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特許入門コンテンツの設計

 

(C)2020.7 ひでさん(弁理士 古谷栄男)



1.はじめに


 特許制度に詳しくない開発者や、知財部門に配置されたばかりの方に向けた特許実務入門のセミナーやコンテンツの設計について考えてみます。

 以下で説明する設計方針に沿って実際に作成したYouTube(商標)動画がありますので、後でご覧になってみて下さい。

 特許公報の読み方(その1)
 特許公報の読み方(その2)演習解説
 進歩性解説
 進歩性演習解説

 動画の内容自体は、特許担当者であれば自明なことかと思います。ここでは、作成の際に私が注意を払った点を説明して、初心者向けのコンテンツを作成したり、初心者向けのセミナーを開催したりされる方の参考にしていただければと思います。



2.コンテンツ作成の方針


 (1)実務上役立つこと、(2)演習を盛り込むこと、(3)特許に詳しい方が初心者に教える際の参考にもなることを、方針としました。



3.テーマ


 テーマを2つに絞りました。「特許公報の読み方(権利範囲の判断)」「特許が取れる発明の見分け方(進歩性)」です。この2つは、特許実務をされている方はもちろん、そうでない開発者にとっても使うことが多く、理解するメリットが大きいので選びました。



4.内容


 動画にするなら、「特許公報の読み方」「特許が取れる発明の見つけ方」であわせて、90分〜120分ぐらいが必要かと思います(演習を解く時間を除きます)。セミナーとして実施する場合なら、「特許公報の読み方」「特許が取れる発明の見つけ方」を、まとめて1回で行うことも可能ですし、2回に分けて実施することもできるでしょう。私の場合、一般研修であれば、まとめて1回、120分程度(演習時間含む)で実施する場合が多く、社内研修であれば2回に分けることもあります。

 「特許公報の読み方」では、請求項における特許発明の技術的範囲を理解してもらうのを主眼とします。付随的に、特許公報の意味、発明の詳細な説明の意味などを説明します。

 流れとしては、「明細書」によって発明内容を理解し、「特許請求の範囲」によって権利範囲を判断するといい順で説明します。構成要件の全てを備えているものが、技術的範囲に入ることを説明し、具体例にてフォローします。そして、技術的範囲に入るかどうかを、具体的な例を使って各自演習してもらいます。演習の段階でぼんやりとした理解を正確な理解にできることが多いので、演習の実施はお薦めです。企業内で実施する場合には、その企業が製造販売する製品を例として、演習を実施すると参加者のモチベーションがあがるでしょう。

 「特許がとれる発明の見つけ方(進歩性)」では、特許要件の中でも最も重要性の高い進歩性を中心に、その判断方法を説明します。2003年から2005年の特許庁(第4部)統計(スライド6参照)によれば、拒絶理由通知の約80%に進歩性拒絶が含まれています。にもかかわらずその判断が分かりにくいため、開発者のみならず特許担当者であっても、悩んでいる方が多いと思います。

 進歩性のあるなしを明確に線引きすることだけに注目するのではなく、進歩性があるというための法的評価の仕方に注目したほうがよいというスタンスで説明しました。開発者にとっては、開発内容のどこに特許性があるのかを見つけ出すのに使えますし、知財担当者にとっては、進歩性のない発明について相談を受けた際に、否定するだけでなく、発明者と一緒になって進歩性のある発明を見いだすことができる、というのがねらいです。

 「構成の困難性」「発明の効果」に基づいて、進歩性における考慮要素を説明します。「構成の困難性」は、一般になじみのない言葉ですので、「普通ではないこと」という表現に変えて説明します。

 端的にいうと、「普通ではない」部分を見いだしてもらうことで、進歩性のありそうな発明をピックアップする考え方を説明します。特に、自分で実践してもらうことが重要ですので、演習を盛り込むことを強くお薦めします。




5.最後に


 最初に示しました動画コンテンツは、上記の方針に沿って作成したものです。参考になさって下さい。テキストによるコンテンツも作成していますので、下記を参考にして下さい。

 なお、これらコンテンツは、企業などの組織内での上映・複製・配布などは自由に行っていただいて大丈夫です。ただし、改変や、販売などの商業的用途による使用はご容赦下さい。

・テキストコンテンツ
 進歩性のある発明を見つける




6.ご質問


 ご質問は、以下のメールアドレスにお願いします。

furutani@furutani.jp

 この資料は、知財系ライトニングトーク #9 拡張オンライン版 2020 夏に参加したものです。パテントサロンさんありがとうございました。
 この資料は、出典を明らかにして、複製して配布いただいても結構です(商業用途を除く)。改変や変更、翻訳などはご容赦下さい。(C)2020.7 弁理士 古谷栄男

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