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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

審判手続

平成23(行ケ)10010 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年09月29日 知的財産高等裁判所

 手続的には意見陳述の機会を与えるべきであったが、結論に影響がないとのことで、請求棄却されました。
 以上の記載によると,本件審決では,本件特許出願当時の周知技術の認定に審決引用例を用いたものであるところ,職権により周知技術についての証拠調べをした場合,当事者の主張内容や当該技術の周知性の程度によっては,証拠調べの結果を当事者に通知せず,これらの書証について当事者に意見を申し立てる機会を与えなかったとしても,直ちに特許法150条5項の規定に違反するとまではいえないが,本件では,審決引用例に基づく周知技術の認定により原告の主張が排斥されていることや,後記第4の2(3)イ(ア)bのとおり,審決引用例からは,「冷媒が流れる方向によって機能したりしなかったりするキャピラリチューブ」が周知の技術であるということはできないことに鑑みると,証拠調べの結果を原告に通知し,相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えるべきであったというべきである。しかし,審決引用例の記載からは,「冷媒が流れる方向によって機能\したりしなかったりするキャピラリチューブ」が周知の技術であるといえないものの,後記第4の2(3)イ(ア)bのとおり,このようなキャピラリチューブが存在しなくても,本件明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に欠けるものとはならないから,審決引用例についての証拠調べの手続に違法があったとしても,結果として,これが本件審決の結論に影響を及ぼすものとはいえない。\n

◆判決本文

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平成22(行ケ)10350 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月04日 知的財産高等裁判所

 手続違背を理由として、審決が取り消されました。  例えば,審決は,「特許法29条1項1号又は2号に基づく新規性欠如を主張する場合において,具体的にどのような発明が,本件出願前に,公然知られ,又は,公然実施をされたかは,そもそも無効を主張する請求人が主張・立証すべき事項であるところ,請求人は,「本件出願前,当然にあり得た筈であると合理的に推認することができる」などと言うにとどまり,具体的な発明及びその存在について,何ら主張・立証を行っていない。」(19頁24行〜29行)とするが,甲1及び甲2を検討するのみで,原告が新規性欠如を立証する証拠として提出した甲3〜甲6についての検討は行われていない。したがって,審決には,本件発明に関して原告の主張する無効理由3に判断の遺脱があると認められるところ,A成分とB成分とを混合してなる麦芽発酵飲料が,本件出願前,周知のアルコール飲料である旨の原告の主張に理由があることは,前示のとおりであるから,審決における上記の判断の遺脱はその結論に影響を及ぼすべきものであって,審決を取り消すべき瑕疵といわなければならない。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10298 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成23年10月04日 知的財産高等裁判所

 審尋において示された新たな引例に対して、補正案を提示したのに補正の機会を与えなかった手続が適正手続きに反するとして取り消されました。第2部です。
 ところで,平成6年法50条本文は,拒絶査定をしようとする場合は,出願人に対し拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと規定し,同法17条の2第1項1号に基づき,出願人には指定された期間内に補正をする機会が与えられ,これらの規定は,拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合にも準用される。審査段階と異なり,審判手続では拒絶理由通知がない限り補正の機会がなく(もとより審決取消訴訟においては補正をする余地はない。),拒絶査定を受けたときとは異なり拒絶査定不服審判請求を不成立とする審決(拒絶審決)を受けたときにはもはや再補正の機会はないので,この点において出願人である審判請求人にとって過酷である。特許法の前記規定によれば,補正が独立特許要件を欠く場合にも,拒絶理由通知をしなくとも審決に際し補正を却下することができるのであるが,出願人である審判請求人にとって上記過酷な結果が生じることにかんがみれば,特許出願審査手続の適正を貫くための基本的な理念を欠くものとして,審判手続を含む特許出願審査手続における適正手続違反があったものとすべき場合もあり得るというべきである。(4) 本件においてされた補正却下に関する事情として,i)本件補正の内容となる構成が補正前の構\成に比して大きく限定され,すなわち,補正前発明が,駆動力入力端と2つの駆動力出力端とを含み双方向駆動を生じさせるための洗濯機において,駆動力伝達のための機構が,「駆動力入力を2つの駆動力出力に変換可能\な歯車箱」と一般的に記載されていたのを,本件補正は,図面等に示された実施例の内容に即して,歯車箱内の歯車を二対の歯車部(15,28)を中心に具体的構成を特定するものであって,補正発明の構\成に係るものであるが,この新たな限定につき現に新たな公知文献を加えてその容易想到性を判断する必要のあるものであったこと,ii)審尋で提示された公知文献はそれまでの拒絶理由通知では提示されていなかったものであること,iii) 審尋の結果,原告は具体的に再補正案を示して改めて拒絶理由を通知してほしい旨の意見書を提出したこと,iv)後記2で判断するとおり,新たに提示された刊行物2の記載事項を適用することは是認できないこと,などの事実関係がある。本件のこのような事情にかんがみると,拒絶査定不服審判を請求するとともにした特許請求の範囲の減縮を内容とする本件補正につき,拒絶理由を通知することなく,審決で,従前引用された文献や周知技術とは異なる刊行物2を審尋書で示しただけのままで進歩性欠如の理由として本件補正を却下したのについては,特許出願審査手続の適正を貫くための基本的な理念が欠けたものとして適正手続違反があるとせざるを得ないものである。本件においては,審判においても,減縮的に補正された歯車の具体的構成に対し,その構\成を示す新たな公知技術に基づいて進歩性を否定するについては,この新たな公知技術を根拠に含めて提示する拒絶理由を通知して更なる補正及び意見書の提出の機会を与えるべきであったというべく,この手続を経ることなく行われた審決には瑕疵があり,当該手続上の瑕疵は審決の結論に影響を及ぼすべき違法なものであるから,原告主張の取消事由1には理由がある。
(5) 被告は,平成5年法改正が,出願当初から多項制を活用して補正をあまり行わない出願と過度の補正を行う出願との不公平を是正し,審査・審判の迅速性を確保するために行われたものであり,最後の拒絶理由通知を受けた後になされた補正や拒絶査定不服審判を請求する際の補正が不適法である場合,直ちに当該補正を却下するという制度設計がなされたものであると主張する。確かに,平成5年法改正は,被告主張のように,補正の目的を制限すること等により審査・審判の迅速性を確保することをその趣旨としたものということができる。しかし,平成5年法改正がこのような趣旨であり,補正が繰り返されるのは好ましくないとしても,それまでに示されなかった拒絶理由の枠組みに対する適切な手続保障が失われてはならず,過度の補正が行われた出願については別途の考慮を要するとして,本件の前記事実関係の下に,新たな公知技術が拒絶理由で示されないまま審決で補正発明につき独立特許要件欠如として容易想到の結論に至ることが許されないことに変わりはない。被告は,審尋において,前置報告書の内容を示して意見があれば回答をするよう求め,具体的に刊行物2を示してその内容に基づいて補正発明が進歩性を欠く旨を述べ,これに対し原告は,平成22年4月9日付け回答書を提出して,刊行物2及びその他の引用文献について詳細に反論し,補正発明が進歩性を有する旨を主張しているのであるから,この点について意見を述べる機会が与えられなかったとはいえないと主張する。しかし,上記の手続は,審尋において刊行物2を示しただけであり,拒絶理由を通知して意見書の提出を求めたものではないから,補正案を示して補正の機会を与えるよう要望し,新たに示された刊行物2に対応した補正を予定していた原告の手続保障に欠けるものであって,前示のような適正な審判の実現と発明の保護を図るという観点を欠くものである。\n

◆判決本文

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平成22(行ケ)10363 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟  平成23年05月30日 知的財産高等裁判所 

 拒絶査定不服審判に共有者全員の請求人を記載しなかったことによる審決却下処分が違法として取り消されました(3部です)。
 上記規定によれば,審判請求書には審判請求人全員の氏名を記載しなければならないのであるが,他方,共有に係る権利の共有者全員の代理人から審判請求書が提出された場合において,共有者全員が「共同して請求した」といえるかどうかについては,単に審判請求書の請求人欄の記載のみによって判断すべきものではなく,その請求書の全趣旨や当該出願について特許庁が知り得た事情等を勘案して,総合的に判断すべきである。ところで,共有に係る特許を受ける権利についての審判請求のように,共有者全員が共同して請求しなければならないと規定されている場合に,代理人が,共有者全員から拒絶査定不服審判請求について委任を受けているにもかかわらず,共有者の一部の者のみを代理して拒絶査定不服審判を請求することは,あえて不適法な審判請求をすることとなり,そのような行為は,不自然かつ不合理であるといえるから,代理人がそのような共有者全員の利益を害するような行為を行うことは,通常考えられない。そうだとすると,その代理人から審判請求書を受理する特許庁としては,代理人がこのような不合理な行為を行うやむを得ない特段の事情が推認される場合はさておき,そのような事情がない限り,審判請求書の記載上,共有者の一部の者のためにのみする旨の表示となっている場合があったとしても,そのような審判請求書は,誤記に基づくものであると判断するのが合理的である。\n・・・
 以上の事実を総合すれば,辻永弁理士が本件審判請求書を提出することによってした審判請求は,審判請求書の記載上,原告サン ケミカルの名称のみ表記され,原告A及び原告Bの氏名は表\記されていないが,辻永弁理士に原告ら全員のためにする意思があることは明らかであり,しかも,特許庁においても,その意思は,十分に知り得たものというべきである。したがって,本件審判請求は請求人が原告ら3名であるにもかかわらず,本件審判請求書には請求人として原告サン ケミカルのみが記載されている場合であるから,同法131条1項の定める方式について不備があることとなる。このような場合,審判長は,同法133条1項に基づき,原告らの代理人たる辻永弁理士に対して,相当の期間を定めてその補正をすべきことを命じなければならなかったといえる。 ・・・
 なお,本件では,本件出願後,特許庁に対し,原告サン ケミカルから辻永弁理士に対する包括委任状は提出されているが,原告A及び原告Bから同弁理士に対する包括委任状は提出されていない。しかし,特許法や特許法施行規則において,代理人による特許出願の場合に委任状の提出は義務付けられておらず,委任状の提出を要しない実務慣行の存在も推認されること,特許庁も原告A及び原告Bの委任状の提出を求めることはなく,辻永弁理士が同原告らの代理人であるとして出願手続を進めてきていること等の経緯に照らすならば,原告A及び原告Bから同弁理士に対する包括委任状が提出されていない事実をもって,本件審判請求が,原告らの共同意思に基づく請求であることを否定する根拠とはならない。

◆判決本文

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平成22(行ケ)10208 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年12月28日 知的財産高等裁判所

 請求項2についての判断をすることなく出願全体を拒絶することは手続き的に問題なしと判断されました。
 すなわち,拒絶査定を受けた出願人が,基本手数料額に,請求項数に一定額を乗じた額を加えた額の手数料を納付しなければ拒絶査定不服審判を受けることができないとの特許法195条2項(別表11)の規定は,特許がされる場合にはすべての請求項について審理判断がされることに対応するものであると解すべきである。同規定があるからといって,特許出願に係る発明中に特許をすることができないものがあるときに,その特許出願を全体として拒絶することについて,妨げとなるものではない(知的財産高等裁判所平成20年(行ケ)第10020号平成20年6月30日判決,最高裁判所平成19年(行ヒ)第318号平成20年7月10日第一小法廷判決・民集62巻7号1905頁参照)。本願の請求項1に係る発明が特許法29条2項の規定に該当して特許を受けることができないものであるときは,本願の請求項2に係る発明がたとえ独立の請求項であって特許性を有する場合であったとしても,その請求項2に係る発明について審理判断するまでもなく,本願は,全体として拒絶されるべきものといえる。\n  

◆判決本文

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