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東京都民銀行 対 東京三菱UFJ銀行事件
ビジネスモデル特許の事例

(C)1999-2007 弁理士 古谷栄男


(28)東京都民銀行 対 東京三菱UFJ銀行事件(事件2007年)

権利者など
 日本特許   3685788
 権利者    株式会社東京都民銀行

特許の概要
 東京都民銀行からのプレスリリースがないため、詳細は不明であるが、2005年に取得した特許であるということ、給料の前払いに関するものであるということからすると、特許3685788号であろうと推測される。なお、同行は、分割出願にて3857279号も取得している。
 明細書を見ると、次のような発明内容である。従来、アルバイト社員であっても、企業側の経理処理の面倒さから、月末に給与支払いがされていた。この発明は、社員が希望する時期に、フレキシブルに給与の支払を可能とするシステムである。つまり、社員は、自らが働いた分を超えない限り、いつでも何度でも、銀行から給与を引き出すことができる。
 これを実現するため、銀行のコンピュータに対し社員の労働時間(日)情報が提供され、給与の累計が計算される。社員が銀行のATMから給与を引き出そうとすると、その引き出し金額が給与残高を超えていないかを判断する。超えていなければ、銀行は、企業に代わって給与を立て替えて社員に支払を行う。

事件の概要
 東京都民銀行は、本件特許とどうようのサービスを「前給」として提供している。一方、三菱東京UFJは、前払いを代行するサービス「ソッカ」を提供している。
 東京都民銀行は、これが同社の特許を侵害するとして、東京地裁に提訴したものである。

特許3685788の請求項
【請求項1】
労働者が雇用者に対して労働を提供することで順次累計される給与を、予め設定された給与日、及び前記給与日前であって労働者の希望する任意のタイミングにおいて支払う給与支払いシステムであって、
該給与支払いシステムは、銀行口座にアクセスして引落処理及び振込処理を実行する銀行コンピュータを有し、該銀行コンピュータは、データを入力するインタフェース、前記インタフェースに接続された記憶装置、及び前記記憶装置に記憶されたファイルにアクセスしてデータ処理するとともにデータ処理結果に応じて前記引落処理及び振込処理を実行する処理装置を有し、
前記インタフェースは、労働者端末から送信された、前記労働者が前記雇用者に対して労働を提供した後でかつ前記給与日前の任意の日を指定する希望日データ及び任意金額の資金データを入力するとともに、前記労働者の労働状況を管理するコンピュータから送信された、前記労働者の労働が提供される毎の労働データを入力し、 前記記憶装置は、前記給与日と、前記インタフェースから入力された前記労働者の労働データを格納する労働データ管理ファイルと、前記労働データに基づき順次算出された前記労働者の任意タイミングにおける累計給与データ及び前記労働者に資金交付された金額データを格納する給与データ管理ファイルと、前記インタフェースから入力された希望日データ及び任意金額の資金データを格納する資金データ管理ファイルとを記憶し、
前記処理装置は、
前記記憶装置に記憶された前記資金データ管理ファイルの希望日データにより指定される日に、
前記記憶装置に記憶された前記資金データ管理ファイルにアクセスして前記労働者の資金データで特定される金額を取得するとともに、前記記憶装置に記憶された前記給与データ管理ファイルにアクセスして前記希望日データにより指定される日における前記労働者の累計給与データで特定される累計給与額のうち未だ資金交付されていない残余の給与金額を抽出し、前記資金データで特定される金額と前記残余の給与金額とを大小比較する比較処理を実行し、
前記資金データで特定される金額が前記残余の給与金額の範囲内である場合に、前記労働者の口座に対して前記資金データで特定される金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記資金データで特定される金額の引落処理を実行し、
前記資金データで特定される金額が前記残余の給与金額の範囲を超える場合に、前記振込処理を拒否する処理を実行し、又は、前記労働者の口座に対して前記残余の給与金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記残余の給与金額の引落処理を実行し、
前記給与データ管理ファイルの前記資金交付された金額データを更新し、かつ、
前記記憶装置に記憶された給与日に、
前記記憶装置に記憶された前記給与データ管理ファイルにアクセスして前記給与日における前記労働者の累計給与データで特定される累計給与額のうち未だ資金交付されていない残余の給与金額を抽出し、前記労働者の口座に対して前記残余の給与金額の振込処理を実行するとともに前記雇用者の口座に対して前記残余の給与金額の引落処理を実行する
ことを特徴とする給与支払いシステム。




関連文献・サイト

 


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