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ビ ジ ネ ス モ デ ル 特 許 の 事 例  

(C)1999-2007 弁理士 古谷栄男


(17)AMAZON.COMの1クリック特許(特許出願1997年、事件1999年)

権利者など
 日本特許   5960411
 権利者    Amazon.com, Inc.,(米国)
 相手方    BarnesandNoble.com(米国)

特許の概要
 権利者のAmazon.com, Inc.は、インターネットのウェブサイトによって、書籍、CDなどを販売する企業である。

 各ユーザーの請求および出荷に関する情報などを記録、リピートユーザーが、1度クリックするだけで購入できるようにする方法に関する特許である。Amazon.com, Inc.は、1クリック特許と呼んでいる。

 ユーザーの端末では、各商品が表示され、購入したい商品をクリックする。これにより、ユーザーのID(購入者ID)とともに、当該商品の要求がサーバーに送信される(図中@)。この要求を受け取ったサーバーは、購入者IDに基づいて、購入者データベースから、当該購入者の住所などの情報を取得する(図中A)。なお、購入者の住所などは、たとえば、前回の購入時にすでに登録されているものとする。さらに、サーバーは、取得した購入者情報に基づいて、当該商品についての発送先、支払いカード番号などを決定して、ユーザーに問い合わせることなく購入注文を完成させる(図中B)。このポイントは、ユーザーに確認せず、1クリックで注文が完了する点にある。

 本特許には、クレームが26個含まれている。具体的には、購入注文方法、端末装置、サーバーに着目した方法、端末に着目した方法などのクレームが含まれている。

 Amazon.comは、本件につき、日本を含む多くの国にも出願を行っている。特開平11-161717(日本)、EP公開927945(ヨーロッパ)。




事件の概要
 1997年9月、Amazon.comは、上記の1クリック方式を採用してユーザーの注文上の手間を省き、売り上げを伸ばした。一方、米国最大の書店チェーンであるBarnes and Nobleは、BarnesandNoble.comというウェブサイトにより、書籍、CDなどを販売していた。

 1998年5月、Barnes and Nobleは、エクスプレスレーンと名づけ、この1クリックの注文方法を採用した。Barnes and Nobleは、そのプレス発表で「エクスプレスレーン・1クリック注文」、「ユーザーは、1クリックで書籍などを注文できる」などと述べ、Amazon.comの1クリック方式を意識したものとなっていた。

 これに対し、Amazon.comは、1999年10月、Barnes and Nobleが'411特許を侵害しているとして、シアトル西部連邦地方裁判所に提訴した。裁判のなかでは、Amazon.comの1クリック特許が、本来特許されるべき内容であるのかどうかが争われた。裁判において、特許されるべき内容でないと判断されれば、特許は無効となり、Amazon.comは負けることとなる。

 Barnes and Nobleは、1クリック注文方式は、誰もが思いつく当たり前の方式で、無効な特許であると主張した。これに対し、Amazon.comは、次のような主張を行った。「1クリック注文方式は、一見、当たり前のように見えるが、それまでにはなかった方法である。顧客に注文の確認を行わずして、1クリックのみで注文を成立させる方法が、それ以前に存在しただろうか?特許庁の審査における調査でも明らかなように、このような方法は、従来、無かった」。

 さらに、Amazon.comは、この1クリック方式が、ユーザーに受け入れられ、商業的成功を収めたことも述べている。米国特許法では、商業的成功が、特許性判断において参酌されるからである。

 Amazon.comの主張を裏づけるように、IT分野の専門家も、顧客の確認を行ってから注文を成立させるのが、常識であったことを証言している。とくに、Barnes and Nobleが立てた証人の技術専門家が、「私は、1クリック注文方式を簡単に思いつけない」と証言したことが大きかった。

 このような経緯から、裁判所は、Barnes and Nobleが1クリック方式を使って注文を受けることを差し止める仮処分を、12月上旬に出したのである。Amazon.comの提訴から、わずか40日という速さであった。12月のクリスマス商戦を前に、Barnes and Nobleは、大きな打撃を被った。  

 Amazon.comの1クリック特許事件は、ビジネスモデル特許の威力を世間に知らしめ、State Street Bank事件によって盛り上がったビジネスモデル特許に、さらに火をつけたと言ってよい。

 なお、2001年2月に入って、CAFCにより、上記の仮処分は取り消され、地裁に差し戻されました。

 また、本件特許については、アップルコンピュータがライセンスを受けたことが報道されている。

クレーム
1. A method of placing an order for an item comprising:
under control of a client system,
displaying information identifying the item; and
in response to only a single action being performed, sending a request to order the item along with an identifier of a purchaser of the item to a server system;
under control of a single-action ordering component of the server system,
receiving the request;
retrieving additional information previously stored for the purchaser identified by the identifier in the received request; and
generating an order to purchase the requested item for the purchaser identified by the identifier in the received request using the retrieved additional information; and
fulfilling the generated order to complete purchase of the item
whereby the item is ordered without using a shopping cart ordering model.

(クレーム1の参考訳)
1.アイテムの注文をなす方法であって:
 クライエントシステムのコントロール下において、
 アイテムを特定するための情報を表示し;
 ただ1つのアクションが行われたことに応答して、アイテム購入者のIDとともにアイテムを注文する要求を、サーバシステムに送信し;
 サーバシステムの1アクション注文コンポーネントのコントロール下において、
 前記要求を受信し;
 受信した要求に含まれる購入者IDに基づいて、予め記録しておいた購入者IDに対応する付加情報を取り出し;
 当該アイテムの購入を完成させるため、注文の不足部分を補充し;
 これによって、ショッピングカートモデルを使用することなく、アイテムが注文できるようにした方法。

関連文献・サイト
ZDNetニュース「Amazon.comが「1-Click」めぐりライバルを提訴」 '99.10.25

アマゾンドットコムのウエブサイト 

Barnes and Noble.comのウエブサイト 

"FEDERAL DISTRICT JUDGE ACTS TO PROTECT AMAZON.COM'S PATENTED 1-CLICK(R) TECHNOLOGY; BARS ONLINE COMPETITOR FROM INFRINGING ON IT" '99.12.2
 地裁が、アマゾンドットコムの訴えに対し、使用差し止めの仮処分を認めたことを報じている。

Mainichi INTERACTIVE 「アマゾンのボイコット呼びかけ GNU主催者、ワンクリック技術独占で」 '99.12.16
GNU計画で知られるリチャード・ストールマン氏が、本件特許事件に関する批判を発表したことを報じている。同氏は、アマゾンドットコムによる製品購入のボイコットを呼びかけている。

CAFC判決 地方裁判所の仮処分決定を取り消し、差し戻しを命じたた判決 2001.2.14

 


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