TOPへ

アマゾンの予測出荷システム−ビジネスモデル特許の事例
(C)1999-2020 弁理士 古谷栄男


(29)アマゾンの予測出荷システム(出願2012年、話題2014年)

権利者など
 米国特許   8615473
 権利者    AMAZON.COM

特許の概要
 商品に対する注文がある前に、商品を出荷・発送するという仕組みについての特許である。技術的に高度であるというより、既存の技術をどのように用いて、斬新なサービスを提供できるかという点にポイントがある。アマゾンらしい、ビジネスモデル特許である。

 特許の概要は以下のとおりである。アマゾンは、個々の商品についての販売履歴について膨大なデータを有している。アマゾンは、これを利用して、特定の地域(たとえば大阪市北区梅田)における、具体的な商品の注文数を予測する。そして、実際に注文が入る前に、当該地域の運送業者の拠点(大阪梅田の配送センターなど)を送り先として商品を発送する。これにより、商品は、関東にあるアマゾンの倉庫から運送業者に引き渡され、運送業者の関東集荷拠点等を経て、運送業者の経路を通って、大阪梅田の配送センターまで移動することになる。この経路を移動している間に、アマゾンに、予想どおり当該商品に対する注文が入ると、その商品の発送先を、大阪梅田の配送センターから、注文主の具体的住所・氏名(大阪市北区梅田8丁目1−1○○○○など)に変更する。

 上記のようにすることで、ユーザが注文してから、商品が届くまでの時間を極めて短くできるというメリットがある。アマゾンのサイトにて、「今注文すれば今日の夕方までに配送できます」との表示がされるのは、このシステムを使用している可能性がある。出願では触れられていないが、本件特許は、ビックデータとAIを用いた、ビジネスモデル特許の新しい可能性を示したという点でも注目できる。
 米国だけでなく、日本、中国、ヨーロッパなどにも出願を行っている。日本・中国では特許が成立している。ビジネスモデルに厳しいヨーロッパでは権利取得は難しく、分割出願を行うなどの方策で、権利取得に向けて粘っている状況のようである。

日本特許4938682の請求項
【請求項1】
1. 配達住所への最終的な配達のために、1つまたは複数の商品を含む小包を出荷する目的地の地理的地域を識別するように構成される企業の第1のコンピュータ・システムと、
ネットワークを経由して前記第1のコンピュータ・システムと通信するように構成される第2のコンピュータ・システムと を含むシステムであって、
出荷の時点で前記配達住所が完全に指定されていることなく、前記企業とは別の運送業者によって、前記小包が前記目的地の地理的地域に出荷されたのに続き、前記第1のコンピュータ・システムが前記配達住所の完全な指定を前記第2のコンピュータ・システムに伝達するように構成され、前記小包を出荷することは、前記小包を物理的に前記運送業者へ請負提供することを含み、
前記配達住所の前記完全な指定の受信に応じて、前記小包の輸送中に、前記第2のコンピュータ・システムが前記配達住所を前記小包に割り当てるように構成され、
出荷の時点で前記配達住所が完全に指定されていることのない出荷される前記小包は、出荷の時点において、前記小包がいかなる配達住所に対しても配達可能ではないように発生し、
前記配達住所の完全な指定を受け取った結果、前記小包は前記運送業者により前記配達住所へ配達可能となる、前記システム。





関連文献・サイト
Amazon Patents “Anticipatory” Shipping ? To Start Sending Stuff Before You’ve Bought It(Techcranch)

   

 


------------------------------------------------------------------------
この資料は、下記の著作権表示さえしていただければ、
複製して配布していただいて結構です(商業的用途を除く)。
(c)2020 Hideo FURUTANI /
------------------------------------------------------------------------

本文に戻る