1審と同様に、女性芸能人の裸の胸部のイラスト画を合成した画像を用いた記事について、パブリシティの権利は否定されました。ただ、人格権・人格的利益侵害が認められました。
,1審原告らは,いずれも幅広く芸能活動を行い広く知られた女\n性芸能人であり,本件記事に用いられた1審原告らの肖像等は,顧客吸引力\nを有するものといえることは事実である。
しかしながら,本件記事の内容は,前提事実(3)及び原判決別紙原告らの
記事目録に記載のとおりであり,「勝手に品評!!芸能界妄想オッパイグラ\nンプリ」との見出しや,「手の届かない美女だからこそ,エッチな妄想は膨
らむばかり。そこで,本誌が勝手に検証した結果をもとに,彼女たちのオッ
パイを大公開します。禁断のヌードを股間に焼き付けろ!」との文章ととも
に,1審原告らを含む女性芸能人25名の顔を中心とした肖像写真の胸部に\n相当する箇所に,裸の胸部(乳房)のイラストを合成した画像を,同人らの
乳房の形状等を想起させるようなコメントやレーダーチャートを付して掲載
したというものである。
また,本件記事に用いられた1審原告らの肖像写真は,表紙を含めて24\n8頁ある本件雑誌全体のうち,グラビア部分とはいえわずか3頁の中に,合
計25名の女性の写真を組み込んだ記事において,その一部として用いられ
たものにすぎない。これらの写真は,いずれもモノクロ写真であって,写真
の大きさも,縦6cm,横4cmのものから縦12.2cm,横10.7c
m程度のものであり,それ自体として見れば,独立した鑑賞の対象としては
ややありふれたものであり,かかる事情は,これらを本件記事に掲載された
他の肖像写真と併せて全体的に評価したとしても,同様である。
このような本件記事の内容やその体裁に照らすと,本件記事は,1審原告
らを含む女性芸能人らの肖像写真それ自体を鑑賞の対象とすることを目的と\nするものというよりもむしろ,上記肖像写真に乳房のイラストを合成するこ
とによって,これらに付された上記のようなコメントやレーダーチャートと
相俟って,1審原告らを含む女性芸能人らの乳房ないし裸体を読者に想像さ\nせることを目的とするものであるというべきである。そして,本件記事は,
このような目的に供するために,1審原告らを含む女性芸能人らの肖像写真\nに乳房のイラストを加えることによって新たに創作されたものを,読者によ
る鑑賞の対象とするものということができる。一方,本件記事における乳房
のイラスト部分は,それ自体としては肖像写真を離れて独立の意義があると
は必ずしもいい難いものの,上記のような目的を踏まえると,コメントやレ
ーダーチャートとともに本件記事における不可欠の要素となっており,これ
らを単なる添え物と評価することは相当ではない。
そうすると,本件記事に1審原告らの肖像等を無断で使用する行為は,肖
像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用するものとはい
えず,また,専ら1審原告らの肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とす
るものと認めることもできず,かかる行為が,1審原告らのパブリシティ権
を侵害すると認めることはできない。
(3) 1審原告らは,本件記事は1審原告らを含む女性芸能人らの肖像が主要\nな構成要素になることにより初めて雑誌記事として成立しており,肖像部分\nを除いた部分は本件記事の添え物で独立した意義を認めることはできないと
主張する。
確かに,本件記事は,一般人ではなく1審原告らを含む女性芸能人らの肖\n像等を用いていることに,読者を惹きつける記事としての意味があるという
ことができる。しかしながら,本件記事は,肖像写真に乳房のイラストを加
えることによって新たに創作されたものを,読者による鑑賞の対象とするも
のであり,本件記事における乳房のイラスト部分は,それ自体としては肖像
写真を離れて独立の意義があるとは必ずしもいい難いものの,本件記事にお
ける不可欠の要素となっているから,これらを単なる添え物と評価すること
は相当ではないのは前記(2)のとおりである。
以上によれば,本件記事が,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的
とする場合に当たるということはできない。
◆判決本文
◆1審はこちらです。平成26年(ワ)第7213号