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シティバンクの電子マネー特許
ビジネスモデル特許の事例

(C)1999.12 弁理士 古谷栄男
'99夏〜'99年末にかけて行った講演の配付資料に、最新情報を加えて、加筆訂正したものです。


(6)シティバンクの電子マネー特許(特許出願1992年、事件1995年)

権利者など
 日本特許 特許2141163号
 拒絶査定不服審判   平成10年審判5570号
 出願人    シティバンク

特許の概要
 米国の銀行であるシティバンクは、この電子マネーの発明について、米国やヨーロッパはもちろん、多くの国に特許出願をした。日本に対しては、1992年に出願され、1995年には、審査官の審査により特許すべきものであると判断されている(特公平7−111723号)。

 この電子マネー特許の特徴は、下図に示すように、電子マネーデータに、有効期限(満了日)や移転記録が記録されている点にある。これにより、有効期限の切れた取引は禁止される。また、電子マネーが発行されてから、どのような経路で移転されたかが、あたかも、手形の裏書きのようにして明瞭にされる。




事件の概要
 本件は、審査官により特許されるべきものとされた。しかし、これに対し、三菱銀行、さくら銀行、富士銀行、第一勧業銀行、三和銀行などが異議を申し立てた。その結果、審査官により、出願は拒絶すべきものと判断された。シティバンクは、これに不服であるとして、審査の上級審である審判を請求した。その結果、最終的に特許は成立した。

 銀行が世界的な特許取得に動いたという点で話題を呼んだ。特に、バブル処理で余裕のなかった日本の銀行にとって、衝撃的な特許であった。しかし、この事件をきっかけに、日本の金融機関の間にも、特許の重要性が浸透していくこととなる。

 シティバンクの経営陣は「我々のライバルは銀行ではなく、ハイテク企業である」と述べ、多くの特許出願を行っている。その背景には、IT時代において、銀行という業態においても、新たなシステムや仕組みを構築し、その知的財産を有するものが勝者になるという読みがあると思われる。

クレーム
1.オンライン会計システムを有する発行銀行と、
前記発行銀行の流動負債として前記オンライン会計システムにおいて貸し越される通貨の電子的象徴と、前記通貨の電子的象徴を発生するために前記発行銀行に関連装備された金銭発生モジュールと、前記通貨の電子的象徴をストアするとともに、前記通貨の電子的象徴を含む銀行取引を中継することができるように前記発行銀行に関連装備された出納モジュールと、前記通貨の電子的象徴をストアし、前記発行銀行とオンライン取引を行い、さらに、前記通貨の電子的象徴をオフライン取引において他の取引モジュールとの間で交換することができる取引モジュールとを備え、前記通貨の電子的象徴の各々が前記金銭発生モジュールにより生成された初期の貨幣的価値を含むものであり、前記出納モジュール及び取引モジュールはそれらのモジュールが前記通貨の電子的象徴の一つを振込先モジュールに移転する振出元モジュールとして機能するときにおいて、移転された貨幣的価値を有する移転レコードを発生し、かつ前記移転された通貨の電子的象徴において前記移転レコードを含むことができるプロセッサを有するものであることを特徴とする電子通貨システム。

関連文献・サイト
朝日新聞96年5月19日朝刊「電子マネー、出遅れた邦銀、バブル処理で余裕なく?」

弁理士会ソフトウエア委員会「電子マネーと特許」パテント50巻9号、43頁
 本件のシティバンクの電子マネー特許だけでなく、モンデックスの電子マネー特許についても、その内容および影響について考察している。

 


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