◆H16.11.25 東京高裁 平成16(行ケ)196 商標権 行政訴訟事件
平成16年(行ケ)第196号 審決取消請求事件
平成16年10月14日口頭弁論終結
判決
原 告 応研株式会社
訴訟代理人弁理士 堀 城 之
訴訟復代理人弁理士 永 岡 儀 雄
同 角 田 さやか
被 告 特許庁長官 小 川 洋
指定代理人 半 田 正 人
同 小 池 隆
同 井 出 英一郎
同 涌 井 幸 一
同 宮 下 正 之
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求める裁判
1 原告
(1) 特許庁が不服2003−12035号事件について平成16年4月1日にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は,平成14年6月3日,「建設大臣」の文字(標準文字)を書してなる商標(以下「本願商標」という。)について,指定商品及び指定役務を第9類「財務会計処理用コンピュータソフトウェア(記録されたもの),その他の電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路,磁気ディスク,磁気テープその他の周辺機器を含む。),財務会計処理用電子計算機用プログラムを記憶させたCD−ROMその他の記憶媒体,財務会計処理用電子式卓上計算機,財務会計処理用ワードプロセッサ」及び第42類「電子計算機の用途に応じて的確に操作するためには高度の専門知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子計算機の財務会計プログラムの設計・作成又は保守」(いずれも平成15年4月1日付け手続補正書による補正後のもの)として,商標登録出願したが,平成15年5月27日,拒絶査定を受けたので,同年6月26日,これに対する不服の審判を請求した。特許庁は,これを不服2003−12035号事件として審理した結果,平成16年4月1日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同月13日,その謄本を原告に送達した。
2 審決の理由の要旨
本願商標は,「建設大臣」の文字を書してなるものであるところ,該文字は「内閣各省大臣の一。建設省の長。」(広辞苑 第5版 株式会社岩波書店発行)を意味する語であり,建設省は「1948年に建設院から昇格。国土計画・都市計画・下水道・河川運河・砂防水防・道路・住宅などに関する中央行政機関。」(広辞苑 第5版 株式会社岩波書店発行)として設置されたものである。平成13年1月6日施行の中央省庁等改革基本法により,建設省は,北海道開発庁,国土庁及び運輸省とともに統合され,新たに国土交通省が誕生したが,この中央省庁等の再編成に至る50年以上もの間,前記建設省の行政事務は建設大臣が管理していたところである。
そして,この事実は,前述の中央省庁等の再編成から3年余り経た現在においてもなお国民一般の記憶に新しいものというを相当とする。
してみれば,「建設大臣」の文字よりなる本願商標をその指定商品及び指定役務について使用した場合,前記事情からして,中央省庁等の再編成前に設置されていた建設省の長としてその行政事務を管理していた建設大臣と関わりがあったかの如く,又は建設に関する行政事務を管理する大臣の名称の如く,需要者,取引者を誤信させるおそれが少なからずあるというべきであるから,かかるものを商標として採択,使用することは,国家行政への信頼を損ねるおそれがあり,社会公共の利益に反するものといわざるを得ない。
したがって,本願商標が商標法4条1項7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は,妥当であって,取り消すことはできない。
第3 原告主張の取消事由の要点
本願商標が商標法4条1項7号に該当するとした審決の判断は誤りであるから,審決は,取り消されるべきである。
1 取消事由1(判断基準時の誤認)
審決は,建設大臣が既に存在していないにもかかわらず,「中央省庁等の再編成から3年余り経た現在においてもなお国民一般の記憶に新しい」と認定している。
しかし,本件における公共の利益については,査定時・審決時に「建設大臣」が消滅しているか否かを基準に判断すべきであって,省庁等の再編成から3年を経た現在において,国民の記憶に新しいか否かを判断基準とすべきものではない。そもそも,建設大臣が消滅したことは,新聞等で報道されるなど,一般に周知されており,審決は,「記憶に新しい」とする理由も証拠も示していない。したがって,審決の上記認定は誤りである。
2 取消事由2(誤信のおそれに関する判断の誤り)
(1) 需要者・取引者の誤認
審決は,商標法4条1項7号の主体的判断基準である需要者,取引者を国民一般ととらえた上で,本願商標の使用は「需要者,取引者を誤信させる」と判断している。
しかし,本願商標は,指定商品との関係から建設業向け会計ソフトであると想起させる。建設業向け会計は特殊であるため,一般会計と明らかに消費者が異なり,法人である建設会社,その経理部長・担当者という高度な知識・判断力を有する者が需要者・取引者となる。いかなる商標が公序良俗に反するかは,一国におけるその時代に応じた社会通念に従って,取引の実情を通じて判断すべき相対的な概念であるところ,本願商標の指定商品は一般消費者が手にするものではなく,建設業等の法人が需要者となるものであるから,これらの専門業者は,本願商標が大臣と関わりがあるものと誤信することはないし,大臣が財務会計に関係するソフトウェアを販売していないことも知っており,過去に存在した「建設大臣」が現在存在しないことを熟知しているのである。したがって,本願商標の需要者・取引者を主婦や子供等を含む国民一般とした審決の上記判断は誤りである。
(2) 不明確な認定判断
審決は,「需要者,取引者を誤信させるおそれが少なからずある」としている。しかし,このような「少なからず」といった不明確な認定判断をもって商標登録を拒絶すべきではない。
(3) 公共の利益の誤認
原告は,既に本願商標を日本経済新聞等の広告に使用し,原告の販売店において本願商標を付した指定商品を販売するために使用しており,本願商標は,需要者に広く認識されている。したがって,本願商標の登録を認めないとするならば,何人もこれを使用できることになり,取引秩序が乱され,結果として需要者の利益,ひいては公共の利益をも害することになるのであって,この点において,審決は公共の利益についての判断を誤ったものである。
3 取消事由3(過去の登録例についての判断の誤り)
審決は「請求人は,過去の登録例を挙げて本願商標の登録適格性を主張しているが,それらの事例は商標の具体的構成において本願商標とは事案を異にするものであり,それら事例をもって現在における本願商標の登録の適否を判断する基準とするのは必ずしも適切でなく,また,本件については前記認定を相当とするものであるから,その主張は採用することができない。」と判断している。
しかし,商標の類否判断と異なり,「大臣」という語を含む単純な構成について,同時期に異なる結論が出るのは極めて不合理である。すなわち,過去の49件の登録例は,いずれもその商標を構成する文字の一部に「大臣」を含むという点で,本願商標と共通の性質を有するものであるから,本願商標の登録の適否を判断する基準となるべきであり,これらを判断の基礎として考慮することなしに,本願商標の登録を拒絶することは,著しく公平性を欠いているというべきである。
第4 被告の反論の要点
1 取消事由1(判断基準時の誤認)について
本願商標が商標法4条1項7号に規定する「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するか否かについての判断の基準とすべき時期は,審決時である。
そして,本件における公共の利益に関しては,審決時に,単に中央省庁の再編成によって建設省が消滅しているか否かだけを基準に判断すべきでないことは明らかであり,審決は,その事実も含めて種々の社会状況等を考慮して総合的な判断をしているものである。
審決は,国民一般の意識について,「記憶に新しい」としたのであり,この認定は,一般的な経験則に照らして至極当然のことであって,立証を要するまでもないことである。
2 取消事由2(誤信のおそれに関する判断の誤り)について
(1) 需要者・取引者の誤認について
出願された商標が公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがあるかどうかは,国民一般が抱く普通の感情を標準として判断すべきである。
本願商標は,「建設大臣」の文字よりなるところ,この語は,1948年から新たに国土交通省が誕生した2001年までの50年以上もの長い間,建設省を所管する大臣名として,一般国民に広く知れ渡っているものである。この間,建設大臣は,建設省の所管する国土計画,都市計画,下水道等の国民の生活に直結する行政を推し進め,また,これらに関係する各種事業等の許認可を行ってきたのであって,建設大臣の許認可に対する国民の信頼性は,非常に大きなものとなっている。国土交通大臣の所管となった後も,以前の建設大臣によって許認可等されたものが,その後も効力を有し,社会的に存続している状況にあり,国民は,日常生活の中で,未だに「建設大臣」の文字が使用され,これを目にし耳にすることも少なくない。
「建設大臣」は過去の大臣名称であったものであるが,このような公的な名称は,公的な名称としての認識がまったくなくなるまで,国民にとって社会的に公共性のあるものとして通常認識されるものであるから,このような名称の使用等が公共の秩序を乱すことはいうまでもなく,さらに,社会公共の利益に反するというべきである。また,国民にとって社会的に公共性のあるものとして認識される公的な名称の「建設大臣」を商標として登録することは,指定商品及び指定役務について独占使用権,排他権を付与することになり,国民の行政への信頼を損ねるとともに,商標法の趣旨・目的に照らして,社会的妥当性を欠き不当であるとの感情を抱かせるものであって,国民の感情を害する商標ともいうべきである。
なお,本願商標の指定商品及び指定役務中には,例えば一般のコンピュータソフトウェア(記録されたもの),電子計算機なども含まれるものであるから,これらの取引者,需要者が原告の主張するような特別の者に限られるということはない。
(2) 不明確な認定判断について
「少なからず」の語義は一般的な国語辞典からも明らかであり,また,取引者,需要者の認識において,一方の認識が全てであるということは必ずしもあり得ないのであるから,原告指摘のように不明確な認定判断であるということにはならない。
(3) 公共の利益の誤認について
原告は,本願商標が既に出願人によって使用されていることなどを理由に,本願商標の登録が認められないことの不都合をいう。
しかし,本願商標が商標法4条1項7号に該当する商標である以上,既に出願人によって使用されているからといって,登録され得ないのは止むを得ないことである。
3 取消事由3(過去の登録例についての判断の誤り)について
原告が挙げる登録例のほとんどは,その構成から見て,国の行政事務に関連があるとは到底理解されないものであるから,本願商標とは事案を異にするものである。また,「大臣」の語を含む商標の登録例があるからといって,そのことを理由に,本願商標が有する反社会性・反公益性を無視して,公序良俗に反するおそれがないと判断すべきではなく,商標法4条1項7号の判断は,過去の登録例に拘束されるものではないから,過去の登録例をもって,審決が著しく公平性を欠き,誤っているということはできない。
第5 当裁判所の判断
1 「建設大臣」は,国家行政組織法(平成11年法90号による改正前)3条2項の規定に基づいて設置された国の行政機関である建設省の長の名称であり(建設省設置法(平成11年法102号による廃止前)2条1,2項),建設省の所掌する国土計画,都市計画,河川,道路,住宅建築,建設業などに関する行政事務を統括する者である(上記改正前の国家行政組織法10条,廃止前の建設省設置法3条)。広辞苑第5版(乙41号証)にも,建設大臣は「内閣各省大臣の一,建設省の長」,建設省は「国土計画・都市計画・下水道・河川運河・砂防水防・道路・住宅などに関する中央行政機関。建設大臣を長とする。1948年建設院から昇格。」と記載されているように,「建設大臣」の名称は,建設省が設置された昭和23年から,中央省庁等改革基本法の定める方針等に基づき建設省,北海道開発庁,国土庁及び運輸省が統合され,新たに国土交通省となった平成13年1月までの50年以上もの長期にわたり,建設省を統括する大臣名として,国民一般に広く知られているものである。その間,建設大臣は,その所管する建設省の所掌事務に関して,団体又は個人に対し,各種事業等の許認可,認定など,例えば(掲記の法令はいずれも国土交通省発足前のものである。),建設業(2以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業する場合)の許可(建設業法3条),建設工事の従事者に対する技術検定(建設業法27条),建築物の基礎等に使用する指定建築材料の品質に関する認定(建築基準法37条),宅地造成における特殊な材料等による擁壁についての認定(宅地造成等規制法施行令15条)などを行ってきたものである。そして,それらの建設大臣の許認可,認定等は,当該商品の販売者や当該役務の提供者において,建設大臣による審査を経た,公的な基準,規格等を満たした商品あるいは役務であることを示すものとして,「建設大臣認定」,「建設大臣認可」,「建設大臣指定」などのように,当該商品の品質や役務の質の優位性を表すために表示されていることは,しばしば見られるところである(乙2ないし7,9,10,12,14ないし18,28ないし30,32号証)。
このように,建設大臣の名称は,長年にわたり,国の行政機関の長を示すものとして,広く一般国民に知られているだけでなく,実際の取引社会において,しばしば一定の商品や役務について行政機関による公的な基準,規格等を満たしていることを示す表示としても用いられ,これに対する国民の信頼も大きいものがあるということができる。
2 ところで,建設省は,平成13年1月6日,前記のとおり,中央省庁等の再編成に伴い国土交通省に統合され,それまでの所掌事務は国土交通省の所管となり,これにより建設大臣という大臣も同日以降存在しないこととなった。
しかし,上記中央省庁等の再編成は,それまでの1府12省を整理統合して,新たに内閣府を設けるとともに10省に編成し直し,省名も変更するなどした大規模なものであり(改正後の国家行政組織法別表第1参照),たとえそのことについて報道等がされ,また,再編成後3年余を経たとしても,必ずしも国民一般の間で再編成後の各省庁の名称,事務分掌等が正確に認識されているとは限らないし,建設省ないし建設大臣の名称が,50年以上もの間,国民のよく知るところとして定着していたことや,現在でも,当時の建設大臣による許認可等の効力がそのまま残っているものもあり(中央省庁等改革関係法施行法1301条参照),それらに対する国民の信頼も失われているとはいえないことなどを考えると,審決時において,国家行政組織上は建設大臣という官職が存在しなくなったとしても,なお建設大臣という名称に対して国民一般が抱く公的な名称としての認識がなくなったとみることはできず,「建設大臣」という名称から,従来の建設省の長たる大臣,あるいは,建設に関する行政分野を統括する大臣という観念を想起することは十分考えられるところである。
3 以上のように,「建設大臣」という語が,国の行政組織に係る公的な名称を示すものとして認識され,実際に,取引社会において,一定の商品や役務について公的な基準,規格等を満たしていることを示す表示として用いられていることなどに照らすと,「建設大臣」の文字よりなる本願商標をその指定商品及び指定役務について使用した場合には,その需要者,取引者に対し,それらが従前の建設省の所管事務を統括していた建設大臣と関わりがあるかのように,あるいは建設に関する行政分野を統括する大臣の名称であるかのように,誤信させるおそれがあることは明らかであり,その登録を認め,指定商品及び指定役務について独占使用権,排他権を付与することは,国民の行政に対する信頼を損ねるとともに,取引秩序を乱すおそれがあり,社会公共の利益に反するというべきである。
商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,上記のように,当該商標を使用することにより,国民の行政への信頼を損ねるなど,社会公共の利益に反することになるものも含まれると解すべきであるから,本願商標は,商標法4条1項7号に該当するものとして,商標登録を受けることができないものといわざるを得ない。
4 原告が主張する取消事由1ないし3について検討する。
(1) 取消事由1(判断基準時)について
原告は,本件における公共の利益は,査定時・審決時に「建設大臣」が消滅しているか否かを基準に判断すべきであり,省庁等の再編成から3年を経た現在において,国民の記憶に新しいか否かを判断基準とすべきものではないなどと主張する。
しかし,本件において,本願商標が公序良俗を害するおそれがあるか否かは,単に審決時に「建設大臣」の官職が存在しているかどうかということだけによって判断されるべきものではなく,そのことを含め諸般の事情を考慮して,審決時において,本願商標を使用することが社会公共の利益に反することになるかどうかを判断して決すべきものであることはいうまでもない。そして,前記のとおり,審決時において,建設大臣という名称に対して国民一般が抱く公的な名称としての認識がなくなったということができず,本願商標を指定商品又は指定役務に使用することは,社会公共の利益に反するというべきであるから,この点に関する審決の認定判断に誤りはなく,原告の上記主張は理由がない。なお,審決時において,建設大臣という名称に対して国民一般が抱く公的な名称としての認識がなくなったといえないことは,建設大臣が,50年以上にわたり,建設省の長を示すものとして,広く国民に知られていたことなど前記事情に照らし,経験則上認められることであり,これと同旨の審決の認定に誤りはない。
(2) 取消事由2(公序良俗違反の判断の誤り)について
ア 原告は,本願商標は,指定商品との関係から建設業向け会計ソフトであり,需要者,取引者が国民一般であるとした審決の判断は誤りである旨主張する。
しかし,本願商標の指定商品及び指定役務は,前記第2(当事者間に争いのない事実)の1記載のとおりであり,原告が主張するような建設業向け会計ソフトに限定されているものではないから,原告の主張は前提において失当である。
また,現在,社会の広い階層,年齢にわたって,あらゆる事務の処理についてコンピュータが利用されていることを考えると,本願商標に接すべき需要者,取引者が原告の主張するような狭い範囲の者であるといえないことは明らかである。
イ 原告は,審決が「需要者,取引者を誤信させるおそれが少なからずある」と説示したことをとらえて,「少なからず」というのは不明確な認定判断であると主張する。
しかし,審決の上記説示が,誤信させるおそれがあること及びそのおそれが決して少ないものではないことを説示したものであることは明らかであり,これをもって不明確な認定判断というのは当たらない。
ウ 原告は,既に本願商標が使用され,需要者に広く認識されており,本願商標の登録を認めないとすると,取引秩序が乱され,需要者の利益,ひいては公共の利益をも害することになると主張する。
しかし,本願商標は,前記のとおり,商標法4条1項7号に該当するものであるから,その商標登録ができないのは止むを得ないことであり,たとえその商標が既に使用されているとしても,だからといって,本願商標が商標法4条1項7号に該当しなくなるわけでないことはいうまでもない。また,本願商標の登録が認められないと,すなわち原告が指定商品及び指定役務について本願商標の独占使用権,排他権を取得しないと,取引秩序が乱されるとか,公共の利益を害することになるといえないことも明らかであって,原告の上記主張は採用の限りでない。
(3) 取消事由3(過去の登録例についての判断の誤り)について
原告は,商標を構成する文字の一部に「大臣」を含む登録例が49件あり,これらを判断の基礎として考慮することなしに,本願商標の登録を拒絶することは,著しく公平性を欠いていると主張する。
「大臣」という語を含む商標登録の例が存在することは,原告が主張するとおりであるが(甲9号証),商標登録の適否は,当該商標の全体の構成に基づいて個々の商標ごとに個別的に検討,判断されるべきものであり,本願商標が商標法4条1項7号に該当するか否かについての判断が,他の登録例に拘束されるべき理由はない。また,登録された商標が,事後に,審決あるいは判決によって無効とされることもあり得るのであるから,原告主張のような登録例があることをもって,本願商標の登録を拒絶することが著しく公平性を欠くことになるということもできない。したがって,原告の上記主張は採用できない。
5 以上のとおりであるから,本願商標が商標法4条1項7号に該当するとした審決の判断に誤りはない。
原告が主張する取消事由は,いずれも理由がなく,その他,審決に,これを取り消すべき誤りがあるとは認められない。
よって,原告の本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所知的財産第3部
裁判長裁判官 佐 藤 久 夫
裁判官 設 樂 驕@ 一
裁判官 若 林 辰 繁