並行輸入についての最高裁判決(BBS事件)
Japanese supreme court affirms legalization of parallel importation
古谷国際特許事務所ニュースレター61号より
(C)1997.7 FURUTANI PATENT OFFICE
概要
判決は、「特許権者が留保を付さないまま特許製品を国外において譲渡した場合には、譲受人及びその後の転得者に対して、我が国において譲渡人の有する特許権の制限を受けないで当該製品を支配する権利を黙示的に授与したものと解すべきである」とし、いわゆる真正商品の並行輸入は、特許権侵害に当たらないとした。
内容
ドイツの会社であるBBSは、自動車用アルミホイールについてドイツ及び日本の双方で特許権を有している。ドイツにおいてBBSから正規に特許製品を購入した並行輸入業者が、これを我が国に輸入し、我が国において販売していた。
この並行輸入業者の輸入行為につき、BBSは、日本国特許権の侵害であると主張して提訴した。第一審(東京地裁)判決では、特許権者BBSの主張どおり差止請求が認められたが、その控訴審(東京高裁)判決では、並行輸入業者に対する差止請求が否定された。その後事件は、最高裁に上告された。
今回、最高裁は、東京高裁の結論を支持する判決を出したものである(平成9年7月1日、平成7年(オ)第1988号)。
最高裁は、「特許製品を国外において譲渡した場合に、その後に当該製品が我が国に輸入されることが当然に予想されることに照らせば、特許権者が留保を付さないまま特許製品を国外において譲渡した場合には、譲受人及びその後の転得者に対して、我が国において譲渡人の有する特許権の制限を受けないで当該製品を支配する権利を黙示的に授与したものと解すべきである。」とした。つまり、真正商品の並行輸入は、特許権侵害を構成しないとの判決を行った。
なお、最高裁では採用されなかったが、上記並行輸入行為は特許権侵害であるという主張は、次のような根拠に基づく。そもそも、各国ごとに特許権が存在し、各国の特許権はそれぞれの国において独立して行使することができる。したがって、上記の例でいえば、業者はドイツにおいてBBSより正規に購入したのであるから、ドイツ国内でこれを再販売することはドイツ特許権を侵害するものではない(特許権用尽の理論)。しかしながら、これを日本に輸入する行為は、日本における特許権者の権利を侵害するものとして規制されなければならない。たとえ、ドイツの特許権者と日本の特許権者が同じである場合であっても、この原則は変わらない。
最高裁は、このような主張を採用せず、真正商品の並行輸入は特許権侵害ではないと判断した。
まとめ
特許権者の側に立てば、上記のような場合に並行輸入品が出回るのを防ぐためには、判決で示唆されているように、「販売した特許製品についての販売先ないし使用地域に限定を加えたうえで、製品にその旨を明示する」ということが必要となろう。ただし、これはあくまで、日本での判決であり、他国での取り扱いがどのようになるかは、その国の法律による点は当然である。
NOTES
この資料は、古谷国際特許事務所ニュースレター(1997.7)からの転載です。速報性を重視するニュースレターの性格上、検討が不十分となっているケースもあることをご了解下さい。 この資料は、下記の著作権表示をしていただければ、複製して配布していただいて結構です(商業的用途を除く)。
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