日本国における特許を受ける権利の移転請求権不存在の確認訴訟について、裁判所は、訴えの利益無しと判断しました。
ア そこで検討するに,前記前提事実によれば,原告らは,被告が,原告らと被告間の本件権利移転合意(本件合意書2条の合意)に基づいて,原告大林精工に対し,目録1の各特許権及び韓国,米国等の対応特許権の特許権移転登録手続等の履行を,原告Aに対し,目録2の各出願について被告を出願人とする出願人名義変更手続等の履行を求めた本件韓国訴訟において,被告の請求を全部認容するソウル高等法院判決の言渡しがあった後に,原告らの本件権利移転合意の意思表\示の錯誤無効又は詐欺による取消しを主張して,被告が本件権利移転合意に基づいて目録1及び2の各特許権の移転登録手続を求める権利並びに目録3の各出願の特許を受ける権利について移転手続を求める権利を有しないことの確認を求める本件訴訟を提起したものであり,本件訴訟の提起時までに,原告Aが目録2の各出願の分割出願として目録3の各出願を行った後,目録2の各出願の特許権の設定登録を受けていたことからすると,本件韓国訴訟と本件訴訟(本件訴え)とは,目録1及び2の各特許権並びに目録3の各出願の特許を受ける権利に関し,被告の原告らに対する本件権利移転合意に基づく特許権移転登録手続等請求権に基づく給付の訴えと原告らの被告に対する上記請求権と同一の請求権又は実質的に同一の請求権が存在しないことの確認を求める消極的確認の訴えの関係にあるものと認められる。
イ また,前記前提事実によれば,被告は,本件韓国訴訟のソウル高等法院判決が平成23年4月28日に確定したことから,同年7月29日,民事執行法24条に基づき,外国裁判所の判決であるソ\ウル高等法院判決の主文第2項(目録1の各特許権の移転登録手続の履行を命じた部分及び目録2の各出願の出願人名義変更手続の履行を命じた部分)等についての執行判決を求める別件訴訟1)及び2)を名古屋地方裁判所豊橋支部及び水戸地方裁判所下妻支部にそれぞれ提起したところ,両支部は,いずれもソウル高等法院判決の主文第2項に係る訴訟の国際裁判管轄は,日本の裁判所に専属し,韓国の裁判所に国際裁判管轄が存しないとして,ソ\ウル高等法院判決の主文第2項は,民事訴訟法118条1号所定の要件を欠くことを理由に,被告の請求を棄却する旨の別件判決1)及び2)をそれぞれ言い渡し,これらを不服とする被告が控訴をし,別件訴訟1)及び2)の控訴事件が名古屋高等裁判所及び東京高等裁判所にそれぞれ係属中であることが認められる。そして,外国裁判所の判決について執行判決を求める訴えにおいては,外国裁判所の判決が確定したこと及び民事訴訟法118条各号所定の要件を具備することについて審理をし(民事執行法24条3項),その裁判の当否を調査することなく,執行判決をしなければならないこと(同条2項),執行判決が確定した場合には,当該外国裁判所の判決は執行判決と合体して債務名義となること(同法22条6号)に照らすならば,別件訴訟1)及び2)は,ソウル高等法院判決の主文第2項に係る本件権利移転合意に基づく特許権移転登録手続等請求権についての債務名義の取得を目的とするものであり,実質上,ソ\ウル高等法院判決に係る給付の訴え(本件韓国訴訟)の日本国内における事後的継続であるということができる。このような債務名義の取得という観点からみると,別件訴訟1)及び2)と本件訴訟(本件訴え)との関係は,本件韓国訴訟と本件訴訟との関係と同様に,実質上,給付の訴えと消極的確認の訴えの関係にあるものということができる。次に,別件訴訟1)及び2)と本件訴訟の国際裁判管轄に係る当事者の主張をみると,被告は,本件管轄合意(本件合意書9条の合意)は,本件合意書に関する紛争の第一審はソウル中央地方法院の専属的管轄とすることを定めた専属的管轄の合意であること,平成23年法律第36号による改正後の民事訴訟法(「平成23年改正法」)3条の5第2項は,登記又は登録に関する訴えの管轄権は登記又は登録をすべき地が日本国内にあるときは日本の裁判所の専属管轄に服する旨規定するが,平成23年改正法が施行された平成24年4月1日の時点で,本件訴えは東京地方裁判所に現に係属していたのであるから,平成23年改正法の附則2条1項により,本件訴えに民事訴訟法3条の5第2項が適用されないことなどを根拠として,別件訴訟1)及び2)においては,ソウル高等法院判決の主文第2項に係る給付請求について,ソ\ウル高等法院に民事訴訟法118条1号所定の「裁判権」,すなわち国際裁判管轄(間接管轄)が認められ,本件訴訟においては,原告らの消極的確認請求について,日本の裁判所に国際裁判管轄(直接管轄)が認められない旨主張するのに対し,他方で,原告らは,本件管轄合意及び本件権利移転合意は,原告らの錯誤無効又は詐欺による取消し等により効力を有しないこと,平成23年改正前の民事訴訟法の下においても,登記又は登録に関する訴えの管轄権は登記又は登録をすべき地が日本国内にあるときは日本の裁判所の専属管轄に服すると解すべきであることなどを根拠として,別件訴訟1)及び2)においては,ソウル高等法院判決の主文第2項に係る給付請求について,ソ\ウル高等法院に国際裁判管轄(間接管轄)が認められないので,民事訴訟法118条1号所定の要件を欠くものであり,本件訴訟においては,原告らの消極的確認請求について,日本の裁判所に国際裁判管轄(直接管轄)が認められる旨主張している(甲32ないし35,乙21ないし25,弁論の全趣旨)。このように別件訴訟1)及び2)において,ソウル高等法院判決の主文第2項に係る給付請求についてソ\ウル高等法院に国際裁判管轄(間接管轄)が認められるかどうかと,本件訴訟において,原告らの消極的確認請求について日本の裁判所に国際裁判管轄(直接管轄)が認められるかどうかとは表裏一体の関係にある。
ウ 前記ア及びイの諸点を踏まえると,外国裁判所の確定した給付判決であるソウル高等法院判決の執行判決を求める訴えである別件訴訟1)及び2)が現に係属している場合に,給付判決の基礎とされた同一の請求権又は実質的に同一の請求権が存在しないことの確認を求める消極的確認の訴えである本件訴訟を許容するならば,執行判決の要件である民訴法118条1号の外国裁判所における国際裁判管轄の有無と表裏一体の関係にある消極的確認の訴えの国際裁判管轄の有無について,執行判決を求める訴えの係属する裁判所の判断と消極的確認の訴えの係属する裁判所の判断とが矛盾抵触するおそれが生じ得るのみならず,請求権の存否についても,外国裁判所の確定判決の判断内容の当否を再度審査して,それと矛盾抵触する判断がされるおそれが生じ得ることとなり,裁判の当否を調査することなく,執行判決をしなければならないとした民事執行法24条2項の趣旨に反するのみならず,当事者間の紛争を複雑化させることにつながりかねないものと認められる。また,仮に外国裁判所の確定判決の執行判決を求める訴えに係る請求が認容され,その判決が確定した場合には,同一の請求権について消極的確認請求を認容する判決が確定したとしても,当該判決には,前に確定した判決(外国裁判所の確定判決)と抵触する再審事由(民事訴訟法338条1項10号)が存することとなり,他方で,外国裁判所の確定判決の執行判決を求める訴えに係る請求が棄却され,当該判決が確定した場合には,日本において同一の請求権に基づく給付の訴えが提起される可能\性があり,その場合には,同一の請求権についての消極的確認の訴えは訴えの利益を欠く関係にあるから,いずれの事態も消極的確認の訴えにより紛争の解決に直結するものとは認め難い。以上を総合すると,ソウル高等法院判決の執行判決を求める訴えである別件訴訟1)及び2)が現に控訴審に係属している状況下において,本件訴訟(本件訴え)により被告が目録1及び2の各特許権の移転登録手続を求める権利並びに目録3の各出願の特許を受ける権利について移転手続を求める権利を有しないことの確認を求めることは,原告らと被告間の上記各特許権及び特許を受ける権利の帰属に関する紛争の解決のために必要かつ適切なものであるとはいえないから,本件訴えは,いずれも確認の利益を欠く不適法なものであるというべきである。これに反する原告らの主張は,採用することができない。
◆判決本文
著作権侵害について、準拠法は日本と判断し、約7万円の損害賠償を認めました。弁護士費用は一般的には10%ですが、今回は5万円です。
1 準拠法について
(1) 本件では,本件写真の著作物性,著作者及び著作権者について争いがあるが,文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(以下「ベルヌ条約」という。)5条(2)によれば,著作物の保護の範囲は,専ら,保護が要求される同盟国の法令の定めるところによるから,我が国における著作権の帰属や有無等については,我が国の著作権法を準拠法として判断すべきである。我が国とアメリカ合衆国は,ベルヌ条約の同盟国であるところ,本件写真は,アメリカ合衆国において最初に発行されたものと認められ(前提事実(2)),後記2のとおり,その著作物性と同国の国民である原告Aが著作者であることが認められるから,同国を本国とし,同国の法令の定めるところにより保護されるとともに(ベルヌ条約2条(1),3条(1),5条(3)(4)),我が国においても著作権法による保護を受ける(著作権法6条3号,ベルヌ条約5条(1))。(2) また,本件では,原告Aは,原告会社に対し,本件独占的利用許諾権を付与した(前提事実(3))のであるから,このような利用許諾契約の成立及び効力については,当事者が契約当時に選択した地の法を準拠法とし(法の適用に関する通則法7条),他方,選択がないときは,契約当時において契約に最も密接な関係がある地の法が準拠法である(法の適用に関する通則法8条1項)。そして,本件独占的利用許諾権の付与が譲渡と同じ法的性質であると解したとしても,譲渡の原因関係である債権行為については同様に解するのが相当である。そこで検討するに,本件独占的利用許諾権の付与は,原告Aがハワイ州公証人の面前において自ら署名した宣誓供述書をもって行ったものであり(前提事実(3)),その相手方である原告会社が同州に所在する会社であることも併せると,アメリカ合衆国ないしハワイ州の法を選択したものと解するのが相当である。そして,アメリカ合衆国著作権法101条は,「『著作権の移転』とは,著作権または著作権に含まれるいずれかの排他的権利の譲渡,モゲージ設定,独占的使用許諾その他の移転,譲与または担保契約をいい,その効力が時間的または地域的に制限されるか否かを問わないが,非独占的使用許諾は含まない。」と規定するから,本件独占的利用許諾権の付与は同条にいう「著作権の移転」に含まれる。また,同法204条(a)は,「著作権の移転は,法の作用によるものを除き,譲渡証書または移転の記録もしくは覚書が書面にて作成され,かつ,移転される権利の保有者またはその適法に授権された代理人が署名しなければ効力を有しない。」と規定するが,原告Aは,自ら署名した宣誓供述書をもって,本件独占的利用許諾権を付与したのであるから(前提事実(3)),本件独占的利用許諾権の付与は効力を有すると解される。加えて,原告Aは,本件独占的利用許諾権の付与以前に,原告会社との間で非独占的代理店契約を締結しており(前提事実(3)),前同様にアメリカ合衆国ないしハワイ州の法を選択したものと解されるが,これらの法に照らし,非独占的代理店契約の成立及び効力を否定する根拠は見当たらないから,本件独占的利用許諾権によって変更された非独占的利用許諾権以外の条項については,なお効力を有するものと解される。(3) そして,著作権侵害を理由とする損害賠償請求の法律関係の性質は,不法行為であるから,その準拠法は法の適用に関する通則法17条によるべきであり,「加害行為の結果が発生した地」は,我が国における著作権侵害による損害が問題とされているのであるから,我が国と解するのが相当である。
・・・
被告は,本人尋問において,本件写真をダウンロードした経緯について,概ね次のとおり供述する。まず,インターネットの検索サイトであるYahoo!から「ハワイ」を入力して画像を検索し,その検索結果(乙25)から本件写真を選択した。本件写真(1)を選択すると,新しい画面(乙28)が表示されたので,その画面下部に記載された壁紙LinkのURLをクリックした。そうすると,壁紙Linkのサイトの画面(乙29)が表\\示され,その下部のURLをクリックすると,別の画面(乙30)が表示された。そして,その画面に表\\示された本件写真(1)をクリックすると,更に別の画面(乙31)が表示され,そこには「デザイナーズ壁紙は海外のショップでフリーの素材として販売していたものを収集したもの,及び,海外のネット上で流通しているものを収集したものです。無料ダウンロードした写真壁紙は個人のデスクトップピクチャーとしてお楽しみください。また,掲載の作品をホームページ素材として,お使いいただく場合にはリンクをお願い致します。」と記載されていたので,フリー素材,無料であると誤信した。本件写真(2)も同様の手順であり,上記の記載と同様の記載があった。(2) しかしながら,被告は,本件提起前の永田弁護士との交渉において,永田弁護士に送付した文書には,「この写真の提供先は,ヤフーの画像からハワイと入力して,頂きました。写真には,名前のサインも入力されていないことを確認して『一期一会』のポエムにのせました」(甲13の1),「ヤフーを検索し,画像から趣味のブログ更新の為,ハワイのキーワードを入力しました。画像も持ち主が写真家様と知らず,(サインの記入もなかった為)写真家様の画像との認識もないまま 軽率にも 趣味のブログにて写真家様の画像を掲載してしまった事を心から謝罪させて頂きます。」(甲19の1),「私も2度とYahoo!画像から趣味のブログへの写真を掲載致しません。」(甲21)と記載しているのみであって,永田弁護士に対し,本件写真が壁紙Linkの記載からフリー素材であると誤信した旨を述べていない(被告本人)。そうすると,被告が上記(1)の手順で本件写真をダウンロードしたとは容易に認めることができないし,上記の各記載に照らすと,被告は,壁紙Linkの記載を閲覧することなく,Yahoo!の画像検索結果から本件写真をダウンロードした蓋然性が高いというべきである。(3) もっとも,被告が上記(1)の手順で本件写真をダウンロードしたとしても,上記(1)の「海外のショップでフリーの素材として販売していたもの」あるいは「海外のネット上で流通しているもの」との記載は,一定程度の注意をもって読めば,壁紙Linkが本件写真の利用許諾を受けていないことについて理解ができるものである。(4) そうすると,被告は,本件写真の利用について,その利用権原の有無についての確認を怠ったものであって,本件写真をダウンロードして複製したこと及びアップロードしてブログに掲載し公衆送信したこと(複製権及び公衆送信権の侵害)について,過失があると認められる。
◆判決本文