静的ヒューリスティック法を応用したもので,実行中のプログラムの危険性をより正確に判定する」と説明がされており,同説明部分も,モニタリング法が「実行中のプログラムの危険性」を判定する自動でリアルタイムでの監視であることを前提とする記述であると解される。そうすると,引用文献1の「モニタリング法」は実行中のプログラムを自動でリアルタイムに監視するものと解されることになり,原告の主張は採用できない。
(イ) 「ウィルスの発病」について原告は,「実行形式のファイルプログラム」と「マクロをもちうる文書ファイル」を同一視して一致点と認定した点には誤りがあると主張する。しかし,原告のこの点の主張も採用できない。確かに,引用文献1は,前記1(3)記載のとおり,「実行形式のファイルプログラム」と「マクロをもちうる文書ファイル」とを区別し,それぞれのコンピュータウィルスにより,感染や増殖の機能や機構\\が異なる趣旨の記載がある。しかし,感染や増殖の機能や機構\\において異なるコンピュータウィルスが存在する旨の記述は存在するが,引用文献1の「3.対策」の項では,「実行形式のファイルプログラム」と「マクロをもちうる文書ファイル」を区別して論じていない。異なるコンピュータウィルスのいずれであっても,プログラム又はマクロの実行前にはメモリ上にロードすることが必須であり,ロードに際してファイルI/Oを伴うことに関して相違はない。そうすると,両者について格別の区別をせずに一致点とした審決の認定に誤りはなく,原告の主張は採用できない。
(ウ) 「ファイルI/Oをフックすること」について 原告は,引用文献1の「OSの機能をフックする」との記載から「ファイルI/Oをフックする」と認定することは,誤りであると主張する。しかし,原告のこの点の主張も,以下のとおり採用できない。すなわち,一般に,「OSの機能\」は多数の機能を有するが(甲14,17),これらの「OSの機能\」の中に「ファイルI/O」を含むことは,自明であると解される。そして,プログラムファイルを実行するためには,通常,OSが当該プログラムファイルをメモリ上にロードすることが必要であり,ロードするに際して,当該プログラムファイルのI/Oを伴うことは当業者にとっては自明である。この点は,引用文献1に「PC内に侵入したウィルスは,そのプログラムコードが実行されるまでは何もすることができない。」,「COMやEXEなどの実行形式のプログラムに感染するウィルスの場合は,ユーザによって,もしくはOS(Operating System)やその他のプログラムによって起動されるのを待っている。」,「アプリケーションソフトウェアのデータファイル(文書)のマクロ部分に感染するウィルス(マクロウィルス)の場合は,そのマクロを含む文書が開かれるのを待っている。」と記載されていることからも,明らかである(これはシフトキーを押しながら文書をオープンする際も変わらない。)。そして,モニタリング法が「プログラムの実行前に」プログラムのファンクションコールやAPIの呼出を監視するとされていることからすれば,引用文献1でいう「OSの機能\をフックする」との記載は,OSの機能のうちプログラムの実行前に行われる機能\をフックすることを含む趣旨と理解するのが自然であり,上記の当業者に自明の事項を前提とすると,「OSの機能」には「ファイルI/O」が含まれることが自明であるといえる。以上のとおり,引用文献1の「OSの機能\をフックする」との記載に接した当業者は,「ファイルI/Oをフックする」ことを含むとものと理解するから,「OSの機能をフックする」との記載を「ファイルI/Oをフックする」ことを含むものとした審決の一致点の認定に誤りはない。\n

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平成24(行ケ)10001 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年07月11日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、発明の成立性なしとした審決が維持されました。
請求項1は、
 母音「イ」のローマ字表記を“i”と“y”の二字とし,カ行・ダ行・ラ行は,母音と組み合わせる子音を複数化する。ヤ行・ワ行はヤ行のイ段をのぞく全段において,y・wを母音の前に残し,外来語を考慮した「関連音表記」を持つローマ字表\。
です。
 特許法29条1項柱書は,「産業上利用することができる発明をした者は,次に掲げる発明を除き,その発明について特許を受けることができる」と定め,その前提となる「発明」について同法2条1項が,「この法律で『発明』とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と定めている。そして,ゲームやスポーツ,語呂合わせといった人間が創作した一定の体系の下での人為的取決め,数学上の公式,経済上の原則に当たるとき,あるいはこれらのみを利用しているときは,自然法則(law of nature)を利用しているとはいえず,「発明」には該当しないと解される。かかる見地から本件出願に係る請求項1〜3をみるに,そこに記載の事項は,いずれも,人為的な取決めないしは人間の精神活動のみに基づく取決めであって,自然法則を利用しているとはいえず,特許法2条1項,29条1項柱書にいう「発明」には該当せず,特許を受けることはできない。3 なお,原告は,本件出願に係る事項は,単語性という統合理念によって要請された取決めであり,人為的取決めではないなどと主張するが,本願請求項,明細書及び図面に記載の事項は,「仮名文字表記」と「ローマ字表\\記」という人間が創作した一定の体系の下で人間が定めた取決めないしルール(人為的取決め)にすぎないことに変わりはない。原告の上記主張は採用することができない。

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平成24(行ケ)10096 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年07月11日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、発明の成立性なしとした審決が維持されました。
請求項は、 【請求項1】
入札による一定条件下での選抜と任意抽選または条件付の抽選による土木・建築工事業者(以下,業者という)の選定方法に関するもの。
です。
 特許法における発明とは,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」(2条1項)ところ,ここにいう「自然法則を利用した」とは,単なる精神活動,数学上の公式,経済上の原則,人為的な取決めにとどまるものは特許法上の発明に該当しないものとしたものである。請求項1に記載の事項は,入札において一定条件による選抜と抽選を用いて業者を選定することをその構成とするものであって,全体として,人為的取決めに当たることは明らかである。原告は,確率論に基づく抽選が自然法則の利用に当たる旨主張するが,人為的取決めの中に数学上の法則によって説明可能\な部分が含まれているというにすぎず,上記事項が人為的取決めに当たるとする前記判断を左右するものではない。請求項2以下についても,原告が準備書面で主張するところをもってしても,上記判断を超えて,これら請求項記載の事項が人為的取決めではなく自然法則を利用したものに該当するとの判断に至ることはできない。このように,特許請求の範囲に記載の事項は,全体として人為的取決めであり,自然法則を利用したものということはできず,特許法にいう「発明」には該当しないのであって,審決の判断に誤りはない。

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平成23(行ケ)10228 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年06月13日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、引用文献に認定誤りを理由に、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 すなわち,上記(2)で検討したとおり,引用発明2において,音声出力手段による文章の読み上げが進む間,ディスプレイ手段の画面には,データ入力可能位置指標によって読み上げ位置が示されるだけで,データ入力可能\位置を指示するカーソルが別に表\示されるとは認められず,また,文章中の表記の誤りが検知され,操作者による停止指示があった時は,文章の読み上げが停止されるとともに,上記データ入力可能\位置指標は,少し戻されて停止され,その位置がデータ入力可能位置として示されるだけで,音声出力手段による文章の読み上げ位置を示すカーソ\ルが別に表示されるとは認められない。そうすると,引用発明2において,「入力可能\位置指標」は,「文書読み上げにおいて,読み上げ位置を指示し(本願発明の「音声カーソル」に相当する。)」ているとしても,文書読み上げにおいて,データ入力可能\位置を指示しているとは認められず,また,「両者は読み上げ中は同じ位置で連動させる連動手段を有し」,「停止指示がなされると所定の距離だけ離間して両カーソルが位置する」とも認められないから,審決における引用発明2の上記の認定には,誤りがある。そして,引用刊行物2の技術と同様,引用発明2は,単一のカーソ\ルを備え,このカーソルの機能\を,本願発明における「音声カーソル」としての機能\と「テキストカーソル」としての機能\とに選択的に切り替えるものである。
5 相違点に係る構成の容易想到性の判断について
 上記2で検討したとおり,引用発明1において,音響的に再生されている言語の強調表示(本願発明の「音声カーソ\ル」に相当。)とは別に,表示画面上の検出誤りがある言語にカーソ\ルが配置及び表示され,この言語を操作者が訂正できるとは認められず,また,引用発明1は「音声カーソ\ルと同じ位置で連動するテキストカーソル,あるいはテキストカーソ\ルと同じ位置で連動する音声カーソルを有して」いるとも認められない。そして,上記3及び4で検討したとおり,引用刊行物2の技術及び引用発明2は,いずれも,単一のカーソ\ルを備えるものであるから,テキストの編集に際してテキストカーソルを表\示することが本件優先日における周知技術であるとしても,音響的に再生されている言語の強調表示とは別に,表\示画面上の検出誤りがある言語にカーソルが配置及び表\示されない引用発明1と,単一のカーソルを備え,このカーソ\ルの機能を,本願発明における「音声カーソ\ル」としての機能と「テキストカーソ\ル」としての機能とに選択的に切り替える,引用刊行物2の技術及び引用発明2とからは,「表\示手段に表示される前記認識テキスト情報の誤ったワードにテキストカーソ\ルを配置及び表示し,ユーザにより入力された編集情報に従って前記誤ったワードを編集する」ようにし,「前記テキストカーソ\ルと前記音声カーソルとを同じ位置又は所定の距離だけ離間した位置に配置するため,前記表\示されたテキストカーソルを前記表\示された音声カーソルに,あるいは前記表\示された音声カーソルを前記表\示されたテキストカーソルに連動させる」本願発明の構\成とすることを,当業者が容易に想到し得たとは認められない。

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平成23(行ケ)10412 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年05月24日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。代理人無しの本人出願です。
 原告は,本願発明は,・・・との3つの技術が同時に働き,カタカナ英語を適切に処理することができるのに対し,引用例には,かかる技術が記載も示唆もされていない,また,本願発明は,カタカナ英語の濫用の抑制,カタカナ英語の使用方法の統一,日本人の平均的な英語のレベル向上との効果を奏するものであって,本願発明と引用発明では奏する効果も異なる,と主張する。しかし,本願発明に係る特許請求の範囲の記載は,前記第2の2記載のとおりであり,原告が主張する本願発明に係る上記技術事項及び効果は,特許請求の範囲の記載に基づかない主張であって,失当である。  

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平成23(行ケ)10229 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年03月28日 知的財産高等裁判所 

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。出願人はインターネット上でナビゲーションサービスを行っている会社です。
 原告は,引用例には「経路外れ地点に進入するリンクに対しては,コストを変更しないコスト変更手段」という特徴に到達するためにしたはずである示唆等が存在しないし,退出リンクを避けた経路は,利用者にとって避けたいルートであり,エリアとは「一定の領域」を意味するから,単なる経路にすぎない「退出リンク」を利用者にとって避けたいエリアと主張するのは,引用例で示唆されていない概念を不当に拡張するものであると主張する。しかしながら,引用例に「退出リンク」のみを逸脱リンクとして記憶する態様が記載されており,本件補正発明と引用発明が「経路外れ地点に進入するリンクに対しては,コストを変更しないコスト変更手段」において一致するとした点に誤りはない。引用例においては,ノードとリンクからなる経路を算出するものである以上,「エリア」が一定の領域の意味であるとしても「ノード」と「リンク」とによって表現されたものであるし,引用例に利用者が渋滞等が生じている経路を避けたい場合が記載されていないということはできず(【0003】【0022】),「利用者が避けたいエリア」は,渋滞等が生じている経路であるリンクを中心としたエリアを含むものである。イ 原告は,本件審決の一致点の認定が正しいとしても,本来の退出リンク(リンクID:n3)のリンクコストのみが高く設定され進入リンク(リンクID:n1)のリンクコストが変更されないとすると,進入リンク,ノード,リンク(リンクID:n2)に至る経路が探索され得ることになり,利用者にとって避けたいエリアに進入する経路が算出され,引用例に記載された発明の課題が解決されないこととなるから,上記発明から本件補正発明を容易に想到することはできないと主張する。しかしながら,引用例の記載によれば,「利用者が避けたいエリア」には,リンクとなる渋滞が生じている経路を中心としたエリアが含まれており,これを利用者が避けたい利用者に対してこの経路を避けることは,「利用者の事情を考慮した最適な目的地経路の算出」(【0005】)という引用発明の目的に合致する。よって,退出リンクのみを記憶する態様が引用例に記載された課題及び目的に反するものであるということはできないし,このことを根拠として本件補正発明が引用発明から容易に想到できないということもできない。

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平成23(行ケ)10265 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年04月09日 知的財産高等裁判所

 相違点4,5に係る構成に想到することは容易でなかったとして、進歩性違反無しとした審決が維持されました。
 本件明細書の段落・・・」との記載があり,他の実施形態についても同趣旨の記載がある。そうすると,本件発明2にいう「収集条件」とは,単に車両の「特定挙動」に関わるいかなる情報(データ)を収集・記録するかについての条件を意味するというべきであり,データレコーダの利用者(運転者)においてこの条件を任意に変更することができ,条件に係る数値(閾値)が記録媒体に記録される。他方,甲第1号証中の段落【0018】には,「表3はメモリカード3に記憶されるデータを示す表\である。・・・また,データ収集時における指示を予め設定しておくことによってサンプリング周期等を所望の値に容易に変更することができる。」と記載されており,表\3では,入力できるデータ項目として,「サンプリング周期」のほかに「データ選択指示」(サンプリングデータの要否選択データ)が掲げられている。そうすると,甲第1号証発明2にいう「データ収集時における指示」とは,車両の挙動に関わるデータ(交通事故発生時のデータを含む。)を収集・記録するのに先立って,データ収集装置の利用者が,データ収集・記録の周期(頻度)やいかなるデータを収集・記録するかにつき,設定・変更すること(指示)を意味するというべきである。そして,前記のとおり,本件発明1にいう「特定挙動に関わる情報」も甲第1号証発明1にいう「運行状態データ」も,例えば角速度のような車両の挙動ないし客観的状況を示すデータを主として指すもので,相違点1は実質的なものではないから,本件発明2にいう「収集条件」も甲第1号証発明2にいう「データ収集時における指示」も,車両の挙動ないし客観的状況を示すデータ(情報)を収集・記録するかについての条件である点において異なるものではない。そうすると,相違点3は実質的なものでないか,甲第1号証において,乗務員の車両運航を管理する固定局において「データ収集時における指示」を入力することが予定されており(甲1の段落【0017】),複数ないし多数の車両につき同一の条件で一括して「指示」をすることに繋がりやすいことを考慮しても,当業者において甲第1号証発明2に基づいて容易に解消できる程度のものにすぎない。(2) 前記のとおり,本件発明1においては交通事故の発生が必ずしも前提とされていないが,甲第1号証発明1のドライブレコーダとしての機能は,交通事故の発生を前提としており,記録媒体のデータを運転者の交通事故に繋がり得る操作(運転)の傾向を把握するために利用することは,甲第1号証中で記載されていないところ,かかる事情は本件発明2においても異なるものではない。そうすると,相違点4,5は実質的なものであり,また本件優先日当時,当業者において,甲第1号証発明2に甲第2号証に記載された発明を適用することは困難で,甲第3号証に記載された発明を適用しても,相違点4,5に係る構\成に想到することは容易でなかったというべきである。したがって,相違点3に係る構成は容易想到であるが,相違点4,5に係る構\成は容易想到でないから,本件発明2の進歩性を肯定した審決の判断に誤りはない。

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平成21(ワ)17848 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成24年03月26日 東京地方裁判所

 医療用画像解析ソフトに関して、技術的範囲外と認定されました。
 前記(2)ア(ア)ないし(ウ)のとおり,被告方法において,被告ソフトウェアは上記数式1及び2によりボリュームレンダリング処理を実行するものであるところ,上記ア(ア)の数式1の「V」は視線上の各ボクセルのCT値を,αは不透明度関数を,cは色関数を表すものであり,数式1は,視線上のボクセルにつき設定された色及びオパシティ値につき積算処理を行うものと認められるから,上記ア(ア)の数式1を用いて行う処理は,本件発明1の「空間座標点毎の前記色度および前記不透明度を該視線毎に互いに積算」するものに相当する。(イ) しかし,前記ア(イ)のとおり,被告方法においては,数式1の積算処理に関し,数式2による閾値の設定がされており,数式1の積算処理は,数式2で設定された閾値に達した時点で打ち切られるものと認められるところ,被告方法においては,上記計算打ち切り処理により,視線上のボクセルデータ中に,積算処理の対象とされないものが存在することが認められる。そうすると,被告方法は,「全ての」空間座標点毎の前記色度および前記不透明度を該視線毎に互いに積算するものに当たらないこととなる。
(ウ) したがって,その余の点について検討するまでもなく,被告方法は,構成要件1−Bを文言充足しない。これに反する原告の主張は採用しない。\n

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平成23(行ケ)10269 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年03月28日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が取り消されました。クレームも結構、興味深いです。
 本願発明は,複数のデバイスの間におけるデータの送受信を制御する手段として「電子計算機用インターフェースドライバプログラム」の構成を採用したものであり,第1デバイスと第2デバイス,これらに対応する第1デバイスドライバと第2デバイスドライバを構\成に含むものである。これに対し,国際公開98/47074号(甲2,翻訳文は甲3)及び滝口政光「超初心者のためのWindows NT デバイスドライバ入門」Interface1999年6月号(甲4)によれば,これらの文献には,カーネルモードで動作するファイルシステムドライバ,中間ドライバ,デバイスドライバが階層を形成し,I/Oマネージャが,それら階層化されたドライバ間のデータの受渡しを仲介する技術が開示されているものの,そこで示されるドライバは,電子計算機に接続された同じデバイスに対する入出力要求を処理するために階層化されているものであり,このような階層化されたドライバが一体となって対応する各別のデバイス相互の関係に相当するものではないし,さらにその複数のデバイスを制御するそれぞれのデバイスドライバ相互の関係を示すものではない。これらの文献には,複数のデバイスの間におけるデータの送受信を制御するに際し,I/Oマネージャにアプリケーションプログラムからデバイスドライバへのデータの送受信を行うための共通のインターフェース手段として電子計算機を機能させる技術は開示されていない。そうすると,甲2文献及び甲4文献に開示されたI/Oマネージャは,複数のデバイスの間におけるデータの受渡し(送受信)を仲介(制御)するものではないから,本願発明の「電子計算機用インターフェースドライバプログラム」には相当せず,このようなI/Oマネージャを引用発明に適用したとしても,相違点1に係る本願発明の構\成には至らない。また,引用発明は,上記2で認定したとおり,ユーザモードで動作する制御エージェントが複数のソフトウェア・ドライバ(デバイスドライバに相当する。)を相互接続するものであり,かつ,各ソ\フトウェア・ドライバ自体に,ドライバを接続するための「接続ピン・インスタンス」を形成し,これによりソフトウェア・ドライバを相互接続するという方式を採用するものである。被告は,引用例において,ソ\フトウェア・ドライバを相互接続する際にI/OマネージャやIRPを用いてデータを伝送する具体例が記載されている旨主張するが,その具体例においても,ユーザモードで動作する制御エージェントにより相互接続が行われるのであって,I/Oマネージャが制御エージェントに代替し得る関係にはない。そうすると,このようなユーザモードで動作する制御エージェントや「接続ピン・インスタンス」の形成による相互接続に代えて,カーネルモードで動作する本願発明の「電子計算機用インターフェースドライバプログラム」に相当する構成を採用することが,当業者にとって容易に想到し得るとはいい難い。\n

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平成23(行ケ)10182 審決取消請求事件(特許) 特許権 行政訴訟 平成24年02月21日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性否定されました。
 この点に関し原告は,「本願発明は,患者の問診情報を診察部門だけでなく管理,受付部門および待合室の端末機で利用することにより,例えば本願の願書に添付した明細書の段落【0023】に記載されているように診察の準備や優先的な誘導など診察までの手続などを効率よく行うことができるものであり,単に院内に多数の端末を設けて情報の使用を図るというものではないのに対して,引用例2に記載の発明では問診事項に特化したサーバの記載はなく,受付部門に端末がないことからも引用例2に記載の発明の端末機構を引用発明に適用しても本願発明の相違点1にかかる構\成とすることはできない」と主張する。しかし,本願明細書の段落【0023】の記載を考慮しても,本願発明は,端末機が「管理,受付部門,診察室および待合室にそれぞれ設けられ」,及び「入力された個人情報および受診情報(問診情報)は,医療機関のサーバへ送信されるとともに診察室に設置された端末機に送信される」との事項で特定されるにとどまるものであって,個人情報および受診情報が,管理,受付部門の端末機に送信されて,診察の準備や優先的な誘導などの診察までの手続を行うことまで特定されているとは認められない。

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平成23(行ケ)10155 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年02月15日 知的財産高等裁判所 

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 以上のように,引用例において,「注釈」が,「メモ」及び「ブックマーク」を含むものであって,電子的出版物の読者がドキュメント中の特定箇所(コンテキスト部分)に関連付けることが可能なものであり,かつ,もとの出版物(ドキュメント)とは別々に格納することができる点で「メモ」,「ブックマーク」及び「プレースマーク」と並列して記載されていることに鑑みると,引用例にいう「注釈」は,「メモ」,「ブックマーク」及び「プレースマーク」を包括的に代表\するものとして記載されているものと認められる。このように,引用発明にいう「注釈」は,これに対応するテキスト(コンテキスト部分)とコーディネートにより関連付けられており,かつ,「ブックマーク」を含む概念であるから,引用例には,そこにいう「注釈」(ブックマーク)に,前記アに認定の,ブックマークに関する当該技術分野における周知技術を組み合わせることについて示唆ないし動機付けがあるものといえる。ウ 以上によれば,引用例に接した当業者は,電子的に作成された文書の特定の部分に関連付けられた特定の情報(ブックマーク)をユーザが選択した場合に,当該特定の情報(ブックマーク)に関連付けられた当該文書の特定の部分が表示画面上に別個に表\示されるというブックマークに関する当該技術分野における周知技術を,引用発明にいう「注釈」に適用することで,ユーザがドキュメントとは別々に格納された注釈を選択した場合に,上記関連付けを利用して,当該注釈に対応するドキュメント中の特定箇所(コンテキスト部分)を,当該注釈と併せて表示画面上に別個に表\示することについて容易に想到することができたものというべきである。

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平成23(行ケ)10105 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年02月07日 知的財産高等裁判所

 画面の入力インターフェイスについて、進歩性なしとした審決が維持されました。
 上記記載によれば,画面表示部を有する情報処理装置において,メニューを文字又は画像の情報と重ねて配置して表\示することは,原出願の出願時(平成9年11月27日),当該技術分野においてほぼ周知の技術であったと認めることができる。
(4) 本願補正発明と引用発明との対比 前記(1)ないし(3)から本願補正発明と引用発明とを対比すると,両者の一致点及び相違点の認定並びに相違点(1)及び相違点(2)に対する判断は,審決の認定・判断(5頁9行〜7頁下8行)のとおりであって,本願補正発明は,引用発明及び甲2文献に示される周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものと認めるのが相当である。

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平成23(行ケ)10065 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年01月31日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 上記(1)認定事実によれば,PC,データ端末を用いて遠隔アクセスできるコンピュータ・ネットワーク装置によってアクセスするために,加入者の個人電話番号帳及び加入者の発信履歴と着信履歴等の加入者に関する電話番号情報をデータベースに記憶し,この電話番号情報の表示のためにコンピュータ・ネットワーク装置を遠隔アクセスすること,また,表\示された電話番号を指定することによって,指定された電話番号へ自動的に発信させること,及びデータ端末と電話端末との連携動作により,効率的かつ操作性に優れたオフィスワークやコミュニケーションが実現できることが,記載されている。そして,引用発明1は,利用者がデータ端末を操作して,このデータ端末とLANで接続され遠隔アクセスできるコンピュータに対し,上記データ端末と協調関係にある音声端末と他の音声端末とを接続するように要求を出し,上記コンピュータから二者間接続のメッセージを受けた交換機が接続を確立するものであるから,引用発明1において,利用者による上記データ端末操作を操作性に優れ,効率よく行えるようにすることは,当然に考慮されることである。そうすると,引用発明1において,データ端末とLANで接続され遠隔アクセスできるコンピュータに,加入者の個人電話番号帳及び加入者の発信履歴と着信履歴等の加入者に関する電話番号情報を記憶し,上記電話番号情報の表示のためにデータ端末から上記コンピュータに遠隔アクセスすることは,音声端末間の接続要求のためのデータ端末操作を操作性に優れ,効率よく行えるようにするために,上記の技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものと解するのが相当である。また,LAN(構\内通信網)上のサーバに情報を記憶しておき,ウエブ・ブラウザからサーバの該情報にアクセスして,ウエブ・ブラウザ上で該情報を表示することは,本願の優先日前において,当該技術分野における常識的な技術であると認められるから,引用発明1に上記の技術を適用する際に,コンピュータをウエブ・サーバとし,データ端末からLANで接続されたコンピュータへの遠隔アクセスに,ウエブ・ブラウザを用いることは,当業者が通常実施する手段といえる。以上によれば,引用発明1において,相違点2に係る構\成とすることは,上記周知の技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得たとした審決の判断に誤りはない。

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平成23(ネ)10013 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年01月24日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、知財高裁も特許権侵害でないとした1審判断を支持しました。
 上記記載によれば,本件各特許発明は,「券情報」と「発券情報」という2種類の情報を地上の管理センターから受ける場合,伝送される情報が2種になるために通信回線の負担が1種の場合に比べて2倍になってしまうとともに端末機の記憶容量と処理速度も2倍になってしまうという従来技術の問題点を課題として,これを解決すべく,管理センターに備えられるホストコンピュータにおいて,「券情報」及び「発券情報」に基づき,かつ,「座席管理地の座席レイアウト」に基づいて,1つの表示情報である「座席表\示情報」を作成し,これをホストコンピュータから座席管理地に備えられる端末機に伝送し,当該端末機が,これを入力して,その表示手段(ディスプレイ等)において表\示するという構成を採用することによって,前記ホストコンピュータから前記端末機へ伝送する情報量が半減され,通信回線の負担と端末機の記憶容量と処理速度等を軽減するとともに,端末機のコストダウンが図られ,本発明のシステムの構\築を容易にするという効果を達成した発明であると認めることができる。 したがって,本件各特許発明の「座席表示情報」とは,ホストコンピューターにおいて,「券情報」,「発券情報」及び「指定座席のレイアウト」といった個々の情報を1つの情報に統合することによって,これを端末機に送信すれば,端末機において他の情報と照合する等の格別の処理を要することなく座席の利用状況を表\示し,目視することができる情報と認めるのが相当である。
・・・・
前記認定のとおり,本件各特許発明の「座席表示情報」とは,ホストコンピューターにおいて,「券情報」,「発券情報」及び「指定座席のレイアウト」といった個々の情報を1つの情報に統合することによって,これを端末機に送信すれば,端末機において他の情報と照合する等の格別の処理を要することなく座席の利用状況を表\示し,目視することができる情報と認められるところ,前記(1)イで認定した被告システムの構成からすれば,被告システムにおいては,センターサーバーから車掌用携帯情報端末に送信される情報は,「編成パターン情報」と「座席・乗車券情報」という別々の情報であって,本件各特許発明における「座席表\示情報」に相当する情報,すなわち,「端末機において他の情報と照合する等の格別の処理を要することなく座席の利用状況を表示し,目視することができる情報」は,上記「編成パターン情報」と「座席・乗車券情報」を統合処理す ることによって車掌用携帯情報端末において作成されているから,被告システムはホストコンピュータにおいて本件各特許発明にいう「座席表示情報」を作成・記憶・伝送するものでなく,かつ,車掌用携帯情報端末は伝送された上記「座席表\示情報」を入力・記憶・表示するものではないと認められる。したがって,被告システムは,本件各特許発明の構\成要件1−Cないし1−H,2−Cないし2−Hを充足しない。

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◆原審はこちら。平成21(ワ)25303平成22年12月22日東京地裁

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 平成23(行ケ)10133 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成24年01月17日 知的財産高等裁判所 

 携帯電話端末のUI(CS関連発明?)について、限定的減縮違反、および新規事項であるとした審決が維持されました。
 甲6補正発明と本願補正発明とを対比すると,甲6補正発明では,通信機能の停止を維持しながら「時計機能\」,「電話帳機能」,「マイクによる音声を電気信号に変換する機能\」及び「スピーカによる電気信号を音声に変換する機能」を含む複数の機能\それぞれを選択可能としているのに対し,本願補正発明では,通信機能\の停止を維持しながら,上記「複数の機能」のうち「時計機能\」及び「電話帳機能」のみをそれぞれ選択可能\としたものであるから,本件補正により,通信機能の停止を維持しながら選択可能\な機能の一部が削除されていると認められる。そして,その結果,本願補正発明では,「時計機能\」及び「電話帳機能」以外の機能\について,どの機能を通信機能\の停止を維持しながら選択可能とするかは任意の事項とされることに補正されたといえる。そうすると,本件補正により,直列的に記載された発明特定事項の一部が削除され,特許請求の範囲の請求項1の記載が拡張されていることは明らかであるから,本件補正は特許請求の範囲を減縮するものとはいえず,「特許請求の範囲の限定的減縮」を目的とするものに該当するとは認められない。また,本件補正は,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しないことは明らかである。以上によれば,本件補正について,「平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。」とした審決の判断に誤りはない。
・・・・
 この点,確かに,本願の当初明細書等の上記各段落の記載からすれば,通信機能を停止させた際にも「制御部10」は「電源線22」から電力供給されて動作可能\な状態となっていることから,通信機能停止処理中であっても,「制御部10」が,電源が供給されている「中央処理装置4」,「記憶部5」,「入力部6」,「表\示部7」及び「停止認識部13」と協働して適宜必要な動作を実行することは自明であり,また,図1を参照すると,「マイク8」及び「スピーカ9」は「制御部10」に接続されているから,通信機能停止処理中であっても接続先の本体部(「制御部10」)に電源が供給されている限り使用可能\となり,協働して音声入力及び出力動作を実行し得ることは自明であると認められる。しかし,それは,通信機能停止時,「マイク8」及び「スピーカ9」には電源が供給され,「マイク8」及び「スピーカ9」も協働して音声入力及び出力動作を実行し得ることが自明であるというにとどまり,使用者が,「通信機能\の停止を維持しながら」,「マイクによる音声を電気信号に変換する機能」及び「スピーカによる電気信号を音声に変換する機能\」を適宜選択し,これらの機能を動作させることが本願の当初明細書等の記載から自明な事項であることを意味するものではない。そうすると,甲6補正は,本願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものとはいえないから,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものとは認められない。\n

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平成23(ネ)10056 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成24年01月16日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、非侵害とした原審が維持されました。
 本件特許発明の特許請求の範囲においては,(使用されている)「すべて」の市外局番及び市内局番という文言が用いられているのであって,範囲の広狭がある場合には,最も広い範囲を指すと解するのが自然であり,逆に,これを「調査対象となる一定の地域」に限定する記載はない。本件明細書(甲1,47)の記載をみても,【課題を解決するための手段】(段落【0009】)には,「調査対象となる一定の地域」の市外局番及び市内局番に限定する旨の記載はなく,唯一の実施例も,「ここまでは1台のパソコン1で北海道・青森県・秋田県・岩手県エリアの調査を行うと説明した。同様にして,全国の電話網をいくつかの地域に分割し,それぞれの地域にて全国の電話番号の調査を複数の地域に分散した複数のパソ\コンで分担実行する。そして,それぞれに担当した地域の前記調査リストを通信などを通じて1つに集約することで,全国的な広域の調査リストを作成できる。」(段落【0032】)と記載されるように,全国を対象として調査するものである。なお,控訴人が主張の根拠とする記載(段落【0011】〜【0013】,【0026】)は,全国を調査する一環として,ある地域を分担したパソコンによる調査方法を説明したものであって,控訴人の主張するような,一定の地域に限定して調査を行う旨の記載であるとは認められない。また,控訴人は,訂正審決が本件明細書の段落【0013】を根拠に訂正を認めたと主張するが,審決は,当該段落に加えて上記の段落【0032】も引用して訂正事項が当初明細書に開示されていると認定したのであり(甲47),控訴人の主張に沿う判断をしたものではない。さらに,本件特許発明の解決課題・作用効果についても,従来技術の2つの課題のうちの1つである「交換局の輻輳の問題」(段落【0006】)に対して,本件特許発明では,全国を複数のパソ\コンで分担調査することにより,コンピュータに近い交換局の輻輳が起きないという効果を奏する旨記載されているのであって(段落【0034】,【0039】),この点においても,全国の調査を前提とするものである。したがって,構成要件Aの「使用されているすべての市外局番および市内局番」とは,調査対象となる一定の地域において使用されているすべての市外局番及び市内局番を意味するという控訴人の主張は,採用することができない。そして,控訴人のその余の主張は,上記説示により排斥された解釈を前提として,一定の地域においては,被控訴人が調査対象としていない局番が存在せず,すべての局番を調査していることになるので,構成要件Aを充足しているというものであるから,その前提を欠くことになる。\n

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◆原審はこちらです。平成21(ワ)35411

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平成23(ネ)10049 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成23年12月08日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、控訴審でも、技術的範囲に属しないと判断されました。
 そして,前記(2)によれば,システム管理者が入力用データのファイルを作成する段階で,ネットワーク接続したイ号サーバシステムにおいては,各既存システム内に存在する製品に関する情報を,イ号ソフトの機能\を用いずに,各既存システムのアプリケーションなどを用いて部品情報テーブル,構成情報テーブル,属性情報テーブルで構\成される所定の形式に整理・記述して,入力用データのテキストファイル(CSV形式)を作成し,イ号ソフトをインストールしたサーバ内にコピーした後,イ号ソ\フトがその一部を専用のファイル形式にデータ変換し,イ号ソフトをインストールしたサーバ内にイ号データベースを構\築する方法を採用している。そうすると,ネットワーク接続したイ号サーバシステムは,画面表示手段によって製品の各部位を示す項目が部品表\に示された階層関係に従って画面に表示され,項目指示手段によって前記画面の任意の項目の表\\示部が指示されたうえで,その指示項目に対して登録する情報を所定の記憶領域に入力処理を行うものではないから,本件発明の構成要件Fに係る「入力処理手段」を備えていない。\n

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◆原審はこちらです。東京地方裁判所平成20年(ワ)第33440号

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平成23(ネ)10004 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成23年11月30日 知的財産高等裁判所

 用語「車載」が争われたナビゲーション特許について、原告は、控訴審で、均等侵害を追加しました。文言侵害については、1審と同じく否定され、均等侵害についても、置換可能でないとして、否定されました。
 原告の上記予備的主張は,控訴審において新たに提出された攻撃方法であり,時機に後れたものと評価されるべきであるが,その点はさておいても,原告の予\備的主張は,以下のとおり失当である。すなわち,本件各特許発明における「車載ナビゲーション装置」における「車載」の意義は,前記のとおり,車両が利用されているか否かを問わず,車両に積載されて,常時その状態に置かれていることを意味する。このような状態に置かれていることにより,ユーザは,ナビゲーションの利用を欲したにもかかわらず,持ち込みを忘れるなどの事情によって,その利用の機会を得られないことを防止できる効果がある。これに対して,被告装置は,前記のとおり,端末等は携帯(保持)されているものであるから,ユーザは,端末等を車内に持ち込まない限り,車両用のナビゲーション装置としては利用することができない。したがって,本件各特許発明における構成要件「車載ナビゲーション装置」を被告装置の「送受信部を含んだ携帯端末」に置換することによって,本件各特許発明が「ナビゲーション装置が車載されたこと」としたことによる課題解決を実現することはなく,本件各特許発明において「車載ナビゲーション装置」としたことによる作用効果が得られず,結局,本件各特許発明の目的を達することができない。以上のとおりであり,被告装置におけるユーザにおいて保持する本件携帯端末が,本件特許発明1の構\成要件1−A及び1−F,本件特許発明2の構成要件2−A及び2−H所定の「車載ナビゲーション装置」と均等であるとする原告の主張は採用できない。\n

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成21(ワ)35184平成22年12月06日東京地裁

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平成22(行ケ)10380 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月28日 知的財産高等裁判所 

 スロットマシン(CS発明)について、異なる構成は、課題解決に不可欠な構\成ではないとして39条違反はないとした審決を維持しました。
 特許法39条2項所定の「同一の発明」について,複数の発明相互の構成において,相違部分がある場合に,その相違点に係る構\成が,解決課題に対して,技術的な観点から何ら寄与しないと評価される場合には,複数の発明は,同一の発明と解すべきであるが,相違点に係る構成が,そのように評価されない場合には,特許法39条2項所定の同一の発明とはいえない。そこで,上記観点から検討する。甲18ないし甲20には,ぱちんこ遊技機において,当たりを表\示と音で報知することが記載されている。ぱちんこ遊技機では,ぱちんこ遊技機自体が所定時間後に自動的に事前に決定された当選フラグ役に対応した図柄で停止させる。これに対し,回胴式遊技機(スロットマシン)では,遊技者が停止ボタンを押して図柄を停止させる必要があり,停止ボタンを押すタイミングによって停止時の図柄が変化し得るから,遊技者はビッグボーナス当選の報知があるとビッグボーナス識別情報を揃えようと努力をするため,当該報知を行うことによる効果において,相違があると認められる。以上の事実に照らすならば,甲18ないし甲20の記載を考慮したとしても,ビッグボーナス役が内部当選していることを音で報知するとの技術が,スロットマシンの技術分野において,解決課題に対して,技術的な観点から何らの寄与をしないと評価されるような構成であると認めることができない。甲46には,スロットマシンの技術分野において,入賞が得やすい停止ボタンの操作時期を音と光で報知する技術が記載されている。しかし,甲46には内部抽選に関する記載がないことからすると,甲46のスロットマシンは内部抽選と引き込み制御を有するパチスロではなく,甲46にいう入賞が得やすいストップスイッチの操作時期とは,入賞を与える絵柄が揃うタイミングを意味し,ビッグボーナス役が内部当選しているという状態とは異なると認められる。したがって,甲46の記載があったとしても,ビッグボーナス役が内部当選していることを音で報知するとの技術が,スロットマシンの技術分野において,解決課題に対して,技術的な観点から何らの寄与をしないと評価される構\成であると認めることができない。甲9及び甲21の記載があったとしても,同様に,ビッグボーナス役が内部当選していることを音で報知するとの構成が,スロットマシンの技術分野において,解決課題に対して,技術的な観点から何らの寄与をしないと評価される構\成であると認めることができない。その他,原告は,縷々主張するが,いずれも,採用の限りでない。本件特許発明と特許第4058084号発明とは,特許法39条2項所定の同一の発明であるとはいえず,審決は同項に違反しない。

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平成21(ワ)35411 特許権侵害差止等請求事件 平成23年08月30日 東京地方裁判所

 CS関連発明について、特許権侵害でないと判断されました。文言侵害、均等侵害とも否定されました。問題となった文言は、「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる電話番号を調査対象とする」です。
 被告サービスが本件発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等であるか否かについて検討するに,平成10年最判は,特許請求の範囲に記載された構\成中に対象製品等と異なる部分がある場合に,なお均等なものとして特許発明の技術的範囲に属すると認められるための要件の一つとして,「対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない」こと(第5要件)を掲げており,この要件が必要な理由として,「特許出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど,特許権者の側においていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか,又は外形的にそのように解される行動をとったものについて,特許権者が後にこれと反する主張をすることは,禁反言の法理に照らし許されないからである」と判示する。そうすると,第三者から見て,外形的に特許請求の範囲から除外したと解されるような行動を特許権者がとった場合には,上記特段の事情があるものと解するのが相当である。
(3) これを本件についてみると,本件訂正がされた経緯は前記1(1)イ(イ)のとおりであり,原告は,本件訂正前の特許請求の範囲請求項1では,単に,「ISDNに接続したコンピュータにより回線交換呼の制御手順を発信端末として実行し」とされ,いかなる電話番号を調査対象とするのかについて特段制限は付されていなかったものを,本件訂正により,「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」電話番号を調査対象とするものに限定することを明記し,これにより,乙5資料等に記載された先行技術と本件発明との相違を明らかにして,乙5資料等を先行技術とする無効事由を回避しようとしたものであることが認められる。そうすると,原告は,本件特許発明について,本件訂正に係る訂正審判の手続において,被告サービスのように一部の局番の電話番号を調査対象としない構\成のもの,すなわち,調査対象電話番号が「使用されているすべての市外局番および市内局番と加入者番号となる可能性のある4桁の数字のすべての組み合わせからなる」ものでない方法が,その技術的範囲に含まれないことを明らかにしたものと認めるのが相当である。\n

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平成20(ワ)33440 特許権侵害差止等請求事件 平成23年07月12日 東京地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲外と認定されました。間接侵害はイ号ソフトをインストールしたサーバが技術的範囲外である以上、これについても否定されました。
 そして,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載と上記認定の本件明細書の開示事項を総合すれば,本件発明のデータ入力装置においては,部品表データベースに登録された部品表\を検索キーとし,「画面表示手段」(構\成要件D)によって上記部品表に示された製品の各部位を示す項目を階層関係に従って画面に表\示すること,「項目指示手段」(構成要件E)によって上記画面上の任意の項目を指示すること,「入力処理手段」(構\成要件F)によって上記指示のあった指示項目に対して登録する情報を所定の記憶領域に入力すること,「リンク設定手段」(構成要件G)によって上記入力された情報(登録する情報)に対して上記指示項目及びこれを含む上位の階層関係の項目をリンクさせる情報を付すこと,「メニュー表\示手段」(構成要件H)によって上記指示項目に対して入力する情報の用途別の種類が表\示されたメニューを画面に表示すること,「情報種類設定手段」(構\成要件I)によって上記メニューに表示された情報種類を選択することで,その選択された情報種類を,上記入力された情報(登録する情報)(本来の情報)に対して関連付けること,「情報登録手段」(構\成要件J)によって上記入力された情報(登録する情報)と,上記リンクさせる情報と,上記情報種類の情報とをデータベースサーバに送ってそのサーバ内の統合データベースに登録することを「一連の動作」として行うことができるようにしたことで,データ入力の負担を極力抑えて,各現場で発生する各種情報を誰でもが簡易に入力することができるようにするとともに,入力した情報を簡易に検索して利用できるようにしたことに技術的意義があるものと認められる。・・・そこで検討するに,ネットワーク接続したイ号サーバシステムは,前記(1)イのとおり,部品に関する情報がイ号サーバシステムとは別の複数の既存システムに保持されたまま各既存システムで個別管理され,かつ,その情報の入力・登録も各既存システムが有する入力手段・登録手段によって行われることを前提とし,これらの既存システムに保持された部品に関する情報の検索・参照を容易にすることを目的としたサーバシステムであって,クライアントの要求に従って,これらの既存システムに保持された部品に関する情報が整理・記述された入力用データをコピー及び一部データ変換してイ号サーバシステム内に構築されたイ号データベースを検索し,検索条件(文字列)に合致した部品の部品番号,部品名及び属性情報をクライアントの表\示装置に表示させ,更に指示された部品の上流又は下流にある部品の部品番号等を階層的に上記表\示装置に表示させる機能\(検索機能及び階層展開機能\)を有するものである。しかしながら,ネットワーク接続したイ号サーバシステムにおいては,上記検索機能及び階層展開機能\によりクライアントの表示装置(画面)に表\示又は階層的に表示させた部品の部品番号,部品名及び属性情報について,上記画面上の任意の項目を指示し,その上で,その指示項目に対して登録する部品に関する情報を所定の記憶領域に入力する「入力処理手段」(構\成要件F)を備えるものではなく,また,部品に関する情報を個別管理する既存システム内のデータベース及びイ号データベースのいずれに対しても,上記指示項目に対して登録する情報,上記指示項目と上位の関係の項目とをリンクさせる情報,及び情報種類の情報を登録する「情報登録手段」(構成要件J)を備えるものではない。\n

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平成22(行ケ)10185 審決取消 特許権 行政訴訟 平成23年04月18日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について進歩性なしとした審決が維持されました。
   確かに,審決は,対比に当たり,引用発明の「ウェブサーバー」及び「ホストコンピュータ」は,「後記する相違点はあるものの」本願発明の「コンピュータ」に相当する旨判断した上で,「通信ネットワークを介して端末と接続されたコンピュータ」が行う「中古車オークションにおいて商品の入札を受け付ける方法」のうちの「前記第一のオークションにおいて前記第一の取引が成立しなかった場合」である「一般の購買者が参加可能な販売」の「データ受付ステップ」における,購買者の端末からの購入の要求に係るデータを受け付けて記憶する処理,及びそれに続く「取引決定ステップ」における取引の処理について,「前記コンピュータ」,つまり商品の入札を受け付ける方法が行われる「通信ネットワークを介して端末と接続されたコンピュータ」が行う旨を一致点としているかのようにもみえる。しかし,他方で,審決は,「一般の購買者が参加可能\な販売」が本願発明では「オークション」であり,引用発明ではそうではない点を相違点2として挙げており,その相違点2の判断の具体的な内容として,引用例3を参照して,一般ユーザーを想定した中古車オークションを行うことのみならず,「中古車オークション」を行う「サーバ」が「データを受け付け」て「取引の成否を決定する」旨を含む技術を「引用例3記載事項A」として認定した上で,引用発明における「一般の購買者が参加可能な販売」に対して上記の「引用例3記載事項A」を適用することによって,相違点2に係る構\成が容易想到である旨を説示している。つまり,審決は,オークションを行うコンピュータがデータを受け付けて取引の成否を決定する点が相違点に含まれていることを前提とした判断を示している。これらの審決の記載を総合的にみれば,審決は,「一般の購買者が参加可能な販売」の「データ受付ステップ」における,購買者の端末からの購入の要求に係るデータを受け付けて記憶する処理,及びそれに続く「取引決定ステップ」において取引の処理を行うことを一致点とし,これらの処理を,本願発明では「前記コンピュータ」が行うが引用発明では「前記コンピュータ」が行わない点,つまり原告のいう「主体の相違」を相違点として整理した上で,その容易想到性を判断しているといえる。してみると,審決が上記主体の相違点を看過した旨の原告の主張は,審決を正解しないものである。\n

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平成22(行ケ)10239 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月14日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 以上によれば,情報処理システムにおいて辞書を用いたデータ変換処理を行う際に,検索時間の短縮化という効果を求める引用発明には,データの変換時ではなく,変換に先立って予めデータをメモリ上に展開しておくことで処理を更に高速化することができる周知技術を組み合わせることについて十\分な動機付けがある。なお,データをメモリ上に全て展開しておけば,高速処理が可能である反面,大きなメモリ容量が必要となり,メモリ展開にも時間がかかるようになることは,技術的に自明であって,当業者は,これらの得失を当然に勘案した上で周知技術の組合せを検討するものであるといえるから,この点において,上記の動機付けが妨げられるものではない。したがって,当業者は,前記周知技術に基づき,引用発明に対して相違点2に係る構\成を適宜に組み合わせることができるものというべきであり,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

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平成22(行ケ)10217 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年04月07日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について進歩性なしとの審決が維持されました。
 甲第1号証の段落【0015】には,「処理装置1」が店舗,事業グループのセンタ又は「VANセンタ」等に設置される旨が,段落【0022】には,「処理装置1」が店舗に設置されるか,大規模なシステムの場合には計算センタ,事務処理センタに設置される旨が,段落【0085】には,「キャッシュディスペンサなどの銀行端末に同様な機能を追加することにより,設備流用によるシステムコストの低減,銀行・店舗のタイアップよるサービスの強化を図ることができる。」との記載があるから,甲1発明の「処理装置1」をネットワークに接続することにより,ネットワークを通じて販売促進のためのサービスポイントの発行・管理の機能\を果たすことが,甲1発明においても除外されていないことは明らかである。また,前記のとおり,銀行の決済システムを構成するキャッシュディスペンサ等の銀行端末に,サービスポイントの発行・管理を行うという異種のサービスを提供する構\成を追加し得ること(段落【0085】)は,甲第1号証において銀行の決済システムの個性に着目した記載がされていないことにも照らせば,サービスポイントの発行・管理以外のサービスを提供する端末にサービスポイントの発行・管理の機能を追加し得ることを示唆するものであるところ,銀行端末は通常銀行が管理・運営するネットワークに接続されているから,これはさらに,サービスポイントの発行・管理以外のサービスを提供するネットワークにサービスポイントの発行・管理の機能\を追加し得ることも示唆するものである。ところで,本件出願当時,各加盟店に設置された端末をネットワークで相互に接続して,例えば売買代金の決済処理を行ったり,販売すべき物品の管理を行う程度のことは,当業者の技術常識ないし周知技術であったことが明らかである(甲第1号証の段落【0003】,【0004】,【0023】,甲第10号証(本件明細書)の段落【0002】,【0003】参照)。そうすると,審決が説示するとおり,甲第1号証においても,「加盟店ごとに設置された複数の加盟店端末を備えたネットワーク」に「処理装置1により点数の発行・集計を行うサービスポイントの点数管理システム」の機能を追加することが示唆されていると解して差し支えない。したがって,甲第2号証(特開平7−73247号公報)や甲第3号証(特開平7−210763号公報)で各加盟店に設置された端末装置とホスト装置とをネットワークで接続して,サービスポイントの発行・管理を行う構\成が開示されていることにもかんがみれば,本件出願当時,当業者において,甲1発明に基づいて,相違点1に係る構成に容易に想到することができたというべきであって,これと同趣旨の相違点1の構\成に係る審決の容易想到性の判断に誤りがあるとはいえない。
 イ この点,原告は,セキュリティ上の観点から,銀行端末に複数のネットワーク回線が接続されるとしても,接続しているネットワークを適宜切り替えるようにするのが常識的であり,顧客は銀行端末機能とサービスポイント点数管理機能\のいずれかを適宜選択して使用することになる等と主張する。しかしながら,仮に銀行の決済システムを構成する端末に高度のセキュリティ上の配慮が必要になるとしても,他のサービスを提供するネットワークを接続してはならなかったり,銀行の決済機能\とサービスポイントの発行・管理等の機能を一つの端末で同時に使用してはならないまでの理由はなく,単にセキュリティ上の格段の措置を講ずれば足りるから,原告の上記主張は失当である。\n

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平成22(行ケ)10202 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年02月17日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 原告は,本件補正発明と引用発明1とでは,目的,課題及び作用効果が相違しており,本件補正発明のように,Webページからメール作成画面に切り換えて表示するとともに,表示されていたWebページのURLを当該メールに貼り付け,メール送信完了後に先に表示していたWebページに表示を戻すことまでを含めた一連の制御を行うことは,引用発明1では想定し得ないと主張する。しかしながら,前記ア(イ)のとおりの引用発明2のWWWブラウザと電子メール送受信機能とを備える携帯電話は,WWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\とを実現する情報処理端末であるということができ,他方,引用発明1は,前記(1)ア(エ)のとおり,閲覧中のWebページのURL情報をメールに貼り付けて送信しようとするものであって,WWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\とを実現する情報処理端末であるコンピュータにおいて,これらの両機能を連係しようとするものである。そうすると,引用発明1におけるWWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\を実現し,これらを連係しようとするコンピュータに換えて,同じく,WWWブラウザ機能と電子メール送受信機能\を実現する情報処理端末である引用発明2の携帯電話のような携帯端末を採用することの動機付けが認められるものである。そして,このような引用発明において,携帯電話のような携帯端末を採用することによって,アンテナを介して信号を送受信する無線部が備わることになる。(ウ) また,前記1(2)の記載によると,本件補正発明は,簡単な操作で閲覧中のWebページのURLをメールに貼り付けて送信することができるようにして利便性を向上しようとするものである。これに対し,前記(1)ア(ア)及び(イ)のとおり,引用発明1は,閲覧中のWebページのURLを伝えるに際し間違いやすいことから,ほとんどのメールソフトに付いているアクティブURLの機能を利用して,閲覧中のWebページのURL情報をメールで送信するに当たって,Outlook ExpressやNetscape Messengerを使えば,ブラウザから直接URL情報をメールで送信でき,これによって,閲覧中のWebページのURL情報を簡単に送信することができるというものである。(エ) そうすると,本件補正発明と引用発明1とのいずれも,閲覧中のWebページのURL情報を簡単な操作でメールに貼り付けて送信しようとするものであって,その更なる動機が,本件補正発明では,ユーザは小さなキーを何度も押し下げる必要があり,煩雑な操作をしなければならず,不便であるとの問題点があったことであり,引用発明1では,WebページのURLを伝える場合の間違いを防ぐためであったこととの点において,仮にこれらが相違するということができるとしても,上記の閲覧中のWebページのURL情報を簡単な操作でメールに貼り付けて送信したいとし,それを実現しようとするものであるという点で,目的,課題及び作用効果が一致しているものということができる。

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平成21(ワ)25303 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年12月22日 東京地方裁判所

 CS関連発明について、非侵害と判断されました。  特許請求の範囲の記載及び前記アの本件明細書の記載からすれば,本件各特許発明における「座席表示情報」は,券情報及び発券情報に基づき,かつ,座席管理地の座席レイアウトに基づいて表\示するものとして,管理センターに備えられるホストコンピュータにおいて作成され,ホストコンピュータから座席管理地に備えられる端末機に伝送され,当該端末機が,これを入力して,その表示手段(ディスプレイ等)において表\示するものと解される。そして,端末機の表示手段における座席表\示情報の表示は,座席管理地の座席レイアウトに基づいて座席の利用状況を表\示するものであって,座席管理者が,各指定座席の利用状況を目視することができるものであると認められる。他方で,本件明細書には,端末機において,座席表示情報とそれ以外の他の情報とを処理することにより,座席のレイアウトに基づいて座席の利用状況を表\示して,各指定座席の利用状況を目視することができるものとすることに関する記載はない。以上のことからすれば,本件各特許発明における「座席表示情報」は,当該情報を端末機に表\示すれば,座席管理地の座席レイアウトに基づいて座席の利用状況が表示されるものであって,各指定座席の利用状況を目視することができるものをいうと解される。・・・これに対して,原告が主張する表\示構成情報とは,表\示イメージ情報を作成するためのものであって,それだけでは,座席管理地の座席レイアウトに基づいて座席の利用状況が表示され,各指定座席の利用状況を目視することができるものではないから,このような情報が,本件各特許発明にいう「座席表\示情報」に該当すると認めることはできない。

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平成22(行ケ)10126 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月28日 知的財産高等裁判所 

 CS関連発明について、無効審決が維持されました。
 ア 前記(1)アのとおり,UMLのクラス図や記号は周知の事項である。また,地物が,一般地物・基準地物・被覆地物に分けられ,一般地物が人為的地物・非人為的地物に分けられ,人為的地物が境界・人工物に分けられ,非人為的地物である自然地物のうち水部は,河川水涯線・河川水涯線一条・海岸線・湖沼に分けられること,行政境界に含まれる街区界が複数あること,道路が道路縁,道路路線,歩道自転車道,道路中心線,分離帯に分けられることなど,図5に示された事項は,地図の分野において周知のことといえる。また,図5に示されたように,オブジェクトである地物に属性があり,それが空間属性・時間属性などに分けられることも,地図の分野において当然に認識し得ることである。そうすると,本件発明1の相違点2に係る構成のうち第1の空間データベースのデータを特定する「オブジェクトをUMLクラス図とその属性データで管理する第1の空間データベースのUMLクラス図で規定されたオブジェクトのデータ構\造」との構成,及び第2の空間データベースを特定する「オブジェクトをUMLクラス図とその属性データで管理する第2の空間データベースを構\築する」との構成も,周知の事項から容易に想到し得るものであったと認められ,これらの構\成を,地物の図形データをその図形情報と属性情報で管理する引用発明のデータベースに適用することも,容易に想到し得るものであったといえる。
イ さらに,例えば,オブジェクトの一つである都道府県界が,都道府県コードとしての管理番号,都道府県名称,都道府県界の代表的な地点のXY座標を有するように,各オブジェクトがそれぞれに属性データ又は属性データに付随するデータを有するように構\成することは,地図の分野においては普通に行われることであると推認される。そうすると,本件発明1の相違点2に係る構成のうち第1の空間データベースのデータの特定に係る「オブジェクトの属性データ又は属性データに付随するデータを示すデータ定義」との構\成は,容易に想到し得るものであったといえる。ウしたがって,本件発明1の相違点2に係る構成は,容易に想到し得るものであったとした審決の判断に誤りはない。\n

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平成21(ワ)36145 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟平成22年12月03日 東京地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲外と認定されました。
 以上のとおり,本件明細書の上記イの記載及び図示は,上記アの文言解釈と整合するものであり,これらの記載及び図示を考慮しても,本件発明は,構成要件Bで生成された番組ディレクトリ(記録された番組の位置を含んでいる。)をそのまま構\成要件Dで表示するものであると解釈するのが相当である。・・・他方,被告製品については,「録画番組一覧表\」において,「記録された番組の前記ディレクトリ」に含まれる情報のうち「記録された番組のタイトル」を表示していることは認められるものの,「記録された番組の位置」を表\示しているとは認められない。すなわち,被告製品では,番組を記録する記録媒体として,先頭から順次アクセスするテープではなく,任意の位置にランダムにアクセスすることが可能なHDDを利用しているのであるから,「録画番組一覧表\」に表示されている順序は,HDD上での記録位置とは何らの関連がないものであり,その他,本件全証拠を検討しても,被告製品について,「記録された番組の位置」を表\示していることを認めることはできない。オ したがって,被告製品方法は,本件発明の構成要件Dを充足するものと認めることはできない。2 以上のとおり,被告製品方法は,本件発明の構成要件Dを充足するものと認めることはできないから,被告製品は本件発明の方法の使用に用いられる物ということはできず,その製造,販売が特許法101条5号のみなし侵害に該当するということはできない。\n

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平成21(ワ)35184 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟平成22年12月06日 東京地方裁判所 

 ナビゲーションサービスに対する特許侵害訴訟にて、裁判所は、車載用ではないとして、技術的範囲外と認定しました。また一部構成要件についても充足しないとして、間接侵害も否定しました。
 以上のような被告サーバー及び本件携帯端末の構成からすれば,被告装置においては,現在地及び目的地を入力・設定して,経路探索を行い,その結果をディスプレイに表\示してユーザーに伝達するために,被告サーバーと本件携帯端末が,それぞれ次の機能を分担しているものと認められる。・・・以上のとおり,被告装置は,被告サーバーと本件携帯端末とによって構\成され,両者がそれぞれ機能を分担してナビゲーション機能\を果たしていることから,このような被告装置が「車載ナビゲーション装置」ということができるか否か,すなわち,本件各特許発明における「車載ナビゲーション装置」が,複数の機器に機能が分担され,かつ,その機器の一部が車両に搭載されていないものを含むか否かが問題となる。・・・・証拠(甲22ないし25)によれば,「車載」という語の一般的な意義は,「車に積みのせること」をいうと認められる。また,弁論の全趣旨によれば,「装置」という語の一般的な意義は,「ある目的のために機械・道具等を取り付けること。そのしかけ。」をいい,一定の機能\を持ったひとまとまりの機器をいうと認められる。エ検討(ア) 前記ウの「車載」及び「装置」という語の一般的な意義からすれば,「車載ナビゲーション装置」とは,車両に載せられたナビゲーションのための装置(ひとまとまりの機器)をいい,ひとまとまりの機器としてのナビゲーション装置が車両に載せられていることを意味すると解するのが,自然である。そして,本件各特許の特許請求の範囲の記載のように,A,B,C,Dとの「手段を含むことを特徴とする車載ナビゲーション装置」というとき,「ナビゲーション装置」がA,B,C,Dという手段を備えるとともに,そのような手段を備えたナビゲーション装置が「車載」,すなわち,車に載せられていることが必要であると解するのが,その文言上,自然である。また,本件各明細書に開示されている「車載ナビゲーション装置」の構成は,前記イのとおり,各構\成要素から成る一体の機器としての「車載ナビゲーション装置」であって,被告装置における被告サーバーと本件携帯端末のように,車両内の機器と車両外の機器にナビゲーション装置の機能を分担させ,両者間の交信その他の手段によって情報の交換を行い,全体として「ナビゲーション装置」と同一の機能\を持たせることは開示されていない。したがって,各機器をどのように構成し,また,各機器にどのように機能\を分担するか,各機器間の情報の交換をどのような手段によって行うかについても,本件各明細書には何らの開示もされていない。さらに,本件各特許発明はナビゲーション「装置」に関する特許発明であるから,「装置」の構成が特許請求の範囲に記載された構\成と同一であるか否かが問題となるのであって,同一の機能,作用効果を有するからといって,構\成が異なるものをもって,本件各特許発明の技術的範囲に属するということはできないことはいうまでもない。以上のことからすれば,本件各特許発明にいう「車載ナビゲーション装置」とは,一体の機器としてのナビゲーションのための装置が車両に載せられていることが必要であり,車両に載せられていない機器は,「車載ナビゲーション装置」を構成するものではないと解される。\n

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平成22(行ケ)10071 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月27日 知的財産高等裁判所

CS関連発明について、進歩性なしとの審決が維持されました。
 原告は,本件補正発明には,i)自然な態様の表記による数式を,難解な記述言語を理解する必要なく容易に表\記できるという効果,ii)数学的に自然な表記による数式を,既存の文書編集アプリケーションで作成した書類に取り入れることで,同アプリケーションを資源として確保できるという効果,iii)数式の編集に要する時間が格段に短縮されるという効果がある旨を主張する。(2) しかしながら,引用発明は,アイコンテーブルからの選択により,通常用いられる表記形式による数学記号を指定して数式を入力するものであって,自然な態様の表\記による数式を,難解な記述言語を理解する必要なく容易に表記できるものであるから,前記i)の作用効果を備えているといえる。また,前記iii)の作用効果は,このような引用発明に周知技術を適用することで予想できる範囲内のものである。したがって,上記i)及びiii)に関して,本件補正発明の有する作用効果が格別なものであるとはいえない。また,前記ii)の作用効果については,そもそも本件補正明細書には何ら記載がないばかりか,例えば「ワード」に関する甲8技術からも予想できる範囲内のものである。\n

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平成21(ワ)5717 損害賠償請求事件 特許権 平成22年10月15日 東京地方裁判所

 ワープロソフトに対して間接侵害を主張しましたが、技術的範囲外として非侵害と認定(CS関連発明)
。  (1)で説示したように,本件特許発明における「文法辞書」とは,現代仮名遣いの文法規則並びに歴史的仮名遣いの文法規則及び各仮名遣いに対する漢字候補を統合的に登録した「ファイル」であり,「ファイル」として仮名漢字変換部によって参照されるものであるが,被告装置における文法辞書の一部である「活用語尾テーブル」は,ファイルα(ATOK21W.IME)に格納されているデータではあるものの,仮名漢字変換に当たり参照される際にはメインメモリ上に展開されており,「ファイル」として存在するものではないため,被告装置の仮名漢字変換部は,「ファイル」としての「文法辞書」を参照するものと認めることはできない。そうすると,被告装置は,本件特許発明の構成要件B〜Dの上記「『ファイル』として仮名漢字変換部によって参照される」「文法辞書」の構\\成を有しないものであるから,上記構成要件を充足するものとは認められない。\n

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平成21(行ケ)10400 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年10月13日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、新規事項か否かが争われました。知財高裁は新規事項とした審決を維持しました。
 ところで,前記1で判示したとおり,当初明細書及び図面には,ダウンロードページの細部項目メニュ画面中の使用案内ボタンをクリックした場合,使用案内ページのどの画面に移動するかについて,明確な記載が認められず,当初明細書及び図面の記載を総合すると,使用案内ページのモデルメニュ画面に移動すると解するのが,最も自然な画面移動であって,選択したパソコンモデルに対応した,細部項目のメニュ画面やグラフィック情報及びテキスト情報を提供する画面などに直接移動することを示唆する記載は,当初明細書及び図面には見当たらない。また,ダウンロードボタンをクリックした場合も,ダウンロードページのモデルメニュ画面に移動すると解するのが,最も自然な画面移動であって,当初明細書及び図面には,選択したパソ\コンモデルに対応した他の画面に直接移動することを示唆する記載も見当たらない。したがって,上記の補正事項を実現するために,前記のような直接的な画面移動を実現することは,各種のサービスページに共通して,選択されたパソコンモデルの種類を認識・保存するとの技術的事項を導入するものであり,また,移動メニュの同じサービスページのボタンであっても,そのボタンが設けられている画面(又はその表示内容)によって,ボタンをクリックした場合の移動する先の画面又はその表示内容が異なるという技術的事項を導入するものであるから,当初明細書及び図面に記載された事項ではなく,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるということはできない。\n

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平成21(行ケ)10418 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年09月30日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について進歩性なしとした審決が維持されました。
 原告は,周知技術1は,キャラクタを動き回らせることが可能なゲーム空間のような仮想空間でなく,2次元画像である掲示板やチャットの画面に貼\り付けるものであり,引用発明のようにキャラクタがゲーム空間を動き回ることを想定したものではなく,周知技術1を引用発明に適用する動機付けや根拠が存在しないと主張する。しかし,原告のこの点の主張も,採用できない。確かに,原告主張のとおり,周知技術1は,アバターを2次元画像である掲示板やチャットの画面に貼り付けるものであり(甲3),引用発明のようにキャラクタがゲーム空間を動き回ることを想定したものではない。しかし,甲3には「自分の分身であるアバターを設定し,ネット上に持てるのが特徴だ。」,「アバターは(中略)自分と似せてもいいし,奇抜にして目立つのもいい。」との記載があることから,周知技術1における「アバター」は,ユーザ本人を象徴し,その分身としてユーザの代わりを務めるキャラクタ画像をいうものであることと理解できる。そして,引用発明のキャラクタはゲーム上でユーザの代わりを務めるものであり(引用例の段落【0025】),仮想空間上でユーザ本人の代わりを務める点で,周知技術1のアバターと共通するから(甲3),引用発明に周知技術1を適用する動機付けや根拠が存在するというべきである。原告の主張は,採用の限りでない。\n

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平成21(行ケ)10283 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年09月30日 知的財産高等裁判所

 パチスロ機発明(CS関連発明?)について、訂正要件違反無し、無効理由無しとした審決が維持されました。
 原告は,訂正事項6(A)について,審決のようにエリア4からエリア1までを順次チェックして最初にハズレとなる回をリーチ目に変更するものと解釈すると訂正事項6(B)の記載と重複し,訂正事項6(A)が無意味な記載となるから訂正目的違反に当たる旨主張する。しかし,訂正事項6(A)と訂正事項6(B)の記載に一部重複する部分があるとしても,これらはいずれも事前報知を行う場合を限定するものであり,重複記載により特許請求の範囲を不明確にするものでもないから,訂正事項6(A)が訂正目的違反に当たるということもできない。なお,原告は,審決引用部分Aの記載はエリア4が当たり(特定の識別情報に対応する表示結果)の場合について説明したものであるのに対し,訂正事項6(A)はエリア4が当たりでない(特定の識別情報に対応するものでない表\示結果)場合の記載であること,審決引用部分Aの記載は,明細書の記載からはほとんど想定できない実施例であること,審決引用部分Aの記載に従うと,エリア3ないしエリア1のデータは,打玉の始動入賞領域への入賞により生成された表示結果決定用データではない場合にも,再度リーチ目表\示用データに変更されることになり,打玉の始動入賞領域への入賞により生成された表示結果決定用データがハズレか否かを判定するという訂正事項6(A)の構\成となっていないことから,審決引用部分Aの記載に基づき訂正事項6(A)が新たな技術事項の導入に当たるか否かを判断することは誤りである旨主張する。しかし,審決引用部分Aには,常にエリア4の停止図柄データをリーチ目表示用の停止図柄データに変更するように構\成することに代えて,エリア4に記憶されている停止図柄データが当たりであった場合にはエリア4をリーチ目表示用の図柄データに変更することなくエリア3からエリア1を順次チェックすることが記載されているのであって,エリア4が当たりでない場合はエリア4により事前報知を行うことも記載されているから,審決引用部分Aの記載を根拠として,訂正事項6(A)が新たな技術事項の導入に当たらないとした判断に誤りはない。また,エリア4に記憶されている停止図柄データが大当たり又は中当たりの値であった場合には,エリア3にはハズレのデータではなく,既にリーチ目表\示用の図柄データに変更されたデータが入っている可能性が少なくない(エリア2及びエリア1についても同様)としても,そのことと新たな技術事項の導入に当たるか否かとは無関係であり,これをもって審決引用部分Aの記載から訂正事項6(A)が新たな技術事項の導入に当たらないとした判断が誤りであるということもできない。\n

◆判決本文

◆関連事件です。平成21(行ケ)10282

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平成21(行ケ)10408 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年08月19日 知的財産高等裁判所 

 CS関連発明について、公知文献から進歩性が無いとして訂正を認めなかった審決が維持されました。
 そうすると,引用発明では,送出部に要求番組がない場合には,番組ライブラリから送出部に要求番組を転送してコピーしながら,それを第1の受信者に送出するのであるから,要求番組をコピーし始めた当初においては,要求番組の先頭部分しかコピーされていないことになり,この状態において,第2の受信者から同じ番組に対して,途中から番組情報を見たいという要求,特に番組の後半の部分を見たいというような要求があった場合には,その要求には応えられず,結局,第2の受信者から同じ番組に対して途中から番組情報を見たいという要求があったとしても,要求番組のコピー済みの部分からしか提供できないことは明らかであり,このコピー済みの部分が,コピー開始からの経過時間に応じて徐々に増加していくことも明らかである。したがって,引用発明において,読出開始位置が,「一連のデータの書込領域への書込開始からの経過時間に応じて設定される読出可能な範囲内」となることは,刊行物1の記載から自明な事項であって,訂正発明5は,引用発明及び刊行物1に記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとした審決の判断に誤りはない。\n

◆判決本文

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平成21(行ケ)10394 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年08月19日 知的財産高等裁判所 

CS関連発明について、進歩性なしとの審決が維持されました。

◆判決本文

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平成21(行ケ)10293 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年07月28日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明(?)について進歩性なしとした審決が維持されました。
 先に指摘したとおり,引用例1には,番組表に表\\示される情報の種類及び量を増加させるという技術課題が示されているものということができる。そして,かかる課題を解決するために,限られた表示領域に,より多くの情報を見やすく一覧表\示するために,情報の項目に対応する一部の情報を項目自体の表示位置に表\示せず,当該項目が選択された際など,必要に応じて参照できるように当該項目自体とは異なる位置に表示する周知技術を適用し,選択されたセルに関連付けられている項目に対応する番組説明情報を,選択されたセルが配置されているモニタースクリーン上の領域とは異なるモニタースクリーン上の領域に表\示するように構成することは,当業者が容易に行い得たことと認められる。\n

◆判決本文

◆関連事件です。平成21(行ケ)10294

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平成22(ワ)4486 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年07月08日 大阪地方裁判所

 CS関連発明(?)について、技術的範囲外であるとして非侵害と認定されました。

◆判決本文

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平成21(行ケ)10222 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年06月29日 知的財産高等裁判所

CS関連発明について、記載不備があるとの審決が取り消されました。
 この点について,被告は,本願発明における「発明を展開している度合いを示す」という記載が明確でない旨主張する。確かに,被告が指摘するとおり,クレーム中の用語「発明を展開している度合い」だけを,単独で解釈すれば,用語の定義が不明確であるとする余地があるともいえないわけでない。しかし,「発明を展開している度合いを示す発明展開度」との請求項2の記載を,全体として解釈すれば,各用語(「発明」,「展開」,「度合い(度)」)の対応関係から,この部分は,本件独自の用語である「発明展開度」を,単に分かりやすく言い換えて説明しているにすぎないと認めるのが自然である。したがって,「発明を展開している度合いを示す」という記載のみを取り出して,それが不明確であるということは適切ではなく,上記のとおり解釈すれば,「発明を展開している度合いを示す」との記載が含まれているとしても,別段請求項2の記載が不明確であるとはいえない。

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平成21(行ケ)10310 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年06月16日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性違反理由無しとした審決が維持されました。
 原告は,本件発明1は複数ユーザの個人認証に限定されるものではないから,引用発明1における「URL」は,本件発明1の「管理マスタID」に相当すると主張する。しかし,上記(1)イ,ウのとおり,本件発明1の「管理マスタID」は,複数のユーザが存在することを前提に,第1のシステムのユーザと第2のシステムのユーザとを関連付けるために,ユーザごとに設定されたユーザ固有の識別コードであるのに対し,引用発明1の「URL」は,複数のユーザが存在することを前提としているともいえないし,ユーザごとに設定されたユーザ固有のものともいえないから,引用発明1における「URL」が,本件発明1の「管理マスタID」に相当するということはできない。

◆判決本文

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平成21(行ケ)10321 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について新規事項、不明瞭であるとした審決が取り消されました。
 前記当初明細書の記載によれば,サーバ及び端末がそのハードウエア構成として中央処理装置(CPU)を有すること,CPU312は,データの処理又は演算を行うと共に,バス311を介して接続された各種構\成要素を制御するものであること,サーバ又は端末のCPUの処理や制御により図37(A)〜(D)の処理を行うことが示されている。このように,当初明細書においては,サーバ及びその端末の構成が共通性を有するものとして記載されており,補正明細書の各請求項の冒頭に記載された「コンピュータを用いたゲーム情報供給装置であって」との部分は,サーバと端末を含んだ全体の構\成を意味するものと解するのが合理的である。・・・そうすると,当初明細書には,「ゲーム情報供給装置」において,サーバが,「ネットワークを介して端末装置からのアクセスを受信すると,前記記憶手段からクイズ形式の広告情報を読み出して前記端末装置に送信し表示させる表\示手段」を有するとの技術事項が記載されていると解すべきである。本件補正が,当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないとした本審決の判断は,誤りである。

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平成21(行ケ)10163 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年04月28日 知的財産高等裁判所 

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 上記記載によれば,引用例1に記載された発明(引用発明1)の半導体製造装置は,半導体製造ラインの進捗管理及び工程管理において,工程管理用電子ファイルの作成及び管理を容易にすることを基本的な課題とし,そのために次の構成を備えたものであることが認められる。・・・そして,引用発明1は,上記構\成を備えることにより,管理部署と半導体製造ライン間における工程管理情報の作成が容易になる,複数の設備群管理計算機と複数の部署別管理計算機との間の電子ファイルの流れを効率良く管理できる,半導体製造ライン及び管理部署のハード構成並びにプログラムの簡素化を図ることができる等の効果が得られるものである。・・・・そこで検討するに,引用例1には,前記のとおりの技術的事項が記載されているところ,半導体製造ラインシステムの複数の設備群管理計算機及び製品管理計算機は通信回線により情報転送可能\に接続されており,管理部署システムの複数の部署別管理計算機も通信回線により情報転送可能に接続されている。また,電子ファイル管理計算機は,半導体製造ラインシステムと管理部署システムとを接続し,複数の設備群管理計算機と複数の部署別管理計算機との間の送受信先を指定してそれぞれの電子ファイルの情報転送を管理する機能\を備えることから,電子ファイル管理計算機と半導体製造ラインシステムとの間,及び電子ファイル管理計算機と管理部署システムとの間にも,情報の転送を行う通信回線が存在するということができる。そして,計算機を通信回線により情報転送可能に接続する場合,送受信機能\を有する装置を介在させることは,コンピュータネットワークの技術分野における技術常識といえる事項であり,電子ファイル管理計算機,管理部署システムの部署別管理計算機,半導体製造ラインシステムの設備群管理計算機及び製品管理計算機は,いずれも通信回線により情報転送可能に接続されているのであるから,それぞれ送受信機能\を有する装置,すなわち「送信・受信装置」を介して情報転送可能に接続されていると認めることができる。」\n

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平成18(ワ)28244 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年03月25日 東京地方裁判所

 パチスロ機の特許について、技術的範囲外と判断されました。
 以下,構成要件1Hの共通報知の解釈について,本件明細書1の記載を考慮しつつ検討する。
ア 本件発明1に係る特許請求の範囲の記載によれば,構成要件1Gにおいて「前記可変表\\示開始手段によって前記可変表示が開始され,前記可変表\\示停止手段によって前記可変表示が停止される1回の遊技の中で,前記入賞態様決定手段で決定された入賞態様に対応した報知情報を所定確率で遊技者に報知する報知手段を備え」と定め,これを受けて構\\成要件1Hは,構成要件1Gの「入賞態様に対応した報知情報」を共通報知とその後の報知からなるものに限定するものであることは明らかであり,そうすると,2つの異なる報知態様の各組合せが入賞態様に対応していることが必要であると解される。そして,ハズレを含むすべての入賞態様に共通する演出については,その後の報知と合わせた報知全体として入賞態様の絞り込みが行われたとしても,それはその後の報知が入賞態様に対応していることによる結果にすぎず,ハズレを含むすべての入賞態様に共通する演出とその後の報知との組合せが入賞態様に対応しているとみることは困難である。そうすると,共通報知というためには,それ単独であっても,入賞態様を絞り込むことのできる情報を有していなければならず,ハズレを含むすべての入賞態様に共通する演出のような入賞態様を絞り込む情報を有しない演出については,共通報知に当たらないものと解するのが自然である。・・・上記のとおり,本件明細書1及び図面中には,遊技開始時に鳴る2種類の遊技開始音と,その後の各リール停止時における複数のリールランプ消灯パターンの組合せに対応して報知当選フラグが割り当てられ,「遊技が進行して行くのに伴って入賞態様が判明して行く」ものが開示されており,共通報知もそれ単独で,入賞態様の絞り込みができるものとなっている。また,発明の効果について「報知は各入賞態様に対して行われるため,例えば,停止ボタンの操作等が容易に行えるようになる」とし,これは共通報知により入賞態様について一定の絞り込みがされることを前提とした記載であると解される。このような本件明細書1及び図面の記載に鑑みても,共通報知というためには,それ単独であっても,入賞態様を絞り込むことのできる情報を有していなければならず,配当のない当選役(ハズレ)を含むすべての入賞態様に共通する演出のような入賞態様を絞り込む情報を有しない演出については,共通報知に当たらないものと解するのが相当である。・・・・以上のとおり,被告物件の各演出は,いずれも,共通報知を備えないか,又は,共通報知を備えていても,その後の報知を備えないものであるから,被告物件は,構\\成要件1Hを充足するものと認めることができず,本件発明1の技術的範囲に属するものということはできない。・・・・,本件発明2は,報知態様を遊技状態及び当選フラグを参照して選択するとされていたものを,現在の特許請求の範囲のとおり訂正されたのであって,この訂正は,遊技状態及び当選フラグを参照する方法について,これらの変数からなるデモ抽選テーブル選択テーブルを参照してデモ抽選テーブルを選択し,抽選値と乱数値を演算する方法に限定することで,特許請求の範囲を減縮するものである。すなわち,構成要件2Eは,報知態様を遊技状態及び当選フラグを参照して選択するという機能\\を果たすために,その計算処理過程を具体的に規定するものということができる。論理的には,遊技状態及び当選フラグの組合せごとにテーブル番号が割り当てられた表(デモ抽選テーブル選択テーブル)と,抽選値に報知態様が割り当てられた表\\(デモ抽選テーブル)とを1つの表に統合することは可能\\であり,かつ,これらのテーブルは,遊技状態,当選フラグ及び乱数という3つの変数によって報知態様を決定するという1つの機能を果たしていると見ることが可能\\なものである。そうであるにもかかわらず本件発明2において,デモ抽選テーブル選択テーブルとデモ抽選テーブルを別個のテーブルと位置付けていることに照らすと,本件発明2における「テーブル」は,論理的又は機能的に見て該当性を判断するのではなく,複数の変数から1つの値を抽出するための表\\を指し,あるアドレスの範囲において複数の変数から1個の値が抽出され,その抽出された値と他の変数を用いて別のアドレスの範囲において別の値が抽出される場合は,それぞれが別個のテーブルであるというべきである。以上のような解釈を前提とすると,原告が「デモ抽選テーブル選択テーブル」に当たると主張する被告物件の2つのアドレス範囲(アドレス0EC3C74Hないし0EC3F8BH及びアドレス0EC3180Hないし0EC3C73H)は,これを一体として本件発明2における「テーブル」に当たるとは評価することができず,被告物件が「デモ抽選テーブル選択テーブル」を具備するものと認めることはできない。エ また,2つのアドレス範囲を一体として「テーブル」と評価することができないことを措いたとしても,以下のとおり,被告物件は,構成要件2E−1を充足するものとは認められない。・・・以上のとおり,被告物件が「デモ抽選テーブル選択テーブル」を具備するものと認めることはできないから,その余の点について判断するまでもなく,被告物件は,本件発明2の技術的範囲に属するものということはできない。\n

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平成21(ネ)10055 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年03月30日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明(?)についての侵害訴訟の控訴審です。1審後に訂正審決がなされましたが、訂正後の発明に対して技術的範囲外と判断されました。
 当裁判所は,被告製品は本件訂正発明の構成要件gの「選択手段」を具備せず,また,被告製品は,本件訂正発明の均等物ではないと判断する。その理由は,以下のとおりである。・・・本件訂正発明の特許請求の範囲には,「上記携帯コンピュータは,・・・\n上記ディスプレイに表示された所定の業務名を文字画像で示す発信先一覧から選択された選択項目の名称に基づき,上記位置座標データ入力手段の位置座標データに従って,所定の業務を行う複数の個人,会社あるいは官庁の中から現在位置に最も近いものの発信先番号を選択する選択手段と,・・・を備え」と記載されている。上記特許請求の範囲の記載によれば,「選択」は,「所定の業務を行う複数の個人,会社あるいは官庁の中から現在位置に最も近いものの発信先番号」を対象としているが,「所定の業務を行う複数の個人,会社あるいは官庁」の発信先番号等の情報取得態様及び選択態様について,必ずしも明確であるとはいえない。そこで,本件訂正明細書の発明の詳細な説明を参酌する。・・・以上によれば,本件訂正発明は,従来の無線電話装置と,携帯型コンピュータとGPS利用者装置とをすべて携帯することができず,かつ相互を組み合わせてそれらを複合した機能\を得ることができないとの課題を解決するために,複合した機能を,実用的に得ることを目的とするものである。そうすると,本件訂正発明は,携帯型の情報装置がこれらの装置の機能\を複合させた機能を有することに特徴があり,機能\の一部を他のサーバ等に置くことを想定したものということはできない。そして,前記認定の本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,「携帯型コミュニケータ」は,CPUを備えた携帯コンピュータと無線電話装置とGPS利用者装置とを備えるとともに,地図情報を備えた地図データROMが接続されており,CPUにより実行される最寄発信処理においては,まず,現在位置の座標と発信先の名称が入力され,次に,地図データROMから現在位置から最も近い発信先番号を選択する処理を行い,それは,現在位置の座標と地図データROMから読み込まれた地図情報とに基づいて選択しているものと認められる。したがって,「選択手段」による「発信先番号の選択」は,携帯コンピュータのCPUが,携帯型コミュニケータ自体で取得できるデータを用いて,発信先番号の選択に係る処理を実行することを指すと解するのが相当である。以上からすると,被告製品においては,専らナビタイムサーバが,そのデータベースを用いてディスプレイに表示される発信先番号の「選択」に係る検索処理を実行しており,被告製品は,地図情報も備えておらず,構\成要件gの「選択手段」に相当する検索処理を実行することなく,単に,施設カテゴリーの選択及び現在位置情報の送信と検索結果の取得のみを行っている。したがって,被告製品は,構成要件gの「選択手段」を具備するものではなく,同構\成要件を充足しない。・・・(ア) 原告は,構成要件gは,どのメモリ領域から電話番号を選択すべきかについて何らの限定も付していないから,ネットワークのいずれの記憶領域であっても,同構\成を充足する旨主張する。しかし,構成要件gは,前記のとおり,携帯コンピュータのCPUが,携帯型コミュニケータ自体で取得できるデータを用いて,発信先番号の選択に係る処理を実行する技術を提供するものであるから,これを外部のコンピュータにデータ処理を指令して,これが送り返される態様を含むものではない。したがって,原告の主張は,理由がない。(イ) 原告は,本件訂正明細書の段落【0074】,【0104】の記載には,構成要件gでは,先方のコンピュータにデータを処理を指令してこれが送り返される技術が開示されていると主張する。しかし,原告が指摘する本件訂正明細書の段落【0074】,【0104】の記載は,電話が接続されている相手方との間でデータ交換をするというにすぎず,一方のCPUで行うべき処理を接続先のコンピュータに命令して実行させ,その結果を得るとの技術事項は記載されていない。また,上記【0074】,【0104】の記載は,構\成要件gの「選択手段」に関する記載ではなく,前記認定の本件訂正明細書の記載に他の通信装置に指令を送りデータを受け取る場合についての記載や示唆は認められない。原告の上記主張は理由がない。

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原審はこちらです。 ◆平成20(ワ)12952 平成21年07月10日 東京地方裁判所

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平成21(行ケ)10212 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月24日 知的財産高等裁判所 

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 上記記載によれば,引用文献1に基づく引用発明は,インターネットを利用した保険契約システムに関するものであり,上記システムは,利用者が提示された入力フォームに必要事項を入力し,次に入力した事項を含む契約確認データが利用者に提示され,利用者は内容を確認した上,同意の意味で電子署名を付し,更に利用者は保険料の支払方法を指定し,電子署名が付された契約内容確認データ及び保険料の支払方法の指定に基づいて保険契約がなされ,その旨が契約内容を含む契約完了通知データに電子署名を付して,利用者に通知されるとともに,この一連の処理の内容及び処理時刻がログデータとして記録されることにより,ウェブ上で容易かつ迅速,安全かつ確実に保険契約を行うとともに,後に契約の有無や契約内容について疑義が生じた場合にログデータによる証明を行うものであることを認めることができる。(3) 原告の主張に対する判断本願発明における証券は,投資者が債権者となって債務者である事業者の事業活動の結果得た利益の分配を受けられるようにすることなどを内容とする証券であるのに対し,引用発明の証券は旅行会社が代理して販売する保険商品(海外旅行保険)に係る証券であり,証券に表わされる権利義務の内容は異なる。また,本願発明の証券が市場で取引(売買)されることを前提としているのに対し,引用発明における保険証券は海外旅行の傷害保険であり,市場で取引(売買)がされることを前提としたものではなく,両者は流通性の点で異なる性格を有する。しかし,本願発明における証券が本願における優先権主張日当時の証券取引法2条1項各号に該当しないとしても,審決が認定した相違点1は,電子化証券の電子データに含まれる「契約内容を示すデータ」が本願発明と引用発明とでは異なるというものであるところ,上記のとおり,本願発明と引用発明では証券に表\わされる権利義務の内容が異なること,及び本願発明における証券は証券取引法2条1項各号に該当せず新規な権利関係を表わす証券であることは,電子化証券の電子データに含まれる契約内容を示すデータの変更をもたらすものではあるが,契約内容を示すデータの変更は「電子化証券発行システム」のみならず証券分野一般において取り扱う証券の契約内容の問題にすぎないのであって,特許法2条が想定する「自然法則を利用した技術思想の創作」の問題ではない。そうすると,相違点1に係る本願発明の構\成は,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が引用発明に基づいて,契約の内容を適宜取捨選択して容易に想到し得たものというべきであり,これと結論を同じくする審決の判断に誤りはない。なお,原告は,本願発明の証券は流通性を有するからこそ,証券の正当性を保証するための証券発行者の電子署名が含まれ,さらに電子証券の電子データに対してコピー・プロテクトを電子的に施すとともに,1回のみの印刷を可能とするプロテクトを電子的に施しており,本願発明の証券の流通性と電子署名やコピープロテクトや印刷回数制限の考え方は,ひとまとまりの構\成ないし技術的思想として把握すべきものであって,証券の内容や流通性との関係で技術的変更を要するものである旨主張する。しかし,証券の内容(契約内容を示すデータ)の変更が自然法則を利用した技術思想の問題ではなく,引用発明における「電子化証券発行システム」に技術的な変更を必要とさせるものでないことは前記のとおりである。また,証券の流通性故に,電子署名,電子データに対するコピー・プロテクト及び印刷回数制限が必要であるとして本願発明がこれを備えるに至ったものであり,その点において引用発明との関係で技術的変更が必要であるとしても,審決は,本願発明及び引用発明における電子化証券がいずれも「契約内容を示すデータと証券の正当性を保証するための証券発行者の電子署名が含まれた電子データ」からなる点で一致することを認定した上,コピー・プロテクト及び1回のみの印刷を可能とするプロテクトが施された電子化証券の電子データを処理するための機能\手段の有無の点を相違点2として認定した上,その容易想到性について判断している。したがって,原告の上記主張は,相違点1に関する判断の誤りをいう点においては理由がなく,採用することができない。

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平成21(行ケ)10291 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月24日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 引用発明は,「アクチュエータ22a及びアクチュエータ22b」と,制御装置を備えている自動車であるのに対し,本願補正発明は,「a)流体治療装置及び流体源の一方または両方と,b)患者と上記流体治療装置及び流体源の一方または両方との間で流体を輸送するための流体路」と,制御装置を備えている薬液管理装置であるが,上記(1)のとおり,流体治療装置及び流体源の一方または両方と,患者と上記流体治療装置及び流体源の一方または両方との間で流体を輸送するための流体路と,少なくとも二つのプロセッサシステムを有する薬液管理装置は,本件特許出願の優先日(平成11年11月9日)当時,よく知られていたものと認められる上,ソフトウェアプログラムの更新という点では,自動車であるか,薬液管理装置であるかで格別異なる点があるとも認められないから,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)は,相違点1に係る構\成を容易に想到することができたというべきである。この点について,原告は,薬液管理装置においては患者を危険にさらすことなく治療が行われるように構成することが要求されている旨の主張をするが,ソ\フトウェアプログラムの更新を始めとする装置のメンテナンスが確実に行われなければならないことは,薬液管理装置に限らないソフトウェアプログラムを用いる装置に共通する一般的な課題であって,上記のとおり自動車であるか薬液管理装置であるかで格別異なる点があるとは認められない。\n

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平成20(ネ)10085 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年03月24日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明についての侵害判断です。インターネットにおいて、クライアントからのリクエストに応じて、サーバが情報を配信することについて、侵害しているのは誰かが1つの争点となりました。裁判所は、サーバ運営者が侵害主体であると判断しました。
 被控訴人が本件特許権の侵害主体であるか否かについて検討する。本件特許に係る発明の名称は「インターネットサーバーのアクセス管理およびモニタシステム」とされており,上記2(1)アのとおり,本件発明に係る特許請求の範囲の記載から,本件発明における「アクセス」が「インターネットよりなるコンピュータネットワークを介したクライアント」による「サーバーシステムの情報ページ」に対するものであることが明らかである上,構成要件BないしFに規定される各段階は,本件発明において提供される「アクセス」が備える段階を特定するものであると解されるから,このような本件発明の実施主体は,上記のような「アクセスを提供する方法」の実施主体であって,被控訴人方法を提供して被控訴人サービスを実施する被控訴人であると解するのが相当である。(2) この点について,被控訴人は,被控訴人方法を使用しているのはパソコンのユーザーであって,被控訴人ではないから,被控訴人は本件発明の実施主体ではないとして,本件特許権を侵害していないと主張するが,その主張は,要するに,「アクセス」はクライアント(ユーザーのパソ\コン)によって行われる行為であるから,本件発明の実施主体は,インターネットよりなるコンピュータネットワークのユーザーであるクライアントであって,被控訴人ではないという趣旨に解される。しかしながら,上記のとおり,本件発明は「アクセス」の発明ではなく,「アクセスを提供する方法」の発明であって,具体的にクライアントによるアクセスがなければ本件発明に係る特許権を侵害することができないものではない。また,本件発明に係る「アクセスを提供する方法」が提供されている限り,クライアントは,被控訴人方法として提供されるアクセス方法の枠内において目的の情報ページにアクセスすることができるにとどまるのであり,クライアントの主体的行為によって,クライアントによる個別のアクセスが本件発明の技術的範囲に属するものとなったり,ならなかったりするものではないから,クライアントの個別の行為を待って初めて「アクセスを提供する方法」の発明である本件発明の実施行為が完成すると解すべきでもない。そうすると,被控訴人による「アクセスを提供する方法」が本件発明の技術的範囲に属するのである以上,被控訴人による被控訴人方法の提供行為が本件発明の実施行為と評価されるべきものである。(3) そして,甲60及び弁論の全趣旨によると,平成21年10月19日の時点において,被控訴人は現に被控訴人方法を実施していることが認められるから,被控訴人は本件特許権を侵害する者であると認められる。したがって,控訴人は,被控訴人に対し,特許法100条1項に基づき,被控訴人方法による被控訴人サービスの提供の停止を請求するとともに,同条2項に基づき,被控訴人サービスに供された「NLIA サーバー」の除却及び「登録情報データベース」の消去を請求することができるといわなければならない。なお,控訴人は「NLIA サーバー」及び「登録情報データベース」のいずれについても除却を求めているが,「NLIA サーバー」について,これが除却の対象となり得るかどうかは同サーバーの設置・管理の状況によるものであり,共用サーバーの一部が当該サーバーとして利用されている場合,サーバー全体の除却ではなく,当該利用部分がその機能を果たさなくなるようにプログラムを削除したり消去したりすることによって対応すべきものである。上記において「NLIA サーバー」の除却とは,上記のような意味を含むものである。また,「登録情報データベース」については,「データベース」の性質上,除却の対象になじまないと考えられるところ,控訴人の請求はデータベースの機能を喪失させることを求めるものと解されるから,上記のとおり,同データベースの消去を認めるのが相当である。\n

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平成21(行ケ)10288 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月24日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明(?)について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 原告は,甲2文献及び甲3文献に記載された発明は,本願発明とは異なる技術思想に基づくものであり,構成も異なると主張する。しかし,前記2及び上記(1)(2)によれば,本願発明,引用発明並びに甲2文献及び甲3文献に記載された技術は,いずれも複数の情報端末表示装置を複数の者の間のコミュニケーションツールとして使用することに関する発明であって,その手段として複数の表\示装置に同じ映像が表示されることがあり,その点においては共通していることが認められる。そうすると,本願発明とは異なる技術思想や構\成に基づくものとはいえず,原告の上記主張は採用することができない。

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平成21(行ケ)10185 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月24日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 上記(1)によれば,刊行物2に記載されている「警報パターン」は,無線受信機における着信時の報知音であって,楽曲を含むと認められるところ,刊行物2に記載されている発明は,メッセージデータを受信する無線受信機において,楽曲を含む「警報パターン」を再プログラミングするための新しいかつ改良された方法であって,それは,送信機から無線受信機に,利用者が予め選択した,楽曲を含む「警報パターン」を送信し,無線受信機において当該「警報パターン」がメモリに再プログラムされて置き換えられるというものであると認められる。そうすると,引用発明2は,利用者が予\め選択した,着信時の報知音として使用されるメロディのデータを着信するものであると認められる。また,そのデータがメモリに再プログラムされて置き換えられるということは,そのデータが記憶部に格納されるということができる。なお,原告は,引用発明2は,警報パターンを再プログラムして置き換えるものであるから,メッセージのデータを着信するアドレスとは異なるアドレスでメロディのデータを着信して記憶部に追加して格納するという本件発明の技術思想とは異質であると主張するが,上記のとおり,引用発明2は,メッセージデータを受信する無線受信機において,利用者が予め選択した,着信時の報知音として使用されるメロディのデータを着信して,記憶部に格納するというものであるから,本件発明と技術思想において共通するということができ,後記5のとおり,引用発明1と組み合わせて本件発明を容易に想到することができたということができるものである。・・・・引用発明1と引用発明2は,ともに,i)無線受信機という同一の技術分野に属し,ii)新たな着信時の報知音として使用されるメロディのデータを取得することを目的としている点で,発明の課題が共通し,iii)着信時の報知音として使用するメロディのデータを取得して記憶部に格納する点で,機能・作用も共通しているから,引用発明1と引用発明2を組み合わせることができるというべきである。原告は,引用発明2の目的は,無線受信機の外部からメロディのデータを供給して再プログラムして置き換える点にあり,ユーザーが選択呼出受信機で自ら好みのメロディを作曲するという引用発明1の目的とは反すると主張するが,引用発明1と引用発明2には,原告が主張するような違いがあるとしても,そのことをもって,引用発明1に引用発明2を結びつけることに阻害要因があるということはできず,引用発明1と引用発明2には,上記のとおり共通点があるから,それらを組み合わせることができるというべきである。\n

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平成21(行ケ)10117 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月18日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとの審決が維持されました。
 原告は,本願発明の請求項1の「前記副次データは,前記副次データの作成・修正を行う者の端末により,直接,前記副次データファイルより取出されて,作成・修正が行われて,再度前記副次データファイルに保存され,」という記載の意味について,「端末より副次データを修正」するとは,サーバに格納されているファイルから直接データを取り出し,修正・保存することを意味するのであって,ファイルの転送という概念は含んでいない旨主張する。しかしながら,本願発明の請求項1の記載からすれば,「‥‥端末により,直接,‥‥修正が行われて」の意味につき,サーバに格納されているファイルから直接データを取り出し,それを修正・保存する者の端末により,直接修正・保存することのみに限定されると一義的に解釈することはできず,むしろ,「直接」の文言を素直に読めば,それは,サーバ上のデータに個人の端末がインターネットにより直接アクセスすることができるという程度の意味とも解し得る。そこで,本願明細書の発明の詳細な説明を参酌すると,そこには「直接」という用語を定義するような記載はみあたらず,むしろ,前記1(1) クのとおり,本願明細書には,「副次データ12が‥‥音声情報のときは,音声情報ファイル‥‥を別途作成し」「副次データ12が‥‥画像情報のときも同様に,画像情報ファイル‥‥を別途作成し」と記載されているから,発明の詳細な説明を参酌する限り,本願発明の「副次データ」は,データそのもののみならず,ファイルという形態をも含むものであると認められる。また,前記1(1) コのとおり,本願明細書には,「複数の副次データ12が第2のサーバ42bの副次データファイル48に格納されており」と記載されているから,発明の詳細な説明を参酌する限り,本願発明の「副次データファイル」は,複数のファイルを格納するものをも含むものであると認められる。さらに,前記1(1) ケのとおり,本願明細書には,「‥‥,翻訳者の自宅のパソコン等で容易かつ短時間に副次データ12を作成し,自宅からインターネットを通じて依頼者に即座に届けることができる」と記載されているところ,翻訳者の自宅から即座に依頼者に届け出るとの記載は,ファイルとして直接交付する意味と解され,少なくとも,副次データをサーバ上に置いたままである状態を意味するものではないと解される。そうすると,本願発明の「前記副次データは,前記副次データの作成・修正を行う者の端末により,直接,前記副次データファイルより取出されて,作成・修正が行われて,再度前記副次データファイルに保存され」るとの記載には,サーバからファイルを取り出し,端末でファイルを修正し,ファイルを保存することも含まれるものと認めるのが相当である。\n

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平成21(行ケ)10068 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月08日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について進歩性なしとした審決が維持されました。
 「HTTPサーバであるApache」が,通常,ブラウザからの要求を受けてホームページのHTMLファイルなどを転送することは,「既存情報処理手段」が「情報処理」することに相当する。引用発明1の「誤ったURLを指定した場合」は,「エラーが発生した時」に相当する。引用発明1で「誤ったURLを指定した場合」,CGIを使ったものを表示させるためには,当然にErrorDocumentで指定されたCGIプログラムを実行しているものであって,このCGIプログラムの実行はHTTPサーバであるApache(そのhttpdプログラム)とは別の情報処理手段に処理を分岐させることに相当する。また,CGIプログラムを実行させるのは,HTTPサーバであるApacheが誤ったURLの指定を検出した場合と解されるから,引用発明1も既存情報処理手段における情報処理結果の一部または全部を利用しているといえる。以上から,両者の一致点,相違点は次のとおりである。
<一致点>
「既存情報処理手段が情報処理するに際して前記既存情報処理手段における情報処理結果の一部または全部を利用して処理を行う別の情報処理手段と,エラーが発生した時に前記既存情報処理手段から別の情報処理手段へと処理を分岐させる分岐手段とを備える装置」
<相違点1>
本願発明14においては,既存情報処理手段に対して,その外に外部情報処理手段があるのに対して,引用発明1では,既存情報処理手段に相当するWWWサーバが,別の情報処理手段に相当するCGIプログラムを備えている点。
<相違点2>
本願発明14は「機能拡張装置」の発明であるのに対して,引用発明1はWWWサーバである点。
イ<相違点1>についての判断
誤ったURLを指定した場合に実行されるCGIプログラムは,既存情報処理手段であるHTTPサーバであるApache(そのhttpdプログラム)によりその実行を制御される別のプログラムであって,エラードキュメントの表示に関して付加的な情報処理手段を構\成しているから,既存情報処理手段に対して外部情報処理手段といえるものである。また,情報処理分野において,付加的な情報処理手段を既存の情報処理手段に対して外部の情報処理手段として構成することは,何ら格別なことではなく適宜の設計事項である。よって,引用発明1のCGIプログラムを既存情報処理手段に相当するWWWサーバに対して外部情報処理手段として構\成することは,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)が容易に想到し得ることである。
ウ<相違点2>についての判断
前記のとおり,引用発明1のCGIプログラムは,HTTPサーバであるApache(そのhttpdプログラム)に対して付加的な情報処理手段を構成し,CGIプログラムに記述された処理を行い,所定の表\示をする機能を付加するものであるから,HTTPサーバであるApache(そのhttpdプログラム)に対して機能を拡張しているといえる。よって,引用発明1においてCGIプログラムによる処理を行う構\成は,本願発明14の機能拡張装置に相当するといえるものである。
エ 以上によれば,本願発明14は引用発明1から当業者が容易に想到することができたものであると認めるのが相当である

◆判決本文

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平成21(行ケ)10192 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年03月02日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について進歩性なしとの審決が維持されました。
上記(ア)記載のとおり,引用例3には,最終来店日,来店回数及び売上金額に応じて顧客をスコア化して評価し,評価に応じた種類のクーポン券をボーナスとして送付して,顧客の固定化,来店促進,売上増又は顧客の再来店を図る営業上の手法が開示されており,以上からすれば,営業上の手法として,顧客を優遇するに当たり,来店回数及び取引額を条件として設定することが知られていたといえる。
エ 商業を営む者にとって,売上げを促進することは一般的・普遍的な課題であって,その上で,営業上の具体的な課題を設定し,同課題を解決するための手法を創意工夫することは,営業における一般常識といえることである。そして,前記アないしウによれば,期間,取引額又は複数日の取引(取引回数)を組み合わせて条件として設定し,所定の条件を満たした顧客を優遇することにより,顧客の購買行動を誘導する,様々な営業上の手法が知られていたものである。このような一般常識及び営業上の手法を前提とすれば,「一定期間の間に,一定額以上の取引を複数日において行う顧客」を得意客と取り決めて優遇することは,顧客の購買行動を誘導するための営業上の手法の一つということができ,また,条件を満たした顧客を優遇することにより,日ごとの取引量あるいは取引額が一定以上になるように購買行動が誘導され,ひいては営業の安定化が図られることは,商業を営む者にとって,当然に考慮し得ることである。したがって,審決が,「一定期間(例えばひと月)の間に,一定額以上の取引を複数日において行う顧客を優遇することにより,日ごとの取引量が一定以上になるように得意客を誘導し,営業の安定を図る」ことが,商業を営む者が考慮し得る「営業上の一手法」であると認定したことが誤りとはいえない。

◆判決本文

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平成21(行ケ)10082 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月30日 知的財産高等裁判所 

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 「原告は,引用発明では,ユーザーコード情報の照合により判明するのは,券が真正なものであるか否かであって,人の同一性の認証ができないのに対し,本件発明1においては,一身専属性が極めて高い携帯電話を利用することにより,バーコードを人に付したのと同様の効果が得られるため,人の同一性の認証(個人認証)ができる点において相違すると主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり,失当である。すなわち,本件発明1における個人認証の仕組みは,被認証者が記録した携帯電話のバーコードと認証装置側のバーコードとの同一性の有無を確認することによるものであって,当該携帯電話を所持し,提示した者が,被認証者自身であるか否かを照合の対象とするものではない。したがって,本件発明1と引用発明は,個人認証の有無において相違するということはできない。」

◆判決本文

関連事件はこちら◆平成18年(行ケ)第10478

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平成20(行ケ)10297 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月05日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が、取り消されました。理由は、動機づけ無しというものです。
 「上記イ及びウによると,本件発明1の「REDIRECTコマンド」がクライアントにおいて情報ページを自動的に表示させるためのコマンドであって,ディレクトリサーバーによって行われるものであるのに対して,引用発明の「リダイレクト」は,ローカルエリア・ネットワーク内のサーバーに対する「インターネットの至る所」からのクライアントによるアクセスを確立する方法であって,このようなクライアントに対してローカルエリア・ネットワーク内で唯一のホストとなるフラグシップ・ホストによって行われるものであるということができる。そして,一貫してインターネットにおけるアクセスを念頭に置く本件発明1は,ローカルエリア・ネットワーク内のサーバーとのアクセスを実現するためのフラグシップ・ホストに相当するサーバーの存在及びその機能\としての「リダイレクト」によって,その技術的課題を解決しようとするものではないのであり,本件発明1の存在を知らない当業者がこのような引用例の記載に接したとしても,フラグシップ・ホストを必要としないインターネットのアクセス方法において,このような「リダイレクト」の構成を採用して,本件発明1のディレクトリサーバーによる「REDIRECTコマンド」に係る構\成とするように動機付けられるということはできないし,引用例において,フラグシップ・ホストの機能から離れて「リダイレクト」の機能\を採用しようと動機付ける記載も存在しない。そして,仮に,引用例に開示された事項についての技術的意義を離れて,「リダイレクト」という用語の抽象的な意義のみに基づいて本件発明1の「REDIRECTコマンド」と対比することを前提とするならば,排除されるべき「後知恵」の混入を避けることはできないといわなければならない。」

◆平成20(行ケ)10297 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年11月05日 知的財産高等裁判所

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平成21(行ケ)10090 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月29日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
 「審決は,相違点(相違点1,2)に関し,「保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることは,本願の出願日において周知となっていた」(14頁4行〜6行)とした上で,「保険会社が奨学金を支給すること,あるいは奨学金支給の支援をすることが本願の出願日において周知となっていた現状に照らせば,被保険者に重大な保全変更事情が発生した場合,就学している子供がいれば奨学金を給付するようにすることは,当業者が容易に考えつくサービスの仕組みといえる。そして,奨学金の給付に結びつく重大な保全変更事情として,死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの申請情報,または死亡保険金給付,高度障害時における保険金給付,介護保険金給付のいずれかの給付完了情報などが考えられることも,当業者が普通に想起することである。」(14頁7行〜15行)とした。上記4で検討したとおり,保険会社が奨学金支給を支援すること,及び保険会社が財団を設立して奨学金を支給することが周知であることに照らせば,被保険者に重大な事情の変更が生じた場合に,就学している子供がいれば,保険会社が奨学金を直接給付することについても,当業者において普通に想起できるものと解される。そして上記重大な事情の変更として本願補正発明の挙げる死亡保険金給付等があるとすることも,当業者が普通に想起するものである。イ また,引用発明の記載された刊行物1(甲1)には,上記2(1)ア(イ)で摘記したとおり,「…子供の進学年齢毎に国公私立の中学校や高校や大学の各種案内を表示することもできる。あるいは,家族や子供の誕生日毎にお祝いのメッセージなどを表\示することもできる。…」(段落【0050】)と記載され,同(ウ)摘記の図3に記載のとおり顧客登録情報として家族の構成・性別・年齢・趣味等が記載されていることからすると,引用発明でも被保険者及び家族の個人情報を検索し,必要と思われる情報を取得して印刷する機能\を備えるものと解される。そうすると,引用発明において,入力する情報を本願補正発明における保険金給付等の情報とし,印刷し提供する情報を奨学金支給の案内状とすることに格別の技術的課題を見出すことはできないから,結局これら構成の相違点についても,当業者が容易になし得る設計的事項の範囲内のものであると認められる。そうすると,審決が相違点に係る構\成について容易想到と判断したことに誤りはない。」

◆平成21(行ケ)10090 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年10月29日 知的財産高等裁判所

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平成20(ネ)10080 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年07月29日 知的財産高等裁判所

 決済管理サーバを備えていないので技術的範囲外とした1審判断を維持しました。
 「原告らは,被告方法においては,「承諾しMUSIC.JP300に登録」 をクリックすることによって,当該携帯電話機から一旦MTIサーバに対し, 当該携帯電話機を特定する情報と30コイン分の楽曲の代金が315円である であるという情報とを含む30コイン分の楽曲が購入できる30コインの発行 を希望する希望信号を発信し,これを受信したMTIサーバは,当該携帯電話 機を特定する情報が記録されているか否かを判断していると主張する。 しかし,本件全証拠によっても,被告方法が,マイメニュー登録の段階で, MTIサーバが携帯電話機から上記の希望信号を受信した後に,当該携帯電話 機を特定する情報がMTIサーバのデータベースに記録されているか否かを判 断した上で当該携帯電話機をiモードサーバに接続させる処理経路が採用され ていることを認めることはできない。」

◆平成20(ネ)10080 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年07月29日 知的財産高等裁判所

1審判断はこちらです

◆平成19(ワ)13244平成20年10月02日 大阪地方裁判所
 

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◆平成20(行ケ)10426 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月02日 知的財産高等裁判所

 UI(ユーザインターフェイス)の発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
  「上記(ア)によれば,「形態」の語は,原告主張のとおり,通常,物のかたち等の意味で用いられることが認められるものの,上記(1)アによれば,本願補正発明における「表示形態」の意味については,色,形,サイズ等による表\示上の視覚的属性をいうものであることは,既に検討したとおりである。また,上記(1)ア(イ)摘記によれば,図2Dに示された画面は,図2Cの画面からのユーザーインタフェースにおける形態の変更を示すものであるところ,(1)ア(ウ)の図2C,図2Dの記載から明らかなとおり,両者でウインドウの境界線の太さは異なっているものの,タイトルバー及び境界線により画定されたウインドウの形状及びタイトルバー内のクローズボックスの形状には差異がなく,ウインドウの外形形状に変化がないことが理解できる。従来のユーザーインタフェース画面とは外形形状において差異がない図2Dについても表示形態が異なるテーマに設定されたユーザーインタフェース画面として示されていることからしても,本願補正発明における「表\示形態」の意味は,主として表示する上での形状であるとする原告の主張が採り得ないことは明らかである。・・・・以上によれば,審決が相違点(3)に関し,「…ユーザの一般的な要望に従ってイメージを一変させ見栄えのするデスクトップとするため,引用例1記載発明において,第1のセット及び第2のセットにインタフェースオブジェクト及びオブジェクトパーツの配色パターンのみならず,インタフェースオブジェクトの形状をも含ませるようにし,インタフェースオブジェクトが第1セットを使用して表\示される場合には第1形状の第1アウトラインを有し,前記インタフェースオブジェクトが第2セットを使用して表示される場合には第2形状の第2アウトラインを有するものとすることは当業者が格別困難なくなしうることと認められる。」(10頁28行〜35行)とした判断に誤りはない。

◆平成20(行ケ)10426 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月02日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10375 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月29日 知的財産高等裁判所

 マピオン特許(CS関連発明?)について、無効理由無しとした審決が維持されました。

◆平成20(行ケ)10375 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年07月29日 知的財産高等裁判所
関連判決はこちらです
  ◆平成20(行ケ)10373
  ◆平成20(行ケ)10374

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◆平成19(ワ)27187 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年07月15日 東京地方裁判所

 ユーザインターフェイス関係の特許(CS関連発明)について最終的には、進歩性違反を理由に権利行使不能と判断されましたが、用語の解釈について興味深い判断がなされました。
  「被告は,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続では,原告が,「テレビジョン番組リスト」の用語を「個々の番組単位における番組情報」の意味では使用しておらず,各手続における特許庁の主張及び裁判所の判決においても,「テレビジョン番組リスト」とは,テレビジョン番組のタイトルのリスト,すなわち,テレビジョン番組のタイトルが並んだものと解されているから,本件発明における「テレビジョン番組リスト」の文言についても,「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を意味すると解すべきであり,分割出願に係る本件特許権による権利行使の際に,同用語の意義を違えて主張することは,信義則に基づく禁反言法理から許されないと主張する。しかしながら,分割出願制度は,一つの出願において二つ以上の異なる発明の特許出願をした出願人に対し,出願を分割する方法により,各発明につき,それぞれ元の出願の時に遡って出願がされたものとみなして特許を受けさせるものであるから,原出願で特許出願された発明と,分割出願で特許出願された発明は,本来,内容を異にするものであり,分割出願された発明の「特許請求の範囲」に記載された文言の解釈が,原出願の手続における文言の解釈と必ずしも一致する必要はないというべきである。したがって,本件特許の「テレビジョン番組リスト」の文言の解釈において,仮に,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続において使用された「テレビジョン番組リスト」の文言の意味とは異なる解釈をしたとしても,禁反言法理から許されないとはいえず,被告の上記主張は採用できない。」

◆平成19(ワ)27187 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年07月15日 東京地方裁判所

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◆平成20(ワ)12952 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年07月10日 東京地方裁判所

 CS関連発明について、一部の構成をサーバが実施しているとして技術的範囲に属しないと判断されました。
  「構成要件Fは,「位置座標データ入力手段の位置座標データに基づいて,所定の業務を行う複数の個人,会社あるいは官庁の中から現在位置に最も近いものの発信先番号を選択する選択手段とを備え」と規定されているところ,ここにいう「選択手段」とは,CPU及びプログラムがなし得る機能\を意味するにすぎず,当然に特定の処理を指し示すものではないから,その意義は特許請求の範囲からは一義的に明らかなものとはいえない。そこで,本件明細書の記載を参酌すると,本件明細書には次のとおりの記載がある(甲2)。・・・・以上からすると,本件特許発明1の「選択手段」とは,現在位置の位置座標データに基づいて最も近い施設を選択し,それと関連付けて記憶されている,同施設の発信先番号を取り出すことであり,また,「選択手段」による処理は,「携帯コンピュータ」自体のCPUが実行するものであって,「選択手段」は「携帯コンピュータ」自体が備えるものであると解釈するのが相当である。・・・以上からすると,被告製品の「選択手段」による処理は,ナビタイムサーバが実行しているものであって,被告製品においては,「選択手段」を「携帯コンピュータ」自体が備えてはいないものと認められる。したがって,被告製品は,構成要件Fを充足するものということはできない。」

◆平成20(ワ)12952 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年07月10日 東京地方裁判所
以下は、原告vs携帯電話会社との過去の事件です
    ◆平成15(ワ)28554 平成16年10月01日 東京地方裁判所
    ◆平成15(ワ)28575 平成16年10月01日 東京地方裁判所

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◆平成20(行ケ)10413 審決取消請求事件,審決取消請求承継参加事件 特許権 行政訴訟平成21年05月27日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明(?)について、進歩性なしとの拒絶審決が維持されました。
 問題となったクレームは 「バッジの携帯者による保護域へのアクセスをチェックする装置において, 前記バッジは, 特定の身体的特徴を記憶する第1のメモリと, 前記第1のメモリに接続された第1の無線手段を含み, 前記装置は, 前記第1のメモリに記憶された前記特定の身体的特徴を無線により読み取る 第2の無線手段と, 前記バッジの携帯者の特定の身体的特徴を取得する取得手段と, 前記第2の無線手段により読み取った特定の身体的特徴と,前記取得手段で 取得した前記バッジの携帯者の特定の身体的特徴とを比較する比較手段と, 前記比較手段の結果により施錠を制御するアクセス施錠手段とを含む ことを特徴とする前記アクセスチェック装置。」 というものです。

◆平成20(行ケ)10413 審決取消請求事件,審決取消請求承継参加事件 特許権 行政訴訟平成21年05月27日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10279 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月16日 知的財産高等裁判所

 パチンコゲーム機(CS関連発明(?))について、29条1項柱書き違反無しとした審決が維持されました。
   「上記(1)によれば,本件訂正発明1〜5は,いずれも,スロットマシン等の遊技機に関する発明であり,従前の遊技機における高確率再遊技期間は予め定められたゲーム数分継続しそのゲーム数分継続しなければ高確率再遊技が終わることがなかったことから,その遊技も単調になる傾向があり,遊技者は期待感を維持することが困難であったが,本件訂正発明1〜5により,高確率再遊技期間中に所定の内部当選役が決定されたことを条件に,高確率再遊技期間を終了させるとともに,その内部当選役を複数設け,それらの内部当選役毎に終了確率が異なるようにしたもので,終了確率の多様化が図れ,遊技性が広がり面白みが増すという効果が生じるものであることが認められる。・・・・3 特許法29条1項柱書にいう「発明」性の有無について(1) 原告は,前記のような内容を有する本件訂正発明1〜5は特許法29条1項柱書にいう「発明」に該当しないと主張するので,以下,検討する。(2) 特許法29条1項柱書は,「産業上利用することができる発明をした者は,次に掲げる発明を除き,その発明については特許を受けることができる」と定め,その前提となる「発明」について同法2条1項が,「この法律で『発明』とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と定めている。そうすると,本件訂正発明1〜5が,i)産業上利用できる発明ではない場合,ii)自然法則を利用した発明でない場合,iii)技術的思想の創作となる発明でない場合,iv)技術的思想の創作のうち高度なものでない場合,のいずれかに該当するときは,同法29条1項柱書にいう「発明」に該当しないことになる(なお原告は,前記のとおり,本件訂正発明1〜5が上記i)及びiv)には該当しないことを自認している)。ところで,本件訂正発明1〜5は,前記のようにスロットマシン等の遊技機に関する発明であって,そこに含まれるゲームのルール自体は自然法則を利用したものといえないものの,同発明は,ゲームのルールを遊技機という機器に搭載し,そこにおいて生じる一定の技術的課題を解決しようとしたものであるから,それが全体として一定の技術的意義を有するのであれば,同発明は自然法則を利用した発明であり,かつ技術的思想の創作となる発明である,と解することができる。そこで,以上の見地に立って本件訂正発明の特許法29条1項柱書にいう発明該当性について検討する。(3) 前記2のとおり,本件訂正発明1〜5は「遊技機」という機器に関する発明であり,上記ゲームのルールを機器に定着させたもの(例えば,実施例として「ゲームを実行するための予め設定されたプログラムに従って制御動作を行うCPU(クロックパルス発生回路,乱数発生器を含む。),スタートレバーを操作(スタート操作)する毎に行われる乱数サンプリングの判定に用いられる確率抽選テーブル,停止ボタンの操作に応じてリールの停止態様を決定するための停止制御テーブル,副制御回路82へ送信するための各種制御指令(コマンド)等を格納(記憶)するROMを含むマイクロコンピュータを主たる構\\成要素とする制御回路を用いて遊技処理動作を制御する技術を用いる」もの)であるから(なお,審決は,本件訂正発明1〜5が前記甲1発明〔特開2001‐314559号公報〕及び〔特開2000‐210413号公報〕との関係で特許法29条2項にいう進歩性があると判断しており,原告も本件訴訟においてこれを争わない),全体として本件訂正発明1〜5は,自然法則を利用した発明であり,かつ技術的思想の創作となる発明であるというべきである。。(4) 原告の主張に対する補足的判断ア原告は,特許法39条,29条の2,29条1項及び2項の特許要件を判断するに際し,2つの発明を対比する場合に,周知慣用技術等を除外して検討することを挙げ,それと同様に特許法29条1項柱書の要件についても,「技術的に意義のある部分」について,自然法則利用の有無や技術的思想の創作該当性を判断すべきであると主張する。しかし,前記のように,特許法2条1項が「『発明』とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と定め,同法29条1項柱書において,「産業上利用することができる発明をした者は,次に掲げる発明を除き,その発明について特許を受けることができる。」とした上で,「次に掲げる発明」として,1〜3号に公知発明等を挙げている。このような特許法の規定の仕方からすると,特許法は,特許を受けようとする発明が自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものであり,かつ産業上利用することができるものであるかをまず検討した上で,これらの要件を満たす発明であっても公知発明等に当たる場合には特許を受けることができないものと定めていると解すべきである。そうすると,特許法29条1項柱書該当性の判断に当たっては,特許法39条,29条の2,29条1項及び2項のように,2つの発明を対比することにより特許要件の有無を判断する場合とは異なり,特許請求の範囲によって特定された発明全体が自然法則を利用した技術的思想の創作に当たるかどうかを全体的に検討すべきであって,公知発明等に当たらない新規な部分だけを取り出して判断すべきではないと解される。原告の主張は独自の論理に基づくものであって,採用することができない。」

◆平成20(行ケ)10279 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年06月16日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(ワ)6226 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年06月04日 大阪地方裁判所

 CS関連発明ではありませんが、新規性無しとして権利行使不能とされました。
 「これらの記載によると,本件明細書に記載された本件発明の実施例において,書込と読出は同時に行われることはなく,「タイムスリット」と呼ばれる短い時間を単位として,書込と読出が時分割で行われていることが示されている。具体的には,1個の書込タイムスロット「0」で書込を行い,次に,63個の読出タイムスロット「1」〜「63」で読出を行うという,合計64個のタイムスロットを繰り返すことが示されており,書込中の箇所を含む複数個の任意の位置から読出するのではなく,書込中の箇所を除く複数個の任意の位置から読出することがわかる(なお,仮に,本件発明1の「任意の複数の位置」が,引用発明3のタイムスロットのn個全体における任意の位置を意味するのであれば,引用発明3を理由として,本件発明1の無効をいうことはできなくなるが,そのときは,特許庁による判定〔乙1〕で示されたとおり,被告製品は,本件発明1を文言上侵害していないということになる。)。」

◆平成20(ワ)6226 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年06月04日 大阪地方裁判所

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◆平成20(行ケ)10151 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年05月25日 知的財産高等裁判所

 知財高裁がCS関連発明について、自然法則を利用した技術思想であるとした審決を維持しました。積極的に認める判断は初めてです。飯村判事です。
 「当裁判所は,審決が,本件特許発明は自然法則を利用した技術的思想の創作に該当するとした判断に誤りはなく,取消事由2は理由がないと判断する。その理由は,以下のとおりである。(1) 請求項1に係る発明についてア請求項1に係る発明は,旅行業向け会計処理装置の発明であり,経理ファイル上に,「売上」と「仕入」とが,「前受金」,「未収金」,「前払金」,「未払金」と共に,一旅行商品単位で同日付けで計上されるようにしたことを特徴とする(1P)。その構成は,電子ファイルである経理ファイル(1A),第1の計上要求操作(「売上」及び「仕入」の同日付計上を要求)と第2の計上要求操作(「入金」又は「支払」の計上を要求)があったことをそれぞれ判別する操作種別判定手段(1B),操作種別判定手段により第1の計上要求操作ありと判定されたときに実施される第1の計上処理手段(1C),操作種別判定手段により第2の計上要求操作ありと判定されたときに実施される第2の計上処理手段(1D)を有し,第1の計上処理手段(1C)は,前受金判定手段(1E),売上計上処理手段(1F),前払金判定手段(1G),仕入計上処理手段(1H)を含み,第2の計上処理手段(1D)は,売上仕入済み判定手段(1I),売上仕入前計上処理手段(1J),売上仕入後計上処理手段(1K)を含み,さらに,売上仕入前計上処理手段(1J)は,操作種別判定手段(1L),前受前払金の計上処理手段(1M)を含み,売上仕入後計上処理手段(1K)は,操作種別判定手段(1N),未収未払金の計上処理手段(1O)を含むものである。そして,上記各手段は,コンピュータプログラムがコンピュータに読み込まれ,コンピュータがコンピュータプログラムに従って作動することにより実現されるものと解され,それぞれの手段について,その手段によって行われる会計上の情報の判定や計上処理が具体的に特定され,上記各手段の組み合わせによって,経理ファイル上に,「売上」と「仕入」とが,「前受金」,「未収金」,「前払金」,「未払金」と共に,一旅行商品単位で同日付けで計上されるようにするための会計処理装置の動作方法及びその順序等が具体的に示されている。そうすると,請求項1に係る発明は,コンピュータプログラムによって,上記会計上の具体的な情報処理を実現する発明であるから,自然法則を利用した技術的思想の創作に当たると認められる。\nイ この点,原告は,i)請求項1において特定された「手段」は,本件特許の特許出願の願書に添付された図面の図3ないし5に示された処理手順の各ステップの内容を特定したものであるところ,この処理手順及び各ステップの内容は,請求項1にいう同日付計上の会計処理を,伝票と手計算で実行する際の手順及び内容と同様のものであり,上記特定は,手計算に代えてコンピュータを使用したことに伴い必然的に生じる特定にとどまること,ii)本件特許発明の作用効果である「売上と仕入を一旅行商品単位で同日計上することから,従前の旅行業者向けの会計処理装置では不可能であった,一旅行商品単位での利益の把握が可能\となる。また,同様に従前の旅行業向け会計処理装置では不可能だった債権債務の管理が可能\となるため,不正の防止や正しい経営判断が容易となる。」は,自然法則の利用とは無関係の会計理論又は会計実務に基づく効果にすぎないことなどから,請求項1に係る発明は,自然法則を利用した技術的思想の創作とはいえない,と主張する。しかし,原告の上記主張は,採用することができない。すなわち,i)本件特許の特許出願の願書に添付された図面の図3は,本件特許発明に係る旅行業向け会計処理装置による処理操作の一例を示す概略フローチャート,図4は,第1計上処理を示す詳細フローチャート,図5は,第2計上処理を示す詳細フローチャートであり(甲10),コンピュータプログラムに従ってコンピュータにより行われるべき情報処理の流れが開示されていること,ii)請求項1においては,それぞれの手段について,その手段によって行われる会計上の情報の判定や計上処理が具体的に特定され,コンピュータに対する制御の内容が具体的に示されていること,iii)その処理手順等は,その性質上,伝票と手計算で実行する際の処理手順等と全く同様ではなく,相違する点があることに照らして,原告の主張は,その前提を欠くものであって,採用の限りでない。また,コンピュータを利用することによって,所定の情報処理を迅速・正確に実現することを目的とする発明の構成中に,伝票と手計算によって実現できる構\成要素が含まれていたとしても,そのことによって,当該発明全体が,自然法則を利用した技術的思想の創作に該当しないとするいわれはないから,この点の原告の主張も採用の限りでない。さらに,本件明細書(【0068】)には,本件特許発明の作用効果として,「売上と仕入を一旅行商品単位で同日計上することから,従前の旅行業者向けの会計処理装置では不可能であった,一旅行商品単位での利益の把握が可能\となる。また,同様に従前の旅行業向け会計処理装置では不可能だった債権債務の管理が可能\となるため,不正の防止や正しい経営判断が容易となる。」と記載されており,本件特許発明は,上記の作用効果を目的とするものであることが認められ,上記の作用効果は,人の精神活動に基づいて体系化された会計理論,会計実務を前提とし又は応用したものを含むといえる。しかし,上記のような作用効果が含まれていたとしても,そのことによって,コンピュータの利用によって実現される発明全体が,自然法則を利用した技術的思想の創作に該当しないとするいわれはないから,この点の原告の上記主張も採用の限りでない。以上のとおり,請求項1に係る発明は,自然法則を利用した技術的思想の創作に当たる。」

◆平成20(行ケ)10151 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年05月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10270 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月26日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、新規事項であるとして補正を認めなかった審決を取り消しました。
  「上記のとおり,位置移動情報はユーザー側が送信し,サーバーシステムが受信するものであり,上記の「前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ」は,上記アのとおり,ユーザー側からの(他の仮想店舗B内において)「更に同店内の商品bに近づく」という内容の位置移動情報をサーバーシステムが受信したことを前提として記載されているものであることからすると,試着アバターを商品bに近づく位置へ移動させるという内容の位置移動情報に基づいて,そのように試着アバターを移動させる(そのようなデータを生成し,送信する)というサーバーシステムの処理が記載されていると理解する以外にないというべきである。このように理解することについて,被告は,既に受信したユーザー側からの位置移動情報と全く同じ内容の操作指示を再度ユーザーが行うことになり,不自然であり,合理的でない旨主張するが,上記アのとおりユーザー側からの位置移動情報を受信したことに基づいて,その受信内容に応じた処理を行うことに,何ら不自然な点はないから,被告の主張を採用することはできない。仮に,「前記試着アバターを前記商品bに近づく位置へ移動させ」との記載について被告の主張するように理解するとするならば,この記載は,請求項1のどこにも記載されていない「ユーザーの操作指示によらずにサーバーシステムが実行する処理」を何の説明を加えることなく記載したものということになってしまい,かえって不自然であるといわざるを得ない。」

◆平成20(行ケ)10270 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年02月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10176 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月29日 知的財産高等裁判所

 ゲーム装置(CS関連発明?)について、進歩性なしとした審決が取り消されました。 
  「審決は,引用発明の電子チップが本願発明のゲーム的メリットと共通する(実質的具備事項5)とした上で,引用発明と本願発明とが「電子データであるメリットをネットワークを介して端末装置に送信する送信手段」を有する点で一致すると認定している。しかしながら,上記ア及びイに認定説示したところによれば,本願発明は,ゲーム的メリットをネットワークを介して端末装置に送信するものであるのに対し,引用発明は,電子チップを端末装置に送信するものではないから,引用発明の電子チップが本願発明のゲーム的メリットと共通するかについても争いのあるところであるが,仮にこれが認められるとしても,引用発明が「電子データであるメリットをネットワークを介して端末装置に送信する送信手段」を有するとした審決の認定は誤りというべきである。(イ) この点について,被告は,引用発明においては,電子チップ情報をクライアント装置に送信して供給することにより,消費あるいはゲームの進行に従った電子チップ数の演算及び表示をクライアント装置に実施させ,ひいてはユーザが電子チップを消費し,あるいはゲームの進行に従って電子チップ数を変化させることを可能\としているから,電子チップ情報の供給は,実質的には,クライアント装置に対して利用可能な形態で電子チップを送信して供給するものであるということができると主張する。しかしながら,引用発明において,ユーザがクライアント装置を使用してその保有する電子チップに関する情報を確認できたり,電子チップを使用できたりしたとしても,そのような機能\を実現するための具体的構成は複数存在するのであって,引用発明と本願発明とでは同じ機能\を実現するための具体的な構成が異なるのであるから,単に実現される機能\が同一であるという理由から,両者の具体的な構成を同一視することはできないというべきである。したがって,被告の上記主張は採用することができない。」

◆平成20(行ケ)10176 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成21年01月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10107 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月30日 知的財産高等裁判所

   CS関連発明について、記載不備、進歩性なしとした審決を維持しました。ただ、36条の記載不備については下記のような付言がなされています。
  「なお,審決が特許法36条6項2号該当性の有無について判断した点について付言する。特許法36条6項2号は,特許請求の範囲の記載において,特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨を規定する。同号がこのように規定した趣旨は,特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には,特許発明の技術的範囲,すなわち,特許によって付与された独占の範囲が不明となり,第三者に不測の不利益を及ぼすことがあるので,そのような不都合な結果を防止することにある。そして,特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載のみならず,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるかという観点から判断されるべきである。
 ところで,審決は,請求項1(1)についての「コード番号を付してコード化し」,「暗号化し」,「転送する」などの記載,請求項1(2)についての「平文化できる範囲を設定し」などの記載,請求項1(3)についての「顧客個人情報を登録し」,「再暗号化して登録する」,「階層別に管理する」などの記載,請求項1(5)についての「登録してデーターベース化し」などの記載が,「人間がPCを操作して行う処理であるとも,PCが人間を介さず自動的に行う処理であるとも解することができ,そのいずれを意味しているのかが不明であるため,その特定しようとする事項が明確でないから,特許法36条6項2号に規定する要件を満たさない」と判断した。
 しかし,審決の上記判断は,その判断それ自体に矛盾があり,特許法36条6項2号の解釈,適用を誤ったものといえる。すなわち,審決は,本願発明の請求項1における上記各記載について,「人間がPCを操作して行う処理であるとも,PCが人間を介さず自動的に行う処理であるとも解することができ(る)」との確定的な解釈ができるとしているのであるから,そうである以上,「そのいずれを意味しているのかが不明であるため,その特定しようとする事項が明確でない」とすることとは矛盾する。のみならず,審決のした解釈を前提としても,特許請求の範囲の記載は,第三者に不測の不利益を招くほどに不明確であるということはできない。むしろ,審決においては,自らがした広義の解釈(それが正しい解釈であるか否かはさておき)を基礎として,特許請求の範囲に記載された本願発明が,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものといえるか否か(特許法2条1項),産業上利用することができる発明に当たるか否か(29条1項柱書)等の特許要件を含めて,その充足性の有無に関する実質的な判断をすべきであって,特許法36条6項2号の要件を充足しているか否かの形式的な判断をすべきではない。前記のとおり,その判断の結果にも誤りがあるといえる。」

◆平成20(行ケ)10107 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年10月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10327 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年08月28日 知的財産高等裁判所 

  CS関連発明について、成立性違反、進歩性違反で拒絶した審決を維持しました。ただ、29条1項柱書違反について、「当裁判所は,本願補正発明が法2条1項に規定する発明に該当しないとした審決の判断を正当とするものではないが,事案にかんがみ,まず,原告ら主張の取消事由1のうち,進歩性がないとした判断(理由(1)イ)の誤りの有無について検討する。」としたのが気になります。
  補正却下されたクレームです。
【請求項1】商品の販売元が彩色商品カタログのデジタル・データ情報を,インターネット通信販売システムを介して送信し,この商品カタログのデジタル・データを受信した消費者が自己のパソコンのモニタに表\示された商品カタログのデジタル画像を見て,その中から購買希望の商品を選択して,販売元にその選択された商品の注文情報を送信することにより所望の商品を購入するインターネット通信販売システムを介 する商品の販売方法であって, (イ)販売元が少なくとも一つの彩色商品の見本画像と色変化尺度としての基準色画像を組込んだ商品カタログを作成し,この商品カタログのカラー画像データをデジタル商品カタログとしてインターネット通信販売システムを介して消費者に送信し, (ロ)このデジタル商品カタログを受信した消費者が,受信データをパソコンのモニタにデジタル画像として表\示し, (ハ)この消費者が,パソコンを操作してモニタに表\示されたデジタル商品カタログの基準色画像の色を自己が所有する印刷された前記基準色画像の色に実質的に合致させ,同時に色が調整されたモニタ表示のデジタル商品カタログの彩色商品画像の中から所望の商品を選択して,販売元にその選択された商品の注文情報を送信することを特徴とするインターネット通信販売システムを介する商品の販売方法。」

◆平成19(行ケ)10327 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年08月28日 知的財産高等裁判所 

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◆平成19(行ケ)10374 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年08月28日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
  

◆平成19(行ケ)10374 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年08月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成20(行ケ)10001 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年08月26日 知的財産高等裁判所

   発明成立性なしとして拒絶された審決が取り消されました。審決はCS基準における成立性を満たしていないので成立性無しと判断しましたが、裁判所は、CS基準における成立性の是非については検討することなく、成立性ありと判断しました。
 「のみならず,前記のとおり,本願の特許請求の範囲の記載においては,対象となる対訳辞書の特徴を具体的に摘示した上で,人間に自然に具わった能力のうち特定の認識能\力(子音に対する優位的な識別能力)を利用することによって,英単語の意味等を確定させるという解決課題を実現するための方法を示しているのであるから,本願発明は,自然法則を利用したものということができる。」

◆平成20(行ケ)10001 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年08月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10403 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月23日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明(?)について、「〜手段」の記載がサポート要件違反(36条6項1号)、不明瞭(同2号)、29−2違反が争われましたが、裁判所は、36条6項1号、2号については、審決の判断は誤りであると認定し、一部の審決を取り消しました。  
  「本件請求項1の記載のうち「ROM又は読み書き可能な記憶装置に,前記自動起動スクリプトを記憶する手段」という文言の解釈につき当事者間に争いがあるので,まずこの点について検討する。ア 本件請求項1の記載を全体として捉えると,本件請求項1の「着脱式デバイス」は,「所定の種類の機器が接続されると,その機器に記憶された自動起動スクリプトを実行するコンピュータ」の汎用周辺機器インタフェースに着脱されるものであって,前記汎用周辺機器インタフェースに接続された際に「前記コンピュータからの機器の種類の問い合わせ信号に対し,前記所定の種類の機器である旨の信号を返信」するなどして,「前記コンピュータに前記自動起動スクリプトを起動させる手段」を備えるものである。したがって,「自動起動スクリプト」は,「所定の種類の機器」を用いる場合にはその機器に記憶され,コンピュータによって起動されるものであり,同様に,本件請求項1の「着脱式デバイス」を用いる場合には,着脱式デバイスに記憶され,コンピュータによって起動されるものである。そして,本件請求項1の「着脱式デバイス」は,「主な記憶装置としてROM又は読み書き可能\な記憶装置を備え」るものであり,「前記ROM又は読み書き可能な記憶装置に,前記自動起動スクリプトを記憶する」と記載されていることに照らせば,「自動起動スクリプト」は着脱式デバイスの主な記憶装置であるROM又は読み書き可能\な記憶装置に記憶されるものである。イ ところで,一般に「手段」とは,「目的を達するための具体的なやり方」を意味するものである(広辞苑第6版)ところ,本件請求項1における「ROM又は読み書き可能な記憶装置に,前記自動起動スクリプトを記憶する手段」との記載が,「前記コンピュータに前記自動起動スクリプトを起動させる手段」,「前記コンピュータから前記ROM又は読み書き可能\な記憶装置へのアクセスを受ける手段」とともに併記されたものであることからすれば,上記「記憶する手段」が,「ROM又は読み書き可能な記憶装置に前記自動起動スクリプトを記憶する」という目的を達するための具体的なやり方を意味するのか,それとも本件特許発明1全体の目的を達するための構\成要素の一つを意味するのか,いずれに解することも可能であって,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができない場合に当たる。ウそこで,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して,本件請求項1の「ROM又は読み書き可能\な記憶装置に,前記自動起動スクリプトを記憶する手段」の解釈につき検討する(なお,被告は,特許法36条6項1号該当性の判断をするに当たって発明の詳細な説明の記載を参酌すべきではないと主張するが,最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決〔民集45巻3号123頁〕も判示するように,特許を受けようとする発明の要旨を認定するのに特許請求の範囲の記載のみではその技術的意義が一義的に明確に理解することができない場合には,発明の詳細な説明の記載を参酌することは許されると解する。・・・以上の記載によれば,本件特許発明1は,USBメモリ等の着脱式デバイスをコンピュータに接続した際に,煩雑な手動操作を要することなく自動起動スクリプトに記述された所定のプログラムを自動実行させることを課題とするものであり,かかる課題の解決手段として,自動起動スクリプトを着脱式デバイスの記憶装置内に予め記憶し,コンピュータからの問い合わせに対してCD−ROMドライブなど自動起動スクリプト実行の対象機器である旨の信号(擬似信号)を返信することによって,コンピュータが着脱式デバイスの記憶装置内に記憶された自動起動スクリプトを起動させるという構\成を備えたものであることが認められる。そして,かかる解決手段を実現するためには,自動起動スクリプトは,着脱式デバイスがコンピュータに接続されたときにコンピュータから読み出すことが可能な状態でデバイスの記憶装置内に記憶されていることが必要であり,かつ,それで足りる。そうすると,ROM等の記憶装置が,その製造時に自動起動スクリプトを記憶するものであっても,上記解決手段を実現するのに何ら差し支えなく,また,ROM等の記憶装置の製造後に自動起動スクリプトを記憶させなければならないとすることは,上記解決手段の実現にとって特段の意味を有しないものである。(ウ) したがって,本件請求項1の「ROM又は読み書き可能な記憶装置に,前記自動起動スクリプトを記憶する手段」という文言は,「ROM又は読み書き可能\な記憶装置に自動起動スクリプトを記憶する」という目的を達するための具体的なやり方を意味するものと解すべきではなく,本件特許発明1の目的を達するための構成要素の一つとして「自動起動スクリプトがROM又は読み書き可能\な記憶装置に記憶されている状態であること」を意味するものと解釈すべきである。」

◆平成19(行ケ)10403 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月23日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10429 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月23日 知的財産高等裁判所

   CS関連発明に関して、発明の成立性、記載不備および進歩性を理由になされた拒絶審決の取り消し訴訟について、裁判所は、周知技術から進歩性なしとして審決を維持しました。
 「審決は,上記第2の3のとおり,請求項1の発明は,?@「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当せず,?A明確であるとも認められず,?B本願明細書の発明の詳細な説明が,当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められないとしたほか,?C本願発明は,引用例に記載された発明及び周知技術等に基づいて当業者が容易に発明をすることができたと判断したものであるところ,審決の上記?@〜?Cの判断の関係については,審決が「仮に,請求項1に係る発明が,特許法上の発明である『自然法則を利用した技術思想の創作』に該当し,かつ,明確であるとしても,・・・請求項1に係る発明は,引用例1に記載された発明,引用例2に記載された事項,上記周知技術,上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」としているところから明らかなように,上記?Cの判断は,上記?@〜?Bの判断を前提としないものであり,仮に上記?@〜?Bの判断の誤りをいう取消事由1〜3に理由があったとしても,取消事由4に理由がなければ,本訴請求は棄却されるべき性質のもの,すなわち,審決の取消しに至るためには,上記?Cの判断が誤りであることが不可欠であるという関係にある。そこで,まず,取消事由4について検討する。」

◆平成19(行ケ)10429 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年07月23日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10369 審決取消請求事件 特許権 平成20年06月24日 知的財産高等裁判所

 裁判所は、コンピュータ診断(CS関連発明(?))について、発明ではないとした審決を取り消しました
 「ウ ところで,特許の対象となる「発明」とは,「自然法則を利用した技術的思想の創作」であり(特許法2条1項),一定の技術的課題の設定,その課題を解決するための技術的手段の採用及びその技術的手段により所期の目的を達成し得るという効果の確認という段階を経て完成されるものである。したがって,人の精神活動それ自体は,「発明」ではなく,特許の対象とならないといえる。しかしながら,精神活動が含まれている,又は精神活動に関連するという理由のみで,「発明」に当たらないということもできない。けだし,どのような技術的手段であっても,人により生み出され,精神活動を含む人の活動に役立ちこれを助け,又はこれに置き換わる手段を提供するものであり,人の活動と必ず何らかの関連性を有するからである。そうすると,請求項に何らかの技術的手段が提示されているとしても,請求項に記載された内容を全体として考察した結果,発明の本質が,精神活動それ自体に向けられている場合は,特許法2条1項に規定する「発明」に該当するとはいえない。他方,人の精神活動による行為が含まれている,又は精神活動に関連する場合であっても,発明の本質が,人の精神活動を支援する,又はこれに置き換わる技術的手段を提供するものである場合は,「発明」に当たらないとしてこれを特許の対象から排除すべきものではないということができる。・・・・カ 以上によれば,請求項1に規定された「要求される歯科修復を判定する手段」及び「前記歯科修復の歯科補綴材のプレパラートのデザイン規準を含む初期治療計画を策定する手段」には,人の行為により実現される要素が含まれ,また,本願発明1を実施するためには,評価,判断等の精神活動も必要となるものと考えられるものの,明細書に記載された発明の目的や発明の詳細な説明に照らすと,本願発明1は,精神活動それ自体に向けられたものとはいい難く,全体としてみると,むしろ,「データベースを備えるネットワークサーバ」,「通信ネットワーク」,「歯科治療室に設置されたコンピュータ」及び「画像表示と処理ができる装置」とを備え,コンピュータに基づいて機能\する,歯科治療を支援するための技術的手段を提供するものと理解することができる。キ したがって,本願発明1は,「自然法則を利用した技術的思想の創作」に当 たるものということができ,本願発明1が特許法2条1項で定義される「発明」に該当しないとした審決の判断は是認することができない。」

◆平成19(行ケ)10369 審決取消請求事件 特許権 平成20年06月24日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10366 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

 ゲーム装置(CS関連発明)の進歩性に関する判断です。裁判所は進歩性なしとした審決を維持しました。
 「上記の検討によれば,引用発明の適用対象である仮想現実技術と,周知 のゲーム装置における画像処理方法とでは,仮想現実技術として技術分野 が共通し,また引用発明も周知のゲーム装置における画像処理方法が有す る技術的課題を解決する方法であるといえることから,引用発明を周知の ゲーム装置における画像処理方法に適用することにより本願発明の構成とすることは当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有\nする者)にとり容易であるとした審決の判断に誤りはない。」

◆平成19(行ケ)10366 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年06月18日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10294 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年03月25日 知的財産高等裁判所

  CS関連発明の進歩性が否定されました。
  なお、本事件は、出願時の補正が新規事項であるとして拒絶した前拒絶審決を取り消した判決が確定していますが(◆H17.12. 8 知財高裁 平成17(行ケ)10393 特許権 行政訴訟事件)、当該審判中で再度、29条2項違反の拒絶理由を通知すべきとまではいえないとも判断しました。
 「引用例1は,通信ネットワークを用いた商品販売方法における商品一覧表を問題とするところ,本件出願当時,そのような通信ネットワークを用いた商品販売方法\nにおいて,通信ネットワークとしてインターネットを想定することは当業者が設計 事項としてするような事項であるし,また,そのように通信ネットワークとしてイ ンターネットを使用するとき,商品一覧表のデータの入力に際し,インターネットにおいてごく普通に使用されている言語であるHTMLの編集等に用いられるHT\nMLエディタを使用することは当業者が設計事項としてするようなことであったと 認められる。そうすると,当業者は,引用例1の商品一覧表の作成に当たり,引用例7を適用し,本願補正発明の構\成に容易に想到することができたというべきである。」
 「原告は,特許庁が,平成14年5月21日付けの最後の拒絶理由通知にお いて進歩性を否定しなかったにもかかわらず,その後発明の進歩性を否定する主張 をすることを問題とするのであるが,これは,特許庁が,補正について,特許法1 7条の2第3項に違反すると判断した場合でも,その他に,特許法29条について の拒絶理由があると示さなければ,その後,特許法29条を理由として特許出願の 拒絶をしてはならない旨の主張と解される。これは,結局,特許庁は,補正につい て,特許法17条の2第3項に違反すると判断した場合でも,その判断が誤りであ る可能性を考慮して,補正後の発明について特許法29条の拒絶理由があると考えるなら,そのことを拒絶理由通知,拒絶査定で示すべきであり,そのような手続を\n経なければ,その後,特許法29条の拒絶理由に基づいて拒絶してはならないとい うものである。 しかし,特許法17条の2第3項に違反した補正がされれば,そのことのみによ って特許出願は拒絶査定されるのであるから,特許庁は自らの判断が誤りであるこ とを前提として予備的に特許法29条の判断をしなければならないとまではいえない。また,特許請求の範囲について. 特許法17条の2第3項に違反した補正がさ れた場合には,特許法29条の判断の基礎となる発明が補正前と異なることから, 上記のように必ず特許法29条について予備的に判断しなければならないとすると,新たな審査を要する場合も多いのであり,このことを考慮すると,特許法17条の\n2第3項に違反する補正がされたと判断する場合に特許庁は自らの判断が誤りであ ることを前提として必ず予備的に特許法29条の判断をしなければならないとすることが合理的であるとはいえない。」\n

◆平成19(行ケ)10294 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年03月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10185 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年03月25日 知的財産高等裁判所

   CS関連発明について、当業者が容易にできた発明ではない(進歩性あり)とした審決を取り消しました。
「上記イ(エ)において,審決は,孤立点のチェック,報知表示につい\nて,閉ループとして抽出されなかった図形であるか否かと無関係に孤立点がチェックされる ものを本件特許発明1の構成と異なると記載していて,本件特許発明1について,閉ループとして抽出されなかった図形と孤立点のチェックを関係付けている。\nしかし,前記(8)のとおり,報知表示するためにどのように「不連続となる始点及び終点」を発見するかが,特許請求の範囲に一義的に直接,記載されているもの\nではないし,発明の詳細な説明においてもその具体的な手法の記載はなく,第2の 実施例とされているものにおいては,不連続部の修正作業に関連し,点データへ接 続する線分の本数を検出して孤立点を検出することが記載されている。これらによ れば,本件特許発明1は,閉ループとして抽出されなかった図形と孤立点のチェッ クを関係付けることまで規定したものと限定することはできない(なお,原告は, 報知表示の対象となる孤立点の検索方法がいかなる方法であっても,閉じていない面データの中に存在している不連続点ないし孤立点を報知表\示すれば,当該構成要\n件は充足されるとし,補助参加人も,何らかの方法で孤立点を検索し,閉じていな い面データの不連続点を報知表示すれば足りる旨主張する。)。また,上記イ(オ)において,審決は,甲2文献のダングリングノートと本件特許 発明1の不連続となる始点及び終点が一致しないことを述べている。 ここで,本件特許発明1の不連続となる始点及び終点については,必ずしも明確 ではないのであるが,前記( )イのと8 おり,本件特許発明1において,「不連続と なる始点及び終点」は,点データから出る線データが一本のみである孤立点と一致 するものと一応認められ,そうすると,これは,単一のアークのみのノードとなっ ているものであるから,甲2文献のダングリングノードと同じものとなる。 さらに,上記イ(カ)においては,審決は,本件特許発明1が,孤立点を求めるた めに線分を所定方向に探索することを前提としていると解釈できるが,前記(8)の とおり,構成要件1Eにおいて,不連続となる始点及び終点の報知表\示に当たり, 線分を所定方向に接続することによって,不連続点を求めることが規定されている ものではない。 エ上記に照らすと,審決は,実質的に,本件特許発明1の要旨を誤って認定 しており,これらは,その内容に照らしても,審決の結論に影響を及ぼすものであ る。」

◆平成19(行ケ)10185 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年03月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10194 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年03月31日 知的財産高等裁判所

  CS関連発明について進歩性無しとした審決が維持されました。
  問題となったクレームは以下の通りです。 
 「ユーザ認証システムを有するネットワークにして, 複数のユーザ・モードの下でプログラムを実行するオペレーティング・ システムを有するウェブ・サーバと, プログラム実行リクエストと共にユーザ情報を前記ウェブ・サーバに処 理依頼する機構を有するウェブ・クライアントと,最初はデフォルト・ユーザ・モードの下で実行され,前記ユーザ情報を\n検査する機能,前記ウェブ・サーバにおける前記オペレーティング・システムに非デフォルト・ユーザ・モードの下で該プログラムを動的に実行さ\nせる機能,及び前記ウェブ・クライアントに前記ユーザ情報を戻す機能\を 前記ウェブ・サーバに実現させるプログラムと, を含むネットワーク。」

◆平成19(行ケ)10194 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年03月31日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10226 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年03月31日 知的財産高等裁判所

  CS関連発明について進歩性無しとした審決が維持されました
  

◆平成19(行ケ)10226 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年03月31日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10239 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月29日 知的財産高等裁判所

  ハッシュ法によりコンピュータ処理を高速に行うための計算手法(アルゴリズム)に関する発明が,29条1項柱書にいう「発明」に該当するかが争われました。
 裁判所は、CS基準に合致しないとして発明に該当しないとした審決を維持しました。
 「上記数学的課題の解法ないし数学的な計算手順(アルゴリズム)そのものは,純然たる学問上の法則であって,何ら自然法則を利用するものではないから,これを法2条1項にいう発明ということができないことは明らかである。また,既存の演算装置を用いて数式を演算することは,上記数学的課題の解法ないし数学的な計算手順を実現するものにほかならないから,これにより自然法則を利用した技術的思想が付加されるものではない。したがって,本願発明のような数式を演算する装置は,当該装置自体に何らかの技術的思想に基づく創作が認められない限り,発明となり得るものではない(仮にこれが発明とされるならば,すべての数式が発明となり得べきこととなる。)。この点,本願発明が演算装置自体に新規な構成を付加するものでないことは,原告が自ら認めるところであるし,特許請求の範囲の記載(前記第3,1(2))をみても,単に「ビットの集まりの短縮表現を生成する装置」により上記各「演算結果を生成し」これを「出力している」とするのみであって,使用目的に応じた演算装置についての定めはなく,いわば上記数学的なアルゴリズムに従って計算する「装置」という以上に規定するところがない。そうすると,本願発明は既存の演算装置に新たな創作を付加するものではなく,その実質は数学的なアルゴリズムそのものというほかないから,これをもって,法2条1項の定める「発明」に該当するということはできない。」

◆平成19(行ケ)10239 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成20年02月29日 知的財産高等裁判所

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◆平成16(ワ)25576 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成19年12月14日 東京地方裁判所

    CS関連発明について、複数主体による特許権侵害に関して、構成要件の充足性の判断と、差止および損害賠償を求める人とは分けて考えるとの判断がなされました。
   「ア(ア) 本件発明3は,「眼鏡レンズの供給システム」であって,発注する者である「発注側」とこれに対向する加工する者である「製造側」という2つの「主体」を前提とし,各主体がそれぞれ所定の行為をしたり,システムの一部を保有又は所有する物(システム)の発明を,主として「製造側」の観点から規定する発明である。そして,「発注側」は,「製造側」とは別な主体であり,「製造側」の履行補助者的立場にもない(前提事実(3)ウ)。(イ) この場合の特許請求の範囲の記載や発明の詳細な説明の記載は,2つ以上の主体の関与を前提に,実体に即して記載することで足りると考えられる。この場合の構成要件の充足の点は,2つ以上の主体の関与を前提に,行為者として予\定されている者が特許請求の範囲に記載された各行為を行ったか,各システムの一部を保有又は所有しているかを判断すれば足り,実際に行為を行った者の一部が「製造側」の履行補助者ではないことは,構成要件の充足の問題においては,問題とならない。(ウこれに対し,特許権侵害を理由に) ,だれに対して差止め及び損害賠償を求めることができるか,すなわち発明の実施行為(特許法2条3項)を行っている者はだれかは,構成要件の充足の問題とは異なり,当該システムを支配管理している者はだれかを判断して決定されるべきである。」

◆平成16(ワ)25576 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成19年12月14日 東京地方裁判所

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◆平成18(行ケ)10564 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成19年11月07日 知的財産高等裁判所

  CS関連発明(美術品販売支援システム)について、進歩性なしとした審決が維持されました。  

◆平成18(行ケ)10564 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成19年11月07日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10511 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年09月27日 知的財産高等裁判所

  CS関連発明について、実施可能要件違反として拒絶された審決が維持されました。
   「しかるところ,1個の発明は,通常,まとまりのある複数の部分に区分することができ,この場合には,区分されたそれぞれのまとまりのある部分を構成する各構\成要件が,それぞれの部分を特定する発明特定事項となるところ,そのようにして特定された各部分は,必ずしも,特許出願人又は特許権者が,当該発明において重要と考える構成要件を含むものとは限らないが,そのような構\成要件を含むと否とに関わらず,一つでも実施可能ではない部分があれば,当該発明は,全体として実施可能\でないことになる。本件についていえば,審決が特定した発明特定事項は,「複数種類のデジタルコンテンツと制御プログラムとを一つの時間帯に一斉に配信すること,制御プログラムの実行環境を形成して実行することにより,複数種類のデジタルコンテンツのいずれかを選択して再生すること」というものであり,これに,原告の挙げる「デジタルコンテンツを,・・・コンテンツ提供者が望む再生内容を表す再生ルールに従って関連付けて編集する」との要件が含まれていないとしても,この発明特定事項によって特定される部分が実施可能\でなければ,本願発明全体が実施可能でないことになることは明らかである。そして,審決は,上記発明特定事項によって特定される部分が実施可能\でないと判断するものであるところ,そうであれば,他の発明特定事項(例えば,原告の挙げる要件を含む発明特定事項)によって特定される部分が実施可能であるか否かは,審決の結論に影響を及ぼすものではないから,当該他の発明特定事項によって特定される部分を摘示し,これについて,実施可能\であるか否かを判断する必要がないことも明白である。」 

◆平成18(行ケ)10511 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年09月27日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10173 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年07月19日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとの審決が維持されました。

◆平成18(行ケ)10173 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年07月19日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10315 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年05月30日 知的財産高等裁判所

  CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました
  「引用例1ないし3に接した当業者であれば,引用例2記載の前記(1)アの技術的事項(利用者側装置で,自己消去機能を持つプログラムに設定されている日限になったところで,前記プログラムが起動され,提供された自己消去機能\付ソフトウェアが前記プログラムを含めて消去すること)及び引用例3記載の前記イの技術的事項(書籍のデジタルコンテンツをメモリに記憶する表\示装置において,該書籍のデジタルコンテンツを処理可能なソ\フトウェアに,書籍のデジタルコンテンツがメモリに記憶されてから予め定められた期間が経過すると,書籍のデジタルコンテンツを自動的に消去する機能\を有する構成)を適用することによって,引用例1において,あらかじめ所定時間が設定され,提供後該所定時間が経過すると,提供された該プログラム自身とデジタルコンテンツとを自動的に消去する機能\を持つ,デジタルコンテンツを処理可能とするプログラムを用いることは,当業者が容易に推考し得たことであると解される。その際,あらかじめ設定された所定時間の計時の開始の時期は提供者により適宜決定される設計的事項であるものと認められるから,プログラムの計時動作の開始時期をデジタルコンテンツを組み込んだときとし,消去動作の契機をプログラムの起動又は動作ステップとした上で,消去動作に伴って消去確認用のデータを提供者側装置に送るようにすることは,当業者が容易に想到し得たことであると解される。」

◆平成18(行ケ)10315 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年05月30日 知的財産高等裁判所

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◆平成19(行ケ)10003 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年05月24日 知的財産高等裁判所

   CS関連発明(BM発明)について進歩性なしとした審決が維持されました。
 「原告らは,売上額累計額が所定の条件を満足したときに特典の内容を付与することについては,何ら引用例が示されていないと主張するが,売上額累計額が所定の条件を満足したときに特典の内容を付与すること自体を内容とする引用例が示されていないとしても,上記(4)のとおり,引用例1発明と引用例2に記載されている事項から,「処理装置が売上金額を累計し,売上金額の累計額が購入条件テーブルに格納されている予め設定したボーナスポイントを発行する条件を満足したときには,購入者に対してボーナスポイントを発行する点数管理システム」を容易に想到することができるのであるから,相違点3に係る本願発明の構\成については,容易に想到することができるというべきであって,売上額累計額が所定の条件を満足したときに特典の内容を付与すること自体を内容とする引用例が示されていないことは,この判断を左右するものではない。また,原告らは,本願発明は,売上額の累計額に基づいて特典を付与するから,その時々の店舗の経済的な力量に見合った特典を付与することができるという発明の効果を奏するとも主張するが,本願明細書(甲3を甲4〜7で補正したもの)には,そのような効果についての記載はないから,原告らが主張する上記効果が本願発明の効果とは認められない。また,仮に,原告らが主張する上記効果が本願発明の効果と認められるとしても,上記のとおり当業者が容易に想到することができる構成から予\想し得る範囲内のものというべきである。」

◆平成19(行ケ)10003 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年05月24日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10281 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年04月26日 知的財産高等裁判所

  CS関連発明について、進歩性なしとした審決を取り消しました。理由は、”審査及び審判手続で挙示されなかった文献を周知技術として摘示し,かつ,これを引用例として用いることは、手続違反である”というものです。
  「以上検討したように,審決が認定した「業務の中で,一方の部署から,他方の部署へ書類を送付し,他方の部署で審査処理を行う場合に,その処理に要する時間を短くするために,一方の部署でできあがった書類を順に他方の部署に送付し,他方の部署では,それらの書類を順次受け取って処理を順次開始し進行させていき,最後に順次進行させた処理の総合的な結果に基づいて承認するか否かの結果を示すこと」は,たとえ周知技術であると認められるとしても,特許法29条1,2項にいう刊行物等に記載された事項から容易想到性を肯認する推論過程において参酌される技術ではなく,容易想到性を肯認する判断の引用例として用いているのであるから,刊行物等に記載された事項として拒絶理由において挙示されるべきであったものである。しかも,本件補正発明1が引用例1に記載された発明と対比した場合に有する相違点2の構成は,本願発明の出願時から一貫して最も重要な構\成の一つとされてきたのであり,出願人である原告が,審査及び審判で慎重な審理判断を求めたものであるのに,審決は,この構成についての容易想到性を肯認するについて,審査及び審判手続で挙示されたことのない特定の技術事項を周知技術として摘示し,かつ,これを引用例として用いたものであるから,審判手続には,審決の結論に明らかに影響のある違法があるものと断じざるを得ない。したがって,拒絶通知をした理由と異なる理由に基づいてされた措置が原告の防御の機会を与えなかったなどとして違法であるとする取消事由2は,上記の趣旨を主張するものとして理由があるものというべきである。」

◆平成18(行ケ)10281 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年04月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10355 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年04月26日 知的財産高等裁判所

  タクシーの表示装置(CS関連?)について、進歩性有りとした審決が取り消されました。
  「甲1の上記記載によれば,・・・したがって,甲1の39頁の「表示部」には,料金にとどまらず,運賃料金を計算する条件を文字で表\示することが予定されているというべきである。本件明細書においては,「空車,賃走,割増,迎車,支払等」をタリフとして例示しているが,甲1の表\示部にも「割増の事由や割増率」などを表示することが記載されているのであるから,甲1の39頁にいう「表\示部」には,タリフ表示も含むということができる。・・・・このように,甲1は,少なくとも人数,荷物,迎車等のタリフ表\示を,ディスプレイタッチで表示することが示唆され,そのためには,これらのタリフ表\示をドットマトリックス方式で行うことが前提となる。以上のとおり,甲1には,タリフ表示も含む表\示部にドットマトリックス方式を採用することが記載されているということができる。したがって,「タリフ表示部までにもドットマトリックス方式を採用することが記載されているとは読み取ることができない」とした審決の認定は誤りである。」

◆平成18(行ケ)10355 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年04月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(ワ)1199 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成19年04月19日 東京地方裁判所

 CS関連発明について、他のソフトウェアのマニュアルに記載された発明から容易であるとして、権利行使不能\と判断されました。
 「ARC/INFO のマニュアル類は,ARC/INFO マニュアルV5も含め,多数のライセンシーとその社員,従業員,学生など不特定多数の人に頒布され,その内容が公開されていること,マニュアル類自体には,ソースコード等の開示はなく(乙24,25),高度の秘密情報が記載されているものではないこと,ARC/INFO の営業活動においては,当該マニュアル類が実際には厳格に秘密として管理されておらず,契約条項において定められている秘密保持条項は,実際には,ソフトウエアを念頭に置かれたものであり,マニュアルについては営業政策上厳格な秘密保持義務を課していたとまでみることはできないことが認められ,以上によれば,ARC/INFOマニュアルV5を含む上記マニュアル類は「日本国内又は外国において,頒布された刊行物」に該当するものと認められる。」

 同じ特許に対する判決です。
   ◆平成16(ワ)17929等 特許権侵害差止請求権不存在確認等請求事件 特許権民事訴訟 平成19年03月29日 東京地方裁判所

◆平成17(ワ)1199 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成19年04月19日 東京地方裁判所

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◆平成18(行ケ)10161 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年03月26日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明における進歩性判断事例です。争点はいくつかありますが、パチンコ機におけるの引例として、テレビ会議システム等に採用されている技術を組み合わせる動機付けがあるのか等が争われました。
 「以上によれば,複数の画像表示領域を有する引用刊行物1発明において,大当たりの組合せとなるか否かを表\示する画像表示技術という性質上,大当たりの組合せとなるか否かを最終的に表\示するものである,中デジタルBの画像が注目されるものであり,同発明は,その注目される中デジタルBの画像を見やすくするという課題を有していたということができるし,また,画像を拡大表示することを開示している。一方,前記(2)のとおり,本件出願の出願日当時,注目される部分の表示内容を見やすくするという課題を解決するため,複数個の表\示領域を備える表示装置において,注目すべき表\示領域を他の表示領域にまで拡大することは,周知・慣用の技術であったと認められる。そうすると,引用刊行物1発明は,上記周知・慣用技術と同様の課題を有していたものと認められ,引用刊行物1発明が画像を拡大表\示することを開示し,その点において,画像を拡大表示する上記周知・慣用技術と共通することからすれば,引用刊行物1発明に対して,画像表\示技術分野における同様の課題を映像領域の拡大等の手段により解決する上記周知・慣用技術を適用することに動機付けがあったというべきである。このことに,引用刊行物1発明が属する遊技機の分野では,複数の画像表示領域からなる画像表\示技術において,複数の表示領域を使用して,図柄を見やすくすることは既に知られていたことも併せ考慮すると,当業者は,引用刊行物1発明に対して上記周知・慣用技術を適用することに容易に想到することができたものと認められる。」
こちらは関連事件です。
    平成18(行ケ)10162 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年03月26日 知的財産高等裁判所
    平成18(行ケ)10163 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年03月26日 知的財産高等裁判所
    平成18(行ケ)10196 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年03月26日 知的財産高等裁判所
    平成18(行ケ)10197 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年03月26日 知的財産高等裁判所

◆平成18(行ケ)10161 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年03月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10245 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年03月08日 知的財産高等裁判所

   発明は、特定のラベルを印刷するプリンタに関するものですが、CS関連発明の進歩性判断の参考になるかもしれません。
   「甲第1号証の・・・との記載によれば,甲1発明において,「特売期間」の設定に係るフラグYF2が,印字機構部の選択に関与しないこと,すなわち,「特売価格」は,通常の計量ラベルに印字されることが認められる。しかしながら,審決が,この「特売価格」ではなく,「広告文データ」を,本件発明の「値引価格」と対比させ,両者が「通常データ(計量データ)とは異なるデータである点で共通している。」と認定したことが誤りであるということはできない。すなわち,発明の進歩性の判断に際し,当該発明の発明特定事項と,引用発明の発明を特定するための事項とを対比するに当たっては,当該発明の発明特定事項の機能\,作用,性質等に着目し,引用発明のそれと共通する機能,作用,性質等を備える発明特定事項と対比することにより,両発明の一致点,相違点を認定することは,通常行われている手法である。そして,本件発明の要旨に照らし,本件発明は,印字データ中に「値引価格」が含まれているときには,通常ラベルを発行する通常ラベル印字部ではなく,臨時ラベル印字部に,値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベルを発行させるものであることが認められる。他方,甲1発明においては,上記のとおり,「特売価格」は,通常の計量ラベルに印字されるものであるのに対し,甲第1号証の・・・との記載によれば,通常の計量ラベルデータと「広告品」等の広告文データとから成るラベルを,プロモーションラベルとして,通常の計量ラベル印字機構\部(第1の印字機構部3)とは異なる印字機構\部(第2の印字機構部4)によって印字することが開示されているものと認められる・・。そうすると,本件発明の「値引価格」が,通常ラベルには印字されず,臨時ラベル印字部によって臨時ラベルにのみ印字されること,すなわち,「値引価格」に係る印字データが通常のデータと異なるデータとしての機能\,性質を有することに着目し,甲1発明において,通常の計量ラベルに印字される「特売価格」ではなく,通常の計量ラベル印字機構部とは異なる印字機構\部によって,通常の計量ラベルとは異なるラベルに印字される「広告文」を,それに係るデータ(広告文データ)が通常のデータと異なるデータとしての機能,性質を有するものとして,本件発明の「値引価格」と対比することは合理的であり,したがって,審決の上記認定に誤りはない。」

◆平成18(行ケ)10245 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年03月08日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10779 特許取消決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年02月28日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
  「上記の事項からは,刊行物1記載発明において,OSがアプリケーションの印刷処理に共通な機能を提供する印刷制御プログラムを有し,印刷制御プログラムはプリンタドライバを介してプリンタに印刷コマンドを転送すること,プリンタドライバがプリンタを制御することが認められる。また,プリンタドライバがプリンタとのインターフェイスを動作させる部分をOSから独立させた別のプログラムであることは,コンピュータの分野では技術常識であり,ワイヤドットプリンタとの接続方式とレーザプリンタとの接続方式とは,異なるのが一般的であるから,刊行物1記載発明の各プリンタドライバが本件発明のホストコンピュータデータインターフェイス制御部に対応するものであることは,明らかである。したがって,刊行物1記載発明におけるOSの印刷制御プログラムの一態様として,プリンタドライバの機能\以外の,印刷処理に共通な機能のみを有する場合,すなわち,ホストコンピュータと印刷装置の接続方式について共通な機能\のみを有する場合も含まれる。以上によれば,刊行物1記載発明におけるOSの印刷制御プログラムは,本件発明のホストコンピュータデータ処理部に対応するものと解するのが相当である。刊行物1記載発明において,OS205は,ワイヤドットプリンタドライバ208とレーザプリンタドライバ209を介して,低速で安価なワイヤドットプリンタ103と高速なレーザプリンタ104の2種類のプリンタを制御しているから,印刷装置が異なる場合でもOS205をそのまま使うことができ,刊行物1記載発明のOS205(本件発明1の「ホストコンピュータデータ処理部」に相当)を,ホストコンピュータと印刷装置の接続方式が異なる場合でも共通にすることは,当業者が容易になし得るとした決定の判断は,是認し得るものである。」

◆平成17(行ケ)10779 特許取消決定取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年02月28日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10203 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年02月27日 知的財産高等裁判所

  CS関連発明について、進歩性なしとした審決が取り消されました。
 「甲第3号証には,・・・との各記載があり,これらの記載によれば,引用発明2は,ネットワークサービスに関する利用者の認証システムであり,認証用コードである「一時的なパスワード」は,例えば「VWXYZ」のような文字メッセージであって,利用者(被認証者)により,利用者のパーソナルコンピュータに入力されるものであることが認められ,また,認証用コードを使用する場所は,利用者の自宅等,被認証者の支配領域内であり,被認証者と認証要求者(ネットワーク資源の提供者)とは対面しておらず,認証用コードは,利用者のパーソ\ナルコンピュータのキーボードという,通常,パーソナルコンピュータに付属し,かつ,汎用性の高い入力機器によって入力されることが示唆されているということができる。そうすると,上記甲第2号証の場合において,認証用コードとしてバーコードを利用することを合理的とした事情,とりわけ,店舗内という他の来店客等の目を考えなければならない状況,認証要求者側の者と被認証者が,認証要求者の支配領域内で対面し,認証コードの入力を認証要求者側が,認証要求者の装置で行い得るという不正に対処する上での利点,バーコード読取り装置の汎用性のないという欠点を,多数の来店客について使用することによって補い得ること等は,引用発明2においては存在し得ない条件となるから,これらの点について何ら考慮することなく,甲第2号証に,携帯電話を認証に用いる際,認証用コードとしてバーコードを表\示するものが示されているとの理由により,引用発明2に,認証用コードとしてバーコードを適用することが,当業者に容易になし得ることとするのは誤りである。」

◆平成18(行ケ)10203 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年02月27日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10255 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年02月15日 知的財産高等裁判所

  CS関連発明について、進歩性なしとした審決が維持されました。
  「上記(1)のとおり,求人情報を閲覧した求職者が所望の求人情報を選択して応募するシステムは,引用例1の従来の人材募集サイトとして,本件出願前既に実現されていたと認められるから,引用例1に記載された発明の案件情報の検索システムと求人情報を閲覧した求職者が所望の求人情報を選択して応募するシステムを単に寄せ集めてホームページを作成する程度のことは,当業者が容易に想到し得たものである。そして,上記イのとおり,本願補正発明は,それぞれ独立した案件情報の検索システムと求人情報の検索システムを単に寄せ集めてホームページを作成することにより複数情報の検索を実現するという態様をも含むのであるから,クライアントに案件情報と求人情報とを同時に提供することは,当業者が適宜なし得るものであるといわなければならない。」

◆平成18(行ケ)10255 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成19年02月15日 知的財産高等裁判所

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◆平成18(行ケ)10253 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成18年12月25日 知的財産高等裁判所

  ビジネスモデル特許(CS関連)に関する進歩性が争われました。裁判所は、進歩性なしとした審決を維持しました。
 「結婚式場の決定プロセスが,多様な制約条件の中で試行錯誤を繰り返すことを本質とするものであり,予めユーザにおいて具体的なニーズが決まっているホテル予\約情報等と異なる性質を有することを前提としたとしても,上記(2)イで説示したように,情報サービス端末用プラットフォームや双方向情報提供装置といった仕組みにおいて,ホテル等旅行情報と結婚式場等ブライダル情報とが,提供する情報の内容の例として並記され,ホテル等旅行情報の案内と結婚式場等ブライダル情報の案内とが,提供すべき情報の内容を構成するものとして,本願の出願前によく知られていたというのである。これに照らせば,ユーザによるホテル等と結婚式場等の決定プロセスに原告主張のような相違があったとしても,当業者が刊行物2や乙1,2の記載内容を引用発明に適用することを技術的に妨げる要因になるとまでは解することができない。以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。」

◆平成18(行ケ)10253 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成18年12月25日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10844 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年11月08日 知的財産高等裁判所

  CS関連発明の進歩性について争われました。無効理由なしとして審決が維持されました。
 「換言すれば,相違点cに係る本件特許発明1の構成を得るためには,甲第1号証及び上記周知事項のほか,認証の結果を利用したい主体が「端末機」であるような構\成からなる発明が,公知事実(特許法29条1項各号所定の発明)として必要であり,このような公知事実なくして,甲第1号証発明と上記周知事項のみに基づいて,認証の結果を何ら必要としていない「発信者ID取得蓄積装置」に,認証の結果を送信する構成を採用し,相違点cに係る本件特許発明1の構\成とすることは,当業者であっても容易になし得るところではないというべきである。」
 原告は、審決では採用されていない新たな証拠を提出しましたが、これについても、「甲第5,第7号証記載の発明をもって,このような公知事実と主張し得ない」と判断されています。

◆平成17(行ケ)10844 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年11月08日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10704 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年10月04日 知的財産高等裁判所

  ビジスネモデル発明(CS関連)について、記載不備が争われました。知財高裁は、不明瞭とした審決を維持しました。
  「これらの記載によれば,本願明細書の発明の詳細な説明には,実施例の説明として,キャッシュの割引率・・・との2つに分離し,【数10】により定式化すること,[0,1]を100等分した各ρの値で,一般化最小2乗法による演算を実行し,100個の平均割引関数オーバーバーD (s)を計測すること,一般化最小2乗和が最小となtるρを求め,その下での平均割引関数を最適解とすることが,開示されている。したがって,本願発明の「国債市場価格と国債理論価格との差額を算出」する手法の一つとして,一般化最小2乗法による演算を実行して,一般化最小2乗和を求めるという手法があり,その場合,請求項1の「複数の国債間の相関を表現するパラメータの最適値を該差額を用いて算出」するとは,一般化最小2乗和が最小となるρを求めることを意味することは,明らかである。しかしながら,一般化最小2乗法は,回帰分析の一手法にすぎず,本願発明の特許請求の範囲の記載は,回帰分析の手法を一般化最小2乗法に限定するものではない。また,一般化最小2乗法のみに限定して解釈するとしても,請求項1は,「複数の国債間の相関」としてどのようなものを想定するかを特定するものではない。しかるに,本願明細書には,一般化最小2乗法以外の回帰分析の手法や,実施例に例示された「λ 」「φ 」以外の相関構造について,全くght ght.jr」記載されていない。また,公知技術や周知技術を参酌することによって,一般化最小2乗法以外の回帰分析の手法や,「λ 」「φ 」以外の相ght ght.jr関構造を採用した場合について,「企業の倒産確率及び回収率を正確に計測する」という本願発明の効果を奏することの立証もされていない。そうすると,一般化最小2乗法以外の回帰分析の手法や,「λ 」「φ 」以ght ght.jr外の相関構造を構\成として含む本願発明は,明確でないというべきである。」

◆平成17(行ケ)10704 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年10月04日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10698 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年09月26日 知的財産高等裁判所

 CS関連発明について、成立性なしとした審決が維持されました。
 「したがって,上記旧請求項11の記載からは,本願発明の「ポイント管理方法」として,コンピュータを使ったものが想定されるものの,ソフトウエアがコンピュータに読み込まれることにより,ソ\フトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって,使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより,使用目的に応じた特有の情報処理装置の動作方法を把握し得るだけの記載はない。」

◆平成17(行ケ)10698 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年09月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10425 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年09月26日 知的財産高等裁判所

 パチンコホールで得た景品の換金システム(CS関連発明)について、記載不備(36条4項、6項)および進歩性(29条2項)無しとした審決について、記載不備については取消理由ありとの判断がなされましたが、進歩性については取消理由無しとの判断がなされました。

◆平成17(行ケ)10425 審決取消請求事件 特許権行政訴訟 平成18年09月26日 知的財産高等裁判所

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◆平成17(行ケ)10514 審決取消請求事件 平成18年06月21日 知的財産高等裁判所

ゲーム機(CS関連発明?)について、進歩性および記載不備が争われました。裁判所は、進歩性無しおよび記載要件違反とした拒絶審決を取り消しました。
 1)進歩性については以下のように認定しました。
 「リーチ目による演出においては,「演出が実行されている場合に・・・演出を強制的に終了させる」ことは想定できず,審決が「リーチ目による演出の場合,メダルが投入された時に,前記演出が実行されている場合には,リールが回転することにより前記演出が強制的に終了させられることは自明である。」と認定したことは誤りである」
 2)記載不備については以下のように認定しました。
 「本願発明においては,演出の実行途中であってもこれを強制的に終了させることができるため,同じ演出が繰り返されるたびに一定時間待つ必要がなくなり,ゲームの次の操作へスムーズに移行できること,が記載されているものと認められる。 以上のとおり,本願発明において演出を強制的に終了させることが所定の効果を奏することについては,本願明細書に十分に記載されているということができ,審決が「実行されている演出を強制的に終了させることが,なぜ,ゲームの流れが阻害されることはなく,遊戯者の趣向を損なわない,遊戯意欲の高い遊戯台を提供することができるという効果を奏するのか不明である。」と判断したことは,誤りである。」

◆平成17(行ケ)10514 審決取消請求事件 平成18年06月21日 知的財産高等裁判所

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◆H17. 6.28 知財高裁 平成17(行ケ)10335 特許権 行政訴訟事件

 CS関連発明について、進歩性なしとの審決が維持されました。
 本願補正発明は,物品リストに物品の数を入力し,その入力情報に基づいて運送費の見積りの計算を行うというにとどまり,物品の数を用いた具体的な見積り計算については,何ら特定されていないし,明細書にも,具体的な見積り計算の方法は記載されていない。そして,「予め設定されたプログラムによって表\示される物品リスト中の該当するものにその物品の数を入力する」ように,通信ネットワークを利用してシステム化することで,「人手を要せず,無人での運用」が可能となることは当然である。そうすると,引用例1記載の費用の見積りという通信ネットワークを利用した機能\を,運送費の計算に適用した場合には,運送費の見積りの際に人手が介在されることがなく,このために見積りに要する時間とコストとを最小限に抑えることが可能になり,業者側の負担が著しく軽減されることになるのは当然であるから,本願補正発明の作用効果が,格別顕著なものであるということはできない。

◆H17. 6.28 知財高裁 平成17(行ケ)10335 特許権 行政訴訟事件

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◆H17.12. 8 知財高裁 平成17(行ケ)10393 特許権 行政訴訟事件

  CS関連発明について、新規事項か否かが争われました。裁判所は新規事項であるとした審決を取り消しました。
   「当初明細書等には,プログラムの機能として,購入者による購入数量等の入力を受けた演算と,その演算結果(購入金額)の画面への出力が記載されているにすぎない。しかし,本願発明は,商品を桝目で選択するプログラムを用いたものであり,単に,購入者による購入数量等の入力を受けた演算とその結果の出力を行うにとどまるものではない。すなわち,当初明細書等の記載によれば,従来は商品に共通事項があっても,商品の規格やサイズ等が異なれば,販売者において個別に入力し,購入者において個別に閲覧する必要があったところを,商品を桝目で選択するプログラムを用いることによって,販売者の入力を省力し,購入者の閲覧を容易にしたところに本願発明の本旨があるとされているのであるから,このプログラムが共通事項をまとめて表\示する機能を有することは,本願発明において当然の前提とされているものである。このことは,当初明細書等の図面2において,・・・項目が示され,これらを含む全体が「商品を桝目で選択するプログラム」として示されていることからも,裏付けられるものである。以上から,発明特定事項A「プログラムが共通事項をまとめて表\示する。」は,当初明細書等の記載から自明であると認められる。」
 「本願発明は,商品を桝目で選択するプログラムを用いたものであって,同プログラムによって,購入者は,桝目の商品を選択することができるのであるから,単なる販売者の設定行為があるだけでは足りず,プログラムによって各商品が桝目ごとに特定されていることが,本願発明においては当然の前提とされているものである。また,当初明細書等の図面2において,購入者に閲覧させる表示情報として商品一覧表\が示され,同表は「商品を桝目で選択するプログラム」の一部とされていること,図面3において,販売者の入力行為を受けた「商品」という項目が「商品を桝目で選択するプログラム」の一部として示されていることに照らせば,商品一覧表\の表示,ひいては同表\の桝目により特定された商品の表示が,プログラムによるものであることが,これらの図面に示されているものといえる。以上によれば,発明特定事項B「プログラムが桝目の縦軸,横軸の条件に合った商品を商品一覧表\に表示し特定する。」は,当初明細書等の記載から自明であると認められる。」

◆H17.12. 8 知財高裁 平成17(行ケ)10393 特許権 行政訴訟事件

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◆H17.11.24 知財高裁 平成17(行ケ)10170 特許権 行政訴訟事件

  CS関連発明について、発明の成立性および記載不備が争われました。
  裁判所は、前者については、「こうしたソフトウエアを利用するソ\フトウエア関連発明が,”自然法則を利用した技術的思想の創作”であるためには,発明はそもそもが一定の技術的課題の解決手段になっていなければならないことから,ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によって,技術的課題を解決できるような特有の構\成が具体的に提示されている必要がある。」として、審決を維持しました。
 また、後者については、特許庁の「サーバーコンピュータのハードウェア(データベース)に記憶された情報をどのように読み出し,ハードウェア資源を利用してどのような情報処理を行うことにより,当該(オ)の「前記複合投資受益権を前記特定目的会社に譲渡することで,受託者において再投資資金を調達し,これを新たに複数の委託者に再投資する出資金の再運用によって収益力を高めることを可能とする」ことができ,「コンピュータネットワークによる証券化システム」を実現できるのかという点については,一切記載がなく不明である。」とした審決を維持しました。

◆H17.11.24 知財高裁 平成17(行ケ)10170 特許権 行政訴訟事件

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◆H17.11.10 知財高裁 平成17(行ケ)10125 特許権 行政訴訟事件

  データ構造関連発明(CS関連?)についての進歩性が争われました。裁判所は、進歩性無しとした審決を取り消しました。
 「乙1文献には,トラックに変調を施すことで記録される信号がアドレス情報に限定されるものではなく,種々の情報を記録し得ることが示されているということができるが,乙1文献においてトラック変調によりコードを記録する際に,アドレスコードと補助コード等その他の情報を同一のフォーマットで交互に記録することが示唆されているとまで認めることができない。したがって,被告が主張する周知技術を引用発明に適用するに際して乙1文献を参照しても,トラックに変調を施すことで「適合化情報」を記録し得ることが想定されるにすぎず,「補助コードをアドレスコードと交互に同一のフォーマットで記録する」という本願発明の構成を容易に想到することができたものと認めることはできない。・・・・乙2文献記載のレベル検出信号は,各セクタのヘッダー領域にアドレス信号と共に記録されるものであって,本願発明のように,「アドレスコードが位置する逐次トラック部分のアドレスを規定するアドレスコード」と交互に配置されるものではなく,また,レベル検出信号は,読み出しレーザ光の検知に用いる飽和信号レベルや未記録信号レベルを与えるものであって「コード」ではないから,本願発明にいう「記録システムによる使用のための制御データを規定する補助コード」に該当するものと認めることはできない。」

◆H17.11.10 知財高裁 平成17(行ケ)10125 特許権 行政訴訟事件

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◆H17.10.13 知財高裁 平成17(行ケ)10348 特許権 行政訴訟事件

 CS関連発明について、詳細な説明に記載されたものではないとして訂正を認めなかった審決が、取り消されました。
 裁判所は、「以上の記載によれば,入力された文字情報を検索キーとして検索をするのは,文字情報記憶部42に登録されている文字情報群であり,管理テーブルは,検索キーが登録されている(登録済みキーと一致する)ときに,これに対応する図形情報を図形情報記憶部41から読み込む際に参照されるものであるということができる。エ そうであれば,請求項1の「(b)・・・記憶する管理テーブルに登録する」,「(c)入力された文字情報を検索キーとして前記管理テーブルに登録された文字情報群」との記載は,それぞれ「(b)・・・文字情報記憶部に登録する」,「(c)入力された文字情報を検索キーとして前記文字情報記憶部に登録された文字情報群」の誤記であると認められる・・・。したがって,訂正事項1は,誤記の訂正を目的とするものであるということができる。」と述べました

◆H17.10.13 知財高裁 平成17(行ケ)10348 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 9.30 知財高裁 平成17(ネ)10040 特許権 民事訴訟事件

 アイコン特許(CS関連発明)について、地裁判決が破棄されました。判決文を見る限り、控訴審で無効資料が新たに提出されたようです。
 知財高裁は、「アイコンの機能説明を表\示させる機能を実行するための手段についてみても,本件特許出願前の1988年(昭和63年)7月に頒布された乙12文献(「ハイパープログラマーのためのハイパーツール」)には,「ハイパーツールは,あなたが異なるツールに関する情報を素早く得ることを可能\とする,組み込みヘルプ機能を含みます。このスクリーン上のツールについてヘルプを得るには,ヘルプ・アイコンをクリックします。そして示されたツールのアイコンのうちいずれかをクリックします。」(訳文〔甲19〕14頁下から7行目ないし下から4行目)と記載されているから,本件特許出願当時,ヘルプを得るためのアイコン,すなわち,機能\説明を表示させる機能\を実行させるアイコンも,既に公知の手段であったことが認められる。そうであれば,乙18発明において,アイコンの機能説明を表\示させる機能を実行させる「機能\説明表示手段」として,「スクリーン/メニュー・ヘルプ」アイテムに代えて「アイコン」を採用することは,当業者が容易に想到し得ることというべきである。」と判断しました。

 少し気になるのは、今回の事例で、101条4号の間接侵害が成立しないと述べている点です。知財高裁は「同号は,その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施することが可能である物についてこれを生産,譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものであって,そのような物の生産に用いられる物を製造,譲渡等する行為を特許権侵害とみなしているものではない。」といっている点です。もし、方法クレームしかなければ、プログラムが記録されたCD−ROMの差止ができないということになりそうです。

◆H17. 9.30 知財高裁 平成17(ネ)10040 特許権 民事訴訟事件

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◆H17. 9. 1 知財高裁 平成17(行ケ)10306 特許権 行政訴訟事件

  パチスロ機についての進歩性が争われました。裁判所は、審決の判断に誤りはないと判断しました。

◆H17. 9. 1 知財高裁 平成17(行ケ)10306 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 8. 3 知財高裁 平成17(行ケ)10203 特許権 行政訴訟事件

 CS関連発明の進歩性が争われました。裁判所は、拒絶審決を維持しました。
◆H17. 8. 3 知財高裁 平成17(行ケ)10203 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 8. 3 知財高裁 平成17(行ケ)10216 特許権 行政訴訟事件

 メールシステムの仕組み(CS関連発明)の進歩性が争われました。裁判所は、特許庁の拒絶審決を維持しました。
◆H17. 8. 3 知財高裁 平成17(行ケ)10216 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 5.17 知財高裁 平成17(行ケ)10099 特許権 行政訴訟事件

 (CS関連発明?)「対象画像を読み取ってデジタル画像データに変換する手段」という文言が、分割要件を満たしているか(当業者自明事項であるのか)が争われました。裁判所は、分割要件を満たしていないとした特許庁の審決を認容しました。
 「原出願当時,?@デジタル画像データを作成する装置として,テレビカメラ,スキャナ,電子カメラ,ビデオカメラなど,種々の装置,?A上記種々の装置のいずれかにより作成した,いずれのデジタル画像データに対しても,パソコン等の画像処理装置により,所定の画像処理を施すことは,いずれも周知であったことが認められる。しかし,原出願当初明細書に記載された画像処理システムが,フィルムの像を読み取りデジタル画像データに変換するスキャナ手段を備え,画像処理された「デジタル画像データ」をラボ側システムに送信してプリントすることを特徴とするものであることは,上記記載のとおりであるから,一般にデジタル画像データを作成する装置として,テレビカメラ,電子カメラ,ビデオカメラが周知であっても,原出願当初明細書には,装置の構\成として,これらの手段やこれによって作成されたデジタル画像データを画像処理システムに取り込む装置は何ら記載がない以上,テレビカメラ,電子カメラ,ビデオカメラで得られた「デジタル画像データ」が撮影者側で編集され,ラボ側システムに送信されてプリントされることが,原出願当初明細書の記載から自明であるということはできない。」

◆H17. 5.17 知財高裁 平成17(行ケ)10099 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 5.12 知財高裁 平成17(行ケ)10300 特許権 行政訴訟事件

 電子マネー関係の特許(CS関連発明?)について、「残高を読取り,出金後にそれを更新するとの記載はないものの,そのような動作を行っているとするのが自然であり合理性がある。」と推断した審決を取り消しました。
 

◆H17. 5.12 知財高裁 平成17(行ケ)10300 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 3.30 東京地裁 平成15(ワ)1068等 特許権 民事訴訟事件

  カーナビ装置(CS関連?)についての侵害事件です。特許請求の範囲だけ見ると基本特許のようにも見えます。明細書検討してみたいですね。裁判所は無効については判断せず、技術的範囲に属しないと判断しました。

◆H17. 3.30 東京地裁 平成15(ワ)1068等 特許権 民事訴訟事件

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◆H17. 3.22 東京高裁 平成16(行ケ)99 特許権 行政訴訟事件

  CS関連発明に関する進歩性が争われた事件です。裁判所は、進歩性なしとした特許庁の判断を取り消しました。
  問題となった請求項は、「可搬型メディアを駆動するための第1の電子計算機と,前記可搬型メディアの内容に関連するメディア関連情報と前記可搬型メディアの内容の表示・出力の方法とを提供する第2の電子計算機とから少なくとも構\成され、前記第1と第2の電子計算機は,ネットワーク等を経由してそれぞれ通信することが可能であり,前記可搬型メディアは,当該メディアと他のメディアとを区別できるメディア識別情報をその一部に含むメディア活用情報を,当該メディアの本来の記憶領域とは異なる専用の箇所に電子的に記録している媒体であり,前記第1の電子計算機は,前記可搬型メディアを駆動するメディア駆動手段と,情報を表\示・出力する情報表示・出力手段と,ネットワークに対する入出力を行なう第1の情報送受信手段とを備え,前記第2の電子計算機は,ネットワークに対する入出力を行なう第2の情報送受信手段と,前記第1の電子計算機上での前記メディアの表\示・出力に利用するデータとその表示・出力の方法とを規定する対象・方法情報を前記メディア識別情報をもとに生成する対象・方法情報生成手段とを備え,前記情報表\示・出力手段が,前記対象・方法情報に規定された方法に従って前記可搬型メディア内のデータを表示・出力することを特徴とする,可搬型メディアとネットワークの連携装置。」というのものです。
 裁判所は、「そうすると,引用例1及び2は,いずれも,個々のメディアに対応付けられたメディア識別情報に基づいて,メディアの表示・出力に利用するデータとその表\示・出力の方法とを規定する「対象・方法情報」を情報提供者システムないしホストコンピュータ(本願発明の第2の電子計算機)で生成し,この「対象・方法情報」を送信することによって,利用者端末装置2ないしユーザ側端末(本願発明の第1の電子計算機)で表示される表\示内容を変えるという発想も動機付けも与えるものではないというべきである。・・・以上のとおりであるから,相違点1について「引用例1に記載の発明においても,引用例2に記載の手段を採用し,当該CD−ROMを特定する情報に基づいてアクセス情報を得て,それによって表示内容を変えるようにすることは,容易に考えられること」であるとして,相違点1に係る本願発明を容易想到とした審決の判断は,誤りというべきであって,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,原告の取消事由2の主張は,理由がある。」と判断しました。

◆H17. 3.22 東京高裁 平成16(行ケ)99 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 3. 3 東京高裁 平成15(行ケ)530 特許権 行政訴訟事件

 CS関連発明について、特許請求の範囲に記載された「同時に」という構成要件を「特定の情報フィールドの指示に『連動してないし自動的に』,あらかじめその特定の情報フィールドにリンクされている所定のツールを表\示するということ」を意味するものと解し得るか否かということが争われました。
 裁判所は、「参加人は,「同時に」という用語を,「特定の情報フィールドの指示に『連動してないし自動的に』,あらかじめその特定の情報フィールドにリンクされている所定のツールを表示するということ」を意味するものと主張するが,「同時に」との日本語の意義は,「二つ以上のことがほとんど同じ時に行われるさま」であれば,様々な態様を広く含む意味を有するのであって,「一方のことが他方のことに『連動して』いるとか,一方のことから『自動的に』他方のことが生じる」などという意味ないしニュアンスを含むものではない。参加人主張の意義をもたせるには,特許請求の範囲の記載においてしかるべき表\記をすべきところ,本件においては,単に「同時に」とされて,特段の定義付けがされているわけではなく(明細書においても定義は見当たらない。),また,特許請求の範囲の記載全体を精査しても,上記日本語の通常の意義と異なる意味に使われていることをうかがわせる記載は存在しない。  よって,「同時に」の解釈に関する参加人の主張は採用し得ず,これを前提とする主張も採用することができない。」と判断しました。

◆H17. 3. 3 東京高裁 平成15(行ケ)530 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 2.21 東京高裁 平成15(行ケ)36 特許権 行政訴訟事

   パチスロ(CS関連?)について、下記の80億の損害賠償請求が認められた特許について、無効審決が維持されました。

(H14. 3.19 東京地裁 平成11(ワ)13360 特許権 民事訴訟事件) (H14. 3.19 東京地裁 平成11(ワ)23945 特許権 民事訴訟事件)  

◆H17. 2.21 東京高裁 平成15(行ケ)36 特許権 行政訴訟事

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◆H17. 2.15 東京高裁 平成15(行ケ)430 特許権 行政訴訟事件

   CS関連発明について、進歩性が争われた事例です。裁判所は拒絶審決を維持しました。
  問題のクレームは、「オークションセンタ用機器とでマンション売買支援システムを構成するデータセンタ用機器であって、 各種物件の事例データを格納するデータベース部と、オークションセンタ用機器からの事例データ検索依頼を受ける検索依頼受付部と、検索依頼物件の事例データを検索する検索部と、検索結果の事例データを返送する検索結果返送部と、を備えることを特徴とするデータセンタ用機器」というものです。

◆H17. 2.15 東京高裁 平成15(行ケ)430 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 2.15 東京高裁 平成15(行ケ)580 特許権 行政訴訟事件

   パチスロ(CS関連?)特許です。特許庁の無効審決が維持されました。下記の80億の損害賠償請求が認められあと、無効審決がなされたた特許とは関係ありません。分割要件を満たしていないと判断されました。
(H14. 3.19 東京地裁 平成11(ワ)13360 特許権 民事訴訟事件) (H14. 3.19 東京地裁 平成11(ワ)23945 特許権 民事訴訟事件)  

 関連事件は(本件特許に基づく侵害訴訟:請求棄却)(H16. 5.14 東京地裁 平成14(ワ)13726 特許権 民事訴訟事件)こちらにあります。  

また、本件特許の親出願も、同様に、侵害訴訟で権利者敗訴、審決取消訴訟にて特許無効と判断されています(H14. 6.25 東京地裁 平成12(ワ)3563 特許権 民事訴訟事件)、 (H15. 5.29 東京高裁 平成14(行ケ)205 特許権 行政訴訟事件)  

◆H17. 2.15 東京高裁 平成15(行ケ)580 特許権 行政訴訟事件

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◆H17. 2. 1 東京地裁 平成16(ワ)16732 特許権 民事訴訟事件

  パッケージソフトに対して、アイコンの範囲および間接侵害が成立するかが争われました(CS関連発明?)。裁判所は、出願時の技術常識を考慮して、「アイコンとは、「表\示画面上に,各種のデータや処理機能を絵又は絵文字として表\示して,コマンドを処理するもの」であり,かつそれに該当すれば足りるのであって,本件明細書の記載によっても,本件特許出願当時の当業者の認識においても,それ以上に,ドラッグないし移動可能なものであるとか,デスクトップ上に配置可能\なものであるなどという限定を付す根拠はないというべきである。」と認定しました。
 また、間接侵害についても、「被告製品をインストールしたパソコン及びその使用は,本件各発明の構\成要件を充足するものであるところ,被告製品は,「被告製品をインストールしたパソコン」の生産に用いるものであり,かつ,「(従来の方法では)キーワードを忘れてしまった時や,知らないときに機能\説明サービスを受けることができない」という本件発明による課題の解決に不可欠なものであると認められる。また,被告製品が「日本国内において広く一般に流通しているもの」でないことは明らかである。被告は,Windowsというマイクロソフト社のオペレーティングシステムそのものに,本件発明と同様の機能\があるから,被告製品は「その発明による課題の解決に不可欠なもの」ではないと主張する。その主張の趣旨は必ずしも判然としないが,仮に被告がいうように,Windowsのヘルプ表示プログラム等によって,「『ヘルプモード』ボタンの指定に引き続いて他のボタンを指定すると,当該他のボタンの説明が表\示される」という機能が実現されるとしても,別紙イ号物件目録ないしロ号物件目録記載の機能\は,あくまで被告製品をインストールしたパソコンによってしか実行できないものであるから,被告製品は本件発明による課題の解決に不可欠なものであり,被告製品をインストールする行為は,本件特許権を侵害する物の生産であるといわざるを得ない。」と間接侵害認めました。かかる間接侵害の規定の適用は知っている限りでは初めてです。

 関連事件(当事者および該当特許が同じ)(H16. 8.31 東京地裁 平成15(ワ)18830等 特許権 民事訴訟事件)こちら(当事者同じ)にあります。 また、こちらは、(H16.10.29 東京地裁 平成15(ワ)27420 特許権 民事訴訟事件)当事者のみ同じ事件です。  

◆H17. 2. 1 東京地裁 平成16(ワ)16732 特許権 民事訴訟事件

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◆H17. 1.26 東京高裁 平成15(行ケ)540

 個性診断情報提供システム(CS関連発明?)について、自然法則を利用した発明でないので、進歩性主張が認められず、特許庁では拒絶審決がなされました。裁判所は、「本願発明が,生年月日という情報のみに基づいて個性因子を決定することを要素とするものである以上,例えば,生日に対応した「本質」の個性因子を決定する過程において自然法則が利用されているということができないのは明らか」と、特許庁の判断を維持しました。
 

◆H17. 1.26 東京高裁 平成15(行ケ)540

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◆H16.12.27 東京高裁 平成16(行ケ)209 特許権 行政訴訟事件

 CS関連発明において、クレームの用語が特許法36条4項1号の要件を満たしているかが争われました争われました。裁判所は、「36条違反である」とした審判を取り消しました。
  「訂正発明1が,カルテ作成やレセプト処理の機能を備える歯科情報処理装置のエラー項目の訂正を容易にするものであり,例えば,レセプト作成時に,同じ処置部位に対して重複して行われることのない処置が入力されている場合をエラーとして検出し,訂正を可能\にするものであることは上記(1)のとおりであり,レセプト処理のために歯科情報処理装置へ治療情報を入力する場合には,保険報酬を適法に請求するために歯科診療報酬点数表に従った入力がされることが必要であることは,上記(2)のとおり,歯科情報処理装置の分野における当業者の技術常識である。そうすると,訂正明細書(甲3添付)の特許請求の範囲【請求項1】記載の「同じ処置部位に対する過去の処置からして同じ処置部位に対して重複して行われることのない不適切な処置情報」の判別ないし発明の詳細な説明の段落【0072】の「同じ処置部位に対して重複して行われる事の無い処置」の抽出は,当業者の技術常識を参酌すれば,算定ルールに従って判断されるものと理解すべきものと認められる。」   

◆H16.12.27 東京高裁 平成16(行ケ)209 特許権 行政訴訟事件

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◆H16.12.27 東京高裁 平成16(行ケ)209 特許権 行政訴訟事件

  CS関連発明についての記載不備が争われました。争点は、「一括変換して再登録する再登録手段」について技術的な矛盾があるかでした。裁判所は、36条4項及び6項違反とした審決を取り消しました。
 

◆H16.12.27 東京高裁 平成16(行ケ)209 特許権 行政訴訟事件

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◆H16.12.27 東京高裁 平成15(行ケ)132 特許権 行政訴訟事件

  ゲーム装置(CS関連?)の進歩性が争われました。裁判所は、「模型体の走行態様の自由度を増してゲームを面白くするために,模型体の走行経路が規制されないようにしたゲーム装置を発明することは,当業者が容易に想到し得ることであった」と認定しました。
 

◆H16.12.27 東京高裁 平成15(行ケ)132 特許権 行政訴訟事件

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◆H16.12.20 東京高裁 平成15(行ケ)340 特許権 行政訴訟事件

  CS関連発明の進歩性についての判断です。
 

◆H16.12.20 東京高裁 平成15(行ケ)340 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 9.30 東京高裁 平成16(行ケ)37 特許権 行政訴訟事件

 「暗号モード」という文言が不明瞭として36条4項、6項違反として拒絶した審決が維持されました。その他、新規事項に該当するかも争点となっていましたが、こちらについては判断することなく、請求が棄却されました。
  裁判所は「本願明細書の特許請求の範囲に記載される「暗号モード」は、その意味・内容をそれ独自で規定することができないばかりでなく、「暗号」や「暗号等」を手がかりとしても規定することができないことから、不明瞭な記載であると解さざるを得ないところ、本願発明は、この「暗号モード」が適正と判断されると、「監視手段で捕捉したデータを中継側である前記管理コンピュータへセンシング情報として送信するステップ」へと進むものであるから、この「暗号モード」が不明瞭なままでは、該ステップも不明確であって、結局、本願発明の要旨を特定することはできないというべきである」と述べました。

◆H16. 9.30 東京高裁 平成16(行ケ)37 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 9.15 東京高裁 平成13(行ケ)159 特許権 行政訴訟事件

  歯科情報処理方法及び装置(CS関連発明?)についての進歩性が争われました。この種の情報処理装置における進歩性判断を争ったものはあまりありませんので検討に値するかもしれません。
 

◆H16. 9.15 東京高裁 平成13(行ケ)159 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 9. 6 東京高裁 平成15(行ケ)325 特許権 行政訴訟事件

  プログラムによるデータ演算処理が具体的でないという理由で拒絶した審決が裁判所でも維持されました。
 裁判所は、「”商品に基づく商品コード,商品サイズデータ,デザインデータの一以上と自己の身体のサイズデータをコンピュータにて演算,比較”という記載では,商品コードを用いてどのように演算し,あるいは比較するのか,その処理が不明であるというほかはない」と述べました。  

◆H16. 9. 6 東京高裁 平成15(行ケ)325 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 8.31 東京地裁 平成15(ワ)18830等 特許権 民事訴訟事件

 CS関連発明に関する判決です。特許請求の範囲の用語「アイコン」に該当するのかについて争われました。
 出願前の公知資料、明細書における記載を参酌して、「本件製品をインストールしたパソコンに表\示される「?」ボタン及び「表示」ボタン等は,本件各構\成要件にいう「アイコン」に該当しないから,本件発明の技術的範囲に属さず,同パソコンを製造等する行為は本件特許権を侵害しない」と認定されました。プログラムの販売行為が間接侵害に該当するのかも争点でしたが、こちらについては判断はなされていません。
 

◆H16. 8.31 東京地裁 平成15(ワ)18830等 特許権 民事訴訟事件

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◆H16. 7.30 東京高裁 平成15(行ケ)222 特許権 行政訴訟事件

 ゲームの操作インストラクションに関する特許について、無効理由無しとの判断がなされました。
 裁判所は下記のように述べました。「上記周知技術等と主張されるものは,単に,ある一つのボタンが押され,・・・一つ又は一連の操作の結果として生じる一つの動作ないし状態に関する情報のみを表示するものである。一方,本件第1発明は,「ゲーム表\示手段」であるテレビの画面上に,「操作入力手段」であるコントローラ(各種操作ボタンを有する)を模した表示をしておき,遊戯者が「操作入力手段」(コントローラ)を操作した際に,どの操作ボタンが操作されたのかを,上記のコントローラを模した表\示画像中に選択された「表示エレメント」を表\示することによって示すものであって,一連のボタン操作がされた場合には,そのことが順次かつ逐一,コントローラを模した状態で表示されるものである。このように,両者は,技術思想を異にするものというべきである。」

 

◆H16. 7.30 東京高裁 平成15(行ケ)222 特許権 行政訴訟事件

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◆H16. 6.29 東京高裁 平成14(行ケ)541 特許権 行政訴訟事件

 ゲーム機の進歩性が争われました。
 ゲーム機の進歩性が真っ正面から争われたという点でおもしろそうな事例です。

 ちなみに、訂正審判も同様の判断がなされました。
H16. 6.29 東京高裁 平成15(行ケ)322 特許権 行政訴訟事件
 

◆H16. 6.29 東京高裁 平成14(行ケ)541 特許権 行政訴訟事件

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◆H15. 4.16 東京地裁 平成13(ワ)15719 特許権 民事訴訟事件

  パソコンの画面上でウィンドウを複数重ね合わせて表\示する特許が侵害されたとして、差止および損害賠償を求めていた裁判で、東京地裁は、出願前の公知文献に記載された発明から進歩性がないとして、権利行使を認めませんでした。
主な争点としては、1)出願日前(86/2/15)より以前の(86/1/16)に当該マニュアルが配布されたか、2)当該配布がされているとして、容易想到性があるかが争われました。
上記争点1)について、裁判所はいろいろな資料から見て、86/1/16に当該マニュアルが配布されたと認定しました。たしかに、86/1/16に当該マニュアルが存在したことは立証できていると思われますが、86/1/16に当該マニュアルが配布されたかというと疑問がないわけではありません。当該マニュアルは、配布物としての保護を受けるために、訴外第三者によって米国政府へ著作権登録がなされています。そのときの申請内容では86/1/16発行となっていたことが、決め手になったのでしょうか?、確かに第三者がわざわざ嘘をつくことはないのですが、特許法における文献公知の認定としては少し甘いのではないでしょうか?。この点は控訴審で争われるかもしれません。もしかすると、裁判所は、訴外の第三者が86/1/16からショーで展示即売してと意思表示している以上、見ようと思えば見れる状態で展示されたので、販売されたという事実がやや疑問でも、文献公知と考えて差し支えないと考えたのでしょうか?
 争点2)については、当該マニュアルには、「表示優先順位が決められた」複数のウインドウを”その表\示優先順位に従って”重ね合わせることまでは開示されていない」と判断したものの、当該マニュアルと、Macintosh Revealedに記載されている技術を組み合わせることによって,容易に想到し得たものということができると容易であると認定しました。

 

◆H15. 4.16 東京地裁 平成13(ワ)15719 特許権 民事訴訟事件

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◆H14.10.30 東京高裁 平成14(行ケ)38 特許権 行政訴訟事件

 ゲームの規則に関する進歩性が争われました。
  「しかし,周知例2〜4に例示される周知技術であるパチンコ機等におけるリーチ予告表\示は,遊技者において,変動している図柄がそろうか否かを期待と不安をもって注視している状態で,これに続くリーチを予告することで,その後の大当たりの期待を増大させ,遊技の興趣を高めるために表\示されるものであることは明らかであるから,リーチが確定していない図柄変動状態が予定されている遊技機一般に適用し得るものというべきであり,図柄再変動機能\を有するがゆえにその適用が妨げられる理由は見いだせない。その場合の当該リーチ予告表\示を行う時期については,リーチが確定していない図柄変動状態 である限り,いったん非リーチ状態から図柄が再変動した図柄再変動状態であっても,遊技者において変動している図柄がそろうか否かを期待と不安をもって注視している状態であることに変わりはないのであるから,再変動機能を備えた遊技機にリーチ予\告表示を組み合わせる場合に,非リーチ状態を経た図柄再変動状態に適用することは,当業者の当然に想起するところというべきである。」と述べました

 

◆H14.10.30 東京高裁 平成14(行ケ)38 特許権 行政訴訟事件

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◆H14. 9.12 東京高裁 平成12(行ケ)392 特許権 行政訴訟事件

CS関連発明の侵害事件としては、アッセ対マイクロソフト事件が有りましたが、当該特許権の特許無効審判の審決取消訴訟について、高裁は無効審決を維持しました。
前回の侵害事件で間接侵害が問われましたが、無効理由があるというのも非侵害の結論に影響を与えたのかもしれません。

 

◆H14. 9.12 東京高裁 平成12(行ケ)392 特許権 行政訴訟事件

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