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オムロンのスイング預金特許
ビ ジ ネ ス モ デ ル 特 許 の 事 例
 

(3)オムロンのスイング預金特許
Management system for plural accounts


弁理士 古谷栄男
Hideo Furutani, Patent Attorney



権利者など


日本特許公告 特公平4−1381
出願人    オムロン株式会社
出願日    1983年
異議申立   1992年



特許の概要


この特許は、1983年に立石電気梶i現在のオムロン梶jによって出願された。審査官は、特許をすべきものであると判断し出願公告(特公平4−1381)を行った。内容は、銀行預金のシステムに関するものである。

発明の概要を下図を参照して説明する。一般に、普通預金口座よりも定期預金口座の方が利息が高い。さらに、国債口座の方が利息が高い。その反面、普通預金口座は自由に現金を引き出せるが、定期預金や国債は自由に現金を引き出すことができない。したがって、預金者が給料などを入金する場合、このような口座ごとの特性を考えあわせて、各口座に振り分けて預け入れる。

この発明のシステムでは、図に示すように、各口座ごとに優先度と預け入れ上限額を予め決めておく。たとえば、優先度は、普通預金、定期預金、国債口座の順とする。預金者が入金を行うと、入金額は、まず、優先度の高い普通預金に割り振られる。その結果、普通預金に設定された上限額を超えた部分については、次の優先度を持つ定期預金に割り振られる。その結果、定期預金に設定された上限額を超えた部分については、国債口座に割り振られる。

この発明のシステムによれば、各口座への入金の割り振りが自動的に行われるので、預金者にとって、煩雑な手間が解消される。






事件の概要


本件発明は、1992年、審査官によって、一旦特許すべきものであると判断された。この発明による預金システムは、多くの銀行の注目を集めることになる。この預金システムの特許は、銀行の業務内容である金融商品を対象とするものであって、ATMなどの機械に関する従来の特許とは大きく異なる性格を有していたからである。しかし、その後、特許性を否定する文献が審査官によって発見され、結果的に、オムロン鰍ヘ特許を取得できなかった。

特許は成立しなかったが、戦略的なビジネスモデル特許の我が国における先駆けであった。また、経営コンサルタントとして著名な大前研一氏が発明者である点でも話題を呼んだ。



CLAIMS


請求項1

同一人の顧客に複数種類の口座があり、これらの口座には優先順位があらかじめ付けられており、優先順位のより高い口座にはその口座に預金しうる上限額があらかじめ定められている、そのような顧客ごとの取引情報を記憶したファイル、
少なくとも取引金額、顧客の識別コードおよび取引種類を入力するための入力装置、および
取引が自動振替指示を含む預金の場合には、その取引を行う顧客のより優先順位の高い口座の預金額に取引額を加算し、その口座の預金額がその口座の上限額を越えると超過分の金額をより優先順位の低い口座に振替えてそれぞれの口座の預金額を更新する処理装置、
を備えたバンクシステム。



NOTES


この資料は、この資料は、'99夏〜'99年末にかけて行った講演の配付資料に、最新情報を加えて、加筆訂正したものです。下記の著作権表示をしていただければ、複製して配布していただいて結構です(商業的用途を除く)。
(C)1999 Hideo FURUTANI / furutani@furutani.co.jp

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