2003.06. 3
数値限定発明について、数値限定の意義を何ら検討することなく,単に公知発明がその数値限定の値を含んでいるという理由で新規性無しとした判断が争われました。裁判所は、特許庁の判断を取り消しました。
裁判所は、「 ・・・との記載から求めて,φC=1〜8.57eとして代入し,その結果が0.080〜0.682となることは前示のとおりである。そうすると,引用例の唯一の実施例は,本件発明の条件式の数値が0.080〜0.682の範囲内のものであるとしか特定することができず,この数値範囲の中から更に特定した数値の実施例は開示されていない。これに対し,本件発明の条件式から得られる具体的な実施例は,条件式の数値が0.20〜0.30の範囲となる実施例であり,引用例の実施例はこの条件式の数値範囲のものとはいえないから,両者が一致することを前提とする被告の主張は失当である。被告引用に係る東京高裁昭和56年10月20日判決・取消集〔昭和56年〕169頁は,当該「本件発明」が当該「引用発明」より広い概念の発明である事案に関するものである上,当該「本件発明」の条件式から得られる具体的な実施例と当該「引用例」の実施例とその一部が一致していることのみを理由としたものではなく,両発明の作用効果に格別の差異がないことをも理由としてその同一性を判断したものであって,事案を異にし,本件に適切ではない。」
◆H15. 5.30 東京高裁 平成14(行ケ)119 特許権 行政訴訟事件