H16. 3.29 東京高裁 平成15(行ケ)499 商標権 行政訴訟事件

平成15年(行ケ)第499号 審決取消請求事件(平成16年3月3日口頭弁論終結)
                 判    決
    原       告      株式会社サザビー
    同訴訟代理人弁護士      吉 田 和 彦
    同     弁理士      加 藤 ちあき
    被        告       特許庁長官  今井康夫
    同指定代理人          柳 原 雪 身
    同              涌 井 幸 一
               主    文
   1 原告の請求を棄却する。
   2 訴訟費用は原告の負担とする。

                 事実及び理由
第1  原告の請求
   特許庁が不服2002−2345号事件について平成15年9月30日にした審決を取り消す。
第2  前提となる事実(争いのない事実)
 1  特許庁における手続の経緯
   原告は、平成12年12月27日、別紙審決書写し(以下「審決書」という。)の後記「(1) 本願商標」のとおり、レタリングされた「Afternoon Tea」の欧文字からなる商標(以下「本願商標」という。)について、指定商品を商標法施行規則別表第30類の「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,穀物の加工品,サンドイッチ、すし,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト」(以下「本願指定商品」という。)として、商標登録出願(商願2000−140264号)をしたが、平成14年1月15日付けで拒絶査定を受けたので、同年2月13日、これに対する不服審判の請求をした。

   特許庁は、同請求を不服2002−2345号事件として審理した上、平成15年9月30日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同年10月14日、原告に送達された。
 2 本件審決の理由 
   本件審決は、審決書記載のとおり、本願商標と、審決書の後記「(2) 引用A商標」のとおりの構成よりなる商標(甲5、登録第2338393号商標、以下「引用A商標」という。)及び「(3) 引用B商標」のとおりの構成よりなる商標(甲6、登録第4225494号商標、以下「引用B商標」といい、両商標を「引用両商標」という。)とが、外観において相紛れるおそれがある程度に近似し、それぞれより生ずる共通の「アフタヌーンティー」の称呼及び共通の「午後の紅茶」の観念において、相紛れるおそれのある、全体として類似する商標であるから、商標法4条1項11号に該当するものとして拒絶した原査定は妥当であって、これを取り消すべきではないと判断した。

第3 原告主張の本件審決の取消事由の要点
   本件審決は、本願商標から「午後の紅茶」の観念及び引用両商標から「午後の紅茶」の観念が生じるものと誤認して、観念の対比を誤り(取消事由1)、引用両商標から「アフタヌーンティー」の称呼が生じるものと誤認して、称呼の対比を誤り(取消事由2)、本願商標と引用両商標とが、外観上容易に区別できることを誤認して、外観の対比を誤った(取消事由3)結果、本願商標と引用両商標とが全体として類似する商標であると誤って判断するとともに、具体的な取引状況に基づいて、商品の出所の誤認混同を生ずるおそれがないことを看過した(取消事由4)ものであるから、違法として取り消されるべきである。
 1 取消事由1(観念についての対比判断の誤り)
   (1) 本件審決が認定した(2頁)とおり、本願商標から「飲み物に通例紅茶を用いる昼過ぎの軽い食事」及び「午後の茶の会」の観念が生じることは認める。しかし、本願商標から「午後の紅茶」の観念が生ずるとした本件審決の認定(2頁)は、誤りである。

     たしかに、本願商標を構成する「Afternoon Tea」の「Tea」には、もともと「午後の招待」、「お茶の会」といった意味があり、これは「昼半ば過ぎの軽い食事で、飲み物には通例紅茶を用いる」ところから来ている(甲3)。しかし、「午後の紅茶」というのは、昭和61年に、引用両商標の商標権者(以下「引用商標権者」という。)である訴外麒麟麦酒株式会社(以下「麒麟麦酒」という。)が名付けた紅茶飲料の商品名、すなわち、商標であり(甲315、338)、日本語にもともと存在していた言い回しではない。現在では、引用両商標が紅茶飲料について一定の周知性を獲得したために、あたかも、昔からそのような言い回しがあったかのように用いられることがあるが、「午後の紅茶」を英語の「Afternoon Tea」の日本語訳として用いるのは、本来、誤りである。
   (2) そして、本願商標からは、英語の「Afternoon Tea」が持っていた本来の語義に加え、原告の周知なハウスマークという特定の観念が生じるに至っている(甲8ないし21、27、35ないし301)。
     すなわち、原告は、今から22年前の昭和56年9月、東京都渋谷区に、飲食店(ティールーム)と生活雑貨の販売を合体させた新しいタイプの店を開き、その店名として「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」を採択した(甲7ないし9)。この「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」店舗は、これまでの日本にはなかった新しいタイプの店として、若い女性を中心に評判を呼び、雑誌や新聞等のマスメディアにも頻繁に取り上げられた。例えば、上記渋谷区の第1号店オープンからわずか4年後の昭和60年9月には、当時、全国的に人気のあった女性誌「オリーブ」の記事の中で、「AfternoonTea/アフタヌーンティー」自由が丘店が、「自由が丘の散歩には欠かせない」と紹介され(甲10)、また、同誌「オリーブ」の昭和61年4月号では、同店に関し「もうすっかり有名でしょう?」との記載があり(甲11)、若い女性たちの間では、引用A商標の出願時点(昭和63年6月)において、既に一定の周知性を獲得していたことが認められる。

     このような「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」ブランドの圧倒的人気に鑑み、原告は、ふさわしい媒体を選んだ効果的な宣伝広告活動に多額の費用を投入しており(甲12、22)、雑誌におけるアンケート結果でも、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」ブランドは、常に上位に位置するようになった(甲17、18、181)。
    そして、上記第1号店開店から22年の間に、原告は、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」店舗を日本全国に展開し、現在では、札幌から沖縄に至るまで全169店舗を構えるまでになった(甲24、25)。さらに、現在では、ティールームや生活雑貨だけでなく、洋服、家具、本格的なパン屋やピザハウスから(甲13、14)マンションの企画・立案に至るまで(甲36ないし40)、幅広い事業の標章として使用されている(甲7)。この「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」ブランドへの世間の注目は高まり、女性誌や情報誌のみならず、経済紙や一般紙にも取り上げられるようになった(甲14、15、27、69ないし82、417ないし474)。

    原告は、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」ブランドのほか、服飾の「アニエスベー」、コーヒーショップの「スターバックス」、レストラン「キハチ」などの親会社でもあるが(甲26、27、69ないし82)、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」ブランドの売上高は大きく、喫茶店部門(アフタヌーンティーティールーム)の売上げは、急成長を続けており、平成元年に15億2600万円だった売上げが、平成5年には44億5300万円に伸びた(甲15)。現在、公開されている数字を合算すると、平成13年3月期の「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」店舗の喫茶部門(124億4千万円)と雑貨部門(107億3千万円)の売上げは、実に年間230億円を上回る(甲27)。
    そして、原告は、平成14年8月、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」ブランド設立20周年を記念し、東京都中央区銀座に「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」ブランドだけの総合大型路面旗艦店(フラッグシップストア)として、名称を「Afternoon Tea The General Store/アフタヌーンティー ザ ジェネラルストア」(以下「ジェネラルストア」という。)とする店舗を開店し、その開店時の様子は、新聞・雑誌等のマスコミで大きく報じられた(甲41ないし68)。

     ジェネラルストアには、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」ブランドの食器、文房具、家具、被服、バッグ、タオル、雑貨等の日用品のほか、ロンドン在住の世界的な人気シェフのオリジナルメニューを特徴としたレストランや、故ダイアナ妃のウェディングブーケを製作したフラワーデザイナーがプロデュースするフラワーショップ及びフラワーアレンジメントスクール、ネイルサロンや茶寮などもあり、その宣伝広告活動は活発に展開された(甲41ないし68)。
    以上のとおり、本願商標は、あらゆる商品・役務について永年使用されてきており、衣・食・住にわたる幅広い分野において、既に周知な商標として社会的に認知されている。本願指定商品に含まれる「紅茶(葉)」や「紅茶飲料」は、22年前から「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」店舗において販売・提供されてきたものであるが(甲91、114、117、120、127、153、204、244、414)、これまで需要者が、これらの商品を引用両商標の商標権者又はその関連会社の商品であるかのように誤認した事実は一度もなかった。なお、本願商標の周知性は、他の審決取消請求事件においても認められている(甲23、34、35)。

   (3) 他方、引用両商標自体から本来的に生ずる観念は、「午後用の紅茶」「午後に飲む紅茶」であるから、本願商標と引用両商標とは、観念上、明らかに区別することのできる非類似の商標である。
 2 取消事由2(称呼についての対比判断の誤り)
   (1)  本件審決が、引用両商標から「アフタヌーンティー」の称呼が生ずると認定した(2頁)ことは、誤りである。
     すなわち、引用A商標「午後の紅茶」を付した商品(紅茶飲料。以下、引用B商標が付されたものも併せて「引用商標商品」という。)は、昭和61年に販売が開始された(甲315、338、373)。なお、引用商標商品の販売は、当初、引用商標権者である麒麟麦酒により行われたが、後に麒麟麦酒の子会社である訴外キリンビバレッジ株式会社に移譲された。
     引用商標商品は、発売以来、「午後ティー」の愛称で親しまれ(甲328、331、336、343、346、349、373)、紅茶飲料というカテゴリーのトップブランドとして、常に紅茶飲料市場をリードし続けているロングセラー商品である(甲302ないし412)。発売から17年が経過するが、同商品は、市場シェアの首位を独占しており(甲309、318、328、332)、他社の追随を許さない(甲309、328)。

     そして、引用両商標は、「ゴゴノコウチャ」、「ゴゴティー(午後ティー)」又は「ゴゴチャ(午後茶)」と称呼されており(甲328、331、336、343、346、349及び373)、そこから「アフタヌーンティー」単独の称呼が生じている事実はない。
     また、引用両商標は、大きく表わされた「午後の紅茶」の文字と、後記3(2)記載のような各種要素とが渾然一体となって構成されている商標であって、小さく表示された「AFTERNOON TEA(Afternoon Tea)」の欧文字部分のみが、特に世人の注意を引きやすいということもないし、その存在のみによって識別機能が認められることもない。
     以上のことは、平成15年の12月に、原告が専門家の指導監督の下に行った市場調査(以下「本件調査」という。)及びこれに基づく鑑定書によっても、明らかである(甲475、476)。すなわち、当該調査の結果、引用両商標は、併せて95パーセントという圧倒的多数の消費者から、「ゴゴノコウチャ」又は「ゴゴティー」と称呼されており、缶入りの紅茶飲料として高い周知性を獲得している一方、「アフタヌーンティー」という称呼を挙げた者はいなかったのである。

     したがって、引用両商標は、「アフタヌーンティー」の称呼が生ずるものではなく、「ゴゴノコウチャ」、「ゴゴティー」、「ゴゴチャ」と称呼される一定の周知性を獲得した商標である。これに対し、本願商標は、「アフタヌーンティー」の称呼を生ずる原告の著名なハウスマークであるから、引用両商標とは称呼上も相紛れるおそれのない非類似の商標である。
   (2) なお、引用A商標の「AFTERNOON TEA」部分及び引用B商標の「Afternoon Tea」部分は、以下のとおり、識別力を有しないものである。
     原告は、昭和60年2月8日、ブロック体のアルファベットで普通に表された「AFTERNOON TEA」の文字の下に「アフタヌーンティー」というカタカナ文字を二段書きした構成の商標を、商標法施行規則別表(平成3年通産令70号による改正前のもの、以下「旧区分」という。)第29類「茶」等を指定商品として出願した(商願昭60−11017号)。同じころ、訴外株式会社丸山園も、「アフタヌーンティー」というカタカナ文字からなる商標を、旧区分第29類「茶」等を指定商品として出願した(商願昭59−67991号)。しかし、いずれの商標も、指定商品との関係で「識別力なし」との理由により拒絶査定となった(甲28ないし30)。

     すなわち、英語の「AFTERNOON TEA」には、もともと、英国の慣習における「午後遅く出る軽い茶菓(おやつ)の儀式」、「飲み物に通例紅茶を用いる昼過ぎの軽い食事」、「午後の茶の会」といった意味があるため(甲2、3)、これらの文字を普通に用いられる方法で表示する場合、それは、商品(紅茶)の「用途」を表示するにすぎない一方で、「紅茶」以外の他の商品に使用すると品質の誤認を生ずるという絶対的拒絶理由(商標法3条1項3号、同4条1項16号)に該当し、登録要件を満たさなかったのである。
     他方、引用商標権者は、昭和63年6月13日、引用A商標を出願した(甲31)。この引用A商標が、「午後の紅茶」という大きな文字に、自己の著名なハウスマークである「KIRIN」の欧文字を付加し、審決書の後記「(2)引用A商標」記載のような多様な構成要素をも含んだ構成となっているのは、同年当時、「AFTERNOON TEA」の英語及び「午後の紅茶」の日本語が識別標識として機能しないこと、そして、そのため単独では登録可能性がないことを十分に認識した上での行為であったと考えられる。

     引用A商標を構成する「AFTERNOON TEA」部分に識別力がないことは、同商標の出願書類(甲31)中の担当審査官の手書きのメモとして、「丸山園+アフタヌーンティあり/←この部分識別力なし」と記載されていることからも明らかである。つまり、前記の第三者の商願昭59−67991号及び原告の商願昭60−11017号は、商標法3条(識別力なし)で拒絶査定となったものの、「アフタヌーンティー」の語に「丸山園」を付加した商公昭63−54539号「丸山園アフタヌーンティー」商標は、「丸山園」部分のみに識別力が認められて登録された。そして、この「丸山園アフタヌーンティー」商標と引用A商標とは、ともに「アフタヌーンティー」、「AFTERNOON TEA」の語を構成要素としながらも、「丸山園アフタヌーンティー」商標が存続期間満了により平成11年3月27日に消滅するまでの間、併存して登録されていたのである(甲415)。
    さらに、引用両商標の指定商品が「紅茶」に限定されていることは、実質的な「権利不要求」と呼ぶべきであり、引用両商標の要部でない「AFTERNOON TEA」部分からは、特定の称呼・観念は生じず、本願商標のような構成からなる他人の登録(後願)を排除する禁止的効力は持ち得ないというべきである。引用商標権者自身、「AFTERNOON TEA」の英語に識別力がないと認識していたことは、引用A商標に含まれる英語の説明文「Afternoon Teaをとることは、19世紀初めに始まったとされる独特の慣習です。」(以下「本件説明文」という。)及び英国のティータイムの生みの親といわれるペットフォード公爵夫人の図(以下「本件夫人図」という。)からも明らかである(甲33、337)。
 3 取消事由3(外観についての対比判断の誤り)

    本件審決が、「外観上からしても、本願商標と引用両商標とは、相紛れるおそれがある程度に近似している」(2頁)と認定したことも、誤りである。
   (1) 本願商標を構成するロゴタイプは、ニューヨーク在住の著名なグラフィックデザイナー松本高明氏に依頼して作成されたものであり、極めて特徴的な構成から成り立っている。すなわち、全体が白抜きの二重線で描かれ、語頭の「A」と続く「f」の文字の下部が連結して表されているのみならず、本来は二つの単語である「Afternoon」と「Tea」とが、まとまりよく一連に読めるように工夫して表示されており、識別性が高い標章である。
   (2) これに対し、引用A商標及び引用B商標は、いくつもの異なった構成要素を複合的に配することによって成り立っている。
     すなわち、引用A商標は、中央に大きく「午後の紅茶」と横書きし、その上に「AFTERNOON TEA」の欧文字を、下段には小さく「ストレートティー/(甘さひかえめ)」の文字と、引用商標権者の周知なハウスマークである「KIRIN」の欧文字が、シンメトリーな飾り図形、「MARKETED BY KIRIN BREWERY CO.,LTD. TOKYO, JAPAN」の極小の文字とともに配置されている。

     引用B商標は、引用A商標よりも更に大きく「午後の紅茶」の文字が白抜きで最上段に横書きされ、その下に小さく「Afternoon」と「Tea」の文字が筆記体の斜体で、上記の飾り図形に似た図形とともに二段書きされている。さらに、最下段には、英語による本件説明文及び本件夫人図(甲33、337)が記載されている。
   (3) 以上のとおり、本願商標と引用A商標及び引用B商標とは、文字及びその書体、構成要素等が全く異なり、一覧しただけで容易に区別することができ、外観において相紛れるおそれはない。
 4 取消事由4(出所の誤認混同についての判断の看過)
  (1) 商標法4条1項11号にいう「商標の類否は、対比される商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、その商品の取引の実状を明らかにしうる限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする」のが大原則であり、今日のように情報媒体が多様化し、情報量が飛躍的に増大した社会における結合商標の審査にあたっては、特段の事情のない限り、文字部分のみをいたずらに重視して他の構成要素の持つ情報伝達力を軽んじることは許されない。

なぜなら、出願商標が、登録商標と単にその外観、観念又は称呼のうちの1つにおいてのみ類似することを理由に、直ちにこれを類似商標として登録を認めないとすれば、実際の取引の場において、既存の登録商標と商品の出所の混同をきたすおそれのない出願商標の登録も認めない結果となり、出願人の商標選択の自由を不当に奪うこととなるからである。
  (2) 引用商標権者は、昭和61年10月ころ、引用A商標を採択して「紅茶飲料」を発売する時点で、原告の「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」ブランドの圧倒的人気に鑑み、当時の取締役名で原告に対し書状を送付しており(甲413)、同書状には、引用A商標を付した紅茶飲料の発売に当たって、「貴社の信用を傷つけぬよう配慮いたします所存です」と明記されている。

     また、本願商標が使用される商品・役務(飲食物の提供、生活雑貨他)の主たる需要者と、引用両商標が使用される商品(紅茶)の主たる需要者とは、いずれも「若い女性」という点で共通している(甲第181、331)。しかし、本願指定商品である「紅茶」等に「AfternoonTea/アフタヌーンティー」標章が使用されてから22年(甲91、114、117、120、127、153、204、244、414)、その5年後に引用A商標が「紅茶飲料」に採択・使用されてから17年が経過しても(甲302ないし412)、その間、本願商標あるいは「AfternoonTea/アフタヌーンティー」ブランドと、引用両商標との間で出所の混同が生じたことは一度もない。このことは、既に現実の市場において、本願商標と引用両商標とが、それぞれ別個の識別標識として揺るぎない地位を確立していることの証左である。
    さらに、前記書状、引用A商標の採択に関する新聞記事(甲33)及び現実の取引状況を勘案すると、引用商標権者自身、引用両商標に含まれる「AFTERNOON TEA」の文字部分を、自他商品識別標識である商標として認識していたかどうか甚だ疑問である。おそらくは「イメージとしての用途表示」か、あるいは、引用両商標を付した商品パッケージのデザインの一部として利用したものと推測される。現に、平成15年12月現在販売中の引用商標商品には、「AFTERNOON TEA」の文字部分は存在していない(甲416)。
   (3) 以上のとおり、本件においては、本願商標と引用両商標とでは、外観が著しく相違する上、具体的な現実の取引状況を考慮した場合、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」ブランドの周知性と、引用両商標の紅茶缶飲料についての周知性から、商品の出所につき、引用両商標との関係で誤認混同されるおそれはなく、本願商標が、商標法4条1項11号にいう「類似する商標」に該当しないことは明らかである。

第4 被告の反論の要点
   本件審決の認定判断は、正当であり、原告主張の取消事由は、いずれも理由がない。
 1 取消事由1について
   本願商標は、「午後の紅茶」「飲み物に通例紅茶を用いる昼過ぎの軽い食事」「午後の茶の会」の観念が生ずる英語の成語である。これに対し、引用両商標は、「午後の紅茶」「飲み物に通例紅茶を用いる昼過ぎの軽い食事」「午後の茶の会」の観念が生ずるものであるから、本願商標と引用両商標とは、観念を共通にし、商品の出所について誤認、混同を生ずるおそれがあるから、観念上類似する。
   原告は、本願商標の周知性を強調し、本願商標が原告のティールームと雑貨の複合店の店舗名として採択されたものが雑誌、新聞等で紹介されたとする証拠を提出しているが、これらは本願指定商品についての商標の実際の使用といい得るものでなく、まして、本願商標は、後記認定のとおり、格別変化に富んだ識別力の高い字体、書体を採用するものでもなく、また、その観念からして識別力が極めて弱いものであるから、その使用によって、引用両商標の周知性を凌駕するほどに周知な商標ということはできない。

 2 取消事由2について
   引用A商標は、その構成中に「AFTERNOON TEA」を容易に看取、把握し得る大きさで表してなるものであるから、該文字に照応する「アフタヌーンティー」の称呼を生ずるものであり、引用B商標は、同様に「Afternoon」及び「Tea」の文字を表してなるものであるから、これを一体的にとらえ、該文字に照応する「アフタヌーンティー」の称呼を生ずるものである。これに対し、本願商標は、「アフタヌーンティー」の称呼を生ずるものである。
   したがって、本願商標と引用両商標とは、共通の「アフタヌーンティー」の称呼において、商品の出所について誤認、混同を生ずるおそれがあるものであるから、称呼上類似する。
   原告は、新聞記事等で引用両商標を付した当該商品が「アフタヌーンティー」として扱われていない旨主張し、証拠を提出しているが、新聞記事等は情報を伝達する利便性を目的として使用されるものであるから、商標の実際の使用と異なることは当然であり、商標の実際の使用において、一体として使用されたものである以上、一体的に識別力を構築しているものというべきである。新聞記事等でどのように扱われたかということと、商標の実際の使用である商品に付して使用されたものであることとを同列に論ずることはできず、あくまでも、使用による識別力は、商標の実際の使用を前提として論ずるべきものである。

   そして、ある時点では、商品の用途、品質を表すものとして識別力のない(弱い)標章であったとしても、永年商品について盛大に使用された結果、強い識別性を有するものになることは、商標法3条2項の規定に照らしても明らかなところであり、引用両商標の場合、使用の結果、「午後の紅茶」の文字部分及びこれに併記された「AFTERNOON TEA」又は「Afternoon Tea」の文字部分においても、今日では、他の構成部分から独立して強い信用力、すなわち、自他商品識別力が化体しているものであり、本件審決時においても、その自他商品識別力は、消滅したものということはできない。
   さらに、原告は、本件調査において、引用両商標を提示された圧倒的多数の者が「ゴゴノコウチャ」、「ゴゴティー」と答えたとするが、この答えは、引用両商標が主に何と呼ばれているかの答えであり、「AFTERNOON TEA」又は「Afternoon Tea」が商標として機能していないことを立証するものではない。なぜなら、商標の要部(自他商品識別機能を果たす部分)は、登録商標の構成中に複数有ってもよく、代表的な要部によって「呼び方が定番である」ことは、他の要部の存在を否定することにならないのである。

 3 取消事由3について
   本願商標は、ややレタリングされた「Afternoon Tea」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、該欧文字は、やや特徴的ではあるが、格別変化に富んだ識別力の高い字体、書体を採用するものではなく、標章全体として独創的なデザインを有するものでもない。これに対し、引用A商標は、その構成中に同一の綴り字欧文字「AFTERNOON TEA」を容易に看取、把握し得る大きさで顕著に表してなるものであり、引用B商標は、同様に「Afternoon」及び「Tea」の文字を顕著に表してなるものであるから、これに接する取引者、需要者は、その出所について誤認、混同を生ずるおそれがあり、この点において、本願商標と引用両商標とは外観上類似する。
 4 取消事由4について

   我が国の商標制度は、「登録主義」を採っていることが明らかであり、引用両商標の存続を前提としながら、その出願に遅れて出願された本願商標の商標登録まで認め、類似する2商標の併存状態を維持しようとすることを、商標制度の目的に合致するものということはできない。
第5 当裁判所の判断
 1 取消事由1(観念についての対比判断の誤り)について
  (1) 本願商標は、審決書の後記「(1)本願商標」のとおり、レタリングされた「Afternoon Tea」の欧文字からなり、本願指定商品について登録出願されたものである(当事者間に争いがない。)。
    ところで、「Afternoon」及び「Tea」のいずれの英単語も、我が国において親しまれたものであり、「午後」及び「茶」「紅茶」を意味することは、本願指定商品の取引者、需要者において容易に認識し得るところである。したがって、本願商標の「Afternoon Tea」の一連の文字部分から、「午後のお茶」「午後の紅茶」という英語の直訳的意味が認識できることは明らかである。また、「Afternoon Tea」の一連の英熟語から、「飲み物に通例紅茶を用いる昼過ぎの軽い食事」「午後の招待」「お茶の会」という意味も認識されるものと解される(甲3)。そして、本願商標からは、これらの日本語訳的意味に対応する観念がそれぞれ生じるものと認められる。

  (2) 原告は、「午後の紅茶」という語が、昭和61年に麒麟麦酒が名付けた紅茶飲料の商品名であり、日本語にもともと存在していた言い回しではないから、「午後の紅茶」を英語の「Afternoon Tea」の日本語訳として用いるのは誤りであると主張する。
    しかしながら、前示のとおり、「Afternoon」が「午後」を意味し、「Tea」が「茶」又は「紅茶」を意味することは、本願指定商品の取引者、需要者のみならず我が国の一般人において極めて容易に認識し得るところであり、「Afternoon Tea」の英単語が、上記両単語の意味を合わせた「午後のお茶」又は「午後の紅茶」を意味することも、極めて当然なことといわなければならない。我が国における一般的な英語の理解能力を前提として、「Afternoon Tea」を「午後の紅茶」と訳すことが誤りであるとは、到底、認められない。また、2つ以上の英単語の日本語訳を考える場合に、その日本語訳が言い回しとして成立しているか否か、すなわち、日本語の熟語として認識されているか否かは問題とされないから、日本語にもともと存在していた言い回しではないとしても、「午後の紅茶」という極めて平易な日本語が、商品名として使用されて著名となり、このことを理由に「午後の紅茶」という日本語訳が成立したと解することは何ら不自然なことではない。

    したがって、原告の上記主張を採用する余地はない。
  (3) また、原告は、本願商標から、英語の「Afternoon Tea」が本来有する語義に加えて、原告の周知なブランド名としての観念が生じると主張するとともに、原告が、昭和56年9月に開設した喫茶店(ティールーム)と生活雑貨の販売店を合体させた店舗の店名として「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」を採択して以降、本願商標を、様々な商品・役務について永年使用した結果、衣・食・住にわたる幅広い分野において、周知な商標として社会的に認知されているとして、その詳細を具体的に主張立証する。
    しかしながら、上記の原告店舗名として「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」の標章が一定の周知性を獲得し、それに伴い、本願商標から原告の周知なブランド名としての観念が抽出されるとしても、そのことによって、前示のような本願商標の平易な日本語訳である「午後の紅茶」に即応した観念が生じることが否定されるものではない。そもそも、原告は、本件審決が認定したとおり、本願商標から「飲み物に通例紅茶を用いる昼過ぎの軽い食事」及び「午後の茶の会」の観念が生じることは認めており、このような原告店舗のブランド名以外の観念が生じるにもかかわらず、これらと近似する「午後の紅茶」の観念が生じないと主張するのは、独自の見解であり、到底、これを採用することはできない。

  (4) 他方、引用両商標は、後記2の(1)認定の構成からみて、最も大きく書された「午後の紅茶」の文字に対応した「午後の紅茶」の観念が生じることは、明らかであるから、本願商標と引用両商標とは、観念を共通にするものといわなければならない。なお、原告は、引用両商標から、「午後用の紅茶」「午後に飲む紅茶」等の観念が生じることを認めており、このような観念は生じるが「午後の紅茶」の観念は生じないとする主張は、極めて恣意的であり、到底、採用することができない。
 2 取消事由2(称呼についての対比判断の誤り)について
  (1) 本願商標の構成において、「Afternoon Tea」の欧文字は、各欧文字の大部分が白抜きの二重線(二重線の一部は右側が幾分太い。)というやや特徴的な字体で描かれているが、格別変化に富んだ識別力の高い字体、書体を採用するものではなく、標章全体として独創的なデザインを有するものでもない。そして、語頭の「A」と続く「f」の文字の下部が連結して表されているほか、「Afternoon」と「Tea」との2つの単語の間に空白部分がわずかに設けられているため、通常の2単語の各別の商標と比較すると、まとまりのよい一連のものと認識されやすく、その結果、本願商標からは、「アフターヌーンティー」との一連の称呼が生じるものと認められる。

    他方、引用A商標は、現在の指定商品を第30類「紅茶」とし、審決書の後記「(2)引用A商標」のとおり、中央に最も大きく「午後の紅茶」を横書きし、その上に「AFTERNOON TEA」の欧文字をやや小さく横書きし、下段には「ストレートティー」「(甘さひかえめ)」の文字を更に小さく上下に2段書きし、その下に、左右にシンメトリーな線状の飾り図形を有する「KIRIN」の太い欧文字が横書きされ、最下段に、「MARKETED BY KIRIN BREWERY CO.,LTD. TOKYO, JAPAN」の最も小さな欧文字が、それぞれ配置されている。
     また、引用B商標は、指定商品を第30類「紅茶」とし、審決書の後記「(3)引用B商標」のとおり、その中央上部に大きく「午後の紅茶」の文字が白抜きで横書きされ、その下にやや小さく「Afternoon」と「Tea」の文字が筆記体の斜体で、引用A商標の線状の飾り図形に似た図形とともに上下に2段書きされている。さらに、最下段には、中央の円形内に本件夫人図が配置され、その左右に円形を取り囲むように「Taking afternoon tea is a unique」「custom which is said to have started」「in the early 19th century 」の 英語による本件説明文が3段書きされ、その上下に2本の平行な横線が配置されている。

    以上の引用両商標の構成よりみて、引用両商標からは、その最も大きく書された「午後の紅茶」の文字に即応する「ゴゴノコウチャ」の称呼が生じるものと認められる。また、「午後の紅茶」の上部あるいは下部に近接して配置され、特段注目されるような字体及び書体ではないが、比較的容易に認識できる「AFTERNOON TEA」又は「Afternoon Tea」の一連の欧文字は、我が国における一般的な英語の理解能力を前提として、親しみのある平易な英熟語であるから、その欧文字の読みに即応した「アフターヌーンティー」の称呼が生じるものと認められる。
  (2) 原告は、引用A商標「午後の紅茶」を付した引用商標商品が昭和61年に販売されて以降、「午後ティー」の愛称で親しまれ、紅茶飲料というカテゴリーのトップブランドとして、常に紅茶飲料市場をリードし続けているロングセラー商品であって市場シェアの首位を独占しており、「ゴゴノコウチャ」、「ゴゴティー(午後ティー)」又は「ゴゴチャ(午後茶)」と称呼されているから、引用両商標から「アフタヌーンティー」の称呼が生じるものではないと主張する。

    しかしながら、引用両商標を付した商品が、長年にわたる販売実績の積み重ねにより、「ゴゴノコウチャ」、「ゴゴティー」又は「ゴゴチャ」などと称呼されることが多いとしても、前示のとおり、引用両商標の構成自体において、比較的認識しやすい位置及び大きさで「AFTERNOON TEA」又は「Afternoon Tea」の一連の欧文字が配置され、当該欧文字が、平易な英熟語であって、「午後の紅茶」の英訳語として関連性を有するものと把握できる以上、上記の各称呼に加えて、当該欧文字に即応した「アフターヌーンティー」の称呼が生じることを否定すべき根拠はなく、原告の上記主張は、採用することができない。
    なお、原告は、専門家の指導監督の下に行った本件調査においても、圧倒的多数の消費者が、引用両商標を「ゴゴノコウチャ」又は「ゴゴティー」と称呼しており、「アフタヌーンティー」という称呼を挙げた者はいなかったから、「アフタヌーンティー」の称呼が生じるものではないと主張する。

    しかしながら、上記調査における調査票(甲476)によれば、回答者は、引用両商標を提示されて、その呼び方を記入するものであり、その記入欄には複数の呼び方を記入するような指示はなされておらず、集計された回答も1名につき1つである。したがって、引用両商標において、最も注目されやすく配置されている「午後の紅茶」の文字についての称呼を挙げる者がほとんどであることは、当然のことと解されるが、その記入結果をもって、引用両商標からその他の称呼が生じないとする根拠とならないことは明らかであり、原告の上記主張も採用することができない。
  (3) また、原告は、特許庁における従前の審査実務において、「アフタヌーンティー」の標章や引用A商標を構成する「AFTERNOON TEA」部分が、指定商品「茶」との関係で「識別力なし」と判断されてきたし、引用商標権者自身も、「AFTERNOON TEA」の英語に識別力がないと認識していたから、引用A商標の「AFTERNOON TEA」部分及び引用B商標の「Afternoon Tea」部分には識別力がないと主張する。

    しかしながら、引用両商標中の「AFTERNOON TEA」又は「Afternoon Tea」部分は、前示のとおり、比較的認識しやすい位置及び大きさで配置され、平易な英熟語であって「午後の紅茶」の英訳語として関連性を有するものと把握できるのであり、しかも、「AFTERNOON TEA」又は「Afternoon Tea」の標章部分などが含まれる他の登録商標が多数存在するような事情も認められないから、引用両商標中の当該部分について、一定の識別力を欠くとする根拠は認められない。そして、このような客観的事情は、原告が主張するような従前の審査実務や当該商標の商標権者の認識によって左右されるものではない。
    したがって、原告の上記主張も採用することはできない。
  (4) 以上のとおり、引用両商標から「アフターヌーンティー」の称呼が生じるものと認められ、本願商標からも「アフタヌーンティー」の称呼が生じる(当事者間に争いがない。)以上、両商標は、称呼を共通にするものといわなければならない。

 3 取消事由3(外観についての対比判断の誤り)について
  (1) 本願商標の「Afternoon Tea」の欧文字は、前示のとおり、やや特徴的ではあるが、格別変化に富んだ識別力の高い字体、書体を採用するものではなく、標章全体として独創的なデザインを有するものでもない。これに対し、引用両商標においては、前示のとおり、「午後の紅茶」の文字が大きく表され、「AFTERNOON TEA」又は「Afternoon」「Tea」の欧文字だけでなく、本願商標にはない図形的記載や英文章の記載がなされているから、原告の主張するとおり、異なった構成要素を有する複合的な標章と認められるものの、「AFTERNOON TEA」又は「Afternoon」「Tea」の欧文字自体は、いずれも引用両商標の構成において、比較的認識しやすい位置及び大きさで配置されており、特段注目されるような字体及び書体でもないから、その文字部分を共通することにより、本願商標と引用両商標とは、外観上類似する一面を有することは否定できないというべきである。

  (2) 原告は、本願商標と引用A商標及び引用B商標とにおいて、文字及びその書体、構成要素等が全く異なり、一覧しただけで容易に区別することができ、外観において相紛れるおそれはないと主張するが、この主張が採用できないことは、上記説示に照らして明らかである。
 4 取消事由4(出所の誤認混同についての判断の看過)について
  (1) 本件審決の認定した(2頁)とおり、本願指定商品の「コーヒー及びココア」が、引用両商標の指定商品「紅茶」と同一又は類似することは、当事者間に争いはない。
    また、本願商標並びに引用両商標の「午後の紅茶」及び「AFTERNOON TEA」又は「Afternoon」「Tea」の部分のように特段注目されるような書体等でもない反面、観念を伴う文字標章の場合には、外観で印象付けられ、記憶するというより、むしろ観念で印象付けられ、記憶するのが一般的であるというべきところ、前示のとおり、本願商標と引用両商標とは、外観上の類似の度合いは多少低いとはいえ、「アフタヌーンティー」との称呼とともに、「午後の紅茶」との観念を共通にするものと認められるから、本願商標は、商品の出所につき引用両商標との関係で誤認混同されるおそれがあり、商標法4条1項11号所定の「類似する商標」に該当するものといわなければならない。

   (2) 原告は、引用商標権者自身、引用両商標中の「AFTERNOON TEA」の文字部分を自他商品識別標識として認識していたか疑問であるとした上、具体的な現実の取引状況として、「紅茶」等に「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」標章が使用されてから22年、その5年後に引用A商標が「紅茶飲料」に採択・使用されてから17年が経過しても、両者の間で出所の混同が生じたことは一度もなく、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」ブランドの周知性と、引用両商標の紅茶缶飲料についての周知性から、商品の出所につき誤認混同されるおそれはないと主張し、この点に関する証拠を多数提出する。
    しかしながら、本願商標と引用両商標とは、前示のとおり、観念、称呼又は外観の一部において類似するという程度に止まらず、客観的にみて、その観念及び称呼の1つを全く共通にし、外観においても一定の類似性を有するものであるから、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」ブランドが一定の周知性を有し(甲7ないし22、24ないし27、36ないし301、417ないし474)、引用両商標が紅茶缶飲料についての周知性を有する(甲302ないし412)ことを考慮してもなお、商品の出所の混同を生じるおそれは極めて高いものであり、このことは、引用商標権者自身の認識に関わりのないことといわなければならない。また、原告は、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」標章と引用両商標との間で出所の混同が生じたことは一度もないと主張するが、これは、原告又は引用商標権者に対して商品の出所の混同に関する苦情や混乱の情報等が寄せられていない旨を意味するものと解されるに止まり、本願指定商品の取引者、需要者において、現実に上記出所の混同を生じなかったと断定するに足りる的確な証拠はない。

    したがって、原告の上記主張も採用することができない。
 5 結論
   以上のとおり、原告主張の取消事由にはいずれも理由がなく、その他本件審決にこれを取り消すべき瑕疵は認められない。
   よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

      東京高等裁判所第3民事部

          裁判長裁判官  北  山  元  章

       
                  裁判官  清   水     節


               裁判官  沖   中  康  人