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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

裁判手続

平成21(行ケ)10381 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成22年11月30日 知的財産高等裁判所

 無効審判が請求棄却され、審決取消訴訟に継続中に、別途、特許権者が訂正審判を請求して、訂正が確定した場合に、裁判所は訂正後の発明について無効理由を判断できるかが争われました。また、進歩性については無効理由無しとした原審決と同じ判断をしました。
 当事者双方は,訂正後の発明に基づいて審判請求に係る無効理由の有無を審理判断することを求めているので,まずその当否について検討する。特許庁がなした無効不成立の審決(したがって無効審決は除かれる。)の取消訴訟係属中に特許請求の範囲の減縮を内容とする訂正審決が確定した場合,訂正後発明との関係で上記無効理由の有無が訂正審決において実質的に特許庁の判断が示されており,かつ当事者双方が訂正後発明との関係で裁判所が無効理由の有無につき審理判断することに異議がないときは,裁判所は,相当と認める限り,訂正後発明につき改めて特許庁の特許無効審判の判断を経る必要があるとして原審決を取り消すことなく,訂正後発明との関係における無効理由の有無を判断することができると解される。そこで,以上の見地に立って本件をみると,本件訴訟は,前記のとおり原告らがなした前記無効理由1ないし3に基づく特許無効審判請求につき特許庁がなした請求不成立を内容とする(原)審決の取消しを求める訴訟である。また,その後なされた訂正審決は,別添審決写し(2)(乙2)記載のとおりであって,その内容は,訂正審判における関係無効審判請求人として原告らから提出された上申書において特許法29条関連で前記引用例1,2を含む多数の証拠が引用されたことから,これらを含めて訂正後の発明の独立特許要件を特許法29条及び29条の2の観点から5人の審判官により詳細に検討したものであって,訂正後の発明につき本件無効審判請求における無効理由2及び3(いずれも特許法29条2項に関するもの)について実質的に特許庁の判断を示したものと認めることができる(原告らは,無効理由1に対する原審決の判断については本訴において取消事由として主張していない。)。そして,訂正後の発明につき審判請求に係る無効理由2,3の有無を当裁判所が審理判断することにつき当事者双方が異議を述べない旨陳述していることは,前記のとおりである。そうすると,上記のような事情が認められる本件にあっては,訂正後の発明について改めて上記無効理由2及び3について判断させるまでもなく,当裁判所が訂正後の発明を前提として無効理由の有無を審理判断することができると認めるのが相当である。そこで,進んで訂正後の発明(訂正発明)を前提として,原告ら主張の無効理由の有無を検討する。
・・・
上記(イ),(ウ)のとおり,甲3,甲4は,いずれも注射針がその役割を果たした後に,中空なハンドルの近い端に向かって引っ込めて収納するという技術であるといえるが,医療関係者が使用後の患者の血液等で汚染された針に触れて感染することを防止するという意味における,安全のためのものではない。ところで,本件の無効理由2における周知技術に関する原告ら(無効審判請求人)の主張は,「カニューレまたはカテーテルの分野において,カニューレまたはカテーテルを挿入するための注射針がその役割を果たした後には安全のため,注射針を中空なハンドルの近い端に向かって引っ込めて収納するという技術は周知であった」(無効審判請求書[甲39]の13頁29〜32行)ことを前提とし,「引用発明1においては,使用後にニードルを中空ハンドルに収納する際に,中空ハンドルを移動させるものであり,ニードルを移動させるものではないが,・・・周知の技術であったから,・・・ニードルハブを中空なハンドルに対して移動させるようにすることは当業者が適宜選択し得る設計的事項に過ぎない」(甲39の17頁4〜11行)というものである。前記(3)のとおり,甲1発明において,使用後にニードル(針)を中空ハンドル(さや)に収納する際,中空ハンドル(さや)を移動させるのは,医療関係者が使用後の患者の血液等で汚染された針に触れて感染することを防止するためである。仮に,注射針を中空なハンドルの近い端に向かって引っ込めて収納するという技術が周知であったとしても,その目的や意義が甲1と異なる場合には,これをそのまま甲1に適用することが容易であるとはいえないため,原告ら主張の「安全のため」の意味についても,甲1発明の目的に即して理解するのが合理的である。そして,甲3及び甲4は,医療関係者が使用後の患者の血液等で汚染された針に触れて感染することを防止するという意味における「安全」を目的としたものではないから,審決はこの意味において,原告ら(無効審判請求人)の主張する周知技術は認められないとしたものと解され,審決の同認定に誤りがあるとはいえない。

◆判決本文

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平成22(ネ)10040 所有権確認等,特許権移転登録手続等反訴請求控訴事件 その他 民事訴訟 平成22年11月30日 知的財産高等裁判所

 時機に後れた攻撃防御方法であると判断されました。
 当裁判所は,原審第10回弁論準備手続期日(平成21年5月25日)の後に提出された対象攻撃防御方法を,時機に後れた攻撃防御方法として却下した原審の証拠採否の判断に違法はないと解する。その理由は,以下のとおりである。
ア 原告は,対象攻撃防御方法の提出は時機に後れていないと主張する。しかし,原告の主張は,採用できない。すなわち,記録によれば,原審において,平成21年3月25日の第8回弁論準備手続期日に原告が陳述した原告準備書面(6)には「訴状,原告準備書面(1)〜(6)(各訂正書を含む。),反訴答弁書にて,本件本訴・本件反訴につき,主張・立証を尽くした。」と記載されていること,同年4月22日の第9回弁論準備手続期日に,受命裁判官が,本訴・反訴を通じ,原告,被告プランテックの書面提出期限を同年5月20日とし,被告らについて,原告の主張に対する反論の補充があれば同日までに提出するよう述べ,同月25日の第10回弁論準備手続期日に原告が陳述した原告準備書面(7)には,本件訴訟の争点につき,「SHI(判決注原告を指す。)は,原告準備書面(6)の全部,原告準備書面(5)の全部,原告準備書面(4)の全部,原告準備書面(3)の全部,原告準備書面(2)の全部,原告準備書面(1)の第1〜第4において,SHIの主張を尽くしている。」と記載されていること,第11回弁論準備手続期日以降,同手続の終結に至るまでの間,準備書面の陳述及び証拠の取り調べはなされず,和解案の検討のみが行われていること,同年11月13日の第2回口頭弁論期日において,裁判長が,対象攻撃防御方法の準備書面を含む未陳述の準備書面について,「本訴及び反訴当事者双方にこれ以上の主張・立証がないことを確認の後,和解の可能性を検討する期日において提出されたものである。」と述べていることが認められる。一方,原告準備書面(6)及び(7)の上記各部分が和解手続を促進する目的で陳述されたとか,受命裁判官が,原告に対し,和解が成立しなければ新たな攻撃防御方法の提出を許可する旨述べた等の事実を認めるに足りる資料は一切見当たらない。以上の事情を総合すれば,原審の第10回弁論準備手続期日の時点において,担当裁判官及び原告を含む各当事者は,同期日までに争点及び証拠の整理を終え,その後の弁論準備手続では和解案の検討を行うとの認識で一致していたことは明らかであり,原告において,同期日までに対象攻撃防御方法を提出することが困難であったとの事情はうかがえない。そして,このことからすると,受命裁判官が,同年10月21日の第16回弁論準備手続期日において,「当事者双方に対し,主張立証の補充があれば,平成21年11月10日までに提出すること」を命じたのは,第10回弁論準備手続期日までに提出されなかった新たな主張やそれに関する証拠が提出されることを許容する趣旨ではないと解すべきである。したがって,原告が,第10回弁論準備手続期日の後に対象攻撃防御方法を提出したことは,時機に後れたものというべきである。
イ また,原告は,対象攻撃防御方法は,被告らの反論,反証も含めて,第2回口頭弁論期日で直ちに主張し,あるいは,取り調べることができたものであるから,その提出は訴訟の完結を遅延させていない旨主張する。しかし,原告の上記主張も採用できない。すなわち,裁判所及び各当事者が,争点及び証拠の整理を終えたとの認識で一致したにもかかわらず,その後,裁判所が,一方の当事者からの新たな攻撃防御方法の提出を認める場合には,反対当事者による反論やこれを裏付ける立証の機会を付与することによって,適正かつ公平な審理を確保することが必要となり,さらに,再反論及びこれを裏付ける立証の機会を付与することも必要となり,新たな攻撃防御方法の追加等の余地が生じ,訴訟の完結が遅延することになる。本件では,被告らから,平成21年7月8日付け「時機に後れた攻撃防御方法却下の申立書」が提出されており,裁判所が第2回口頭弁論期日において,対象攻撃防御方法の却下をも視野に入れた訴訟指揮を行った結果,同期日において弁論を終結した。本件の事案にかんがみ,対象攻撃防御方法の提出は訴訟の完結を遅延させると解するのが自然である。\n

◆判決本文

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平成20(ワ)11245 違約金請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年08月27日 東京地方裁判所

 裁判上の和解における「実施」の定義が争われました。
 本件和解は,原告と被告との間に締結されていた本件特許権についての専用実施権設定契約(甲6の1)及び製造委託契約(甲7)等に関して生じた紛争をめぐる訴訟(当庁平成16年(ワ)第3678号,同年(ワ)第7950号,同年(ワ)第2277号,同年(ワ)第70001号,同年(ワ)第70012号,同年(ワ)第70041号,同年(ワ)第70042号事件)において調ったものであるが,第5項は,本件特許権の専用実施権設定に関する第3項の特約条項として設けられたものであることは,前記第2の2(2)の本件和解条項の文言から明らかである。そして,本件和解条項中には,「実施」の用語についての定義規定はないから,その意味は,特許権の専用実施権設定契約における通常の意味で使用されるところに従って解釈するのが当事者の合理的な意思にかなうものというべきである。そうすると,専用実施権については特許法に規定されているのであるから,これに関する契約中の「実施」の文言も,特許法における「実施」の定義,すなわち,同法2条3項の定義するところに従って解釈するのが相当である。そして,本件特許発明のような物の発明については,本件和解成立時(平成17年4月11日)に適用されていた特許法(平成18年法律第55号による改正前の特許法)2条3項1号によれば,「実施」とは,「その物の生産,使用,譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい,その物がプログラム等である場合には,電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為」と規定されていたのであるから,第5項の「実施」の意味は,上記規定に則して解釈するのが相当である。
 (2) この点,原告は,本件和解に至った経緯や本件和解の趣旨,目的に照らし,本件和解条項中の「実施」については,平成18年法律第55号による改正前の特許法2条3項1号の規定する「実施」よりも広いもので,「特許権者でなければ行い得ない言動・行動によって,独占的実施権を有する者に対して迷惑を被らせる行為その他独占的実施権者との無用の紛争を招来するような行為」を意味するものと解するのが相当である旨主張する。しかしながら,かかる解釈は,「実施」の概念を大きく拡張するものであるから,このような意味を「実施」に盛り込もうとするのであれば,本件和解条項中にその旨の明示の定義が置かれてしかるべきである(本件和解が当庁において特許事件を専門的に扱う知的財産権部において成立したものであること〔当裁判所に顕著な事実〕を考慮すれば, このことは一層妥当するというべきである。)が,本件和解条項上,そのような措置は何ら講じられていない。また,原告の主張する「特許権者でなければ行い得ない言動・行動によって,独占的実施権を有する者に対して迷惑を被らせる行為その他独占的実施権者との無用の紛争を招来するような行為」とは,その外延が甚だ不明確というほかなく,1億円もの高額な違約金の発生がこのように不明確な要件の充足に係っている(本件和解第5項(1),(8)参照)というのも,当事者の予測可能\性を大きく損なうという点において不合理というべきである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。・・・
 (3) 以上のとおり,本件和解条項中の「実施」は,平成18年法律第55号による改正前の特許法2条3項1号所定の「実施」と同義であり,「その物の生産,使用,譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい,その物がプログラム等である場合には,電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為」を意味するものと解される。そこで,上記解釈を前提として,争点(2)において,被告が本件和解後に本件特許発明を実施したか否かについて検討する。

◆判決本文

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平成21(ワ)6505 損害賠償請求事件 特許権 平成22年01月22日 東京地方裁判所

 原告は最終口頭弁論期日の直前に訂正審判をして104条3の無効理由はないと主張しましたが、時期に後れた抗弁として却下されました。
 そこで検討するに,原告は,既に第1回口頭弁論期日において被告らから乙6刊行物記載の発明が本件特許発明と同一の発明であるとして乙6刊行物を提示されたのに対して,両発明が同一ではないとの主張を終始維持し続けていたにもかかわらず(主張を変更することを妨げる事情は何ら認められない。),弁論準備手続終結後になって訂正審判請求をした上で,最終口頭弁論期日に,この訂正により乙6刊行物記載の発明には本件特許発明と相違点が生じ無効理由がない旨の上記主張に及んだものである。そして,このことについてやむを得ないとみられる合理的な説明を何らしていない。したがって,原告の上記主張は,少なくとも重大な過失により時機に後れて提出したものというほかなく,また,これにより訴訟の完結を遅延させるものであることも明らかである。よって,原告の上記主張は,民事訴訟法157条により,これを却下する。

◆判決本文

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