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知的財産権(特許・商標・著作権)の基礎講座
(C)1991.12-2010.1  弁理士 古谷栄男

1.2特許調査をする


(1)何のために特許調査するのか?
 特許調査の目的は2つあります。1つ目は、自分の発明が特許される可能性があるのか否かを調べるためです。2つ目は、うっかり他人の権利を侵害しないようにするためです。

(2)特許可能性を探る
 自分では新しいアイディアだと思っていても、既に誰かが出願していた、ということもあります。特許調査を行えば、そのアイディアに関して、既に提出された特許出願や、すでに権利化されている特許の存在を調べることができます。これにより、自社が出願した場合の権利取得の可能性を探ることができます。

(3)他人の特許を侵害することを避ける
@知らずにやっても侵害である
 製品開発の前に、市場調査を行って開発計画を練るのは当然のことです。しかし、それだけでは十分でありません。うっかり他人の特許権を侵害してしまうかもしれないからです。真似をしたわけでなく、独自に開発したとしても、他人の特許の範囲内であれば特許権侵害となります。「そんな特許があるとは知らなかった」では済まされないのです。

つまり、特許法では、事業として新たな製品を開発、製造、販売しようとするときは、その事業者が新たな製品について他人の特許を侵害していないかどうかを調べる義務を持つとしているのです。したがって、開発計画の段階で、他人の特許権の侵害とならないかどうかを調査しておく必要があります。

A調査結果の利用  自社の開発しようとする製品が、調査した他社特許の範囲からも外れていれば、安心して開発を進めることができます。一方、自社の開発しようとする製品が、これら何れかの特許を侵害する場合には、開発計画の見直しをします。あるいは、他社に対して、ライセンスを申し込むということも考えられます。

 場合によっては、開発計画を中止しなければならないかもしれません。しかし、事例にあったように、開発費用すら回収できなくなるような無駄な開発をするよりは、勇気をもって中止することも大切です。

 ただし、調査した他社の特許を検討してみると、特許の取られていない部分があるはずです。したがって、この他社特許のない部分を狙って、開発計画を修正するというやり方が、よく行われています。また、このように特許のない部分を狙うことにより、自社の開発した技術が特許される可能性も高くなります。

(4)特許調査は完全か?
 特許調査をすることによって、完全に侵害を回避できるでしょうか。うっかり特許権侵害をしてしまう可能性をかなり低くすることはできますが、これを0%にすることはできません。なぜなら、i)特許調査の際の検索キーワードによって、検索洩れを生じることがある、ii)出願をしてからデータベースに入力されるまでに時間的なずれ(タイムラグ)がある、等の事情があるからです。

 例えば、「かな漢字変換」をキーワードとして検索した場合、かな漢字変換に関する特許が全て選び出されるとは限りません。特許出願の書類中に、日本語入力フロントエンドプロセッサ、漢字入力等の用語のみを用い、かな漢字変換という用語を用いていないものについては、選び出されないからです。もちろん、このような洩れを無くすため、「かな漢字変換」、「日本語入力フロントエンドプロセッサ」、「漢字入力」の何れかの用語を用いている特許を選定するようにしますが、完全を期すことは不可能です。

 また、特許出願は、出願されてから1年6月程度経過しないとデータベースに集録されません。したがって、自社の妨害になる特許出願が調査結果に現れなかったとしても、実際には他社が既に出願していたという場合もまれにあります。

 以上のような要因から、調査をして侵害のおそれがないと判断していても、特許権者から警告を受ける場合があります。警告状が来てしまった場合の対策については、後の節で説明します。

(5)ウオッチング調査
 本来特許されるべきでないような技術が特許されそうになった場合には、異義を申立てることができます。異義申立ての期間は、特許公報発行の日から6ヶ月以内ですから、有効な異義申立てを行うためには、競合他社の特許公報(特許掲載公報)を定期的(たとえば1月毎)に調査しておく必要があります。これを、ウオッチング調査といいます。

 特定企業を対象としたウオッチング調査、特定技術分野を対象としたウオッチング調査などがあります。

(6)参考
 特許調査は、特許電子図書館(IPDL)を用いて行うことができます。技術者・開発者の方であれば、まずは、自分で調査してみることも大切です。調査を通じて、ライバル他社の出願動向を知ることができるからです。調査自体に自信がない場合や、調査して見いだした文献の判断などについては、所属企業の知的財産部門や弁理士に依頼することがよいでしょう。なお、特許調査の具体的な手法については、こちらへ

 米国、ヨーロッパ、中国などの調査は、それぞれの国の特許庁が用意しているデータベースを使うことが可能です。
米国特許庁データベース
ヨーロッパ特許データベース(esp@cenet)
中国特許庁データベース

 


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この資料は、下記の著作権表示さえしていただければ、
複製して配布していただいて結構です(商業的用途を除く)。
(c)1991-1997 Hideo FURUTANI / http://www.furutani.co.jp

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1.特許制度を利用する
| 2.特許調査をする

3.特許出願をする | 4.警告状がきたら | 5.ソフトウエアと特許

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