本人訴訟で、被告を誤った提訴であるとして請求却下されました。興味深いのは、「原告には,行政事件訴訟法15条1項,40条に基づく被告変更の申立てを行う意思もない」というくだりです。こんな規定があるんですね。
商標法63条2項の準用する特許法179条ただし書によれば,商標法50条1項に基づく商標登録取消請求に関する審決に対する訴えは,審判の請求人又は被請求人を被告としなければならない。したがって,原告が上記1記載の審決の取消しを求めて訴えを提起するのであれば,取消審判請求の請求人であるTAC株式会社を被告としなければならない。しかしながら,上記の当事者の表示欄のとおり,本件訴えの被告はTAC株式会社となっていない。そして,一件記録によれば,原告には,行政事件訴訟法15条1項,40条に基づく被告変更の申\\立てを行う意思もない。そうすると,本件訴えは,不適法でその不備を補正することができないものである。
◆判決本文
2014.08. 4
無効審判で提出したDVDの証拠力について争われました。裁判所は、公然実施されたとした審決を維持しました。
原告は,甲9号証の1のビデオ映像は重要な部分に関し編集された疑いがあり,その提出経緯も不自然であるから,甲9号証の1には証拠価値が認められないと主張する。
しかし,甲49号証によれば,甲9号証の1のDVDに収録された映像は,もともとビデオカセットに撮影された映像であるところ,甲45号証の映像が収録されていたのは8ミリビデオテープカセットであり,カセットの背面には,「スカーフジョインタ DATE:97.3.14サンテック用」とのラベルが貼り付けられている。甲46,47号証の映像が収録されていたのはデジタルビデオカセットであり,カセットの表\面には,それぞれ「97.3.14サンテックスカーフ」等,「97.6.17サンテックNo.1」と記載されたラベルが貼り付けられている。また,被告の説明によれば,甲9号証の1のビデオ映像は,平成9年10月29日から同年11月2日まで開催された第33回名古屋国際木工機械展において上映する目的等で製作したものであり,甲9の1本体映像には,不鮮明な部分があったため,甲45ないし47号証の映像を差し込んで,甲9号証の1の映像を作成したものとされている(甲119)。これらの作成経緯,差し込まれた甲45ないし47号証の原映像の保存状況,甲9号証の1の内容に照らせば,甲9号証の1の証拠価値を疑わせるような事情は見当たらず,原告の主張を採用することはできない。原告は,先行侵害訴訟や審決における提出経緯が不自然であると主張するが,原告の主張する事情が訴訟や審決の進行に照らして特段不自然なものとは認められないし,先行侵害訴訟において最初に証拠として提出した際に,編集の経緯について説明していなかったことをもって,証拠価値を疑わせる事情とは認められない。\n
◆判決本文
2014.07. 4
判断自体は注目するようなものではないかもしれませんが、被告である特許庁長官に補助参加人がついてるというのが興味深いです。拒絶査定不服審判の審取に補助参加人がついたという判決は珍しいと思います。被告補助参加人はどうやってこの事件を知ったんでしょうか?、もしかしたら別途無効審判とかが提起されているのかもしれませんね。
第5 被告補助参加人の主張
1 引用商標の周知性に係る識別の対象について
(1) ラーメン店「三代目月見軒」の営業状況
ア 被告補助参加人がラーメン店「三代目月見軒」の経営に携わった経緯は,以下のとおりである。昭和33年に創業されたラーメン店「月見軒」が,二代目であるBの体調不良により20年余り休業した後,Dがレシピを受け継ぎ,平成5年頃,「三代目月見軒」という名称でラーメン店を再開した。同人は,長男である原告月見軒代表者と共に同店を経営してきたが,借金が増えて営業の継続が困難になった。他方,被告補助参加人代表\者は,平成15年5月16日に被告補助参加人を設立し,上記のとおりラーメン店「三代目月見軒」が経営難に陥っていたので,被告補助参加人において同年7月1日付けで同店の営業をDから譲り受けた。なお,甲3号証,すなわち,Dがアルコール離脱せん妄状態のために平成15年8月8日から入院治療を受けた旨が記載された証明書は,上記営業譲渡の当時においてDが常時せん妄状態で意思能力を欠いていたことを示すものではない。以後,現在に至るまで,被告補助参加人は,ラーメン店「三代目月見軒」の経営,広告・宣伝活動,物産展等デパートの催事への出展,お土産ラーメンの販売等の営業活動に継続的に従事し,自らが主体となって「三代目月見軒」の商標を使用しており,商域は日本全国に及ぶ。なお,被告補助参加人は,デパートにおける催事に関し,原告月見軒代表\者に対して催事手数料という名目で金員を支払っていたが,これは当該催事に備えた仕込み等の作業の対価である。イ ラーメン店「三代目月見軒」には,本店(札幌),札幌駅北口店,東京店及び平成17年出店の京都駅ビル店があり,本店,東京店及び京都駅ビル店は被告補助参加人の直営であるが,札幌駅北口店については原告アイズが営業に従事している。原告アイズが同店の営業に携わるようになった経緯は,以下のとおりであり,創業者一族からののれん分けによるものではない。すなわち,平成15年7月頃,被告補助参加人は,原告アイズの元代表者に対し,被告補助参加人による「三代目月見軒」営業の傘下に入ることを条件に,前述の営業譲渡により取得した「三代目月見軒」の商標及びレシピを使用してラーメン店を開業することを許諾した。その後,原告アイズの元代表\者は原告アイズを設立し,前記条件に従って札幌駅北口店を開業した。被告補助参加人は,開業に際して開店広告掲載の手続を行うとともに費用も負担し,また,原告アイズに生めんなどを卸していた。・・・
◆判決本文
2014.04. 1
契約書に、フランスの裁判管轄についての規定があっても、それは、「付加的合意管轄についての定めである」として、我が国の裁判管轄を認めました。また、損害額について、過去の判例に基づき、「外国の通貨をもつて債権額が指定された金銭債権について,最終口頭弁論期日の外国為替相場によって日本の通貨に換算した額とする」と判断されました。
本件契約における裁判管轄の合意は,解除による契約終了後においても効力を失わない,いわゆる訴訟契約として有効であることにつき,当事者間に争いがない。その上で,被告は,本件契約第14条における管轄合意は,国際的専属管轄の合意である旨主張する。国際的裁判管轄の合意の訴訟法上の効力については,法廷地である我が国の法律における解釈を前提とすべきであり,その合意は特定国の裁判所を管轄裁判所として明示的に指定する少なくとも当事者の一方が作成した書面に基づいて締結されれば足りるところ,ある訴訟事件について我が国の裁判権を排除し特定の外国の裁判所を第一審の専属的管轄裁判所と指定する国際的専属的裁判管轄の合意は,当該事件が我が国の裁判権に専属的に服するものではなく,かつ,指定された外国の裁判所がその外国法上当該事件につき管轄権を有する場合には,原則として有効であると解される(最高裁判所第三小法廷昭和50年11月28日判決・昭和45年(オ)第297号・民集29巻10号1554頁参照)。これを本件についてみると,本件契約における管轄合意条項は,「本契約に関する紛争又は本契約から生じる紛争は,本契約の当事者において友好的に解決するものとする。かかる解決が出来なかったときは,両当事者間の紛争は,フランス国パリの商事裁判所に提起するものとする。」とするものであり,本件訴訟における未払ロイヤルティの支払を含む債務不履行責任に関する紛争は我が国の裁判所が専属管轄を有するものではなく,かつ上記管轄合意条項により指定された裁判所が当該事件につき管轄権を有していると認めることができるから,本件契約における上記管轄合意条項は,裁判管轄の合意として有効であると解される。しかし,上記管轄合意条項が国際的専属管轄の合意であるか否かに関しては,上記管轄合意条項の規定は,文言上,フランス国パリの商事裁判所のみを残して,これを専属管轄裁判所とするものとも,また,我が国の裁判権を排除するなど他の裁判所の管轄権を排除するものともなっていないこと,原告は個人であるものの,商人間のフランチャイズ契約と認められる本件契約に関する紛争について,フランス国パリの商事裁判所は法定管轄を有する裁判所の一つであると解されるところ,フランス国においては,通常裁判所として我が国の地方裁判所に相当する大審裁判所のほかに,我が国に存しない商事紛争を管轄する特別の裁判所である商事裁判所が存することもあって,法定管轄裁判所の一つであるパリの商事裁判所にあえて付加的な裁判管轄の合意をしたものと解しても,当事者の合理的意思解釈として不相当とはいえないこと,さらに,本件契約の準拠法であるフランス法においても,フランス民事訴訟法48条は,「直接的又は間接的に土地管轄に関する定めに抵触するすべての条項は,記載なきものと見なす。ただし,その条項が商人の資格で契約したものの間で合意されており,かつ,それをもって対抗される当事者の契約書において非常に明白に特記されているときは,このかぎりではない。」と規定しており,本件契約の管轄合意について付加的合意管轄の定めであると解しても,特段問題は生じない。以上の点を総合考慮すると,本件契約における管轄合意は,我が国の裁判管轄を排除するものではなく,付加的合意管轄についての定めであると解するのが相当である。以上の検討によれば,原告の主張する管轄利益の放棄の点について判断するまでもなく,本件は,被告の普通裁判籍所在地を管轄する東京地方裁判所に提起されたものであるから,適法であるということができる。
・・・
以上のとおり,被告は,原告に対し,まず,平成22年1月分までの未払ロイヤルティとして17万4680.91ユーロの支払義務を負うが,外国の通貨をもって債権額が指定された金銭債権については,債権者は債務者に対して外国の通貨又は日本の通貨のいずれによってもこれを請求することができるところ,外国の通貨をもつて債権額が指定された金銭債権について日本の通貨により裁判上の請求がされた場合,その債権額は,事実審の最終口頭弁論期日の外国為替相場によって外国の通貨を日本の通貨に換算した額とするのが相当である(最高裁判所第三小法廷昭和50年7月15日判決・昭和48年(オ)第305号・民集29巻6号1029頁参照)。これを本件において検討すると,本件においては,上記のとおり債権はユーロ建てであり,本件口頭弁論終結時の円の対ユーロレートは約142円であると認められる(甲42,平成26年1月15日のレート)から,原告が平成22年1月分までの未払ロイヤルティとして請求する額である2240万6320円を下回ることはない。よって,上記金額を認容することとし,遅延損害金の起算点については,催告後相当期間を経過した,原告の請求する平成22年4月23日とすべきである。
◆判決本文
1審では、発明1については技術的範囲に属する、発明2については技術的範囲に属しないと判断されました。控訴審にて、原告は、発明2について均等を追加主張しました。発明2については均等侵害が認められました。また、原告の均等の追加主張も時期に後れた抗弁には該当しないと判断されました。
ただ、発明1について無効と判断され、全体としての損害額が減額されました。
さらに,掬い上げ部材について,本件訂正明細書2には,「尚,該板状の掬い上げ部材5c1及び5c2の傾斜角度は,図示の例では,回転軸5aの中心軸線に対し20°傾斜せしめたものを示したが,一般に10°〜80°の範囲が採用できる。」(段落【0015】)と記載されているから,回転軸5aの中心軸線に対して10°〜80°の傾斜があれば足り,その傾斜角は一定でなければならないものではない。すなわち,回転軸5aの中心軸線に対する角度が小さくなればなるほど,走行方向に対し直交する長矩形の板状で構成される従来の掬い上げ部材に近いものとなり,掬い上げの効果は大きくなる一方,堆積物の外側への拡散が増大するが,回転軸5aの中心軸に対する角度が大きくなると,掬い上げの効果は小さくなるが外側への拡散を防止できることとなるものと推測されるところ,本件訂正発明2のV字型掬い上げ部材において,これらの角度は適宜選択できるものとなっているから,V字状のみに限定されず,より頂点への角度が緩やかな逆への字状のもの等も含まれる。また,段落【0006】には,「本発明のパドルの変形例として,図5に示すようなパドル5b″に構\成しても良い。すなわち,先の実施例のそのV字状の傾斜板5c1及び5c2の一端部を当接し,互いに直接溶接する代わりに,その両傾斜板5c1及び5c2の一端部間を適当な距離離隔し,そのスペース内に板状などの補強梁5jを介在させ,その両端部を傾斜板5c1及び5c2の一端部とを溶接し,その前後一対の板状の掬い上げ板部5c1及び5c2はハの字状に対称的に傾斜した傾斜板に構成しても良い。」との記載もあり,必ずしもV字状の掬い上げ部材に限られるものではないことが明らかである。さらに,段落【0009】には,「また,その本発明のパドル5b′の夫々の傾斜板5c1及び5C2は長矩形状とし,同一形状,寸法であることが一般であり好ましく,また,通常のパドル5bの板状掬い上げ部材5cと同一形状,寸法であることが一般であるが,これに限定する必要はない。また,その各傾斜板5c1及び5C2の長さ又は高さ寸法は所望に設定される。」と記載され,しかも,本件発明1の掬い上げ部材について,本件明細書1の段落【0005】に「その先端には堆積物を掬い上げる板状,爪状などの掬い上げ部材5cを有し,その回転により堆積物の撹拌とその正転,逆転による往復動撹拌を行う作用を有する。」と記載されているから,堆積物を掬い上げるための形状も,平面な「板状」に限られるものではない。\n
(ウ) 以上に照らせば,堆積物の外側への掬い上げ時の拡散,崩れなどの不都合を解消するために,前後一対の板状の掬い上げ部材が,それぞれ回転軸の軸方向に対し所定角度内側(オープン式発酵槽の長尺壁の方向)を向くようにし,掬い上げ部材の内側に向いて傾斜した部材の外側が,その前方に堆積する堆積物の長尺開放面側の外端堆積部に当接し,斜め内側に向けてこれを掬い上げるよう,傾斜板を所定角度内側に向けて配置したことが,本件訂正発明2を基礎付ける特徴的部分であると認められる。そして,本件訂正発明2の攪拌機は,往復動走行に伴って正又は逆回転するものであることから,掬い上げ部が外端堆積部に当接する場合は,回転軸に直交する前後方向のいずれの場合もあり得ることから,そのいずれの場合においても,堆積物を掬い上げる必要があり,そのために,掬い上げ部材を前後にかつ前後方向に対し傾斜させて配置し,その前側の傾斜板の外面は斜め1側前方を向き,その後側の傾斜板の外面は斜め1側後方を向くように配向させて配設されたものと認められる。そうすると,掬い上げ部材が前後の両方向に傾斜されて配置されるとの構成も,本件訂正発明2を基礎付ける特徴的部分であるといえる。これに対して,本件訂正明細書2には,掬い上げ部材が2枚であることの技術的意義は,何ら記載されておらず,前記のとおり,傾斜板の外面が正又は逆回転時のそれぞれにおいて,外端堆積部に当接することが重要であるから,本件発明2の掬い上げ部材が2枚で構\成されることに格別の技術的意義があるとはいえず,本件訂正明細書2に記載されるように2枚の部材を直接溶接してV字状を形成することと,1枚の部材を折曲してV字状を形成することとの間に技術的相違はないから,この点は本質的部分であるとはいえない。また,前記のとおり,前後に傾斜させる角度が,回転軸5aの中心軸線に対して10°〜80°の角度であればよく,逆への字状が含まれることや,掬い上げる部材としても,平面な板状に限定されず,外端堆積部に当接して内側に掬い上げることができればよいことに照らすと,掬い上げ部材が,平面な板状で構成されていることも,本質的部分であるとはいえない。そうすると,上記アで述べた,本件訂正発明2のV字型掬い上げ部材が「2枚の板状の部材を傾斜させて配置されるもの」に対し,ロ号装置の掬い上げ部材105dは,「半円弧状の形状を有する1枚の部材から構\成されたもの」であるとの相違点は,本質的部分に係るものであるということはできない。
・・・・
原告日環エンジニアリングによる均等侵害の主張は,原判決において本件発明2の文言侵害が認められなかったことを受けて,平成25年5月23日に行われた当審の第1回口頭弁論期日以前に提出された同年4月30日付けの附帯控訴状において均等侵害に該当する旨が記載され,同年5月16日付け準備書面において均等侵害の5要件に関する主張が記載されていたものであり,その内容は,新たな証拠調べを要することなく判断可能なものであり,訴訟の完結を遅延させるものとはいえない。したがって,上記主張を時機に後れた攻撃防御方法として却下はしない。なお,被告が,原告らが,原審において,請求原因を明確にせず,被告及び裁判所から1年間にわたり請求原因の補充を促され続けたことにより遅延した旨主張する部分については,仮にそのような事実があったとしても,上記判断を左右するものでない。\n
◆判決本文
◆原審:平成25年01月31日 東京地裁 平成21(ワ)23445
◆関連審取はこちら 平成25(行ケ)10105