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ユーザや表示回数によりダイナミックに内容を変える広告方法
ビジネスモデル特許の事例
(C)1999.12 弁理士 古谷栄男
'99夏〜'99年末にかけて行った講演の配付資料に、最新情報を加えて、加筆訂正したものです。


(16)ユーザや表示回数によりダイナミックに内容を変える広告方法(特許出願1996年、話題1999年)

権利者など
 米国特許   5948061
 権利者    Double Click Inc.,(米国)

特許の概要
 サイトを訪れた回数や、ユーザーのプロフィールに応じて、広告を選択的に表示する仕組みの特許である。その概要は次のとおり。

 @ユーザーがコンテンツサーバーにアクセスすると、コンテンツサーバーは、広告スペースを空けてコンテンツを送信。この時点では、広告スペースに表示される広告の内容は決まっていない。

 Aユーザー端末では、コンテンツとともに、広告スペースが確保されて表示される。この広告スペースには、以下のように、提携している広告サーバーのいずれかの広告が選択されて表示される。

 B広告選択サーバーは、コンテンツサーバーにアクセスしたユーザーのプロファイルやアクセス回数などに基づき、いずれかの広告サーバーを選択する。この選択情報は、広告サーバー選択情報としてユーザー端末に送られる。

 Cユーザー端末は、この広告サーバー選択情報を受けて、指定された広告サーバーからの広告を、広告スペースに表示する。

 このように、ユーザーの属性などに応じ、ダイナミックに広告の内容を変えて提供できる。これにより、ユーザーに合致した広告効果の高い広告を提供できる。なお、日本へは出願されていない模様である。



話題の概要
 権利者Double Click(http://www.double click.net/)は、インターネット広告ソリューションの大手である。同社は、“DART”と呼ぶ広告配信を売り物にしてきた。本件特許は、このDARTの基礎技術であることから注目された。Double Clickは、96年という早い時期に本件を特許出願しており、その先見性を評価すべきであろう。

 Double Clickは99年11月、オンライン広告を行っているL90(http://www.l90.com/)の、広告提供・トラッキングを行う“adMonitor”が特許権侵害であるとしてバージニア地裁に提訴した。L90が、株式公開の予定時期であっただけに、Wall Street Journal紙でも取り上げられ、経済界でも話題を呼んだ。

その後、Double Click社は、Googleに買収されている。


クレーム1(全クレーム50個)
1. A network comprising:
a user node having a browser program coupled to said network, said user node providing requests for information on said network;
a content provider affiliate node having a respective affiliate web site responsive to requests for information from said user node to provide media content, advertising space for display of advertising content and a link message to said user node;
an advertiser node having an advertiser web site including advertising content, said advertiser node responsive to a request to provide said advertising content; and
an advertisement server node responsive to a request from said user node based on said link message to select an advertiser node as a selected advertiser node, and identify said advertiser node as said selected advertiser node to said user node,
whereby said advertising content from said selected advertiser node is displayed at said user node.
(日本語参考訳)
1.下記に示すネットワーク:
 前記ネットワーク上の情報に対する要求を行なう、前記ネットワークに結合されたブラウザプログラムを有するユーザノードと、
 ユーザノードからの前記情報要求に応じて、メディア・コンテンツ、広告コンテンツ表示のための広告スペース、ユーザノードへのリンク・メッセージを提供するための各提携ウエブサイトを有するコンテンツ・プロバイダ・提携ノードと、
 前記リンク・メッセージに基づいて、前記ユーザノードからの前記要求に応答して、1つの広告ノードを、選択された広告ノードとして選択し、当該広告ノードが選択された広告ノードであることを前記ユーザノードに明らかにする広告サーバノードを備え、
 前記選択された広告ノードからの広告コンテンツを、前記ユーザノードにおいて表示する。(古谷栄男訳)

2. A network in accordance with claim 1, wherein said advertisement server node selects said advertiser node based on the number of times said advertising content has been previously displayed at said user node.
(日本語参考訳)
2.クレーム1のネットワークにおいて、前記広告サーバノードは、前記ユーザノードにおいて表示された回数に基づいて、広告ノードを選択することを特徴とするもの。(古谷栄男訳)

3. A network in accordance with claim 1, wherein said advertisement server node selects said advertiser node based on the characteristics of said user.
(日本語参考訳)
3.クレーム1のネットワークにおいて、前記広告サーバノードは、ユーザの特性に応じて、広告ノードを選択することを特徴とするもの。(古谷栄男訳)

(クレームの日本語訳は、発明内容を理解するための参考として付したものであり、古谷栄男の法的見解を示すためのものではありません。具体的事件等において、権利判断等を行う際には、弁理士、弁護士にご相談下さい。)

関連文献・サイト
(リンク消滅)USニュースフラッシュ(日経BP)「DoubleClickがネット広告の動的配信で特許取得」  '99.9.14 

(リンク消滅)BizTech News 「インターネットで個別広告、サービス多様化で先行するダブルクリック」 '98. 6.29
 特許に関するニュースではないが、特許対象となっている技術に関連するニュースが報じられている。

internetnews.com "DoubleClick Files Patent Infringement Suit Against L90 " '99.11.18(リンク消滅)
 DoubleClick社が、L90社に対して、侵害訴訟を提起した旨が報じられている。L90社が株式公開直前であったため、Wall Street Journal誌でも報道されたようである。

DoubleClick社のサイト 

L90社のサイト

 


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複製して配布していただいて結構です(商業的用途を除く)。
(c)1999 Hideo FURUTANI / furutani@furutani.co.jp

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