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ソフトウエアのオンライン配信特許
ビ ジ ネ ス モ デ ル 特 許 の 事 例
(5)ソフトウエアのオンライン配信特許 -FREENY PATENT-
System for reproducing information
in material objects at a point of sale location
弁理士 古谷栄男
Hideo Furutani, Patent Attorney
権利者など
米国特許 USP 4,528,643
コネチカット地方裁判所E-Data v. MicroPatent, 96-00523
ニューヨーク地方裁判所Interactive Gift Express v. Compuserve, 95-6871
権利者 E-DATA社(旧社名Interactive Gift Express)
出願 1983年
事件 1995年
特許の概要
この特許は、プログラムや音楽情報などのダウンロードによる販売システムに関するものである。ホストコンピュータには、プログラムなどにカタログコードを付して記録しておく。端末コンピュータは、ホストコンピュータに対し、カタログコードを示してダウンロードの要求を行う。ホストコンピュータは、カタログコードによって示されるプログラムなどを端末装置に送信する。端末コンピュータにおいては、承認コードに基づき、受信したプログラムを記録装置にダウンロードする。
本件特許は、米国特許第4,528,643号として、E−DATA社が保有。なお、米国以外にカナダ、欧州においても特許されている(カナダ特許1240390、ヨーロッパ特許195098)。日本には出願されていない。
本特許は、Charles C. Freenyが、1983年1月10日に出願、85年7月9日に特許された。1983年という、インターネットが一般的でない時代に、この発明が出願された点に注目する必要がある。95年初め頃、Freenyは、この特許を、ニュージャージー州のE−DATA社(旧社名:Interactive Gift Express)に20万ドルで譲渡した。
事件の概要
E−DATA社は、本件特許に基づき、多くの企業に警告を行った。IBMやアドビシステムなどはライセンスを受けた。しかし、ライセンスを拒否した約50社は、ニューヨーク地裁、コネチカット地裁に提訴した。
ニューヨーク地裁の訴訟では、被告約20社のうち、ほぼ半数が和解してライセンスを受けた。1999年3月に、本件特許はインターネット上の取り引きには及ばず、侵害が否定される判決が出された。コネチカットの訴訟でも、同様の判決が出されている。
これに対し、E−DATA社は、CAFC(連邦巡回控訴裁判所)に控訴した。CAFCは、地裁の判断に誤りがあるとして、差し戻しを命じた。現在、再び、地裁において審理が行われている。(本件の最新情報は、http://www.patents.com/ige.shtを参照)。
本件は、多くの企業をライセンス交渉や訴訟に巻き込んだ。インターネットの発達にともなって、ネット関連特許がいかに大きな影響力をもつかと言うことを企業に認識させた事件である。
この事件は、多くの米国ネット関連企業(AMAZON.COM,PRICELINE.COM,DOUBLE CLICKなど)の創業時に起こったため、これら企業が、積極的な特許戦略に転じるきっかけの一因となったと思われる。
CLAIMS
CLAIM 1
1. A method for reproducing information in material objects utilizing information manufacturing machines located at point of sale locations, comprising the
steps of:
providing from a source remotely located with respect to the information
manufacturing machine the information to be reproduced to the information
manufacturing machine, each information being uniquely identified by a catalog
code;
providing a request reproduction code including a catalog code uniquely
identifying the information to be reproduced to the information manufacturing
machine requesting to reproduce certain information identified by the catalog
code in a material object;
providing an authorization code at the information manufacturing machine
authorizing the reproduction of the information identified by the catalog
code included in the request reproduction codes; and
receiving the request reproduction code and the authorization code at the
information manufacturing machine and reproducing in a material object the
information identified by the catalog code included in the request reproduction
code in response to the authorization code authorizing such reproduction.
(クレーム1の参考訳)
1.複数の販売場所に設けた情報製造装置を用いて、物理的媒体上に情報を再生する方法であって、下記のステップを備えたもの:
前記情報製造装置から離れたところにあるソースから、前記情報製造装置に対し、カタログコードによって特定された複数の再生される情報を提供し:
再生されるべき情報を特定するカタログコードを含んでおり、当該カタログコードによって特定される情報を物理的媒体上に再生することを要求する再生要求コードを、前記情報製造装置に提供し:
前記再生要求コードに含まれるカタログコードにて特定される情報の再生を承認する承認コードを情報製造装置に提供し:
前記再生要求コードおよび前記承認コードを受けた前記情報製造装置が、当該再生を承認する承認コードに応答して、前記再生要求コードに含まれるカタログコードにて特定される情報を物理的媒体上に再生する。(訳文:古谷栄男)
CLAIM 37
37. An apparatus for reproducing information in material objects at point
of sale locations, comprising:
an information manufacturing machine located at a point of sale location
for reproducing information in material objects, each information to be
reproduced being uniquely identified by a catalog code and each information
being received from a source remotely located with respect to the information
manufacturing machine and each information being stored in the information
manufacturing machine, the information manufacturing machine receiving a
request reproduction code including a catalog code uniquely identifying
the information to be reproduced and being adapted to provide an authorization
code including the catalog code included in the request reproduction code,
and the information manufacturing machine being adapted to reproduce the
information identified by the catalog code in a material object in response
to receiving the authorization code.
(クレーム37の参考訳)
37.販売場所において、物理的媒体上に情報を再生するための装置であって:
物理的媒体上に情報を再生するために、販売場所に設けられた情報製造装置を備え、
再生される各情報は、カタログコードによって特定され、各情報は、前記情報製造装置から離れたソースから受信され、各情報は前記情報製造装置に格納され、
前記情報製造装置は、再生されるべき情報を特定するカタログコードを含んだ再生要求コードを受けて、再生要求コードに含まれるカタログコードを含む承認コードの供給を受けるように待機し、
情報製造装置は、前記承認コードを受けて、物理媒体上に、カタログコードによって特定される情報を再生するもの。(訳文:古谷栄男)
REFERENCES
・古谷栄男「米国Freeny特許事件」1996.7
特許の内容、事件の経過などについて紹介をしている。
・law firm of Oppedahl & Larson
LLP "Intellectual Property Law Web Server"
米国の法律事務所Oppedahl & Larson LLPが本事件について詳細な最新情報をサイトにアップしている。
NOTES
クレームの日本語訳は、発明内容を理解するための参考として付したものであり、古谷栄男の法的見解を示すためのものではありません。具体的事件等において、権利判断等を行う際には、弁理士、弁護士にご相談下さい。
この資料は、'99夏〜'99年末にかけて行った講演の配付資料に、最新情報を加えて、加筆訂正したものです。下記の著作権表示さえしていただければ、複製して配布していただいて結構です(商業的用途を除く)。
(C)1999 HIDEO FURUTANI / furutani@furutani.co.jp
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