審決取消訴訟にて新たな証拠を提出することが認められるかが1つの争点になりました。
「審判において,実用新案法3条1項各号に掲げる考案に該当するものと主張され,その存否が審理判断された事実に関し,取消訴訟において,当該事実の存在を立証し,又はこれを弾劾するために,審判での審理に供された証拠以外の証拠の申し出をすることは,審判で審理判断された公知事実との対比の枠を超えるということはできないから,これが許されないとする理由はない。そして,検甲1,甲19〜35,37,39〜59は,いずれも本件審判における審理に供されなかった証拠ではあるが,本件審判で審理判断の対象とされなかった公知事実を立証しようとするものではなく,本件審判において審理判断され,本件審決においてその存在を認められなかった引用考案1に係る前記?@及び?Aの事実について,その存在を立証しようとするものであるから,これらに基づいて本件審決の誤りを主張することは許されるものというべきである。被告の主張は採用することができない。(3) 被告は,・・・・上記誤りは本件審決の結論に影響するものではないと主張する。しかし,本件審決は,引用考案1において左右のハンドルが弾性ロープによって連接されていることを看過した結果,原告が主張する本件考案に対する無効理由は前提自体が成り立たないとして,引用考案1と本件考案とを対比検討して本件考案の容易想到性の有無について判断しないまま,原告が主張する本件考案1及び2に対する無効理由は根拠がないと結論付けたものであるから,容易想到性の点について検討するまでもなく,上記引用考案1の認定の誤りが,本件審決の結論に影響を及ぼすものであることは明らかであり,本件審決は取消しを免れないというべきであって,被告の主張は失当である。」
◆平成17(行ケ)10856 審決取消請求事件 実用新案権行政訴訟 平成18年10月24日 知的財産高等裁判所
4万5千円の損害賠償が認定された事件です。興味深いのは、額よりも、無効判断です。
裁判所は、「被告は,平成16年11月4日の本件第1回口頭弁論期日から,平成18年1月19日の本件第8回弁論準備手続期日まで,一貫して,被告各物件が本件特許発明の技術的範囲に属することを争い,平成18年1月末日までに,被告各物件が本件特許発明の技術的範囲に属しないとの主張を終了する予定であったにもかかわらず,平成18年3月23日の本件第10回弁論準備手続期日において,突然,本件特許発明に係る特許が無効である旨の主張を追加したものであり,その防御方法の提出は時機に後れたものといわざるを得ない。しかし,本件訴訟においては,当該期日の約2か月後の本件第2回口頭弁論期日において,口頭弁論が終結されているのであるから,被告による無効主張については,これにより訴訟の完結が遅延したものとまでいうことはできない。したがって,被告による本件特許発明に対する無効の主張を,時機に後れた防御方法の提出として却下するのは相当ではない。」とした上で、無効理由無しと判断しました。
◆平成16(ワ)20374 損害賠償請求事件 平成18年07月06日 東京地方裁判所
2006.06. 2
拒査不服審判で拒絶理由に示していない引例での拒絶審決が取り消されました。
特許庁は、「補正により追加された事項は、補正前の請求項2に記載されていた事項を取り込んだものであり,補正前の請求項2に対しては,拒絶理由通知において,審決の引用する刊行物と同じ文献が引用されていたのであるから,本願発明に対しても,同文献が引用されていたというべきである。」と反論しましたが、かかる主張は認められませんでした。
さらに、裁判所は、「再開される審判の適切かつ円滑な審理判断の参考に資するため,審決取消事由2及び3について,一応の判断を示す」として、判断を行い、その判断は妥当と判断しています。
◆平成17(行ケ)10710 審決取消請求事件 平成18年05月31日 知的財産高等裁判所