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住友銀行の仮想口座特許
ビジネスモデル特許の事例

(C)1999.12 弁理士 古谷栄男
'99夏〜'99年末にかけて行った講演の配付資料に、最新情報を加えて、加筆訂正したものです。


(23)住友銀行の仮想口座特許(特許出願1998年、事件2000年)

権利者など
 日本特許   3,029,421
 権利者    三井住友銀行

特許の概要
 1つの銀行口座について、仮想的な振込専用口座を複数個設けることによって、支払者、受領者の双方に利便性をもたらす仕組みについての特許である。
 下図において、X社は、銀行口座(口座番号123456)を有している。銀行は、この本来の口座に対して、仮想的な複数の口座(口座番号2000001と2000002)をX社のために用意する。X社は、この仮想口座のそれぞれを、個別に、取引先であるA社、B社に割り当てる。つまり、A社に対しては口座番号2000001を振込先として指定し、B社に対しては口座番号2000002を振込先として指定して、請求書を発行する。
 A社、B社からの入金があると、銀行は、仮想口座を本来の口座に読み替えて、本来のX社の口座に入金処理を行うと共に、仮想口座ごとの入金明細をX社に連絡する。
 振り込みを行う側は、振り込みまちがいが少なく、受け取る側も、振り込み人と金額とを明確に照合することができる。


事件の概要

 三井住友銀行は、1999年3月に、「パーフェクト」という名称で、この仮想口座による入金照合サービスの運用を開始した。従来、利用者は、通帳に記入された振込人名だけに頼って振込人を特定していたため、70%程度しか正確に振込人を特定できなかった。これに対し、この仮想口座によるサービスを用いれば、ほぼ100%振込人を特定できる。

 サービス開始からわずか2か月ほどで、100社程度がこのサービスの利用契約をしたとして話題になり、さらに、2000年2月には、国内金融業における初めてのビジネスモデル特許を取得したことで、大きな話題になった。

 なお、他行も同様のサービスを行っており、住友銀行ならびに他行の動向が注目されていた。2000年10月になって、富士銀行、あさひ銀行、第一勧業銀行は、本件特許に対する異議申立を行った。しかし、2001年12月、異議申立は却下され、特許は維持された。

 住友銀行の権利運用が注目されていたが、2001年2月になって、同行は、静岡銀行にライセンスを行った模様である。請求項(全請求項10個)

1. 銀行システムにおける、支払人と関連づけられた複数の関連口座を用いて振込を行う振込処理システムであって、前記複数の関連口座に振り込まれた資金を、取りまとめるための特定口座に入金処理を行う手段と、前記関連口座への振込情報を、支払人と関連付けられた関連口座の口座関連情報および/または前記関連口座を特定する番号を付加して、出力する出力手段と、出力された前記振込情報を前記特定口座の振込情報として格納する手段とを備えることを特徴とする振込処理システム。

参考文献・サイト
・日本経済新聞「住友銀、取引手法で特許、国内金融業で初、決済サービス」 2000.1.31
・日本経済新聞「住銀の特許に異議」2000.10.12
・日本経済新聞 「住友銀 入金照合のビジネスモデル特許 利用権供与 静岡銀に、金融分野で初」2001.02.24
三井住友銀行の入金照合サービス「パーフェクト」

 


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(c)1999 Hideo FURUTANI / furutani@furutani.co.jp

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