知財みちしるべロゴマーク
知財みちしるべトップページへ

更新メール
購読申し込み
購読中止

知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

特許庁手続

平成24(行ウ)591 行政処分取消義務付け等請求事件 特許権 行政訴訟 平成26年03月07日 東京地方裁判所

 非常にレアなケースです。特許査定の取り消しが認められました。
 以上のとおり,行服法は,行政機関の専門的知識を活用し,簡易迅速な手続により,行政庁の違法(手続的違法を含む)又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し,国民に対し広く行政庁に対する不服申立ての途を開くことを目的として制定されたものであるところ,特許査定について,特許法上,特段,審査官側の手続違背についての定めがないことに照らせば,審査官の手続違背による違法について,行服法上の不服申\\立手続(行服法1条1項)を排除し,行訴法上の訴えのみをその救済手段とすることが必要であり,又は適切であるとみるべき事情は見出せない。被告は,特許査定が利益処分であって,出願人がこれを争う利益を有する場合が想定し難いことを理由として,行服法による不服申立てを排除することは相当である旨主張するが,審査官の手続違背を理由として特許査定を取り消すことが相当とされる場合があり得ることは,特許庁作成の「職権取消通知等に関する審査官用マニュアル」(甲14の3)にも挙げられているとおりであって,出願人が特許査定を争うべき場合が想定されないとはいうことができない。同マニュアルに職権取消事由の類型として挙げられている「対象案件を取り違えて特許査定した場合」や「補正書が特許査定の謄本と行き違いで提出された場合」は,まさに審査官の手続違背の場合を定めたものと解することができる。\n
ウ 以上によれば,特許査定について審査官の手続違背を理由とする不服については, 特許法195条の4において列記された処分につきみられた,前記アの「行政不服審査法による不服申立てをすることができない」とすることが相当である理由,がいずれも妥当しないのであるから,同条にいう「査定」には特許査定の全てが含まれるのではなく,処分に審査官の手続違背があると主張される場合の特許査定は含まれないものと解するのが相当である。エ したがって,特許査定は,処分に審査官の手続違背があると主張される限り,「他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分」(行服法4条1項但し書き)に当たらないから,原告らが審査官の手続違背を主張する本件においては(前提事実(8)ア参照),原告らは本件異議申立てを適法にすることができることになる。そうすると,本件は「処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合」(行訴法14条3項)に該当するものであって,前記(1)のとおり,原告らが,本件却下決定(後記(4)のとおり同決定は違法として取り消されるべきものである。)があったことを知った日から6か月以内に本件訴訟を提起している以上,本件特許査定取消しの訴えは,出訴期間を徒過して提起されたものに当たらず,却下すべきものに当たらない。
・・・
もとより,特許出願人は,願書における特許請求の範囲を自ら決定することができ(特許法36条2項),審査官は,当該特許出願について,その実体的特許要件の審査を行うのであるから(特許法49条,51条),審査官は,特段の事情がない限り,出願人の出願に係る特許請求の範囲に記載された発明が特許要件を充たすか否かを判断すれば足り,これを超えて出願人の出願内容がその真意に沿うものであるか否かを確認する義務はない。しかし,拒絶理由通知又は拒絶査定がされ,これに対し意見書の提出及び補正をする場合については,上述したその趣旨(拒絶理由について意見を述べ,かつ,拒絶理由を解消する機会を与えるという手続的利益を特許出願人に保障し,審査官に再考の機会を与えることにより,その判断の適正と発明の適正な保護を確保する)からみて,拒絶理由を出願人が正しく理解し,これに対応した意見書の提出及び補正がされ,審査官においてこれを十分に理解して審査を行うことが予\\定されているのであるから,拒絶理由通知又は拒絶査定に記載された拒絶理由と補正の内容とがかみ合ったものであることが,その前提として,特許法上予定されているものというべきである。そうすると,拒絶理由通知又は拒絶査定に記載された拒絶理由と意見書又は補正書(通常,意見書と補正書の趣旨は一致することから,以下においては,両者のうち補正書及びそれによる補正のみをとり上げる。)の内容が全くかみ合っておらず,当該補正書が,出願人の真意に基づき作成されたものとはおよそ考え難い場合であって,そのことが審査の経緯及び補正の内容等からみて審査官に明白であるため,審査官において補正の正確な趣旨を理解して審査を行うことが困難であるような場合には,このような補正に係る発明につき適正に審査を行うことが困難であり,また,発明の適正な保護にも資さないのであるから,審査官は,特許出願人の手続的利益を確保し,自らの審査内容の適正と発明の適正な保護を確保するため,補正の趣旨・真意について特許出願人に対し確認すべき手続上の義務を負うものというべきである。\n

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 特許庁手続

▲ go to TOP