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知的財産権(特許・商標・著作権)の基礎講座
(C)1991.12-2010.1 弁理士 古谷栄男

1.特許の基礎知識

1.1特許制度を有効に利用する

(1)はじめに

 この基礎知識を1991年に作成した時には、「最近、新聞雑誌などで知的財産権の記事をよく見かけるようになりました。」という書き出しでした。ほぼ、20年を経過した今、これを見直してみると、時代も変わったなという印象を受けます。今や、知的財産権のニュースは、日常茶飯事のレベルになっているからです。

 この資料は、各企業がその知的財産を、どのようにして保護していけばよいのかについて、解説したものです。知的財産の保護は、各企業が積極的に保護を求めてこそ達成できます。つまり、じっとしているだけでは、知的財産制度は、あなたの企業の味方にはならないのです。

 そこで、この資料では、特許制度、商標制度、著作権制度の基本について、基本的な知識の説明をいたします。もちろん、これだけでは不十分ですから、適宜、参考文献を掲げますので、参照して下さい。

 まず、特許制度の説明をする前に、特許事件がどのようにして発生し、どのような決着となるのかを、仮想的な事例によって説明します。


(2)ある仮想事例(知らずにやった特許権侵害)

@新製品の開発
 A社は、通信機器を開発販売しています。A社は、、新機種の通信機のアイディアとして、暗号通信にファジイ理論を用いればどうかと思いつきました。そして、2年の開発期間、6億円の費用をかけて、ファジイ理論を用いた通信機が完成しました。

A通信機「ファジィトーク」発売
 商品名も「ファジイトーク」と決定し、販売が始りました。市場での評判が気になるA社でしたが、予想以上の好評でした。そして、この業界では考えられないぐらいの台数を売り上げたのです。純利益を計算してみますと、25億円になりました。開発者は功績を認められ、社長賞を受けました。

B突然の警告状
 A社では、次の開発も頑張ろうと、アイディアをこらしていました。そんな時です、C社から警告状が届きました。警告状は、A社の開発した「ファジイトーク」がC社の特許を侵害しているので、製造販売を中止せよという内容となっています。

 開発者は社長に説明しました、「これなら、だいじょうぶですよ。私は、C社の特許を真似したわけではなく、独自に開発したものですから、侵害ではありませんよ」。しかし、弁理士に相談したところ、侵害に当るということでした。A社としては納得がいきませんが、この場合たとえ真似をしたわけでなくとも侵害となるのです。

Cベストセラー機「ファジートーク」の製造販売中止
 A社は、しかたなくベストセラーとなっていた「ファジイトーク」の製造販売を中止することにしました。これにより、「ファジイトーク」の周辺機器も同時に販売中止としました。ユーザのA社に対する信頼が低下したことは、間違いありません。さらに、C社の要求に応じて、新聞紙上で侵害に対する謝罪広告を出しました。ユーザに対するA社のイメージ低下は否めません。

D製品の破棄、製品の回収
 さらに、C社は、すでに生産した「ファジイトーク」の破棄を要求してきました。A社はこれを受けなければなりませんでした。加えて、「ファジイトーク」の流通ルート上(販売店など)からの回収およびユーザーからの回収をしなければなりまっせんでした。特に、ユーザからの回収は、ユーザに多大の迷惑をかけることになり、信用の低下を招きました。

E損害賠償
 販売停止や製品回収だけでも大きな損害であるのに、C社から損害賠償請求が来ました。ここでは、A社は自社の利益(25億円)をC社の損害として支払いました。

Fまとめ
 これは、架空の話であり、誇張して書いた部分もあります。しかし、事件発生までの経緯は、いがいとよくあるケースなのです。このような事態を避けるためには、何をなすべきかについては、次節にて説明します。

(3)ある仮想事例(特許を有効に使った例)

@新製品の開発
 D社は、光学機器を製造販売しています。ある日、新機種のコピー機のアイディアとして、ニューロ学習によって、ユーザの好みに合致した濃度でのコピーができるコピー機を思いつきました。

A特許出願、特許権取得
 開発と並行して、D社は、ニューロ学習による画像複製方法で特許を出願し取得しておきました。

Bコピー機「ニューロコピー」発売
 商品名も「ニューロコピー」と決定し、販売が始りました。市場での評判が気になるD社でしたが、予想以上の好評でした。そして、この業界では考えられないぐらいの台数を売り上げたのです。D社は、この功績を認めて、開発者に社長賞を贈りました。

C他社が同種のスキャナを発売
 ところが、半年ほどして、競合他社Fが同じニューロ学習方法を使用したコピー機を発売してきました。F社は、低価格戦略を売り物にしている企業であり、まともに勝負をすると、利益が出なくなるおそれがあります。どうやら、F社は、D社のニューロコピーを解析して、同じような製品を作ったようです。つまり、F社には、開発費がかかっていませんので、価格競争ではD社が不利です。

D警告、差止請求、損害賠償請求
 しかし、D社は特許権を取得していたので、F社に対して警告状を送り、製造販売の中止を求めることができました。また、F社の販売分に対して損害賠償の請求をしました。

Eまとめ
 2つの事例は極端ですが、どちらが好ましいかは言うまでも無いことでしょう。このように、特許制度を上手に利用できなければ大きな損失となり、逆に上手に利用できれば大きな力となります。

 では、どうすれば上手に特許制度を利用できるのでしょうか。特許制度の基本的な事項を理解することはもちろん大切です。その上で、具体的にどのような行動を起こせばいいのかを、理解して実行する必要があります。

 この資料では、i)特許調査をする、ii)特許出願をする、iii)侵害警告に対応するの3つに分けて、説明していきます。

 


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この資料は、下記の著作権表示さえしていただければ、
複製して配布していただいて結構です(商業的用途を除く)。
(c)1991-2010 Hideo FURUTANI / http://www.furutani.co.jp

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1.特許制度を利用する | 2.特許調査をする

3.特許出願をする | 4.警告状がきたら | 5.ソフトウエアと特許

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