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知的財産権(特許・商標・著作権)の基礎講座
(C)1991.12-1997.7  弁理士 眞島宏明

2.4ソフトウエアと商標


 コンピュータプログラムの商品名も商標として登録することができます。ただし、コンピュータプログラムに関しては、通常の商品とは異なる面があり、商標の登録についても特殊なところがあります。ここでは、コンピュータプログラムの商標の出願、登録に関する特徴的な事項を説明します。

(1)出願の際の指定商品
 まず注意しなければならないのは、コンピュータプログラム自体は抽象的な概念であり、商標法上の商品とは認められないということです。したがって、コンピュータプログラムを直接、指定商品として記載できず、「プログラムを記憶させたフロッピーディスク」という具合にして記載する必要があります。具体的には「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、同磁気ディスク、同磁気テープ、同光ディスク」と記載すれば良いでしょう。

 なお、指定商品は商品区分の範囲内で指定する必要があり、この区分は42の類に分かれています。汎用コンピュータのプログラムの出願を行うときは第9類を指定し、指定商品を「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、同磁気ディスク、同磁気テープ、同光ディスク」とします。ただし、プレイステーション等の家庭用ゲーム機のプログラムを出願する場合には、同じ9類ですが、指定商品を「家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラムを記録させた電子回路、同磁気ディスク、同磁気テープ、同光ディスク」とします。

(2)登録要件の審査
 商標の出願がなされると、特許庁の審査官は、その商標が登録の条件を満たすかどうかを審査します。この点は、一般の商標の場合と同様です。以下に主要な登録条件を説明し、コンピュータプログラムに関して登録されない商標の具体例を示します。

 まず、商標が登録されるためには、商品名として特徴的なものでなければなりません。したがって、例えばコンピュータプログラム用ディスクを指定商品として、「ソフトウエア」という商標を出願してみたところで、その登録は認められません。商品の普通名称は商標として特徴的でないからです。

 また、同じような商標、商品について、既に他人が商標登録を受けていたときは登録が認められません。社員管理用ソフトについて「働きばち君」を出願したが、他人が先にコンピュータプログラム用ディスクを指定商品として「働きばちさん」を登録していたような場合です。

 さらに、他人の肖像や氏名、著名な芸名も登録できません。例えば「すもうゲームソフト」に「ガンバレ小錦」を付けることはできません。但し、本人の承諾を受ければ登録してもらえます。

 その他、他人の業務と紛らわしいような商標、商品の品質について誤認を生じさせるような商標も登録されません。例えば磁気ディスクを指定商品として「働きばち光ディスク」という商標を出願しても登録されません。「光ディスク」という文字が含まれていれば、買い手は商品を光ディスクだと誤認するおそれがあるからです。もし、指定商品を光ディスクとしていれば、品質についての誤認のおそれはありませんので、登録の可能性はあります。

(3)サービスマークの登録についても考えてみる
 コンピュータプログラムに関しては、サービスマークの登録についても検討する必要があります。

@通信回線を介して配布(ダウンロード)するソフトウエア
 記録媒体に記録せずに取り引きされる形態も増加しています。つまり、オンラインによるダウンロードです。この場合には、プログラムを記録した磁気ディスク等が取引の対象となりません。この場合”プログラム”という商品が取り引きされていることになるのですが、前述のように、”プログラム”を商品として指定することはできません。

 たとえば、42類の「通信回線を通じてユーザーの所有する磁気ディスクに電子計算機のプログラムを記録して行う電子計算機のプログラムの提供」や「通信回線を用いて行う電子計算機プログラムの提供」等のサービスとして出願をする事ができるでしょう。

A通信回線を介してホストコンピュータのプログラムを使用させるサービス
 ユーザの記録媒体にプログラムをダウンロードするのではなく、ホストコンピュータとの接続中のみ当該プログラムを使用可能とするサービスの形態も存在します。たとえば、データベース検索サービス(PATOLIS、BRANDY等)やがこれに該当します。この場合には、42類の「通信回線を利用して行う時間貸しによる電子計算機のプログラムの提供」や「通信回線を用いて行う電子計算機プログラムの提供」等のサービスとして記載することができるでしょう。

 なお、オンラインによるゲーム(ローグ等)は、現在のところ、特許等では41類として扱っているようです。

Bインターネットのホームページによる商品の販売
 通常の商品販売と同じように、販売する”商品”を指定して商標出願を行います。ただし、メーカーが製造した商品をメーカのブランド名で販売する場合には、通常、販売業者が商標権を取得する必要はないでしょう。

Cインターネットのホームページによる情報の提供
 自社の販売する商品についての商品説明であれば、当該商品についての商標を取得するだけで十分です。ただし、自社では販売しない他社の商品についての商品情報を掲載する場合には、35類の”情報の提供(商品販売)”として出願を行います。なお、情報の提供は、提供する情報の内容によって分類が異なるので、注意が必要です。

Dインターネットのドメイン名と商標
 ドメイン名は、JPNICが管理し登録を行っています。ドメイン名の登録と商標の登録とは別ですので、自社名のドメインについては、早めに登録を受けておいた方がよいでしょう。どのようなドメイン名が登録されているのかは、JPNICのホームページにて検索できます。

 なお、ソフトウエアに関する商品やサ−ビスのように、新たな商品や流通形態が登場する分野については、いずれの商品(役務)区分に該当するのかの運用が、特許庁においても固まっていないケースもあります。したがって、実際の出願においては、最新の情報を入手することが好ましいでしょう。また、商品(役務)区分が明確でない場合には、権利を取得したい商品やサービスを具体的に記載しておくことも必要でしょう。

(本章は、弁理士 眞島宏明が執筆を担当しました)

 


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(c)1991-1997 Hiroaki MAJIMA / http://www.furutani.co.jp

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1.商標登録のメリット
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3.商標出願をする | 4.ソフトウエアと商標

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