実用新案登録を受ける権利の共有者が、単独名義で登録したと主張して,共有持分を2分の1とする共有持分権移転登録手続を請求しました。裁判所は、これを認めませんでした。
「実用新案法は,考案者がその考案について実用新案登録を受ける権利を有するとし(法3条1項柱書),また,冒認出願は先願としては認めず(法7条6項),冒認出願者に対して実用新案登録がされた場合,その冒認出願は無効理由となる(法37条1項5号)と規定している。また,法は,考案者が冒認出願者に対して実用新案権の移転登録手続請求権を有する旨の規定をおいていない。そして,実用新案権は,出願人(登録後は登録名義人となる。)を権利者として,実用新案権の設定登録により発生するものであり(法14条1項),たとえ考案者であったとしても,自己の名義で実用新案登録の出願をしその登録を得なければ,実用新案権を取得することはない。このような法の構造にかんがみれば,法は,実用新案権の登録が冒認出願によるものである場合,実用新案登録出願をしていない考案者に対し実用新案登録をすることを認める結果となること,すなわち,考案者から冒認出願者に対する実用新案権の移転登録手続請求をすることを認めているものではないと解される。」
◆平成19(ワ)1623 実用新案権確認反訴請求事件 実用新案権民事訴訟 平成19年07月26日 東京地方裁判所
2007.05. 2
同日出願によって本来は、協議またはくじの手続を経なければならなった商標権につき、無効とすべきものとはいえないとした審決が維持されました。
「思うに,法46条1項の無効審判事由該当性の有無の解釈に当たっては,違反した手続の公益性の強弱の程度,及び無効事由に該当すると解した場合の法制度全体への影響等を総合的に判断してこれを行うべきものである。・・・法8条は,前記のように,商標法における先願主義の立場を明らかにし,先願と抵触する重複登録はこれを避けようとした規定であると解される。そして,法8条の定めるこの先願主義ないし重複登録禁止の立場は,商標が商品の出所の同一性を明らかにするという意味での公益性に寄与するためのものであることは明らかであるが,その公益性の程度は,法47条が商標権の設定登録の日から5年を経過したときは無効審判請求をすることができないことを定めていることからして,重複した商標登録の併存を法が絶対に許容しない程の強い公益性を有するものと解することはできない(設定登録後5年を経過すれば,重複登録は適法に並存できる。)のみならず,商標法は,類似の規定を持つ特許法(39条)及び意匠法(9条)においてはいわゆる後願排除効がある(同一内容の後願は,先願が拒絶されても,受理されることはないという効力。特許法29条の2,意匠法3条の2)のと異なり,後願排除効がない(法8条3項)から,仮に平成12年1月24日に出願がなされた本件商標及び日清食品商標につき法8条2項若しくは5項違反により無効審判をすべきものと解することになると,それよりも後願の者(例えば原告)の商標登録出願を許容することになり,その後願者にいわゆる漁夫の利を付与することになって,法8条1項の先願主義の立場に反する結果になる。そうすると,法8条2項,同5項に違反し商標登録が無効となる場合(法46条1項1号)とは,本件審決(9頁20行〜24行)も述べるように,先願主義の趣旨を没却しないような場合,すなわち出願人の協議により定めたにも拘わらず定めた一の出願人以外のものが登録になった場合,くじの実施により定めた一の出願人でない出願人について登録がなされたような場合をいうものと解するのが相当である。」
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平成18(行ケ)10458 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成19年04月26日 知的財産高等裁判所
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