2015.12.14
平成27(ネ)10038 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成27年11月26日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
特許3309276号についての差止請求不存在確認訴訟事件(平成20年(ワ)26633)およびその反訴事件(平成21年(ワ)第18950号)の控訴審です。1審途中にて、無効審判(無効2008-800215号)にて無効と判断されましたが、審決取消訴訟中に侵害訴訟で和解が成立し、無効審判は取り下げされました。本件は前記和解に無効理由(錯誤)があるかが争われました。知財高裁はこれを認めませんでした。
控訴人は,被控訴人が,原審において,実際には被告製品の構成を示すもの\nではない証拠を,被告製品の構成を示すものと偽って提出したことによって,原審\nの受訴裁判所を構成する裁判官が錯誤に陥ったことにより,原判決において被告製\n品の充足性を否定する旨の判断をし,控訴人も錯誤に陥り,被控訴人らに有利な本
件和解に合意した,当審の受命裁判官も錯誤に陥り,それも,本件和解の内容に影
響を与えた旨主張しているものと解される。
(2) この点に関し,原審以来本件で対象となった被告製品は,「内視鏡ビデオス
コープシステム『EVIS LUCERA SPECTRUM』にビデオスコープ『EVIS LUCERA OLYMPUS
GIF TYPE FQ260Z』を装着してなる蛍光内視鏡観察システム」である。そして,被控
訴人が原審において被告製品の構成を示す証拠として提出した甲第4号証の1・2\nは,いずれも取引先等に配布しているものと推認できるパンフレットであり,「EVIS
LUCERA 上部消化管汎用ビデオスコープ OLYMPUS GIF TYPE FQ260Z」という,被告製
品の名称が明記されている。これら甲第4号証の1・2が,被告製品の構成と称し\nて,実際にはそれと異なる構成を示しているという事情は,うかがわれない。
(3)また,原審の裁判官及び当審の受命裁判官は,いずれも本件和解の当事者で
はなく,これらの裁判官が錯誤に陥ったか否かは,そもそも本件和解の取消原因に
当たらないし,無効原因にも当たらない。
なお,原審において,被告製品については,その一部の構成に関し,控訴人と被\n控訴人との間で争いがあったところ,控訴人の主張する被告製品の構成は,特許庁\nにおける判定(判定2007−600027)の手続において認定された被告製品
の構成と同一のものであり,特許庁は,被告製品が本件発明の技術的範囲に属する\n旨の判定をした(乙3)。原判決は,控訴人が提出した乙第1号証及び乙第2号証
を摘示し,被控訴人は訴訟係属前に被告製品の構成が控訴人の主張するとおりであ\nることを自認していたことなどから,被告製品は控訴人の主張する構成(前記判定\nの手続で認定されたものと同一の構成)を有するものであることを前提として,被\n告製品が本件発明の技術的範囲に属しない旨の判断をしたものである。以上によれ
ば,原審の裁判官及び当審の受命裁判官のいずれも,控訴人主張に係る被控訴人に
よる証拠偽装の詐欺行為によって判断を誤ったものと認めるに足りない。
(4)さらに,前記第1の1のとおり,控訴人は,原審において,訴訟代理人とし
て弓削田弁護士を選任し,弓削田弁護士は,前記反訴を提起し,その後,平成21
年6月10日の第5回弁論準備手続期日から同年9月30日の原審の口頭弁論終結
(第2回口頭弁論期日)まで全ての期日に控訴人本人と共に出頭し,充足論に関す
る控訴人の主張のまとめが記載されている準備書面を含む3通の準備書面を提出し
ている。加えて,控訴人は,当審においては,弓削田弁護士に加えて3名の弁理士
を訴訟代理人として選任した。これらの訴訟代理人らは,被告製品の充足性につい
て詳細に主張した控訴理由書及びそれを補充する平成22年4月1日付け控訴人第
1準備書面を提出しており,弓削田弁護士及び河野登夫弁理士は,2回にわたる弁
論準備手続期日及び本件和解成立日を含む3回にわたる和解期日の全てに控訴人本
人と共に出頭した。
以上によれば,控訴人は,弁護士ないし弁理士である訴訟代理人の助力も受けな
がら,被告製品の構成も含め被告製品の充足性について十\分に検討して主張し,ま
た,本件和解に臨んだものと認められ,この点に鑑みれば,被告製品の構成及び本\n件和解の内容に関し,錯誤があったとは考え難い。
◆判決本文
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2015.12. 5
平成27(ネ)10038 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成27年11月26日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
控訴審で均等侵害を主張しましたが、均等侵害なしと判断されました。なお、時機に後れた攻撃防御であるとの主張は認められませんでした。
被控訴人は,控訴人の均等侵害の主張が時機に後れた攻撃防御方法に当たる旨を
主張するが,既に提出済みの証拠関係に基づき判断可能なものであるから,訴訟の\n完結を遅延させるものとはいえない。
したがって,上記主張を時機に後れた攻撃防御方法として却下はしない。
(2) 均等論その1について
控訴人は,被控訴人機器又は被控訴人運行管理方法が,本件各特許発明における
「第1記録領」域及び「第2記録領域」との構成を有せず,構\成要件1D又は構成\n要件2C若しくは2Dを充足しないとしても,被控訴人機器又は被控訴人運行管理
方法は,本件各特許発明の構成と均等なものである旨を主張する。\nそこで,以下,検討する。
ア 第1要件の充足について
本件特許発明の内容及び本件明細書の記載事項は,前記1及び同2(2)のとおりで
ある。
これらにかんがみると,本件特許発明は,1)従来技術においては,車両等の挙動
特徴に関する計測データを,危険な運転操作の検出等と日常的な運転中の挙動操作
の双方を解析するについては不十分なものであったことから,2)これらの解析に必
要なすべての計測データを効率的に記録媒体に記録する運行管理方法とシステムの
提供を課題とし,3)その解決方法として,[1]日常的な運転における挙動の特徴に関
するデータと,事故につながるような挙動の特徴に関するデータとを所定の条件に
より峻別し,[2]それぞれのデータを,記録媒体の別々の記録領域に記録し,4)これ
らのことにより,それぞれのデータが常に確保されるようにして,その確保された
データを解析することにより,きめ細やかな運行管理を可能としたものと認められ\nる。
このような本件各特許発明の課題,課題解決方法及び作用効果においては,限ら
れた容量の記録媒体に,どのようにして複数種の解析されるべきデータを記録する
かが,発明を構成する必須の要素であり,その重要な特徴点であるといえる。そう\nであれば,構成要件1D又は2C若しくは2Dの「第1記録領域」及び「第2記録\n領域」は,本件各特許発明の本質的部分に含まれると認められる。
したがって,被控訴人機器又は被控訴人運行管理方法は,いずれも,均等の第1
要件を充足しない。
イ 控訴人の主張に対して
控訴人の主張は,本件各特許発明の本質的部分は,定点観測のデータと危険挙動
のデータとをそれぞれ第1データと第2データとに分けて出力した点にあり,各デ
ータをどのように記録させるかの点にはないとの趣旨と解される。
しかしながら,上記アのとおり,本件各特許発明の特徴は,2種類のデータとそ
の記録領域とをそれぞれに関連させて別個に記録させたところにあるから,単にデ
ータが区別されている点のみがその本質的部分とはいえない。データの記録方法と
して,本件各特許発明の方法と作用効果に相違のない構成は,その出願当時におい\nても多々あり得たものといえるが,本件各特許発明は,その中において,あえて,
記録媒体の記録領域が「第1記録領域」と「第2記録領域」を有するとの構成に限\n定したのであり,他に作用効果が同一の構成があることや,当該他の構\成が容易に
想到できるものであるか否かは,発明の本質的部分の認定を左右するものではない。
◆判決本文
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2015.10.16
平成26(ネ)10111 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成27年10月8日 知的財産高等裁判所 大阪地方裁判所
控訴状および控訴理由書でも主張しなかった均等侵害について、知財高裁は、時機に後れた抗弁であるが、被控訴人も反論したので・・として均等侵害か否かについても判断しました。結果は、均等の第1、第2要件を満たさないとのことです。
被控訴人は,控訴人が,当審において,新たにイ号製品は本件各特許発明の均等
侵害を構成する旨の主張を予\備的に追加したのに対し,上記主張は,時機に後れた
攻撃方法の提出として,民訴法157条1項に基づき却下されるべきである旨主張
する。
控訴人は,平成25年6月3日に本件訴訟を提起し,平成26年9月25日に原
判決が言い渡されると,同年10月8日に控訴を提起したが,均等侵害に係る主張
は,控訴状にも,同年12月16日提出に係る控訴理由書にも記載されておらず,
平成27年2月14日提出に係る第1準備書面において初めて,その主張の骨子が
記載されたものである。
第1審における争点は,専ら構成要件2E及び1Bの充足性であったこと,控訴\n状には控訴理由の記載がなく,控訴理由書には,控訴理由は,前記第3の1(「横
向き管における最下面の延長線」,「延長線の近傍位置または該延長線より上方位
置」の意義),第3の2及び第3の6の4点である旨記載をしながら,均等侵害に
係る主張を記載せず,主張の予告もなかったこと,控訴人の第1準備書面が提出さ\nれたのは,同月19日の当審第1回口頭弁論期日のわずか5日前であったことなど,
本件審理の経過に照らせば,控訴人の均等侵害に係る主張は,時機に後れたものと
いわざるを得ない。しかしながら,被控訴人も上記主張に対する認否,反論をした
ことに鑑み,均等侵害の成否について以下において判断する。
(2) 本件特許発明2の均等侵害について
ア 本件特許発明2とイ号製品との相違点について
前記1において説示したとおり,イ号製品は,本件特許発明2の構成要件2Eを\n充足しないから,本件特許発明2とイ号製品とは,少なくとも構成要件2E,すな\nわち,本件特許発明2においては,レベル計が,供給管の横向き管における最下面
の延長線の近傍位置又は該延長線より上方位置に設けられているのに対し,イ号製
品においては,レベル計の位置を最も高い位置にしたとしても,横向き管が縦向き
管と接する出口の下端とレベル計の最上面との距離が28.2mm存し,レベル計
が,横向き管の最下面を形成する線を縦向き管に向けて延長した線のうち縦向き管
内の最も高い位置より下方が,その充填された混合済み材料によって満杯の状態に
なる位置より少しばかり下に設けられているとは認められない点において相違する。
イ 均等侵害の成立要件について
(ア) 作用効果の同一性(第2要件)について
本件特許発明2は,前記1(1)ウのとおり,吸引輸送される材料が未混合のまま一
時貯留ホッパーへ直接に送られるのを防止することを目的として,流動ホッパーへ
の材料の吸引輸送は,前回吸引輸送した混合済み材料が流動ホッパーから一時貯留
ホッパーへと降下する際に,前記混合済み材料の充填レベルが供給管の「横向き管
における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方」に降下する前に開始す
るようにするため,供給管の「横向き管における最下面の延長線の近傍位置または
該延長線より上方位置」に,混合済み材料の充填レベルを検出するためのレベル計
を設けるようにしたものであり,これにより,吸引輸送される材料は,その充填さ
れた混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるため,未混合
のまま一時貯留ホッパーへ落下することはないという作用効果を奏するものである。
これに対し,イ号製品においては,前記1(3)のとおり,レベル計の位置を最も高
い位置にしたとしても,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベル計の最上
面との距離が28.2mmあって,横向き管が縦向き管と接する出口の下端とレベ
ル計の最上面との間に相当の空間が存し,当該空間は,充填された混合済み材料に
よって満たされた状態とはなっていないから,吸引輸送される材料が,充填された
混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻止され,未混合のまま一時
貯留ホッパーへ落下することはないという作用効果を奏しない。
したがって,イ号製品は,均等の第2要件を充足しない。
(イ) 非本質的部分(第1要件)について
本件特許発明2の本質的部分,すなわち,技術思想の中核的部分は,前記1(1)
ウによれば,構成要件2Eの「供給管の横向き管における最下面の延長線の近傍位\n置または該延長線より上方位置に」レベル計を設けることにより,流動ホッパーへ
の材料の吸引輸送は,前回吸引輸送した混合済み材料の充填レベルが供給管の「横
向き管における最下面の延長線の近傍または該延長線よりも下方」に降下する前に
開始されるため,吸引輸送される材料が,その充填された混合済み材料によって,
一時貯留ホッパーへの落下が阻止されるという作用効果を奏する点にあるものと認
められる。
これに対し,イ号製品は,構成要件2Eの「供給管の横向き管における最下面の\n延長線の近傍位置または該延長線より上方位置に」レベル計を設けたものではない
から,レベル計の位置を最も高い位置にしたとしても,横向き管が縦向き管と接す
る出口の下端とレベル計の最上面との距離が28.2mmあって,横向き管が縦向
き管と接する出口の下端とレベル計の最上面との間に相当の空間が存し,吸引輸送
される材料が,充填された混合済み材料によって,一時貯留ホッパーへの落下が阻
止されるという作用効果を奏せず,課題の解決手段を異にする。
そうすると,本件特許発明2とイ号製品との前記アの相違点が,本件特許発明2
の本質的部分でないということはできない。
したがって,イ号製品は,均等の第1要件も充足しない。
◆判決本文
◆一審はこちらです。平成25年(ワ)第5600号
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2015.05.13
平成26(行ケ)10179等 審決取消請求事件,共同訴訟参加事件 特許権 行政訴訟 平成27年4月13日 知的財産高等裁判所
共同出願人の一部が欠落した状態でなされた審決取消訴訟が提起され、出訴期間経過後、他方が参加申出を行いましたが、裁判所は、これを認めませんでした。なお、判決では、請求が却下されていますが、手続的にシャットアウトせず、その前に実質上の進歩性判断については審決の判断に誤りはないとの判断をしています。
前記第2の1認定の事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 本願は,当初は原告の単独出願であったが,後に,原告は,本願に係る特許を受ける権利を参加人との共有となるよう譲渡し,同権利は原告及び参加人の共有となった。その後,原告ら両名を名宛人とした拒絶査定がなされ(丙5),原告らが共同して拒絶査定に対する不服の審判を請求し(丙6),審決も原告ら両名を名宛人としてなされた。
イ 審決時の原告ら代理人弁理士は,アメリカ合衆国における原告ら両名の代理人事務所(以下「現地事務所」という。)を通じて原告らからの指示を受け取っていた(丙7)。
ウ 前記第2の1のとおり,「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決の謄本は,審決時の原告ら代理人弁理士に対し,平成26年3月25日に送達された(附加期間90日)。
審決時の原告ら両名代理人弁理士は,同年4月25日付けのレターにより,現地事務所に対し,審決の内容を報告した。なお,同レターには,原告ら両名のための訴訟委任状フォーム及び資格証明書フォームが同封されていた(丙8ないし12)。
エ これに対し,現地代理人事務所のローレン ディー.アルビン弁護士は,平成26年7月8日,原告ら両名が審決取消訴訟を提起することを指示する内容のメールを,審決時の原告ら代理人弁理士宛てに発信した(丙13)。
オ しかし,本件訴えにおける原告訴訟代理人の過誤により,原告の名称のみが記載された平成26年7月23日(出訴期間満了日)付け訴状が提出された。参加人は,同年8月1日,共同訴訟参加の申出をした。
(2) 民訴法52条に基づく参加申出において,共同原告として参加する第三者は,自ら訴えを起こし得る第三者でなければならないと解されるから,出訴期間の定めがある訴えについては,出訴期間経過後は同条による参加申\出はなし得ないものと解するべきである(最高裁昭和35年(オ)第684号同36年8月31日第一小法廷判決・民集15巻7号2040頁参照)。そして,特許法178条4項は,審決取消訴訟の出訴期間を不変期間と定めている。もっとも,不変期間であっても,参加人の責めに帰することができない理由で出訴期間内に訴訟の提起をなし得なかったときは,一定期間内に追完することができる(行訴法7条,民訴法97条1項)。
しかし,本件においては,上記(1)の経緯のとおり,本件申出は,出訴期間経過後になされたことが明らかであるところ,上記認定の経緯に照らしても,参加人において出訴期間内に訴訟の提起をなし得なかったことについて,その責めに帰することができない事由があったとは認めることができない。\nしたがって,参加人の本件申出は,不適法なものというほかない。
(3) また,特許を受ける権利の共有者が,その共有に係る権利を目的とする特許出願の拒絶査定を受けて共同で審判を請求し,請求が成り立たない旨の審決を受けた場合に,上記共有者の提起する審決取消訴訟は,共有者が全員で提起することを要するいわゆる固有必要的共同訴訟と解するべきである(平成7年判決)。
そして,前記(1)オによれば,本件訴えは,本願に係る特許を受ける権利の共有者の一部である原告のみによって提起されたものとみるほかない。
ところで,固有必要的共同訴訟において,共同訴訟人となるべき者が脱落している場合であっても,民訴法52条により脱落者が共同訴訟参加人として参加すれば,必要的共同訴訟における当事者適格の瑕疵は治癒されるものと解される。しかし,上記(2)の説示のとおり,本件申出は不適法であるから,本件においては,当事者適格の瑕疵を適法に治癒するものと解することはできない。\nしたがって,原告の本件訴えも不適法である。
(4) これに対し,原告らは,本件申出は,既に一部の共有者によって提起されている訴訟に加わる性質の訴訟行為であって,かつ,既に出訴期間内に提\n訴された原告の請求と合一確定を求めるためのものであって,法的安定性を害するおそれもないし,訴訟遅延をもたらすものでもない,本件申出を肯定しても,特許を受ける権利という財産権が救われる一方で,誰かに何らかの不都合が生じることは想像できず,逆に,これを否定することによって,拒絶審決取消訴訟を固有必要的共同訴訟と解する立場における保護法益が守られるわけではなく,むしろ肯定した方がその保護法益にかなうなどと主張し,また,原告らは,平成17年知財高裁判決に基づき,本件申\出も適法である旨主張する(前記第3の1(1))。
しかし,前記(2)及び(3)に説示したとおり,原告らの上記主張は,いずれも,当裁判所の採用するところではない。
さらに,原告らは,平成14年判決がなされた以上,平成7年判決の理論は見直されるべきである旨主張するが(前記第3の1(2)),これも独自の見解であり採用の限りではない。
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2015.04.17
平成26(行ケ)10179等 審決取消請求事件,共同訴訟参加事件 特許権 行政訴訟 平成27年4月13日 知的財産高等裁判所
審決取消訴訟について、共有者全員で行わなければならないとして、訴えが却下されました。
ア 本願は,当初は原告の単独出願であったが,後に,原告は,本願に係る
特許を受ける権利を参加人との共有となるよう譲渡し,同権利は原告及び参加人の共有となった。その後,原告ら両名を名宛人とした拒絶査定がなされ(丙5),原告らが共同して拒絶査定に対する不服の審判を請求し(丙6),審決も原告ら両名を名宛人としてなされた。
イ 審決時の原告ら代理人弁理士は,アメリカ合衆国における原告ら両名の代理人事務所(以下「現地事務所」という。)を通じて原告らからの指示を受け取っていた(丙7)。
ウ 前記第2の1のとおり,「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決の謄本は,審決時の原告ら代理人弁理士に対し,平成26年3月25日に送達された(附加期間90日)。
審決時の原告ら両名代理人弁理士は,同年4月25日付けのレターにより,現地事務所に対し,審決の内容を報告した。なお,同レターには,原告ら両名のための訴訟委任状フォーム及び資格証明書フォームが同封されていた(丙8ないし12)。
エ これに対し,現地代理人事務所のローレン ディー.アルビン弁護士は,平成26年7月8日,原告ら両名が審決取消訴訟を提起することを指示する内容のメールを,審決時の原告ら代理人弁理士宛てに発信した(丙13)。
オ しかし,本件訴えにおける原告訴訟代理人の過誤により,原告の名称のみが記載された平成26年7月23日(出訴期間満了日)付け訴状が提出された。参加人は,同年8月1日,共同訴訟参加の申出をした。\n(2) 民訴法52条に基づく参加申出において,共同原告として参加する第三者は,自ら訴えを起こし得る第三者でなければならないと解されるから,出訴期間の定めがある訴えについては,出訴期間経過後は同条による参加申\出はなし得ないものと解するべきである(最高裁昭和35年(オ)第684号同36年8月31日第一小法廷判決・民集15巻7号2040頁参照)。そ
して,特許法178条4項は,審決取消訴訟の出訴期間を不変期間と定めている。もっとも,不変期間であっても,参加人の責めに帰することができない理由で出訴期間内に訴訟の提起をなし得なかったときは,一定期間内に追完することができる(行訴法7条,民訴法97条1項)。
しかし,本件においては,上記(1)の経緯のとおり,本件申出は,出訴期間経過後になされたことが明らかであるところ,上記認定の経緯に照らしても,参加人において出訴期間内に訴訟の提起をなし得なかったことについて,その責めに帰することができない事由があったとは認めることができない。\nしたがって,参加人の本件申出は,不適法なものというほかない。
(3) また,特許を受ける権利の共有者が,その共有に係る権利を目的とする特許出願の拒絶査定を受けて共同で審判を請求し,請求が成り立たない旨の審決を受けた場合に,上記共有者の提起する審決取消訴訟は,共有者が全員で提起することを要するいわゆる固有必要的共同訴訟と解するべきである(平成7年判決)。
そして,前記(1)オによれば,本件訴えは,本願に係る特許を受ける権利の共有者の一部である原告のみによって提起されたものとみるほかない。
ところで,固有必要的共同訴訟において,共同訴訟人となるべき者が脱落している場合であっても,民訴法52条により脱落者が共同訴訟参加人として参加すれば,必要的共同訴訟における当事者適格の瑕疵は治癒されるものと解される。しかし,上記(2)の説示のとおり,本件申出は不適法であるから,本件においては,当事者適格の瑕疵を適法に治癒するものと解することはできない。\nしたがって,原告の本件訴えも不適法である。
(4) これに対し,原告らは,本件申出は,既に一部の共有者によって提起されている訴訟に加わる性質の訴訟行為であって,かつ,既に出訴期間内に提\n
訴された原告の請求と合一確定を求めるためのものであって,法的安定性を害するおそれもないし,訴訟遅延をもたらすものでもない,本件申出を肯定しても,特許を受ける権利という財産権が救われる一方で,誰かに何らかの不都合が生じることは想像できず,逆に,これを否定することによって,拒絶審決取消訴訟を固有必要的共同訴訟と解する立場における保護法益が守られるわけではなく,むしろ肯定した方がその保護法益にかなうなどと主張し,また,原告らは,平成17年知財高裁判決に基づき,本件申\出も適法である旨主張する(前記第3の1(1))。
しかし,前記(2)及び(3)に説示したとおり,原告らの上記主張は,いずれも,当裁判所の採用するところではない。
さらに,原告らは,平成14年判決がなされた以上,平成7年判決の理論は見直されるべきである旨主張するが(前記第3の1(2)),これも独自の見解であり採用の限りではない。
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2015.02. 8
平成26(行ケ)10068 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成27年1月28日 知的財産高等裁判所
第1次取消判決の拘束力に抵触する判断をしたとして、審決が取り消されました。
・・・同審決は,甲1文献の表6中の試料1の記載内容を根拠として,甲1文献において「具体的に示されている発泡剤は,空気,CO2,HFC−245fa,HCFC−141b及びHFC−365mfcの初期体積分率(%)が,それぞれ,1.5,38.5,22.4,16.8及び20.8である混合気体」(以下「甲1混合気体」という。)であるとした上で,「(甲1文献に)具体的に示されている発泡剤組成物は,その成分として,代替物である「HFC−245fa」及び「HFC−365mfc」とともに「HCFC−141b」を依然として含有するものであって,この発泡剤組成物から,さらに熱的性能\,防火性能に優れる「HCFC−141b」を完全に除去することは,当業者が予\測できるとはいえない。」と結論付けたものである。これに対し,前記(2)イのとおり、第1次取り消し審決は、甲1文献には「オゾン層に悪影響を与えるHCFC−141bの代替物質としてHFC−245fa及びHFC−365mfc(特に,HFC−365mfc)を発泡剤としての使用が提案されていることが認められる」こと,これに対し、「HCFC−141bを,その熱的性能,防火性能\を理由として,依然として含有させるべきであるとの見解が示されているわけではないと解される」ことからすると,甲1文献の「HCFC−141bの代替物質としてHFC−245fa及びHFC−365mfcが好ましいとの記載から,混合気体からHCFC−141bを除去し,その代替物としてHFC−245faないしHFC−365mfcを使用した発泡剤組成物を得ることが,当業者に予測できないとした審決の判断は,合理的な理由に基づかないものと解される」として,「甲1に記載された混合気体から,…発泡剤成分事項1又は…2を,当業者といえども容易に想到できないとした審決の判断は誤りである」と結論付けたものである。\nそうすると,第1次取消判決は,要するに,第1次審決が,甲1文献に示されているとする甲1混合気体からHCFC−141bを完全に除去することは,当業者が予測できるとはいえないと判断したのに対し,甲1文献に,HCFC−141bの代替物質としてHFC−245fa及びHFC−365mfcが好ましいとの記載があること,HCFC−141bを熱的性能\,防火性能を理由に依然として含ませるべきとの見解は示されていないことを理由に,甲1混合気体からHCFC−141bを完全に除去することは当業者が予\測できないとの第1次審決の判断は合理的理由に基づくものではなく,誤りであるとしたものであり,かかる認定判断部分が,同判決の判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断を成すものであるということができる。
よって,この認定判断部分が,第1次取消判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断に当たり,審判官は,再度の審判手続において,この取消判決の拘束力の及ぶ認定判断に抵触する認定判断をすることが許されないというべきである。
◆判決本文
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